JP4762023B2 - 窒化ガリウム系化合物半導体積層物およびその製造方法 - Google Patents

窒化ガリウム系化合物半導体積層物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高出力の青色、緑色、あるいは紫外領域の光を発する発光素子の製造に有用な窒化ガリウム系化合物半導体積層物およびその製造方法に関する。
近年、短波長の光を発光する発光素子用の半導体材料として、窒化物半導体材料が注目を集めている。一般に窒化物半導体は、サファイア単結晶を始めとする種々の酸化物結晶、炭化珪素単結晶およびIII−V族化合物半導体単結晶等を基板として、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)あるいは水素化物気相エピタキシー法(HVPE法)等によって積層される。
現在、工業レベルで最も広く採用されている結晶成長方法は、基板としてサファイアやSiC、GaN、AlN等を用い、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)を用いて作製する方法で、前述の基板を設置した反応管内にIII族の有機金属化合物とV族の原料ガスを用い、温度700℃〜1200℃程度の領域でn型層、発光層およびp型層を成長させる。
各半導体層の成長後、基板もしくはn型層に負極を形成し、p型層に正極を形成することによって発光素子を得ることが出来る。
従来の発光層は、発光波長を調整するために組成を調整したInGaNを用い、これをInGaNよりバンドギャップの高い層で挟むダブルへテロ構造や、量子井戸効果を使う多重量子井戸構造が使われている。
多重量子井戸構造の発光層を有する窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において、井戸層の膜厚を2〜3nmとすると、良好な出力が得られる。しかし、駆動電圧が高いという問題点があった。反対に、井戸層の膜厚を2nm以下などとすると、駆動電圧は低下するが、良好な出力が得られない。
また、発光出力向上を目的に次のような発光層をドット状に形成した量子ドット構造が提案されている。
例えば、特許文献1および特許文献2等には、量子ドット構造の発光層を含む発光素子が開示され、量子ドット構造はアンチサーファクタント効果によって形成されている。特許文献2によれば、各発光体のサイズは0.5nm≦高さ≦50nm、0.5nm≦幅≦200nm、106≦密度≦1013cm-2が好ましいとされており、実施例では高さ6nmx幅40nmで作製されている。
しかし、量子ドットで覆われた部分以外は、ドット領域に比較して極端に低抵抗領域になるため優先的に電流が流れることになり、また、非ドット部は発光には寄与しないことになる。よって、ここで提案された量子ドット構造では、一つ一つの発光体の発光効率が向上したとしても、全体としては流した電流に対しての発光出力は低下するという問題点がある。
また、特許文献3は、Inを含む量子箱構造を開示している。この公報によれば、一旦形成した量子井戸構造を、水素中でアニールすることにより井戸層の昇華を引き起こし、量子箱構造としている。実施例では量子箱は200Å以下の寸法を有し、例えば20Å×20Å×20Åの寸法を有するとされている。発光体の密度は規定されていないが、掲載された図面からは、発光体で覆われる面積は隙間の面積と同等か隙間の方が大きい。
要するにこれらの技術では、量子ドットあるいは量子箱の形成されていない領域では、ドットあるいは箱は全く形成されていない構造とされており、故に、量子ドットあるいは量子箱の形成されている領域に比較して極端に低抵抗領域になるため、この部分に優先的に電流が流れることになる。
このような、ドットあるいは箱の覆わない領域で発光体が形成されていないという構造では、駆動電圧低下の効果は見られるものの、同時に発光出力の低下を招くという問題点があり、実際には使用に耐えない。
さらに、特許文献3では、通常の量子井戸構造を形成後、水素中でアニールして貫通転位上のInGaN結晶を分解させて量子箱構造を形成している。しかし、量子井戸構造を水素中でアニールすることは、残って量子箱構造となるべき部分でもIn抜けを誘発し、発光波長を短波長化させるという不具合を生じる。
また、特許文献4では、高効率の発光を得るために、井戸層に膜厚のばらつきを持たせた多重量子井戸構造の発光層が提案されている。この明細書では、添付の図面を見る限り、全井戸層に膜厚のばらつきが設けられている。
特開平10−79501号公報 特開平11−354839号公報 特開2001−68733号公報 米国特許出願公開US2003/0160229A1号明細書
本発明の目的は、駆動電圧が低下され、かつ、良好な発光出力が得られる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造に有用な窒化ガリウム系化合物半導体積層物を提供することである。
本発明は、以下の発明を提供する。
(1)基板上にn型層、発光層およびp型層を有し、該発光層が交互に井戸層と障壁層で積層された多重量子構造であり、かつ、該発光層がn型層とp型層で挟まれて配置された窒化ガリウム系化合物半導体積層物において、該多重量子構造を構成する井戸層は厚さが不均一な井戸層と厚さが均一な井戸層とからなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(2)p型層に最も近い井戸層は厚さが均一である上記1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(3)n型層に最も近い井戸層は厚さが均一である上記1または2項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(4)均一な厚さ井戸層の膜厚が1.8〜5nmである上記1〜3項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(5)不均一な厚さの井戸層の、薄膜部の膜厚が2.7nm以下である上記1〜4項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(6)多重量子井戸構造が、井戸層と障壁層とが3〜10回積層された構造である上記1〜5項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(7)障壁層が、GaN、AlGaNおよび井戸層を形成するInGaNよりもIn比率の小さいInGaNからなる群から選ばれた窒化ガリウム系化合物半導体である上記1〜6項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(8)障壁層がGaNである上記7項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。