以下に、本発明に係る作動ガス循環型エンジンの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンの模式的な概略構成図、図2は、本発明の実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンの始動時を説明するタイムチャート、図3は、本発明の実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンの酸素供給量マップ、図4は、本発明の実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンの水素供給量マップ、図5は、本発明の実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素供給制御を説明するフローチャート、図6は、本発明の実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の水素供給制御を説明するフローチャートである。
本実施形態の作動ガス循環型エンジン1は、図1に示すように、反応物と、空気より比熱比の高い作動ガスとが供給され、反応物の反応に伴って作動ガスが膨張可能である燃焼室CCと、作動ガスを燃焼室CCの排気側から吸気側に循環させ再び燃焼室CCに供給可能な循環経路20と、反応物を供給する供給手段としての供給装置2とを備え、循環経路20を介して排気ガス中に含まれる作動ガスを燃焼室CCの排気側から吸気側に循環させ再び燃焼室CCに供給可能な、いわゆる、閉サイクルエンジンである。本実施形態では、反応物は、酸化剤としての酸素と、この酸化剤によって燃焼する燃料としての水素とが用いられ、本実施形態の供給装置2は、酸素供給手段としての酸化剤供給装置30と、水素供給手段としての燃料供給装置40とを有する。したがって、作動ガスは、燃焼室CCにおいて、酸化剤供給装置30から供給される酸素と燃料供給装置40から供給される水素との反応に伴って発生する反応熱、すなわち、水素の燃焼(発熱反応)に伴って発生する燃焼熱により膨張する。
具体的には、作動ガス循環型エンジン1は、図1に示すように、酸化剤、この酸化剤によって燃焼する燃料及びこの燃料の燃焼に伴って動力を発生させる作動ガスが供給される燃焼室CCと、この燃焼室CCの吸気側と排気側とを繋ぐ循環経路20とを備え、その作動ガスが大気へと放出されることなく循環経路20を介して再び燃焼室CCに供給されるよう構成される。この作動ガス循環型エンジン1は、燃焼室CC内で燃料を燃焼させ、この燃料の燃焼に伴って作動ガスを熱膨張させて動力を発生させることで熱効率を向上するものである。
この作動ガス循環型エンジン1は、燃焼室CCが形成されるエンジン本体10と、燃焼室CCの吸気側と排気側とを繋ぐ循環経路20と、燃焼室CCに酸化剤を供給する酸化剤供給装置30と、燃焼室CCに燃料を供給する燃料供給装置40と、作動ガス循環型エンジン1の各部を制御する電子制御装置(ECU)50と、凝縮器60と、貯留タンク70とを備える。エンジン本体10の燃焼室CCと循環経路20とは、ともに作動ガスが充填されており、作動ガスは、燃焼室CCと循環経路20との間で循環する。なお、図1に例示するエンジン本体10は、1気筒のみを図示しているが、本発明の作動ガス循環型エンジン1は、これに限らず、多気筒のエンジン本体10も適用可能である。
本実施形態の燃焼室CCは、エンジン本体10に形成される。このエンジン本体10の燃焼室CCは、酸化剤と、この酸化剤によって燃焼しここでは燃焼により水蒸気を生成する燃料と、作動ガスとが供給され、燃料の燃焼に伴って作動ガスが膨張可能であると共に燃料の燃焼後の排気ガスとして水蒸気と作動ガスとを排気可能なものである。
具体的には、エンジン本体10は、燃焼室CCを形成するシリンダヘッド11、シリンダブロック12及びピストン13を備えている。ピストン13は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト19に連結し、シリンダヘッド11の下面の凹部11aとシリンダブロック12のシリンダボア12aとの間に区画される空間内に往復運動可能に配置される。燃焼室CCは、シリンダヘッド11の凹部11aの壁面とシリンダボア12aの壁面とピストン13の頂面13aとで囲まれた空間によって構成される。
エンジン本体10は、シリンダヘッド11に吸気ポート11b及び排気ポート11cが形成されている。吸気ポート11bと排気ポート11cとは、ともに循環経路20の一部をなすものである。吸気ポート11b、排気ポート11cは、それぞれ一端が燃焼室CC内に開口している。エンジン本体10は、吸気ポート11bの燃焼室CC側の開口部分に吸気弁15が配設されている。吸気弁15は、開弁時にこの吸気ポート11bの燃焼室CC側の開口を開く一方、閉弁時にこの吸気ポート11bの燃焼室CC側の開口を閉じるものである。エンジン本体10は、排気ポート11cの燃焼室CC側の開口部分に排気弁16が配設されている。排気弁16は、開弁時にこの排気ポート11cの燃焼室CC側の開口を開く一方、閉弁時にこの排気ポート11cの燃焼室CC側の開口を閉じるものである。
吸気弁15や排気弁16としては、例えば、不図示のカムシャフトの回転と弾性部材(弦巻バネ)の弾発力に伴って開閉駆動されるものがある。この種の吸気弁15や排気弁16においては、そのカムシャフトとクランクシャフト19の間にチェーンやスプロケット等からなる動力伝達機構を介在させることによってそのカムシャフトをクランクシャフト19の回転に連動させ、予め設定された開閉時期に開閉駆動させる。また、このエンジン本体10は、吸気弁15と排気弁16の開閉時期やリフト量を変更可能な、いわゆる可変バルブタイミング&リフト機構等の可変バルブ機構を備えていてもよく、これにより、その吸気弁15や排気弁16の開閉時期やリフト量を運転条件に応じた好適なものへと変更できるようになる。さらにまた、このエンジン本体10は、このような可変バルブ機構と同様の作用効果を得るべく、電磁力を利用して吸気弁15や排気弁16を開閉駆動させる、いわゆる電磁駆動弁を適用してもよい。
また、エンジン本体10は、吸気ポート11bの燃焼室CC側とは反対側の開口に吸気管17が接続される一方、排気ポート11cの燃焼室CC側とは反対側の開口に排気管18が接続されている。吸気管17と排気管18とは、ともに循環経路20の一部をなすものである。吸気管17は、筒状に形成され内部を流体が通過可能なものであり、後述するように燃焼室CCに作動ガスとしてのアルゴン(Ar)と、酸化剤としての酸素(O2)とを供給するための吸気通路である。つまり、燃焼室CCは、吸気弁15の開弁時に、この吸気管17から吸気ポート11bを介して酸化剤と作動ガスとが供給(吸気)される。一方、排気管18は、筒状に形成され内部を流体が通過可能なものであり、後述するように燃料としての水素(H2)の燃焼後の排気ガスとして、燃焼室CCから作動ガスとしてのアルゴン(Ar)と、水蒸気(H2O)とを排出するための排気通路である。つまり、燃焼室CCは、排気弁16の開弁時に、燃料の燃焼後の排気ガスとして、排気ポート11cを介して水蒸気と作動ガスとを排気管18に排気する。
循環経路20は、排気管18に排気された排気ガス中に含まれる作動ガスを燃焼室CCの排気側から吸気側に循環させ再び燃焼室CCに供給可能なものである。循環経路20は、上述した吸気ポート11b及び排気ポート11cと、吸気ポート11bの他端と排気ポート11cの他端とを繋ぐ循環通路21とを含んで構成される。これにより、この循環経路20内と燃焼室CC内とは、基本的には閉塞された空間をなす。循環通路21は、筒状に形成され内部を流体が通過可能なものであり、上述の吸気管17と排気管18とは、この循環通路21の一部をなす。
この作動ガス循環型エンジン1は、循環経路20と燃焼室CCとからなる閉塞された空間内に作動ガスが充填される。作動ガス循環型エンジン1は、この作動ガスを循環経路20の吸気管17、吸気ポート11bから燃焼室CC内、燃焼室CC内から循環経路20の排気ポート11c、排気管18、そして、この排気ポート11c、排気管18から循環通路21を介して再び吸気管17、吸気ポート11bへと循環させる。つまり、循環経路20は、燃焼室CCの吸気側(吸気ポート11b側)と排気側(排気ポート11c側)とを燃焼室CCの外部で接続し、作動ガスを大気へと放出することなく再び燃焼室CCに供給する。さらに言えば、循環経路20は、両端が燃焼室CCに連通すると共に一端からは水蒸気と作動ガスとを含む排気ガスが燃焼室CCから流入し、他端からは燃焼室CCが吸気する酸化剤と作動ガスとが燃焼室CCに対して流出可能である。ここでは、作動ガス循環型エンジン1は、吸気弁15が開弁した際に、循環通路21の酸化剤、作動ガスが吸気管17、吸気ポート11bを介して燃焼室CCに供給される。また、作動ガス循環型エンジン1は、排気弁16が開弁した際に、燃焼室CC内の排気ガスが排気ポート11c、排気管18を介して循環通路21に排出される。
さらに具体的には、循環経路20の循環通路21は、例えば、第1循環通路21aと、第2循環通路21bとを含んで構成されている。第1循環通路21aは、吸気ポート11bの他端と後述する凝縮器60の作動ガス排出口60bとを繋ぐものである。また、第2循環通路21bは、排気ポート11cの他端とこの凝縮器60の排気ガス導入口60aとを繋ぐものである。上述の吸気管17は、第1循環通路21aの一部をなす一方、排気管18は、第2循環通路21bの一部をなす。
ここで、循環経路20と燃焼室CCとからなる閉塞された空間内に充填される作動ガスとしては、空気より比熱比の高いガスが用いられる。作動ガスは、例えば、単原子ガスが用いられる。ここでは、本実施形態の作動ガスは、空気よりも比熱比の高いものであって、例えば、単原子ガスであるアルゴン(Ar)やヘリウム(He)等の希ガスが用いられる。本実施形態では、作動ガスは、上述のようにアルゴン(Ar)を用いるものとして説明する。
酸素供給手段としての酸化剤供給装置30は、上述したように反応物を供給する供給装置2をなすものであり、反応物として酸素を供給するものである。本実施形態の酸化剤供給装置30は、酸化剤としての酸素を循環経路20、ここでは吸気ポート11bを介して燃焼室CCに供給する。酸化剤供給装置30は、酸化剤貯留タンク31と、酸化剤噴射手段32と、酸化剤供給通路33と、レギュレータ34と、酸化剤流量計35と、サージタンク36とを含んで構成される。
酸化剤貯留タンク31は、酸化剤を高圧の状態で貯留するものである。酸化剤噴射手段32は、酸化剤貯留タンク31に貯留された酸化剤を吸気ポート11bに噴射し、この吸気ポート11bを介して酸化剤を燃焼室CCに供給するものである。酸化剤供給通路33は、酸化剤貯留タンク31と酸化剤噴射手段32とを繋ぐものである。レギュレータ34、酸化剤流量計35及びサージタンク36は、この酸化剤供給通路33上に設けられる。レギュレータ34と酸化剤流量計35とサージタンク36とは、酸化剤供給通路33における酸化剤の供給方向に対して、上流側(酸化剤貯留タンク31側)から下流側(酸化剤噴射手段32側)に向かってレギュレータ34、酸化剤流量計35、サージタンク36の順で設けられている。
ここで、本実施形態の酸化剤噴射手段32は、酸化剤を吸気ポート11bに噴射可能なようにシリンダヘッド11に設けられる。この酸化剤噴射手段32は、電子制御装置50によって制御される、いわゆる、酸化剤噴射弁である。本実施形態の酸化剤供給装置30は、酸化剤噴射手段32が酸化剤を吸気ポート11bに噴射することで吸気ポート11bを通る作動ガスと混ぜ合わせて燃焼室CCに送り込ませることができる。この結果、酸化剤は、吸気弁15の開弁に伴い吸気ポート11bを介して作動ガスと共に燃焼室CCに供給されることになる。電子制御装置50は、例えば、運転者がこの作動ガス循環型エンジン1に要求する駆動力(要求エンジン負荷)やエンジン回転数等の運転状態に応じて燃料の噴射時期や噴射量、言い換えれば供給量を制御する。電子制御装置50は、例えば、通常の運転時では、後述するように運転者がこの作動ガス循環型エンジン1に要求する駆動力やエンジン回転数等の運転状態に基づいて設定される燃料の噴射時期や噴射量(供給量)に応じて酸化剤の噴射時期や噴射量(供給量)を制御する。
レギュレータ34は、酸化剤供給通路33におけるレギュレータ34よりも下流側(酸化剤流量計35側)の圧力を電子制御装置50の指令に従った目標圧力に調整するものである。言い換えれば、このレギュレータ34は、酸化剤供給通路33における酸化剤の流量を制御するものである。また、酸化剤流量計35は、酸化剤供給通路33における酸化剤の流量を計測する手段であって、レギュレータ34で調整された酸化剤の流量の計測を行う。この酸化剤流量計35の計測信号は、電子制御装置50に送信される。また、サージタンク36は、酸化剤噴射手段32による酸化剤の噴射時に酸化剤供給通路33内に発生する脈動の低減を図るものである。
ここで、この酸化剤供給装置30が供給する酸化剤としては、上述のように酸素(O2)が用いられる。つまり、本実施形態の酸化剤貯留タンク31は、酸化剤としての酸素を例えば70MPa程度の高圧で貯留し、酸化剤噴射手段32は、この高圧の酸素(O2)を循環通路21に供給する。
水素供給手段としての燃料供給装置40は、上述したように反応物を供給する供給装置2をなすものであり、反応物として水素を供給するものである。本実施形態の燃料供給装置40は、燃料としての水素を燃焼室CCに直接供給する。燃料供給装置40は、燃料貯留タンク41と、燃料噴射手段42と、燃料供給通路43と、レギュレータ44と、燃料流量計45と、サージタンク46とを含んで構成される。
燃料貯留タンク41は、燃料を高圧の状態で貯留するものである。燃料噴射手段42は、燃料貯留タンク41に貯留された燃料を燃焼室CCに噴射するものである。燃料供給通路43は、燃料貯留タンク41と燃料噴射手段42を繋ぐものである。レギュレータ44、燃料流量計45及びサージタンク46は、この燃料供給通路43上に設けられる。レギュレータ44と、燃料流量計45と、サージタンク46とは、燃料供給通路43における燃料の供給方向に対して、上流側(燃料貯留タンク41側)から下流側(燃料噴射手段42側)に向かってレギュレータ44、燃料流量計45、サージタンク46の順で設けられている。
ここで、本実施形態の燃料噴射手段42は、燃料を燃焼室CC内に直接噴射可能なようにシリンダヘッド11に設けられる。この燃料噴射手段42は、電子制御装置50によって制御される、いわゆる、燃料噴射弁である。電子制御装置50は、例えば、通常の運転時では運転者がこの作動ガス循環型エンジン1に要求する駆動力(要求エンジン負荷)やエンジン回転数等の運転状態に応じて燃料の噴射時期や噴射量、言い換えれば供給量を制御する。
なお、運転者がこの作動ガス循環型エンジン1に要求する駆動力(要求エンジン負荷)は、例えば、通常の運転時においては作動ガス循環型エンジン1を搭載する車両のアクセル開度などに基づいて設定される。電子制御装置50は、例えば、作動ガス循環型エンジン1のエンジン回転数と要求する駆動力(要求エンジン負荷)とに基づいて、現在のエンジン回転数において、作動ガス循環型エンジン1に要求する駆動力(要求負荷)を得ることができる燃料の供給量を決定する。作動ガス循環型エンジン1のエンジン回転数は、例えばクランク角センサ51に基づいて検出することができる。クランク角センサ51は、例えば、作動ガス循環型エンジン1のクランクシャフト19の回転角度であるクランク角度を検出するものである。クランク角センサ51は、検出信号を電子制御装置50に送信する。電子制御装置50は、例えば、検出されたクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、作動ガス循環型エンジン1の回転速度としてエンジン回転数(rpm)を算出する。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト19の回転速度に対応し、このクランクシャフト19の回転速度が高くなれば、クランクシャフト19の回転数であるエンジン回転数も高くなる。
レギュレータ44は、燃料供給通路43におけるレギュレータ44よりも下流側(燃料流量計45及びサージタンク46側)の圧力を設定圧力に調整するものである。言い換えれば、このレギュレータ44は、燃料供給通路43における燃料の流量を制御するものである。また、燃料流量計45は、燃料供給通路43における燃料の流量を計測する手段であって、レギュレータ44で調整された燃料の流量の計測を行う。この燃料流量計45の計測信号は、電子制御装置50に送信される。また、サージタンク46は、燃料噴射手段42による燃料の噴射時に燃料供給通路43内に発生する脈動の低減を図るものである。
ここで、この燃料供給装置40が供給する燃料としては、酸化剤と共に燃焼するものが用いられ、本実施形態では、上述のように水素(H2)が用いられる。つまり、本実施形態の燃料貯留タンク41は、燃料としての水素を例えば70MPa程度の高圧で貯留し、燃料噴射手段42は、この高圧の水素を燃焼室CCに直接噴射する。
本実施形態の作動ガス循環型エンジン1は、燃焼室CC内に燃料としての水素(反応物)と酸化剤としての酸素(反応物)を供給し、水素を拡散燃焼させるものとして例示する。すなわち、上記のように構成される作動ガス循環型エンジン1は、燃焼室CC内に形成された高温の圧縮ガス(酸素(O2)及びアルゴン(Ar))の中に高圧の水素(H2)を噴射することにより、この水素の一部が自己着火し、水素と圧縮ガス(酸素)とが拡散混合しながら燃焼する。この燃焼室CC内での水素の燃焼によって、燃焼室CCの中では、水素と酸素(O2)が結合して水蒸気(H2O)が生成されると共に、比熱比の大きいアルゴン(Ar)が熱膨張を起こす。この結果、この作動ガス循環型エンジン1は、水素の拡散燃焼とアルゴンの熱膨張とによってピストン13が押し下げられ、これにより動力を発生する。
