JP4836748B2 - バルク音響波共振子及びフィルタ装置並びに通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は圧電共振子の一種であるバルク音響波共振子及びそれを用いたフィルタ装置並びに通信装置に関し、特に、薄膜プロセスにより形成された圧電体からなる共振部を具備するバルク音響波共振子及びそれを用いたフィルタ装置、並びにそのフィルタ装置を備えた通信装置に関するものである。
近年、圧電性を示す薄膜の厚み縦振動モードを用いた共振子が提案されている。これは、入力される高周波電気信号に対して、圧電体が厚み縦振動を起こし、その振動が、薄膜の厚さ方向において共振を起こすことを用いた共振子であり、バルク音響波共振子と呼ばれている。また、薄膜プロセスで形成した圧電体を用いることから薄膜バルク音響波共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic−wave Resonator)とも呼ばれている。バルク音響波共振子は、基体上に薄膜プロセスにより下部電極,圧電体,上部電極を順次積層した共振部を形成した構造をしている。
図8(a)に、バルク音響波共振子の一例の断面図を示す。図8(a)で、101は基体,102は貫通孔,103は下部電極,104は圧電体,105は上部電極を示している。共振部は、下部電極103と圧電体104と上部電極105とが重なっている部分で、この共振部で音響波が共振を起こす構成になっている。また、共振部は、貫通孔102により基体101から音響的にアイソレートされている。実際のバルク音響波共振子では、この他に、周波数調整層や保護層などが必要であるが、図8(a)ではそれらを省略し、基本的な構成のみを示している。また、図8(a)では、2つのバルク音響波共振子が直列に接続されている例を示した。
バルク音響波共振子の共振周波数は、バルク音響波共振子を構成する各層の膜厚によって決定される。例えば図8(a)の例では、下部電極103と上部電極105との膜厚を無視すれば、その共振は、
d=λ/2
の条件が満たされる場合に起こる。ここで、dは圧電体104の膜厚、λは圧電体104中を伝播する音響波の波長である。なお、下部電極103と上部電極105との膜厚が無視できない場合は、無視できる場合に比べて共振周波数が若干低くなる。実際は、図8(a)では省略されている保護膜や周波数調整膜も考慮してバルク音響波共振子を設計する必要がある。
また、バルク音響波共振子には、弾性表面波共振子と同様に、共振周波数f0(インピーダンスが極小となる周波数)と反共振周波数fa(インピーダンスが極大となる周波数)とが存在し、その差(周波数差)は、実効電気機械結合係数(keff )によって決定される。実効電気機械結合係数は、圧電体の材料定数である電気機械結合係数,圧電体及び電極,保護膜などのバルク音響波共振子を構成する層の材料定数や構造によって決定される。
このバルク音響波共振子を使用してフィルタを構成する場合は、図8(b)に示すように、周波数をわずかにずらした複数のバルク音響波共振子を、直列,並列に接続して、所謂ラダー型フィルタとすることが一般的である。図8(b)において、200はバルク音響波共振子を直列に接続した直列共振子,201はバルク音響波共振子を並列に接続した並列共振子である。基本的には、直列共振子200の共振周波数f0及び並列共振子201の反共振周波数faが、フィルタの通過帯域の中心周波数となるように、各共振子の共振周波数を設定する。また、直列共振子200の反共振周波数fa及び並列共振子201の共振周波数f0は阻止周波数となる。このため、ラダー型フィルタの帯域幅は、ほぼバルク音響波共振子の周波数差と等しくなる。
また、各共振子の実効電気機械結合係数を変更することにより、急峻な減衰特性を得ることが提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−22074号公報
バルク音響波共振子でフィルタを構成する場合には、所望のフィルタ特性を得るために、共振周波数や周波数差を調整することが望まれていた。
しかしながら、共振周波数を調整するために共振部の膜厚を変更したり、周波数調整膜を設けたりしても周波数差を調整することはできなかった。また、バルク音響波共振子の周波数差は、使用する圧電体の材料でほぼ決定され、バルク音響波共振子を構成する圧電体以外の各層の材料や膜厚を変えても若干変化する程度であるため、以下のような課題があった。
1.所望の周波数差を得るためには、圧電体材料を変更する必要があり、新たな材料開発が必要であったり、標準と異なる特別な製造プロセス開発が必要であったりしてしまう。
2.同一基体上に異なる周波数差のバルク音響波共振子を形成する場合には、同一基体に2種類の圧電体を形成する必要があると同時に、それぞれの共振子の共振周波数を所望の値とするために、各共振子の圧電体や電極の厚みを独立に調整する必要があり、設計や製造プロセスが非常に複雑となってしまう。