(9)障壁層がドーパントを含む上記1〜8項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(10)ドーパントが、C、Si、Ge、Sn、Pb、O、S、Se、Te、Po、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raの群から選ばれた少なくとも1種類である上記9項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(11)ドーパントの濃度が1×1017cm-3から1×1018cm-3である上記9または10項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(12)障壁層の膜厚が7nm〜50nmである上記1〜11項いずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(13)障壁層の膜厚が14nm以上である上記12項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(14)井戸層がInを含む上記1〜13項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(15)障壁層の少なくとも基板側の表面にInを含まない薄層が存在する上記14項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
(16)上記1〜15項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物のn型層に負極を、p型層に正極をそれぞれ設けた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(17)上記16項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を用いてなるランプ。(18)井戸層形成後、該井戸層の一部を分解または昇華させることによって、厚さが不均一な井戸層を形成することからなる上記1〜15項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(19)井戸層を形成する際の基板温度T1および井戸層の一部を分解または昇華させる際の基板温度T2がT1≦T2である上記18項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(20)井戸層の一部の分解または昇華を、窒素源を含みかつIII族金属源を含まない雰囲気下で行なう上記18または19項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
(21)井戸層の一部の分解または昇華を、障壁層の形成工程で行なう上記18〜20項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
発光層を形成する多重量子構造の井戸層に、厚さが不均一な井戸層と、厚さが均一な井戸層とを混在させることを骨子とする本発明によれば、良好な発光出力を得て、かつ、駆動電圧を低下させた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が得られる。
さらに、本発明によって得られる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、逆方向耐圧特性の劣化が少ない。
また、厚さが不均一な井戸層を窒素源の存在下で形成することによって、井戸層から発生する光の短波長化を防止することができる。
窒化ガリウム系化合物半導体発光素子のn型層、発光層およびp型層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体として、一般式AlxInyGa1-x-yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体が周知であり、本発明におけるn型層、発光層およびp型層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体としても、一般式AlxInyGa1-x-yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体を何ら制限なく用いることができる。
基板には、サファイア、SiCなどを用いることができるほか、GaP、GaAs、Si、ZnO、GaNなど従来公知の基板を何ら制限なく用いることができる。
GaN基板を除いて、原理的には窒化ガリウム系化合物とは格子整合しないこれらの基板上に窒化ガリウム系化合物半導体を積層するために、特許第3026087号公報や特開平4−297023号公報に開示されている低温バッファ法や特開2003−243302号公報などに開示されているSP(Seeding Process)法と呼ばれる格子不整合結晶エピタキシャル成長技術を用いることができる。特に、GaN系結晶を作製することが可能な程度の高温でAlN結晶膜を作製するSP法は、生産性の向上などの観点で優れた格子不整合結晶エピタキシャル成長技術である。
低温バッファやSP法などの格子不整合結晶エピタキシャル成長技術を用いた場合、その上に積層する下地としての窒化ガリウム系化合物半導体は、アンドープかもしくは5×1017cm-3程度の低ドープのGaNであることが望ましい。下地層の膜厚は、1〜20μmであることが望ましく、5〜15μmであることが更に好適である。その上に、n型層、発光層およびp型層が順次積層される。
本発明において発光層を形成する多重量子井戸構造の井戸層は厚さが均一な井戸層と厚さが不均一な井戸層が必ず混在している。本発明において「厚さが均一」とは、膜厚がどこにおいても平均膜厚の±10%以内に入っていることをいう。±7%以内に入っていることが好ましい。「厚さが不均一」とは、膜厚が平均膜厚の±10%以内に入っていない部分があることをいう。「平均膜厚」とは、その膜の最大膜厚と最小膜厚を算術平均した膜厚をいう。厚さが不均一な井戸層において、平均膜厚よりも厚い部分を「厚膜部」といい、薄い部分を「薄膜部」という。
各井戸層の厚さが均一であるか不均一であるかの判定および測定は、窒化ガリウム系化合物半導体の断面TEM写真によってできる。例えば、200,000倍から2,000,000倍のTEM写真で断面を観察すると、各井戸層の膜厚変化を測定することができる。図3から図10は実施例1によって作製したチップの倍率1,000,000倍の断面TEM写真である。倍率を考慮してその膜厚を算出することができる。各図の横に付した表に、各井戸層のその図における最大膜厚と最小膜厚が記載されている。これらの8つの図を総合して求めた各井戸層の最大膜厚と最小膜厚から、各井戸層が厚さの均一な井戸層か不均一な井戸層か判定できる。最大膜厚と最小膜厚を算術平均して求めた平均膜厚よりも厚い部分が厚膜部であり薄い部分が薄膜部である。図中、Aが厚膜部であり、Bが薄膜部である。各井戸層の最大膜厚と最小膜厚は、断面TEM写真を複数箇所、例えば隣り合わせから20μmの間隔で少なくとも8箇所観察して求める。
