JP4795618B2 - 幹細胞増強素材 - Google Patents
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Description
本発明は、人間を含めた動物の幹細胞を増強させる機能を備えた幹細胞増強素材に関する。
背 景 技 術
一般に、幹細胞には、動物の体を構成する全ての細胞に分化できるという特殊な性質を有する幹細胞としての胚性幹細胞(ES細胞)と、動物の体にある各々の臓器や組織に存在している各々の臓器形成や組織形成の元になる幹細胞からなる体性幹細胞とに大別される。この体性幹細胞としては造血幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞、肝臓の幹細胞、腎臓の幹細胞等が知られている。
体性幹細胞の1種としての造血幹細胞は血液の幹細胞であり、造血機能を維持する上で最も重要なものである。この造血は骨髄によって行われるものであり、また、胎生期においては造血を行う器官が胎生月齢の増加によって変化して行き、生まれる直前には骨髄が造血作用を発揮していることも知られている。骨髄による造血は、最初に造血幹細胞が生成され、この造血幹細胞がその後に増殖したり、分化して赤血球および白血球となって、体内に供給される。従って、骨髄の造血作用としての造血幹細胞の生成が常に正常に行われることが、人および家畜等の他の動物の健康を維持するためには不可欠のことである。
一方、大量の放射線照射を受けたり、抗癌剤の投与を受けると、それらの急性症で死亡するのではなく、その副作用として骨髄の造血機能即ち造血幹細胞の生成機能がダメージを受けて低下させられ、その結果赤血球および白血球等からなる血球の生成も低下させられて死亡することが多いと言われている。
この血球生産機能のダメージ発生があると、癌治療によって癌細胞の減少や消滅が実現しても、血液不足によって生命を絶たれるという不都合があった。換言すれば、骨髄の造血幹細胞が正常に維持されていれば、癌治療の効果が発揮されて、癌を克服することができるものであるが、現状においてはこれが不可能である。
そこで、癌治療等の治療による効果を上げるためにも、骨髄の造血幹細胞を増強する素材の開発が望まれている。
更に、健康体においても体力増強、抵抗力強化のためにも、骨髄の造血幹細胞を増強する素材の開発が望まれている。
また、造血幹細胞以外の体性幹細胞についても増強することができれば、各種の疾患の予防や治療を施すことができる。例えば、神経幹細胞を増強できれば、アルツハイマー病等の予防や治療を施すことができ、骨髄幹細胞を増強できれば、骨粗鬆病等の予防や治療を施すことができ、肝臓の幹細胞を増強できれば、肝臓疾患の予防や治療を施すことができ、腎臓の幹細胞を増強できれば、腎臓疾患の予防や治療を施すことができる。
更に、胚性幹細胞を増強できれば、胚性幹細胞の細胞分化を促進させることができる。この胚性幹細胞については、信号伝達物質としてのスタット(STAT)3が含まれており、胚性幹細胞を分化させずにそのまま維持させるこのSTAT3が女性ホルモンに反応しやすくなると胚性幹細胞が増殖を始めることが報告されている。従って、タモキシフェンのような選択的エストロゲンレセプター調節剤(SERMs)が女性ホルモンの代替として検討されている。しかしながら、SERMsのその作用機序についてはまだ詳細には解明されておらず、毒性など副作用が少なく、人にとって有効な機能性を持つSERMsが望まれる所であった。その観点からイソフラボンアグリコンはSERMsとしての作用機能の有効性が期待されている。
発 明 の 開 示
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、経口摂取や点滴などにより体内に吸収させて、体性幹細胞、特に骨髄の造血幹細胞や胚性幹細胞からなる幹細胞を増強することのできる幹細胞増強素材を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、細胞増殖因子に作用する酵素の酵素活性を阻害しないエストロゲン様作用を保有するイソフラボンアグリコンを用いて幹細胞を増強することのできる幹細胞増強素材を提供することを第2の目的とする。
本発明者は鋭意研究し、放射線を照射したラットに対して、イソフラボンアグリコンおよび穀類を麹菌によって発酵させて蛋白質を分解した生成物を更に加水分解する際に、当該生成物中に含まれている乳酸菌およびまたは前記生成物に添加された乳酸菌を増殖促進させている生成物の一方または両方を経口摂取させ、その後健康なラットの骨髄を移植したところ、脾臓の機能の大きな回復をみて、これらのイソフラボンアグリコンや穀類を麹菌によって発酵させて蛋白質を分解した生成物を更に加水分解する際に、当該生成物中に含まれている乳酸菌およびまたは前記生成物に添加された乳酸菌を増殖促進させている生成物が体内に吸収されことにより、骨髄の造血幹細胞を増強することができることを発見して本発明を完成させた。
更に、本発明者の鋭意研究により、イソフラボンアグリコンおよび穀類を麹菌によって発酵させて蛋白質を分解した生成物を更に加水分解する際に、当該生成物中に含まれている乳酸菌およびまたは前記生成物に添加された乳酸菌を増殖促進させている生成物のいずれにも含有されているイソフラボンアグリコンの1種であるダイゼインの作用(エストロゲン様作用)によって幹細胞が増強されたことを発見して本発明を完成させた。
この幹細胞増強作用を説明すると、本発明によって得られるイソフラボンアグリコンによって増強された幹細胞は自己複製・分化増殖する性質を有するものであり、その細胞増殖にはチロシンキナーゼ等の増殖因子に作用する酵素が係っている。しかし、イソフラボンアグリコンの1種であるゲニステインはむしろこのチロシンキナーゼの活性を阻害する働きがあるため、ゲニステインでは幹細胞の増殖は期待できない。これに対して、本発明によって得られるイソフラボンアグリコン、特に成分を溶媒抽出濃縮されたイソフラボンアグリコンの組成は、ダイゼインが多量に含有されておりゲニステインは少量であるので、多量に含有されているダイゼインのエストロゲン作用が主として機能して幹細胞が増強されたもの推測される。
更に説明すると、胚性幹細胞のみならず体性幹細胞にも信号伝達物質が存在し、特にSTAT3が細胞分化に重要な係りをしていることが分かって来た。STAT3の活性化は幹細胞を未分化状態に維持する働きがあるが、STAT3とエストロゲン受容体(ER)のリガンド結合領域との融合蛋白質(STAT3ER)となった場合には未分化なコロニーが形成され、さらには分化増殖が起こると考えられる。そこで、本発明によって得られるイソフラボンアグリコンの1種のダイゼインがエストロゲンの役割をし、ERに結合し、STAT3ERの作用が働いて、骨髄の造血幹細胞が増強されたと考えられる。これにより、STAT3を信号伝達物質としている胚性幹細胞をも本発明によって得られるイソフラボンアグリコンによって増強できるものである。
