JP4752181B2 - 直接メタノール形燃料電池及びその運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は燃料としてメタノールと水を、酸化ガスとして空気を供給して直接発電を行うことができる直接メタノール形燃料電池に関するものである。さらに言えば、直接メタノール形燃料電池の特性劣化を防止し、長期間安定して発電を行うための運転条件や品質管理などに関するものである。
近年、環境問題や資源問題への対策が重要になっており、その対策のひとつとして直接メタノール形燃料電池の開発が活発に行われている。特にメタノールを燃料に用いて改質、ガス化を行うことなく直接発電に利用することができる直接メタノール形燃料電池は、構造がシンプルで小型化、軽量化が容易である。
直接メタノール形燃料電池では燃料極側にメタノール水溶液を供給すると、電池反応によって炭酸ガスが発生し、燃料排気側では廃燃料と炭酸ガスが排出される。一方、空気極側では酸化剤として空気を供給すると、電池反応により水が発生し、空気出口から排出される。
このような直接メタノール形燃料電池では電解質膜に用いられている、ナフィオン(デュポン社の登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸を主体とするプロトン導電性高分子固体電解質に、燃料であるメタノールを透過する性質があるため、これによって電解質膜を透過したメタノールが空気極の分極を増大させることが知られている。このため、燃料中のメタノールには特性が最大となる、最適濃度があることが知られており、燃料のメタノール水溶液の濃度は1M(モル/dm3)程度の濃度が最も良いとされてきた。
しかしながら、上記のメタノール濃度は電解質膜のメタノールの透過による特性ロスをもとにした議論であり、特性がやや低くなる事さえ許容すれば、別段、濃度の濃い燃料を用いても構わないと考えられてきた(非特許文献1参照)。
また、電池運転温度に関しても、元々、直接メタノール形燃料電池が固体高分子形燃料電池と比較して出力特性が低いことから、なるべく、大きな出力特性を得るため、90℃程度の高温で運転する事が行われてきた。また、非特許文献2に記載されているように、近年は、自動車用燃料電池としての応用を考えてさらに高温の130℃程度で運転することが検討されている
パーフルオロスルホン酸以外の、メタノール透過の少ないプロトン導電性電解質膜を開発しようとする検討も行われており、スルホン酸化した芳香族ポリマーなどが有望である。
社団法人自動車技術会学術講演会前刷集 No.46-00,20005062 ジャーナル・オブ・ザ・エレクトロケミカル・ソサイエティー(J.Electrochem.Soc.)Vol 143,No.1,(1996),L12
上述のような直接メタノール形燃料電池の実用化をはかるためには、数千から数万時間といった燃料電池の要求寿命に対して、電池が劣化せず、安定に運転できることが必要である。このような、電池の特性劣化を防止し、電池寿命の向上を図るためには電池の劣化モードを明らかにし、それぞれの劣化モードに対して、有効な対策を実施していくことが不可欠である。
これまで考えられていた劣化モードに対し、本発明では、直接メタノール形燃料電池の固体電解質膜に用いられているパーフルオロスルホン酸や、燃料極中で燃料極触媒、PTFE微粒子とともに添加されている、微粒子状のパーフルオロスルホン酸が、燃料であるメタノール水溶液中に溶出することによって生じるモードを見出した。この劣化モードが発生すると、燃料極中で一種の結着剤として機能している微粒子状のパーフルオロスルホン酸がその機能を失うため、燃料極触媒やPTFE微粒子などの電極材料が燃料のメタノール水溶液中に溶け出し、急激に燃料が黒変するとともに、電池特性が著しく低下する。この燃料の黒変は黒色の燃料極触媒が燃料中に混入するために生じると考えられる。この劣化モードは、急激に電池特性が低下するうえに、劣化現象は不可逆的であり、一度発生すると回復の手段はないものと考えられる。