そして、作動ガス循環型エンジン1は、水素の燃焼とアルゴンの熱膨張とが一通り終わった際(例えば、ピストン13が下死点近くに位置している際)、排気弁16の開弁に伴って、燃焼室CC内から水蒸気とアルゴンとを含む排気ガスが排気ポート11cを介して排気管18に排出される。ここで、排出された排気ガス中のアルゴンは、エンジン本体10の熱効率を高めるために、循環経路20を介して燃焼室CCの排気側から吸気側に循環させ再び吸気側から燃焼室CCに供給する必要がある。しかしながら、同時に排出された排気ガス中の水蒸気は、3原子からなる分子(3原子分子)であり、単原子からなるアルゴンよりも比熱比が小さいので、アルゴンと共に燃焼室CCへ循環させてしまうと、エンジン本体10の熱効率を低下させるおそれがある。このため、この作動ガス循環型エンジン1は、排気ガスの中に含まれる水蒸気を取り除く手段を循環経路20上に設けている。
具体的には、作動ガス循環型エンジン1は、循環経路20を流動する排気ガスの中に含まれる水蒸気を取り除く手段として、凝縮器60を備える。さらに、この作動ガス循環型エンジン1は、冷却水循環路61と、冷却水ポンプ62と、ラジエータ63とを備える。
凝縮器60は、循環経路20に設けられ排気ガス中に含まれる水蒸気を凝縮して凝縮水(H2O)とするものである。凝縮器60は、循環通路21上の第2循環通路21bと第1循環通路21aとの間に設けられる。つまり、凝縮器60は、循環経路20上の酸化剤噴射手段32よりも排気側に設けられる。また、凝縮器60は、冷却水循環路61が内部を通るようにして接続されている。
冷却水循環路61は、凝縮器60に熱交換媒体としての冷却水を循環させるものであり、冷却水が流動可能である。この冷却水循環路61は、閉じられた環状の経路になっており、内部に冷却水が充填されている。
冷却水ポンプ62は、冷却水循環路61の経路上に設けられており、冷却水循環路61の冷却水は、この冷却水ポンプ62が駆動することで冷却水循環路61を循環することができる。
ラジエータ63は、冷却水循環路61の経路上に設けられており、冷却水循環路61を循環する冷却水を冷却可能なものである。ラジエータ63は、この作動ガス循環型エンジン1を搭載する車両の走行風などにより冷却水循環路61を循環する冷却水を冷却可能である。
したがって、この凝縮器60は、冷却水循環路61を循環しラジエータ63により冷却された冷却水が内部に循環、供給されることで、この冷却水と循環経路20を流れる排気ガスとを熱交換させ排気ガスを冷却することにより、排気ガスに含まれる水蒸気(H2O)を液化、凝縮して凝縮水とし排気ガスから分離する。すなわち、凝縮器60は、排気ガスをアルゴンと凝縮水とに分離することができる。このとき、凝縮器60にて循環経路20の排気ガスと熱交換をすることで熱を吸収し温度が上昇した冷却水は、冷却水循環路61を循環し再びラジエータ63を通過する際に放熱することで温度が低下し、すなわち、冷却される。つまり、冷却水循環路61を循環する冷却水は、凝縮器60にて吸収した熱をラジエータ63で放熱する。
そして、凝縮器60によって分離されたアルゴンは、凝縮器60の作動ガス排出口60bを介して第1循環通路21aに排出される。一方、凝縮器60によって分離された凝縮水は、凝縮器60の凝縮水排出口60cを介して凝縮水排出通路64に排出され、循環経路20の系外、ここでは後述する貯留タンク70に排出される。
ここで、この凝縮器60とラジエータ63とは、エンジン運転中に想定し得る最も高温の排気ガスが燃焼室CCから排出された際に、その排気ガス中の水蒸気が液化・凝縮される温度にまで排気ガス温度を下げることのできる容量(換言すれば排気ガスの冷却性能)に設定される。
上記のように構成される作動ガス循環型エンジン1は、燃焼室CC内での水素の燃焼に伴って比熱比の大きいアルゴンが熱膨張を起こすことでピストン13が押し下げられ、このピストン13がシリンダボア12a内で往復運動を繰り返すことにより、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を1つのサイクルとしてこのサイクルを繰り返す。ピストン13の往復運動は、コネクティングロッド14によってクランクシャフト19に伝達され、コネクティングロッド14とクランクシャフト19との作用により往復運動が回転運動に変換され、クランクシャフト19が回転する。この間、電子制御装置50は、クランクシャフト19の回転位置や、車両の運転席に設けられるアクセルペダル(不図示)の操作量であるアクセル開度等の運転状態に応じて、燃料供給装置40からの水素の供給量(燃料噴射手段42からの水素の噴射量)又は酸化剤供給装置30からの酸素の供給量(酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量)を制御する。
また、作動ガス循環型エンジン1は、クランクシャフト19の回転に伴って吸気弁15や排気弁16が往復運動し、循環経路20と燃焼室CCとの連通と遮断とを繰り返すことにより、吸排気を行ない上記の4つの行程を繰り返す。
すなわち、作動ガス循環型エンジン1は、吸気行程において、吸気弁15が開弁する一方、排気弁16が閉弁すると共に、ピストン13が上死点側から下死点側に移動することにより、循環経路20の吸気ポート11bを介して燃焼室CCに酸素とアルゴンとが吸気される。
次に、作動ガス循環型エンジン1は、圧縮行程において、吸気弁15が閉弁し吸気弁15と排気弁16の両方が閉弁状態となると共に、ピストン13が下死点側から上死点側に移動することにより、燃焼室CC内の酸素、アルゴンが圧縮され温度が上昇する。
次に、作動ガス循環型エンジン1は、燃焼行程において、燃焼室CC内に形成された高温の圧縮ガス(酸素及びアルゴン)の中に高圧の水素を噴射することにより、この水素の一部が自己着火し、水素と圧縮ガス(酸素)とが拡散混合しながら燃焼する。そして、水素が燃焼すると、これに伴って比熱比の大きいアルゴンが熱膨張を起こし、この水素の拡散燃焼とアルゴンの熱膨張とによってピストン13が押し下げられ、これにより、作動ガス循環型エンジン1は、動力を発生する。
次に、作動ガス循環型エンジン1は、排気行程において、吸気弁15が閉弁状態を維持する一方、排気弁16が開弁すると共に、ピストン13が下死点側から上死点側に移動することにより、水蒸気とアルゴンとを含む排気ガスが燃焼室CC内から循環経路20の排気ポート11cを介して排気管18に排出される。
そして、作動ガス循環型エンジン1は、水蒸気とアルゴンとを含む排気ガスが燃焼室CC内から循環経路20に排出され、この排気ガスが燃焼室CCに向けて循環経路20を循環する際には、凝縮器60にて排気ガス中の水蒸気が液化・凝縮され分離される。これにより、作動ガス循環型エンジン1は、比熱比の小さい水蒸気が燃焼室CCに供給されず、比熱比の大きい作動ガスとしてのアルゴンが燃焼室CCへと再び供給されるので、作動ガスによる熱効率の高い運転を行うことができる。
ところで、本実施形態の作動ガス循環型エンジン1は、循環経路20を介して作動ガスを燃焼室CCの排気側から吸気側に循環させ再び燃焼室CCに供給しているため、作動ガス循環型エンジン1の停止時の循環経路20内の状態、例えば、循環経路20内の反応物の残留状態によっては、次の始動時に適正な始動性が得られないおそれがある。例えば、作動ガス循環型エンジン1は、作動ガス循環型エンジン1の停止時に循環経路20内に反応物が残留している状態で、次の始動時に通常必要とされる反応物の供給量でそのまま供給装置2から反応物を供給してしまうと、循環経路20内に残留していた反応物の分のだけ実際に燃焼室CCに供給される反応物の供給量が過剰となるおそれがある。このため、作動ガス循環型エンジン1は、燃焼室CC内での反応物と作動ガスとの比率が始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる比率からずれてしまい、この結果、適正な始動性が得られないおそれがある。
そこで、本実施形態の作動ガス循環型エンジン1は、図1に示すように、循環経路20内の反応物の濃度を検出可能な濃度検出手段としての反応物濃度センサ3と、供給装置2による反応物の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時の最初の供給装置2による反応物の供給量を設定する供給制御手段としての供給制御部4とを備えることで、作動ガス循環型エンジン1の始動時における反応物の供給過剰、供給不足を抑制し、これにより、燃焼室CC内での反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にし、作動ガス循環型エンジン1の適正な始動を実現している。
ここで、供給制御部4は、反応物が複数ある場合は、各々の反応物に対して、供給装置2による各々の反応物の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した各々の反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時の最初の供給装置2による反応物の供給量を各々設定する。すなわち、本実施形態の作動ガス循環型エンジン1のように、反応物として、酸化剤としての酸素と燃料としての水素とが用いられる場合、供給制御部4は、各々の反応物、すなわち、酸素、水素それぞれに対して、供給装置2による酸素、水素の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した酸素、水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時の最初の供給装置2による酸素、水素の供給量を各々設定することが好ましい。これにより、作動ガス循環型エンジン1は、本実施形態のように反応物が複数ある場合、すなわち、反応物として、酸化剤としての酸素と燃料としての水素が用いられる場合であっても、より正確に燃焼室CC内での反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができ、適正に始動することができる。
具体的には、本実施形態の反応物濃度センサ3は、循環経路20を循環する循環ガス中の反応物の濃度を検出するものである。本実施形態の反応物濃度センサ3は、酸素濃度検出手段としての酸素濃度センサ52と、水素濃度検出手段としての水素濃度センサ53とを含んで構成される。酸素濃度センサ52は、循環経路20を循環する循環ガス中の反応物である酸素の濃度を検出するものである。水素濃度センサ53は、循環経路20を循環する循環ガス中の反応物である水素の濃度を検出するものである。酸素濃度センサ52と水素濃度センサ53とは、ともに循環経路20に設けられ、ここでは、循環経路20における作動ガスの循環方向に対して酸化剤噴射手段32より排気側に設けられる。さらに言えば、酸素濃度センサ52と水素濃度センサ53とは、吸気ポート11bの近傍に設けられる。酸素濃度センサ52と水素濃度センサ53とは、各々検出信号を電子制御装置50に送信する。なお、ここでは、酸素濃度センサ52と水素濃度センサ53とは、吸気ポート11bの近傍に設けられるものとして説明するが、これに限らず、排気ポート11c近傍に設けられていてもよい。
供給制御部4は、供給装置2の駆動を制御するものであり、供給装置2から供給される反応物の供給量を制御するものである。供給制御部4は、上述したように供給装置2による反応物の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、始動時の供給装置2による反応物の供給量を設定する。本実施形態の供給制御部4は、酸素供給制御手段としての酸素供給制御部54と、水素供給制御手段としての水素供給制御部55とを含んで構成される。
ここで、本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1は、図1に示すように、機能概念的に、電子制御装置(ECU)50に供給制御部4をなす酸素供給制御部54及び水素供給制御部55が設けられている。ここでは、作動ガス循環型エンジン1は、機能概念的に、電子制御装置50にさらに始動状態判定部56が設けられている。
ここで、電子制御装置50は、マイクロコンピュータを中心として構成され処理部50a、記憶部50b及び入出力部50cを有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部50cには作動ガス循環型エンジン1を含む車両の各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部50cは、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部50bには、作動ガス循環型エンジン1の各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部50bは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部50aは、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも上述の供給制御部4をなす酸素供給制御部54及び水素供給制御部55、始動状態判定部56を有している。電子制御装置50による各種制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部50aが前記コンピュータプログラムを当該処理部50aに組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部50aは、適宜記憶部50bへ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、この作動ガス循環型エンジン1の各部を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、電子制御装置50とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
そして、供給制御部4をなす酸素供給制御部54は、供給装置2のうち酸化剤供給装置30の駆動を制御するものであり、酸化剤供給装置30から供給される反応物である酸素の供給量、供給時期を制御するものである。さらに言えば、酸素供給制御部54は、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量、供給時期(噴射時期)を制御する。
供給制御部4をなす水素供給制御部55は、供給装置2のうち燃料供給装置40の駆動を制御するものであり、燃料供給装置40から供給される反応物である水素の供給量、供給時期を制御するものである。さらに言えば、水素供給制御部55は、燃料供給装置40の燃料噴射手段42の駆動を制御し、燃料噴射手段42からの酸素の噴射量を制御することで、燃料供給装置40からの酸素の供給量、供給時期(噴射時期)を制御する。
始動状態判定部56は、作動ガス循環型エンジン1の始動状態を判定するものである。始動状態判定部56は、例えば、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン1のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン1が始動時であるか否か、作動ガス循環型エンジン1の始動が終了したか否か、すなわち、作動ガス循環型エンジン1が始動後であるか否かなどを判定することができる。
ここで、図2のタイムチャートを参照して作動ガス循環型エンジン1の始動時について説明する。本実施形態の作動ガス循環型エンジン1の始動時T1とは、セルモータなどのスタータ(不図示)によりクランクシャフト19の駆動が開始されピストン13のシリンダボア12a内での往復運動が開始される時点より前の時点t1からエンジン回転数が予め設定される所定のエンジン回転数より高くなる時点t4までの期間である。つまり、作動ガス循環型エンジン1は、時点t1が始動開始時点、時点t4が始動終了時点であり、以下で説明する作動ガス循環型エンジン1の始動制御は、基本的にはこの始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。始動開始時点t1は、例えば、IG・ONされた時点あるいはスタータボタンがONされた時点である。作動ガス循環型エンジン1の始動時T1の始動開始時点t1から始動終了時点t4までの期間には、少なくとも供給装置2からの酸素、水素の最初の供給が開始される時点t2、t2’と、水素の1回目の燃焼すなわち初爆が起こる時点t3とが含まれる。つまり、作動ガス循環型エンジン1は、始動開始時点t1の直後にスタータが駆動し、その後、供給開始時点t2、t2’で供給装置2からの酸素、水素の供給が開始され、初爆時点t3で水素の燃焼がはじまり、これに伴ってエンジン回転数が上昇し、始動終了時点t4でエンジン回転数が予め設定される所定のエンジン回転数より高くなると、始動開始時点t1から始動終了時点t4までの始動時T1が終了する。一方、作動ガス循環型エンジン1の始動後T2とは、エンジン回転数が予め設定される所定のエンジン回転数より高くなった始動終了時点t4以降の期間であり、作動ガス循環型エンジン1は、この始動終了時点t4で始動制御から通常制御に切り替わり、以降の始動後の期間T2では通常制御が実行される。
図1に示す本実施形態の始動状態判定部56は、さらに作動ガス循環型エンジン1の始動状態の判定として、各種センサの検出信号や各種装置の制御信号などに基づいて、酸素、水素の供給開始時点や供給回数(噴射回数)などを検出、判定する。
