JP4803971B2 - 脂質代謝改善組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な脂質代謝改善組成物に関する。
近年、日本人の食生活が大きく変化して肉食中心の高脂肪食を摂取するようになったこと、ならびにストレスや運動不足により、中高年齢層だけでなく、青少年においても、肥満とこれに伴う体脂肪率の増加が問題となっている。
最近では、運動療法と食餌療法との両面から体脂肪を減らすことによる肥満の解消法が提案されている。運動療法は、文字どおり、体を動かして体温を上昇させかつ基礎代謝を高めることによって、消費カロリーを高め、体脂肪を減らす方法である。しかし、ほとんどの人にとっては、そのような時間を取って実践することは難しい。そこで、より実践し易い食餌療法の観点から、様々なダイエット食品が市販されている。例えば、グルコマンナンなどの食物繊維を含むダイエット食品は、食べることにより満腹感が得られるが、摂取するカロリーが低いという食品である。しかし、これらを食した場合には日常的な栄養摂取が十分に行われない可能性がある。さらに、体重が減少しても、体脂肪率はほとんど減少せず、逆に栄養失調を引き起こすなど、健康を損うおそれもある。そこで、体脂肪率を減少させる食品が提案されている。例えば、D−キシロースおよび/またはL−アラビノースを有効成分とする体脂肪蓄積抑制剤または体脂肪減少剤(特許文献1)、キシロオリゴ糖を含有する抗肥満作用および/または体脂肪減少作用を有する飲食品(特許文献2)、キトサンおよびカルニチンを含有するダイエット食品(特許文献3)が報告されている。しかし、これらの物質も脂質代謝効果が十分とはいえず、さらに脂質または糖の吸収阻害を目的とするため、本来、必要な栄養素が吸収されにくくなるという問題点がある。
特開平7−242551号公報 特開平10−290681号公報 特開平11−253130号公報 特開平11−246478号公報 特許第3092006号公報 特開2001−26538号公報 特開2002−114676号公報 特開2001−158738号公報 Yazawa、S.ら、J.Japan Soc.Hort.Sci.,1989年,58巻,601−607頁
本発明は、新規な脂質代謝改善組成物を提供することを目的とする。
本発明の脂質代謝改善組成物は、カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体を発酵することによって得られる。
好ましい実施態様においては、上記植物体は、トウガラシ属の植物体である。
本発明によれば、カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体を発酵することによって、脂質代謝改善組成物が得られる。本発明の脂質代謝改善組成物は、脂質燃焼促進作用、コレステロール合成阻害作用などによって、体内に蓄積した脂肪を効率よく消費させ得る。さらに、香りや嗜好性にも優れており、食品、医薬品、医薬部外品などに広く適用し得、脂質代謝改善等に有用である。特に、カプサイシノイド様物質を含有する植物体を発酵して得られる組成物は、食品、医薬品、医薬部外品などにおいて特に適用範囲が広く、極めて有用である。
本発明の脂質代謝改善組成物は、カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体を発酵することによって得られる。
カプサイシノイド様物質は、以下の式で示される化合物である:
Figure 0004803971
Rは炭素数が4〜15の脂肪酸残基である。
上記のカプサイシノイド様物質としては、例えば、以下の式で示される化合物が知られている。この化合物は、トウガラシ(品種CH−19:京都府立大学農学部・野菜園芸学研究室導入番号)から選抜されたトウガラシ品種「CH−19甘」から得られており、化学合成も行われている(特許文献4および5、ならびに非特許文献1):
Figure 0004803971
Figure 0004803971
nは3から5の整数である。
このカプサイシノイド様物質については、これまでに、肥満予防、基礎代謝亢進、持久力向上効果などの様々な機能が知られている(特許文献6〜8)。特に、トウガラシ品種CH−19甘は、辛味を呈さないカプサイシノイド様物質を含有しているため、その乾燥物や極性溶媒抽出物が、医薬品、化粧品、食品などに応用されている。
本発明に用いられる植物体において、カプサイシンを含有する植物体としては、トウガラシ属の植物体が挙げられる。トウガラシ属の植物体は、品種、産地などに特に限定されない。具体的には、トウガラシ品種CH−19甘、伏見甘長、シシトウ、山科、万願寺、鷹の爪、香川本鷹、青森鷹の爪、札幌大長、カリフォルニア・ワンダー、チェリーボムなどが挙げられる。カプサイシノイド様物質を含有する植物体としては、例えば、上記のトウガラシ品種CH−19甘、該品種と他のトウガラシ属植物(カリフォルニアワンダー、シシトウなど)との交配種が挙げられる。上記植物体は、単独で用いても、二以上を組み合わせて用いてもよい。トウガラシ属の植物体が好適に用いられ、特に、トウガラシ品種CH−19甘は、カプサイシンとカプサイシノイド様物質の両方を含むが、辛味が少ないため、好適に用いられる。
植物体は、カプサイシンまたはカプサイシノイド様物質を含有する部位であれば、どの部位を用いてもよい。特に、トウガラシ属の植物体においては、カプサイシンまたはカプサイシノイド様物質は胎座部に多く含まれているため、胎座部または胎座部を含む果実を用いることが好ましい。また、植物体は、生のまま用いてもよいし、乾燥物を用いてもよい。これらの植物体を発酵処理することによって、脂質代謝改善組成物が得られる。
上記植物体は、そのまま後述する発酵処理等に供することも可能であるが、植物体の表面積を増加させて効率よく植物体を発酵処理する点から、予め植物体を破砕することが好ましい。例えば、植物体をスライサーまたはダイサーでカットした後に、マスコロイダー、ブレンダー、摩砕ミルなどで、破砕片の粒径が、好ましくは100〜3000μm、より好ましくは200〜1000μmになるまで破砕する。必要に応じて、水、エタノールなどを適宜加えて破砕してもよい。
上記植物体またはその破砕物に予め水を加えることが、発酵処理を効率よく行い得るという点から好ましい。加える水の量は、植物体またはその破砕物の全質量に対して、等量〜10倍量、好ましくは2倍量〜5倍量、より好ましくは2倍量〜4倍量である。水を加えることによって、加熱処理においては、熱の伝導効率が高まり、そして発酵処理においては、菌の生育環境が好適になる。