この発明は、プロトン導電性高分子固体電解質膜の両側に、少なくとも貴金属または貴金属を担持した炭素からなる電極触媒と、パーフルオロスルホン酸などのプロトン導電性高分子固体電解質とを含有する燃料極と空気極とを設けて、燃料極側に燃料としてのメタノールと水を供給し、空気極側に空気中の酸素を供給して発電するようにした直接メタノール形燃料電池であって、燃料中への燃料極材料の溶出を検出するための手段と、前記検出がされた際に、燃料濃度を下げる側、もしくは運転温度を下げる側、あるいは燃料電池の出力を制限する側に、フィードバックするための制御手段とを設けたことを特徴とする。
好ましくは、燃料の色を見るための窓、もしくは燃料の色を検出するためのセンサを設ける。
またこの発明は、プロトン導電性高分子固体電解質膜の両側に、少なくとも貴金属または貴金属を担持した炭素からなる電極触媒と、パーフルオロスルホン酸などのプロトン導電性高分子固体電解質とを含有する燃料極と空気極とを設けて、燃料極側に燃料としてのメタノールと水を供給し、空気極側に空気中の酸素を供給して発電するようにした直接メタノール形燃料電池の運転方法であって、燃料中への燃料極材料の溶出を検出した際に、燃料濃度を下げる側、もしくは運転温度を下げる側、あるいは燃料電池の出力を制限する側に、フィードバックすることを特徴とする。
好ましくは、燃料の色を見るための窓、もしくは燃料の色を検出するためのセンサを設けて、燃料の色の変化により燃料中への燃料極材料の溶出を検出する。
燃料電池に供給する燃料中のメタノール濃度は好ましくは2M(mol/dm3)未満にする。燃料極や空気極へ添加するプロトン導電性高分子固体電解質はパーフルオロスルホン酸化合物などの他に、芳香族ポリマーのスルホン酸化物などでも良い。
好ましくは、メタノール濃度を1.5M以下、運転温度は90℃以下とし、特に好ましくは運転温度を80℃以下とする。
この発明では、燃料電池の運転中に、燃料極材料の溶出を検出し、燃料濃度を薄め、あるいは運転温度を低下させ、もしくは出力を制限する方向にフィードバックし、燃料電池の劣化が進行することを防止し、燃料電池の耐久性を増す。このためには、燃料パイプや循環タンクなどに覗き窓を設けて、燃料の黒変などを目視で観察し、劣化が生じたことを制御回路に入力できるようにしても良い。あるいは比色センサなどのセンサにより、燃料の黒変などを検出して、フィードバックしても良い。
この発明は、燃料極、空気極、電解質膜、特に燃料極中のパーフルオロスルホン酸などの固体電解質が燃料であるメタノール水溶液中に溶出する現象が、燃料中のメタノール濃度および燃料電池の運転温度と密接に関係しているとの知見に基づくものである。燃料極中の固体電解質が燃料であるメタノール水溶液中に溶出する現象は、燃料中のメタノール濃度が高いほど、また電池の運転温度が高いほど顕著に起こり、このことを発明者は実験的に確認した。
燃料中のメタノール濃度と電池温度の間にも相関関係があり、直接メタノール形燃料電池の電解質膜に用いられているパーフルオロスルホン酸などの固体電解質膜はもともとメタノールを透過させやすい性質を持っており、燃料極に供給したメタノールの一部は電池から電流を取り出さない場合においても、その一部は空気極側に透過していく。そして透過したメタノールは、空気極の触媒と空気極に供給されている空気によって急激に酸化され、電池全体が発熱する。したがって、濃い燃料を電池に供給すると、メタノールの透過によって電池温度がさらに上昇する。さらにこのメタノール透過は電池温度が高いほど大きくなるため、一旦、濃い燃料を電池に供給すると、急速に温度が上がり、電池の劣化は急速に進行する。
このような燃料電池からの燃料極材料の燃料への溶出を防止するために、燃料中のメタノール濃度を2M未満、好ましくは1.5M以下にすることが好ましい。電池の運転温度は好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下に規定する。燃料極材料の溶出を完全に防止するためには、2.0M未満のなるべく低いメタノール濃度で運転することが有効であり、望ましくは0.5〜1.5M、特に0.5〜1.0Mの範囲での運転が望ましい。