発光層を形成する多重量子井戸構造中の全ての井戸層において厚さが不均一である場合、全ての井戸層において厚さが均一である場合に比較して、駆動電圧は低下するが、発光出力も低下するかまたは同等である。ところが、全ての井戸層の厚さを不均一にせずに、井戸層の一部を均一な厚さにすると、その理由はよく分からないが、駆動電圧が低下し、発光出力が増大する。特に、p型層またはn型層に最も近い井戸層の厚さが均一である場合に、発光出力の増大効果は大きい。p型層に最も近い井戸層とn型層に最も近い井戸層の両者の厚さが均一である場合、発光出力の増大効果は最大となるが、駆動電圧の低下効果も減少する。従って、厚さが均一な井戸層は、p型層に最も近い井戸層とn型層に最も近い井戸層の両者を含んでもよいが、どちらか一方を含むことが好ましい。厚さが均一な井戸層として、p型層に最も近い井戸層を含むことが特に好ましい。
厚さの均一な井戸層の数が増大すると、駆動電圧の低下効果は減少する。従って、厚さの均一な井戸層の数は1以上で、井戸層全体の数の60%以下が好ましい。井戸層全体の数の40%以下がさらに好ましい。
厚さが均一な井戸層の厚さは1.8〜5nmが好ましい。この範囲以外の厚さにすると、発光出力の低下を招く。更に好ましくは、2.0〜3.5nmの領域である。
厚さが不均一な井戸層の厚膜部の厚みは、1.8nmから5nm程度であることが好ましい。厚膜部を、この範囲以外の厚みとすると、発光出力の低下を招く。更に好ましくは、2.3nmから3.5nmの領域が好適である。また、厚膜部の幅は10〜5000nmであることが好ましい。更に、20〜1000nmが好適である。
厚膜部の比率は井戸層全体に対して30〜90%であることが好ましく、駆動電圧の低減と出力の増大の両方を実現できる。更に好ましくは、60〜90%である。この厚膜部および薄膜部の比率も、断面TEM写真から求めた幅の測定値に基づいて算出できる。
薄膜部の幅は、1〜200nmが好ましい。さらに好ましくは5〜150nmが好適である。
この厚膜部の最大膜厚と薄膜部の最小膜厚の差は1〜3nm程度が好ましい。薄膜部の膜厚としては1.0〜2.7nmが好ましい。
薄膜部は膜厚が0である領域、即ち井戸層が全くない領域を含んでも良いが、発光出力低下の原因になるので、その領域は少ない方が良い。井戸層全体に対して30%以下が好ましく、20%以下がさらに好ましく、10%以下だと特に好ましい。この比率は断面TEM写真における幅の測定値に基づいて算出できる。
井戸層はInを含む窒化ガリウム系化合物半導体であることが好ましい。Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体は、厚膜部および薄膜部を有する構造となりやすい結晶系であり、また、青色の波長領域の発光を強い強度で発光することができる。
障壁層は、GaNやAlGaNのほか、井戸層を構成するInGaNよりもIn比率の小さいInGaNで形成することができる。中でも、GaNが好適である。
障壁層は複数の層が積層された構造でもよい。井戸層がInを含む窒化ガリウム系化合物半導体である場合、障壁層の少なくとも基板側の井戸層と接する表面にはInを含まない薄層を設けることが好ましい。この薄層を設けることにより、井戸層中のInの分解昇華を抑制し、発光波長の安定制御が可能となり、好適である。この薄層は、井戸層の成長温度と同程度の基板温度で設けられることが好ましい。
障壁層にドーパントをドープすると、駆動電圧が低下するので好ましい。ドーパント元素としては、C、Si、Ge、Sn、Pb、O、S、Se、Te、Po、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raなどが挙げられる。中でもSiやGeが好ましく、Siがもっとも好ましい。
ドーパントの濃度は、5×1016cm-3〜1×1018cm-3が好ましい。5×1016cm-3未満では駆動電圧の低下効果が減少する。1×1018cm-3を超えると逆方向電圧特性が悪くなる傾向がある。更に好ましくは1×1017cm-3〜5×1017cm-3である。
障壁層の膜厚は、7nm以上であることが好ましく、さらに好ましくは14nm以上である。障壁層の膜厚が薄いと、井戸層における厚膜部と薄膜部の厚さの差を埋めきらず、井戸層における厚膜部および薄膜部の形成を阻害し、発光効率の低下やエージング特性の低下を引き起こす。また、膜厚が厚すぎると、駆動電圧の上昇や発光出力の低下を引き起こす。このため、障壁層の膜厚は50nm以下であることが好ましい。
多重量子井戸構造における積層の回数は3回から10回程度が好ましく、3回から6回程度がさらに好ましい。各井戸層および障壁層において、組成および構造を変化させてもよい。
n型層は通常1〜10μm、好ましくは2〜5μm程度の厚さで、負極を形成するためのnコンタクト層と発光層よりもバンドギャップが大きく発光層に接しているnクラッド層からなる。nコンタクト層とnクラッド層は兼ねてもよい。nコンタクト層としてはSiまたはGeを高濃度にドープすることが好ましい。これらのドーパントをドープして形成したn型層は、キャリア濃度が5×1018cm-3から2×1019cm-3程度に調整されていることが好適である。
nクラッド層は、AlGaN、GaN、InGaNなどで形成することが可能であるが、InGaNとする場合には発光層のInGaNのバンドギャップよりも大きい組成とすることが望ましいことは言うまでもない。nクラッド層のキャリア濃度は、nコンタクト層と同じでも良いし、大きくても小さくても良い。その上に形成される発光層の結晶性をよくするために、成長速度、成長温度、成長圧力、ドープ量などの成長条件を適宜調節して、平坦性の高い表面とすることが好ましい。
またnクラッド層は、組成や格子定数の異なる層を、交互に複数回積層して形成しても良い。その際、積層する層によって組成のほか、ドーパントの量や膜厚などを変化させても良い。
p型層は通常0.01〜1μmの厚さで、発光層に接しているpクラッド層と正極を形成するためのpコンタクト層からなる。pクラッド層とpコンタクト層は兼ねることができる。pクラッド層は、GaN、AlGaNなどを用いて形成し、pドーパントとしてMgをドープする。電子のオーバーフローを防ぐため、発光層の材料よりも大きなバンドギャップを有する材料で形成することが望ましい。また、効率的に発光層にキャリアを注入できるように、高キャリア濃度の層として形成することが望ましい。
pクラッド層に関しても、組成や格子定数の異なる層を、交互に複数回積層して形成しても良い。その際、積層する層によって組成のほか、ドーパントの量や膜厚などを変化させても良い。
pコンタクト層は、GaN、AlGaN、InGaNなどを用いることができ、不純物としてMgをドープする。Mgをドープした窒化ガリウム系化合物半導体は、通常反応炉から取り出したままでは高抵抗であるが、アニール処理、電子線照射処理、マイクロ波照射処理など、活性化の処理を施すことでp伝導性を示すとされている。
また、pコンタクト層としてp型不純物をドープした燐化ホウ素を用いることもできる。p型不純物をドープした燐化ホウ素は、上記のようなp型化のための処理を一切行わなくてもp導電性を示す。
これらのn型層、発光層およびp型層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は特に限定されず、MBE、MOCVD、HVPEなどの周知の方法を周知の条件で用いることができる。中でも、MOCVD法が好ましい。
