JP4812059B2 - エタノールの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルデヒド類などの不純物が極めて少ない高純度のエタノールを精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エタノール(アルコール)は、酒類としての飲料用のみならず、化学工業、飲食料品工業、医薬用など広く工業用に使用されている。酒類用や食品添加物用のエタノールは、醸造アルコール又は発酵アルコールとも呼ばれ、糖蜜、甘藷、穀類などの天然物原料から発酵法で製造されている。醸造アルコール以外の工業用アルコールは、エチレン原料から化学合成で製造されており、合成アルコールと呼ばれている。近年、日本における醸造アルコールの製造方法は、海外において天然物原料を発酵させた醪を比較的簡単な蒸留機で蒸留して得られたアルコール(粗留アルコールという)を輸入し、日本の高度な蒸留方式で精製し、極めて不純物の少ない高純度のエタノールを製造する方法に代ってきている。例えば、高度な蒸留方式として、醸造の事典〔1988年11月10日、株式会社朝倉書店発行、(初版第1刷)、第366〜367頁〕に、スーパーアロスパス方式の蒸留機が記載されている。この方式は、醪塔(A塔)、分離塔(A1塔)、濃縮塔(A2塔)、抽出塔(D塔)、精留塔(B塔)、精製塔(C塔)、不純物処理塔(G塔)などの多数の塔を使用して、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、メタノールなどの低沸点不純物、及び1−プロパノールなどのフーゼル油成分を含む中・高沸点不純物など大部分の不純物を分離している。特にD塔においては、塔頂部から熱水を注入して塔内のエタノール濃度を10w/w%程度に保持することにより、エタノールと他の低沸点不純物及び中・高沸点不純物の比揮発度を変化させ、塔頂部よりそれらの不純物を効果的に分離している。しかしながら、海外で製造される粗留アルコールは、エタノール分が90w/w%以上に濃縮されているものの、上記のスーパーアロスパス方式では分離できないその他微量の不純物が含まれていることが知られている。それらの不純物の中でも、例えばクロトンアルデヒドは、微量でも、アルコールの重要な規格である過マンガン酸還元性物質(カメレオン価ともいう)の値を低下させることが知られている。
【0003】
このクロトンアルデヒドをエタノールから除去する方法については、特開平10−147546号公報に、水の接触角が90°以上を有する疎水性高分子膜を用いて浸透気化膜分離させる分離法が開示されている。しかし、この方法では、疎水性高分子膜という特殊な膜を蒸留機中に設置するという複雑な改造を行わなければならず、また定期的な膜の交換という作業も必要となる。
次に合成法で得られたアルコールを蒸留法で精製する方法において、効果的に不純物を分離する方法として、アルカリ処理を用いる方法が、特公昭40−25414号公報、特公昭49−27163号公報に開示されている。しかし、これらの方法は、合成アルコールの製造方法に関する発明であり、かつ粗アルコールの濃度は約10〜15%と記載されており、それ以外のエタノール濃度におけるクロトンアルデヒドの除去効果についての記載はない。また、蒸留法によりアルコールを精製する方法において、アルカリ処理を用いる方法としては、特開昭51−63109号公報、特表昭55−500864号公報、特公平4−27830号公報が開示されている。これらの公報では、アルカリを精留塔若しくは濃縮塔に添加して不純物の除去を効果的に行うことができると記載されている。精留塔、濃縮塔は、エタノールを濃縮するために用いられ、従って塔内のエタノール濃度は高くなっている。しかし、上述の方法では、クロトンアルデヒドなどの微量不純物は十分分離できず、該不純物がエタノール製品に残存し、品質の低下を起こしていた。また該公報には、エタノール濃度が低い時における、クロトンアルデヒドの分離効果についての具体的な記載はない。
一方、脂肪族アルデヒドは塩基又は酸触媒で二量化し、いわゆるアルドールを生成することが知られている(以下、アルドール縮合反応という)。この反応の塩基性触媒としては水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、ナトリウムアルコキシド、ナトリウムアミドなどが用いられている(昭和52年12月10日、丸善株式会社発行、社団法人日本化学会編、「新実験化学講座14有機化合物の合成と反応II」、第736頁)。しかし、粗留アルコールに含まれるクロトンアルデヒドを除去するために、上述の反応を利用する時の好ましいエタノール濃度の条件については知られていない。