所定の運転濃度範囲や、運転温度で、直接メタノール形燃料電池システムを制御するため、燃料電池スタック中に燃料中のメタノール濃度を感知するためのダミーセルを挿入して、濃度を検出しても良いし、燃料タンクもしくは燃料配管中にメタノールセンサーを設置して検出しても良い。また、電池温度に関しても、燃料電池スタックに直接、熱電対やサーミスターを設置し、温度を検出しても良いし、スタックの燃料出口もしくは燃料配管中の燃料温度を検出しても良い。
検出した燃料中のメタノール濃度および電池温度を制御回路に取り込み、スタックに2.0M以上のメタノール濃度の燃料を供給しないようにし、また好ましくは1.5M以下の濃度で90℃以下の温度に保たれるように制御する。ただし、システム起動時には2.0M未満の範囲で、濃い濃度のメタノールをスタックに供給することが望ましい。
メタノール濃度および運転温度は、その電池の必要出力を維持できるかぎり、なるべく低いメタノール濃度、なるべく低い運転温度で運転させることが望ましい。このような制御を行うためには、先の制御回路の中に、このような論理回路を組み入れれば良い。
以下に実施例を説明するが、これに限るものではない。
電解質膜にはパーフルオロスルホン酸系電解質膜として一般的な、デュポン社のナフィオン(ナフィオンは登録商標)を用いた。空気極は、空気極材料としての白金の微粒子を炭素粉末上に担持させた空気極触媒と、PTFE微粒子に、パーフルオロスルホン酸系電解質(ナフィオン)の溶液を混合してペーストとし、ガス拡散層としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)溶液を含浸させて撥水処理を行ったカーボンペーパーに、ペーストを塗布し100℃で乾燥して作製した。燃料極は、同様に空気極と同じく撥水処理を行ったカーボンペーパーをガス拡散層に用い、燃料極材料としての白金-ルテニウムの微粒子を炭素粉末上に担持させた燃料極触媒と、PTFE微粒子、ナフィオン溶液を混合して得たペーストを塗布して、100℃で乾燥して作製した。これらの空気極、燃料極を、乾燥後に、電解質膜に積層し、130℃でホットプレスして接合し、MEA(電解質/電極接合体)を得た。MEA中では、電極中のナフィオン溶液は乾燥され、樹脂状態となり、電極部分にプロトン導電性を付与するとともに、一種の結着剤となって触媒やPTFE粒子を結合する役割を担っている。またパーフルオロスルホン酸は電極中で例えば微粒子状の形態で存在するが、連続膜状の形態で存在しても良い。また空気極触媒には、白金ブラックと称される白金の微粉末を用いてもよく、燃料極触媒には、白金−ルテニウムブラックと称される白金−ルテニウムの微粉末を用いてもよい。
さらに、このようにして作製したMEAを、ガスリークの防止のためにフェノール樹脂を含浸させたグラファイト製の空気極セパレータ板(溝深さ:3mm、溝幅:3mm)、燃料極セパレータ板(溝深さ1mm、溝幅:3mm)によって挟み込み、単電池を構成した。
上記の劣化モードによる特性劣化を、単電池に対して検証した。80℃、1Mメタノール水溶液を燃料として燃料流速:4ml/分、空気流速:1 l/分の標準条件で、単電池の初期特性を評価した。次に初期特性を評価済みの単電池を、各種の運転温度、メタノール濃度で200mA/cm2で8時間連続運転した。その連続運転後、初期特性を測定したのと同じ標準条件で再度試験し、連続試験前後の電流密度200mA/cm2における出力密度を算出し、その変化から特性の劣化を評価した。さらに燃料極触媒の脱落は、試験後の燃料廃液の色を目視で確認することによって行った。また黒変した燃料廃液を分析し、白金およびルテニウムの存在の有無を原子吸光法によって確認した。
