JP4716636B2 - 複合半導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合半導体と、それを用いた光電変換素子に関する。さらにはその素子を用いた光化学電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、二酸化炭素発生量の増加や化石燃料の燃焼による地球温暖化などの環境エネルギー問題が深刻化する中で、その対策として、無限でかつ有害物質を発生しない太陽エネルギーを効率よくエネルギー源として取り出す技術の開発がさかんに行われている。中でも、コストの高い従来のp−n型シリコン太陽電池に変わって、効率とコストの両方の面で優れた光化学電池が注目を集めている。
【0003】
光化学電池の中でも、Michael Gratzelらによって公知化された(Nature 1991,353,737−740)色素増感型湿式太陽電池は、極めて低コストかつ高効率であり、この公知化以降、多くの研究がなされてきた。
色素増感型湿式太陽電池は、ガラスやポリマーといった支持体上に優れた導電性と透明性を兼ね備えた酸化インジウム系膜(ITO)やフッ素などをドープした酸化スズ系膜(FTO)がコーティングした基板(導電性支持体)上に、さらに、安価な材料である数十ナノメートルサイズの酸化チタンの多孔質構造の膜をn型酸化物半導体として積層した光電変換素子を陰極とし、同様の基板上に主に白金の薄膜を積層した陽極を用いて、主にヨウ素などの酸化還元イオンを含んだ電解液を介して陰極と陽極を配置した構造が一般的である。
【0004】
そして、陰極には太陽光の可視領域の波長の光を吸収し励起電子を発生させるために、錯体色素に代表される光増感剤が担持されていることが多い。
光増感剤から発生した励起電子は、n型酸化物半導体に移動し、更に両電極を接続する導線を通って陽極へ移動する。陽極へ移動した電子は、電解液を還元し、電解液は電子を放出して酸化状態となった光増感剤を還元する。こうした一連の流れを繰り返すことで、色素増感型湿式太陽電池は機能する。
このような色素増感型湿式太陽電池のような光化学電池では、半導体に移動した励起電子が、導電性支持体へと移動する過程において、酸化状態にある光増感剤と再結合したり、酸化状態にある電解液の酸化還元イオンと再結合し、電圧が低下することによって電池の光電変換性能が低下するという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、Kirthi Tennakoneらは酸化スズ(コア)に、数ナノメートル厚の酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウムの絶縁性化合物を被覆(シェル)した、いわゆるコア−シェル型のn型酸化物半導体を用いた光電変換素子とすることによって、酸化スズ微粒子からなる光電変換素子の性能を改善することを示した(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.40.2001,353,pp.L732−734)(J.Phys.D:Appl.Phys.34.2001,868−873)。しかしながら、この技術においては、電圧は650mV程度にとどまり、十分な電圧が得られたとはいえない。
【0006】
また、特開2000−113913号公報や、特開2001−155791号公報には、酸化物半導体をコア、酸化チタンをシェルに用いたコア−シェル型の酸化物微粒子を半導体とすることが開示されている。
これらの技術はシェル部の抵抗がコア部の抵抗より高いために、あるいは、シェル部の伝導帯準位がコア部の伝導帯準位より高いために、コア部に注入された電子がシェル部の保護によって酸化状態にある光増感剤や酸化状態にある電解質内の酸化還元イオンと再結合する確率を低くすることを目的にしたものである。しかしながら、酸化チタンをシェルに用いるため、製造が容易でないといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のn型半導体が積層されてなる光電変換素子に比べ、容易に製造できかつ高い開放電圧(Voc)が得られる複合半導体の提供と、それを用いた光電変換素子および光化学電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、結晶性n型半導体をコアとし、該コアの表面が金属炭酸塩、金属酸化物またはチタン酸金属塩のいずれか1種以上からなるシェルで被覆された複合半導体を用いることにより、高い開放電圧(Voc)と、更には高い曲線因子(F.F.)を有する光電変換素子を得られることを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)結晶性酸化チタンからなる結晶性n型半導体の表面を、カルシウムの炭酸塩で被覆してなる複合半導体と、光増感剤と、を含有する半導体膜が導電性支持体上に積層されてなることを特徴とする光化学電池用光電変換素子
に関する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の複合半導体についての詳細を説明する。
本発明の複合半導体は、結晶性n型半導体をコアとし、該コアの表面が金属炭酸塩、金属酸化物およびチタン酸金属塩のいずれか1種以上で被覆されたシェアからなることを特徴とする。
本発明は上記のごとく特定の材料をシェルに用いることで酸化状態にある光増感剤や酸化状態にある電解質内の酸化還元イオンと再結合する確率が大きく低減でき、その結果、高い開放電圧(Voc)が得られる。さらには高い曲線因子(F.F.)も得られることを達成したものである。
【0012】
本発明の複合半導体は、コア部として結晶性のn型半導体の一次粒子の表面を特定の材料で被覆したシェル部からなる微粒子構造であるか、または、コア部を構成する結晶性のn型半導体の粒子を予め焼結一体化した焼結体の表面を特定の材料で被覆したシェル部からなる構造であってもかまわず、また、これらを組み合わせた構造であってもかまわない。
尚、本発明の複合半導体のコアに用いられる結晶性n型半導体の好ましい粒子サイズは、一次粒子径が1〜5000nm、より好ましくは2〜100nm、さらに好ましくは2〜50nmである。即ち、一次粒子径5000nmより大きい場合は、半導体の膜の光透過性が低下して入射した光を有効に使えない場合があるためであり、また、一次粒子径が1nmに満たないような場合は、半導体粒子の電子伝導度が低下して発生した励起電子を後述する導電性支持体に移送する際のロスが大きくなる場合があるからである。