以上のことより、従来からの蒸留機に特別な改造を加えることなく簡単な方法で、より効果的にクロトンアルデヒドなどの微量の不純物を分離して、高純度のエタノールを製造する方法が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術にかんがみ、発酵法により得られる粗留アルコールから、クロトンアルデヒドなどの不純物が極めて少ない高純度のエタノールを精製する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、スーパーアロスパス方式の蒸留法において、発酵法により得られる粗留アルコール中のエタノール濃度を5〜10w/w%の範囲に調整した後、エタノール濃度が5〜10w/w%の範囲の粗留アルコールに対してアルカリを0.02w/w%以上添加するアルカリ処理を行いながら蒸留し、クロトンアルデヒドの除去率が99%以上とせしめることを特徴とする高純度のエタノールの精製方法に関する。
【0006】
本発明者らは、高純度のエタノールの製造方法を提供すべく、鋭意検討した。その結果、蒸留塔の中の抽出塔で、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリを、エタノール分が5〜10w/w%の範囲の粗留アルコールに0.02w/w%以上となるように添加し、そのアルカリ処理を行いながら蒸留することにより、エタノール製品中にクロトンアルデヒドが0.1g/m3未満まで低下し品質が良好になることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明でいう発酵法により得られる粗留アルコール(以下、単に粗留アルコールという)とは、天然物原料を発酵させた醪を比較的簡単な蒸留機で蒸留して得られたアルコールのことをいう。主に東南アジアや南北アメリカなどで生産され、日本に輸入されている。天然物原料として、糖蜜などの糖質原料やトウモロコシなどのデンプン質原料を用いて発酵させるが、これらの原料に限定されない。蒸留機は、簡単な醪塔及び濃縮塔の2本塔を用いることが多い。得られたアルコールの成分は、エタノール濃度が約90w/w%以上に濃縮されているものの、不純物が多く、カメレオン価も瞬時〜3分程度までさまざまである。
【0008】
本発明の方法において、蒸留時の粗留アルコールのエタノール濃度は、5〜10w/w%の範囲が好ましい。90w/w%以上で輸入された粗留アルコールは、水で5〜10w/w%の範囲に希釈し、蒸留塔に導入することができる。また、蒸留塔において、粗留アルコールと水又は湯を別々のラインで導入し、塔内で希釈してもよい。蒸留法によりエタノールを精製する場合は、蒸留塔の各棚段毎に異なる一定のエタノール濃度を保持させているが、本発明においては、少なくとも1つの棚段においてエタノール濃度が5〜10w/w%の範囲であればよい。エタノール濃度が10w/w%を超えると、エタノールからクロトンアルデヒドの分離が困難となり好ましくない。また、エタノール濃度が5w/w%未満となると、醸造アルコールの規格値である95.0v/v%(92.4w/w%)以上まで濃縮するために、段数が多く塔高の高い蒸留機と多大な熱エネルギーを必要とし、好ましくない。クロトンアルデヒドなどの不純物の分離のし易さと現状の蒸留機を改造することなくそのまま利用できるという点より、8〜10w/w%の範囲がより好ましい。
【0009】
本発明でいうアルカリ処理とは、粗留アルコールとアルカリを混合して蒸留する方法であり、粗留アルコールにアルカリを添加してから蒸留塔に導入してもよいし、直接蒸留塔にアルカリを添加してもよい。
本発明におけるクロトンアルデヒドなどの除去に対する効果は、前述のアルデヒドの塩基性(アルカリ)触媒存在下でのアルドール縮合反応によると考えられるので、用いられるアルカリは、ナトリウム、カルシウム、カリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩などであればよく、限定はされない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液があり、好ましくは、水酸化ナトリウムが用いられる。本発明におけるアルカリの添加量は、エタノール分が5〜10w/w%の範囲の希釈粗留アルコールに対して、0.01w/w%以上で添加することが好ましい。具体的に言えば、水酸化ナトリウムの添加量が、希釈粗留アルコール100g当り0.01gであるとクロトンアルデヒドの除去率が95%程度になり好ましく、更に、0.02g以上になるとクロトンアルデヒドの除去率が99%以上になりより好ましい。