そして、本実施形態の酸素供給制御部54は、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、少なくとも始動時の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を設定する。ここで、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前とは、上述した図2の供給開始時点t2以前の期間であり、例えば始動開始時点t1以前の期間も含む。つまり、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前とは、前回の作動ガス循環型エンジン1の運転が終了し作動ガス循環型エンジン1が停止した時点から供給開始時点t2までの期間を含む。そして、酸素供給制御部54は、供給開始時点t2以前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を設定する。つまり、酸素供給制御部54は、作動ガス循環型エンジン1の停止後、次の始動時の供給開始時点までに循環経路20内に残留していた酸素の濃度に基づいて、始動時T1の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を設定し、供給開始時点t2にこの設定された供給量で酸化剤供給装置30により酸素を供給する。
なお、酸素供給制御部54は、供給開始時点t2以前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を設定する構成であればよい。酸素供給制御部54は、例えば、始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給を含む始動時初期の所定回数の酸化剤供給装置30による酸素の供給で、供給開始時点t2以前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて酸化剤供給装置30による酸素の供給量を設定しもよいし、始動時T1の2回目以降の酸化剤供給装置30による酸素の供給では、酸素濃度センサ52が検出した現在の酸素の濃度に基づいて酸化剤供給装置30による酸素の供給量を設定してもよい。
酸素供給制御部54は、例えば、図3に示す酸素供給量マップm01に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を求める。この酸素供給量マップm01は、横軸が酸素濃度、縦軸が酸素供給量を示す。酸素供給量マップm01は、酸素濃度と酸素供給量との関係を記述したものである。この酸素供給量マップm01では、始動時T1の酸化剤供給装置30による酸素の供給量は、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度、すなわち、循環経路20内に残留していた酸素の濃度の増加にともなって減少する。酸素供給量マップm01は、酸素の供給量と酸素の濃度との関係が始動時に必要な熱量に応じた水素量や環境条件等に基づいて予め設定され、記憶部50bに格納されている。酸素供給制御部54は、この酸素供給量マップm01に基づいて、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度から、少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を求める。そして、酸素供給制御部54は、この酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の酸素の濃度に応じた始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給量に基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量を制御する。
なお、本実施形態では、酸素供給制御部54は、酸素供給量マップm01を用いて始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を求めたが、本実施形態はこれに限定されない。酸素供給制御部54は、例えば、酸素供給量マップm01に相当する数式に基づいて始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給を求めてもよい。以下で説明する種々のマップについても同様である。
この結果、作動ガス循環型エンジン1は、酸素供給制御部54が酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を制御することで、作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の反応物としての酸素の残留状態にかかわらず始動時に適正な始動性を得ることができる。つまり、作動ガス循環型エンジン1は、作動ガス循環型エンジン1の停止後に循環経路20内に反応物としての酸素が残留している状態で、次の始動時に酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に応じて少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を増減させることで、通常、始動時に必要とされる酸素の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに酸素を供給することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内における反応物としての酸素と作動ガスとの比率が始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる比率からずれることを防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
具体的に言えば、作動ガス循環型エンジン1は、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度が相対的に高いほど、すなわち、循環経路20内に残留している酸素の濃度が相対的に高いほど、酸素供給制御部54が始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を相対的に少なくすることで、実際に燃焼室CCに供給される酸素の供給量(循環経路20内の残留酸素量と酸化剤供給装置30による酸素供給量との和)が始動時に必要とされる供給量に対して過剰となることを防止することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内に酸素が過剰に供給されることを防止することができることから、燃焼室CC内のアルゴン比率が低下し始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを防止することができ、適正に始動することができる。
一方、作動ガス循環型エンジン1は、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度が相対的に低いほど、すなわち、循環経路20内に残留している酸素の濃度が相対的に低いほど、酸素供給制御部54が始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を相対的に多くすることで、実際に燃焼室CCに供給される酸素の供給量(循環経路20内の残留酸素量と酸化剤供給装置30による酸素供給量との和)が始動時に必要とされる供給量に対して不足することを防止することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内への酸素の供給が不足することを防止することができることから、燃焼室CC内のアルゴン比率が増加しすぎることを防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが過剰となることを防止することができ、適正に始動することができる。また、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内への酸素の供給が不足することを防止することができることから、水素比率が増加し燃焼室CC内の水素の燃焼に必要な酸素が不足することを防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを防止することができ、適正に始動することができると共に、未燃の水素が循環経路20に蓄積されることを防止することができる。
なお、酸素供給制御部54は、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度が0である場合、すなわち、作動ガス循環型エンジン1の停止後に循環経路20内に反応物としての酸素が残留していない状態であれば、通常、始動時に必要とされる酸素の供給量がそのまま始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量となる。
次に、本実施形態の水素供給制御部55は、燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を設定する。ここで、燃料供給装置40による水素の供給開始前とは、上述した図2の供給開始時点t2’以前の期間であり、例えば始動開始時点t1以前の期間も含む。つまり燃料供給装置40による水素の供給開始前とは、前回の作動ガス循環型エンジン1の運転が終了し作動ガス循環型エンジン1が停止した時点から供給開始時点t2’までの期間を含む。そして、水素供給制御部55は、供給開始時点t2’以前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度に基づいて少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を設定する。つまり、水素供給制御部55は、作動ガス循環型エンジン1の停止後、次の始動時の供給開始時点までに循環経路20内に残留していた水素の濃度に基づいて、始動時T1の燃料供給装置40による水素の供給量を設定し、供給開始時点t2’にこの設定された供給量で燃料供給装置40により水素を供給する。
なお、水素供給制御部55は、供給開始時点t2’以前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を設定する構成であればよい。水素供給制御部55は、例えば、始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給を含む始動時初期の所定回数の燃料供給装置40による水素の供給で、供給開始時点t2’以前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度に基づいて燃料供給装置40による水素の供給量を設定しもよいし、始動時T1の2回目以降の燃料供給装置40による水素の供給では、水素濃度センサ53が検出した現在の水素の濃度に基づいて燃料供給装置40による水素の供給量を設定しもよい。
水素供給制御部55は、例えば、図4に示す水素供給量マップm02に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を求める。この水素供給量マップm02は、横軸が水素濃度、縦軸が水素供給量を示す。水素供給量マップm02は、水素濃度と水素供給量との関係を記述したものである。この水素供給量マップm02では、始動時T1の燃料供給装置40による水素の供給量は、燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度、すなわち、循環経路20内に残留していた水素の濃度の増加にともなって減少する。水素供給量マップm02は、水素の供給量と水素の濃度との関係が始動時に必要な熱量に応じた水素量や環境条件等に基づいて予め設定され、記憶部50bに格納されている。水素供給制御部55は、この水素供給量マップm02に基づいて、燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度から、少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を求める。そして、水素供給制御部55は、この燃料供給装置40による水素の供給開始前の水素の濃度に応じた始動時の燃料供給装置40による水素の供給量に基づいて、燃料供給装置40の燃料噴射手段42の駆動を制御し、燃料噴射手段42からの水素の噴射量を制御することで、燃料供給装置40からの酸素の供給量を制御する。
この結果、作動ガス循環型エンジン1は、水素供給制御部55が燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を制御することで、作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の反応物としての水素の残留状態にかかわらず始動時に適正な始動性を得ることができる。つまり、作動ガス循環型エンジン1は、作動ガス循環型エンジン1の停止後に循環経路20内に反応物としての水素が残留している状態で、次の始動時に燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度に応じて少なくとも始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を増減させることで、通常、始動時に必要とされる水素の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに水素を供給することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内における反応物としての水素と作動ガスとの比率が始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる比率からずれることを防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
具体的に言えば、作動ガス循環型エンジン1は、燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度が相対的に高いほど、すなわち、循環経路20内に残留している水素の濃度が相対的に高いほど、水素供給制御部55が始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を相対的に少なくすることで、実際に燃焼室CCに供給される水素の供給量(残留水素量+燃料供給装置40による水素供給量)が始動時に必要とされる供給量に対して過剰となることを防止することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内に水素が過剰に供給されることを防止することができることから、燃焼室CC内の水素量が増加し始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが過剰となることを防止することができ、適正に始動することができる。また、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内に水素が過剰に供給されることを防止することができることから、燃焼室CC内のアルゴン比率が低下し始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを防止することができ、適正に始動することができる。また、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内に水素が過剰に供給されることを防止することができることから、燃焼室CC内の酸素比率が低下し燃焼室CC内の水素の燃焼に必要な酸素が不足することを防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを防止することができ、適正に始動することができると共に、未燃の水素が循環経路20に蓄積されることを防止することができる。
一方、作動ガス循環型エンジン1は、燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度が相対的に低いほど、すなわち、循環経路20内に酸素が残留している水素の濃度が相対的に低いほど、水素供給制御部55が始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を相対的に多くすることで、実際に燃焼室CCに供給される水素の供給量(残留水素量+燃料供給装置40による水素供給量)が始動時に必要とされる供給量に対して不足することを防止することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内への水素の供給が不足することを防止することができることから、燃焼室CC内の水素量が低下し始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを防止することができ、適正に始動することができる。また、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内への水素の供給が不足することを防止することができることから、燃焼室CC内のアルゴン比率が増加しすぎることを防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが過剰となることを防止することができ、適正に始動することができる。
なお、水素供給制御部55は、燃料供給装置40による水素の供給開始前に水素濃度センサ53が検出した水素の濃度が0である場合、すなわち、作動ガス循環型エンジン1の停止後に循環経路20内に反応物としての水素が残留していない状態であれば、通常、始動時に必要とされる水素の供給量がそのまま始動時T1の最初の燃料供給装置40による水素の供給量となる。