発酵処理を行う前に、予め植物体またはその破砕物に対して加熱処理を行ってもよい。発酵処理前に加熱処理を行うと、加熱処理によって脂肪酸が生成するため、発酵処理の比較的早い段階でこの脂肪酸が資化され、短時間で香りなどの嗜好性を高めることができる。特に、酵母や酢酸菌を用いて発酵を行う場合は、発酵処理前に加熱処理を行うことによって、雑菌の繁殖を抑えることができる。
加熱処理は、植物体またはその破砕物を、40℃〜120℃の範囲の温度で30分〜24時間加熱することによって行われる。特に、カプサイシノイド様物質を含有する植物体においては、効率よく分解物(脂肪酸など)を生じさせるために、高い加熱温度で短時間処理することが好ましい。例えば、40℃〜60℃にて3時間〜24時間、または60℃〜120℃にて30分間〜3時間処理することが好ましい。また、酢酸、焼成カルシウムなどを用いてpHを5〜6.5または8〜10に調整することにより、より低い加熱温度で処理することも可能である。このような高温かつ短時間での処理あるいは低温での処理により、カプサイシノイド様物質以外の成分の変性(色素の変化による材料の褐変など)を避けることができる。
次いで、植物体またはその破砕物を発酵処理する。発酵処理は、例えば、植物体に含まれるカプサイシノイド様物質などを分解する。発酵処理は、有機酸を産生し得、かつカプサイシノイド様物質などの分解により生成する脂肪酸を資化し得る微生物を、上記植物体またはその破砕物と接触させて行われる。微生物によって産生される有機酸などによるpHの変化などにより、カプサイシノイド様物質などが分解され、さらに微生物が分解物である脂肪酸を資化し、資化された脂肪酸は、菌体の代謝により、有機酸、アミノ酸などへさらに変換され得る。
植物体またはその破砕物に微生物を接触させる態様としては、例えば、植物体またはその破砕物に付着している微生物をそのまま利用することおよび植物体またはその破砕物に微生物を添加することが挙げられる。高い脂質代謝改善作用の発酵処理物を得る観点から、植物体またはその破砕物に微生物を添加することが好ましい。植物体またはその破砕物に付着している微生物をそのまま利用する場合には、植物体またはその破砕物が腐敗する恐れがあるため注意を要する。
発酵としては、乳酸発酵、クエン酸発酵、アルコール発酵、酢酸発酵、これらの組み合わせによる発酵などが挙げられる。発酵の種類に応じて、乳酸菌、酵母菌、酢酸菌などを植物体またはその破砕物と接触させる。これらの中でも、乳酸発酵が好ましい。
乳酸発酵は、上記植物体またはその破砕物と乳酸菌とを接触させることによって行われる。乳酸発酵は、例えば、カプサイシノイド様物質などを分解し、分解物を資化して有機酸を産生するだけでなく、発酵物を低いpHに維持できるため、他の雑菌の繁殖を防ぐことも可能である。また、乳酸菌により整腸作用を有する有機酸などが作られ、より胃腸機能改善効果の高い発酵物を得ることもできる。
乳酸菌としては、ロイコノストック・メセントロイデス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどが挙げられ、単独でまたは組み合わせて用いられる。例えば、単独で用いる場合、ラクトバチルス・プランタラムが、その耐酸性、生育温度、および増殖速度の面から好適である。
乳酸菌を添加する場合、予め植物体またはその破砕物に、植物体の細胞壁を分解する酵素を添加してもよい。このような酵素を添加することにより、植物体の細胞内に含まれる栄養分が溶出し、乳酸菌が資化し得る栄養分が多くなるため、乳酸菌の生育が良くなる。さらに、これらの酵素が植物の細胞壁(膜)へ作用する結果、植物体の乳酸菌発酵液中のセロビオース、セロオリゴ糖などの含量が多くなり、発酵液に機能性が付与されるという効果が得られる。これらの酵素としては、ペクチン分解酵素(例えば、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、およびプロトペクチナーゼ)、セルロース分解酵素(例えば、セルラーゼ、およびヘミセルラーゼ)などが挙げられる。これらの酵素は混合して用いてもよい。具体的には、プロトペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびセルラーゼを含む製剤が好適に用いられる。これらは、植物体またはその破砕物に対して0.001質量%〜約0.2質量%程度添加されるが、用いる酵素の精製度により異なる。ポリガラクツロナーゼを用いる場合、この酵素の最適pHはアルカリ側にあるので、植物体またはその破砕物のpHが低い場合は、注意を要する。
乳酸菌が優先的に増殖できる環境をつくるため、植物体またはその破砕物を含む反応液のpHを予め低くしておくことも好ましい。例えば、ラクトバチルス・プランタラムでは、pH4.0程度に調整してから発酵を開始すれば、短期間でその発酵を終了できる。植物体またはその破砕物を含む反応液のpHを低下させる方法としては、例えば、植物体またはその破砕物にpH低下剤を添加すること、あるいは植物体またはその破砕物に電気分解処理して酸性化された水(電解水)を添加することが挙げられる。pH低下剤としては、塩酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、ソルビン酸などが挙げられる。発酵物の酸味を抑制するためには、グルコン酸が好ましい。これらのpH低下剤は、植物体またはその破砕物を含む反応液中に約0.1質量%〜1.2質量%程度となるように加えることが好ましく、グルコン酸では約1質量%、他の有機酸では約0.3質量%加えることが好ましい。電解水は、該処理に用いた有隔膜の電解槽における陽極側の水を使用する。得られた電解水のpHが低すぎる場合には、イオン交換水の添加によって調整すればよい。
また、乳酸菌の優先的な生育のために、グルタミン酸またはその塩を加えてもよい。グルタミン酸の量は、植物体またはその破砕物100質量部に対して0.05〜1質量部程度、好ましくは0.1〜0.5質量部程度となるように添加され得る。
乳酸菌代謝性の糖を添加してもよい。この糖の添加は、糖分含量が少ない植物(1質量%未満)を発酵させる場合に有用である。あるいは、発酵の促進および飲料として用いる場合の甘味の付加という目的で添加してもよい。添加される乳酸菌代謝性の糖は、乳酸菌が生育および発酵に利用し得る糖であり、例えば、庶糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの糖は、糖分が植物の糖分と合わせて約1〜6質量%になるように加えることが好ましい。
