JP4708687B2 - 易切断性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

易切断性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、耐熱性、バリヤー性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好な引裂き性を具備した包装用フィルムやテープ用フィルムとして有用な積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、切断性の優れたフィルムとしては、セロハンが知られている。セロハンは、その優れた透明性と易切断性、ひねりシワ固定性等の特性により各種包装材料、粘着テープ用として重用されている。しかし、一方ではセロハンは吸湿性を有する為に特性が季節により変動し、一定の品質のものを常に供給することは困難であった。
【0003】
一方、ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルムからなる包装袋や粘着テープなどは、強靭性、耐熱性、耐水性、透明性、寸法安定性などの優れた特長を有しているが、反面、切断しにくく、包装用袋の口を引裂き難い欠点や、粘着テープが切り難い欠点、さらにひねり固定性が劣る為にひねり包装用に用いることができない等の欠点があった。ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みを薄くすると、易切断性は容易に改善されるが、通常4μm以下の極薄にしなければならない。このようなフィルムは生産や二次加工においてハンドリング性能が極端に低下するため、フィルムの厚みを薄くすることなしに、易切断性を付与する技術が種々検討されてきた。
【0004】
上記問題を解決する方法として、一軸方向に配向させたポリエステルフィルム(特許文献1)、ジエチレングリコール成分などを共重合させたもの(特許文献2)、低分子量のポリエステル樹脂を用いるもの(特許文献3)、さらに融点の異なる二種のポリエステルフィルムからなる積層フィルムにおいて、低融点層が実質的に非晶構造となるような製法により得られたフィルム(特許文献4)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記従来技術において、特許文献1の一軸方向に延伸させたフィルムは、配向方向へは直線的に容易に切れるが配向方向以外には切れ難いものである。また特許文献2のジエチレングリコール成分などを多量に共重合させたフィルムは、共重合によりポリエチレンテレフタレート本来の特性が失われるという欠点を有している。更に、特許文献3の低分子量のポリエステル樹脂を用いたフィルムは、溶融張力が小さくなりすぎるためにフィルムの溶融成形においてドローダウンなどのトラブルが発生しやすかったり、延伸工程での膜破れのトラブルが発生しやすく工業的な生産は困難であった。
【0006】
一方、特許文献4の積層フィルムは、低融点ポリエステル層が比較的低強度の非晶状態となるような条件を採用し、かつ強度保持層である高融点ポリエステル層を可能な限り薄く成形することで、フィルムの厚みを減じることなく、強度特性をセロファンに近づけることが可能となるという利点がある。
しかし、特許文献4に提案された構成では、実質的に高融点ポリエステル層の強度特性が積層フィルムの易切断性に大きく影響する。すなわち高融点ポリエステル層単独の強度が高いと積層フィルム全体の強度が増加し、易切断性の改良効果が低下するという特徴を有している。特許文献4の実施例1および2では、高融点ポリエステルの固有粘度が一般的に包装用途において用いられている程度の値(0.62)であるため、その強度と破断伸度が比較的高く、手で切断する際にフィルムが伸びやすく、開封性がセロファンに比較して劣るという問題があった。さらに、特許文献4に記載された方法では、積層フィルムの層間剥離強度が低く、例えばフィルムを手で引き裂いた場合に層間剥離が生じ、カットラインが乱れてしまうという問題があった。すなわち、このようなフィルムからなる製袋品を開封すると、いわゆる股開きが生じ、内容物の飛散が起こりやすいという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭55−8551号公報
【特許文献2】
特公昭56−50692号公報
【特許文献3】
特公昭55−20514号公報
【特許文献4】