次に、図5のフローチャートを参照して本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1の始動時の酸素供給制御を説明する。なお、この始動時の酸素供給制御は、作動ガス循環型エンジン1の始動制御で実行される制御であり、基本的には始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。また、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。なお、本図で説明する酸素供給制御は、基本的には始動時T1の最初の酸素供給の酸素供給制御である。
まず、電子制御装置50の始動状態判定部56は、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン1のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン1が始動時であるか否を判定する(S100)。始動状態判定部56は、エンジン回転数が予め設定される所定のエンジン回転数より高いか否かに基づいて作動ガス循環型エンジン1が始動時であるか否を判定する。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン1が始動時でないと判定された場合(S100:No)、つまり、作動ガス循環型エンジン1が始動後であると判定された場合、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、通常の酸素供給制御を実行する。
始動状態判定部56は、作動ガス循環型エンジン1が始動時であると判定した場合(S100:Yes)、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前(初回の酸素の供給開始前)であるか否かを判定する(S101)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後であると判定された場合(S101:No)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、2回目以降の酸素供給制御を実行する。
酸素供給制御部54は、始動状態判定部56により酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前と判定された場合(S101:Yes)、酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S102)。
次に、酸素供給制御部54は、例えば、酸素供給量マップm01に基づいて、S102で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の酸素の濃度から始動時の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を算出する。(S103)。
次に、酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であるか否かを判定する(S104)。酸素供給制御部54は、例えば、クランク角センサ51の検出結果より、作動ガス循環型エンジン1が吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程のうち、どの行程であるかを判断し、この判断に基づいて、現在が酸化剤供給装置30による酸素の供給時期であるか否かを判定する。酸素供給制御部54は、例えば、作動ガス循環型エンジン1の現在の行程が吸気行程、あるいは吸気行程の直前である場合に酸化剤供給装置30による酸素の供給時期であると判定する。
電子制御装置50は、酸素供給制御部54により現在が酸素の供給時期でないと判定された場合(S104:No)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であると判定した場合(S104:Yes)、S103で酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の酸素の濃度に応じて算出した酸化剤供給装置30による酸素の供給量に基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量を制御し(S105)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
次に、図6のフローチャートを参照して本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1の始動時の水素供給制御を説明する。なお、この始動時の水素供給制御は、作動ガス循環型エンジン1の始動制御で実行される制御であり、基本的には始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。また、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。なお、本図で説明する水素供給制御は、基本的には始動時T1の最初の水素供給の水素供給制御である。
まず、電子制御装置50の始動状態判定部56は、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン1のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン1が始動時であるか否を判定する(S200)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン1が始動時でないと判定された場合(S200:No)、つまり、作動ガス循環型エンジン1が始動後であると判定された場合、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、通常の水素供給制御を実行する。
始動状態判定部56は、作動ガス循環型エンジン1が始動時であると判定した場合(S200:Yes)、燃料供給装置40による水素の供給開始前(初回の水素の供給開始前)であるか否かを判定する(S201)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により燃料供給装置40による水素の供給開始後であると判定された場合(S201:No)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、2回目以降の水素供給制御を実行する。
水素供給制御部55は、始動状態判定部56により燃料供給装置40による水素の供給開始前と判定された場合(S201:Yes)、水素濃度センサ53が検出した水素の濃度(燃料供給装置40による水素の供給開始前の循環経路20内の水素濃度)を取得する(S202)。
次に、水素供給制御部55は、例えば、水素供給量マップm02に基づいて、S202で取得した燃料供給装置40による水素の供給開始前の水素の濃度から始動時の最初の燃料供給装置40による水素の供給量を算出する。(S203)。
次に、水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であるか否かを判定する(S204)。水素供給制御部55は、例えば、クランク角センサ51の検出結果より、作動ガス循環型エンジン1が吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程のうち、どの行程であるかを判断し、この判断に基づいて、現在が燃料供給装置40による水素の供給時期であるか否かを判定する。水素供給制御部55は、例えば、作動ガス循環型エンジン1の現在の行程が燃焼行程、あるいは燃焼行程の直前である場合に燃料供給装置40による水素の供給時期であると判定する。
電子制御装置50は、水素供給制御部55により現在が水素の供給時期でないと判定された場合(S204:No)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であると判定した場合(S204:Yes)、S203で燃料供給装置40による水素の供給開始前の水素の濃度に応じて算出した燃料供給装置40による水素の供給量に基づいて、燃料供給装置40の燃料噴射手段42の駆動を制御し、燃料噴射手段42からの水素の噴射量を制御することで、燃料供給装置40からの水素の供給量を制御し(S205)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1によれば、反応物と、空気より比熱比の高い作動ガスとが供給され、反応物の反応に伴って作動ガスが膨張可能である燃焼室CCと、作動ガスを燃焼室CCの排気側から吸気側に循環させ再び燃焼室CCに供給可能な循環経路20と、反応物を供給する供給装置2と、循環経路内の反応物の濃度を検出可能な反応物濃度センサ3と、供給装置2による反応物の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による反応物の供給量を設定する供給制御部4とを備える。
したがって、作動ガス循環型エンジン1は、供給制御部4が供給装置2による反応物の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による反応物の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる反応物の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに反応物を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1によれば、供給装置2は、反応物として酸素を供給し、反応物濃度センサ3は、酸素の濃度を検出可能であり、供給制御部4は、供給装置2による酸素の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した酸素の濃度に基づいて、少なくとも始動時の最初の供給装置2による酸素の供給量を設定する。したがって、供給制御部4が供給装置2による酸素の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した酸素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による酸素の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の酸素の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる酸素の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに酸素を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における酸素と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1によれば、供給装置2は、反応物として水素を供給し、反応物濃度センサ3は、水素の濃度を検出可能であり、供給制御部4は、供給装置2による水素の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による水素の供給量を設定する。したがって、供給制御部4が供給装置2による水素の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による水素の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の水素の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる水素の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに酸素を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における水素と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン1によれば、供給制御部4は、反応物が複数ある場合、すなわち、反応物として酸素と水素とがある場合は、各々の反応物、すなわち、酸素、水素それぞれに対して、供給装置2による酸素、水素の各々の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した各々の酸素、水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による酸素、水素の供給量を各々設定する。したがって、作動ガス循環型エンジン1は、反応物が複数ある場合、すなわち、反応物として、酸化剤としての酸素と燃料としての水素が用いられる場合であっても、より正確に燃焼室CC内での反応物、すなわち酸素、水素と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができ、適正に始動することができる。
なお、以上の説明では、供給制御部4は、反応物としての酸素、水素それぞれに対して、供給装置2による酸素、水素の各々の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した各々の酸素、水素の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による酸素、水素の供給量を各々設定するものとして説明したが、これに限らず、必ずしも全ての反応物に対して、供給開始前の濃度に基づいて始動時T1の最初の供給装置2による供給量を設定する必要はない。供給制御部4は、例えば作動ガス循環型エンジン1の停止直前の運転状態において、循環経路20内に酸素と水素のいずれか一方しか残留することがないように運転していたような場合には、当該一方の反応物に対してのみ供給開始前の濃度に基づいて始動時T1の最初の供給装置2による供給量を設定するようにしてもよく、この場合であっても、作動ガス循環型エンジン1は、始動時において、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素・水素供給制御を説明するフローチャートである。実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンは、実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンと略同様の構成であるが始動時初期の酸素供給手段による酸素の供給量を燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定する点で実施形態1に係る作動ガス循環型エンジンとは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンの各構成については、図1等を参照する。
本実施形態の作動ガス循環型エンジン201は、供給制御部4をなす酸素供給制御部54が始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定する。ここでいう始動時初期とは、始動時T1の初期の期間であって、少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給を含む期間、さら言えば、少なくとも始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給から予め設定される所定回数の酸素の供給が終わるまでの期間である。
ところで、この作動ガス循環型エンジン201は、上述したように、供給装置2が酸化剤供給装置30と燃料供給装置40とを含んで構成される。酸化剤供給装置30は、反応物として酸素を循環経路20に供給して燃焼室CCに供給する。すなわち、酸化剤供給装置30は、酸化剤噴射手段32が酸素を吸気ポート11bに噴射することで、この酸素を吸気ポート11bの作動ガスと混ぜ合わせて燃焼室CCに供給する。燃料供給装置40は、反応物として酸素によって燃焼する水素を燃焼室CCに直接供給する。すなわち、燃料供給装置40は、燃料噴射手段42が水素を燃焼室CCに噴射することで、この水素を燃焼室CCに直接供給する。
ここで、この作動ガス循環型エンジン201では、燃料供給装置40によって燃焼室CCに直接供給される水素は、燃料供給装置40から供給された水素の全てが始動時初期においても常に遅れもなく燃焼室CCに供給される。一方、酸化剤供給装置30によって燃焼室CCの外部、すなわち、吸気弁15を挟んで燃焼室CCとは反対側の吸気ポート11bに噴射され燃焼室CCに供給される酸素は、作動ガス循環型エンジン201の停止状態からの最初の吸気行程では前回のサイクルでの酸素供給がなく、1回の吸気行程で燃焼室CCに吸入可能な吸入量が限られており、また、吸気弁15の開閉タイミングの影響も受けることから、始動時初期において燃焼室CCに吸入されにくくなる傾向になり、必ずしも酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の全てが燃焼室CCに吸入されるとは限らない場合がある。つまり、この作動ガス循環型エンジン201では、始動時初期において、始動時に要求される適正な始動トルクを発生させるための燃焼室CCへの水素の供給量に対して、実際に燃焼室CCに供給される酸素の供給量が酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の一部がこの吸気ポート11bに残留することで不足し、すなわち、実際に燃焼室CCに供給される酸素の供給量が燃焼室CCに供給された水素を全て燃焼させるために必要な酸素供給量に対して不足し、この結果、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足しスムーズな始動ができなかったり未燃の水素が循環経路20に蓄積されたりおそれがある。
