JP4695246B2 - アクリル樹脂フィルムの製造方法、積層シートおよび積層射出成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層射出成形品の表面加飾用として好適なアクリル樹脂フィルムの製造方法、及び、この様なアクリル樹脂フィルムが積層されてなる積層シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗装に換わる樹脂成形品の表面に加飾する方法として、印刷等の加飾したフィルムを射出成形金型内に挿入し射出成形した後、加飾層のみを成形品表面に転写してからフィルムを剥がす転写法や、加飾フィルムを成形品の最表面として成形品に残すインサート成形法およびインモールド成形法等の射出成形と同時に加飾を施す方法;フィルムを射出成形品表面にラミネーションする方法等が広く使用されている。
【0003】
特に、インモールド成形に適したアクリル樹脂フィルムとして、特開平8−323934号公報には、特定粒子径のゴム含有重合体(II)を従来より少量使用することで、表面硬度、耐熱性、成形性に優れたアクリル樹脂フィルムが得られることが記載されている。
【0004】
また、特開平11−147237号公報には、射出成形と同時に貼合わせを行う方法に適したアクリル樹脂フィルムとして、ガラス転移温度が約105℃のハード芯構造を有するゴム含有重合体を含む表面硬度に優れたアクリル樹脂フィルムが開示されている。
【0005】
また、特許第2965973号公報および特許第3003032号公報には、透明アクリルフィルム層、絵柄層および基材フィルム層から積層フィルムを用いたインモールド成形用シート及びインサート成形法に関する記載がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、射出成型用金型内にて真空または圧空成形等により、アクリル樹脂フィルム又はアクリル樹脂フィルムより形成されるアクリル樹脂層を有する積層シートを三次元形状に成形を施した後、射出成形を行うインモールド成形法では、真空あるいは圧空成形前にアクリル樹脂フィルム又は積層シートを予備加熱し、軟化される工程が必要となる。
【0007】
この様な工程において、従来知られているアクリル樹脂フィルムを使用した場合、予備加熱の際にアクリル樹脂フィルムに皺が生じたり、あるいは真空成形時にアクリル樹脂フィルムの破れが生じる場合があった。また、ラミネーションの際に、皺または破れが生じる場合もあった。
【0008】
更に、従来知られている積層シートを用いた場合、アクリル樹脂フィルムと基材シートの間の界面の剥離が生じる場合があった。
【0009】
加えて、アクリル樹脂フィルム及び積層シートのいずれの場合にも、皺、剥離、破れを抑制し良好な外観を有する積層射出成形品を製造するためには、長時間の予備加熱を必要とする場合があり、生産性が不十分の場合があった。
【0010】
特に、大面積な形状や深絞りの形状の積層射出成形品を製造する際に、特に長時間の予備加熱が必要となる場合があり、生産性が低い場合があった。
【0011】
しかしながら、特開平8−323934号公報、特開平11−147237号公報、特許第2965973号公報および特許第3003032号公報等においては、短時間の予備加熱で、大面積の形状や深絞りの形状にも適応可能な表面加飾用アクリル樹脂フィルム又は積層シートに関しては、具体的に記載されておらず、また当該公報中の実施例においても、得られたアクリル樹脂フィルム又は積層シートを大面積な形状や深絞り形状の成形品に使用し、予備加熱時間を短縮して、優れた生産性を実現すること等に関しては、具体的に示されていない。
【0012】
即ち、大面積な形状や深絞り形状の成形品の射出成形同時加飾において、アクリル樹脂フィルム又は積層シートを短い予備加熱時間で成形する場合においても、皺、破れや積層シートの界面剥離等の不具合を生じることなく、良好な成形性を実現できるアクリル樹脂フィルム及び積層シートは見出されておらず、これらを満足する技術の開発が強く要望されていた。
【0013】
以上の様な状況に鑑み、本発明においては、積層射出成形品の製造において、皺、剥離、破れ等の不具合を生じることなく予備加熱時間を短縮できるアクリル樹脂フィルム及び積層シートを提供し、大面積な形状や深絞り形状の積層射出成形品を良好な生産性で製造することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明によれば、アクリル樹脂組成物を、スリット幅が1mm以下のTダイから溶融押出後、バンク(樹脂溜まり)が無い状態で、複数の金属ロール、非金属ロール及び/又は金属ベルトにより狭持することにより、実質的に圧延されることなく面転写させて、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下であり、10μm以上500μm以下の厚みを有するアクリル樹脂フィルムの製造方法が提供される。
また、上記方法から得られるアクリル樹脂フィルムと基材シートとが積層されてなる積層シート、上記方法から得られるアクリル樹脂フィルムが射出成形品上に積層されてなる積層射出成形品、および、上記積層シートが射出成形品上に積層されてなる積層射出成形品が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
本発明のアクリル樹脂フィルムにおいては、100℃雰囲気下で10分間加熱処理した後の加熱収縮率が10%以下とされる。この様なアクリル樹脂フィルムを用いて積層射出成形品を製造することにより、皺、剥離、破れ等の不具合を生じることなく予備加熱時間を短縮でき、大面積な形状や深絞り形状の積層射出成形品を良好な生産性で製造することができる。
【0017】
即ち、100℃雰囲気下10分間加熱処理した後の加熱収縮率が10%以下であれば、これをインモールド成形やインサート成形に使用し、予備加熱時間が短い場合においても、皺、剥離および破れを抑制できる。また、ラミネーション成形に使用し、加熱時間が短い場合においても、皺、剥離および破れを抑制できる。この結果、良好な成形性と生産性を実現できる。
【0018】
また、加熱収縮率10%以下のアクリル樹脂フィルムと、ABS樹脂シート、ポリプロピレンシート、PVCシート又は厚みが500μmを超えるアクリル樹脂フィルム等の基材シートとより得られる積層シートを用いて、大面積な形状や深絞りの形状条件でインモールド成形を行った際に、予備加熱時間が短い場合においても、基材シートとアクリル樹脂フィルムとの界面で剥離が生じることが抑制される。この結果、良好な成形性と生産性を実現できる。
【0019】