このようにして完成された本発明の幹細胞増強素材は、幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有することを特徴とする。この幹細胞としては、造血幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞を含む各々の臓器形成や組織形成の元になる幹細胞からなる体性幹細胞または胚性幹細胞である。このイソフラボンアグリコンの幹細胞を増強する作用としては、例えば細胞増殖因子に作用する酵素の酵素活性を阻害しないエストロゲン作用が挙げられる。
本発明のように幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を体内に吸収させると、一方の体性幹細胞を増強することができる。
また、本発明のように幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を他方の胚性幹細胞の信号伝達物質に作用させると、当該胚性幹細胞を増強することができる。
次に、具体的に造血幹細胞についてみると、幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を体内に吸収させると、骨髄の造血幹細胞を増強することができる。
即ち、このイソフラボンアグリコンには骨髄の造血幹細胞を増強する機能としてのエストロゲン様作用を保有するダイゼインが含有されている。従って、イソフラボンアグリコンが体内に吸収されると、ダイゼインがエストロゲンと同様な役割をして造血幹細胞のERに結合し、STAT3ERの作用が働いて、骨髄の造血作用を増強させて、造血幹細胞が増殖したり、分化して赤血球および白血球となって、適正量の血球等の成分を有する血液が体内に供給されることとなる。
これにより、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくと、骨髄の造血作用としての造血幹細胞の生成が常に正常に行われて適正量の血球等の成分を有する血液が体内に供給されることとなり、例えば、大量の放射線照射を受けたり、癌の治療法としての放射線照射を受けたり、抗癌剤の投与を受けた場合に起こるとされている骨髄による造血機能の低下を防止したり、低下してしまった造血機能を大きく回復させることが期待できる。これにより、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくことによって、副作用を発生させないで癌治療を施して、癌を克服することができることが期待できる。
更に、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくと、骨髄の造血幹細胞を増強させて、適正量の血球等の成分を有する血液を体内に供給させる機能を発揮させて、各種の病気の予防を行って、健康を維持することが期待できる。
また、本発明のイソフラボンアグリコンが体内に吸収されると、この造血幹細胞以外の体性幹細胞も同様にして増強される。
更に、胚性幹細胞についても、その信号伝達物質としてのSTAT3に対してダイゼインがエストロゲンと同様な役割をしてERに結合し、ERのリガンド結合領域とのSTAT3ERとなり、未分化なコロニーが形成され、さらには分化増殖が行われることとなる。
このような作用を保有するイソフラボンアグリコンは穀物由来の素材とするとよい。また、穀物由来の素材としては特に豆類がよく、イソフラボンアグリコンとしては豆類を麹菌によって発酵させて、麹菌の酵素で豆類の成分を加水分解させることにより生成するとよい。更に、こうして得られたイソフラボンアグリコンは溶媒で抽出濃縮することにより生成するとよい。この場合のイソフラボンアグリコンは、少なくとも70重量%のダイゼインを含有するようにするとよい。
このようにして製造された本発明の幹細胞増強素材は、豆類を麹菌によって発酵させる製麹処理とその後の加水分解処理とにより、大豆粕中の蛋白質およびまたは糖質が十分に分解されてイソフラボンアグリコンを多量に含む生成物とされ、前記の骨髄の造血幹細胞を含む体性幹細胞および胚性幹細胞の増強作用をより効果的に行わせることができる。
また、本発明の幹細胞増強素材は、豆類を麹菌によって発酵させて蛋白質を分解した生成物を更に加水分解する際に、当該生成物中に含まれている乳酸菌およびまたは前記生成物に添加された乳酸菌を増殖促進させている生成物(以下、「麹菌大豆発酵培養物」という)であることを特徴とする。
この麹菌大豆発酵培養物も、前記イソフラボンアグリコンと同様の骨髄の造血幹細胞を含む体性幹細胞および胚性幹細胞を増強する機能を有しており、同様の優れた作用を発揮する。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の造血幹細胞増強素材を含む体性幹細胞および胚性幹細胞からなる幹細胞を増強する幹細胞増強素材は、イソフラボンアグリコンおよびまたは麹菌大豆発酵培養物を有することを特徴とする。具体的には、幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンおよびまたは麹菌大豆発酵培養物を含有している固体状(粉体、粒体等のあらゆる状態を含む)若しくは液体状の食料や薬として用いられる。
一方のイソフラボンアグリコンとしては、どのような原料から得られたものでもよいが、穀類を原料として得た穀物由来の素材とするとよい。また、穀類由来の素材としては、特に豆類を麹菌によって発酵させ、その後に加水分解することにより麹菌の酵素で豆類の成分を分解させて生成するとよい。更に、イソフラボンアグリコンとしては前記のようにして加水分解することにより生成された素材を、更に溶媒によって抽出濃縮することにより生成するとよい。
このように形成されている本発明のイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を所定期間に亘って経口投与や点滴によって継続的に体内に吸収させると、骨髄の造血幹細胞を含む体性幹細胞を増強させることができる。
また、本発明の幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を胚性幹細胞の信号伝達物質に作用させると、当該胚性幹細胞を増強することができる。
次に、イソフラボンアグリコンを有する本発明の造血幹細胞増強素材を含む体性幹細胞および胚性幹細胞からなる幹細胞を増強する幹細胞増強素材を麹菌を用いて発酵させて生成する場合について図1により説明する。