そこで、本実施形態の作動ガス循環型エンジン201は、上述したように、供給制御部4をなす酸素供給制御部54が始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を水素と酸素との燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に増量して設定することで、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを防止し適正な始動の実現を図ると共に未燃水素が循環経路20に蓄積されることを防止している。
つまり、作動ガス循環型エンジン201は、始動時初期において酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給する酸素の供給量を燃焼室CCへの水素の供給量に対する理論割合よりも増量することで、始動時初期において酸素が燃焼室CCに吸入されにくい状態であり酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の一部が吸気ポート11bに残留し全てが燃焼室CCに吸入されない状態であっても、水素を全て燃焼させるのに十分な量の酸素を燃焼室CCに供給することができる。この結果、作動ガス循環型エンジン201は、始動時初期において酸素が燃焼室CCに吸入されにくい状態であり酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の一部が吸気ポート11bに残留し全てが燃焼室CCに吸入されない状態であっても、燃焼室CCに供給される水素を全て燃焼させるのに十分な量の酸素を燃焼室CCに供給することで、燃焼室CC内の水素の燃焼に必要な酸素が不足することを確実に防止することができ、始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足することを確実に防止することができ、適正に始動することができると共に、未燃の水素が循環経路20に蓄積されることを確実に防止することができる。
またこのとき、作動ガス循環型エンジン201は、始動時初期において酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給する酸素の供給量を燃焼室CCへの水素の供給量に対する理論割合よりも増量しすぎると、例えば、上述したような前回の作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の酸素の残留状態によっては、燃焼室CC内のアルゴン比率が低下し始動時に要求される適正な始動トルクに対して実際に発生するトルクが不足するおそれがある。
そこで、本実施形態の作動ガス循環型エンジン201は、さらに、供給制御部4をなす酸素供給制御部54がこの始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定する。言い換えれば、本実施形態の酸素供給制御部54は、始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を水素と酸素との燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に増量して設定すると共に、このとき、この始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて補正している。
この結果、作動ガス循環型エンジン201は、酸素供給制御部54が始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定することで、始動時初期において酸素が燃焼室CCに吸入されにくい状態であり酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の一部が吸気ポート11bに残留し全てが燃焼室CCに吸入されない状態であっても、前回の作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
次に、図7のフローチャートを参照して本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン201の始動時の酸素・水素供給制御をより具体的に説明する。なお、この始動時酸素・水素供給制御は、作動ガス循環型エンジン201の始動制御で実行される制御であり、基本的には始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。また、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、電子制御装置50の始動状態判定部56は、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン201のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン201が始動時であるか否を判定する(S300)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン201が始動時でないと判定された場合(S300:No)、つまり、作動ガス循環型エンジン201が始動後であると判定された場合、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、通常の酸素・水素供給制御を実行する。
始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン201が始動時であると判定された場合(S300:Yes)、水素供給制御部55は、始動時基本水素供給量aを算出する(S301)。始動時基本水素供給量aは、始動時に燃焼室CCに供給される水素の基本となる供給量であり、始動時に必要な熱量に応じた水素量(始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる水素量)、エンジン水温などのエンジン暖機状態、環境条件等に応じて予め設定されるものである。水素供給制御部55は、例えば、始動時基本水素供給量aと始動時に必要な熱量に応じた水素量、エンジン水温などのエンジン暖機状態、環境条件等との関係を記述した始動時基本水素供給量マップ(不図示)などに基づいて、始動時に必要な熱量に応じた水素量、エンジン水温などのエンジン暖機状態、環境条件等から始動時基本水素供給量aを算出する。
次に、始動状態判定部56は、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前(初回の酸素、水素の供給開始前)であるか否かを判定する(S302)。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前であると判定された場合(S302:Yes)、水素供給制御部55は、水素濃度センサ53が検出した水素の濃度(燃料供給装置40による水素の供給開始前の循環経路20内の水素濃度)を取得し、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S303)。
次に、酸素供給制御部54は、S301で算出された始動時基本水素供給量aに基づいて始動時基本酸素供給量Aを算出する(S304)。始動時基本酸素供給量Aは、始動時に燃焼室CCに供給される酸素の基本となる供給量であり、始動時基本水素供給量aに対する理論割合に応じた供給量、すなわち、始動時基本水素供給量aの水素を全て燃焼させると共に、燃焼後の排気ガス中に酸素が残留しない量の酸素供給量である。酸素供給制御部54は、例えば、モル比で始動時基本水素供給量aの2分の1を始動時基本酸素供給量Aとして算出する。
次に、水素供給制御部55は、S303で取得した燃料供給装置40による水素の供給開始前の循環経路20内の水素濃度に基づいて、S301で算出した始動時基本水素供給量aを補正し、始動時補正水素供給量a’を算出し、酸素供給制御部54は、S303で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度に基づいて、S304で算出した始動時基本酸素供給量Aを補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する(S305)。水素供給制御部55は、S303で取得した水素濃度が相対的に高いほど、すなわち、循環経路20内に残留していた水素の濃度が相対的に高いほど、始動時基本水素供給量aに対する減少量を相対的に大きくして始動時基本水素供給量aを減量補正し、S303で取得した水素濃度が相対的に低いほど、すなわち、循環経路20内に残留していた水素の濃度が相対的に低いほど、始動時基本水素供給量aに対する減少量を相対的に小さくして始動時基本水素供給量aを減量補正し、始動時補正水素供給量a’を算出する。言い換えれば、始動時補正水素供給量a’は、始動時に必要な熱量に応じた水素量(始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる水素量)である始動時基本水素供給量aから水素濃度に応じた循環経路20内の残留水素量を減算した水素量である。酸素供給制御部54は、S303で取得した酸素濃度が相対的に高いほど、すなわち、循環経路20内に残留していた酸素の濃度が相対的に高いほど、始動時基本酸素供給量Aに対する減少量を相対的に大きくして始動時基本酸素供給量Aを減量補正し、S303で取得した酸素濃度が相対的に低いほど、すなわち、循環経路20内に残留していた酸素の濃度が相対的に低いほど、始動時基本酸素供給量Aに対する減少量を相対的に小さくして始動時基本酸素供給量Aを減量補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する。言い換えれば、始動時補正酸素供給量A’は、始動時に必要な水素を全て燃焼させると共に燃焼後の排気ガス中に酸素が残留しない酸素量である始動時基本酸素供給量Aから酸素濃度に応じた循環経路20内の残留酸素量を減算した酸素量である。
次に、酸素供給制御部54は、S305で算出された始動時補正酸素供給量A’に始動時増量Bを加算し、始動時補正酸素供給量A’と始動時増量Bとの和を始動時最終酸素供給量Cに設定する(S306)。始動時増量Bは、始動時初期において酸素が燃焼室CCに吸入されにくい状態であり酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の一部が吸気ポート11bに残留し全てが燃焼室CCに吸入されない状態であっても、始動時に必要な熱量に応じた水素を全て燃焼させるための増量補正分の酸素の供給量である。始動時増量Bは、酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給され吸気行程で燃焼室CCに吸気されずに吸気ポート11bに残留しうる酸素の量以上の量に設定される。始動時増量Bは、例えば、酸化剤噴射手段32の噴射口位置、吸気ポート11bの容積、燃焼室CCからの吹き返しの程度などに応じて予め実験等に基づいて設定されればよい。始動時最終酸素供給量Cは、最終的に酸化剤供給装置30により供給する酸素の供給量である。
次に、酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であるか否かを判定する(S307)。
酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であると判定した場合(S307:Yes)、始動時最終酸素供給量C、ここでは、S306で設定した始動時最終酸素供給量C(=始動時補正酸素供給量A’+始動時増量B)に基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量が始動時最終酸素供給量Cとなるように制御する(S308)。電子制御装置50は、酸素供給制御部54により現在が酸素の供給時期でないと判定された場合(S307:No)は、このS308をとばして次のS309に移行する。
次に、水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であるか否かを判定する(S309)。
水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であると判定した場合(S309:Yes)、S305で算出した始動時補正水素供給量a’に基づいて、燃料供給装置40の燃料噴射手段42の駆動を制御し、燃料噴射手段42からの水素の噴射量を制御することで、燃料供給装置40からの水素の供給量が始動時補正水素供給量a’となるように制御し(S310)、電子制御装置50は、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。電子制御装置50は、水素供給制御部55により現在が水素の供給時期でないと判定された場合(S309:No)は、S310をとばしてこの制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
S302にて始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始後であると判定された場合(S302:No)、水素供給制御部55は、水素濃度センサ53が検出した水素の濃度(燃料供給装置40による水素の供給開始後の現在の循環経路20内の水素濃度)を取得し、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S311)。
次に、酸素供給制御部54は、S301で算出された始動時基本水素供給量aに基づいて始動時基本酸素供給量Aを算出する(S312)。
次に、水素供給制御部55は、S311で取得した燃料供給装置40による水素の供給開始後の現在の循環経路20内の水素濃度に基づいて、S301で算出した始動時基本水素供給量aを補正し、始動時補正水素供給量a’を算出し、酸素供給制御部54は、S311で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度に基づいて、S312で算出した始動時基本酸素供給量Aを補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する(S313)。
次に、始動状態判定部56は、酸化剤供給装置30による各気筒への酸素の供給が予め設定された所定回数実行済みか否かを判定する(S314)。すなわち、始動状態判定部56は、始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給から予め設定される所定回数の酸素の供給が実行されたか否かを判定する。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30による各気筒への酸素の供給が予め設定された所定回数実行済みでないと判定された場合(S314:No)、すなわち、現在が始動時初期の期間であると判定された場合、電子制御装置50は、上述したS306に移行し、以降の処理を実行する。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30による各気筒への酸素の供給が予め設定された所定回数実行済みであると判定された場合(S314:Yes)、すなわち、現在が始動時ではあるが始動時初期の期間ではないと判定された場合、酸素供給制御部54は、S313で算出された始動時補正酸素供給量A’を始動時最終酸素供給量Cに設定し(S315)、電子制御装置50は、上述したS307に移行し、以降の処理を実行する。この場合、酸素供給制御部54は、S308において、始動時最終酸素供給量C、ここでは、S315で設定した始動時最終酸素供給量C(=始動時補正酸素供給量A’)に基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量が始動時最終酸素供給量Cとなるように制御する。
以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン201によれば、作動ガス循環型エンジン201は、供給制御部4が供給装置2による反応物(酸素、水素)の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による反応物の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン201の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる反応物の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに反応物を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン201によれば、供給装置2は、反応物として酸素を循環経路20に供給して燃焼室CCに供給する酸化剤供給装置30と、反応物として酸素によって燃焼する水素を燃焼室CCに直接供給する燃料供給装置40とを含んで構成され、供給制御部4をなす酸素供給制御部54は、始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定する。したがって、作動ガス循環型エンジン201は、供給制御部4をなす酸素供給制御部54が始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前に反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度に基づいて、燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定することで、始動時初期において酸素が燃焼室CCに吸入されにくい状態であり酸化剤供給装置30から吸気ポート11bに供給された酸素の一部が吸気ポート11bに残留し全てが燃焼室CCに吸入されない状態であっても、前回の作動ガス循環型エンジン1の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、さらに適正に始動することができる。