3.圧電体の厚みや電極の材料及び厚みを調節することで1種類の圧電体を用いて異なる周波数差の共振子を実現できる場合もあるが、調整できる範囲は限られており、さらに、それぞれの共振子の共振周波数,周波数差を所望の値とするために、圧電体,電極の厚み・材料の設計が非常に複雑となってしまう。また、同一基体上に、異なった厚みの圧電体や電極を形成する必要があり、製造プロセスが非常に複雑となってしまう。
このように、所望の周波数差を有する共振子を得ることは非常に困難であり、さらにこのように周波数差を調整した共振子を組み合わせて所望の特性のフィルタを実現するためには、上記のように設計や製造プロセスが複雑であるため、信頼性に乏しく、生産性が低くなっていた。
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、周波数差を自由に設定でき、より高性能で生産性の高いバルク音響波共振子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、生産性が高く阻止特性が良いフィルタ装置、及び生産性が高く感度が良い通信装置を提供することにある。
本発明のバルク音響波共振子は、1)圧電体と、前記圧電体を厚み方向に対して挟持する一対の電極と、を含む共振部と、前記共振部の厚み方向の少なくとも一方に設けられ、概略0.5λ×nの厚みを有する調整膜と、を備えたものである。
ただし、λは使用周波数における調整膜中を厚み方向に伝播する音響波の波長であり、nは自然数である。
また、本発明のバルク音響波共振子は、2)上記1)の構成において、前記調整膜は、金属材料からなるものである。
また、本発明のバルク音響波共振子は、3)上記1)または2)の構成において、前記調整膜は、その厚みを前記0.5λ×nの値から所定量ずらして、前記共振部の共振周波数または反共振周波数を所定の目標値に調整したものである。
また、本発明のバルク音響波共振子は、4)上記1)〜3)のいずれかの構成において、前記調整膜の周縁部は、前記共振部の厚み方向に垂直な断面における周縁部と一致するものである。
また、本発明のフィルタ装置は、5)入力端子と出力端子と基準電位端子とを有し、前記入力端子と前記出力端子とをつなぐ入出力ライン上、または前記入出力ラインと基準電位端子との間に、上記1)〜4)のいずれかに記載のバルク音響波共振子を設けたものである。
また、本発明の通信装置は、6)受信回路もしくは送信回路の少なくとも1つを有し、上記5)に記載のフィルタ装置が前記受信回路もしくは前記送信回路に用いられている。
また、本発明の通信装置は、7)上記5)に記載のフィルタ装置と、受信回路もしくは送信回路の少なくとも1つとを有するものである。
本発明のバルク音響波共振子によれば、1)の構成により、調整膜の膜厚が概略0.5λ×n(λは使用周波数における調整膜中での音響波の波長、nは自然数)であるため、共振部で設計した共振周波数と同じ周波数で共振する。その結果、共振周波数または反共振周波数をほぼ変えることなく、調整膜の厚みと材料とに応じて実効電気機械結合係数及び周波数差のみを変更することができる。具体的には、調整膜の厚みで周波数差を調整するためには、nを大きくすることで周波数差を小さくすることができる。このため、周波数差が自由に設定でき、より高性能のバルク音響波共振子を、低コストで提供できるようになる。このように、本発明のバルク音響波共振子は、調整膜の膜厚を概略0.5λ×nとすることで初めて、周波数差調整機能を有するものとなることを見出したことに基づくものである。
また、バルク音響波共振子の共振部の材料,膜厚などを変更することなく、調整膜のみにより、その厚みと材料とを調整することで、実効電気機械結合係数及び周波数差を自由に変更することができるようになる。それにより、設計の自由度が高くなり、所望の特性を有する,生産性の高いバルク音響波共振子を提供できるようになる。
さらに、バルク音響波共振子の周波数差は、調整膜の厚みを上記の値とし、かつ調整膜の材料を選択することによってさらに調整できる。すなわち、調整膜は、共振部の前記実効電気機械結合係数の目標値に基づいて材料が決定される場合には、共振部の材料、膜厚などを変更することなく、調整膜の材料を選択するだけで、所望の実効電気機械結合係数に基づく所望の周波数差を得ることができるようになる。このため、より高性能のバルク音響波共振子を、低コストで提供できるようになる。
また、本発明のバルク音響波共振子によれば、2)の構成により、調整膜が共振部の厚み方向の一方に形成された電極の厚みを実質的に厚くする働きを有するので、電気抵抗が少なくなり、その結果、損失の少ないものとすることができる。
また、本発明のバルク音響波共振子によれば、3)の構成により、概略0.5λ×nの厚みを有する調整膜の材料およびnの大きさを調整することで、共振部の材料,膜厚などを変更することなく、所望の周波数差を得ると共に、調整膜の厚みを0.5λ×nの値から所定量ずらすことで、所望の周波数差を維持しつつ所望の共振周波数または反共振周波数も得ることができるようになる。このため、より高性能で、設計の自由度の高いバルク音響波共振子を、低コストで提供できるようになる。