乳酸菌は、上記植物体またはその破砕物100質量部に対して、湿菌体質量で好ましくは0.005〜5.0質量部、さらに好ましくは0.01〜2.0質量部添加される。なお、市販の乳酸菌乾燥粉末を用いる場合は、約0.0005〜1質量部を目安に添加すればよい。発酵温度は、通常4℃〜50℃である。発酵時間は、発酵温度に応じて設定すればよく、特に制限はない。例えば、20℃〜50℃で発酵を行う場合、6時間〜72時間、好ましくは12時間〜72時間である。特に、30℃〜40℃で発酵を行う場合は、6時間〜64時間、好ましくは12時間〜64時間である。また、植物体の青臭みを抑えた発酵物を得るために4℃〜10℃で発酵を行う場合は、5日間〜14日間である。
乳酸発酵は、嫌気性条件下で行うことが好ましい。嫌気性条件は、上記植物体またはその破砕物を発酵槽に入れた後、脱気することにより、または発酵槽を密封するか、窒素、二酸化炭素などのガスで満たすか、減圧することにより、あるいはそれらを組み合わせることにより得られる。嫌気性条件下で発酵を行うことにより、得られる発酵処理物の風味も良くなる。
乳酸発酵においては、乳酸菌非代謝性の糖を加えて発酵を停止させることができる。このような糖としては、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、オリゴ糖(例えば、マルトオリゴ糖、キトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖)などが挙げられる。このようなオリゴ糖は、整腸作用、う蝕の予防などに効果があり、得られる発酵処理物に機能性を付与し得る。
クエン酸発酵は、上記植物体またはその破砕物に、酵母を好気性条件下で接触させて培養することによって行われる。酵母によって産生されるクエン酸も、発酵物のpHを低くし、例えば、カプサイシノイド様物質などの分解を促進し得る。さらに、酵母を用いて発酵処理を行う場合、酵母がアミノ酸、タンパク質、ビタミン類などを産生するため、栄養価が高く、嗜好性に優れた植物体発酵処理物を得ることができる。
酵母としては、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、パン酵母などと呼ばれる酵母が挙げられる。好ましくは、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属などに属する酵母が用いられ、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・パストリアヌス、シゾサッカロミセス・ポンベなどが挙げられる。特にアミノ酸やビタミンなどの有用物質を産生する点で、サッカロミセス・セレビシエを用いることが好ましい。
酵母の添加量は、特に制限されない。好ましくは、植物体またはその破砕物100質量部に対して、湿菌体または乾燥菌体質量で0.01〜15質量部程度、好ましくは0.1〜10質量部程度を添加する。
クエン酸発酵は、植物体またはその破砕物と酵母とを発酵槽に入れ、通気攪拌しながら、4℃〜40℃、好ましくは10℃〜35℃で12時間〜14日間行う。
アルコール発酵は、酵母を、上記植物体またはその破砕物と嫌気性条件下で接触させて培養することによって行われる。アルコール発酵に用いられる酵母の種類および量は、上記クエン酸発酵の場合と同様である。発酵条件も、嫌気性条件にすること以外は、上記クエン酸発酵の場合と同様である。こうしてアルコール発酵で得られた発酵処理物は、さらに以下で述べる酢酸発酵に供することが好ましい。
酢酸発酵は、上記植物体またはその破砕物にアルコールを添加して、所定のアルコール濃度にした後、酢酸発酵し得る微生物(酢酸菌)を添加して行われる。あるいは上記のアルコール発酵によって得られた発酵処理物に酢酸菌を添加して二段発酵させてもよい。
アルコール濃度は、酢酸菌が生育できる濃度であれば、どのような濃度であってもよく、発酵時間などを考慮して、10質量/容量%以下にすることが好ましく、1〜6質量/容量%が特に好ましい。
酢酸菌としては、アセトバクター属に属する微生物、例えば、アセトバクター・アセチ、アセトバクター・パステウリアヌス、アセトバクター・ハンセニなどが挙げられる。
酢酸菌は、適切な培地で15℃〜40℃、好ましくは、25℃〜35℃で、6〜48時間予備培養しておくことが好ましい。予備培養した酢酸菌は、例えば、次のようにして得ることができる。ポテト200g、破砕酵母30g、肝臓エキス25g、肉エキス5g、チオグリコール酸培地10g、グルコース5g、グリセロール15g、および炭酸カルシウム15gを含有する1Lの酢酸菌培地(pH7.0)に酢酸菌を添加して、15℃〜40℃で24時間予備培養する。次いで、培養物を遠心分離し、回収した菌を滅菌水で洗浄し、再度遠心分離し、上清を除去して、予備培養した酢酸菌を得る。
酢酸菌は、植物体またはその破砕物、あるいは発酵処理物100質量部に対して、湿菌体質量で0.0001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部を添加する。
酢酸発酵は、攪拌培養、振盪培養、または静置培養のいずれでも行うことができる。発酵温度は10℃〜40℃、好ましくは20℃〜35℃の間である。発酵時間は、酢酸菌の添加量に応じて適宜設定され、通常、1日〜1週間が好適である。
上記のように、カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体またはその破砕物を発酵処理することによって、植物体発酵処理物を得ることができる。この発酵処理物を加熱処理してもよい。得られた植物体発酵処理物から発酵処理液を回収してもよい。発酵処理液の回収には当業者が通常用いる方法、例えば、遠心分離、濾過などが適用され得る。
上記植物体発酵処理物に、さらに抽出処理を施してもよい。植物体発酵処理物中に含有される成分のうちで、脂質代謝改善作用を有する成分は、主に水、エタノールなどに溶解する成分である。したがって、植物体発酵処理物から抽出を行い、得られた抽出物を用いてもよい。特に、カプサイシノイド様物質を含有する植物体またはその破砕物を用いた植物体発酵処理物は、植物体中にはほとんど含有されないカプサイシノイド様物質の分解物、主としてバニリルアルコールを含有する。抽出物は、例えば、該植物体発酵処理物を必要に応じて粉砕し、水、エタノールなどの溶媒を加えて抽出を行い、当業者が通常用いる方法、例えば、遠心分離、濾過などにより植物体処理物の残渣を除去することによって得られる。なお、植物体を粉砕せずに発酵処理を行った場合には、抽出を容易にするために、上記処理後に粉砕してもよい。さらに、抽出物は、抽出に用いた溶媒の一部または全部を除去して、エキスとすることもできる。