特開平5−104618号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はセロハンの有する特性のうち特に易切断性に注目し、従来の改良されたポリエステル系フィルムよりもさらに易切断性に優れたフィルムを提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、融点の異なる二種以上の結晶性ポリエステルからなる積層二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、従来単独では製膜困難と考えられていた範囲の低い固有粘度のポリエステルを強度支持層である高融点ポリエステル樹脂層として使用し、また低融点ポリエステル樹脂層として比較的高い固有粘度のポリエステルを用いつつ、低融点ポリエステル樹脂層が実質的に非晶状態となるような製法をとることで、溶融成形性に優れ、かつ積層フィルムの厚みを減じることなく易切断性が改良され、かつ生産性の高いフィルムが得られることを見出し本発明に至った。本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕下記(1)(3)を満たす結晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)とからそれぞれ構成されたフィルム層を少なくとも一層ずつ有する積層フィルムであって、積層フィルムが下記(4)(5)を満たすことを特徴とする易切断性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
(1)結晶性ポリエステル(B)の融点が、結晶性ポリエステル(A)の融点より25℃以上低い。
(2)結晶性ポリエステル(A)の固有粘度が0.40〜0.47である。
(3)結晶性ポリエステル(B)の固有粘度が0.60〜0.90である。
(4)結晶性ポリエステル(A)層の厚み割合が全厚みに対し10〜50%である。
(5)結晶性ポリエステル(B)層の結晶化指数Qが0.2以下である。
〔2〕結晶性ポリエステル(A)層と結晶性ポリエステル(B)層の層間剥離強度が1.0N/cm以上であることを特徴とする〔1〕記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
〔3〕積層フィルムの厚みが8〜30μmであり、かつ積層フィルムの引張強度が20〜120MPaであること特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられる結晶性ポリエステル(A)としては通常融点が200℃以上、好ましくは220℃以上のものが用いられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを主骨格とするものが用いられる。中でもポリエチレンテレフタレートを主骨格とするポリエステル樹脂が好適に用いられる。このような結晶性ポリエステル樹脂には、必要とされる特性が損なわれない限り他の共重合成分が共重合されていてもよい。
【0011】
共重合に用いられる酸変性成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸や、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸や、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多官能化合物などが挙げられる。これらの酸変性成分は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
また、共重合に用いられるジオール変性成分として、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,6−へキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などのグリコールや、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物などが挙げられる。これらのジオール変性成分は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル(A)の20℃における固有粘度は0.40〜0.47であることが必要である。結晶性ポリエステル(A)の固有粘度をこの範囲に限定することにより、従来よりも優れた易切断性を有する積層フィルムを提供することができる。固有粘度がこれより大きいと、易切断性が損なわれるため好ましくない。また固有粘度がこれより小さいと、溶融成形が困難となったり、フィルムの強度や伸度が低下しすぎるため好ましくない。