図1はその実線部分において本発明により豆類の1種である大豆粕から幹細胞増強素材を製造する製造方法の1実施の形態を示し、同図鎖線部分において更に本発明の麹菌大豆発酵培養物の製造方法の実施の形態を示している。
この図1の実線に示す工程に沿って本発明の幹細胞増強素材を製造する場合を説明すると、まず、大豆粕を蒸煮する。この蒸煮を施すことにより、蒸煮を行なわない場合に比較して麹菌の増殖が容易となる。また、この大豆粕の蒸煮は製造目的等に応じて蒸煮とその後の製麹処理とを別個に行なうバッチ式や、蒸煮とその後の製麹処理とを連続して行なうことのできる製麹装置によって連続式で行うようにするとよい。
そして、この蒸煮が終了した大豆粕を一旦冷却して、大豆粕中の水分量を麹菌が増殖可能な量(例えば、約36重量%)とさせる。
このようにして水分量を整えられた大豆粕に対して、本発明に従って幹細胞増強素材が以下のようにして製造される。
即ち、蒸煮が終了した大豆粕単体を冷却して麹菌が死滅しない温度以下の40℃以下になった時に、麹菌からなる種麹を所定重量比だけ接種し、両者が均一となるまで混合する。
その後、接種した種麹の増殖作用により混合物の温度を上げるために混合物を製麹装置内で品温を一旦低下させて約32℃程度にコントロールしながら放置すると大豆粕が麹菌によって発酵させられて、即ち製麹処理が進行して約38℃程度まで昇温するとともに、増殖する麹菌の菌糸の成長に伴って生成物が締まって固まって来る。その後、製麹が進行して製麹装置内において固まって来る生成物を回転攪拌してほぐすとともに、通気を行って内部に均一に空気を供給し、品温を約33〜35℃程度まで下げるようにコントロールし、更に通気を継続しながら製麹処理を進行させる。これにより麹菌が死滅することを確実に防止して、麹菌の増殖を十分に行わせることができる。その後、製麹装置内の生成物の固まり具合に応じて必要回数の回転撹拌を施すとともに、通気を継続する。
この製麹に用いる麹菌としては、古くからの日本独特の発酵食品やテンペに用いられている麹菌であり、食品として安全なアスペルギルス・ウサミ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ニガー等のアスペルギルス属およびリゾープス属の麹菌を用いるとよい。
この発酵時間については、使用する麹菌の種類に応じて、少なくとも24時間以上であり、麹菌が十分に増殖して大豆粕中の蛋白質およびまたは糖質を所定量分解させるに十分な発酵時間とするとよい。
本実施形態においては、製麹処理による生成物に対して蛋白質およびまたは糖質の加水分解を更に行なうものである。ここで糖質とは少糖類等の糖類や澱粉等を含むものである。
この製麹処理後の加水分解も基質をフレーク状態に保持したまま行なわれる。すなわち、本実施形態においては、製麹終了後の生成物に、例えば50重量%の水分量となるように加水してから30〜45℃に加温し、保温しながら所定時間保持して製麹処理による生成物内の蛋白質およびまたは糖質の加水分解が施される。このようにして蛋白質およびまたは糖質の加水分解が行われることにより、骨髄の造血幹細胞を増強する機能を有しているイソフラボンアグリコンが多量に生成される。
次に、本発明の造血幹細胞増強素材を含む体性幹細胞および胚性幹細胞からなる幹細胞を増強する幹細胞増強素材について具体例をもって説明する。
前記のようにして麹菌としてアスペルギルス・オリゼーを用いて本発明によって生成した幹細胞増強素材となる発酵大豆粕はイソフラボン化合物が良好に分解されたものとなる。即ち、未処理大豆粕においては、グリコシドであるダイジンおよびゲニスチンがアグリコンであるダイゼインおよびゲニスティンに比較して極めて多いのに、本発明によって生成された発酵大豆粕においては、グリコシドであるダイジンおよびゲニスチンが分解されて極めて少なくなり、分解によって生成されたアグリコンであるダイゼインおよびゲニスティンが極めて多くなる。即ち、無処理の大豆粕に対して品温が35℃になるように通風しながら、調節し、48時間の製麹を施し、水分含量が約50%となるように加水し、45℃で24時間以上に亘って麹菌の酵素で大豆の成分や麹菌の成分を加水分解を施してなる大豆粕中のイソフラボン化合物の含有量は表1の通りとなり、イソフラボン化合物のアグリコン体であるダイゼインやゲニスティンが多量に得られることが分かる。
【表1】
また、大豆胚芽について説明すると、予め大豆胚芽を蒸煮後に水分含量が約37%となるように加水した後、蒸煮し、殺菌し、冷却した後、大豆胚芽と麹菌との配合割合は、大豆胚芽を400kgに対して麹菌胞子を8×107個/gに調整した種麹(精白米にて調整)を200gを混合した。更に、製麹のスタート時には32℃に冷却した後、品温が40℃になるまで通風しないで40℃になった時点で通風しながら、温度上昇を抑えた。スタートから約17時間後の最初の撹拌(盛工程)を行った。大豆胚芽の熱を冷まし、撹拌後品温が35℃前後になるように通風しながら、温度をコントロールをした。次いで約8時間後に2回目の撹拌(仲工程)を行い、熱を冷ました。再び品温を通風で35℃前後にコントロールし、さらに約16時間後に3回目の撹拌(仕舞工程)を前回同様に行った。その後は品温が約38℃になるように通風しながら、温度コントロールし、スタートから48時間後に製麹を終了させた。製麹終了後、水分含量が50%になるように撹拌しながら、水分調整を行い、品温が約50℃になるように加温後、48時間以上麹菌の酵素で大豆胚芽中のイソフラボン化合物の大部分がアグリコン体になるまで加水分解した。表2の通り本発明による処理により大豆胚芽のイソフラボン化合物はアグリコン体のダイゼインが主体に多量得られた。
【表2】
また、本実施形態においては加水分解によって得られた生成物を溶媒を用いて更に抽出濃縮することにより表3のようなイソフラボンアグリコンが30重量%以上の濃縮物を得るとよい。この場合のイソフラボンアグリコンとしては、ダイゼインが約70重量%含有されている。
【表3】
このようにして製造された本実施形態の幹細胞増強素材は、製麹処理とその後の加水分解処理により大豆粕中の蛋白質およびまたは糖質が十分に分解されてイソフラボンアグリコンを多量に含む生成物とされる。
このイソフラボンアグリコンは骨髄の造血幹細胞を増強することができる機能等の体性幹細胞を増強する機能を有しており、体内に吸収されると、例えば、骨髄の造血作用を増強させて、造血幹細胞が増殖したり、分化して赤血球および白血球となって、適正量の血球等の成分を有する血液が体内に供給されることとなる。