原料には、窒素源としてアンモニア、ヒドラジン、アジ化物などを用いることができる。また、III族有機金属としてトリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、トリメチルアルミニウム(TMAl)などを用いることができる。また、ドーパント源としてシラン、ジシラン、ゲルマン、有機ゲルマニウム原料、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)、その他有機金属類や水素化物などを用いることができる。キャリアガスには窒素および水素を使用できる。
厚さが不均一な井戸層は、井戸層を所定の厚さまで成長させた後、その一部を分解または昇華させることよって形成することが好ましい。Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体は分解または昇華し易いので好ましい。
Inを含む井戸層の成長は、基板温度を650〜900℃の範囲で行なうことが望ましい。それ以下の温度では結晶性の良い井戸層が得られないし、それ以上の温度では井戸層に取り込まれるInの量が少なくなり、意図する波長を発光する素子を作製することができないことがある。
Inを含むIII族金属源および窒素源を供給しつつ、Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体からなる井戸層を所定の厚さまで成長させた後、III族金属源の供給を停止した状態で、基板温度をそのまま維持または昇温させることによって、その一部を分解または昇華させることができる。キャリアガスは窒素が好ましい。分解または昇華は、基板温度を上記成長温度から700〜1000℃の範囲に昇温してまたは昇温させつつ行なうことが好ましい。
障壁層の成長は、井戸層の成長よりも高い基板温度で行なうことが好ましい。その温度領域は、700〜1000℃程度が好適であり、かつ、井戸層を成長させる温度をT1、障壁層を成長する温度をT2とすると、T1≦T2である。井戸層の成長後、T1からT2への昇温の過程で、窒素を含むキャリアガスと窒素源の供給は続けながら、III族原料の供給を停止する工程を含むことで、井戸層に厚膜部と薄膜部を効果的に形成し、厚さが不均一な井戸層とすることができる。この際、キャリアガスの変更などは必要ない。キャリアガスを水素に切り替えることは、発光の波長を短波長化させる。波長の変化の程度は安定的に制御することが難しいため、製品の生産性を低下させる。
T1からT2への昇温速度は、1〜200℃/分程度が望ましい。更に望ましくは、5〜150℃/分程度である。また、T1からT2への昇温に要する時間は30秒から10分程度が望ましい。更に望ましくは、1分から5分程度である。
障壁層の成長は、成長温度の異なる複数のステップで構成しても良い。つまり、井戸層上にT2の温度で障壁層を所定の膜厚で積層した後、成長温度をT3として更に障壁層を積層しても良い。T3がT2よりも低い温度であると、エージングによる特性の劣化などを抑える効果を付与することができて、より好適である。T3はT1と同じ温度であっても良い。
また、前述した如く、Inを含む井戸層の場合は障壁層の基板側表面にInを含まない薄層を設けることが好ましいが、その場合は、Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体からなる井戸層を温度T1で成長させた後、同じ基板温度でIn源のみ供給を停止して、窒化ガリウム系化合物半導体からなる障壁層を温度T1で先ず成長させればよい。
負極は、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限なく用いることができる。nコンタクト層と接する負極用のコンタクト材料としては、Al、Ti、Ni、Auなどのほか、Cr、W、Vなどを用いることができる。負極全体を多層構造としてボンディング性などを付与することができることは言うまでもない。
正極も、各種組成および構造の正極が周知であり、これら周知の正極を何ら制限なく用いることができる。
透光性の正極材料としては、Pt、Pd、Au、Cr、Ni、Cu、Coなどを含んでも良い。また、その一部が酸化されている構造とすることで、透光性が向上することが知られている。反射型の正極材料としては、上記の材料の他に、Rh、Ag,Alなどを用いることができる。
これらの正極は、スパッタリングや真空蒸着などの方法で形成することができる。特にスパッタリングを用いると、スパッタリングの条件を適切に制御することで、電極膜を形成した後にアニール処理を施さなくともオーミック接触を得ることができ、好適である。
発光素子の構造としては、反射型の正極を備えたフリップチップ型の素子としても良いし、透光性の正極や格子型、櫛型の正極を備えたフェイスアップ型の素子としても良い。
厚膜部と薄膜部を有する不均一な厚さの井戸層では、厚膜部から薄膜部に変わる境界領域で、材料の異なる井戸層と障壁層との界面が基板面に対して斜めになるので、基板面に対して垂直方向への光の取出し量が増大し、特に、反射電極を備えたフリップチップ型の素子構造とすることにより、発光強度が一層増大する。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いることで、駆動電圧をある程度自由に低下させることが可能である。しかしながら、あまりに電圧を下げてしまうと、それに従って発光出力の低下が見られる。発光出力の低下を引き起こさない駆動電圧とは、素子にした場合に20mAの電流を流した際の電圧が2.5V以上、更に望ましくは2.9V以上である。しかし、装置に組み込んだ際にあまりに電圧が高いことは不利となるので、同時に3.5V以下である必要もある。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いたことによる効果として、ダイオード特性の一つである、電流と電圧の相関において、電圧に対して電流が急激に上昇するテイクオフ電圧が低下することが上げられる。しかしながら、テイクオフ電圧に関しても、あまりに下げてしまうと、発光出力の低下が見られる。発光出力の低下を引き起こさないテイクオフ電圧とは、素子にした場合に20mAの電流を流した際の電圧が2.3V以上、更に望ましくは2.5V以上である。しかし、装置に組み込んだ際にあまりに電圧が高いことは不利となるので、同時に3.4V以下である必要もある。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を、発光ダイオードやレーザダイオード等の作製に用いることができる。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体積層物から半導体発光素子を作製し、例えば当業界周知の手段により透明カバーを設けてランプを作製できる。また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子と蛍光体を有するカバーを組み合わせて白色のランプを作製することもできる。