なお、インモールド成形時の成形性と生産性の観点から、アクリル樹脂フィルムの100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率は、8%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。
【0020】
本発明の効果が確認できるインモールド成形品の形状、即ち、大面積な形状や深絞り形状としては、例えば車輌内層部品のセンターコンソールパネルに使用する様な、投影面積が500cm2以上で絞り深さが10mm以上の形状を有するもの、車輌外装部品のモール類などの様に1m以上の長尺寸法のもの、ヘルメット及びポリ容器等の絞り深さが150mm以上の形状を有するもの等を挙げることができる。
【0021】
なお、上記の様な大面積な形状や深絞り形状を有する成形品を、同時加飾射出成形する際、仮に加熱収縮率が10%を超えるアクリル樹脂フィルム又は積層シートを用いたとしても、適正温度で充分な予備加熱時間を確保すれば、皺、破れや積層シートの界面剥離等の不具合を抑制することは可能である。しかしながら、予備加熱時間を短縮して成形する場合、加熱収縮率が10%より大きいと、アクリル樹脂フィルムに収縮による応力が残った状態でアクリル樹脂フィルム又は積層シート立体加工することになり、射出成形時等において、皺、破れや積層シートの界面剥離等が発生する場合がある。
【0022】
予備加熱時間を短くし高い生産性で成形を行う際においても、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下のアクリル樹脂フィルムを使用すれば、アクリル樹脂フィルムの皺、破れや、積層シートの界面剥離等の不具合を抑制し、良好な成形品を得ることができる。
【0023】
例えば、投影面積が500cm2で絞り深さが10mmの箱形形状のキャビティを有する真空成形可能な射出成形金型を使用して、非接触式加熱板でアクリル樹脂フィルム又は積層シートを130℃に加熱する時間(予備加熱時間)を30秒と短時間にした場合においても、引続き行う真空成形や射出成形時にアクリル樹脂フィルムに皺、破れを抑制することができる。又、積層シートの場合は基材シートとアクリル樹脂フィルムとの界面での剥離を抑制することができる。更に好ましくは予備加熱時間を10秒としても、アクリル樹脂フィルムの皺および破れ、積層シートの界面剥離を抑制することができる。
【0024】
特に、予備加熱時間が10秒と短時間の場合においても、良好なインモールド成形性を示すアクリル樹脂フィルム及び積層シートは、積層射出成形品を生産する際の成形サイクルを短縮することができ、工業的利用価値が高い。
【0025】
本発明のアクリル樹脂フィルムの厚みは、500μm以下とされる。フィルム厚が500μm以下であれば、良好な製膜性が実現でき、安定製造が可能となり、得られるアクリル樹脂フィルムの剛性は小さくなるため、良好なラミネート性等の2次加工性を実現できる。加えて、単位面積当たりの質量も低減できるため、経済的に好ましい。以上の様な観点から、300μm以下がより好ましい。
【0026】
また、本発明のアクリル樹脂フィルムの厚みは、10μm以上とされる。フィルム厚が10μm以上であれば、2次加工に適用可能なフィルム強度を実現できる。また、製膜性やアクリル樹脂フィルムを積層した射出成形品の深みのある透明感を向上させるためには、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。
【0027】
なお、本発明のアクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度(JIS K 5400準じて測定)は、H以上が好ましい。鉛筆硬度がH以上であれば、特に表面硬度または耐擦傷性が必要となる車輌内装や外装部品等の最表面に使用することができる。
【0028】
本発明のアクリル樹脂フィルムの製造するためのアクリル樹脂組成物は、特に制限されないが、製膜性に優れているものが好ましい。
【0029】
また、アクリル樹脂組成物の熱変形温度(ASTM D648に準じて測定)は80℃以上であることが好ましい。熱変形温度が80℃以上であれば、積層射出成形品の加熱時に、残留応力による表面荒れの発生が抑制される。更に、車輌用途に使用される場合、熱変形温度が100℃以上であれば、例えばハンドル部位付近での使用が可能となり、110℃以上であれば、例えばメーターパネル部位付近での使用が可能となるため工業的利用価値が高い。
【0030】
本発明で使用されるアクリル樹脂組成物の例としては、75質量部以上94.5質量部以下の熱可塑性重合体(I)と、5.5質量部以上25質量部以下のゴム含有重合体(II)とを含み、
熱可塑性重合体(I)は、メタクリル酸アルキルエステルを50質量%以上と、アクリル酸アルキルエステルを50質量%以下と、メタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステルの少なくとも一方と共重合可能なビニル単量体の1種以上を49質量%以下とを含んでなる単量体混合物(I)を重合して得られるものであり、
ゴム含有重合体(II)は、弾性内層および硬質外層を含んでなる2層以上の多層構造を有しており、弾性内層は主にアクリル酸アルキルエステルを重合して得られる弾性(共)重合体からなる層を1層以上有しており、硬質外層は弾性(共)重合体存在下に主にメタクリル酸アルキルエステルをグラフト重合して得られる硬質重合体からなる層を1層以上有しているものを挙げることができる。
【0031】
熱可塑性重合体(I)で使用されるメタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステルは特に制限はないが、アルキル基として、炭素数1以上4以下のものが好ましい。
【0032】
この様なメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等を例示できるが、メタクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等を例示することができる。アクリル酸アルキルエステルの含有量は50質量%以下とされるが、0.1質量%以上40質量%以下が好ましい。
【0033】
熱可塑性重合体(I)で使用される共重合可能なビニル単量体としては、公知の単量体を使用することができる。
【0034】
熱可塑性重合体(I)の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)は、溶融時にアクリル樹脂組成物の適度な伸び、及び良好な製膜性を実現するため、0.1L/g以下が好ましい。また、アクリル樹脂フィルムの十分な柔軟性を実現し、製膜および印刷等の際にフィルムの切断を抑制するため、0.05L/g以上であることが好ましい。