【0013】
本発明の複合半導体は後述する導電性支持体上に膜の一部として積層されて光電変換素子となるものであり、複合半導体が微粒子構造の場合は微粒子を焼結した膜構造をとるため多孔質構造を有している。また、結晶性のn型半導体の粒子を予め焼結一体化した膜構造とした後、表面を特定の材料で被覆した場合であっても多孔質構造を有している。従って、本発明の光電変換素子を構成する複合半導体の膜は電解質との接触面積が大きくなり、また、光増感剤担持して用いる場合はその担持量が増え、光電変換性能が高くなるばかりか、シェル部の存在による酸化状態にある光増感剤や酸化状態にある電解質内の酸化還元イオンと再結合確率の低減効果がより顕著になる。
【0014】
尚、本発明において、多孔質構造とは、例えば窒素ガスを用いたBET表面積測定によって得られた質量あたりの表面積から算出される表面積の増大がその粒子が存在する面を平面に投影した面積の5倍以上のものをいう。
本発明では、結晶性のn型半導体の粒子を予め焼結一体化したコア部としての焼結体の表面を特定の材料で被覆してシェル部とした場合が、電子伝導能力に優れるといった観点から、好ましく用いられる場合がある。
【0015】
本発明の複合半導体のコア部に用いられる結晶性n型半導体は、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化バナジウムなどの各種酸化物半導体や、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどの各種複合酸化物半導体や、カドミウム、ビスマスの硫化物や、カドミウムのセレン化物及びテルル化物や、ガリウムのリン化物や、ガリウムのヒ素化物などの結晶性を持ったn型半導体のことであり、これらを組み合わせて用いることもできる。
これらの中で、焼結のしやすさや光電変換能力の高さなどの観点から、結晶性酸化チタンが好ましい。
【0016】
結晶性n型半導体として結晶性酸化チタンを用いる場合は、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブル−カイト型酸化チタンのいずれか、または上記酸化チタンが2種以上混合したものであってもかまわないが、上記酸化チタンが2種以上混合するものである場合、その比率は特に限定はないが、アナターゼ型酸化チタンが50質量%以上であることが好ましい。
【0017】
尚、本発明においてアナターゼ型酸化チタンは、(101)(200)(004)の各結晶面のピーク強度比がX線回折で、約100:35:20の強度比で観測される結晶性の酸化チタンのことであり、ルチル型酸化チタンは、(110)(211)(101)の各結晶面のピーク強度比がX線回折で、約100:60:50の強度比で観測される結晶性の酸化チタンのことであり、ブル−カイト型酸化チタンは、(120)(121)(111)の各結晶面のピーク強度比がX線回折で、約100:90:80の強度比で観測される結晶性の酸化チタンのことである。
【0018】
本発明で用いる結晶性酸化チタンの結晶性の程度は、X線回折で上記のようなピークが観測されれば特に限定はないが、高い方が好ましい。半導体膜の光電変換性能は、膜を構成している半導体粒子の結晶性に起因する部分も大きく、結晶性が高いほうが電子伝導性に優れるなどの高活性を示すからである。
【0019】
以下に本発明の結晶性酸化チタンの結晶性の程度をアナターゼ型酸化チタンを例にして述べる。
結晶性酸化チタンがアナターゼ型酸化チタンの場合には、メインピークである(101)面のX線回折ピークの半価幅が、好ましくは1.3°以下、より好ましくは0.75°以下、最も好ましくは0.30°以下である。これらのX線回折測定は、例えば粉末X線回折装置を用いて行われ、その線源としてはCu Kα線が使用される。
アナターゼ型以外の型の酸化チタンも半価幅から結晶性の程度を同様に示すことが可能である。
尚、このような、高い結晶性を有する半導体は、後述する焼結工程とは別に予め半導体を焼成することによって得ることも可能である。
【0020】
次に本発明の複合半導体のシェル部を構成する材料について説明する。
本発明の複合半導体のシェル部を形成する材料は、金属炭酸塩、金属酸化物およびチタン酸金属塩のいずれかであり、これらを組み合わせて使用することもできる。本発明では、これらの特定の材料からなるシェルの存在により、高い電圧と高い曲線因子を達成するものである。
【0021】
本発明において金属炭酸塩とは、金属元素の炭酸塩であれば特に限定はなく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、炭酸マンガンなどの遷移金属炭酸塩、炭酸ランタン、炭酸イッテルビウム、炭酸セリウムなどのランタノイド炭酸塩などが例示できる。
【0022】
本発明において金属酸化物とは、金属元素の酸化物であれば特に限定はなく、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガンなどの遷移金属酸化物、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化イッテルビウムなどのランタノイド酸化物などが例示できる。
【0023】
本発明においてチタン酸金属塩とは、金属元素のチタン酸塩であれば特に限定はなく、チタン酸ナトリウムに代表されるチタン酸アルカリ金属塩、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸アルカリ土類金属塩、チタン酸鉛、チタン酸ネオジム、チタン酸カドミウムなどが例示できる。
これらのなかで、金属炭酸塩、金属酸化物、チタン酸金属塩を形成する金属がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのアルカリ土類金属類またはリチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属であることがより高い電圧が得られるため好ましい。なお、いずれの材料に関しても、結晶性または非結晶性の限定はない。
【0024】