これにより、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくと、骨髄の造血作用としての造血幹細胞の生成が常に正常に行われて適正量の血球等の成分を有する血液が体内に供給されることとなり、例えば、大量の放射線照射を受けたり、癌の治療法としての放射線照射を受けたり、抗癌剤の投与を受けた場合に起こるとされている骨髄による造血機能の低下を防止したり、低下してしまった造血機能を大きく回復させることが期待できる。これにより、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくことによって、副作用を発生させないで癌治療を施して、癌を克服することができることが期待できる。
更に、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくと、骨髄の造血幹細胞を増強させて、適正量の血球等の成分を有する血液を体内に供給させる機能を発揮させて、各種の病気の予防を行って、健康を維持することが期待できる。特に、原子力施設において作業する人や、レントゲン等の放射線を取り扱う人にとって、本発明の幹細胞増強素材を摂取することによってより効果的に健康を維持することができる。
従って、このように形成されている本発明のイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を所定期間に亘って経口投与や点滴によって継続的に体内に吸収させると、骨髄の造血幹細胞を含む体性幹細胞を増強させることができる。
また、本発明の幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有する幹細胞増強素材を胚性幹細胞の信号伝達物質に作用させると、当該胚性幹細胞を増強することができる。
次に、図1の鎖線に示す部分により本発明の幹細胞増強素材である麹菌大豆発酵培養物の製造方法を説明する。
この麹菌大豆発酵培養物は、豆類を麹菌によって発酵させて蛋白質を分解した生成物を更に加水分解する際に、当該生成物中に含まれている乳酸菌およびまたは前記生成物に添加された乳酸菌を増殖促進させている生成物であり、加水分解の際に乳酸菌をも用いることが前記のイソフラボンアグリコンの生成方法と相違する点である。
本実施の形態においては、製麹処理によって生成された生成物に対して、加水分解工程において麹菌と乳酸菌とを共存共生させて増殖促進させるようにして麹菌大豆発酵培養物を生成するものである。
この乳酸菌を用いる方法としては2種類ある。
乳酸菌を用いる一方の方法の実施の形態を説明すると、加水分解を乳酸菌の菌数が108cfu/g以上になるまでに必要な時間を保持するようにして生成物を製造するものである。その他は前記実施の形態と同様にして行われる。このように本実施の形態においては、製麹処理による生成物中に天然に含まれている乳酸菌を利用して行うものである。そして、本実施の形態においてはプロバイオテックスが利用されて、乳酸菌と麹菌とは原料である豆類からの生成物よりなる同一の基質上に共存共栄して一緒に活発に増殖される。
本実施の形態において、麹菌として味噌用麹菌のアスペルギルス・オリゼーを用いて本発明の製造方法に従って製造された発酵大豆粘から乳酸菌を分離し、表4に示す試験項目の試験を行なって乳酸菌の同定を行なった。
【表4】
表4の性状から分離した乳酸菌は、エンテロコツカス属(Enterococcus)のエンテロコツカス・フェシウム(Enterococcus faecium)であると同定された。この乳酸菌は腸球菌といわれる消化管内常在菌であることを確認した。
本実施例における前記発酵時間および加水分解時間ならびに加水分解温度を、豆類の種類、状態、特性、分量、麹菌の種類、状態、特性、分量、乳酸菌の種類、状態、特性、分量、生成物である幹細胞増強素材の種類、特性等に応じて調整するとよい。
次に、麹菌大豆発酵培養物を生成する場合の乳酸菌を用いる他方の方法の実施の形態を図1の鎖線に示す部分により説明する。
本実施の形態においては、加水分解の際に乳酸菌を製麹処理による生成物に添加するようにしたものである。
この乳酸菌としては、前記実施の形態と同様にエンテロコツカス属特にエンテロコツカス・フェシウムとするとよい。
このようにして乳酸菌を製麹処理による生成物中に入れて加水分解工程を開始させると、加水分解工程中に製麹処理において増殖した麹菌と乳酸菌とが同一基質である前記生成物に共存共生し、乳酸菌は生成物から栄養の付与を受けて増殖を促進させられて、生成物に麹菌と乳酸菌とが一緒に培養された状態となる。特に、製麹処理により生成物中にはビタミンB類が生成され、乳酸菌にとっても吸収しやすい栄養価の高い成分が生成されるために、これらを栄養源として乳酸菌の増殖が促進される。更に、本実施の形態の生成物内には、麹菌の酵素で種々の成分が加水分解されたものは、大豆粕を消化酵素で分解したものに相当し、消化物と未消化物とが分離している状態である。麹菌の酵素で加水分解された分解物(消化物)は人や家畜が摂取すると直ちに吸収されるが、未分解物は吸収されずに腸内で常在している有用な乳酸菌の栄養源となり、人や家畜にとって有用な短鎖脂肪酸の生成を増加させることになる。
しかも、前記生成物は乳酸菌が活発に増殖できる培地であるから、増殖したその乳酸菌が人や家畜等の腸内で前記生成物に含有される酵素未分解物を栄養源として常在できるものである。そして、最終的には麹菌と有用微生物とが同一基質である生成物に培養されているプロバイオティックスを利用した乳酸菌の増殖促進機能を保有する豆類を原料とした幹細胞増強素材が生成される。
このようにして製造された本実施の形態の幹細胞増強素材も前記実施の形態のイソフラボンアグリコンと同様に優れた骨髄の造血幹細胞を含む体性幹細胞および胚性幹細胞からなる幹細胞を増強させる機能を発揮する。
次に、本発明の実施例を説明する。
実施例1
本実施例においては、骨髄の造血幹細胞を増強させる機能を確認する実験を行うために、放射線の照射と骨髄移植を伴うマウス脾コロニー法をラットに施した。
試験方法
1)健康で各区で体重も揃った検体となる雌のラット(雌ICR)(8週齢)を育成した。
2)ラットへの投与物として、普通食と、この普通食に対してイソフラボンアグリコンの濃縮素材並びに麹菌大豆発酵培養物としての原料の豆類に製麹処理を施すことによって生成された生成物に対して加水分解工程において麹菌と乳酸菌とを共存共生させて増殖促進させて得られた生成物を混合した餌を用意した。
3)比較区1および2と試験区1および2にラットを5匹づつ分け、表5に示すように、比較区1および2に普通食を投与し、試験区1には体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を30mg/kgとなるように普通食に添加し、試験区2には1重量%の前記麹菌大豆発酵培養物を普通食に添加し、各々を3週間飼育した。