このようにして、植物体発酵処理物およびその抽出物(エキス)が得られる。これらの植物体の発酵処理物およびその抽出物(エキス)が、本発明の脂質代謝改善組成物として用いられ得る。この脂質代謝改善組成物は、脂質組織における脂質代謝を促進し、かつ肝臓におけるコレステロールの合成を阻害し得る。さらに、脂質の多い食品を摂取することによって引き起こされる血中の中性脂肪上昇を抑制する効果をも有する。
本発明の組成物は、カプサイシン、またはカプサイシノイド様物質を含有する植物体を用いた場合には、その分解物を含有する。ここで、カプサイシノイド様物質の分解物の含有量は、カプサイシノイド様物質が上記処理によって主にバニリルアルコールと脂肪酸とに分解されることに基づいて、バニリルアルコールの含有量を指標として測定され得る。理論的には、1molのカプサイシノイド様物質が分解すると、1molのバニリルアルコールが生成され得る。したがって、バニリルアルコールの含有量を測定することによって、カプサイシノイド様物質の分解率およびカプサイシノイド様物質の分解物の生成量を知ることができる。バニリルアルコールは、例えば、HPLCによって測定し得る。特に、カプサイシノイド様物質の分解物を含有する場合は、脂質代謝改善効果を効率的に発揮する点から、バニリルアルコールを指標として、乾燥質量換算で0.05質量%〜0.3質量%含有することが好ましい。このバニリルアルコールの含有量は、処理前の含有量に比べて、1.5倍〜25倍、好ましくは2〜20倍に相当する。
必要に応じて、本発明の組成物の殺菌処理を行う。殺菌処理は、気流殺菌、高圧殺菌、加熱殺菌などの当業者が通常用いる方法により行われ得る。殺菌は、各種の栄養分を保持するために、できるだけ低温かつ短時間で行うことが好ましい。殺菌処理により、長期間の保存が可能となる。
本発明の組成物は、脂質代謝改善作用を有するため、該作用を得ることを目的とした種々の形態で利用される。この組成物は、さらに香りがよく、特にカプサイシノイド様物質を含有する植物体またはその破砕物を発酵することによって得られた組成物は、カプサイシンのような刺激性を持つ物質をほとんど含有しないため、特別な処理を必要とすることなく種々の目的に利用される。例えば、食品、医薬品、医薬部外品などとして利用される。この組成物に含有される発酵処理物の量も組成物の利用形態に応じて適宜設定される。
本発明の組成物の形態に特に制限はない。例えば、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤;錠剤;丸剤;粉末;顆粒;植物体発酵処理物の粉砕物を含むティーバッグ、液剤などの当業者が食品あるいは医薬品として通常用いる形態で利用される。これらは、形状または好みに応じて、そのまま摂取してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良く、成分を浸出させたものを摂取しても良い。これらは、上記カプサイシノイド様物質の分解物に加え、その形態に応じて必要とされる成分を含有し得る。例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などの添加剤を含有し得る。これらのうち、食品添加物としては、ローヤルゼリー、ビタミン類、ミネラル、キチン・キトサン、レシチンなどが挙げられる。
上記食品、医薬品、および医薬部外品は、上記分解物を含有させること以外は、当業者が通常利用する方法により製造され得る。例えば、粉末状の脂質代謝改善組成物を得るには、上記の植物体発酵処理物をそのまま乾燥して粉末とするか、あるいは植物体発酵処理物から得られた抽出物を乾燥したエキス末とする。乾燥方法は、当業者が一般的に用いる種々の方法が採用されるが、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましく用いられる。噴霧乾燥を行う場合、必要に応じてデキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースのような賦形剤を添加して行われる。好適にはデキストリンが用いられ、組成物とデキストリンとの比は、質量比で1:5〜10:1が好ましい。抽出液を乾燥する場合、この液とデキストリンとの比は、質量比で1:10〜5:1が好ましい。
上記液剤は、特に健康飲料として好適に利用され得る。例えば、植物体発酵処理物の抽出物をそのまま用いるか、あるいは種々の調味料、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、香料、色素などを加えて、好みの味に調整して用いることができる。そして、このような抽出物は、他の発酵ジュースや野菜ジュースなど(例えば、人参ジュースあるいは混合野菜ジュース)と混合すれば、更に栄養価の高いジュースとすることができる。あるいは、寒天などに混合してゼリーとすることもでき、野菜または果物ジュース、乳製品などと組み合わせて、冷却・混練など当業者が通常行う方法によって、シャーベット、フローズンヨーグルト、アイスクリームなどの食品とすることもできる。また、これらの液剤、液剤を含む飲料、および食品は、低pHであれば、120℃、4分の完全殺菌をしなくても、100℃以下の殺菌条件で殺菌できる。例えば、pHが4.0以下の場合では、65℃、10分相当の殺菌条件で十分に殺菌できる。
本発明の組成物の1日の摂取量は、特に制限されず、摂取態様に応じて適宜設定され得る。例えば、組成物中にトウガラシ品種CH−19甘の発酵処理物を含有する場合、好ましくは、該発酵処理物が乾燥質量換算で、0.001g〜10g、より好ましくは0.005g〜1gとなるように設定される。
本発明の脂質代謝改善組成物は、カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体を発酵処理することによって得られる。この組成物は、発酵処理前の植物体が持ち得ない優れた脂質代謝改善作用を有する。この脂質代謝改善作用は、植物体の発酵処理物が、体内に蓄積した脂肪の燃焼を促進し得る反応系を活性化させるとともに、様々な疾患の原因となるコレステロールの合成系を阻害することによって、体内に蓄積した脂肪を効率よく消費させ得ることに基づく。本発明の組成物は、さらに香りや風味などの嗜好性に優れ、食品、医薬品、医薬部外品などとして利用され得る。特にカプサイシノイド様物質を含有する植物体を発酵して得られる組成物は、カプサイシンのような刺激性を持つ物質をほとんど含有しないため、食品、医薬品、医薬部外品などにおいて特に適用範囲が広く、極めて有用である。