本発明においてシェルを形成する材料は、その抵抗値が、好ましくはコア部を形成する結晶性n型半導体の抵抗値よりも大きいものがよい。また、シェルがチタン酸アルカリ土類金属塩のようなn型半導体の場合はコア部の結晶性n型半導体内の電子の流出防止や、より高い開放電圧値の発現を可能にするために、シェルの伝導帯準位は、コアの結晶性n型半導体のそれよりも高いものが好ましい。とりわけ、コア部が酸化チタンの場合は、シェルを形成するn型半導体としてはチタン酸アルカリ土類金属塩が伝導帯準位の高さ及び製造の容易さの観点から好ましく、更に好ましくはチタン酸カルシウムである。
【0025】
本発明において複合半導体のシェル部は、コア部を完全に被覆していても部分的に被覆していてもかまわないが、その厚さは、シェル部の厚さの平均値として求められる。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、直接観察するか、或いは、測定深さが一般的に5nm以下であるX線光電子分光法(XPS)を用いて、コアを構成するn型半導体の特定の元素(例えば、コアを構成するn型半導体が酸化チタンの場合はチタン)とシェルを形成する材料の特定の元素(例えば、炭酸カルシウムの場合はカルシウム)の原子数比と、後述の方法で求めたシェルの組成から分かるシェルの比重を用いて算出することもできる。なお、この原子数比を求めるために選択される特定の元素は、分析の容易さ(ピークの重なりが少ないこと、ピークの強度が強いこと、好ましくはコア/シェルのいずれか片方のみに存在すること)によって適宜選択される。
【0026】
また、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)のような装置を用いエッチングしながら組成分布を求め、その組成の変化が顕在化するまでのエッチング厚みを用いてシェル厚みを求めることもできる。
更に簡易的には、シェル部、コア部の材料の比重とその原料の使用量、及びコア粒子の平均粒径から算出することも可能である。
シェルの厚さは、電圧の向上が達成される限りにおいて特に限定はないが、好ましくは、0.1nm以上、より好ましくは0.4nm以上である。0.1nmより薄いと電圧向上効果が不十分な場合があり、0.4nm以上で電圧向上効果がより顕著になるためである。一方、上限に関しては、用いられたコア粒子の半径を超えない範囲が好ましく用いられるが、好ましくは5nm未満、より好ましくは3nm未満である。
【0027】
なお、シェル部の厚みが0.4nmに満たないような薄い領域の場合、その組成をX線回折によって分析するのが困難になる場合があるが、そのような場合は、同様な操作で形成された複合半導体とそのコア部からなる半導体をXPSを用いて測定し、それらの差によって、本発明のシェル部が形成されているか否か判定することができる。また、簡易的には0.4nm以上のシェルを形成してX線回折装置などを用いて分析し、シェルの構造が特定されている場合と同様の原料及び操作を用い、シェル形成材料の添加量によってその厚みを制御した場合には、その材料は、0.4nm以上で形成されたシェルの構造と同様の構造を有すると判定することもできる。
【0028】
次いで、本発明における光電変換素子を構成する複合半導体を含有する半導体膜について説明する。
本発明の光電変換素子は、図1に示すように、透明性基板1と透明導電膜4とからなる導電性支持体の、透明導電膜4上に本発明の複合半導体を含有する半導体膜2が積層されたものである。
本発明の半導体膜は、本発明の複合半導体を半導体膜全体に対して、1質量%以上含有する。複合半導体の半導体膜全体に対する質量分率は、電圧向上の効果がより顕著になるため、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上である。上限に関しては、特に限定する必要はないが、後述のように半導体膜に光増感剤を含んでなることが好ましいため、その上限は、好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98%以下、最も好ましくは96%以下である。
尚、本発明の半導体膜には、本発明の複合半導体と光増感剤のみからなる半導体膜も含まれる。
【0029】
本発明の半導体膜には、本発明の複合半導体以外にも種々の半導体の添加が可能である。具体的には、アモルファス酸化チタン、アナターゼ型低結晶性を有する過酸化チタン、アナターゼ型低結晶性酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルーカイト型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化バナジウムなどの各種酸化物半導体や、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどの各種複合酸化物半導体や、カドミウム、ビスマスの硫化物や、カドミウムのセレン化物及びテルル化物や、ガリウムのリン化物や、ガリウムのヒ素化物などの半導体などが挙げられる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0030】
本発明の半導体膜には上記の半導体以外に、必要に応じて、光電変換素子の性能を落とさない程度の量の、アセチルアセトンなどの有機物バインダー、金属過酸化物(例えば過酸化チタン、過酸化スズ、過酸化ニオブ等)や金属アルコキシドなどの無機物バインダー、硝酸、硫酸といった無機物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セルロース及びその変性体などの高分子化合物、ノニオン系、アニオン系、カチオン系やシリコーン系などの各種界面活性剤類、キレート補助剤類を加えることも可能である。
【0031】
本発明の半導体膜は、可視光領域の光をより効率的に吸収し、高い光電変換性能を得ることを目的として光増感剤を含んでなることが好ましい。
本発明の光増感剤は、光を吸収する能力があれば特に限定はないが、光化学電池として使用する場合、太陽光の波長域の吸収特性が良好のものが好ましく、可視光を吸収するものがより好ましい。尚、ここで言う可視光は波長が約400nm〜約800nmの範囲のものを示す。
具体的には、色素や金属微粒子などがあげられるが、好ましくは入射光を吸収して励起状態とし内部にホールと電子の対を形成する色素がよい。
また、半導体の伝導帯準位以上に色素のLUMO準位が位置することが望ましい。それによって半導体膜により効率的に電子を注入することができるからである。
【0032】