【0014】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル(B)は、後述した理由により、結晶性ポリエステル(A)よりも25℃以上低い融点を有する結晶性ポリエステルであることが必要である。結晶性ポリエステル(B)の具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを主骨格とし、他の共重合成分が共重合されたものが挙げられる。
【0015】
共重合に用いられる酸変性成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸や、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸や、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多官能化合物などが挙げられる。これらの酸変性成分は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
また、共重合に用いられるジオール変性成分として、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,6−へキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などのグリコールや、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物などが挙げられる。これらのジオール変性成分は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
本発明に用いられる結晶性ポリエステル(B)は、結晶性ポリエステル(A)と同等の共重合成分からなる共重合体であってもよいし、また異なる共重合成分からなる共重合体であってもよい。
【0018】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル(B)の20℃における固有粘度は0.60〜0.90であることが必要であり、0.68〜0.80であることが好ましい。本発明においては積層フィルムを構成する高融点ポリエステル(A)層の固有粘度が比較的小さく、(A)層単独では溶融成形が困難であるため、積層フィルムのもう一方の構成成分である低融点ポリエステル(B)層の固有粘度は比較的高いものを用いる必要がある。結晶性ポリエステル(B)層の固有粘度が0.60未満であると溶融張力が低下し、積層フィルムの溶融成形が困難となるため好ましくない。また0.90より大きいと溶融押出時の負荷が大きくなるため好ましくない。
【0019】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル(A)と(B)のガラス転移温度に特に制限はないが、共押出、共延伸という製法を採用する上で両者のガラス転移温度の差の絶対値が40℃以下であることが好ましい。この値が40℃より大きいと、共延伸をおこなう延伸温度において、どちらか一方のポリエステルの延伸が困難となり、延伸が不均一となるため好ましくない。
【0020】
本発明において用いられる結晶性ポリエステル(A)と(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加剤、例えば結晶核剤、スリップ剤、無機フィラー、ピニング剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。また、結晶性ポリエステル(A)と(B)には、必要とされる特性が損なわれない範囲において他の高分子成分が含まれていてもよい。これらの高分子成分は分子論的に相溶であっても、非相溶であっても構わない。
【0021】
本発明の積層フィルムは、結晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)とを少なくとも一層ずつ有することが必要である。積層ポリエステルフィルムの具体的な層構成に特に限定はないが、A/Bなどの2種2層構成をはじめ、A/B/A、B/A/Bなどの2種3層構成、A/B/A/B/A、B/A/B/A/Bなどの2種5層構成など任意の構成が挙げられる。結晶性ポリエステル(A)層が最外層になるように構成した積層フィルムは、これに接着剤を介してポリエチレン層を積層して用いた場合に、ヒートシール時の外層融着がなく、また耐薬品性に優れるため、A/B/Aが好ましい構成として挙げられる。
【0022】