以下、本発明の実施態様をより詳細に説明するが、本実施例に限定されないことはいうまでもない。
(実施例1:植物体発酵処理物の調製)
カプサイシノイド様物質を0.02質量%(乾燥質量換算で0.2質量%)含有する生のトウガラシCH−19甘の果実(森永製菓株式会社)(以下、CD植物体という場合がある)2kgに、4kgの精製水を加え、マスコロイダーで破砕し、6kgの植物体破砕物を得た。この200gの植物体破砕物と200gの精製水とを、ジャケットつきタンクへ投入した。乳酸菌(協和ハイフーズ株式会社)を、乾燥質量で最終濃度が0.1質量%となるように添加し、30℃にて64時間嫌気性発酵を行った。発酵開始から0時間、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、および64時間後に発酵処理物の一部(各50g)を回収し、冷蔵庫で保存した。発酵終了後、各回収サンプルのうちの10gを用いて、Brix値、およびpHを測定した。残りの40gは、それぞれ濾過し、これらの濾液を凍結乾燥して、発酵未処理植物体抽出物の乾燥粉末A(発酵開始0時間)および発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末A1〜A6を得た。各乾燥粉末1.2gを各々1mLの精製水に溶解し、カプサイシノイド様物質の分解物の含有量をバニリルアルコールを指標として、下記のHPLCの条件でバニリルアルコール含有量を測定した。測定結果を表1〜表3に示す。
(バニリルアルコール測定条件)
機 種:JLC−500/V(日本電子株式会社)
カラム:Unison UK−18,4.6mm×150mm(インタクト株式会社)
移動相:5%〜10%アセトニトリル−0.5%酢酸溶液で40分間のグラジエントで行う
流速:0.7mL/分
カラム温度:40℃(0→16.3分)
測定波長:励起280nm、検出320nm
標準試薬:バニリルアルコール(和光純薬株式会社)
(実施例2:植物体発酵処理物の調製)
乳酸菌を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、各時間(0、3、6、12、24、48、および64時間)発酵処理した発酵処理物を回収し、濾過した。これらの濾液を凍結乾燥して発酵未処理植物体抽出物の乾燥粉末A(発酵開始0時間)および発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末A7〜A12を得た。これらの乾燥粉末のBrix値、pH、およびバニリルアルコール含有量を測定した。結果を表1〜3に併せて示す。
(実施例3:植物体発酵処理物の調製)
トウガラシCH−19甘(CD植物体)の代わりに、カプサイシンを含有する通常市販されているトウガラシ(以下、CN植物体という場合がある)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各時間(0、3、6、12、24、48、および64時間)発酵処理した発酵処理物を回収し、濾過した。これらの濾液を凍結乾燥して発酵未処理植物体抽出物の乾燥粉末B(発酵開始0時間)および発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末B1〜B6を得た。これらの乾燥粉末のBrix値およびpHを測定した。結果を表1および2に併せて示す。
Figure 0004803971
Figure 0004803971
Figure 0004803971
表3からわかるように、カプサイシノイド様物質を含有する植物体を発酵処理することによって、抽出物中のバニリルアルコールの含有量が増加した(実施例1および2)。このことは、発酵処理によって、植物体中のカプサイシノイド様物質が分解されたことを示す。さらに、乾燥粉末A6(発酵処理64時間)は、発酵未処理物である乾燥粉末A(発酵処理0時間)に比べて、約10倍に増加していた(実施例1および2)。分解により生成したバニリルアルコールの含有量から、カプサイシノイド様物質は64時間発酵処理することによって、モル換算で90%以上分解されてバニリルアルコールに変換されており、特に、実施例1は、発酵によってpHも低下していることから(表2)、雑菌の繁殖を防ぎつつ、カプサイシノイド様物質を分解できることがわかる。
(比較例1)
実施例1と同様にして、CD植物体の破砕物を得た。この一部(50g)を採取し、これを濾過し、この濾液を凍結乾燥して2.1gの加熱未処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末a)を得た。
これとは別に、上記植物体破砕物の一部(200g)に精製水200gを加え、得られた混合物をホットプレートを用いて、100℃にて60分間加熱処理した。加熱処理開始から20分後に50g、40分後に50g、および60分後に100gの加熱処理物をそれぞれ回収した。各加熱処理物を濾過し、各濾液を凍結乾燥して、加熱処理植物体抽出物の乾燥粉末(それぞれ乾燥粉末a1:1.2g、a2:1.2g、およびa3:2.4g)を得た。上記加熱未処理植物体抽出物の乾燥粉末a(凍結乾燥品)2.1gのうちの1.2g、および加熱処理植物体抽出物の乾燥粉末a1、a2、およびa3の各1.2gを各々1mLの精製水に溶解し、カプサイシノイド様物質の分解物の含有量をバニリルアルコールを指標として、実施例1と同様のHPLCの条件でバニリルアルコール含有量を測定した。測定結果を以下の表4に示す。60分間加熱処理を行った乾燥粉末a3については、カプサイシノイド様物質のバニリルアルコールへの変換率を調べるため、0.5gの乾燥粉末を用いて、下記の条件で試料を調製し、HPLCにて残存するカプサイシノイド様物質の含有量を測定した。結果を表4に示す。
(カプサイシノイド様物質測定条件)
<試料の調製>
乾燥粉末0.5gを1mLの精製水に溶解し、この溶液から酢酸エチル1mL×3で抽出し、試料とする
<測定条件>
カラム:J’sphere ODS−H80(YMC製、4.6mm×150mm)
移動相:80%メタノール水溶液
流速:1mL/分
カラム温度:40℃
測定波長:励起280nm、検出320nm
(比較例2)