本発明の光増感剤に用いる色素を半導体膜に担持する場合、その結合形態は特に限定はないが、好ましくは半導体膜中でキレート結合やエステル結合のような化学結合しているのが望ましい。そのため分子中にカルボキシル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルフォン酸基、リン酸基などの反応性官能基を有するものが好ましい。色素は、金属錯体と有機分子どちらも可能であるが、好ましくは耐光性や分光増感の効果に優れている金属錯体がよい。
【0033】
金属錯体としては、中心金属は、例えばルテニウム、オスミウム、鉄、銅、ニッケル、コバルト、パラジウムなどが挙げられ、配位子は、π共役系を含むものが好ましく、例えばビピリジン誘導体、ターピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリン誘導体などが挙げられる。さらに、上記記載の配位子に加えて、チオシアン酸基、シアン基、クロロ基、ブロモ基などを配位させたものが良い。また、単核錯体に限らず、多角錯体でもよい。上記以外にも、フタロシアニン系錯体、ポルフィリン系錯体なども挙げられる。
【0034】
有機分子としては、例えばローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン等のキサンテン系色素、キノシアニン、クリプトシアニン等のシアニン系色素、フェノサフラニン、チオシン、メチレンブルー等の塩基性染料、アントラキノン系色素、多環キノン系色素等を用いることができる。
尚、光増感剤は上記のものを単一で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもかまわない。
【0035】
本発明においては、光増感剤としての色素の担持量は、紫外−可視吸光スペクトル測定によって色素の吸光度から色素量を換算して求める。また、半導体膜に必要に応じて添加した本発明の複合半導体以外の半導体が混合している時は、これらにも光増感剤は吸着可能である。その際には、半導体膜に混在する全ての物質に吸着した全ての光増感剤を本発明における光増感剤量とする。
光増感剤は、先述したような複合半導体に予め担持してもよく、複合半導体を含んでなる半導体膜を形成後に担持してもよく、半導体膜を焼結後に担持してもよい。更に、コア部のn型半導体の一次粒子、あるいはコア部の粒子を予め焼結した焼結体に光増感剤を担持させた後に、先述したシェル部の材料を被覆した形状をとってもよい。
【0036】
次に本発明の半導体膜を積層する導電性支持体を構成する透明性基板と透明導電膜について以下に説明する。
本発明で透明とは、光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、70%以上が特に好ましい。
本発明に用いる透明性基板としては、上記透明性を有するガラスや有機物などを用いることができ、特に限定はされない。
【0037】
具体的には、有機物の例としては、透明ポリマーフィルムが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などを用いることができる。
一方、透明導電膜としても上記透明性を有するものであれば良く、好ましいものには金属酸化物半導体が挙げられ、例えばITO(In―Sn―O化合物)やFTO(フッ素などがドープされた酸化スズ)、あるいは酸化亜鉛などが好適である。
【0038】
以下に、本発明の複合半導体および複合半導体を含有する半導体膜が導電性支持体上に積層してなる光電変換素子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の複合半導体は、コア部に用いる材料に予めシェル部に用いる材料を被覆して製造する場合とコア部に用いる材料を焼結一体化したものにシェル部に用いる材料を被覆して製造する方法の2法に大別できるが、シェル部に用いる材料の前駆体となる有機、無機の金属化合物を用いることもできる。
尚、コア部に用いる材料を焼結一体化したものにシェル部に用いる材料を被覆して製造する方法の場合は本発明の半導体膜を製造する過程で複合半導体を製造することが可能となる。
【0039】
以下の4通りの具体的製造方法を例示する。
第一の方法は、複合半導体の粒子を作製する工程、該複合半導体の粒子を含む分散液を作製する工程、該分散液を導電性支持体上に塗布する塗布工程、それに引き続く焼結工程を経て導電性支持体上に半導体膜を形成し、さらに所望により光増感剤を該半導体膜内に吸着させる吸着工程の順によって光電変換素子を製造する方法である。
【0040】
第二の方法は、予め粒子状の複合半導体を作製せずに、該複合半導体のコア部材料とシェル部材料またはその前駆体を含む分散液を作製する工程、該分散液を導電性支持体上に塗布する塗布工程、それに引き続く焼結工程(この工程で複合半導体が形成すると同時に半導体膜が形成される)、さらに所望により光増感剤を該半導体膜内に吸着させる吸着工程の順によって光電変換素子を製造する方法である。
【0041】
第三の方法は、予め粒子状の複合半導体を作製せずに、該複合半導体のコア部材料を含む分散液を作製する工程、該分散液を導電性支持体上に塗布する塗布工程、所望によりそれに引き続く乾燥又は焼結工程、次いでシェル部材料またはその前駆体の溶液または分散液に浸漬するかシェル部材料またはその前駆体の溶液または分散液を塗設するなどの方法でシェル部材料又はその前駆体を付着させ、所望により再度焼結する工程(この工程で複合半導体が形成すると同時に半導体膜が形成される)、さらに所望により光増感剤を該半導体膜内に吸着させる吸着工程の順によって光電変換素子を製造する方法である。
【0042】
第四の方法は、予め粒子状の複合半導体を作製せずに、該複合半導体のコア部材料を含む分散液を作製する工程、該分散液を導電性支持体上に塗布する塗布工程、所望によりそれに引き続く乾燥又は焼結工程、次いで所望により光増感剤を該膜内に吸着させる吸着工程、次いでシェル部材料またはその前駆体の溶液または分散液に浸漬するかシェル部材料またはその前駆体の溶液または分散液を塗設するなどの方法でシェル部材料又はその前駆体を付着させ、所望により再度焼結する工程(この工程で複合半導体が形成すると同時に半導体膜も形成される)の順によって光電変換素子を製造する方法である。
【0043】
上記記載のシェル部材料の前駆体には、好ましくは有機金属化合物や無機金属化合物が用いられる。
上記方法のうち、第二から第四の方法で行う場合で、かつ、シェル部にチタン酸金属塩を作製する場合には、シェル部材料をそのまま用いる方法ならば上記記述以外に特に制限はないが、シェル部材料をその前駆体から、焼結工程で形成して目的の複合半導体を作製する場合には、焼結の容易さなどの観点からコア部は結晶性酸化チタンが好ましい。