【表5】
4)放射線照射
3週間の飼育後に、比較区2、試験区1および試験区2のラットに対して、8Gyの照射量を1回のみ全身照射した。
5)骨髄移植
放射線照射から24時間経過後に、全区のラットに対して骨髄移植を施した。この場合、ドナーは同系のラットの大腿骨を切り離し、クリーンベンチで大腿骨の両端を短く切り捨て、その一端から10%Antibiotic−Antimycoticを含有RPMI Medium1640培地を1mlの注射器で一度に骨髄腔中を通して、試験官中に押し出す。骨髄細胞数は105/lに調整し、0.5mlを尾静脈より注射した。ドナーラットは2Gy放射線で全身照射し、普通食に1重量%の前記麹菌大豆発酵培養物を添加した餌で4週間飼育したものである。
6)脾臓の測定
骨髄移植後7日目の体重測定後に、全ラットを屠殺し、脾臓を摘出し、脾臓の重量および脾コロニー形成数を測定した。
7)体重の測定
全ラットの体重を、骨髄移植前と移植後7日目に測定した。
試験結果
1)放射線照射後の脾臓の重量変化は図2に示す通りであり、100g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化は図3に示す通りであり、放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数は図4に示す通りである。
2)体重の測定結果は図5に示す通りである。
図2から図4に示す脾臓に関する試験結果より、比較区1の放射線照射を受けていないラットに比較して他の比較区2並びに試験区1および試験区2をみると、本発明の幹細胞増強素材を摂取してない比較区2は脾臓の重量の増加が少なく、更に脾コロニーの形成数も低いので、骨髄の造血機能が大きく低下させられている。この比較区2の結果より、照射量が8Gyという強い放射線被曝を受けると、普通食のみを給餌されていたラットにおいては、骨髄移植を受けてもその効果がほとんど発揮されることがなく、脾コロニーの形成数も極めて低く抑えられてしまうものであった。
これに対し、本発明の幹細胞増強素材を摂取している試験区1および試験区2においては、脾臓の重量の増加が多く、更に脾コロニーの形成数も非常に高いので、骨髄の造血幹細胞を増強させる機能が大きく向上させられていることがわかる。
即ち、本発明のようにイソフラボンアグリコン並びに麹菌大豆発酵培養物を有する幹細胞増強素材を体内に吸収させると、照射量が8Gyという強い放射線被曝を受けた場合であっても、普通食のみを給餌されていた比較区2のラットと異なり、骨髄移植を受るとその効果がたちどころに発揮されて、脾コロニーの形成数が極めて多くなるものであった。従って、本発明のイソフラボンアグリコン並びに麹菌大豆発酵培養物を有する幹細胞増強素材を体内に吸収させると、放射線照射により低下させられた骨髄の造血機能を大きく回復させることができた。このことより、例えば照射量が6Gy、4Gy等の弱い放射線被曝を受けた場合には、本発明のイソフラボンアグリコン並びに麹菌大豆発酵培養物を有する幹細胞増強素材を体内に吸収させると、骨髄移植を施さなくとも、骨髄移植を施した場合と同様に、脾コロニーの形成数が多くなって、放射線照射により低下させられた骨髄の造血機能を大きく回復させることが期待できる。
このようにして骨髄の造血機能が確実に回復させられているので、本発明の幹細胞増強素材には、骨髄の造血幹細胞を増強させる機能があることがわかる。
従って、イソフラボンアグリコン並びに麹菌大豆発酵培養物からなる幹細胞増強素材を体内に吸収させると、骨髄の造血幹細胞を増強することができ、造血幹細胞が増殖したり、分化して赤血球および白血球となって、適正量の血球等の成分を有する血液が体内に供給されることとなる。
これにより、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくと、骨髄の造血作用としての造血幹細胞の生成が常に正常に行われて適正量の血液が体内に供給されることとなり、例えば、大量の放射線照射を受けたり、癌の治療法としての放射線照射を受けたり、抗癌剤の投与を受けた場合に起こるとされている骨髄による造血機能の低下を防止したり、低下してしまった造血機能を大きく回復させることが期待できる。これにより、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくことによって、副作用を発生させないで癌治療を施して、癌を克服することができることが期待できる。
更に、本発明の幹細胞増強素材を経口摂取や点滴などにより体内に吸収させておくと、骨髄の造血幹細胞を増強させて、適正量の血球等の成分を有する血液を体内に供給させる機能を発揮させて、各種の病気の予防を行って、健康を維持することが期待できる。
実施例2
本実施例においては、雄のレシピエントにおける骨髄の造血幹細胞を増強させる機能、生殖細胞の幹細胞を増強させる機能、およびイソフラボンアグリコンの投与容量に関する依存性を確認する実験を行うために、放射線の照射と骨髄移植を伴うマウス脾コロニー法をラットに施した。
試験方法
1)健康で各区で体重も揃った検体となる雄のラット(雄ICR)(6週齢)を育成した。比較区3、4および5並びに試験区4にそれぞれラットを10匹づつ分け、試験区3にラットを5匹分けて飼育した。
2)ラットへの投与物として、普通食と、この普通食に対してイソフラボンアグリコンの濃縮素材や選択的エストロゲンレセプター調節剤(SERMs)であるタモキシフェン(tamoxifen)よりも毒性の低い誘導体のトレミフェン(toremifen)を混合した餌を用意した。
3)表6に示すように、比較区3および4にそれぞれ普通食を投与し、試験区3には体重に対するイソフラボンアグリコンの濃縮素材の割合を30mg/kgとなるように普通食に添加し、試験区4には体重に対するイソフラボンアグリコンの濃縮素材の割合を、100mg/kgとなるように普通食に添加し、比較区5には体重に対するトレミフェン(toremifen)の割合を30mg/kgとなるように普通食に添加し、各々を飼育した。
【表6】
4)放射線照射
3週間の飼育後に、比較区4および5並びに試験区3および4のラットに対して、8Gyの照射量を1回のみ全身照射した。
5)骨髄移植
放射線照射から24時間経過後に、全区のラットに対して骨髄移植を施した。この場合、ドナーは同系のラットの大腿骨を切り離し、クリーンベンチで大腿骨の両端を短く切り捨て、その一端から10%Antibiotic−Antimycoticを含有RPMI Medium1640培地を1mlの注射器で一度に骨髄腔中を通して、試験官中に押し出す。骨髄細胞数は105/mlに調整し、0.5mlを尾静脈より注射した。ドナーラットは2Gy放射線で全身照射し、普通食に1重量%の前記麹菌大豆発酵培養物を添加した餌で3週間飼育したものである。