なお、以上の説明では、供給制御手段としての供給制御部4をなす酸素供給制御部54は、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度に基づいて始動時基本酸素供給量Aを補正し、補正した始動時補正酸素供給量A’に始動時増量Bを加算して始動時最終酸素供給量Cを算出するものとして説明したがこれに限らない。酸素供給制御部54は、始動時基本酸素供給量Aに始動時増量Bを加算した後に酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度に基づいてこの始動時基本酸素供給量Aと始動時増量Bとの加算値を変更、すなわち補正して始動時最終酸素供給量Cを算出してもよいし、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度に基づいて始動時増量Bを変更、すなわち補正した後に、始動時基本酸素供給量Aと補正後の始動時増量Bとを加算し、始動時最終酸素供給量Cを算出してもよい。
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3に係る作動ガス循環型エンジンの模式的な概略構成図、図9は、本発明の実施形態3に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素・水素供給制御の一例を説明するタイムチャート、図10は、本発明の実施形態3に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素・水素供給制御を説明するフローチャートである。実施形態3に係る作動ガス循環型エンジンは、実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンと略同様の構成であるが始動時の酸素の供給開始後の酸素供給手段による酸素の供給量を酸素の供給開始後に濃度検出手段が検出した燃焼後のガス中の酸素の濃度に基づいて設定する点で実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンとは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の作動ガス循環型エンジン301は、供給制御部4をなす酸素供給制御部54が始動時の酸素の供給開始後の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸素の供給開始後に反応物濃度センサ3が検出した燃焼後のガス中の酸素の濃度に基づいて設定する。
ここで、本実施形態の作動ガス循環型エンジン301は、図8に示すように、反応物濃度センサ3として、酸素濃度センサ52とは別個に酸素濃度センサ352を備える。この酸素濃度センサ352は、循環経路20を循環する循環ガス中の反応物である酸素の濃度を検出するものである。さらに言えば、酸素濃度センサ352は、燃焼室CCの排気側に設けられ、燃焼室CCからの排気ガス中の酸素の濃度を検出するものである。酸素濃度センサ352は、例えば、燃焼室CCにおける酸素と水素との燃焼後の排気ガス中の酸素の濃度を検出する。酸素濃度センサ352は、循環経路20に設けられ、ここでは排気ポート11cの近傍に設けられる。これにより、この酸素濃度センサ352は、燃焼室CCから排気ポート11cに排気された直後の排気ガス中の酸素の濃度を検出することができる。酸素濃度センサ352は、検出信号を電子制御装置50に送信する。
なお、本実施形態の作動ガス循環型エンジン301では、図8に示すように、酸素濃度センサ52と酸素濃度センサ352とを別個に設け、酸素濃度センサ52が吸気ポート11bの近傍でガス中の酸素の濃度を検出する一方、酸素濃度センサ352が排気ポート11cの近傍でガス中の酸素の濃度を検出するものとして説明するが、これに限らない。本実施形態の作動ガス循環型エンジン301は、例えば、循環経路20の長さが短い場合、つまり、循環通路21を介して接続される吸気ポート11bと排気ポート11cとが近接している場合には、図1に示すように、酸素濃度センサ352を酸素濃度センサ52により兼用してもよいし、あるいは、酸素濃度センサ52を酸素濃度センサ352により兼用してもよい。
そして、酸素供給制御部54は、上述したように、始動時の酸素の供給開始後の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸素の供給開始後にこの酸素濃度センサ352が検出した燃焼後のガス中の酸素の濃度に基づいて設定する。つまり、酸素供給制御部54は、始動時の酸素供給開始後の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を燃焼室CCにおける酸素と水素との燃焼後の排気ガス中の酸素の濃度に基づいて補正する。
さらに具体的に言えば、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ352が検出する検出酸素濃度が目標酸素濃度となるように酸化剤供給装置30による酸素の供給量を制御する。検出酸素濃度は、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始後(初回の酸素、水素の供給開始後)、酸素濃度センサ352が検出する酸素と水素との燃焼後の排気ガス中の酸素濃度である。目標酸素濃度は、制御の目標となる酸素濃度であり、ここでは、燃焼室CCでの酸素と水素との燃焼後の排気ガスが酸素リッチとなる所定の酸素濃度である。つまり言い換えれば、酸素供給制御部54は、始動時に要求される適正な始動トルクを得るために、目標酸素濃度と検出酸素濃度とに基づいて、酸化剤供給装置30による酸素の供給量のフィードバック制御を実行する。
例えば、本実施形態の作動ガス循環型エンジン301は、実施形態2で説明したように、酸素供給制御部54が始動時初期の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を燃焼後のガス中に酸素が残留する供給量に設定している。この場合、本実施形態の酸素供給制御部54は、水素の供給量に応じた理論割合の酸素量に対して、燃焼後のガス中に残留するはずの増量分の酸素量、すなわち始動時増量Bに応じて排気ガス中に残留するはずの酸素の濃度を目標酸素濃度に設定し、酸素濃度センサ352により検出される検出酸素濃度がこの目標酸素濃度となるように酸化剤供給装置30による酸素の供給量を制御する。
酸素供給制御部54は、例えば、図9に例示するタイムチャートにおいて、始動時の時点t31で酸化剤供給装置30から供給した酸素と水素とが燃焼した後の排気ガス中の検出酸素濃度が目標酸素濃度よりも小さい場合には、次の時点t32での酸化剤供給装置30による酸素の供給量を時点t31での酸化剤供給装置30による酸素の供給量に対して所定量増量補正した供給量とする。そして、酸素供給制御部54は、時点t32において、この増量補正した供給量に基づいて酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量を制御する。逆に、酸素供給制御部54は、酸素と水素とが燃焼した後の排気ガス中の検出酸素濃度が目標酸素濃度よりも大きい場合には、次の時点での酸化剤供給装置30による酸素の供給量を現時点での酸化剤供給装置30による酸素の供給量に対して所定量減量補正した供給量とする。このようにして、酸素供給制御部54は、検出酸素濃度が目標酸素濃度に収束するように酸化剤供給装置30による酸素の供給量を制御する。
この結果、この作動ガス循環型エンジン301は、供給制御部4をなす酸素供給制御部54が始動時の酸素の供給開始後の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸素の供給開始後に反応物濃度センサ3が検出した燃焼後のガス中の酸素の濃度に基づいて設定することから、始動時の酸素供給制御において外乱や設計誤差などの不確定な変動に対して適正に対応でき、いわゆるロバスト性を向上することができる。したがって、作動ガス循環型エンジン301は、始動時において、常に燃焼室CC内における酸素と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、始動時のスムーズなエンジン回転数の立ち上がりやエンジン回転数の安定化を確実に実現することができ、さらに始動性を向上することができる。
次に、図10のフローチャートを参照して本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン301の始動時の酸素・水素供給制御をより具体的に説明する。なお、この始動時酸素・水素供給制御は、作動ガス循環型エンジン301の始動制御で実行される制御であり、基本的には始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。また、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、電子制御装置50の始動状態判定部56は、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン301のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン301が始動時であるか否を判定する(S400)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン301が始動時でないと判定された場合(S400:No)、つまり、作動ガス循環型エンジン301が始動後であると判定された場合、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、通常の酸素・水素供給制御を実行する。
始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン301が始動時であると判定された場合(S400:Yes)、水素供給制御部55は、始動時基本水素供給量aを算出する(S401)。
次に、始動状態判定部56は、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前(初回の酸素、水素の供給開始前)であるか否かを判定する(S402)。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前であると判定された場合(S402:Yes)、電子制御装置50は、図7で説明したS303(図7参照)に移行し、以降の処理を実行する。ここでは、その詳細な説明は省略する。
始動状態判定部56は、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始後であると判定した場合(S402:No)、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始時点から予め設定される一定時間経過したか否かを判定する(S403)。ここで一定時間とは、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40により酸素、水素が供給開始された時点から、供給された酸素と水素とが燃焼室CCで燃焼し、燃焼後の排気ガスが酸素濃度センサ352に到達し、この排気ガス中の酸素濃度を酸素濃度センサ352により検出可能となるまでの時間に応じた時間であり、循環経路20における酸素濃度センサ352の濃度検出位置などに応じて予め設定される。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始時点から予め設定される一定時間経過していないと判定された場合(S403:No)、電子制御装置50は、図7で説明したS311(図7参照)に移行し、以降の処理を実行する。ここでは、その詳細な説明は省略する。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始時点から予め設定される一定時間経過したと判定された場合(S403:Yes)、水素供給制御部55は、水素濃度センサ53が検出した水素の濃度(燃料供給装置40による水素の供給開始後の現在の循環経路20内の水素濃度)を取得し、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ52、酸素濃度センサ352がそれぞれ検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S404)。
次に、酸素供給制御部54は、S401で算出された始動時基本水素供給量aに基づいて始動時基本酸素供給量Aを算出する(S405)。
次に、水素供給制御部55は、S404で取得した燃料供給装置40による水素の供給開始後の現在の循環経路20内の水素濃度に基づいて、S401で算出した始動時基本水素供給量aを補正し、始動時補正水素供給量a’を算出し、酸素供給制御部54は、S404で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度、ここでは、酸素濃度センサ52が検出した酸素濃度に基づいて、S405で算出した始動時基本酸素供給量Aを補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する(S406)。
次に、酸素供給制御部54は、目標酸素濃度を設定する(S407)。酸素供給制御部54は、例えば、水素の供給量に応じた理論割合の酸素量に対して、燃焼後のガス中に残留するはずの増量分の酸素量、すなわち始動時増量Bに応じて排気ガス中に残留するはずの酸素の濃度を目標酸素濃度に設定する。
次に、始動状態判定部56は、酸化剤供給装置30による各気筒への酸素の供給が予め設定された所定回数実行済みか否かを判定する(S408)。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30による各気筒への酸素の供給が予め設定された所定回数実行済みでないと判定された場合(S408:No)、すなわち、現在が始動時初期の期間であると判定された場合、酸素供給制御部54は、S406で算出された始動時補正酸素供給量A’に始動時増量Bを加算し、始動時補正酸素供給量A’と始動時増量Bとの和を始動時最終酸素供給量Cに設定する(S409)。
次に、酸素供給制御部54は、S404で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度、ここでは、酸素濃度センサ352が検出した酸素濃度である検出酸素濃度と、S407で設定した目標酸素濃度とを比較し、検出酸素濃度が目標酸素濃度より小さいか否かを判定する(S410)。
酸素供給制御部54は、検出酸素濃度が目標酸素濃度より小さいと判定した場合(S410:Yes)、S409で設定した始動時最終酸素供給量Cを所定量増量補正した補正始動時最終酸素供給量C’を算出する(S411)。一方、酸素供給制御部54は、検出酸素濃度が目標酸素濃度以上であると判定した場合(S410:No)、S409で設定した始動時最終酸素供給量Cを所定量減量補正した補正始動時最終酸素供給量C’を算出する(S412)。
次に、酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であるか否かを判定する(S413)。
酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であると判定した場合(S413:Yes)、S411又はS412で設定した補正始動時最終酸素供給量C’に基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量が補正始動時最終酸素供給量C’となるように制御する(S414)。電子制御装置50は、酸素供給制御部54により現在が酸素の供給時期でないと判定された場合(S413:No)は、このS414をとばして次のS415に移行する。
次に、水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であるか否かを判定する(S415)。
水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であると判定した場合(S415:Yes)、S406で算出した始動時補正水素供給量a’に基づいて、燃料供給装置40の燃料噴射手段42の駆動を制御し、燃料噴射手段42からの水素の噴射量を制御することで、燃料供給装置40からの水素の供給量が始動時補正水素供給量a’となるように制御し(S416)、電子制御装置50は、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。電子制御装置50は、水素供給制御部55により現在が水素の供給時期でないと判定された場合(S415:No)は、S416をとばしてこの制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
