以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例である無線アンテナシステムの構成図を示す。本実施例の無線アンテナシステムは、移動体としての車両に搭載された複数の無線受信装置10(図1には2つの無線受信装置10a,10bを示す。)を備えており、FM放送やAM放送,TV放送などの互いに異なる複数のメディアの放送波をそれぞれ独立して受信することが可能なシステムである。例えば、無線受信装置10aは76MHz〜90MHzのFM放送を受信する受信装置であり、無線受信装置10bは90MHZ〜770MHzのTV放送を受信する受信装置である。
図1に示す如く、各無線受信装置10はそれぞれ、信号を受信する受信アンテナ12を備えている。受信アンテナ12には、マッチング回路14が接続されている。マッチング回路14は、受信アンテナ12と後述の復調回路22との間に介在されている。マッチング回路14は、受信アンテナ12に受信された受信信号をマッチングする回路である。マッチング回路14は、図2(A)に示す如き比較的広帯域の帯域幅を有する周波数特性ではなく、図2(B)に示す如き比較的狭帯域の帯域幅を有する周波数特性を有している。マッチング回路14は、図1に示す如くインダクタンス(コイル)及びキャパシタンス(コンデンサ)が並列接続され又はT型或いはπ型に組み合わされて形成されたりしており、自己のメディアに対応してその回路定数(マッチング定数)を可変することが可能である。
各マッチング回路14には、制御線18を介して制御回路16が接続されている。制御回路16は、すべてのメディアに対応した複数のマッチング回路14に対して唯一つ設けられており、各マッチング回路14ごとに個別に、制御線18を通じたスイッチングによってそのマッチング定数を切り換えることにより或いはバラクタダイオードやRF−MEMS等への印加電圧を可変することにより、マッチング回路14のマッチング定数を可変する回路である。以下、制御回路16がマッチング回路14のマッチング定数を設定するうえで制御すべき値(例えば、バラクタダイオードやインダクタンスの切換スイッチ等を駆動させる電圧値等)を制御値と称す。
制御回路16には、メディアごとに選択されている受信チャンネルの情報がそれぞれ供給される。また、制御回路16には、メディアごとにかつその受信チャンネルごとにマッチング定数を設定するためのテーブル情報等を記憶・格納したメモリ20が接続されている。制御回路16は、メディアごとに、メモリ20に記憶されているテーブル情報を参照して、現に選択されている受信チャンネルに対応したマッチング定数を得るための制御値を設定し、その制御値を用いてマッチング回路14を制御する。
マッチング回路14には、また、復調回路22が接続されている。マッチング回路14でマッチングされた受信信号は、復調回路22に供給される。復調回路22は、マッチング回路14から出力された受信信号を復調する回路である。尚、この復調回路22による復調は、マッチング回路14から出力された受信信号を中間周波(IF)信号に周波数変換して得られるIF信号に対して行われるものであってもよい。復調回路22には、自メディアにおいて選択されている受信チャンネルの情報が供給される。復調回路22は、選択されている受信チャンネルに対応して、マッチング回路14から出力された受信信号を復調する。復調回路22で復調された受信信号は、例えばTV放送やFM放送,AM放送の映像信号や音声信号として出力される。
復調回路22には、検出回路24が接続されている。復調回路22で復調された受信信号は、検出回路24に供給される。検出回路24は、復調回路22で復調された受信信号の信号レベルやS/N比を検出することにより、受信アンテナ12に受信された受信信号の受信品質を求める回路である。尚、検出回路24は、受信アンテナ12に受信された受信信号の受信品質を検出する方法として、復調回路22で復調された受信信号を用いるが、かかる方法以外に、マッチング回路14でのRF受信信号の強度を検出すること、或いは、AGC(Automatic Gain Control;自動利得調整)機能による電圧値に基づいて信号強度を検出することにより、受信アンテナ12での受信信号の受信品質を検出することとしてもよい。
検出回路24の出力は、上記した制御回路16に供給される。制御回路16は、メディアごとに、検出回路24から供給される受信アンテナ12に受信された受信信号の受信品質に基づいて、マッチング回路14の制御を実行する。