6)脾臓および精巣の測定
骨髄移植後7日目の体重測定後に、全ラットを屠殺し、脾臓を摘出し、脾臓の重量および脾コロニー形成数を測定し、同時に精巣を摘出して精巣の重量を測定した。
7)体重の測定
全ラットの体重を、骨髄移植前と移植後7日目に測定した。
試験結果
1)10g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化は図6に示す通りであり、放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数は図7に示す通りである。
2)10g体重当たりの放射線照射後の精巣の重量変化は図8に示す通りである。
3)体重の測定結果は図9に示す通りである。
図6および図7に示す雄ラットの脾臓に関する試験結果より、比較区3の放射線照射を受けていない雄ラットに比較して他の比較区4および5並びに試験区3および試験区4をみると、脾臓重量は比較区3に対して他の各区においては一様に低下しているが、その中においても比較区5が他のものより若干低い値を示している。脾コロニーの形成数は、本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区4が他の比較区4、5および試験区3よりも有意に高い。精巣重量は比較区3に対して他の各区においては一様に低下しているが、本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区4が他の比較区4、5および試験区3よりもほぼ有意に高い。体重は比較区3に対して比較区4、5および試験区3、4はほぼ変化なしであるが、比較区5が他のものより有意に低い値を示している。
これらの試験結果より、レシピエントとなる雄ラットにおいては、本発明の幹細胞増強素材のうち一方の体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区4においては、脾コロニー形成数および精巣重量において他のものより有意に増強されているが、他方の体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を30mg/kgを投与した試験区3においては比較例に対する有意性を示す程の増強結果が得られていないことがわかった。これにより雄ラットにおいては本発明の幹細胞増強素材の幹細胞増強作用が発揮されるためには摂取量に対する容量依存性、即ち摂取容量が多い方が幹細胞の状況作用力が高くなることがわかった。更に、十分な容量の本発明の幹細胞増強素材を摂取することにより、実施例1の雌ラットと同様の肝細胞増強作用が確実に発揮されることがわかった。
また、比較区5においては脾臓重量および体重において他の比較区4および試験区3、4より低い値を示していることがわかった。これにより比較区5に投与されているトレミフェン(toremifen)にはイソフラボンアグリコンと同等な幹細胞の増強作用はあるように思われるが、毒性面でイソフラボンアグリコンよりもかなり強いことがわかった。これに対して本発明の幹細胞増強素材のイソフラボンアグリコンは体重当り100mg/kg投与しても体重抑制の毒性はトレミフェンよりも少ないことからイソフラボンアグリコンの方が有効に幹細胞の増強に寄与することがわかった。すなわち、イソフラボンアグリコンは摂取量を多くして幹細胞増強作用を高めても安全性面では有効であることがわかった。
更に、精巣重量が本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区4が他の比較区4、5および試験区3よりもほぼ有意に高いことより、本発明の幹細胞増強素材のイソフラボンアグリコンは精巣並びに雌の卵巣からなる生殖器並びに精子や卵子からなる生殖細胞に関連する幹細胞の増強作用を有していることがわかった。
実施例3
本実施例においては、雄のドナーにおける骨髄の造血幹細胞を増強させる機能、生殖細胞の幹細胞を増強させる機能、およびイソフラボンアグリコンの投与容量に関する依存性を確認する実験を行うために、放射線の照射を雄ラットに施した。
試験方法
1)健康で各区で体重も揃った検体となる雄のラット(雄ICR)(6週齢)を育成した。比較区6および7並びに試験区5および6にそれぞれラットを10匹づつ分けて飼育した。
2)ラットへの投与物として、普通食と、この普通食に対してイソフラボンアグリコンの濃縮素材を混合した餌を用意した。
3)表7に示すように、比較区6および7に普通食を投与し、試験区5には体重に対するイソフラボンアグリコンの濃縮素材の割合を30mg/kgとなるように普通食に添加し、試験区6には体重に対するイソフラボンアグリコンの濃縮素材の割合を100mg/kgとなるように普通食に添加し、各々を飼育した。
【表7】
4)放射線照射
比較区7並びに試験区5および6の各区のラットに対して、飼育開始時に2Gyの照射量を1回のみ全身照射し、3週間飼育した。
5)脾臓の測定
3週間の飼育後の体重測定後に、全ラットを屠殺し、脾臓を摘出し、脾臓の重量および脾コロニー形成数を測定し、同時に精巣を摘出して精巣の重量を測定した。
6)体重の測定
全ラットの体重を、飼育前と3週間の飼育後に測定した。
試験結果
1)10g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化は図10に示す通りであり、放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数は図11に示す通りである。
2)10g体重当たりの放射線照射後の精巣の重量変化は図12に示す通りである。
3)体重の測定結果は図13に示す通りである。
図10および図11に示す雄ラットの脾臓に関する試験結果より、比較区6の放射線照射を受けていない雄ラットに比較して他の比較区7並びに試験区5および試験区6をみると、脾臓重量は比較区6に対して他の各区においては一様に低下しているが、本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区6が比較区7および他の試験区5よりも有意に高い。脾コロニーの形成数は、本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区6が比較区7よりも有意に高く、本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を30mg/kgを投与した試験区5が比較区7よりも有意ではないが高い。精巣重量は比較区6に対して他の各区においては一様に低下しているが、本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区6が他の比較区7および試験区5よりも高くなる経口を示している。体重は比較区6に対して比較区7および試験区5、6は若干低い値を示している。