【0035】
熱可塑性重合体(I)の重合方法は、特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。なお、粘度を好ましい範囲とするためには、連鎖移動剤を必要とする場合がある。連鎖移動剤としては公知のものを使用することができるが、好ましくはメルカプタン類である。連鎖移動剤の量は、単量体の種類および組成により適宜決めることができる。
【0036】
ゴム含有重合体(II)としては、アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上99.9質量%以下と、他の共重合性ビニル系単量体を49.9質量%以下と、共重合性の架橋性単量体0.1質量%以上10質量%以下とを含んでなる単量体混合物を重合させて弾性(共)重合体を得た後、得られた弾性(共)重合体100質量部の存在下に、メタクリル酸エステル50質量%以上と、これと共重合可能なビニル系単量体50質量%以下とを含んでなる単量体の混合物を10質量部以上400質量部以下を、少なくとも1段以上で重合させることにより製造することが好ましい。
【0037】
なお、得られるアクリル樹脂フィルムが脆性となることを抑制するために、ゴム含有重合体(II)中の弾性(共)重合体の割合は、熱可塑性重合体(I)及びゴム含有重合体(II)の合計の5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。一方、得られるアクリル樹脂フィルムの透明性を向上するために、18質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましい。
【0038】
特に、以下に示すセミハード芯構造のゴム含有重合体(II)を用いることもできる。即ち、セミハード芯構造のゴム含有重合体(II)は、最内層の重合体(II−A)及び中間層のゴム重合体(II−B)からなる弾性(共)重合体((II−A)+(II−B))と、最外層の硬質重合体(II−C)を含み、最内層がメタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体(II−A)、中間層がアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃未満であるゴム重合体(II−B)、最外層がメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする硬質重合体(II−C)からなる3層構造を有している。
【0039】
なお、成形性の観点から、弾性(共)重合体中、重合体(II−A)は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以下が好ましい。同様の理由から、弾性(共)重合体中、ゴム重合体(II−B)は40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以下が好ましい。
【0040】
また、最内層重合体(II−A)のガラス転移温度は、0℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、25℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以上であれば、得られるアクリル樹脂フィルムの耐可塑剤白化性が向上し、25℃未満であれば、得られるアクリル樹脂フィルムの真空成形時の成形性が向上するからである。
【0041】
上記の弾性(共)重合体の作製で用いられるアクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1以上8以下のものが好ましく、それらのうちではアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が好ましい。弾性(共)重合体を得るに際に使用される共重合性ビニル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステルや、スチレン、アクリロニトリル等が好ましい。
【0042】
更に、弾性(共)重合体の作製においては、共重合性の架橋性単量体を使用することが好ましい。用いる架橋性単量体は、特に限定されないが、好ましくはエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールトリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらを単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0043】
弾性(共)重合体にグラフトさせるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が使用される。
【0044】
また、弾性(共)重合体にグラフトさせるビニル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が使用される。なお、グラフトさせる単量体の混合物は、弾性(共)重合体の凝集を抑制するために、弾性(共)重合体の100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、400質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。
【0045】
以上に述べたゴム含有重合体(II)の平均粒子径は、得られるアクリル樹脂フィルムの十分な製膜性を実現するために、0.2μm以上が好ましく、0.25μm以上がより好ましい。また、アクリル樹脂フィルムの十分な透明性を実現するために、0.4μm以下が好ましく、0.35μm以下がより好ましい。
【0046】
本発明で使用されるゴム含有重合体(II)は、公知の乳化重合法で製造することができる。重合温度は、用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、95℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0047】
重合開始剤は公知のものが使用でき、その添加方法は水相、単量体相いずれか片方、または、双方に添加する方法を用いることができる。
【0048】
乳化剤はアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が使用できるが、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としてはオレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ヂオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等があげられる。