次に、図3を用いて、本実施例の無線アンテナシステムにおける各受信装置10の動作について説明する。図3は、本実施例の無線アンテナシステムにおいて制御回路16が各無線受信装置10に対して自動マッチング処理時に実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
上記の如く、各無線受信装置10はそれぞれ、電源オン時に複数の受信チャンネルを有するFM放送やTV,AM放送などの一つのメディアの放送波を受信する装置であり、また、マッチング回路14は、図2(B)に示す如き比較的狭帯域の帯域幅を有する周波数特性を有している。従って、各無線受信装置10において、希望の受信チャンネルの放送波を受信するためには、それぞれのマッチング回路14の周波数特性をその希望受信チャンネルに合わせて変更することが必要である。
一方、すべての無線受信装置10は移動体である車両に搭載されるため、車両の移動或いは周辺物の移動により受信環境が時々刻々と変化し易く、そのため、希望受信チャンネルとマッチング回路14の周波数特性とが固定された関係のままにあると、希望受信チャンネルにおいてマッチング回路14による受信品質の良好なマッチングが行われず、最適なマッチング定数を選択できない不都合が生じ得る。
これに対して、本実施例の無線アンテナシステムにおいては、メモリ20に、メディアごとかつ受信チャンネルごとに最適なマッチング定数を得るために制御値(バラクタダイオードやインダクタンスの切換スイッチ等を駆動させる電圧値等)を可変してシークすべき周波数の範囲(以下、シーク範囲と称す)を特定したテーブル情報が記憶・格納されている。
このメモリ20に格納されるテーブル情報のシーク範囲は、各メディアに対応した無線受信装置10として受信すべき使用周波数の全域ではなく、受信チャンネルごとに定められ、その使用周波数の一部に限定されている。また、このシーク範囲は、マッチング回路14内のマッチング素子の部品バラツキや温度バラツキ等の統計データに基づいて初期設定されたものであり、後述の如く、受信時に実際に設定された制御値が反映されることにより学習されるものである。尚、この学習は、例えば、その時点までに実際に設定された複数の制御値を統計的に処理することにより、σや3σなどのしきい値を用いてシーク範囲を調整して行うこととすればよい。
また、制御回路16は、メディアごとすなわち無線受信装置10ごとに、所定条件が成立する場合(例えば、車両乗員による操作等により選択される受信チャンネルが変更された場合、検出回路24から供給される受信信号の受信品質が著しく劣化した場合など)に、対応するマッチング回路14におけるマッチングのための処理(自動マッチング処理)を実行する。具体的には、まず、その実行時点で選択されている受信チャンネルを特定したうえで、その受信チャンネルに対応した制御値のシーク範囲をメモリ20から読み出して決定する(ステップ100)。そして、その設定されたシーク範囲内でマッチング回路14の制御値を所定値間隔で順次所定時間ごとに可変する(ステップ102)。
マッチング回路14の制御値がシーク範囲内で可変されると、その可変に従ってマッチング回路14のマッチング定数が変化する。制御値がシーク範囲内全域にわたって可変される過程で受信アンテナ12に受信された受信信号のピークサーチを行い、受信信号のピークが得られたときの制御値が現環境下において最も品質の良い受信信号を得ることが可能な制御値であると判断できる。
復調回路22は、選択されている受信チャンネルに対応して、マッチング回路14から出力された受信信号を復調する。また、検出回路24は、制御路16がマッチング回路14の制御値をシーク範囲内全域にわたって可変する過程で、各制御値ごとに、復調回路22からの受信信号の信号レベルやS/N比を検出して、受信アンテナ12に受信された受信信号の受信品質を求め、その結果を制御回路16に供給する。
制御回路16は、メディアごとにマッチング回路14の制御値をシーク範囲内で可変する過程で、検出回路24から供給される受信信号の受信品質を比較してそのピークサーチを行い、受信信号のピークが得られたときの制御値を最良の受信品質が得られた値(以下、最良値と称す)としてメモリ20に保存する(ステップ104)。そして、上記したマッチング回路14の制御値の可変を同一シーク範囲で所定複数回N(例えば5回)にわたって連続して行い(ステップ102)、その結果としてそれぞれ得られる各最良値をメモリ20に保存する(ステップ104)。尚、この複数回Nの制御値の可変は、その可変に伴うスイッチのチャタリングや回路の過渡応答性を考慮して所定の時間間隔を置いて行うこととするのが好適である。