これらの試験結果より、ドナーとなる雄ラットにおいては、本発明の幹細胞増強素材のうち一方の体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区6においては、脾コロニー形成数および精巣重量において他のものより有意に増強されているが、他方の体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を30mg/kgを投与した試験区5においての試験区6よりは低いが比較例7に対して増強する結果が得られている。これによりドナーとなる雄ラットにおいては、本発明の幹細胞増強素材の幹細胞増強作用が発揮されるためには摂取量に対する容量依存性、即ち摂取容量が多い方が幹細胞の状況作用が高くなることがわかった。更に、十分な容量の本発明の幹細胞増強素材を摂取することにより、実施例1の雌ラットと同様の肝細胞増強作用が確実に発揮されることがわかった。
更に、精巣重量が本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区6が他の比較区7および試験区5よりも高くなる傾向を示していることより、本発明の幹細胞増強素材のイソフラボンアグリコンは精巣並びに雌の卵巣からなる生殖器並びに精子や卵子からなる生殖細胞に関連する幹細胞の増強作用を有していることがわかった。
これらの実施例2および3より、レシピエントおよびドナーにおいて、共に本発明の幹細胞増強素材であるイソフラボンアグリコンを摂取していると、幹細胞の増強作用によって体内の幹細胞の増強を受けており、レシピエントはドナーからの骨髄等の移植を受けた場合に移植効果を高く発揮させることができ、ドナーはより移植効果の高い骨髄等を提供することができる。
実施例4
本実施例においては、骨髄の造血幹細胞を増強させる機能、イソフラボンアグリコンの投与容量に関する依存性、イソフラボンアグリコンの混合物並びに単体の機能および最も強力な活性を持つエストロゲンとの機能の相違を確認する実験を行うために、放射線の照射と骨髄移植を伴うマウス脾コロニー法をラットに施した。
試験方法
1)健康で各区で体重も揃った検体となる雌のラット(雌ICR)(6週齢)を育成した。各区にラットを5匹分けて飼育した。
2)ラットへの投与物として、普通食と、この普通食に対してイソフラボンアグリコンの濃縮素材やイソフラボンアグリコンの単体としてのゲニステインや最も強力なエストロゲン作用を持つ17βエストラジオールを混合した餌を用意した。
3)表8に示すように、比較区8、9および10にそれぞれ普通食を投与し、試験区7には体重に対するイソフラボンアグリコンの濃縮素材の割合を100mg/kgとなるように普通食に添加し、試験区8には体重に対するイソフラボンアグリコンの濃縮素材の割合を30mg/kgとなるように普通食に添加し、試験区9には体重に対するイソフラボンアグリコンの単体としてのゲニステインの割合を30mg/kgとなるように普通食に添加し、比較区11には体重に対する17βエストラジオールの割合を10μg/kgとなるように普通食に添加し、各々を飼育した。
【表8】
4)放射線照射
3週間の飼育後に、比較区8を除く比較区9、10および11並びに試験区7、8および9のラットに対して、8Gyの照射量を1回のみ全身照射した。
5)骨髄移植
放射線照射から24時間経過後に、比較区8および9を除く比較区10および11並びに試験区7、8および9のラットに対して骨髄移植を施した。この場合、ドナーは同系のラットの大腿骨を切り離し、クリーンベンチで大腿骨の両端を短く切り捨て、その一端から10%Antibiotic−Antimycoticを含有RPMI Medium1640培地を1mlの注射器で一度に骨髄腔中を通して、試験官中に押し出す。骨髄細胞数は105/mlに調整し、0.5mlを尾静脈より注射した。ドナーラットは2Gy放射線で全身照射し、普通食に1重量%の前記麹菌大豆発酵培養物を添加した餌で3週間飼育したものである。
6)脾臓の測定
骨髄移植後10日目に、全ラットを屠殺し、脾臓を摘出し、脾臓の重量および脾コロニー形成数を測定した。
7)体重の測定
全ラットの体重を、飼育開始時、1週間後、2週間後、骨髄移植前、移植後5日目、7日目および10日目に測定した。
試験結果
1)10g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化は図14に示す通りであり、放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数は図15に示す通りである。
2)体重の測定結果は図16に示す通りである。
図14および図15に示す雄ラットの脾臓に関する試験結果より、比較区8の放射線照射を受けていない雄ラットに比較して他の比較区9、10および11並びに試験区7、8および9をみると、脾臓重量は比較区8に対して他の各区においては一様に低下しているが、その中においても比較区9、10および11が試験区7、8および9より低い値を示している。一方、試験区7、8および9は放射線照射を受けた比較区9および10より有意に脾臓重量が高くなっており、中でも本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgを投与した試験区7が他の試験区8および9に対しても有意に高くなっている。脾コロニーの形成数は、試験区7、8および9は放射線照射後に移植を受けた比較区10および11より有意に脾臓重量が高くなっており、中でも本発明の幹細胞増強素材のうち体重に対するイソフラボンアグリコンの割合を100mg/kgおよび30mg/kgを投与した試験区7および8が、イソフラボンアグリコンの単体としてのゲニステインの割合を30mg/kgを投与した他の試験区9に対しても有意に高くなっている。体重は放射線照射後7日目を見ると、比較区9、10および11において減少傾向を示し、試験区7および8において変化なしの傾向を示し、試験区9において増加傾向を示している。