試験結果を表1〜5に示す。0.5Mの燃料濃度で80℃未満では、電流密度200mA/cm2では8時間の連続運転は出来なかった。燃料濃度が低すぎる場合には、連続運転が出来ないことが分かった。しかしながら、1.0M、1.5Mでは50〜90℃の温度域で連続運転が可能であり、燃料の黒変、特性劣化は観察されず、幾分特性が向上する現象が認められた。
表1
表1 結果
連続試験条件 設定温度(℃) 50 60 70 80 85 90
燃料メタノール濃度 0.5M 0.5M 0.5M 0.5M 0.5M 0.5M
出力密度 連続運転前 72 75 75 74 71 73
(mW/cm 2 ) 連続運転後 - - - 75 73 74
燃料廃液の黒変の有無 - - - なし なし なし
備考 設定温度が50〜70℃,燃料メタノール濃度が
0.5Mでは、200mA/cm 2 で連続運転できず
表2
表2 結果
試験条件 設定温度(℃) 50 60 70 80 85 90
燃料メタノール濃度 1.0M 1.0M 1.0M 1.0M 1.0M 1.0M
出力密度 連続運転前 75 74 71 74 73 72
(mW/cm 2 ) 連続運転後 76 75 75 76 73 76
燃料廃液の黒変の有無 なし なし なし なし なし なし
表3
表3 結果
試験条件 設定温度(℃) 50 60 70 80 85 90
燃料メタノール濃度 1.5M 1.5M 1.5M 1.5M 1.5M 1.5M
出力密度 連続運転前 72 74 74 73 73 75
(mW/cm 2 ) 連続運転後 74 76 75 74 73 74
燃料廃液の黒変の有無 なし なし なし なし なし なし
表4
表4 結果
試験条件 設定温度(℃) 50 60 70 80 85 90
燃料メタノール濃度 2.0M 2.0M 2.0M 2.0M 2.0M 2.0M
出力密度 連続運転前 70 73 73 73 74 74
(mW/cm 2 ) 連続運転後 74 75 74 72 70 68
燃料廃液の黒変の有無 なし なし なし あり あり あり
備考 Pt,Ru Pt,Ru Pt,Ru
検出 検出 検出
表5
表5 結果
試験条件 設定温度(℃) 50 60 70 80 85 90
燃料メタノール濃度 2.5M 2.5M 2.5M 2.5M 2.5M 2.5M
出力密度 連続運転前 72 73 71 72 74 73
(mW/cm 2 ) 連続運転後 71 65 60 62 51 48
燃料廃液の黒変の有無 あり あり あり あり あり あり
備考 Pt,Ru Pt,Ru Pt,Ru Pt,Ru Pt,Ru Pt,Ru
検出 検出 検出 検出 検出 検出
2.0Mの80℃以上の連続運転では燃料が黒変し、Pt,Ruが燃料中に確認された。この条件では燃料極の電位がRuの溶出電位を超えていないにも関わらず、上記の劣化モードにより燃料極のナフィオンが溶出し、電極触媒の一部が流出したことが判明した。さらに2.5Mの燃料ではその現象が顕著になり、今回検討を行ったいずれの温度においても、特性の急激な劣化が認められた。また、運転温度が高いほどこの現象は著しかった。なお、ここでは燃料極の電位がRuの溶出電位を超えることにより燃料極触媒が燃料中に溶出する現象を「転極」と呼ぶ。
次に本発明の実施形態の一例を図1に示す。図において、2は直接メタノール形燃料電池で、4はその燃料電池スタックで、6は高濃度メタノールタンクで、純メタノールや60重量%メタノールなどの高濃度のメタノールを貯蔵する。8は循環タンクで、0.5〜2M濃度のメタノール−水燃料を貯蔵し、10は廃液タンクで、気液分離槽を兼ね、12は制御回路である。14は冷却用のラジエターで、16はそのファン、18はラジエターを迂回するためのバイパス弁である。P1は燃料供給ポンプ、P2は燃料調整ポンプで、高濃度メタノールを循環タンクに補給する。P3は空気ポンプ、P4は廃液ポンプで、廃液を循環タンク8へ注入する。