これらのなかで、本発明の複合半導体を光電変換素子に用いた場合に電子伝導能力が優れると言った観点から、第三および第四の方法が好ましく用いられる場合がある。
また、製造の容易さの観点からは、第二の方法が好ましく用いられる場合がある。
【0044】
以下に上記各工程条件について詳説する。
先ず、分散液を作製する工程について説明する。
本発明において、複合半導体、コア部材料或いはシェル部材料またはその前駆体を含む分散液の媒体は、室温下において液状を保持できれば特に制限はなく、例えば水や、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどといったアルコール系有機溶媒や、アセトン、アセトニトリル、プロピオ二トリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどといった親水性有機溶媒や、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエンなどといった疎水性有機溶媒及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0045】
さらに、複合半導体またはコア部材料の分散性を高めたり、粘度を調整するといった目的で、アセチルアセトンなどの有機物バインダー、金属過酸化物(例えば過酸化チタン、過酸化スズ、過酸化ニオブ等)や金属アルコキシドなどの無機物バインダー、硝酸、硫酸といった無機物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セルロース及びその変性体などの高分子化合物、ノニオン系、アニオン系、カチオン系やシリコーン系などの各種界面活性剤類、キレート補助剤類を添加して用いることもできる。
【0046】
また、分散液内の混合性をよくするために、本発明に用いる複合半導体やコア材料の結晶性n型半導体は予め以下に記す処理しておくことも可能である。例えば、結晶性n型半導体として結晶性酸化チタンを用いた場合、硝酸加熱処理を数時間施すことで、媒体に高い分散性をもつ粉末を得ることができる。
分散液の固型分質量濃度は、特に限定は無く、塗布のしやすさ、乾燥の速さなどによって適宜選択されるが、好ましくは10〜50%で、さらに好ましくは15〜40%である。
【0047】
分散液を作製する際の混合条件は特に限定されないが、より微分散をさせることを目的として、ペイントシェーカー、ボールミル、ホモジナイザーといった混合攪拌機や超音波ホモジナイザーなどを使用できる。また、分散される粒子を予め乳鉢などによって、十分に粉砕しておくことも有効な手段である。
コア材料の結晶性n型半導体と、シェル材料の前駆体である有機金属化合物や無機金属化合物を混合する場合は、それぞれを独立に或いは混合後に上記の条件下で分散することができる。独立に分散した場合は、必要に応じて、分散後に混ぜ合わせて使用できる。
シェル部材料の前駆体を溶液で供給する場合は、後述の前駆体が溶解する媒体を用いて行われる。具体的には、上記分散液と同様の媒体が使用できる。
【0048】
複合半導体のシェル部には、金属炭酸塩、金属酸化物およびチタン酸金属塩のいずれかを用いるが、先述したように、これらの材料を直接用いても良いし、これらの材料の前駆体である有機金属化合物や無機金属化合物を用いても良い。シェル部材料を前駆体で供給する場合の有機金属化合物および無機金属化合物は、後の焼結工程において、シェル部を形成する目的の材料に変化するものであれば特に限定はないが、具体的には、有機金属化合物としては酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩の有機金属塩や金属アルコキシドなどの低分子有機金属化合物類、ポリアクリル酸金属塩に代表される高分子有機金属化合物類が例示でき、無機金属化合物としては硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩、リン酸塩、珪酸塩などが例示できる。また、これらの材料を組み合わせて用いることもできる。
これらの中で、有機金属化合物は、その有機物が半導体膜に残存しにくいといった観点から低分子有機金属化合物類が好ましく、最も好ましくはシュウ酸塩である。また、無機金属化合物は、残留物の残存のしやすさや焼結などによって過熱された際に発生するガスの安全性といった観点から硝酸塩が好ましい。
【0049】
次に塗布工程について説明する。
本発明のおいて塗布の方法は特に限定されず、導電性支持体上に半導体膜を形成できれば良いが、具体的には、スクリーン印刷法、スピンコーター法、ディップコーター法、ドクターブレード法、ワイヤーバーによる塗布法などが例示できる。
塗布後は、必要であれば室温にて乾燥させる工程を施してもよい。また塗布作業を数回に分けて重ね塗りする場合は、一回の塗布ごとに上記記述の乾燥工程を行う方が好ましい。また、下記に述べる焼結工程のみを行うことで、上記記載の乾燥工程をかねてもよい。
【0050】
次に焼結工程について説明する。
本発明において焼結温度は、用いる半導体の種類、シェルの種類、必要な焼結程度や用いる導電性支持体の耐熱性によって異なり、目的に応じて適宜選択される。一般には、焼結温度が高い方が、短時間で粒子同士を接合することができ、粒子間のより高い導電性が得られやすいため好ましいが、物質によっては結晶相転移を起こして光電変換性能を落とす場合がある。
また、導電性支持体の種類も焼結温度を決定するにあたり重要である。即ち、導電性支持体は、透明性基板と透明導電膜から構成され、それぞれに耐熱温度がある。
【0051】
例えば、透明性基板にポリマーフィルムなどの融点や軟化点の低い有機物を用い、透明導電膜にITOを用いた時は、ポリマーフィルムの耐熱温度より低い焼結温度とすればよく、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下がよい。一方、透明性基板にガラスを用い、透明導電膜にFTOを用いた時は、ガラスの耐熱温度より低い焼結温度とすることが必要で、好ましくは600℃以下がよい。焼結時間は、好ましくは10分以上1時間以下、より好ましくは20分以上1時間以下である。
【0052】