ひいては、高い発光強度の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を得るに貢献できる。この手法によって高輝度のLEDランプを作製することができる。更に、この手法によって作製したチップを組み込んだ携帯電話、ディスプレイ、パネル類などの電子機器や、その電子機器を組み込んだ自動車、コンピュータ、ゲーム機、などの機械装置類は、低電力での駆動が可能となり、高い特性を実現することが可能である。特に、携帯電話、ゲーム機、自動車部品などの、バッテリ駆動させる機器類において、省電力の効果を発揮する。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
図1は本実施例で作製した半導体発光素子用の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の模式図である(但し、発光層中の井戸層と障壁層は省略している)。図1に示すとおり、c面を有するサファイア基板上に、格子不整合結晶のエピタキシャル成長方法によってAlNからなるSP層を積層し、その上に基板側から順に、厚さ8μmのアンドープGaN下地層、約1×1019cm-3の電子濃度を持つ厚さ2μmの高Geドープn型GaNコンタクト層、1×1018cm-3の電子濃度を持つ厚さ20nmのSiドープn型In0.02Ga0.98Nクラッド層、6層の厚さ15nmの3×1017cm-3のSiをドープしたGaN障壁層と5層の厚さ3nmのアンドープのIn0.08Ga0.92Nの薄層で構成される井戸層とからなる多重量子井戸構造の発光層、厚さ16nmのMgドープp型Al0.05Ga0.95Nクラッド層、8×1017cm-3の正孔濃度を持つ厚さ0.2μmのMgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層を順に積層した構造である。
上記の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の作製は、MOCVD法を用いて以下の手順で行った。
先ず、サファイア基板を、誘導加熱式ヒータでカーボン製のサセプタを加熱する形式の多数枚の基板を処理できるステンレス製の反応炉の中に導入した。サセプタは、それ自体が回転する機構を持ち、基板を自転させる機構を持つ。サファイア基板は、窒素ガス置換されたグローブボックスの中で、加熱用のカーボン製サセプタ上に載置した。試料を導入後、窒素ガスを流通して反応炉内をパージした。
窒素ガスを8分間に渡って流通した後、誘導加熱式ヒータを作動させ、10分をかけて基板温度を600℃に昇温し、同時に炉内の圧力を15kPa(150mbar)とした。基板温度を600℃に保ったまま、水素ガスと窒素ガスを流通させながら2分間放置して、基板表面のサーマルクリーニングを行なった。
サーマルクリーニングの終了後、窒素キャリアガスのバルブを閉とし、反応炉内へのガスの供給を水素のみとした。
キャリアガスの切り替え後、基板の温度を1150℃に昇温させた。1150℃で温度が安定したのを確認した後、TMAlの配管のバルブを切り替え、TMAlの蒸気を含む気体を反応炉内へ供給して、これを反応炉の内壁に着いた付着物の分解により生じるN原子と反応させて、サファイア基板上にAlNを付着させる処理を開始した。
7分30秒間の処理の後、TMAlの配管のバルブを切り替え、TMAlの蒸気を含む気体を反応炉内へ供給を停止した。そのままの状態で4分待機し、炉内に残ったTMAl蒸気が完全に排出されるのを待った。続いて、アンモニアガスの配管のバルブを切り替え、炉内にアンモニアガスの供給を開始した。
4分の後、アンモニアの流通を続けながら、基板温度を1040℃に降温し、同時に炉内の圧力を40kPa(400mbar)とした。基板温度の降温中、TMGaの配管の流量調整器の流量を調節した。
基板温度が1040℃になったのを確認した後、温度の安定を待ち、その後TMGaのバルブを切り替えてTMGaの炉内への供給を開始し、アンドープのGaNの成長を開始し、約4時間に渡って上記のGaN層の成長を行なった。
このようにして、約8μmの膜厚を有するアンドープGaN下地層を形成した。
更に、このアンドープGaN下地層上に高Geドープのn型GaNコンタクト層を成長させた。アンドープGaN下地層の成長後、TMGaの炉内への供給を停止し、その後1分間で基板温度を1080℃に昇温させ、3分間保持し温度を安定化させた。その間、TMGe流通量を調節した。流通させる量は事前に検討してあり、GeドープGaNコンタクト層の電子濃度が約2×1019cm-3となるように調整した。アンモニアはそのままの流量で炉内へ供給し続けた。
3分間の温度安定化の後、厚さ10nmのGeドープn型GaNと厚さ10nmのアンドープGaNとの薄膜をこの順序で交互に100周期成長させ、約2μmのn型GaNコンタクト層を成長させた。GeドープGaN層はTMGaとテトラメチルゲルマニウム(TMGe)を炉内に供給することで作製し、アンドープGaN層はTMGaを供給することで作製した。これにより、平均キャリア濃度約1×1019cm-3のn型GaNコンタクト層を形成した。
最後のアンドープGaN層を成長させた後、TMGaのバルブを切り替えて、TMGaの炉内への供給を停止した。アンモニアはそのまま流通させながら、バルブを切り替えてキャリアガスを水素から窒素へ切り替えた。その後、基板の温度を1080℃から720℃へ低下させた。
炉内の温度の変更を待つ間に、SiH4の供給量を設定した。流通させる量は事前に検討してあり、Siドープn型InGaNクラッド層の電子濃度が1×1018cm-3となるように調整した。アンモニアはそのままの流量で炉内へ供給し続けた。
その後、炉内の状態が安定するのを待って、TMInとTEGaとSiH4のバルブを同時に切り替え、これらの原料の炉内への供給を開始した。所定の時間だけ供給を継続し、20nmの膜厚を有するSiドープIn0.02Ga0.98Nクラッド層を形成した。その後、TMIn、TEGaおよびSiH4のバルブを切り替え、これらの原料の供給を停止した。原料供給を停止した後、SiH4の供給量の設定を変更した。流通させる量は事前に検討してあり、SiドープGaN障壁層の電子濃度が3×1017cm-3となるように調整した。SiドープGaN障壁層の形成を下記の如く行なった。
基板温度は720℃のままでTEGaとSiH4の炉内への供給を開始し、所定の時間、SiをドープしたGaNからなる薄層の障壁層Aを形成し、TEGaとSiH4の供給を停止した。その後、成長を中断した状態で基板温度を920℃に昇温した。温度が安定したのち、炉内の圧力、アンモニアガスおよびキャリアガスの流量や種類はそのままで、TEGaとSiH4のバルブを切り替えてTEGaとSiH4の炉内への供給を再開し、そのまま基板温度920℃にて、規定の時間の障壁層Bの成長を行なった。続いて基板温度を720℃に下げ、そのままTEGaとSiH4の供給をし続け、障壁層Cの成長を行なった後、再びバルブを切り替えてTEGaとSiH4の供給を停止してGaN障壁層の成長を終了した。これにより、A、BおよびCからなる3層構造の障壁層で総膜厚が15nmのSiドープGaN障壁層を形成した。
GaN障壁層の成長終了後、30秒間に渡ってTEGaとSiH4の供給を停止した後、基板温度や炉内の圧力、アンモニアガスおよびキャリアガスの流量や種類はそのままで、TEGaとTMInのバルブを切り替えてTEGaとTMInの炉内への供給を行ない、井戸層の形成を行なった。あらかじめ決めた時間の間TEGaとTMInの供給を行なった後、再びバルブを切り替えてTMInの供給のみを停止してIn0.08Ga0.92N井戸層の成長を終了した。この時点では、3nmの膜厚を成すIn0.08Ga0.92N井戸層が形成された。引き続いて、SiH4の供給を再開し、2層目の障壁層の形成に入った。