燃料電池2には各種のセンサが設けられ、CSはメタノール濃度センサ、TSは温度センサで、廃液温度を検出する。この温度はスタック4内の温度とほぼ等しく、温度センサTSの温度を運転温度とする。LS1〜LS3はレベルセンサで、レベルセンサLS1は循環タンク8の液面高さを検出し、レベルセンサLS2は高濃度メタノールタンク6の液面高さを検出し、レベルセンサLS3は廃液タンク10の液面高さを検出する。
DSは劣化センサで、電極の溶出や転極を検出し、例えば光センサや比色センサなどにより、電極触媒の溶出による燃料の黒変や色の変化を検出する。また燃料の導電率や誘電率、誘電損失などの電気特性の変化を検出する。あるいはイオンセンサにより、燃料中に溶出したナフィオンに基づくフッ素イオンを検出する。またPHセンサにより、強酸性物質であるナフィオンの溶出による、PHの変化を検出する。色の変化や電気特性の変化を検出する場合、燃料極材料の溶出の他に転極も検出でき、フッ素イオンの検出やPHの監視を行う場合、主として燃料極材料の溶出を検出することになる。燃料の色の変化や電気特性の変化は、主として燃料中に溶出した触媒(炭素粉末やPt,Ruなど)によるもので、劣化センサDSはこれらが蓄積しやすい循環タンクの、特に下部の位置に設けることが好ましい。フッ素イオンの検出やPHの検出の場合、劣化センサDSの設置位置は任意である。燃料の黒変は目視でも検出でき、例えば循環タンク8の下部などに覗き窓Wを設けて、外部から燃料タンクの色を確認できるようにする。そして目視で燃料の黒変を発見すると、マニュアルスイッチSWから制御回路12へ入力できるようにする。
これらのポンプ、センサー、弁の開閉等は制御回路12で管理され、燃料電池システムの状態に応じて制御される必要がある。その制御方法の一例を表6、表7に示す。燃料濃度が0.5M以下まで下がった場合には燃料調整ポンプを運転し、燃料循環タンクに高濃度メタノールを一定量供給し、燃料循環タンク内の燃料のメタノール濃度を2M以上にならない範囲で高くする。また、燃料循環タンクの燃料レベルが満タン状態の場合は高濃度メタノールの追加ができないため、80℃を越えない範囲で運転温度を上げ、水分の蒸発を大きくし、燃料レベルを下げることが必要となる。このため、例えば、ラジエター機構を迂回させ、運転温度の上昇を図る。この際には燃料流速は大きすぎないことが望ましい。また、それ以外の方法としては燃料調整ポンプを逆回転させ、高濃度メタノールタンク内に燃料循環タンクの燃料の一部をくみ上げ、燃料レベルを下げる方法も考えられる。
表6
表6 燃料電池システムの制御方法(循環タンクが満タンでないとき)

燃料濃度 電池温度
起動時もし 通常運転
通常運転時 くは設定 設定温度
0.5M未満 (0.5M〜2M) 2M以上 温度未満 範囲内 80℃以上
(1)空気
ポンプ - - - - - -
(2)燃料供給
ポンプ 流速大 - 流速大 流速小 - 流速大
(3)燃料濃度 燃料濃度 燃料 燃料
調整 大へ 濃度小へ 濃度大へ
ポンプ (2M未満) - (0.5M以上) (2M未満) - -
燃料濃度
小へ
(4)廃液 (0.5M以上)
ポンプ 流速大 - 流速大 流速小 - 流速大
(5)ラジエター バイパス ラジエ ラジエ
バイパス弁 - - - 側 ター側 ター側
(6)ラジエター
ファン - - - 停止 運転 運転
表7
表7 燃料電池システムの制御方法(循環タンクが満タンの時)

燃料濃度 電池温度
起動時もし 通常運転
通常運転時 くは設定 設定温度
0.5M未満 (0.5M〜2M) 2M以上 温度未満 範囲内 80℃以上
(1)空気
ポンプ - - - - - -
(2)燃料供給
ポンプ 流速小 - 流速大 流速小 - 流速大
逆回転させ 逆回転させ
(3)燃料 燃料 循環タンク 燃料 循環タンク
濃度調整 濃度大へ レベルを 濃度大へ レベルを
ポンプ (2M未満) - 下げる (2M未満) - 下げる
燃料 燃料
濃度小へ 濃度小へ
(4)廃液 (0.5M以上) (0.5M以上)
ポンプ 流速小 - 流速大 流速小 - 流速大
(5)ラジエ
ターバイ バイパス ラジエ バイパス ラジエ ラジエ