焼結時の雰囲気ガスに関しては特に限定は無く、目的に応じ、適宜選択される。具体的には、窒素、アルゴンといった不活性ガス雰囲気、水素に代表される還元雰囲気、窒素と酸素の混合ガス雰囲気、大気、炭酸ガス、酸素などを使用できる。これらの中で、とりわけシェル部材料をその前駆体で供給して焼結時にシェル部材料を形成するような工程においては、大気や、窒素と酸素の混合ガス雰囲気が好適に使用される。この場合の窒素と酸素の混合比率は、目的の構造体を得るために適宜選択できる。
【0053】
以上の条件で形成された焼結後の半導体膜の厚さは、好ましくは0.5μm以上50μm以下、より好ましくは1.0μm以上30μm以下である。0.5μmより薄い厚さでは前記の光増感剤を充分に吸着させることができず、エネルギー変換効率を高めることはできない。一方、50μmより厚くなると、半導体膜そのものの機械的強度が低下し導電性支持体から剥がれやすくなると同時に光透過性が低下し、光増感剤まで十分な光が到達しなくなる不具合が生じる。また、半導体膜内の電子移動経路が長くなり、内部抵抗が増加しエネルギー変換効率が低下する恐れがある。
【0054】
次に、光増感剤を半導体膜内に担持させる吸着工程について説明する。
ここでは、光増感剤として色素を用いた場合について詳細を示すが、半導体膜内の複合半導体、および必要に応じて添加したその他の物質に光増感剤を安定に吸着させることができれば吸着工程に特に制限はない。
【0055】
以下に、光増感剤としての色素を溶解した溶液に光電変換素子を接触することで吸着させることを例に吸着工程を説明する。
色素を溶解する溶媒は有機溶媒なら特に限定はないが、好ましくはエタノール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられる。色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類によって適宜調整することができるが、例えば1×10-5mol/l以上、さらに5×10-5mol/l〜1×10-2mol/l程度が好ましい。
吸着は、上記色素溶媒に半導体膜を数時間から数日間浸漬させる方法でも良いし、上記色素溶媒に半導体膜を入れた状態で50℃〜150℃(溶媒によっては還流状態)での吸着を10分以上数時間以下程度で行うこともできる。以上、どちらの方法でも可能であるが、後者の方がより好ましい。吸着後は、膜表面を非プロトン性又は疎水性溶媒で洗うことが好ましい。
【0056】
次に、上記のようにして製造した光電変換素子を、光化学電池に用いる方法について説明する。
本発明の光電変換素子を用いた光化学電池の構造を図1に示すとともに以下に図1に基づいて説明する。
透明性基板1と透明導電膜4からなる導電性支持体の透明導電膜4の上、本発明の複合半導体を含んでなる半導体膜2が積層されてなる光電変換素子が陰極となる。半導体膜2には、所望により光増感剤が担持されている。この光電変換素子の半導体膜2側は、電解質層3を介して、正極として働く透明性基板6で支持された対向電極5が対向している。
【0057】
以下、電解質層3と対向電極5について詳しく解説する。
電解質層3は光増感剤や半導体に電子を補充する機能を有する層である。
代表的な例としては酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩または無機あるいは有機の固体電解質などが挙げられる。また、ホール輸送能力をもつ有機ポリマーや、CuIやCuNCSといったp型半導体を用いても上記記載内容と同様な働きをすることが可能である。
【0058】
酸化還元対としては例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)の組み合わせ、臭素と臭化物の組み合わせ、アルキルビオローゲンとその還元体の組み合わせなどが挙げられる。また、キノン/ハイドロキノン、鉄(II)イオン/鉄(III)イオン、銅(I)イオン/銅(II)イオンなども可能である。
さらに、電解質溶液の電気伝導度を上げる目的で、電解質溶液中に支持電解質を加えてもよい。支持電解質としては、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム等を挙げることができる。これらを溶かす有機溶媒には、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトシキプロピオニトリル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。酸化還元対は電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要であり、望ましい濃度は0.01mol/l以上であり、より好ましくは0.3mol/l以上である。
【0059】
対向電極5としてはその導電性などの観点から白金、パラジウム、金、銀などの貴金属材料あるいは銅やアルミニウムなどの金属材料を用いることが可能である。また、カーボンでも可能である。
電解質層との接触の際の安定性や触媒効果などを考慮すると、好ましくは白金がよい。また、光透過性までを考慮すると、前述の透明導電性材料も選択可能であり、ITOやFTOなどの透明導電膜も利用できる。
【0060】
また、対向電極5を支持している透明性基板6に関しては、透明性基板1に同じ材料で可能である。
尚、本発明では対向電極に金属材料を用いた場合、透明性基板との間に陰極のように透明導電膜4を必要に応じて用いてかまわない。
光化学電池の組み立て方としては、公知の方法によって行う。あらかじめ作製した陰極と陽極を前もって固定してから、電解質を注入しても良いし、どちらかの電極上に電解質を滴下した後、その上から対極を重ねて電池としても良い。その際、両電極間にフィルム状や粒子状のスペーサーを介在させていてもよい。
【0061】
光化学電池では電解質層などの構成物の蒸発を防ぐために、公知の方法によって、電池セルの側面をパラフィンなどのポリマーやエポキシ系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの接着剤で密封することが好ましい。また、透明性基板1または6が融点、軟化点が低いポリマーフィルムの場合は融着させ密封することも可能である。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の光電変換素子および光化学電池の作製方法について実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本実施例における複合半導体のコアおよびシェルの組成同定は、RINT−2500(理学電気(株)製)を用い、測定条件は、線源がCu Kα線、走査軸が2θ/θ、ステップ間隔が0.02°、スキャンスピードが4.0°/min、加速電圧が40kV、加速電流が200mAで行い、得られた結果を、JCPDSカードを基に帰属して求めた。なお、測定の際に使用したスリットは、発散スリットが1°、散乱スリットが1°、受光スリットが0.15mmであり、検出器の前にグラファイトモノクロメーターを装着した。