制御回路16は、マッチング回路14における制御値の可変を同一シーク範囲で所定複数回Nにわたって行った後、その結果としてそれぞれ得られる各最良値について収束性があるか否かを判別する(ステップ106)。尚、この収束性があるか否かの判別は、所定複数回にわたる同一シーク範囲での制御値の可変によってそれぞれ得られた各最良値に基づいてその最良値の分散又は標準偏差を算出したうえで、その分散又は標準偏差が所定閾値以下であるか否かに基づいて行うこととすればよい。
その結果、分散又は標準偏差が所定閾値以下であり最良値が収束性すると判別される場合は、所定複数回にわたる同一シーク範囲での制御値の可変によってそれぞれ得られた各最良値に基づいて、現環境下でマッチング回路14において用いるべき、最も受信品質の良い受信信号を得ることが可能な制御値を設定する(ステップ108)。尚、この制御値の設定は、所定複数回にわたる同一シーク範囲での制御値の可変によってそれぞれ得られた各最良値を統計的な手法によって処理(例えば平均処理)することにより得られた値を用いることとすればよい。本ステップ108の処理が実行されると、現時点で選択されている受信チャンネルに対して、最も受信品質の良い受信信号が得られる制御値に従った周波数特性でマッチング回路14が受信信号をマッチングすることとなる。
そして、上記ステップ108の処理によりマッチング回路14の制御値が設定された場合は、次に、その制御値を受信チャンネルと対応させてメモリ20に記憶・格納するテーブル情報に反映することにより、受信チャンネルとシーク範囲との関係を規定するテーブル情報を学習させる(ステップ110)。尚、この学習は、その時点までに過去に設定された複数の制御値を統計的に処理することにより、σや3σなどのしきい値を用いてシーク範囲を調整して行うこととすればよい。本ステップ110の処理が実行されると、その後、同じ受信チャンネルが選択された際に、メモリ20に記憶・格納されているその受信チャンネルに対応したシーク範囲内で制御値が可変されることで、その時点の環境下で最も受信品質の良い受信信号が得られるマッチング回路14の制御値が求められることとなる。
一方、上記ステップ106において分散又は標準偏差が所定閾値を超えて最良値が収束しないと判別される場合は、マルチパスフェージングが生じているとして、現時点でメモリ20に記憶・格納されているテーブル情報を参照して、選択されている受信チャンネルに対応した制御値(例えば過去に設定された複数の制御値を統計的に処理して得られる値)を求め、マッチング回路14で用いる制御値を設定する(ステップ112)。本ステップ112の処理が実行されると、現時点で選択されている受信チャンネルに対して、現時点までの統計から受信品質の良い受信信号が得られると予測されている制御値に従った周波数特性でマッチング回路14が受信信号をマッチングすることとなる。尚、この設定がなされた場合には、例えば、所定時間経過後、同じ受信チャンネルが選択されている状況で再度、所定複数回にわたる同一シーク範囲での制御値の可変を行って、それぞれ得られる各最良値からその収束性があるか否かを判別することにより、上記した自動マッチング処理を繰り返すこととしてもよい。
上記した制御回路16及び復調回路22によるマッチング回路14のマッチングのための処理(自動マッチング処理)は、異なるメディアごとにかつ異なる受信チャンネルごとにそれぞれ実施される。
このように本実施例の各無線受信装置10においては、所定のタイミング、具体的には、選択される受信チャンネルが変更された場合及び受信アンテナ12に受信される受信信号の受信品質が著しく劣化した場合に、メモリ20に記憶されているテーブル情報から現在の受信チャンネルに対応するシーク範囲を読み出して、そのシーク範囲内において所定値間隔でマッチング回路14における制御値が可変され、そして、その制御値の可変過程で制御値ごとの受信信号の受信品質が求められ、そのピークサーチによって最も良好な受信品質が得られる制御値(最良値)が選び出される。かかる時点でその選び出された最良値がマッチング回路14の制御値として設定されれば、受信アンテナ12に受信される受信信号の受信品質を最も良好なものとすることが可能となる。