これらの試験結果より、レシピエントとなるラットにおいては、本発明の幹細胞増強素材のうちイソフラボンアグリコンの混合物および単体を投与した試験区7、8および9においては、脾臓重量および脾コロニー形成数において放射線照射後に移植を受けた比較区10および11よりより有意に増強されていることがわかった。更に、本発明の幹細胞増強素材を投与している試験区7、8および9においては、イソフラボンアグリコンの単体を投与した試験区9よりイソフラボンアグリコンの混合物を投与した試験区7および8の方が有意に高くなっており、しかも本発明の幹細胞増強素材を投与している試験区7および8においては、ソフラボンアグリコンの混合物を投与量が多い試験区7の方が少ない試験区8より有意に高くなっていることがわかった。これにより雌ラットのレシピエントにおいても、本発明の幹細胞増強素材の幹細胞増強作用が発揮されるためにはイソフラボンアグリコンの摂取量に対する容量依存性、即ち摂取容量が多い方が幹細胞の状況作用が高くなることがわかった。更に、表3に示されるイソフラボンアグリコンの混合物の方が単体からなるゲニステインより幹細胞増強作用が高く発揮されることがわかった。特に、表3に示されるイソフラボンアグリコンの混合物の方が単体からなるゲニステインより製造コストが低廉であるので、コスト的にも非常に優位である。また。最も強力なエストロゲン作用を持つ17βエストラジオールでは体重の増加抑制は顕著に現れ、脾コロニー形成面でまったく増強は認められなかった。本試験では投与量をイソフラボンアグリコンに比べて1000分の1以下に設定し、行ったが、幹細胞の増強はまったく確認することはできず、むしろ、体重の抑制などの副作用が問題となった。
なお、本発明は前記各実施の形態並びに各実施例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。本発明の幹細胞増強素材は前記実施例のように経口投与の他に点滴によって体内に吸収させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の幹細胞増強素材を生成する工程図、
図2は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例1にかかる放射線照射後の脾臓の重量変化を示す線図、
図3は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例1にかかる100g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化を示す線図、
図4は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例1にかかる放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数を示す線図、
図5は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例1にかかる体重の変化を示す線図、
図6は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例2にかかる10g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化を示す線図、
図7は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例2にかかる放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数を示す線図、
図8は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例2にかかる10g体重当たりの放射線照射後の精巣の重量変化を示す線図、
図9は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例2にかかる体重の変化を示す線図、
図10は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例3にかかる10g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化を示す線図、
図11は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例3にかかる放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数を示す線図、
図12は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例3にかかる10g体重当たりの放射線照射後の精巣の重量変化を示す線図、
図13は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例3にかかる体重の変化を示す線図、
図14は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例4にかかる10g体重当たりの放射線照射後の脾臓の重量変化を示す線図、
図15は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例4にかかる放射線照射後で骨髄移植後の脾コロニー形成数を示す線図および
図16は本発明の幹細胞増強素材を摂取したラット等の実施例4にかかる体重の変化を示す線図である。
Claims (8)
- 幹細胞を増強する作用を備えたイソフラボンアグリコンを有することを特徴とする幹細胞増強素材。
- 幹細胞は、造血幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞等を含む各々の臓器形成や組織形成の元になる幹細胞からなる体性幹細胞または胚性幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載の幹細胞増強素材。
- 前記イソフラボンアグリコンは、細胞増殖因子に作用する酵素の酵素活性を阻害しないエストロゲン作用を保有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の幹細胞増強素材。
- イソフラボンアグリコンは穀類由来の素材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の幹細胞増強素材。
- 穀類由来の素材は、穀類を麹菌によって発酵させて蛋白質を分解し、その後に加水分解することにより生成されていることを特徴とする請求項4に記載の幹細胞増強素材。
- 穀類は豆類であることを特徴とする請求項5に記載の幹細胞増強素材。
- イソフラボンアグリコンは加水分解することにより生成された素材を更に濃縮することにより生成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の幹細胞増強素材。
- イソフラボンアグリコンは、少なくとも70重量%のダイゼインを含有することを特徴とする請求項7に記載の幹細胞増強素材。
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