このような手順を5回繰り返し、5層のSiドープGaN障壁層と5層のIn0.08Ga0.92N井戸層を形成した。これらの井戸層、障壁層の作製工程では、720℃にて障壁層Aを形成した後、障壁層Bを形成するために920℃へ昇温する工程ではIII族原料の供給を停止することによって半導体層の成長を中断した。
5層目のIn0.08Ga0.92N井戸層と形成した後、引き続いて6層目の障壁層の形成に入った。6層目の障壁層の形成においては、SiH4の供給を再開し、SiドープGaNからなる薄層の障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温し、そのまま基板温度920℃にて規定の時間障壁層Bの成長を行なった。続いて基板温度を720℃に下げ、そのままTEGaとSiH4の供給をし続け、障壁層Cの成長を行なった後、再びバルブを切り替えてTEGaとSiH4の供給を停止してGaN障壁層の成長を終了した。これにより、A、BおよびCからなる3層構造の障壁層で総膜厚が15nmのSiドープGaN障壁層を形成した。
以上の手順にて、厚さが不均一な井戸層(1〜4層目)と厚さが均一な井戸層(5層目)を含んだ多重量子井戸構造の発光層を形成した。
このSiドープGaN障壁層で終了する発光層上に、Mgドープのp型Al0.05Ga0.95Nクラッド層を形成した。
TEGaとSiH4の供給を停止して、SiドープGaN障壁層の成長を終了させた後、基板の温度を1000℃へ昇温し、キャリアガスの種類を水素に切り替え、炉内の圧力を15kPa(150mbar)に変更した。炉内の圧力が安定するのを待って、TMGaとTMAlとCp2Mgのバルブを切り替え、これらの原料の炉内への供給を開始した。その後、約3分間に渡って成長を行なった後、TEGaとTMAlとCp2Mgの供給を停止し、Mgドープのp型Al0.05Ga0.95Nクラッド層の成長を停止した。これにより、16nmの膜厚を有するMgドープのp型Al0.05Ga0.95クラッド層を形成した。
このMgドープのp型Al0.05Ga0.95Nクラッド層上に、Mgドープのp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層を形成した。
TMGaとTMAlとCp2Mgの供給を停止して、MgドープのAl0.05Ga0.95Nクラッド層の成長を終了させた後、炉内の圧力を20kPa(200mbar)に変更した。炉内の圧力が安定するのを待って、TMGaとTMAlとCp2Mgのバルブを切り替え、これらの原料の炉内への供給を開始した。Cp2Mgを流通させる量は事前に検討してあり、Mgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層の正孔濃度が8×1017cm-3となるように調整した。その後、約12分間に渡って成長を行なった後、TMGaとTMAlとCp2Mgの供給を停止し、Mgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層の成長を停止した。これにより、約0.2μmの膜厚を成すMgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層を形成させた。
Mgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層の成長を終了した後、誘導加熱式ヒータへの通電を停止して、基板の温度を室温まで20分をかけて降温した。降温中は、反応炉内の雰囲気を窒素のみから構成した。その後、基板温度が室温まで降温したのを確認して、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を大気中に取り出した。
以上のような手順により、半導体発光素子用の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。ここでMgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層は、p型キャリアを活性化するためのアニール処理を行なわなくてもp型を示した。
次いで、上記の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて半導体発光素子の一種である発光ダイオードを作製した。
作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のp型AlGaNコンタクト層の表面上に、当業界周知の方法によって、コンタクト層側から順にPt、RhおよびAuを積層した構造を持つ反射性の正極を作製した。
更にその後窒化ガリウム系化合物半導体積層物にドライエッチングを行ない、高Geドープのn型GaNコンタクト層の負極形成部分を露出させ、露出した部分にコンタクト層側から順にTiおよびAlを積層して負極を作製した。これらの作業により、図2に示すような形状を持つ電極を作製した。
このようにして正極および負極を形成した窒化ガリウム系化合物半導体積層物について、サファイア基板の裏面を研削、研磨してミラー状の面とした。その後、該窒化ガリウム系化合物半導体積層物を350μm角の正方形の個々のチップに切断し、電極が下になるようにサブマウント上に配置した。更にそのサブマウントをリードフレーム上に載置し、金線でリードフレームへ結線して発光ダイオードとした。
上記のようにして作製した発光ダイオードの正極および負極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧(駆動電圧)は3.2Vであった。また、発光波長は460nmであり、発光出力は10.8mWを示した。このような発光ダイオードの特性は、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のほぼ全面から作製された発光ダイオードについて、ばらつきなく得られた。
また、電流30mAにて100時間の通電を行なった前後において、電流10μAにおける逆方向電圧を測定し、比較したところ、逆方向電圧の変化率は0%であった。
また、得られたチップの一つについて、断面TEMにて倍率1000,000倍で観察した写真の一例が図3から図10である。観察は、ある断面について20μm間隔で配置した8部位で行なった。井戸層の番号は窒化物半導体積層構造の表面側(半導体側)から数えた番号順に1から5としている。すなわち、井戸層1はp型層側、井戸層5はn型層側に位置する。図中、Aは厚膜部であり、Bは薄膜部である。また、図3から図10にはその部位における各井戸層の最大膜厚と最小膜厚を表にして記載してある。
図3から図10に示された8つの部位を総合して、各井戸層の最大膜厚、最小膜厚、平均膜厚および最大膜厚ならびに最小膜厚の平均膜厚からの差の割合を求めた結果を表1に示す。