また、本実施例の無線受信装置10においては、上記した制御値の可変が同一シーク範囲内で所定複数回Nにわたって行われた場合にそれぞれ選び出される最良値が収束するか否かが判別され、その結果、最良値が収束する場合には、それら複数の最良値に基づいてマッチング回路14における制御値が設定される。制御値の可変が同一シーク範囲内で所定複数回Nにわたって行われた場合に最良値が収束すれば、現環境下においてそれら収束する複数の最良値から統計的に最も良好な受信品質が得られると予測される制御値を求めることが可能となる。従って、かかる構成によれば、マッチング回路14が、自動マッチング処理の実行時における環境下において、現に選択されている一の受信チャンネルに対して最も受信品質の良い受信信号が得られる制御値に従った周波数特性で受信信号をマッチングすることが可能となる。
上記の如くマッチング回路14は比較的狭帯域の帯域幅を有する周波数特性を有しているが、上記した本実施例の無線受信装置10によれば、比較的狭帯域の周波数特性を持ったマッチング回路14においても所定のタイミングで適宜電波受信環境に合わせて最適なマッチング定数を選択することができる。このため、本実施例の無線受信装置10によれば、その無線受信装置10を搭載する車両の移動やアンテナ周辺物の移動などによって電波受信環境が変化し得る状況でも、マッチング回路14によるマッチングを、その周波数特性を比較的狭帯域に維持したまますなわちノイズ量の減少や受信感度の向上効果を確保したまま、受信品質のより良い最適なものとすることが可能となる。
尚、本実施例の無線受信装置10においては、制御値の可変が同一シーク範囲内で所定複数回Nにわたって行われた場合にそれぞれ選び出される最良値が収束しない場合には、現時点でメモリ20に記憶・格納されているテーブル情報を参照して、選択されている受信チャンネルに対応した制御値がマッチング回路14で用いる制御値として設定される。テーブル情報に基づいた受信チャンネルごとの制御値は、現時点までの統計から受信品質の良い受信信号が得られると予測されているものである。この点、本実施例によれば、収束しない最良値に基づく受信品質のあまり良くない受信信号が得られる制御値が設定されることはなく、マッチング回路14によるマッチングが受信品質のあまり良くない低調なものとなるのを防止することが可能となる。
また、本実施例においては、同一シーク範囲内での制御値の可変によって選び出された複数の最良値に基づいてマッチング回路14における制御値が設定されると、その制御値が受信チャンネルと対応されてメモリ20に記憶・格納するテーブル情報に反映されることにより例えばその時点までに実際に設定された複数の制御値が統計的に処理されることによりシーク範囲が調整され、受信チャンネルとシーク範囲との関係を規定するテーブル情報が学習される。そして、その後、同じ受信チャンネルが選択された際に、その受信チャンネルに対応したシーク範囲内でマッチング回路14の制御値が可変されて、その時点の環境下で最も受信品質の良い受信信号が得られるマッチング回路14の制御値が求められる。この点、本実施例によれば、一旦ある時点で受信品質のより良い受信信号を得られるマッチング回路14の制御値が設定された後、再度同じ受信チャンネルで受信品質の最も良い最良値を選び出す際に用いるシーク範囲を、直前に設定された制御値を反映したものとすることができるので、各時点で電波受信環境に合致した受信品質のより良い受信信号が得られる制御値を設定することが可能となる。
ところで、本実施例の無線アンテナシステムにおいて、各無線受信装置10のマッチング回路14は、比較的狭帯域の帯域幅を有する周波数特性を有するため、ノイズ量の減少や受信感度の向上効果を確保することが可能である。しかし、このようにマッチング回路14が比較的狭帯域の周波数特性を有する構成においては、複数のメディアがそれぞれ専用の受信アンテナ12を用いて同時に受信されるものとした場合、それらのアンテナ12同士が例えば互いに物理的に近い距離にあることでアンテナ間の相互干渉が生じているときは、ある一のメディア(例えばFM放送)について受信チャンネルが切り換えられることによりそのマッチング回路14のマッチング定数が変更されると、他のメディア(例えばTV放送)についてのマッチング回路14のマッチング定数がずれることがある。かかるマッチング定数のずれが生ずると、現に選択されている受信チャンネルに対して最適なマッチング定数を選択することができなくなり、その放送信号を受信することができなくなってしまうおそれがある。