パス弁 側 - ター側 側 ター側 ター側
(6)ラジエ
ターファン 停止 - 運転 停止 運転 運転
燃料濃度が2M以上になってしまった場合には排液ポンプを作動させ、廃液タンクの中に回収した低濃度メタノール廃液を燃料循環タンク内へ供給する。また、燃料循環タンクの燃料レベルが満タン状態の場合は低濃度メタノール廃液の追加ができないため、先と同じく、ラジエター機構を迂回させ、運転温度の上昇を図ることも考えられるが、燃料温度が高くなるとMEAの劣化が進行するため、この際には運転温度を上げないことが望ましい。このため、燃料調整ポンプを逆回転させ、高濃度メタノールタンク内に燃料循環タンクの燃料の一部をくみ上げ、燃料レベルを下げる方法が有効と考える。
次に電池起動時や運転温度が設定温度未満になった場合には、電池温度を上げるために、ラジエターバイパス弁をバイパス側にしてラジエターで冷却を行わないとともに、燃料濃度を2M未満の範囲で大きくし、メタノールクロスリークを利用して電池温度の上昇を図ることができる。
また、電池温度が80℃を越えるような場合には電池温度を下げるために、ラジエターバイパス弁をラジエター側として燃料の冷却を行うとともに、燃料濃度を0.5M未満にならない範囲で低下させることができる。
制御回路12の構成を図2に示すと、20は入力インターフェースで、センサCS,TS,LS1〜LS3などからの信号を入力されて、燃料電池2の状態を把握する。またCPU(制御処理装置)22は、入力インターフェース20からのセンサ信号と、起動信号と、劣化検出部26からの信号を用いて、出力インターフェース24を介して、ポンプP1〜P4,バイパス弁18,ファン16などを駆動する。起動信号は、燃料電池2の起動時にオンし、起動から所定時間の間、あるいは燃料電池温度が所定温度に達するまでの間は、表6、表7に示すように、目標温度をやや高め(80℃以下)に、燃料濃度をやや濃いめ(2M未満)に、制御目標を変更する。
劣化検出部26は、マニュアルスイッチSWや劣化センサDSからの信号で、劣化を検出し、制御目標を変更する。例えば劣化センサDSの信号により、劣化無し、劣化レベル1,劣化レベル2,劣化レベル3の4つのレベルに、燃料電池の状態を判別できるとする。劣化無しの場合は表6、表7などに記載の条件で制御を施し、劣化レベル1で燃料濃度の上限を1.5Mに、電池温度の上限を70℃に変更し、劣化レベル2で燃料濃度の上限を1Mに、電池温度の上限を60℃に変更し、劣化レベル3では燃料電池の運転を終了する。また劣化検出部26はLCD28などの表示部を介して、劣化の程度などを表示する。劣化を検出した際の処理は、燃料電池での燃料濃度の目標値を低下させ、運転温度の目標値を低下させて、劣化の進行を阻止することである。あるいは燃料濃度や運転温度の目標値を低下させることに代えて、またはこれらに加えて、燃料電池の出力(出力電流や出力電力など)に上限を課す、あるいは上限が既に存在する場合は、上限を低下させるなどにより、出力を制限しても良い。これらによって、燃料電池の寿命や耐久性を大幅に延ばすことができる。
次に燃料電池の品質管理の面から、燃料極の溶出について説明する。例えば製造した燃料電池に対して、単電池であるいは燃料電池スタックで、所定の条件で動作させて、燃料極材料の溶出の有無を検査すれば、燃料電池の品質管理を行うことができる。運転条件としては、例えば代表的なサンプルに対して、通常の運転条件よりも厳しい条件、メタノール濃度が2M超で、例えば4M〜60%メタノールなど、運転温度が80℃超で、例えば90〜110℃などで、燃料電池を運転し、燃料中への燃料極材料の溶出の有無や溶出量などの溶出特性を測定する。あるいはこのような耐久条件の前後での電圧/電流特性の変化などを測定する。