表1から、井戸層1は膜厚の範囲が平均膜厚から±5.1%であり、10%以内であるから本発明における厚さが均一の井戸層であることが分かる。また、井戸層2〜5は膜厚の範囲が平均膜厚からそれぞれ±28.0%、±24.0%、±31.9%および±30.6%であり、全て10%を超えており、本発明における厚さが不均一の井戸層であることが分かる。井戸層2〜5において、それぞれの平均膜厚よりも厚い部分が厚膜部であり、薄い部分が薄膜部である。
図3〜図10から障壁層は約15nmの膜厚であった。障壁層は井戸層の薄膜部と厚膜部との膜厚の差を完全に埋めていた。
図11から図18は、図3から図10における部位の近傍を倍率200,000倍に変更して観察したTEM写真である。全ての図において、井戸層1は均一な厚さであることが分かる。
これらのTEM写真において、井戸層2から5の厚膜部の幅および薄膜部の幅を測定し、その分布を評価した。なお、各井戸層における厚膜部および薄膜部の判定は、図3〜図10から求めた上記の各井戸層の平均厚さに基づいて行なった。その結果を表2に示す。例えば、図11のTEM写真における井戸層2では、TEM写真の視野の左側から厚膜部が幅250nmあり、続いて薄膜部が60nmの幅にわたってあり、続いて厚膜部が105nmあり、続いて薄膜部が35nmあり、続いて厚膜部が75nmあったが、表中に厚膜部(250nm)−薄膜部(60nm)−厚膜部(105nm)−薄膜部(35nm)−厚膜部(75nm)と記入されている。
この表から、各井戸層の薄膜部および厚膜部の幅の分布状態を求めると、薄膜部は井戸層2が30〜100nm、井戸層3が30〜100nm、井戸層4が30〜100nm、井戸層5が35〜100nmであった。また、厚膜部は井戸層2が20〜450nm、井戸層3が60〜580nm、井戸層4が60〜580nm、井戸層5が65〜600nmであった。
(比較例1)
本比較例では、全ての井戸層を厚さが均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、1〜5層目の障壁層においても、6層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.9Vであった。また、発光波長は460nmであり、発光出力は9mWを示した。
また、10μAの逆方向電圧の初期値と、電流30mAにて100時間の通電を行った後の10μAの逆方向電圧値を比較したところ、逆方向電圧の変化率はマイナス0.5%であった。
(比較例2)
本比較例では、全ての井戸層を厚さが不均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、6層目の障壁層においても、1〜5層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を停止して、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.15Vであった。また、発光波長は460nmであり、発光出力は9mWを示した。
また、10μAの逆方向電圧の初期値と、電流30mAにて100時間の通電を行った後の10μAの逆方向電圧値を比較したところ、逆方向電圧の変化率はマイナス7%であった。
(実施例2)
本実施例では、n型層に最も近い井戸層のみを厚さが均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、2層目の障壁層において、実施例1の6層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温したこと、および6層目の障壁層において、実施例1の1〜5層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を停止して、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.3Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は10.8mWを示した。
(実施例3)
本実施例では、p型層から数えて3番目の井戸層のみを厚さが均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、4層目の障壁層において、実施例1の6層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温したこと、および6層目の障壁層において、実施例1の1〜5層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を停止して、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.2Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は9.7mWを示した。
(実施例4)
本実施例では、p型層に最も近い井戸層とn型層に最も近い井戸層の二つを厚さが均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、2層目の障壁層においても、6層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.45Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は11.4mWを示した。
(実施例5)
本実施例では、p型層から数えて1番目と2番目の二つの井戸層を厚さが均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、5層目の障壁層においても、6層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.2Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は10.2mWを示した。
(実施例6)
本実施例では、p型層から数えて1〜3番目の三つの井戸層を厚さが均一な井戸層としたことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。即ち、4層目および5層目の障壁層においても、6層目と同様に障壁層Aを形成した後、TEGaとSiH4の炉内への供給を続けたまま、基板温度を920℃に昇温したことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体積層物を作製した。
この窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例1と同様に発光ダイオードを作製して評価した。その結果、電流20mAにおける順方向電圧は3.35Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は10.2mWを示した。
(実施例7)
本実施例では、実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物に実施例1と同様に正極および負極を設けたが、正極の構造はp−AlGaNコンタクト層の表面から順にAuおよびNiOを積層した透明電極とその上に順にTi、Au、AlおよびAuを積層したパッド電極からなる構造とした。