本発明の積層フィルムにおいては、結晶性ポリエステル(A)層の厚みの、積層フィルムの全厚みに対する割合は10〜50%であることが必要であり、さらには15〜45%であることが好ましい。結晶性ポリエステル(A)層の厚みが全厚みの50%を超えると、積層フィルムの強度が高くなり易切断性が低下したり、低粘度層の増加によって溶融張力が低下し安定的な溶融成形が困難となるため好ましくない。また結晶性ポリエステル(A)層の厚みが全厚みの10%未満の場合、結晶性ポリエステル(A)層の寄与により得られる積層フィルムの耐熱性、力学的特性および良好な延伸性、厚み精度が損なわれたり、積層フィルムにおける結晶性ポリエステル(A)層単独の厚み精度をコントロールすることが困難となるため好ましくない。
【0023】
本発明の積層フィルムは、次式(1)で規定される結晶化指数Qが0.2以下であることが必要であり、0.1以下、さらに0.05以下であることが好ましい。
Q=(|ΔHmB|−|ΔHcB|)/|ΔHmB|・・・(1)
ただしΔHmBおよびΔHcBはそれぞれ、示差走査型熱量計によって積層フィルムを20℃から高融点側の結晶性ポリエステル(A)の融点+20℃まで昇温速度10℃/minで昇温した際に観測される、低融点側の結晶性ポリエステル(B)に由来する結晶融解熱量および発熱結晶化熱量を示す。式(1)においてQが小さいことは積層ポリエステル内における低融点側の結晶性ポリエステル(B)が、第1回目の昇温過程において結晶化可能な部分を有する、すなわち結晶化可能な非晶性部分をより多く有していることを意味する。低融点側の結晶性ポリエステル(B)の非晶性が大きいほど、積層ポリエステル全体の強度が低下するため、厚みを減じることなく易切断性が向上するため好ましい。結晶化指数Qが0.2より大きい場合は、低融点側の結晶性ポリエステル(B)層の配向結晶化の寄与により、積層フィルムの易切断性が低下するため好ましくない。
【0024】
上記のような結晶化指数Qを有する(B)層を積層フィルムに形成する方法として、例えば特開平5−104618号公報に記載の方法と類似の方法を採用することができる。すなわち二軸延伸工程後に積層フィルムを低融点側の結晶性ポリエステル(B)の融点より5℃以上高く、かつ高融点側の結晶性ポリエステル(A)の融点より5℃以上低い温度で熱固定処理を行う方法などが挙げられる。このような方法をとることによって、二軸延伸によって生じた結晶性ポリエステル(A)層の配向結晶化構造を大きく損なうことなく熱固定処理を行い、そして二軸延伸によって生じた結晶性ポリエステル(B)の配向結晶化構造のみを、解配向、結晶融解させ、結果として積層フィルム全体が配向結晶化している場合よりも、易切断性の改善された積層フィルムが得られる。熱固定温度がこの温度範囲より低いと、低融点ポリエステル(B)層の結晶融解および解配向効果が十分に得られず、積層フィルムの易切断性改良効果が低下するため好ましくない。またこの温度範囲より高いと、高融点結晶性ポリエステル(A)層においても結晶融解および解配向が起こり、二軸延伸フィルムの生産が困難となるため好ましくない。
【0025】
通常、工業的に生産性の高い二軸延伸ポリエステルフィルムの製法においては、熱セット炉長と生産速度の関係から熱固定に利用できる時間は通常数秒から十数秒の範囲に限定される。したがって、このような短時間内に結晶性ポリエステル(B)を結晶融解、解配向させるためには、熱固定温度は結晶性ポリエステル(B)の融点より可能な限り高いことが好ましい。一方、熱固定温度の上限としては高融点側の高結晶性ポリエステル(A)の融点近傍の温度が挙げられ、通常は融点より5℃低い温度以上で熱固定処理を行うことは困難である。よって、本発明の積層フィルムを工業的に容易に得るためには、結晶性ポリエステル(A)と(B)の融点差が大きいほど好ましい。このような観点から、本発明に用いられる結晶性ポリエステル(B)は、結晶性ポリエステル(A)よりも25℃以上低い融点を有することが必要であり、さらには30℃以上低い融点を有することが好ましい。
【0026】
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムにおける層間剥離強度が1.0N/cm以上であることが好ましく、さらに1.2N/cm以上であることが好ましい。ここでいう層間剥離強度とは温度20℃、湿度65%RHの環境下、幅15mmの試料片を用い、結晶性ポリエステル(A)層および結晶性ポリエステル(B)層間を速度300mm/minでT型剥離した際に計測されるT型剥離強度(試料片の幅1cmあたりに換算した剥離強力。単位N/cm)のことをいう。本発明のごとく積層フィルムの一方の構成成分である結晶性ポリエステル(A)層に比較的低分子量のポリエステルを用いることにより、従来よりも層間剥離強度が改善される。層間剥離強度がこれより小さいと、手でフィルムを切断した際に層間剥離が生じやすく、その結果切断後のカットラインが乱れ、例えば製袋品などを開封する際に内容物の飛散を招きやすいため好ましくない。
【0027】