S408にて始動状態判定部56により酸化剤供給装置30による各気筒への酸素の供給が予め設定された所定回数実行済みであると判定された場合(S408:Yes)、すなわち、現在が始動時ではあるが始動時初期の期間ではないと判定された場合、酸素供給制御部54は、S406で算出された始動時補正酸素供給量A’を始動時最終酸素供給量Cに設定し(S417)、電子制御装置50は、上述したS410に移行し、以降の処理を繰り返し実行する。この場合、酸素供給制御部54は、S411では、S417で設定した始動時最終酸素供給量Cを所定量増量補正した補正始動時最終酸素供給量C’を算出し、S412では、S417で設定した始動時最終酸素供給量Cを所定量減量補正した補正始動時最終酸素供給量C’を算出する。
以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン301によれば、作動ガス循環型エンジン301は、供給制御部4が供給装置2による反応物(酸素、水素)の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による反応物の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン301の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる反応物の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに反応物を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン301によれば、供給装置2は、反応物として酸素を供給する酸化剤供給装置30と、反応物として酸素によって燃焼する水素を供給する燃料供給装置40とを含んで構成され、供給制御部4をなす酸素供給制御部54は、始動時の酸素の供給開始後の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸素の供給開始後に反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ352が検出した燃焼後のガス中の酸素の濃度に基づいて設定する。したがって、作動ガス循環型エンジン301は、供給制御部4をなす酸素供給制御部54が始動時の酸素の供給開始後の酸化剤供給装置30による酸素の供給量を酸素の供給開始後に反応物濃度センサ3が検出した燃焼後のガス中の酸素の濃度に基づいて設定することで、始動時において、常に燃焼室CC内における酸素と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、始動時のスムーズなエンジン回転数の立ち上がりやエンジン回転数の安定化を確実に実現することができ、さらに始動性を向上することができる。
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態4に係る作動ガス循環型エンジンの模式的な概略構成図、図12は、本発明の実施形態4に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素・水素供給制御を説明するフローチャートである。実施形態4に係る作動ガス循環型エンジンは、実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンと略同様の構成であるが所定の条件下で少なくとも水素供給手段による水素の供給を制限する点で実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンとは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の作動ガス循環型エンジン401は、供給制御部4が所定の条件下で少なくとも燃料供給装置40による水素の供給を制限、ここでは禁止することで、この所定の条件下で未燃の水素が循環経路20に蓄積されることを防止している。
具体的には、本実施形態の供給制御部4は、図11に示すように、機能概念的に、電子制御装置(ECU)50に、酸素供給制御部54と水素供給制御部55とに加えて、さらに供給禁止許可手段としての供給禁止許可部457が設けられている。
供給制御部4をなす供給禁止許可部457は、所定の条件下において少なくとも燃料供給装置40による水素の供給、つまり、燃料供給装置40の燃料噴射手段42からの水素の噴射の禁止又は許可を行うものである。ここでは供給禁止許可部457は、さらに酸化剤供給装置30による酸素の供給、つまり、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射の禁止又は許可も行っている。
本実施形態の供給禁止許可部457は、酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気ポート11bを開閉する吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されない場合に、少なくとも燃料供給装置40による水素の供給を禁止する。
ここでいう酸化剤供給装置30による酸素の供給期間とは、例えば、始動時における1回のサイクルでの酸化剤噴射手段32による酸素の噴射期間、さらに言えば、酸化剤噴射手段32をなす酸化剤噴射弁の開弁期間である。つまり、酸化剤供給装置30による酸素の供給期間、言い換えれば、酸化剤噴射手段32による酸素の噴射期間は、1回のサイクルにおいて、酸化剤噴射手段32をなす閉弁状態の酸化剤噴射弁の開弁開始時点から開弁状態を経て再び閉弁状態となる開弁終了時点までの期間である。酸化剤噴射手段32をなす酸化剤噴射弁の開弁開始時点は、酸化剤噴射手段32による酸素の噴射開始時点であり、すなわち、酸化剤供給装置30による酸素の供給開始時点である。酸化剤噴射手段32をなす酸化剤噴射弁の開弁終了時点は、酸化剤噴射手段32による酸素の噴射終了時点であり、すなわち、酸化剤供給装置30による酸素の供給終了時点である。この酸化剤供給装置30による酸素の供給期間は、酸化剤噴射手段32が単位時間あたりに噴射可能な酸素の量をほぼ一定とすると、1回のサイクルで要求される酸素の供給量、すなわち、1回のサイクルで酸素供給制御部54により設定される最終的な酸素の供給量が多くなるほど相対的に長くなる。
ここで、酸化剤供給装置30は、上述したように、酸化剤噴射手段32が吸気弁15を挟んで燃焼室CCとは反対側の吸気ポート11bに酸素を噴射して燃焼室CCに供給している。このため、この作動ガス循環型エンジン401では、作動ガス循環型エンジン401の停止時のクランク角度(クランク位置)、言い換えれば、作動ガス循環型エンジン401の始動開始時点でのクランク角度によっては、例えば、最初の吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30による最初の酸素の供給期間を適正に確保することができないおそれがある。つまり、例えば、酸素供給制御部54により設定される供給量の酸素を酸化剤供給装置30から供給するための供給期間の供給開始時点が吸気弁15の開弁開始時点に対して所定の間隔(期間)を確保できなかったり、供給終了時点が吸気弁15の開弁終了時点以降になったりするような場合に、吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30による酸素の供給期間を適正に確保することができず、酸化剤供給装置30により吸気ポート11bに供給された酸素が結果的に燃焼室CCに十分に吸気されないおそれがある。この結果、作動ガス循環型エンジン401は、燃焼室CCに供給される水素に対して燃焼室CC内の酸素が不足した状態で始動時の酸素と水素との燃焼が開始され、未燃の水素が循環経路20に蓄積されるおそれがある。
そこで、本実施形態の供給禁止許可部457は、上述したように、始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されない場合に、燃料供給装置40による水素の供給を禁止する。ここでは、供給禁止許可部457は、始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されない場合に、酸化剤供給装置30による酸素の供給も禁止する。供給禁止許可部457は、例えば、クランク角センサ51の検出結果や酸素供給制御部54により設定される酸素の供給量などに基づいて、始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されているか否かを判定すればよい。
この結果、この作動ガス循環型エンジン401は、始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されない場合に、少なくとも供給禁止許可部457が燃料供給装置40による水素の供給を禁止することから、燃焼室CCに供給される水素に対して燃焼室CC内の酸素が不足した状態で始動時の酸素と水素との燃焼が開始されることを防止することができ、未燃の水素が循環経路20に蓄積することを確実に防止することができる。
次に、図12のフローチャートを参照して本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン401の始動時の酸素・水素供給制御をより具体的に説明する。なお、この始動時酸素・水素供給制御は、作動ガス循環型エンジン401の始動制御で実行される制御であり、基本的には始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。また、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、電子制御装置50の始動状態判定部56は、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン401のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン401が始動時であるか否を判定する(S500)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン401が始動時でないと判定された場合(S500:No)、つまり、作動ガス循環型エンジン401が始動後であると判定された場合、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、通常の酸素・水素供給制御を実行する。
始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン401が始動時であると判定された場合(S500:Yes)、水素供給制御部55は、始動時基本水素供給量aを算出する(S501)。
次に、始動状態判定部56は、セルモータなどのスタータ(不図示)の回転前であるか否か、すなわち、クランクシャフト19の駆動が開始されピストン13のシリンダボア12a内での往復運動が開始される前であるか否かを判定する(S502)。
始動状態判定部56は、スタータ(不図示)の回転後であると判定した場合(S502:No)、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前(初回の酸素、水素の供給開始前)であるか否かを判定する(S503)。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前であると判定された場合(S503:Yes)、電子制御装置50は、図7で説明したS303(図7参照)に移行し、以降の処理を実行する。一方、始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始後であると判定された場合(S503:No)、電子制御装置50は、図7で説明したS311(図7参照)に移行し、以降の処理を実行する。ここでは、その詳細な説明は省略する。
S502にて始動状態判定部56によりスタータ(不図示)の回転前であると判定された場合(S502:Yes)、水素供給制御部55は、水素濃度センサ53が検出した水素の濃度(燃料供給装置40による水素の供給開始前の循環経路20内の水素濃度)を取得し、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ52が検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S504)。
次に、酸素供給制御部54は、S501で算出された始動時基本水素供給量aに基づいて始動時基本酸素供給量Aを算出する(S505)。
次に、水素供給制御部55は、S504で取得した燃料供給装置40による水素の供給開始前の循環経路20内の水素濃度に基づいて、S501で算出した始動時基本水素供給量aを補正し、始動時補正水素供給量a’を算出し、酸素供給制御部54は、S504で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度に基づいて、S505で算出した始動時基本酸素供給量Aを補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する(S506)。
次に、酸素供給制御部54は、S506で算出された始動時補正酸素供給量A’に始動時増量Bを加算し、始動時補正酸素供給量A’と始動時増量Bとの和を始動時最終酸素供給量Cに設定する(S507)。
次に、酸素供給制御部54は、S507で設定した始動時最終酸素供給量Cに基づいて、この始動時最終酸素供給量Cの酸素を酸化剤供給装置30から供給するための酸素供給期間、言い換えれば、始動時最終酸素供給量Cの酸素を酸化剤噴射手段32から噴射するための酸素噴射期間を算出する(S508)。
次に、供給禁止許可部457は、クランク角センサ51のクランク角度の検出結果、S508で算出された始動時最終酸素供給量Cの酸素を酸化剤供給装置30から供給するための酸素供給期間などに基づいて、吸気弁15の開弁期間内に所定量(始動時最終酸素供給量C)の酸素を燃焼室CCに供給可能であるか否か、すなわち、酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されるか否かを判定する(S509)。
供給禁止許可部457は、吸気弁15の開弁期間内に所定量の酸素を燃焼室CCに供給可能であると判定した場合(S509:Yes)、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素と水素の供給を許可する(S510)。
次に、酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であるか否かを判定する(S511)。
酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であると判定した場合(S511:Yes)、S507で設定した始動時最終酸素供給量Cに基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量が始動時最終酸素供給量Cとなるように制御する(S512)。電子制御装置50は、酸素供給制御部54により現在が酸素の供給時期でないと判定された場合(S511:No)は、このS512をとばして次のS513に移行する。
次に、水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であるか否かを判定する(S513)。
水素供給制御部55は、現在が水素の供給時期であると判定した場合(S513:Yes)、S506で算出した始動時補正水素供給量a’に基づいて、燃料供給装置40の燃料噴射手段42の駆動を制御し、燃料噴射手段42からの水素の噴射量を制御することで、燃料供給装置40からの水素の供給量が始動時補正水素供給量a’となるように制御し(S514)、電子制御装置50は、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。電子制御装置50は、水素供給制御部55により現在が水素の供給時期でないと判定された場合(S513:No)は、S514をとばしてこの制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
なおここでは、S502にて始動状態判定部56によりスタータ(不図示)の回転前であると判定された場合(S502:Yes)であるから、おおむねS511にて酸素供給制御部54により現在が酸素の供給時期でないと判定され、S513にて水素供給制御部55により現在が水素の供給時期でないと判定され、したがって、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素と水素の供給が許可された上で実際には酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給は行われずにこの制御周期を終了し、次の制御周期に移行することとなる。