そこで、本実施例の無線アンテナシステムにおいては、互いに異なるメディアからの信号を受信する複数のアンテナ12が相互干渉する状況で、一のマッチング回路14のマッチング定数の変更に伴って生ずる他のマッチング回路14のマッチング定数ずれを抑制することとしている。以下、図4を参照して、本実施例の特徴部について説明する。図4は、本実施例の無線アンテナシステムにおいて制御回路16が実行する特徴的な制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
本実施例の無線アンテナシステムにおいて、制御回路16は、メディアごとすなわち無線受信装置10ごとに、車両乗員による操作等により選択される受信チャンネルが切り換わったこと或いは検出回路24から供給される受信信号の受信品質が著しく劣化したことなどの自動マッチング処理の開始条件が成立するか否かを判別する。その結果、何れの無線受信装置10についても自動マッチング処理の開始が成立しないと判別した場合は、以後何ら処理を進めることなくルーチンを終了する。
一方、何れかのメディア(図4においてはメディアA)の無線受信装置10について自動マッチング処理の開始条件が成立したと判別した場合(ステップ200)は、次に、そのメディアの受信チャンネルの変更幅すなわちその無線受信装置10のマッチング回路14のマッチング定数の変更幅が所定閾値未満であるか否かを判別する(ステップ202)。
尚、この所定閾値は、メディアの受信チャンネルの変更によるそのメディアに対応する一の無線受信装置10におけるマッチング定数の変更によって他の無線受信装置10のマッチング回路14のマッチング定数がずれてその受信レベルや強電界特性が劣化すると予測される、メディアの受信チャンネルの変更幅の最小値(例えば2チャンネル分)である。
また、図5に示す如く、一般的に、一方のメディアの受信チャンネルの変更幅すなわちマッチング定数の変更幅が大きいほど、他方のメディアに対応するマッチング回路14のマッチング定数ずれが大きくなり、また、その関係は両メディアに対応したアンテナ間の結合度の大きさに応じて異なり、具体的には、アンテナ間の結合度が強いほどマッチング定数ずれが大きくなる。そこで、上記の所定閾値は、メディアごとすなわち無線受信装置10ごとに予め実験的に定められたものであるのが好適であり、更に、自己の無線受信装置10の受信アンテナ12と他の無線受信装置10のうち最も結合度の高い無線受信装置10の受信アンテナ12との結合度の大きさに応じて異なり、その結合度が弱い(低い)ほど大きくその結合度が強い(高い)ほど小さくなることとするのが好適である。
制御回路16は、上記ステップ202の判別結果として、受信チャンネルの変更幅が所定閾値未満である場合は、そのメディア(例えばメディアA)の無線受信装置10に対して自動マッチング処理を行う(ステップ204)。この際、希望の受信チャンネルにおいて最適なマッチング定数を得るために制御値を可変してシークすべきシーク範囲は、メモリ20に記憶されている通常どおりの標準的な範囲である。かかる自動マッチング処理が実行されると、現環境下において選択されている受信チャンネルに対して最適なマッチング定数が得られることとなる。
一方、受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上である場合は、そのメディア(例えばメディアA)の無線受信装置10に対して自動マッチング処理を行う(ステップ206)。但し、この際、そのメディアの希望受信チャンネルにおいて最適なマッチング定数を得るために制御値を可変してシークすべきシーク範囲は、上記した通常どおりの標準的な範囲ではなく、その標準範囲よりも所定量だけ狭い範囲である。かかる自動マッチング処理が実行されるときも、現環境下において選択されている受信チャンネルに対して最適なマッチング定数が得られることとなる。