【0049】
乳化重合法によって得られたラテックスは、酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等公知の凝固法により凝固される。酸凝固法としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用することができ、塩凝固法としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩を使用することができる。凝固された重合体は、更に、洗浄、脱水、乾燥される。
【0050】
本発明においては、アクリル樹脂フィルムの製膜性を向上し、アクリル樹脂フィルムの厚みや製膜速度を高精度に制御するために、アクリル樹脂組成物に、メタクリル酸メチルを50質量%以上と、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル単量体の1種以上を50質量%以下とを含んでなる単量体混合物(III)を重合して得られ熱可塑性重合体(III)を添加することが好ましい。
【0051】
なお、アクリル樹脂組成物100質量部に対する熱可塑性重合体(III)の添加量は、十分に製膜性を向上するために0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0052】
また、熱可塑性重合体(III)の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)は、厚み精度の良好なアクリル樹脂フィルムを得るために、0.2L/gより高いこのが好ましく、2L/g以下が好ましく、1.2L/g以下がより好ましい。
【0053】
更に、得られるアクリル樹脂フィルムが脆性となることを抑制するために、ゴム含有重合体(II)中の弾性(共)重合体の割合は、熱可塑性重合体(I)、ゴム含有重合体(II)及び熱可塑性重合体(III)の合計の5質量%以上が好ましく、得られるアクリル樹脂フィルムの透明性を向上するために、18質量%以下が好ましい。
【0054】
熱可塑性重合体(III)の製造で使用される、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等を使用することができる。重合は乳化重合法によるのが好ましく、公知の乳化重合法によって製造した重合体ラテックスを各種凝固剤により分離回収あるいはスプレードライにより固形分を分離回収し重合体粉末を得ることによって製造される。
【0055】
本発明で使用されるアクリル樹脂組成物の熱変形温度は、ゴム含有重合体(II)の使用量によっても変わるが、主に熱可塑性重合体(I)の熱変形温度が支配的である。熱可塑性重合体(I)の熱変形温度については、熱可塑性重合体(I)の単量体組成を公知の方法で調整することによって制御できる。種々の条件によって異なるが、例えば、共重合成分としてメチルアクリレートを使用する場合、熱変形温度を80℃以上とする場合においては、熱可塑性重合体(I)中のメチルメタクリレート含量を88質量%以上とし、熱変形温度を100℃以上とする場合においては、熱可塑性重合体(I)中のメチルメタクリレート含量を95質量%以上とすることにより調節できる。熱変形温度を110℃以上とする場合においては、熱可塑性重合体(I)中に、無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイミド類を共重合させれば良い。なお、熱変形温度を80℃以上および100℃以上とする場合においても、無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイミド類を共重合させることが可能であり、この場合、メチルメタクリレート含量を低減すればよい。
【0056】
本発明のアクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、艶消剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。特に基材の保護の点では、耐候性を付与するために、0.1質量%以上5質量%以下の範囲で紫外線吸収剤を添加することが好ましい。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。分子量が300以上の紫外線吸収剤を使用することにより、射出成形金型内で真空成形または圧空成形を行う際に、紫外線吸収剤が揮発し、金型を汚染することが抑制される。
【0057】
紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン234、旭電化工業社のアデカスタブLA−31、後者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン1577等が挙げられる。また、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)として、旭電化工業社のアデカスタブLA−57等を使用することもできる。
【0058】
以上の様にして得られたアクリル樹脂組成物を用いて、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法;カレンダー法等の方法によりアクリル樹脂フィルムを製造することができるが、経済性の観点から、Tダイと冷却ロールおよび巻取り機を備えた押出製膜機により製造することが好ましい。
【0059】
使用するTダイは、特に限定されないが、Tダイ内での溶融樹脂の流動性を安定化させる観点から、ハンガーコートタイプのTダイが好ましい。
【0060】
また、使用するTダイのスリット幅としては、1mm以下であることが好ましい。スリット幅が1mm以下であれば、厚み500μm以下のアクリル樹脂フィルムを製膜する際、延伸倍率が小さくなり、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下であるアクリル樹脂フィルムを容易に製造することができる。
【0061】
なお、スリット幅が1mmより大きいTダイを使用して、延伸倍率を高めて製膜した場合でも、製膜後フィルムをアニール処理することによって、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下であるアクリル樹脂フィルムを製造することができる。しかしながら、アニール処理は、生産性の観点より不利であるため、スリット幅が1mm以下のTダイを用いて溶融押出にて製膜する方法が好ましい。