例えば、クロトンアルデヒドが1g/m3含まれているような品質の劣る粗留アルコールの場合、エタノール分を10w/w%に希釈し、該希釈粗留アルコール100g当り0.01gとなるように水酸化ナトリウムを添加して蒸留することにより、クロトンアルデヒドの濃度が、0.1g/m3未満まで低下した良好な精製エタノールが得られる。精製エタノールのカメレオン価に重大な影響を与えるクロトンアルデヒド含量は、0.1g/m3以上であるといわれており、上述の方法で得られた精製エタノールは、高純度の良好な品質のものである。しかし、水酸化ナトリウム添加量が0.005w/w%であると蒸留液のクロトンアルデヒドは0.7g/m3程度まで残存し、十分除去されない。本発明は、クロトンアルデヒド以外のアクロレインなどのアルデヒド類に対しても、好ましい除去効果が得られる。
【0010】
本発明における蒸留法について、高純度のエタノールが得られる蒸留法であれば特に限定はないが、例えば、前述のスーパーアロスパス方式などがある。エタノール濃度を5〜10w/w%に保持することができ、より高いクロトンアルデヒド除去効果を得るためにも、スーパーアロスパス方式における抽出塔及び/又は分離塔で本発明を実施することが好ましい。
【0011】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0012】
実施例1 エタノール濃度とクロトンアルデヒド除去率の関係
エタノール濃度92.4w/w%の粗留アルコールを用い、エタノール濃度を5.0、10.0、15.0、20.0、30.0、35.0、67.0、及び80.0w/w%になるように水で希釈し、それぞれの希釈粗留アルコールに、不純物としてクロトンアルデヒド濃度が1g/m3になるようにサンプル0.2リットルを調製した。それぞれのサンプルに、アルカリとして水酸化ナトリウムが、希釈粗留アルコールに対して0.02w/w%になるように添加し、更に対照としてはそれぞれのサンプルにアルカリを添加せずに、ウィッドマー式蒸留機を用いて蒸留試験を行った。充分な反応を促進するため、まず、還流冷却器を用いて1時間全還流を行った後、蒸留機の塔頂から、留出液として50mlの精製エタノールを採取した。
【0013】
得られた精製エタノール中のクロトンアルデヒドの分析は、液体クロマトグラフを使用して行った。クロトンアルデヒドの除去率は、{〔アルカリ無添加時(対照)の留出液のクロトンアルデヒド量〕―(アルカリ添加時の留出液のクロトンアルデヒド量)}/(対照の留出液のクロトンアルデヒド量)×100で示す式を用いて求めた。その結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
表1より、粗留アルコールのエタノール濃度が5〜10w/w%の時、水酸化ナトリウムを添加することにより、クロトンアルデヒドの除去率は99%となり、クロトンアルデヒドはほぼ完全に除去された。しかし、エタノール濃度が15w/w%以上になると除去率は徐々に低下し、良好な精製エタノールが得られなかった。
【0016】
実施例2 アルカリ濃度とクロトンアルデヒド除去率の関係
エタノール濃度92.4w/w%の粗留アルコールを5w/w%に希釈し、更に不純物としてクロトンアルデヒド濃度が1g/m3になるように試薬のクロトンアルデヒドを添加し、サンプルを調製した。次に、それぞれのサンプル0.2リットルに、水酸化ナトリウムを0.01g(添加割合0.005%)、0.02g(0.01%)、0.04g(0.02%)添加し、及び対照として水酸化ナトリウムを添加しないサンプルを用意し、実施例1と同様に蒸留試験を行った。得られた精製エタノールにおけるクロトンアルデヒドの除去率を実施例1と同様に求め、結果を表2に示す。
【0017】
【表2】
【0018】
表2より、希釈粗留アルコールに水酸化ナトリウム0.01w/w%以上添加した場合、除去率は95%以上となり、高いクロトンアルデヒドの除去率を示した。しかし、水酸化ナトリウム添加量が0.005w/w%の時は、クロトンアルデヒド除去率が85%となり、十分な除去率が得られなかった。
【0019】
実施例3 連続式蒸留機によるエタノールの精製
図1にスーパーアロスパス方式の連続式蒸留機のフローを示す。まず蒸留塔について説明する。