また、上記の如くある一のメディア(例えばメディアA)についての受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上である場合は、他のメディア(例えばメディアB及びC)についての無線受信装置10に対して自動マッチング処理を行う(ステップ210,212)。尚、この際、自動マッチング処理の対象となる無線受信装置10は、受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上であった一のメディアの無線受信装置10以外のすべての無線受信装置10であってもよいが、その一のメディアの受信チャンネルの変更によってマッチング回路14のマッチング定数が所定以上にずれてその受信レベルや強電界特性が劣化すると予測される受信アンテナ12の相互干渉が生ずる無線受信装置10だけであることとしてもよい。また、この際、自動マッチング処理を行う無線受信装置10におけるシーク範囲は、通常どおりの標準範囲ではなく、その標準範囲よりも所定量だけ狭い範囲である。かかる自動マッチング処理が実行されるときも、他のメディアでも現環境下において選択されている受信チャンネルに対して最適なマッチング定数が得られることとなる。
このように本実施例の無線アンテナシステムにおいては、あるメディアの受信チャンネルの変更によってそのメディアに対応する無線受信装置10の自動マッチング処理が実行されそのマッチング回路14のマッチング定数が変更されると、その一のメディアに対応する無線受信装置10の自動マッチングに連動して他のメディアに対応する無線受信装置10において自動マッチング処理が実行されてそのマッチング回路14の制御値が可変される。マッチング回路14の制御値が可変されると、その自動マッチング処理の前後で同じ受信チャンネルであってもその可変後に可変前よりも受信品質の良いマッチング定数を得ることが可能である。
従って、本実施例のシステムによれば、互いに異なるメディアからの放送波を受信する複数の受信アンテナ12が相互干渉する状況で、そのうちの一のメディアについての受信チャンネルが所定閾値以上変更されることによりそのマッチング回路14のマッチング定数が変更された場合に、その変更に伴って生ずる他のメディアについてのマッチング回路14のマッチング定数ずれを自動マッチング処理の実行により抑制することが可能となっている。このため、本実施例によれば、各マッチング回路14が図2(B)に示す如き比較的狭帯域の周波数特性を有する構成においても、あるメディアの受信チャンネルの変更時に受信アンテナ12の相互干渉に起因して他のメディアについての放送波を受信することができなくなるのを確実に防止することが可能となっている。
尚、本実施例のシステムにおいて、ある一のメディアに対応する無線受信装置10の自動マッチング処理に連動した、他のメディアに対応する無線受信装置10の自動マッチング処理は、その一のメディアの受信チャンネルの変更幅が、その他のマッチング回路14のマッチング定数がずれてその受信レベルや強電界特性が劣化すると予測される所定閾値以上である場合に行われる。すなわち、その受信チャンネルの変更幅がその所定閾値未満であって、一のメディアの受信チャンネルの変更に起因した他のマッチング回路14のマッチング定数ずれが小さくその受信レベルや強電界特性の劣化があまり生じないときは、その他のメディアに対応する無線受信装置10の自動マッチング処理は行われない。従って、本実施例によれば、一のメディアの受信チャンネルの変更(つまりその一のマッチング回路14の同調周波数の変更)に起因した他の無線受信装置10の自動マッチング処理を不必要に行うのを防止することが可能となっている。
また、本実施例のシステムにおいて、一のメディアの受信チャンネルの変更に起因した他の無線受信装置10の自動マッチング処理を開始するための条件である所定閾値は、自己の無線受信装置10の受信アンテナ12と他の無線受信装置10のうち最も結合度の高い無線受信装置10の受信アンテナ12との結合度の大きさに応じて異なり、その結合度が弱い(低い)ほど大きくその結合度が強い(高い)ほど小さくなることとすればよい。かかる構成によれば、アンテナ間の結合度と一のメディアの受信チャンネルの変更幅との関係に応じて、具体的には、アンテナ間の結合度が弱いほど大きな受信チャンネルの変更が生じた場合又はアンテナ間の結合度が強いほど小さな受信チャンネルの変更が生じた場合に、他のメディアに対応した無線受信装置10の自動マッチング処理を実行することができるので、その他の無線受信装置10におけるマッチング回路14の制御値の可変による大きなマッチング定数ずれを、アンテナ間の結合度の大きさに関係なく一律に抑制することが可能となる。