上記のような加速テストに変えて、通常の使用条件で燃料電池を作動させた際の、燃料極材料の溶出の有無や電圧/電流特性の変化などを測定しても良い。また単電池や燃料電池スタックなどの電池を試料として、溶出特性を評価することに代えて、燃料極単体で溶出特性を評価しても良い。例えばMEAの製造方法として説明したようにして、撥水処理済みのカーボンペーパーに、燃料極材料のペーストを塗布し、ホットプレス温度に相当する温度などで乾燥する。乾燥温度は、MEAを製造する際に経験する最高温度が好ましいが、MEAでの燃料極材料の溶出特性と相関が取れる範囲であればよい。そして乾燥済みの単独の燃料極に対して、燃料中への燃料極材料の溶出を評価すればよい。
燃料極材料の溶出の有無や程度は、単電池や燃料電池スタックで評価する場合も、燃料極単独でその特性変化から評価する場合も、燃料の黒変、電気特性の変化、フッ素イオンの検出、PHの変化、原子吸光分析などの微量元素分析などを用いればよい。さらに耐久テストの前後での電圧/電流特性の変化などからも、間接的に燃料極材料の溶出を評価できる。評価に用いる溶媒には、メタノール−水などに限らず、イソプロパノール−水などの極性溶媒を用いることができる。
図3に、6Mのメタノール−水混合燃料を用い、80℃(下限温度)〜90℃(上限温度)の間で、30分間燃料電池を動作させた耐久テスト前後での、電圧/電流特性の変化を示す。図中の1M MeOH、70℃の試験条件は、耐久テストの前後での電圧/電流特性の測定条件である。この例では、燃料極や空気極の固体電解質膜(ナフィオン膜)へのホットプレス温度を190℃にし、燃料極中のナフィオンの溶出を抑制するようにした。6Mのメタノールを用いると、燃料中への燃料極触媒の溶出が検出され、溶出量はホットプレス温度が低い程大きく、また30分間の6Mメタノール中での運転の影響は、ホットプレス温度が低い程大きかった。
補足
実施例ではプロトン導電性高分子固体電解質としてNafion(デュポン社の登録商標)を示したが、他のパーフルオロスルホン酸ポリマーや芳香族ポリマーのスルホン酸化合物などでも良い。
実施例の直接メタノール形燃料電池のブロック図 実施例での制御部のブロック図 燃料極の溶出に伴う電圧電流特性の変化を示す特性図
符号の説明
2 直接メタノール形燃料電池
4 燃料電池スタック
6 高濃度メタノールタンク
8 循環タンク
10 廃液タンク
12 制御回路
14 ラジエター
16 ファン
18 バイパス弁
20 入力インターフェース
22 制御処理装置(CPU)
24 出力インターフェース
26 劣化検出部
28 LCD
P1 燃料供給ポンプ
P2 燃料調整ポンプ
P3 空気ポンプ
P4 廃液ポンプ
CS メタノール濃度センサ
TS 温度センサ
LS1〜LS3 レベルセンサ
DS 劣化センサ
W 覗き窓
SW マニュアルスイッチ

Claims (2)

  1. プロトン導電性高分子固体電解質膜の両側に、少なくとも貴金属または貴金属を担持した炭素からなる電極触媒と、プロトン導電性高分子固体電解質とを含有する燃料極と空気極とを設けて、燃料極側に燃料としてのメタノールと水を供給し、空気極側に空気中の酸素を供給して発電するようにした直接メタノール形燃料電池であって、
    燃料中への燃料極材料の溶出を検出するための手段と、
    前記検出がされた際に、燃料濃度を下げる側、もしくは運転温度を下げる側、あるいは燃料電池の出力を制限する側に、フィードバックするための制御手段とを設けたことを特徴とする、直接メタノール形燃料電池。
  2. プロトン導電性高分子固体電解質膜の両側に、少なくとも貴金属または貴金属を担持した炭素からなる電極触媒と、プロトン導電性高分子固体電解質とを含有する燃料極と空気極とを設けて、燃料極側に燃料としてのメタノールと水を供給し、空気極側に空気中の酸素を供給して発電するようにした直接メタノール形燃料電池の運転方法であって、
    燃料中への燃料極材料の溶出を検出した際に、燃料濃度を下げる側、もしくは運転温度を下げる側、あるいは燃料電池の出力を制限する側に、フィードバックすることを特徴とする、直接メタノール形燃料電池の運転方法。
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