A1は低沸点不純物を分離する分離塔、Aは醪などの残渣を底部より排出する醪塔、A2はエタノールを濃縮し塔中段部よりフーゼル油などの高級アルコール類を除去する濃縮塔、Dは濃縮されたエタノールを温水で希釈し塔頂部から不純物を除去する抽出塔、B及びB'は抽出塔からのエタノールを濃縮しながら、コンデンサーから低沸点不純物を除去し塔中段部から高級アルコールを除去する精留塔、B1はエタノールを回収し水を排出する脱酒精塔、Cはメタノールなどの低沸点不純物を除去し底部から濃縮された精製エタノールを取り出す精製塔、Gは低沸点不純物を濃縮して系外に除去しエタノールを回収する不純物処理塔である。D1はA1からの低沸点不純物に加水抽出して塔頂部から不純物を除去する第2抽出塔、Fはエタノールを回収し塔底部から温水を排出する温水塔である。Jはフーゼル抽出塔、Nはフーゼル処理塔、Hは減圧塔であり、これらの塔では高級アルコールを更に濃縮して系外に除去しエタノールを回収している。次に1は粗留アルコールを貯蔵する粗留アルコールタンク、2は粗留アルコールを蒸留塔へ供給する供給ポンプ、3は粗留アルコールをD塔へ供給するライン、4は蒸気をD塔やA1塔などへ供給するライン、5は温水をD塔へ供給するライン、6はアルカリを供給するライン、7は精製エタノールを取り出すラインである。8は粗留アルコールを蒸留塔へ供給する前に一時貯蔵する中間タンク、9は蒸留塔へ蒸気を間接供給するリボイラー、10は蒸留塔の頂部から発生したベーパーを凝縮させるコンデンサー、11は粗留アルコールを一時貯蔵し、各蒸留塔から回収されたアルコール類や水と混合する地下槽である。
図1に従って、テスト蒸留方法を以下に説明する。粗留アルコールタンク1に受け入れられているエタノール濃度59.3w/w%の粗留アルコールは、供給ホンプ2により、ライン3を経て、抽出塔Dへ供給される。水酸化ナトリウムは、ライン6から供給ポンプ2のサクション側へ、アルカリ濃度0.05w/w%になるように添加される。D塔では、ライン4から供給される蒸気とライン5から供給される温水により、ほとんどの棚段及び塔底部のエタノール濃度が5〜10w/w%になっている。D塔底部からのアルコールは、その後、B、B'塔(精留塔)、C塔(精製塔)の各塔により、不純物除去、濃縮、精製され、ライン7より93.9w/w%の精製エタノールが得られる。使用した粗留アルコールのクロトンアルデヒド濃度は0.23g/m3であった。
【0020】
水酸化ナトリウムを添加しなかった時(比較例)の精製エタノールと、上述の方法で水酸化ナトリウムを添加して(本発明)得られた精製エタノールのクロトンアルデヒド含量を比較した。比較例の精製エタノール中のクロトンアルデヒド濃度は0.11g/m3であったが、本発明の精製エタノール中には、クロトンアルデヒドは検出されなかった。
【0021】
また、分離塔を用いる場合は、同様の粗留アルコールを地下槽11において、水で、エタノール濃度を5〜10w/w%に希釈し、ライン6からアルカリを同様に添加し、ライン12より分離塔A1に供給して蒸留する。以降、A、A2、D、B、B'、Cの各塔を経て、ライン7よりクロトンアルデヒドが検出限界以下である93.9w/w%の精製エタノールが得られた。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、エタノール濃度が5〜10w/w%の範囲の粗留アルコールにアルカリを0.02w/w%以上添加するアルカリ処理を行いながら蒸留することにより、クロトンアルデヒドなどの不純物が極めて少ない、高純度のエタノールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の1例で使用する連続式蒸留機のフロー図である。
【符号の説明】
1:粗留アルコールタンク、2:供給ポンプ、3:原料供給ライン、4:蒸気ライン、5:温水供給ライン、6:アルカリ供給ライン、7:製品ライン、8:中間タンク、9:リボイラー、10:コンデンサー、11:地下槽、A:醪塔、A1:分離塔、A2:濃縮塔、D:抽出塔、B:精留塔、B1:脱酒精塔、B’:精留塔、C:精製塔、G:不純物処理塔、J:フーゼル抽出塔、N:フーゼル処理塔、H:減圧塔
Claims (2)
- スーパーアロスパス方式の蒸留法において、発酵法により得られる粗留アルコール中のエタノール濃度を5〜10w/w%の範囲に調整した後、エタノール濃度が5〜10w/w%の範囲の粗留アルコールに対してアルカリを0.02w/w%以上添加するアルカリ処理を行いながら蒸留し、クロトンアルデヒドの除去率が99%以上とせしめることを特徴とする高純度のエタノールの精製方法。
- 抽出塔及び/又は分離塔でアルカリ処理することを特徴とする請求項1に記載の高純度のエタノールの精製方法。
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