加熱温度を100℃から40℃に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、各時間(20分、40分、および60分)加熱処理した加熱処理物を回収し、濾過した。これらの濾液を凍結乾燥して加熱処理植物体抽出物の乾燥粉末(それぞれ乾燥粉末a4〜a6)を得た。加熱未処理植物体抽出物の乾燥粉末aおよび加熱処理抽出物の乾燥粉末a4〜a6のバニリルアルコール含有量を、比較例1と同様に測定した。結果を表4に併せて示す。
(比較例3)
CD植物体の代わりに、CN植物体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、加熱未処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末b)を得た。それ以後の操作は、比較例1と同様にして、各時間(20分、40分、および60分)加熱処理した加熱処理物を回収し、濾過した。これらの濾液を凍結乾燥して加熱処理植物体抽出物の乾燥粉末(それぞれ乾燥粉末b1〜b3)を得た。
Figure 0004803971
表4からわかるように、CD植物体を加熱処理することによって、抽出物中のバニリルアルコールの含有量が時間とともに増加した(比較例1および2)。このことは、加熱処理によって、植物体中のカプサイシノイド様物質が分解されたことを示す。比較例1においては、乾燥粉末a3中のバニリルアルコールの含有量は0.125質量%であり、これは、植物体中に乾燥質量換算で0.2質量%含まれていたカプサイシノイド様物質がモル換算で90%以上の割合でバニリルアルコールに変換されたことを示す。さらに、乾燥粉末a3(加熱処理60分)中のバニリルアルコールの含有量は、加熱未処理物である乾燥粉末a(加熱処理0分)に比べて、10倍以上に増加していた。比較例1の乾燥粉末a3について、カプサイシノイド様物質を測定した結果、全く検出できなかったことから、カプサイシノイド様物質は、すべて分解されたことがわかる。
(実施例4:脂質代謝改善効果)
カプサイシノイド様物質の分解物を含有する乾燥粉末を用いて、脂質代謝改善効果を以下のようにして評価した。まず、5週齢のSDラット(日本チャールズリバー株式会社)に基本飼料(ラット用固形飼料MF:オリエンタル酵母株式会社)を与えて1週間馴化させた後、各群の体重の平均値がほぼ均一となるように、一群5匹ずつ割り当てた。
次に、実施例1において、64時間発酵後にタンクに残った植物体の発酵処理物を回収し、110℃にて2分間殺菌後、濾過して発酵処理植物体抽出物を得た。この抽出物を凍結乾燥して1.5gの乾燥粉末A6’を得た。1.5gの乾燥粉末A6’を150mLの精製水に溶解し、濾過して不溶成分を除去し、溶液(乾燥粉末A6’を含有する溶液)を調製した。この溶液1.5mLを上記の一群5匹のSDラットにゾンデで1日3回、2週間強制投与した。投与期間中、餌は、上記基本飼料を自由摂取させ、給水は、25質量%果糖含有水溶液を摂取させた。なお、対照として、発酵処理植物体抽出物を含む溶液の代わりに精製水を強制投与し、給水として水を与えた群を設けた。
2週間の投与終了後、ラットを解剖し、肩甲骨間にある褐色脂肪組織、および肝臓を各30mg摘出した。摘出した褐色脂肪組織および肝臓から、RNA抽出キット(登録商標:RNeasy、株式会社キアゲン)を用いて、それぞれRNAを抽出した(50μL)。これらのRNAを含む抽出物各1μL中に含まれるメッセンジャーRNAからcDNA合成キット(登録商標:Sensicript、株式会社キアゲン)を用いて、相補的DNA(cDNA)を逆転写し、cDNAを調製した。このcDNAを含む溶液は、最終容量が20μLであった。
褐色脂肪組織から抽出したRNAを含む抽出物1μLおよびその抽出物から逆転写したcDNAを含む溶液1μLのそれぞれについて、ハウスキーピング遺伝子であるグルコース−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)に特異的なプライマー(10μM)各1μLおよびPlatinum PCR Mix(インビトロジェン)45μLを用いてPCRを行った。上記プライマーとしては、配列番号1および2のDNAを用いた。なお、肝臓から抽出したRNAを含む抽出物およびその抽出物から逆転写したcDNAを含む溶液についても、同様にPCRを行った。
各試料について、まず、最適なPCRのサイクル数をプログラムテンプコントロールシステムPC−708(ASPEC)を用いて検討した。PCRの1サイクルの条件は、褐色脂肪組織由来のRNAおよびDNAの場合、90℃で120秒間加熱した後、90℃で30秒間、45℃で30秒間、および72℃で60秒間の反応を1サイクルとして設定した。肝臓由来のRNAおよびDNAの場合、90℃で120秒間加熱した後、90℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で60秒間の反応を1サイクルとして設定した。上記サイクルが15、20、25、および30サイクル目に各反応液を5μLずつ採取し、得られた反応液を、トリス、ホウ酸、およびEDTAを含むTBE緩衝液で希釈して作製した1%アガロースゲルを用いる電気泳動に供した。電気泳動後、アガロースゲル中のDNAのバンドをエチジウムブロミドで染色し、バンドの発光強度から、PCRがプラトーに達する前のサイクル数を設定したところ、25サイクルが適していた。なお、褐色脂肪組織および肝臓由来のRNAを用いたPCRでは、いずれもバンドが検出されなかったことから、ゲノムの混入がないことも確認できた。
次に、上記褐色脂肪組織由来のcDNAを含む溶液および肝臓由来のcDNAを含む溶液を用いて、脂質代謝に関連する遺伝子の発現量を調べた。上記cDNAを含む溶液各1μLについて、以下の脂質代謝に関連する遺伝子に特異的なプライマー(10μM)各1μLおよびPlatinum PCR Mix45μLを混合してPCR用試料を調製した。上記プライマーは、褐色脂肪組織由来のcDNAについては、脂質代謝促進を示すレセプター遺伝子(PPAR−γ)のプライマー対(配列番号3および配列番号4)および脂質代謝促進ホルモン遺伝子(UCP−1)のプライマー対(配列番号5および6)をそれぞれ用い、肝臓由来のcDNAについては、コレステロール合成酵素(ファルネシルピロリン酸シンターゼ:FPS)遺伝子のプライマー対(配列番号7および8)を用いた。