【0062】
Tダイより溶融押出されたアクリル樹脂組成物は、冷却ロールを備えた引き取り機にてフィルム状に製膜される。溶融樹脂の冷却方法としては特に限定されないが、1本の金属ロールに接触して製膜する方法;複数の金属ロール、非金属ロール及び/又は金属ベルトに狭持して製膜する方法を例示することができる。
【0063】
1本の金属ロールに溶融アクリル樹脂組成物をキャスト接触して製膜する方法では、上述のスリット幅が1mm以下であるTダイを使用することが、特定の加熱収縮率を有するアクリル樹脂フィルムを容易に製造する観点から好ましい。
【0064】
一方、複数の金属ロール、非金属ロール及び/又は金属ベルトに狭持して製膜する方法を用いれば、得られるアクリル樹脂フィルムの表面平滑性を向上させ、アクリル樹脂フィルムに印刷処理した際の印刷抜けを抑制することができる。
【0065】
なお、金属ロールとしては、金属製の鏡面タッチロール;特許第2808251号公報またはWO97/28950号公報に記載の金属スリーブ(金属製薄膜パイプ)と成型用ロールからなるスリーブタッチ方式で使用されるロール等を例示することができる。また、非金属ロールとしては、シリコンゴム性等のタッチロール等を例示することができる。更に、金属ベルトとしては、金属製のエンドレスベルト等を例示することができる。なお、これらの金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトを複数組み合わせて使用することもできる。
【0066】
以上に述べた、複数の金属ロール、非金属ロール及び/又は金属ベルトに狭持して製膜する方法では、溶融押出後のアクリル樹脂組成物を、バンク(樹脂溜まり)が無い状態で狭持し、実質的に圧延されることなく面転写させて製膜する。
【0067】
バンク(樹脂溜まり)を形成することなく製膜した場合は、冷却過程にあるアクリル樹脂組成物が圧延されることなく面転写されるため、この方法で製膜したアクリル樹脂フィルムの加熱収縮率を低減することができ、特定の加熱収縮率を有するアクリル樹脂フィルムを容易に製造することができる。
【0068】
なお、複数の金属ロール、非金属ロール及び/又は金属ベルトを使用して製膜する場合に、使用する少なくとも1本の金属ロール、非金属ロール又は金属ベルトの表面にエンボス加工、マット加工等の形状加工を施すことによって、アクリル樹脂フィルムの片面あるいは両面に形状転写させることもできる。
【0069】
本発明のアクリル樹脂フィルムには、意匠性を付与するために、必要に応じて片面に絵柄を印刷し、印刷フィルムとして使用することができる。このような絵柄を印刷する印刷法としては、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、シルクスクリーン印刷法などの公知の印刷法を例示することができる。
【0070】
上述の様な印刷フィルムを熱可塑性樹脂よりなる射出成形品表面に積層することにより、絵柄層等を容易に形成することができるが、この場合、アクリル樹脂フィルムの有する深みのある透明感を付与することができ意匠性を向上させることができる。
【0071】
射出成形品表面にアクリル樹脂フィルム又は印刷フィルムを積層させ、積層射出成形品を製造する方法としては、アクリル樹脂フィルム又は印刷フィルムを射出成形品表面にラミネーションする方法(ラミネーション成形法);アクリル樹脂フィルム又は印刷フィルムを予め射出成形品の形状に真空または圧空成形により加工し、これを射出成形用金型に配置後、射出成形を行ことによって射出成形と同時に積層射出成形品を成形する方法(インサート成形法);射出成形用金型キャビティー内でアクリル樹脂フィルム又は印刷フィルムを真空または圧空成型し、次いで射出成形を行い射出成形と同時に積層射出成形品を成形する方法(インモールド成形法)等を挙げることができる。
【0072】
なお、射出成形品を構成する熱可塑性樹脂としては、接着性に優れるものであれば特に限定されないが、例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂、又は、これらを主成分とする樹脂を用いることができる。ただし、ポリオレフィン樹脂等の熱融着しない基材樹脂の場合においても、接着性の層を用いることで、成形時に接着させることは可能である。
【0073】
また、本発明においては、アクリル樹脂フィルム又は印刷フィルムと、熱可塑性樹脂シート又は熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材シートとが積層させた積層シートを、上記のラミネーション法、インサート法またはインモールド成形法にて、射出成形品の表層に積層させ、積層射出成形品を製造することもできる。
【0074】
なお、基材シートを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、艶消し剤および/または着色剤を含むアクリル樹脂等を例示することができる。これらの基材シートと、アクリル樹脂フィルム又は印刷フィルムとの積層は、加熱によるラミネーション、接着剤を使用したラミネーション等により行うことができる。
【0075】
また、積層シートを使用する場合は、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、シルクスクリーン印刷法等によって、基材シートに絵柄を印刷しておこくともできる。
【0076】
以上で説明してきた様に、本発明のアクリル樹脂フィルムは、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下であるため、上記の方法で積層射出成形品の製造方法として、加熱時間の短い熱ラミネーション法、予備加熱時間の短いインサート成形法、予備加熱時間の短いインモールド成形法等が採用された場合においても、アクリル樹脂フィルムに皺および破れが発生することが抑制され、積層シートの界面剥離が発生することが抑制される。
【0077】
この結果、得られる積層射出成形品は、アクリル樹脂フィルムの有する優れた意匠性、耐候性、表面耐擦傷性を射出成形品表面に生産性良く付与することができ、各種工業用途に使用することができる。
【0078】
本発明のアクリル樹脂フィルムを含む積層射出成形品の工業的用途例としては、車両外装、車両内装等の車両部品;壁材、窓枠等の建材部品;食器、玩具等の日用雑貨;掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品;インテリア部材;船舶部材;パソコンハウジング、携帯電話ハウジング等の電子通信機等を例示することができる。