【0063】
本実施例における色素吸着量は以下のように導いた。MPC2200(島津製作所(株)製)を用い、測定条件は、波長300nm〜800nmにおける透過モードで行い、色素の吸光度から色素量を換算した。
本実施例における光化学電池セルの性能は以下のように測定した。ソーラーシミュレーター(ワコム電創(株)製)によって、約100mW/cm2である擬似太陽光をセルに照射し、I−Vカーブトレーサー(英弘精機(株)製)によって、開放電圧値(Voc)、曲線因子(F.F.)を求めた。セル測定面積は、1cm2である。
【0064】
また、本実施例に用いた結晶性酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製 P−25)は、RINT−2500(理学電気(株)製)を用いてCu Kα線による粉末X線回折測定を行ったところ、結晶性の高いアナターゼ型とルチル型の混合物のピーク波形を示し、その割合はアナターゼ:ルチル=約8:2で、アナターゼ型のメインピークの(101)面のX線回折ピークの半価幅は約0.40°であった。
本実施例におけるシェルの厚みは、シェル前駆体材料中の金属元素量が同定されたシェル材料に全て変化したことを前提とし、その比重とコア半導体の比重及びコア半導体の平均粒径を用いて算出した。
【0065】
【実施例1】
(1)半導体膜用の分散液の作製
結晶性酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製 P−25)6gと、水120gと、硝酸1.49gをまぜた後、80℃で約8時間の加熱処理を施した。放冷後、エバポレーターにより水分を全て留去し粉末状にし、乳鉢でよく粉砕した。n型半導体として上記記述の方法によって得られた結晶性酸化チタン微粒子1gと、水3.68gと、シェル前駆体としてシュウ酸カルシウム・1水和物0.21gをよくまぜ、超音波ホモジナイザーを用いて約10分間分散した。分散後、1.7質量%過酸化チタン水溶液(田中転写(株)製)1gと、Triton−X100(Aldrich社製)0.06gをゆっくりと加え撹拌した。
【0066】
(2)光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製
フッ素をドープした酸化スズ(FTO:シート抵抗約8Ω/□)をコーティングした透明導電性ガラスの導電面側にワイヤーバー(ワイヤー巻線部300m/m、芯径12.5m/m、巻線径1.0m/m)を用いて(1)の分散液を塗布した。塗布後室温にて約1時間風乾した。この透明導電性ガラスに塗布した半導体膜を電気炉に入れ約30分間の焼結を500℃の温度で行った。焼結後の膜厚は約8μm程度であった。得られた半導体膜の粉末X線回折測定を行ったところ、複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している炭酸カルシウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、1.1nmと算出された。
次にシス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’―ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II)のビス−テトラブチルアンモニウム塩で表される分光増感色素のエタノール溶液(3×10-4mol/l)中で約45分間還流し、半導体膜内に上記色素を吸着させた。還流後はアセトニトリルで膜表面を軽く洗った。上記色素の吸着量は5.5×10-8mol/cm2であった。
【0067】
(3)光化学電池の作製
対極には、スライドガラス上にスパッタにより膜厚約0.1μm白金膜を作製し、さらに塩化白金酸水溶液を数滴滴下し、乾燥、焼結(385℃、15分間)の工程を経て白金微粒子が蒸着した、白金電極を準備した。電解液(メトキシプロピオニトリルを溶媒としたヨウ素0.05mol/l 、ヨウ化リチウム0.1mol/l 、tert−ブチルピリジン0.5mol/l、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド0.6mol/lの溶液)を調整し、作製した半導体電極上に電解液を垂らし、その上から対極を重ねることで光化学電池を作製した。
【0068】
(4)セル性能の測定
光の強度が約100mW/cm2である擬似太陽光を、作製した光化学電池セルに照射することで、セル性能を測定した。Voc=0.76V、F.F.=0.56であった。
【0069】
【実施例2】
シュウ酸カルシウム・1水和物の添加量を0.50gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している炭酸カルシウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、2.4nmと算出された。また、色素吸着量は2.3×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.77V、F.F.=0.60であった。
【0070】
参考実施例3】
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、シュウ酸マグネシウム・2水和物0.50gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している酸化マグネシウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.60nmと算出された。また、色素吸着量は6.1×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.79V、F.F.=0.64であった。
【0071】
参考実施例4