また、本実施例のシステムにおいて、上記の所定閾値は、上記の如く、メディアごとすなわち無線受信装置10ごとに予め実験的に定められたものであってもよい。かかる構成によれば、受信チャンネルの変更に伴って生ずる他のメディアに対応した無線受信装置10の自動マッチング処理すなわちそのマッチング回路14の制御値の可変によるマッチング定数ずれの抑制を、メディアごとに最適なタイミングで実行することが可能となる。
ところで、本実施例において、一のメディアの受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上であるときは、複数の無線受信装置10においてそれぞれ自動マッチング処理が実行されるので、それらの各自動マッチング処理が同時に行われることがある。複数の無線受信装置10における自動マッチング処理が同時に行われると、各マッチング回路14の周波数特性が時々刻々と変化することとなるため、各シーク範囲において全制御値のうち受信信号のピークが得られ最良の受信品質が得られる最良値が収束し難くなり、各マッチング回路14の自動マッチング処理に与える影響が大きくなる。
これに対して、本実施例のシステムにおいて、一のメディアの受信チャンネルの変更に伴って行われるそのメディアに対応した無線受信装置10のマッチング回路14の自動マッチング処理において可変される制御値のシーク範囲は、その受信チャンネルの変更幅が所定閾値未満であるときは通常どおりの標準範囲であるが、その受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上であるときはその標準範囲よりも所定量だけ狭い範囲である。また、一のメディアの受信チャンネルの変更に伴って行われる他のメディアに対応した無線受信装置10の自動マッチング処理において可変される制御値のシーク範囲は、通常の標準範囲よりも所定量だけ狭い範囲である。
このため、本実施例のシステムによれば、一のメディアの受信チャンネルの変更に伴って行われる各無線受信装置10の自動マッチング処理においてシーク範囲から受信品質のより良い最良値を選び出すうえで、受信アンテナ12間の相互干渉の影響が大きい最良値を排除し易くしてその影響を小さくすることができるので、それぞれ自動マッチング処理が同時に行われ得る複数のマッチング回路14での各自動マッチング処理において同一シーク範囲における所定複数回にわたる制御値の可変の結果として得られる最良値の収束性が低下するのを防止することが可能となっている。
尚、上記の実施例においては、受信アンテナ12が特許請求の範囲に記載した「アンテナ」に、マッチング回路14が特許請求の範囲に記載した「マッチング回路」に、制御回路16が無線受信装置10ごとにそれぞれ対応するマッチング回路14のマッチング定数が得られるように制御値を可変することが特許請求の範囲に記載した「制御手段」が、それぞれ相当していると共に、制御回路16が、図3に示すルーチン中ステップ102の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「制御値可変手段」が、ステップ104の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「最良値選択手段」が、ステップ106の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「収束判別手段」が、ステップ108の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「制御値決定手段」が、それぞれ実現されている。
ところで、上記の実施例においては、各無線受信装置10を車両に搭載するものとしたが、移動体として電波受信環境が変化し得る使用者に携帯される携帯機などに搭載することとしてもよいし、また、車両や携帯機などの移動体に限らず、周辺物の移動によって電波受信環境が変化し得る固定物に設置することとしてもよい。
また、上記の実施例においては、無線受信装置10を受信チャンネルが変更され得るFMラジオやAMラジオ,TVなどの放送波を受信するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、受信チャンネルの変更が行われない車両と車両使用者の携帯する携帯機との間の通信電波(例えば、キーレスエントリーシステムやタイヤ空気圧検知システムに利用される電波)を受信するものなどとしてもよい。