【0079】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下特に明記しない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味しており、試薬等は市販の高純度品を用いた。
【0080】
また、以下の略号を使用することもある;
メチルメタクリレート MMA、
メチルアクリレート MA、
ブチルアクリレート BA、
スチレン St、
アリルメタクリレート AMA、
1.3−ブチレングリコールジメタクリレート 1.3BD、
t−ブチルハイドロパーオキサイド tBH、
t−ヘキシルハイドロパーオキサイド tHH、
n−オクチルメルカプタン nOM。
【0081】
(評価方法)
得られた熱可塑性重合体(I)、ゴム含有重合体(II)、熱可塑性重合体(III)及びアクリル樹脂フィルムの各特性は、以下の様にして測定した。
【0082】
(ア)熱可塑性重合体(I)及び(III)の還元粘度(L/g):25℃において、クロロホルム100mLにサンプルを0.1g溶解し、サン電子工業製AVL−2C自動粘度計を用いて測定した。
【0083】
(イ)ゴム含有重合体(II)の平均粒子径(μm):乳化重合にて得られたゴム含有重合体(II)のポリマーラテックスの最終平均粒子径を、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法によって測定した。
【0084】
(ウ)アクリル樹脂フィルムの全光線透過率(%):JIS K 6714に準じて測定した。
【0085】
(エ)アクリル樹脂フィルムの表面光沢(%):フィルムの表面光沢は、グロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー製 GM−26D型)を用い、60゜での表面光沢を測定した。
【0086】
(オ)アクリル樹脂フィルムの鉛筆硬度:JIS K 5400に準じて測定した。
【0087】
(カ)アクリル樹脂フィルムの製膜性:Tダイ法にて厚み100μmのフィルムを製膜し、5時間以上フィルムが切れずに製膜可能であったものを○、5時間で数回のフィルム切断が発生したものを△、フィルムの頻繁な切断のため製膜不可能であったものを×とした。
【0088】
(キ)アクリル樹脂組成物の熱変形温度(℃):アクリル樹脂組成物をペレットとし、射出成形にてASTM D648に基づく熱変形温度測定用の試験片を成形した。得られた試験片を80℃で24時間アニール後、低荷重(0.45MPa)でASTM D648に従って、熱変形温度を測定した。
【0089】
(ク)アクリル樹脂フィルムの加熱収縮率(%):A4サイズに切り出したアクリル樹脂フィルムに、製膜方向(流れ方向)と平行な線を3本マークした。その後、100℃雰囲気の加熱炉中に10分間放置し、加熱炉から取り出した後、予めマークした3個所の長さを測定し、下式より、それぞれの個所における加熱収縮率(%)を計算し、これらを平均した;
加熱収縮率(%)=[(加熱前長さ−加熱後長さ)/加熱前長さ]×100。
【0090】
(ケ)積層射出成形品の評価:アクリル樹脂フィルム又は積層シートを射出成形用金型の雌型キャビティ表面に配置し、非接触式加熱盤により130℃で10秒または30秒の間、予備加熱を行った。その後、真空成形を実施してフィルムをキャビティ面に追従させた。
○:皺、破れ、および剥離の何れも無し、
△:僅かな皺のみが発生、
×:明らかな皺、破れ、および/または剥離が発生。
【0091】
(参考例1)熱可塑性重合体(I)の製造
熱可塑性重合体(I)として、MMA/MA共重合体(MMA/MA=90/10、還元粘度0.06L/g)を製造した。
【0092】
(参考例2)ゴム含有重合体(II)の製造
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水244部を入れ80℃に昇温し、下記に示す(イ)を添加した後、撹拌を行いながら、下記に示す重合体(II−A)の単量体混合物(ロ)の1/15を仕込み、15分保持した。その後、水に対して単量体混合物の1時間当りの増加率が8%となるよう、(ロ)の残りを連続的に添加した。そして、1時間保持し、重合体(II−A)よりなるラテックスを得た。
【0093】
次に、得られたラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加えた後、15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、水に対して単量体混合物の1時間当りの増加率が4%となるよう、下記に示す重合体(II−B)の単量体混合物(ハ)を連続的に添加した。その後2時間保持して、ゴム重合体(II−B)の重合を行い、弾性体重合体ラテックスを得た。
【0094】
引続き、得られた弾性体重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加えた後、15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、水に対して単量体混合物の1時間当りの増加率が10%となるよう、下記に示す最外層重合体(II−C)の単量体混合物(ニ)を連続的に添加した。その後1時間保持して、最外層重合体(II−C)の重合を行い、ゴム含有重合体(II)のラテックスを得た。得られたゴム含有重合体(II)の平均粒子径は0.28μmであった。
【0095】
その後、ゴム含有重合体(II)のラテックスを、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後乾燥してゴム含有重合体(II)を得た。
【0096】
(参考例3)熱可塑性重合体(III)の製造
反応容器に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、乳化剤オレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BA10部、NOM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。引き続いて、MMA48部、BA2部からなる単量体混合物を2時間に渡り滴下し、滴下終了後2時間保持を行い、重合を完結させた。得られたラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸凝析した後脱水、水洗、乾燥し、粉体状で重合体を回収した。得られた共重合体の還元粘度ηsp/cは0.38L/gであった。
【0097】
(参考例4)アクリル樹脂組成物(N)の製造