本発明の積層フィルムの厚みは8〜30μmの範囲、さらには10〜25μmの範囲にあることが好ましい。厚みが8μmより小さい場合、生産工程や、印刷などの二次加工工程においてしわ、切断などのトラブルが生じ易いため好ましくない。また厚みが30μmより大きい場合、本発明に記載の積層フィルム構成によっても、フィルムに易切断性を付与することが困難となるため好ましくない。
【0028】
本発明の積層フィルムは上記の厚み範囲内にあって、かつJIS K 6732に準じて測定された引張強度が20〜120MPa、さらには30〜110MPaであることが好ましい。引張強度がこれより大きいと、上記の厚み範囲にある積層フィルムに十分な易切断性を付与することが困難となるため好ましくない。また引張強度がこれより小さいと、積層フィルムの生産や二次加工においてフィルムの切断トラブルが起こりやすくなるため好ましくない。本発明においては積層フィルムの厚みを適度な範囲にコントロールしつつ、かつフィルムの引張強度を従来の技術よりも低下させることで、生産や二次加工において良好なハンドリング性を付与しつつ、かつ易切断性に優れた積層フィルムを提供できる点で、従来の技術に優っている。
【0029】
本発明の積層フィルムには必要に応じて、他の高分子素材、例えば高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、および/またはそれらからなるフィルムを、接着剤層の存在下または非存在下に少なくとも一層以上積層してもよい。積層する方法としてはドライラミネート法、押出ラミネート法、熱ラミネート法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0030】
本発明の積層フィルムには必要に応じて、無機膜、例えば二酸化珪素、アルミナ、二酸化亜鉛、またはこれらの混合物などからなる層を積層してもよい。積層する方法としては物理蒸着法、化学蒸着法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0031】
本発明の積層フィルムには必要に応じて、金属膜、例えばアルミニウムからなる層を積層してもよい。積層する方法として例えば蒸着法、ドライラミネート法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0032】
本発明の積層フィルムには必要に応じて、紙からなる層を積層してもよい。積層する方法として例えばドライラミネート法、押出ラミネート法、熱ラミネート法など任意の公知の方法が挙げられる。
【0033】
結晶性ポリエステル(A)層と結晶性ポリエステル(B)層とを積層する方法として、複数の押出機等の中で、別々に樹脂を溶融し、ダイス出口から押出して未延伸フィルムに成形し、次いで未延伸フィルム同士を加温状態でラミネートする方法が好適な例として挙げられる。別の方法としては一方の未延伸フィルムの表面に、他方の溶融フィルムを溶融ラミネートする方法が挙げられる。さらに別の方法としては共押出し法により積層した状態でダイス出口より押出してフィルムを成形する方法が挙げられる。
【0034】
次に本発明の積層フィルムの製造法の一例を説明する。十分に乾燥した結晶性ポリエステル(A)及び結晶性ポリエステル(B)をそれぞれ別の2台の押出機に供給し、溶融押出しし、複合アダプターを通過させ、2種2層(A/B)または2種3層(A/B/A)としてTダイのダイオリフィスからシート状に押出し吐出する。ダイオリフィスから吐出された軟化状態にあるシートは、例えば静電ピニング法など公知の冷却法により冷却ドラムに密着、冷却される。
続いて、得られた未延伸シートを90〜140℃の温度で、通常、縦横それぞれ3.0〜5.0倍の延伸倍率で二軸延伸する。延伸温度が90℃未満であると均質な延伸フィルムを得ることができない場合があり、140℃を超えると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が促進されて延伸が不均一となったり、透明性が悪くなる場合がある。また、延伸倍率が3.0倍未満であると、十分な配向効果が得られないために力学特性に劣り、また5.0倍を超えると延伸が困難になるため好ましくない。
二軸延伸されたフィルムは、続いて、結晶性ポリエステル(B)層の融点+5℃以上、結晶性ポリエステル(A)層の融点−5℃以下の温度で熱処理される。熱処理温度が高すぎるとフィルムが溶断するため好ましくない。
なお、二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸方法、あるいはチューブラー法のいずれでもよい。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例および比較例における評価の方法と使用したポリエステル樹脂は以下のとおりである。