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、シュウ酸ストロンチウム・1水和物0.13gに変更し、さらにTriton−X100の添加量を0.13gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している炭酸ストロンチウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.43nmと算出された。また、色素吸着量は6.6×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.79V、F.F.=0.60であった。
【0072】
参考実施例5
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、シュウ酸ストロンチウム・1水和物0.21gに変更し、さらにTriton−X100の添加量を0.06gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している炭酸ストロンチウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.67nmと算出された。また、色素吸着量は6.7×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.80V、F.F.=0.64であった。
【0073】
参考実施例6
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、硝酸マグネシウム・6水和物0.75gに変更し、さらにTriton−X100の添加量を0.26gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している酸化マグネシウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.52nmと算出された。また、色素吸着量は8.4×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.85V、F.F.=0.73であった。
【0074】
参考実施例7
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、硝酸カルシウム・4水和物0.30gに変更し、さらにTriton−X100の添加量を0.26gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成しているチタン酸カルシウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.65nmと算出された。また、色素吸着量は6.5×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.81V、F.F.=0.68であった。
【0075】
参考実施例8
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、硝酸ストロンチウム0.21gに変更し、さらにTriton−X100の添加量を0.26gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成しているチタン酸ストロンチウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.59nmと算出された。また、色素吸着量は5.9×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.80V、F.F.=0.65であった。
【0076】
参考実施例9
シュウ酸カルシウム・1水和物のかわりに、シュウ酸リチウム0.13gに変更し、さらにTriton−X100の添加量を0.13gに変更した以外は、実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中に複合半導体のコアを形成している結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)と、シェルを形成している炭酸リチウムに帰属されるピークが観測された。また、シェルの厚みは、0.70nmと算出された。また、色素吸着量は3.5×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.79V、F.F.=0.66であった。
【0077】
【比較例1】
シュウ酸カルシウム・1水和物の添加をせずに、あとは実施例1と同様にして半導体膜用の分散液を作製し、実施例1と同様にして、光電変換素子(複合半導体含有半導体電極)の作製、光化学電池の作製、セル性能の測定を行ったところ、半導体膜中の粉末X線回折測定では結晶性酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型の混合)のみが観測され、また、色素吸着量は4.7×10-8mol/cm2であった。セル性能は、Voc=0.67V、F.F.=0.46であった。
【0078】
【表1】
Figure 0004716636
【0079】
本発明の実施例および比較例を表にまとめる。シェル部の質量比(シェル/コア)は、シェル材料の前駆体が完全にシェル材料の組成に変化したとした時のシェル/コアの仕込み質量比とする。
【0080】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、結晶性n型半導体をコアとし、該コアの表面が金属炭酸塩、金属酸化物およびチタン酸金属塩のいずれかからなるシェルで被覆されたことを特徴とする複合半導体を含有する半導体膜からなる光電変換素子を光化学電池に用いることで、高い開放電圧(Voc)と高い曲線因子(F.F.)の発現が可能な電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に関わる光電変換素子および光化学電池の断面の模式図を示す。
【符号の説明】
1 透明性基板
2 半導体膜
3 電解質層
4 透明導電膜
5 対向電極
6 透明性基板

Claims (1)

  1. 結晶性酸化チタンからなる結晶性n型半導体の表面を、カルシウムの炭酸塩で被覆してなる複合半導体と、光増感剤と、を含有する半導体膜が導電性支持体上に積層されてなることを特徴とする光化学電池用光電変換素子。
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