また、上記の実施例においては、選択される受信チャンネルが変更された場合、受信アンテナ12に受信される受信信号の受信品質が著しく劣化した場合、及び他のメディアの受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上である場合に、マッチング回路14におけるマッチングのための処理を開始することとしているが、自動マッチングを開始するトリガー条件としてはこれに限定されるものではなく、所定以上の温度変化が生じた場合にマッチング回路14におけるマッチングのための処理を開始することとしてもよい。かかる構成によれば、温度変化に対応して最良の受信品質が得られる制御値が設定されるので、温度変化に速やかに追従した最適な自動マッチングを行うことが可能となる。
また、所定時間が経過するごとに定期的にマッチング回路14におけるマッチングのための処理を実行することとしてもよい。更に、この変形例においては、所定以上の温度変化が生じた場合或いは無線受信装置10周辺の温度変化が著しくなる車両のエンジン始動直後、上記した所定時間を短縮すること、すなわち、マッチング回路14におけるマッチングのための処理を実行する周期を短くすることとしてもよい。かかる構成によれば、無線受信装置10の温度変化が著しくなるときに速やかにマッチング回路14によるマッチングをできるだけ最適なものとすることが可能となる。
また、上記の実施例においては、受信チャンネルごとのシーク範囲をマッチング回路14周辺の温度に関係なく一律のものとしているが、その周辺温度に応じてシーク範囲を変更することとしてもよい。かかる構成によれば、マッチング回路14によるマッチングを無線受信装置10の温度変化に追従して適切なものとすることが可能となる。
また、上記の実施例においては、一のメディアの受信チャンネルの変更に伴って行われるそのメディアに対応した無線受信装置10のマッチング回路14の自動マッチング処理において可変される制御値のシーク範囲を、その受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上であるときは標準範囲よりも所定量だけ狭くし、また、一のメディアの受信チャンネルの変更に伴って行われる他のメディアに対応した無線受信装置10の自動マッチング処理において可変される制御値のシーク範囲を標準範囲よりも所定量だけ狭くすることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらのシーク範囲を通常どおりの標準範囲と同じにすることとしてもよい。
更に、上記の実施例においては、図1に示す如く複数の無線受信装置10を備える無線アンテナシステムに設けられた唯一つの制御回路16が各無線受信装置10のマッチング回路14の制御値を可変して自動マッチング処理を行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示す如く無線受信装置10ごとに個別に自動マッチング処理を行う制御回路300を設け、各制御回路300をCANやAVC−LANなどの通信バス302により互いに接続することとしてもよい。この場合には、制御回路300ごとに、受信チャンネルごとのマッチング定数を設定するためのテーブル情報等を記憶・格納したメモリ304が接続されることとなる。
かかる変形例のシステムにおいては、各制御回路16が受信チャンネルの変更幅が所定閾値以上であることにより自己の無線受信装置10のマッチング回路14に対して自動マッチング処理を開始した際に、通信バス302を経由して他の制御回路16にその無線受信装置10のマッチング回路14の自動マッチング処理を行うべきことを指示することとし、その指示を受けて他の制御回路16が自己の無線受信装置10のマッチング回路14に対して自動マッチング処理を開始することとすればよい。かかる変形例においても、上記の実施例と同様に、互いに異なるメディアからの放送波を受信する複数の受信アンテナ12が相互干渉する状況で、そのうちの一のメディアについての受信チャンネルが所定閾値以上変更されることにより自動マッチング処理の実行によってそのマッチング回路14のマッチング定数が変更された場合に、その変更に連動して他のメディアについてのマッチング回路14の自動マッチング処理を行うことができるので、一のマッチング回路14のマッチング定数の変更に伴って生ずる他のメディアについてのマッチング回路14のマッチング定数ずれを自動マッチング処理の実行により抑制することが可能となる。