【0036】
〔端裂抵抗および端裂伸度の測定〕
端裂抵抗は、JIS C 2318 6.3.4項に準じ、積層フィルムのMD方向について測定した。また試料の破断点における変形率(%)により端裂伸度を評価した。
【0037】
〔引張強度の測定〕
引張強度はJIS K 6732に準じ、積層フィルムのMD方向について測定した。
【0038】
〔層間剥離強度の測定〕
積層フィルムの片面に接着剤((a)主剤:大日本インキ化学工業社製ディックドライLX63F、(b)硬化剤:大日本インキ化学工業社製KP−90、(c)酢酸エチル、(a)/(b)/(c)=1/12/10(質量比))を塗布、80℃、15秒間熱風乾燥して溶媒を蒸発させたのち、直鎖状低密度ポリエチレンシーラント(東セロ社製TUXFCS#50:厚み50μm)をドライラミネートした。ドライラミネートサンプルより幅15mm、長さ140mmのサンプルを切り出し、20℃、65%RHの環境下、引張速度300mm/minの速度でT型剥離を行い、剥離強度を測定した(単位N/cm)。剥離後の試料厚みを測定することにより、試料の剥離界面を判定したところ、本実施例、比較例の全てのサンプルで結晶性ポリエステル樹脂(A)層と結晶性ポリエステル樹脂(B)層の間で剥離しており、これらの剥離強度をもって層間剥離強度とした。
【0039】
〔結晶化指数の測定〕
積層フィルムより約5mgの試料をサンプリングし、島津製作所社製示差走査熱量計DSC−60を用い下記の方法で測定した。試料を20℃から270℃まで10℃/minの昇温速度で昇温した際の、低融点側の結晶性ポリエステル(B)に由来する発熱ピークの面積より結晶化熱量ΔHcB(J/g)を、また低融点側の結晶性ポリエステル(B)に由来する吸熱ピークより結晶融解熱量ΔHmB(J/g)を測定した。ピーク面積の算出にあたっては、ピーク温度に対して低温側のベースラインと高温側のベースラインにおけるオフセット温度を結んだ直線をピーク部のベースラインとして用いた(図1)。各測定値より結晶化指数Qを計算した。
【0040】
〔手切れ性の評価〕
100mm角に切り出された積層フィルムサンプルをフィルムのTD方向に両手で引き裂くことによりフィルムのハンドカット性能を3段階で評価した。容易に手で引き裂けたものを○、やや抵抗が高かったが引き裂きは可能なものを△、手で引き裂くのが困難であったものを×とした。
【0041】
〔製袋品の開封安定性〕
積層フィルムの片面に接着剤((a)主剤:大日本インキ化学工業社製ディックドライLX63F、(b)硬化剤:大日本インキ化学工業社製KP−90、(c)酢酸エチル、(a)/(b)/(c)=1/12/10(質量比))を塗布、80℃、15秒間熱風乾燥して溶媒を蒸発させたのち、直鎖状低密度ポリエチレンシーラント(東セロ社製TUXFCS#30:厚み30μm)をドライラミネートした。得られたラミネートフィルムを40℃、48時間エージング処理した。得られたラミネートフィルムから100mm×100mmの試料片を二枚切り出し、MD、TD方向をそろえて重ね合わせ四方ヒートシール袋を作製した。このシール袋をTD方向に手で引裂いた際に、直線的なカットラインで開封されたものを○、結晶性ポリエステル(A)層と結晶性ポリエステル(B)層の間で層間剥離が生じ、カットラインが大きく乱れ、股開き状態となったものを×とした。
【0042】
〔ポリエステル樹脂〕
PET1:
ユニチカ社製ポリエチレンテレフタレート樹脂DABR、固有粘度0.47、融点256℃。
PET2:
ユニチカ社製ポリエチレンテレフタレート樹脂DHCBR、固有粘度0.67、融点256℃
【0043】
IPET1:
グリコール成分としてエチレングリコールと、酸成分としてテレフタル酸、共重合比11mol%のイソフタル酸をエステル化槽に仕込み、240℃で4時間反応させ、エステル化物を得た。次に、三酸化アンチモン触媒下、1.3hPaの減圧下、300℃で溶融重合し、固有粘度が0.67になるように重合時間を調整して、融点211℃のポリエステル樹脂IPET1を得た。
【0044】
IPET2:
上記IPET1と同様にして溶融重合し、固有粘度が0.58になるように重合時間を調整して、融点211℃のポリエステル樹脂IPET2を得た。
【0047】
APET:
イーストマンケミカル社製EASTER 9921(エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノール3.4mol%、およびテレフタル酸を共重合したポリエステル)固有粘度0.80、融点234℃。
【0048】
実施例1