この発光ダイオードを実施例1と同様に性能を評価したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.2Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は5.5mWを示した。このような発光ダイオードの特性は、作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物のほぼ全面から作製された発光ダイオードについて、ばらつきなく得られた。
(比較例3)
本比較例では、比較例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例7と同じ電極構造を有する発光ダイオードを作製した。
実施例1と同様に性能を評価したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.9Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は5mWを示した。
(比較例4)
本比較例では、比較例2で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて、実施例7と同じ電極構造を有する発光ダイオードを作製した。
実施例1と同様に性能を評価したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.15Vであり、発光波長は460nmであり、発光出力は5mWを示した。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体積層物を用いて得られる発光素子は、低い駆動電圧と高い発光出力を有するので、その産業上の利用価値は非常に大きい。
実施例および比較例で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面を示した模式図である。 実施例および比較例で作製した発光ダイオードの電極構造を示した模式図である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。 実施例1で作製した窒化ガリウム系化合物半導体積層物の断面TEM写真の別の一例である。

Claims (21)

  1. 基板上にn型層、発光層およびp型層を有し、該発光層が交互に井戸層と障壁層で積層された多重量子構造であり、かつ、該発光層がn型層とp型層で挟まれて配置された窒化ガリウム系化合物半導体積層物において、該多重量子構造を構成する井戸層は厚さが不均一な井戸層と厚さが均一な井戸層とからなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  2. p型層に最も近い井戸層は厚さが均一である請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  3. n型層に最も近い井戸層は厚さが均一である請求項1または2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  4. 均一な厚さ井戸層の膜厚が1.8〜5nmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  5. 不均一な厚さの井戸層の、薄膜部の膜厚が2.7nm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  6. 多重量子井戸構造が、井戸層と障壁層とが3〜10回積層された構造である請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  7. 障壁層が、GaN、AlGaNおよび井戸層を形成するInGaNよりもIn比率の小さいInGaNからなる群から選ばれた窒化ガリウム系化合物半導体である請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  8. 障壁層がGaNである請求項7に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  9. 障壁層がドーパントを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  10. ドーパントが、C、Si、Ge、Sn、Pb、O、S、Se、Te、Po、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raの群から選ばれた少なくとも1種類である請求項9に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  11. ドーパントの濃度が1×1017cm-3から1×1018cm-3である請求項9または10に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  12. 障壁層の膜厚が7nm〜50nmである請求項1〜11のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  13. 障壁層の膜厚が14nm以上である請求項12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  14. 井戸層がInを含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  15. 障壁層の少なくとも基板側の表面にInを含まない薄層が存在する請求項14に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物のn型層に負極を、p型層に正極をそれぞれ設けたことを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  17. 請求項16に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を用いてなるランプ。
  18. 井戸層形成後、該井戸層の一部を分解または昇華させることによって、厚さが不均一な井戸層を形成することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
  19. 井戸層を形成する際の基板温度T1および井戸層の一部を分解または昇華させる際の基板温度T2がT1≦T2である請求項18に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
  20. 井戸層の一部の分解または昇華を、窒素源を含みかつIII族金属源を含まない雰囲気下で行なう請求項18または19に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
  21. 井戸層の一部の分解または昇華を、障壁層の形成工程で行なう請求項18〜20のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体積層物の製造方法。
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