各試料について上記のPCR条件(25サイクル)でPCRを行って遺伝子を増幅させ、得られたPCR産物を上記と同様に電気泳動に供し、DNAのバンドを染色した。得られたバンドの発光強度を、Tyhoon(アマシャムバイオサイエンス株式会社)を用いて数値化し、各遺伝子のバンドについて、G3PDHの発光強度を1としたときの相対値を算出した。結果を表5に示す。
(実施例5:脂質代謝改善効果)
実施例3のCN植物体の発酵処理物(64時間発酵処理)を110℃にて2分間殺菌後、濾過し、濾液を凍結乾燥して1.5gの乾燥粉末B6’を得た。さらに、1.5gの乾燥粉末B6’を150mLの精製水に溶解し、濾過して不溶成分を除去し、溶液(乾燥粉末B6’を含有する溶液)を調製した。A6’を含有する溶液の代わりに、上記B6’を含有する溶液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、各遺伝子の発現量の相対値を算出した。結果を表5に併せて示す。
(比較例4〜7)
比較例1のCD植物体の加熱処理物(60分間加熱処理)、比較例3のCN植物体の加熱処理物(60分間加熱処理)、および実施例1のCD植物体破砕物(発酵未処理)を、それぞれ110℃にて2分間殺菌後、濾過し、濾液を凍結乾燥して1.5gの乾燥粉末a3’、b3’、およびA’を得た。さらに、1.5gの各乾燥粉末を150mLの精製水に溶解し、濾過して不溶成分を除去し、各乾燥粉末を含有する溶液を調製した。乾燥粉末A6’の代わりに、これらの乾燥粉末a3’、b3’、またはA’を含有する各溶液(各々比較例4、5、および6)および精製水(比較例7)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、各遺伝子の発現量の相対値を算出した。結果を表5に併せて示す。
Figure 0004803971
表5に示すように、実施例4のCD植物体を発酵処理することによって得られる乾燥粉末A6’を投与した群は、比較例4のCD植物体を加熱処理することによって得られる乾燥粉末a3’または比較例6のCD植物体の発酵未処理の乾燥粉末A’に比べて、褐色脂肪組織におけるPPAR−γおよびUCP−1の発現量が高く、肝臓におけるコレステロール合成酵素(FPS)の遺伝子の発現量が減少していることがわかる。他方、CN植物体についても同様の傾向を示すことがわかる(実施例5の乾燥粉末B6’および比較例5の乾燥粉末b3’)。これらのことは、カプサイシンまたはカプサイシノイド様物質を含有する植物体の発酵処理物が、肝臓におけるコレステロールの合成を阻害し、かつ脂肪組織における脂質の代謝を促進させることによって、脂質の分解を促進する作用または脂肪の蓄積を防止する作用を有することを示す。通常、果糖負荷を受けたラット(比較例7)は、果糖負荷を受けないラット(対照)に比べて、褐色脂肪組織における脂質代謝促進を示すPPAR−γおよびUCP−1の発現量が減少し、肝臓におけるコレステロール合成酵素遺伝子の発現量が増加する。これに対して、実施例4の乾燥粉末A6’を投与した群では、果糖負荷を受けているにもかかわらず、対照の果糖負荷を受けないラットに比べて、コレステロール合成酵素(FPS)の遺伝子の発現量は少なく、UCP−1の発現量は多く、PPAR−γは、対照と同程度まで発現量が回復していた。このことは、カプサイシノイド様物質を含有する植物体を発酵処理することによって得られる抽出物が優れた脂質代謝改善作用を有することを示す。上記のように、実施例の中でも、カプサイシノイド様物質を含有する植物体の発酵処理物(実施例4)は、カプサイシンを含有する植物体の発酵処理物(実施例5)に比べて、より優れた脂質代謝改善作用を有することがわかる。
(実施例6:脂質代謝改善効果2(血中脂質改善効果))
4週齢雄性SDラット15匹を標準飼料(MF,オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて1週間馴化した。このSDラットを16時間絶食させ、眼窩静脈より採血し、血清中のトリグリセリド(以下TGという)をTG測定キット(商品名:トリグリセライドG−テストワコー、和光純薬株式会社)を用いて測定した。血中TGの平均値(投与前の血中TG値とする)がほぼ均一となるように1群5匹の計3群(ラット群1〜3)に分けた。
次いで、ラット群1のラットに、実施例4の方法で得られたCD植物体の発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末A6’)3.2gを水320mLに溶解させた水溶液(試験液1)を20mL/kg体重となるようにゾンデで強制経口投与した。さらに、試験液投与とほぼ同時に、綿実油を0.5mL/匹となるように強制経口投与した。
ラット群2のラットには、試験液1の代わりに、CD植物体の発酵未処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末A’、比較例6参照)3.2gを水320mLに溶解させた水溶液(試験液2)を投与した。
ラット群3のラットには、試験液1の代わりに、精製水を投与した。
上記試験液または精製水投与1時間、2時間、4時間、および8時間後に、各群のラットの眼窩静脈から採血し、血中TGを測定し、投与前血中TG値を100%としたときの割合を、血中TGの変化率(%)として算出した。結果を図1に示す。なお、血中TGの変化率が小さいほど、血中TGの上昇が抑制されていることを示す。
図1の結果から、CD植物体の発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末A6’)を投与した群(ラット群1)は、CD植物体の発酵未処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末A’)を投与した群(ラット群2)または精製水を投与した群(ラット群3)に比べて、血中TGの変化率が小さく、血中TGの上昇が抑制されていることがわかる。特に、投与2時間後の血中TGの変化率について、Turkey-Kramer検定を行ったところ、ラット群1の値は、ラット群2および3の値に対して、危険率5%未満で有意差があった。これは、CD植物体の発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末(乾燥粉末A6’)が、血中の中性脂肪の上昇を抑制する作用に優れていることを示す。この作用は、発酵処理植物体抽出物が、脂質吸収を抑制する、あるいは脂質の分解等を調整することによるものと考えられる。このように、本発明の組成物が優れた脂質代謝改善作用を有することが分かる。
(実施例7:嗜好性評価)