参考例1で製造した熱可塑性重合体(I)84部と、参考例2で製造したゴム含有重合体(II)16部と、参考例3で製造した熱可塑性重合体(III)2部と、紫外線吸収剤アデカスタブLA−31(旭電化(株)製)1部と、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)アデカスタブLA−57(旭電化(株)製)0.2部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで40mmφのスクリュー型2軸押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度200〜260℃、ダイ温度250℃で溶融混練し、ペレット化して、アクリル樹脂組成物(N)を得た。
【0098】
得られたアクリル樹脂組成物(N)の熱変形温度は、92℃であった。
【0099】
(実施例1)アクリル樹脂フィルム(N−1)、印刷フィルム(P−1)
参考例4で得られたペレット状のアクリル樹脂組成物(N)を80℃で一昼夜乾燥し、Tダイを取り付けたφ65mmノンベントスクリュー型押し出し機(三菱重工(株)製HME−65)、冷却ロールおよび巻き取り機を備えた製膜機を用い、シリンダー温度200〜240℃、Tダイ温度250℃で、フィルムを製造した。製膜の際、幅0.5mmのスリットから押出した溶融状態のアクリル樹脂組成物を1本の金属製冷却ロール上にキャスト冷却し、これを巻き取り機で紙管に巻き取ることによって膜厚200μmのアクリル樹脂フィルム(N−1)を製造した。
【0100】
得られたアクリル樹脂フィルム(N−1)の全光線透過率、表面光沢、製膜性、鉛筆硬度および加熱収縮率を評価し、結果を表1に示した。
【0101】
次に、アクリル樹脂フィルム(N−1)の片面に、グラビア印刷方式により絵柄層(数〜十数μm)を印刷して、印刷フィルム(P−1)を製造した。
【0102】
得られた印刷フィルム(P−1)を印刷層が成形材料に接する向きで、型締め力2.2MNの射出成形機に取り付けられた投影面積500cm2、絞り深さ10mmのキャビティを有する真空成形可能な射出成形金型の雌型キャビティ表面にセットし(型開状態)、非接触加熱板により予備加熱時間を10秒、30秒の2条件で印刷フィルム(P−1)の温度を130℃に加熱した後、真空成形により印刷フィルム(P−1)をキャビティ面に追従させた。次いで金型を閉じてから、ABS/PC樹脂(三菱レイヨン(株)製ダイヤアロイTC−7F)をシリンダー温度240℃で射出成形して、積層射出成形品を製造した。
【0103】
得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、天面部、側面部およびコーナー部において皺の発生、剥離の発生および破れの発生等がない良好な成形外観を示した。
【0104】
(実施例2)アクリル樹脂フィルム(N−2)、印刷フィルム(P−2)
参考例4で得られたペレット状のアクリル樹脂組成物(N)を80℃で一昼夜乾燥し、Tダイを取り付けたφ65mmノンベントスクリュー型押し出し機(三菱重工(株)製HME−65)、2本の冷却ロールおよび巻き取り機を備えた製膜機を用い、シリンダー温度200〜240℃、Tダイ温度250℃で、フィルムを製膜した。製膜の際、幅0.5mmのスリットから押出した溶融状態のアクリル樹脂組成物を2本の金属製冷却ロール間に通し、バンク(樹脂溜まり)の無い状態で樹脂を挟持し圧延されず面転写させた後、これを巻き取り機で紙巻に巻き取ることによって膜厚200μmのアクリル樹脂フィルム(N−2)を製造した。
【0105】
得られたアクリル樹脂フィルム(N−2)の全光線透過率、表面光沢、製膜性、鉛筆硬度および加熱収縮率を評価し、結果を表1に示した。
【0106】
次いで、用いるアクリル樹脂フィルムを(N−2)に変更する以外は、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で、アクリル樹脂フィルム(N−2)に絵柄を印刷し、印刷フィルム(P−2)を製造した。
【0107】
得られた印刷フィルム(P−2)を使用して、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で、積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、天面部、側面部およびコーナー部において皺の発生、剥離の発生および破れの発生等がない良好な成形外観を示した。
【0108】
(実施例3)アクリル樹脂フィルム(N−3)、印刷フィルム(P−3)
アクリル樹脂フィルム(N−2)の製造で使用した製膜機のTダイのスリット幅を0.8mmに変更する以外は、アクリル樹脂フィルム(N−2)の場合と同様の方法で製膜を行い、アクリル樹脂フィルム(N−3)を製造した。
【0109】
得られたアクリル樹脂フィルム(N−3)の全光線透過率、表面光沢、製膜性、鉛筆硬度および加熱収縮率を評価し、結果を表1に示した。
【0110】
次いで、用いるアクリル樹脂フィルムを(N−3)に変更する以外は、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で、アクリル樹脂フィルム(N−3)に絵柄を印刷し、印刷フィルム(P−3)を製造した。
【0111】
この印刷フィルム(P−3)を使用して、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、天面部、側面部およびコーナー部において皺の発生、剥離の発生および破れの発生等がない良好な成形外観を示した。
【0112】
(実施例4)アクリル樹脂フィルム(N−4)、印刷フィルム(P−4)
アクリル樹脂フィルム(N−1)の製造に使用した製膜機のTダイのスリット幅を1.5mmに変更し、かつフィルムの引き取り速度を低下させる以外は、アクリル樹脂フィルム(N−1)の場合と同様の方法で製膜を行い、アクリル樹脂フィルム(N−4)を製造した。
【0113】
得られたアクリル樹脂フィルム(N−4)の全光線透過率、表面光沢、製膜性、鉛筆硬度および加熱収縮率を評価し、結果を表1に示した。
【0114】
次いで、用いるアクリル樹脂フィルムを(N−4)に変更する以外は、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で、アクリル樹脂フィルム(N−4)に絵柄を印刷し、印刷フィルム(P−4)を製造した。
【0115】
この印刷フィルム(P−4)を使用して、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、予備加熱時間が30秒の場合は、天面部、側面部およびコーナー部において皺の発生、剥離の発生および破れの発生等がない良好な成形外観を示したが、予備加熱時間が10秒の場合は天面部にわずかな皺が発生した。