結晶性ポリエステル(A)としてPET1、結晶性ポリエステル(B)としてIPET1を各々温度270℃で別々の押出機により溶融し、この溶融体を複合アダプターで合流させた後にTダイより押出し、冷却ドラムで急冷してA/B/A構成の3層の未延伸積層フィルムを得た。この時、延伸後の積層ポリエステルフィルムにおいて結晶性ポリエステル(A)層および結晶性ポリエステル(B)層の厚み構成が2μm/8μm/2μmの割合になるように各押出機の吐出量を調整した。
未延伸積層フィルムをまずロール延伸法により縦方向に約90℃で3.5倍、次いでテンター延伸法により横方向に約110℃で3.8倍に延伸した後、横方向に3%の弛緩を行いつつ220℃の温度で約5秒間熱処理を行った。さらにフィルムを冷却した後、巻取機によりロール状に巻き取り、表1に示した厚み構成を有する積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの評価結果を表1に示した。
【0049】
実施例2〜、比較例1〜5
結晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)の種類、またA/B/Aの厚み構成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの評価結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1〜の積層フィルムは、手切れ性と開封安定性に優れたものであった。一方、比較例1と2の積層フィルムは、結晶性ポリエステル(A)の固有粘度が高いため、それぞれ引張強度が高く、易切断性に劣るものであり、また積層フィルムの剥離強度は低いものであった。また比較例3の積層フィルムは、結晶性ポリエステル(A)の厚み比率が高いため、さらに比較例4の積層フィルムは、結晶性ポリエステル(B)の融点が結晶性ポリエステル(A)の融点より25℃以上低くないので、熱固定工程において結晶融解が生じず、結晶化指数Qが高くなったため、それぞれのフィルムは引張強度が高く、易切断性に劣るものであった。比較例5の積層フィルムは結晶性ポリエステル(B)の固有粘度が低いために、ドローダウンにより未延伸フィルムの製膜が困難であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明のごとく、融点の異なる二種のポリエステルを積層した二軸延伸フィルムにおいて、各樹脂の層厚みの比率、固有粘度を特定の範囲に限定することにより、積層フィルムの層間剥離強度が改善され、従来の技術に比して易切断性に優れ、かつ溶融成形が容易な積層ポリエステルフィルムを得ることができる。その結果、手切れ性のみならず開封時のカットラインの安定性にすぐれ、かつ加工性のバランスに優れたポリエステルフィルムを得ることができる。本発明の方法によれば、食品をはじめとする、医薬品、日用品、コスメティックスなどの包装材料や粘着テープとして有用な手切れ性に優れたフィルムを工業的かつ容易に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】示差走査型熱量計によって観察される結晶融解熱量(ΔHmB)と結晶化熱量(ΔHcB)を示す図である。

Claims (3)

  1. 下記(1)(3)を満たす結晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)とからそれぞれ構成されたフィルム層を少なくとも一層ずつ有する積層フィルムであって、積層フィルムが下記(4)(5)を満たすことを特徴とする易切断性に優れた積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
    (1)結晶性ポリエステル(B)の融点が、結晶性ポリエステル(A)の融点より25℃以上低い。
    (2)結晶性ポリエステル(A)の固有粘度が0.40〜0.47である。
    (3)結晶性ポリエステル(B)の固有粘度が0.60〜0.90である。
    (4)結晶性ポリエステル(A)層の厚み割合が全厚みに対し10〜50%である。
    (5)結晶性ポリエステル(B)層の結晶化指数Qが0.2以下である。
  2. 結晶性ポリエステル(A)層と結晶性ポリエステル(B)層の層間剥離強度が1.0N/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. 積層フィルムの厚みが8〜30μmであり、かつ積層フィルムの引張強度が20〜120MPaであること特徴とする請求項1または2に記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
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