供給禁止許可部457は、S509にて吸気弁15の開弁期間内に所定量の酸素を燃焼室CCに供給可能でないと判定した場合(S509:No)、すなわち、酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されないと判定した場合、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素と水素の供給を禁止し(S515)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン401によれば、作動ガス循環型エンジン401は、供給制御部4が供給装置2による反応物(酸素、水素)の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による反応物の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン401の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる反応物の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに反応物を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン401によれば、供給装置2は、反応物として酸素を循環経路20に供給して燃焼室CCに供給する酸化剤供給装置30と、反応物として酸素によって燃焼する水素を燃焼室CCに直接供給する燃料供給装置40とを含んで構成され、供給制御部4をなす供給禁止許可部457は、始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が循環経路20をなす吸気ポート11bを開閉する吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されない場合に、少なくとも燃料供給装置40による水素の供給を制限、ここでは禁止する。したがって、作動ガス循環型エンジン401は、始動時の酸化剤供給装置30による酸素の供給期間が吸気弁15の開弁期間に対して、酸化剤供給装置30により供給される酸素が十分に燃焼室CCに吸気される所定期間確保されない場合に、少なくとも供給禁止許可部457が燃料供給装置40による水素の供給を禁止することで、燃焼室CCに供給される水素に対して燃焼室CC内の酸素が不足した状態で始動時の酸素と水素との燃焼が開始されることを防止することができ、未燃の水素が循環経路20に蓄積することを確実に防止することができる。
(実施形態5)
図13は、本発明の実施形態5に係る作動ガス循環型エンジンの模式的な概略構成図、図14は、本発明の実施形態5に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素・水素供給制御の一例を説明するタイムチャート、図15は、本発明の実施形態5に係る作動ガス循環型エンジンの始動時の酸素・水素供給制御を説明するフローチャートである。実施形態5に係る作動ガス循環型エンジンは、実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンと略同様の構成であるが所定の条件下で水素供給手段による水素の供給を許可する点で実施形態2に係る作動ガス循環型エンジンとは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の作動ガス循環型エンジン501は、供給制御部4が所定の条件下で燃料供給装置40による水素の供給を許可することで、未燃の水素が循環経路20に蓄積されることを防止している。
具体的には、本実施形態の供給制御部4は、図13に示すように、機能概念的に、電子制御装置(ECU)50に、酸素供給制御部54と水素供給制御部55とに加えて、さらに供給禁止許可手段としての供給禁止許可部557が設けられている。
供給制御部4をなす供給禁止許可部557は、所定の条件下において少なくとも燃料供給装置40による水素の供給、つまり、燃料供給装置40の燃料噴射手段42からの水素の噴射の禁止又は許可を行うものである。ここでは供給禁止許可部557は、さらに酸化剤供給装置30による酸素の供給、つまり、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射の禁止又は許可も行っている。
ここで、本実施形態の作動ガス循環型エンジン501は、上述した作動ガス循環型エンジン301(図8参照)と同様に、反応物濃度センサ3として、酸素濃度センサ52とは別個に酸素濃度センサ352を備える。酸素濃度センサ352は、排気ポート11cの近傍に設けられ、燃焼室CCから排気ポート11cに排気された直後の排気ガス中の酸素の濃度を検出する。なお、本実施形態の作動ガス循環型エンジン501は、作動ガス循環型エンジン301(図8参照)と同様に、例えば、循環通路21を介して接続される吸気ポート11bと排気ポート11cとが近接している場合には、図1に示すように、酸素濃度センサ352を酸素濃度センサ52により兼用してもよいし、あるいは、酸素濃度センサ52を酸素濃度センサ352により兼用してもよい。
そして、本実施形態の供給禁止許可部557は、始動時に酸化剤供給装置30により酸素を供給し、反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ352が酸素の濃度の所定量の変化を検出した場合に燃料供給装置40による水素の供給を許可する。
供給制御部4をなす酸素供給制御部54は、例えば、図14に例示するタイムチャートにおいて、始動時の時点t51で酸化剤供給装置30から酸素を供給する。酸化剤供給装置30から正常に酸素が供給された場合、酸化剤供給装置30から供給された酸素は、吸気ポート11b、燃焼室CCを介して排気ポート11cに排気され、酸素濃度センサ352による濃度検出位置に到達する。そして、酸素濃度センサ352により検出される酸素濃度は、酸化剤供給装置30から正常に酸素が供給された場合、酸素の供給開始前の酸素濃度と比較して酸化剤供給装置30からの酸素供給量に応じて所定量増加する。一方、酸素濃度センサ352により検出される酸素濃度は、酸化剤供給装置30から正常に酸素が供給されなかった場合、酸素の供給開始前の酸素濃度とほぼ同等、あるいは酸素の供給開始前の酸素濃度に対する増加量が少なくなる。そして、供給禁止許可部557は、例えば、時点t52にて、酸素濃度センサ352により検出される酸素濃度が酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の酸素濃度と比較して所定量増加した場合に、すなわち、酸化剤供給装置30から正常に酸素が供給されたことが確認された後に、時点t53にて、次のサイクルからの燃料供給装置40による水素の供給を許可する。一方、供給禁止許可部557は、酸素濃度センサ352により検出される酸素濃度が酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の酸素濃度と比較して所定量増加しなかった場合に、すなわち、酸化剤供給装置30から正常に酸素が供給されたことが確認できなかった場合に、燃料供給装置40による水素の供給を禁止する。
この結果、この作動ガス循環型エンジン501は、供給制御部4をなす供給禁止許可部557が始動時に酸化剤供給装置30により酸素を供給し、反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ352により酸素の濃度の所定量の変化を検出した場合に燃料供給装置40による水素の供給を許可することから、例えば、酸化剤貯留タンク31内の酸素切れや酸化剤噴射手段32の故障等の酸化剤供給装置30の動作不良時であっても、燃焼室CCに供給される水素に対して燃焼室CC内の酸素が不足した状態で始動時の酸素と水素との燃焼が開始されることを防止することができ、未燃の水素が循環経路20に蓄積することを確実に防止することができる。
次に、図15のフローチャートを参照して本実施形態に係る作動ガス循環型エンジン501の始動時の酸素・水素供給制御をより具体的に説明する。なお、この始動時酸素・水素供給制御は、作動ガス循環型エンジン501の始動制御で実行される制御であり、基本的には始動開始時点t1から始動終了時点t4まで実行される。また、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、電子制御装置50の始動状態判定部56は、クランク角センサ51の検出信号に基づいて作動ガス循環型エンジン501のエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数に基づいて作動ガス循環型エンジン501が始動時であるか否を判定する(S600)。
電子制御装置50は、始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン501が始動時でないと判定された場合(S600:No)、つまり、作動ガス循環型エンジン501が始動後であると判定された場合、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行すると共に、例えば、通常の酸素・水素供給制御を実行する。
始動状態判定部56により作動ガス循環型エンジン501が始動時であると判定された場合(S600:Yes)、水素供給制御部55は、始動時基本水素供給量aを算出する(S601)。
次に、始動状態判定部56は、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前(初回の酸素、水素の供給開始前)であるか否かを判定する(S602)。
始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始前であると判定された場合(S602:Yes)、供給制御部4をなす供給禁止許可部557は、燃料供給装置40による水素の供給を一旦禁止する(S603)。
次に、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ52、酸素濃度センサ352がそれぞれ検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S604)。
次に、酸素供給制御部54は、S601で算出された始動時基本水素供給量aに基づいて始動時基本酸素供給量Aを算出する(S605)。
次に、酸素供給制御部54は、S604で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度、ここでは、酸素濃度センサ52が検出した酸素濃度に基づいて、S605で算出した始動時基本酸素供給量Aを補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する(S606)。
次に、酸素供給制御部54は、S606で算出された始動時補正酸素供給量A’に始動時増量Bを加算し、始動時補正酸素供給量A’と始動時増量Bとの和を始動時最終酸素供給量Cに設定する(S607)。
次に、酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であるか否かを判定する(S608)。
酸素供給制御部54は、現在が酸素の供給時期であると判定した場合(S608:Yes)、S607で設定した始動時最終酸素供給量Cに基づいて、酸化剤供給装置30の酸化剤噴射手段32の駆動を制御し、酸化剤噴射手段32からの酸素の噴射量を制御することで、酸化剤供給装置30からの酸素の供給量が始動時最終酸素供給量Cとなるように制御し(S609)、この制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。電子制御装置50は、酸素供給制御部54により現在が酸素の供給時期でないと判定された場合(S608:No)は、このS609をとばしてこの制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
S602にて始動状態判定部56により酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素、水素の供給開始後であると判定された場合(S602:No)、供給禁止許可部557は、酸素濃度センサ352が検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度)を取得する(S610)。
次に、供給禁止許可部557は、今回の制御周期以前の制御周期のS604で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始前の循環経路20内の酸素濃度、ここでは、酸素濃度センサ352が検出した酸素濃度と、S610で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度とを比較し、酸素の供給開始前の酸素濃度からの酸素の供給開始後の現在の酸素濃度の増加量が予め設定される所定値以上であるか否かを判定する(S611)。
供給禁止許可部557は、酸素の供給開始前の酸素濃度からの酸素の供給開始後の現在の酸素濃度の増加量が予め設定される所定値以上であると判定した場合(S611:Yes)、燃料供給装置40による水素の供給を許可し(S612)、電子制御装置50は、図7で説明したS311(図7参照)に移行し、以降の処理を実行する。ここでは、その詳細な説明は省略する。
供給禁止許可部557は、S611にて、酸素の供給開始前の酸素濃度からの酸素の供給開始後の現在の酸素濃度の増加量が予め設定される所定値より少ないと判定した場合(S611:No)、酸化剤供給装置30による酸素の供給が予め設定された所定回数以上実行されたか否かを判定する(S613)。すなわち、供給禁止許可部557は、始動時T1の最初の酸化剤供給装置30による酸素の供給から予め設定される所定回数の酸素の供給が実行されたか否かを判定する。
供給禁止許可部557は、酸化剤供給装置30による酸素の供給が予め設定された所定回数以上実行されていないと判定した場合(S613:No)、燃料供給装置40による水素の供給を継続して禁止する(S614)。
次に、酸素供給制御部54は、酸素濃度センサ52、酸素濃度センサ352がそれぞれ検出した酸素の濃度(酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度)を取得し(S615)、電子制御装置50は、S605に移行し、以降の処理を実行する。この場合、酸素供給制御部54は、S606では、S615で取得した酸化剤供給装置30による酸素の供給開始後の現在の循環経路20内の酸素濃度に基づいて、S605で算出した始動時基本酸素供給量Aを補正し、始動時補正酸素供給量A’を算出する。
供給禁止許可部557は、S613にて、酸化剤供給装置30による酸素の供給が予め設定された所定回数以上実行されたと判定した場合(S613:Yes)、酸化剤供給装置30による酸素の供給の異常を判定し(S616)、例えば、不図示の報知手段により酸化剤供給装置30による酸素の供給の異常を報知すると共に、酸化剤供給装置30、燃料供給装置40による酸素と水素の供給を禁止し(S617)、この制御を終了する。
以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン501によれば、作動ガス循環型エンジン501は、供給制御部4が供給装置2による反応物(酸素、水素)の供給開始前に反応物濃度センサ3が検出した反応物の濃度に基づいて、少なくとも始動時T1の最初の供給装置2による反応物の供給量を制御することで、前回の作動ガス循環型エンジン501の停止後の循環経路20内の反応物の残留状態にかかわらず、通常、始動時に必要とされる反応物の供給量に対して過不足なく燃焼室CCに反応物を供給することができ、始動時において、燃焼室CC内における反応物と作動ガスとの比率を始動時に要求される適正な始動トルクを得ることができる適正な比率にすることができるので、適正に始動することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジン501によれば、供給装置2は、反応物として酸素を供給する酸化剤供給装置30と、反応物として酸素によって燃焼する水素を供給する燃料供給装置40とを含んで構成され、供給制御部4をなす供給禁止許可部557は、始動時に酸化剤供給装置30により酸素を供給し、反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ352が酸素の濃度の所定量の変化を検出した場合に燃料供給装置40による水素の供給を許可する。したがって、作動ガス循環型エンジン501は、供給制御部4をなす供給禁止許可部557が始動時に酸化剤供給装置30により酸素を供給し、反応物濃度センサ3をなす酸素濃度センサ352により酸素の濃度の所定量の変化を検出した場合に燃料供給装置40による水素の供給を許可することで、例えば、酸化剤供給装置30の動作不良時であっても、燃焼室CCに供給される水素に対して燃焼室CC内の酸素が不足した状態で始動時の酸素と水素との燃焼が開始されることを防止することができ、未燃の水素が循環経路20に蓄積することを確実に防止することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジンは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る作動ガス循環型エンジンは、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
以上の説明では、作動ガス循環型エンジンは、燃料が燃焼室CC内に直接噴射されるよう燃料噴射手段42を設けるものとして説明したが、燃料噴射手段42は、燃料を吸気ポート11bに噴射させるべくシリンダヘッド11に取り付けられてもよい。この場合であっても、本発明の作動ガス循環型エンジンは、適正に始動することができる。
以上の説明では、作動ガス循環型エンジンは、酸素が吸気ポート11bに噴射されるよう酸化剤噴射手段32を設けるものとして説明したが、酸化剤噴射手段32は、酸素を燃焼室CC内に直接噴射させるべくシリンダヘッド11に取り付けられてもよい。この場合であっても、本発明の作動ガス循環型エンジンは、適正に始動することができる。
以上の説明では、作動ガス循環型エンジンは、燃料としての水素(H2)を拡散燃焼させるものとして例示したが、燃料に対して図示しない点火プラグで点火して、いわゆる、火花点火燃焼させる形態のものであってもよく、その燃料に対して点火プラグで点火して着火の補助を行い拡散燃焼させる形態のものであってもよい。つまり、以上で説明した本発明の作動ガス循環型エンジンは、燃焼形態の異なる作動ガス循環型エンジンに適用してもよく、この場合であっても、本発明の作動ガス循環型エンジンは、適正に始動することができる。