【0116】
(実施例5)積層シート(S−1)
厚み200μmの三宝樹脂工業(株)製ABS樹脂カレンダーシート上に印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で絵柄を印刷し、表面に印刷層を有する印刷ABSシートを作製した。次いで、アクリル樹脂フィルム(N−2)を上記印刷ABSシートの印刷層側に熱ラミネーションさせ、総厚み400μmの積層シート(S−1)を製造した。
【0117】
次いでこの積層シート(S−1)を使用して、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法でABSシート側を成形樹脂と接する位置で配し、積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、天面部、側面部およびコーナー部において皺の発生、剥離の発生および破れの発生等がない良好な成形外観を示し、また予備加熱あるいは射出成形の各工程で積層シートの界面剥離は発生しなかった。
【0118】
(比較例1)アクリル樹脂フィルム(T−1)、印刷フィルム(A−1)
アクリル樹脂フィルム(N−1)の製造で使用した製膜機のTダイのスリット幅を2.0mmに変更する以外は、アクリル樹脂フィルム(N−1)の場合と同様の方法で製膜を行い、アクリル樹脂フィルム(T−1)を製造した。
【0119】
得られたアクリル樹脂フィルム(T−1)の全光線透過率、表面光沢、製膜性、鉛筆硬度および加熱収縮率を評価し、結果を表1に示した。
【0120】
次いで、用いるアクリル樹脂フィルムを(T−1)に変更する以外は、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で、アクリル樹脂フィルム(T−1)に絵柄を印刷し、印刷フィルム(A−1)を製造した。
【0121】
この印刷フィルム(A−1)を使用して、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、側面部およびコーナー部に皺が発生した。
【0122】
(比較例2)アクリル樹脂フィルム(T−2)、印刷フィルム(A−2)
アクリル樹脂フィルム(N−2)の製造条件から、2本の冷却ロール間の距離を徐々に減少させ、冷却ロールのTダイ側にバンク(樹脂溜まり)が形成する条件を設定した。
【0123】
この条件にて製膜を行い、アクリル樹脂フィルム(T−2)を製造した。
【0124】
得られたアクリル樹脂フィルム(T−2)の全光線透過率、表面光沢、製膜性、鉛筆硬度および加熱収縮率を評価し、結果を表1に示した。
【0125】
次いで、用いるアクリル樹脂フィルムを(T−2)に変更する以外は、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法でアクリル樹脂フィルム(T−2)に絵柄を印刷し、印刷フィルム(A−2)を製造した。
【0126】
この印刷フィルム(A−2)を使用して、印刷フィルム(P−1)の場合と同様の方法で積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、側面部およびコーナー部に皺が発生した。
【0127】
(比較例3)積層シート(V−1)
用いるアクリル樹脂フィルムを(N−2)から(T−2)に変更する以外は、積層シート(S−1)の場合と同様の方法で、印刷ABSシートにアクリル樹脂フィルムが積層された積層シート(V−1)を製造した。
【0128】
次いで、この積層シート(V−1)を使用して、積層シート(S−1)の場合と同様の方法でABSシート側を成形樹脂と接する位置で配し、積層射出成形品を製造した。得られた積層射出成形品は、何れの予備加熱時間でも、アクリル樹脂フィルムとABSシート層との間で剥離が発生した。
【0129】
以上で得られた評価結果を表1に示した。
【0130】
【表1】
【0131】
以上の実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
【0132】
第1に、アクリル樹脂フィルム(N−1)〜(N−4)は、いずれも100℃雰囲気下10分間加熱処理した後の加熱収縮率が10%以下であり、これらを使用した積層射出成形品は良好な成形外観を示した。特に、アクリル樹脂フィルム(N−1)〜(N−3)は、いずれも短い予備加熱時間で、皺、剥離および破れが発生せず、良好な成形外観を示した。
【0133】
第2に、アクリル樹脂フィルム(T−1)及び(T−2)は、いずれも100℃雰囲気下10分間加熱処理した後の加熱収縮率が10%を超えており、これを使用した積層射出成形品は、特に成形品の側面部およびコーナー部にアクリル樹脂フィルムの皺が発生し、意匠性が不十分であった。
【0134】
第3に、積層シート(S−1)を用いて製造された積層射出成形品においては、アクリル樹脂フィルムとABSシート層との間で界面剥離が発生することなく、良好な成形外観を示した。
【0135】
第4に、積層シート(V−1)を用いて製造された積層射出成形品においては、アクリル樹脂フィルムとABSシート層との間で界面剥離が生じ、意匠性が不十分であった。
【0136】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下であり、10μm以上500μm以下の厚みを有するアクリル樹脂フィルムを用いて積層射出成形品を製造することにより、皺、剥離、破れ等の不具合を生じることなく予備加熱時間を短縮できる。
Claims (5)
- アクリル樹脂組成物を、スリット幅が1mm以下のTダイから溶融押出後、バンク(樹脂溜まり)が無い状態で、複数の金属ロール、非金属ロール及び/又は金属ベルトにより狭持することにより、実質的に圧延されることなく面転写させて、100℃雰囲気下10分間加熱処理後の加熱収縮率が10%以下であり、10μm以上500μm以下の厚みを有するアクリル樹脂フィルムの製造方法。
- 鉛筆硬度(JIS K 5400に準じて測定)がH以上であることを特徴とする請求項1記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
- 請求項1または2に記載の方法から得られるアクリル樹脂フィルムと基材シートとが積層されてなる積層シート。
- 請求項1または2に記載の方法から得られるアクリル樹脂フィルムが射出成形品上に積層されてなる積層射出成形品。
- 請求項3記載の積層シートが射出成形品上に積層されてなる積層射出成形品。
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