実施例1のCD植物体の発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末A6、実施例3のCN植物体の発酵処理植物体抽出物の乾燥粉末B6、比較例1のCD植物体の加熱処理植物体抽出物の乾燥粉末a3、比較例3のCN植物体の加熱処理植物体抽出物の乾燥粉末b3、およびCD植物体の発酵未処理植物体抽出物の乾燥粉末A(対照例)をそれぞれ50g調製し、気流式殺菌装置を用いて110℃にて2分間殺菌した。これらの粉末各1.0gを男女各20人ずつに試食させ、嗜好性(香りおよび風味)について評価を行った。各評価において、5種の粉末についての順位付けをしてもらい、最も好ましいものから順に4、3、2、1、0点として数値化し、平均値を算出した。結果を表6に示す。
Figure 0004803971
表6の結果から、CD植物体を発酵処理することによって得られる乾燥粉末A6は、CD植物体を加熱処理することによって得られる乾燥粉末a3またはCD植物体の発酵未処理の乾燥粉末Aに比べて、香りおよび風味ともに優れていることが明らかである。CN植物体についても同様の傾向を示した(乾燥粉末B6およびb3)。また、CD植物体の発酵処理物(乾燥粉末A6)の方が、CN植物体の発酵処理物(乾燥粉末B6)よりも香りおよび風味が優れていることがわかる。
(実施例8)
実施例1と同様にして、トウガラシCH−19甘の植物体破砕物を得た。200gの植物体破砕物と、200gの精製水との混合物を、気流式殺菌装置(株式会社奈良製作所)に入れ、110℃にて1分間加熱した。室温になるまで放置した後、この混合物をジャケットつきタンクへ充填した。これにグルコースを最終濃度が5質量%となるように添加した。次いで、湿重量で4gのパン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社)を添加して、30℃にて48時間発酵を行い、発酵処理物を得た。得られた発酵処理物を濾過し、発酵処理植物体抽出物を得た。この発酵処理植物体抽出物のBrix値は0.7であり、発酵前の2.3よりも低下していた。発酵処理植物体抽出物は、エタノールを0.1容量/容量%含有していた。また、カプサイシノイド様物質の分解物であるバニリルアルコール含有量を測定したところ、原料のトウガラシの質量を基準として、乾燥質量換算で0.13質量%であり、カプサイシノイド様物質が効率よく分解されてバニリルアルコールに変換されていることがわかる。さらに、発酵処理植物体抽出物は、風味および香りとも優れていた。
(実施例9)
アセトバクター・アセチ(IFO 3284)を、ポテト0.2g、破砕酵母0.03g、肝臓エキス0.03g、肉エキス0.005g、チオグリコール酸培地0.01g、グルコース0.05g、グリセロール0.15g、および炭酸カルシウム0.15gを含有する酢酸菌培養液(pH7.0)1mlに接種し、30℃にて24時間振盪培養した。これを遠心分離して上清を除去し、予備培養した菌体を回収した。次いで、実施例1と同様にして、トウガラシCH−19甘の植物体破砕物を得て、この植物体破砕物200gと10質量%のエタノール水溶液200gとの混合物を調製し、ジャケットつきタンクへ充填した。この混合物に上記予備培養した全菌体を添加し、30℃にて7日間酢酸発酵を行った。この発酵処理物を濾過して酢を得た。得られた酢の酸度は、4.1%であり、そして酢に含有されるバニリルアルコールの量は、原料のトウガラシの質量を基準として、乾燥質量換算で0.12質量%であり、カプサイシノイド様物質が効率よく分解されてバニリルアルコールに変換されていることがわかる。また、この酢は、風味と特有の香りを有していた。
(実施例10)
実施例1と同様にして、トウガラシCH−19甘の植物体破砕物を得た。400gの植物体破砕物と400gの精製水との混合物を、気流式殺菌装置に入れ、110℃にて5分間加熱した。この混合物をジャケットつきタンクに投入した。この混合物に、グルタミン酸を最終濃度0.1質量%となるように添加し、さらに乳酸菌(協和ハイフーズ株式会社)を最終濃度が0.1質量%となるように添加し、30℃にて24時間嫌気性発酵を行った。発酵前のpHは5.9であったが、得られた発酵処理物のpHは3.2となり、乳酸発酵が進行したことがわかった。また、発酵処理物に含有されるカプサイシノイド様物質の分解物であるバニリルアルコールは、原料のトウガラシの質量を基準として、乾燥質量換算で0.12質量%であり、カプサイシノイド様物質が効率よく分解されてバニリルアルコールに変換されていることがわかる。この発酵処理物200gを減圧濃縮乾固して10gの乾燥粉末を得た。さらに、上記発酵処理物から200gを分取して濾過し、発酵処理エキスを得た。次いで、この発酵処理エキスを80gまで減圧濃縮し、デキストリンを10g添加し、噴霧乾燥して、13gの発酵処理エキス末を得た。
本発明の組成物は、カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体を発酵することによって得られ、優れた脂質代謝改善作用を有する。この組成物は、香りや嗜好性にも優れている。本発明の組成物は、食品、医薬品、医薬部外品などに適用され得、血中の中性脂肪およびコレステロール値の改善、脂肪組織における脂肪代謝の促進による体脂肪の低減にも有用である。特に、カプサイシノイド様物質を含有する植物体(特にトウガラシ)の発酵処理物は、カプサイシンのような刺激性を持つ物質をほとんど含有しないため、食品、医薬品、医薬部外品などにおいて適用範囲が広く、極めて有用である。
ラットに、カプサイシノイド様物質を含有する植物体の発酵処理植物体抽出物含有水溶液(試験液1)、カプサイシノイド様物質を含有する植物体の未処理植物体抽出物含有水溶液(試験液2)、および精製水をそれぞれ投与した場合の、血中の中性脂肪の変化率の推移を示すグラフである。

Claims (2)

  1. カプサイシンおよびカプサイシノイド様物質からなる群より選択される少なくとも1種を含有する植物体のみを発酵することによって得られる発酵処理物のみからなる脂質代謝改善組成物であって、該植物体がトウガラシ属の植物体である、組成物(ただし、無辛味品種トウガラシを発酵させて得られる発酵処理物又はその抽出物を有効成分として含有してなる抗肥満剤を除く)
  2. コレステロールの合成阻害および脂質の代謝促進によって、脂質分解促進作用または脂肪蓄積防止作用を有する、請求項1に記載の組成物。
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