また、本発明のバルク音響波共振子によれば、4)の構成により、調整膜による寄生容量が発生することを防ぎ、所望の共振周波数で共振する、高性能なものとすることができる。また、電極と同時に調整膜を成膜、加工ができるようになるため、工数を増やさずに所望の特性を得ることができる、生産性の高いものとすることができる。
また、本発明のフィルタ装置によれば、5)の構成により、設計の自由度の高い、各構成のいずれかのバルク音響波共振子を、フィルタ装置を構成する共振子として用いるので、従来の技術のFBARを使用したフィルタ装置に比べて、設計の自由度の高いフィルタを構成することができる。また、このようなフィルタ装置を、調整膜の形成工程を追加するのみで作製することができるので、より阻止特性の良い高性能なフィルタ装置を低コストで提供できる、生産性の高いものとすることができる。
また、本発明の通信装置によれば、6)の構成により、所望の特性を有するように調整されたフィルタ装置を用いることができるので、回路中での不要波の除去性能を上げたりすることのできる性能の高いものとすることができる。また、低コストのフィルタ装置を用いて回路を構成できるので、より性能の良い通信装置を安価に提供することができる。
さらに、本発明の通信装置によれば、7)の構成により、所望の特性を有するように調整された低コストのフィルタ装置を用いて通信装置を構成できるので、より性能の良い通信装置を安価に提供することができる。
以下、本発明のバルク音響波共振子,フィルタ装置及び通信装置の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のバルク音響波共振子の実施の形態の一例を、図1(a)に平面図を,図1(b)に(a)のA−A’部分の矢視断面図を示す。なお、図面においては、バルク音響波共振子の構造が分かりやすいように各部の寸法は適宜拡大している。図1は、左側に従来のバルク音響波共振子と、右側に本発明のバルク音響波共振子とを示し、これら2つの共振子が、直列に接続されているものである。
図1(a),(b)において、11は基体,12は貫通孔,13は下部電極,14は圧電体,15は上部電極,16は調整膜である。基体11上には、圧電体14を厚み方向に挟持し、厚み方向から電圧を印加するための下部電極13及び上部電極15が積層されている。この下部電極13と上部電極15とで、圧電体14を厚み方向に挟持する一対の電極を構成している。また、下部電極13,圧電体14,上部電極15が厚み方向で重なった部分は音響波の共振を担う部分であり、共振部と呼ぶ。この共振部は、貫通孔12によって基体11から音響的に分離されている。また、調整膜16は上部電極15上に直接接するようにして設けられている。
本発明のバルク音響波共振子では、共振部上に調整膜16が形成されていることにより、バルク音響波共振子の実効電気機械結合係数が変更され、その結果、周波数差を調整することができる。
通常、共振部上に設ける周波数調整膜等は、周波数差を変更できるものではなく、共振周波数及び反共振周波数を低周波数側の一方向のみにシフトさせるものであった。また、その厚みが、使用周波数における厚み方向の波長λgに対して、0.25×λgとなると、共振部を伝搬してくる音響波を共振部側に反射する反射層として機能し、周波数をシフトさせる働きはなくなることが知られていた。このため、周波数を調整するために0.25×λgを超える厚みの膜を形成することはなかった。そして、このような周波数調整膜は周波数差を変化させることはできなかった。
しかしながら、発明者が鋭意検討を重ねた結果、調整膜16を共振部上に形成し、その厚みを、0.5λ×n(ただし、λは使用周波数における調整膜16中を厚み方向に伝播する音響波の波長であり、nは自然数である)とすることで、以下の優れた特性を得ることができることを見出した。すなわち、調整膜16により、共振部上に膜を形成しているにも拘らず共振周波数を殆ど変化させることなく、その上で、従来調整することのできなかった周波数差を調整することができるのである。
なお、調整膜16の厚みは概略0.5λ×nであり、具体的には、0.5λ×nの値から±15%の範囲を含むものとする。
以下、各部位について詳細に説明する。
基体11は、バルク音響波共振子を支持する機能を有し、通常は厚みが0.05〜1mm、直径が75〜200mm程度の鏡面研磨されたSiウエハーが用いられる。Siウエハーは扱いやすく、また対応する薄膜プロセス装置も多いため、製造が容易となることから、特に好適に用いられる。基体11は、Siウエハーの他にも、薄膜プロセスと相性の良い、Si,Al,SiO,ガラス等のウエハーまたは平板を使用することができる。
下部電極13は、圧電体14に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W,Mo,Au,Al,Cu等の金属材料で形成される。下部電極13はスパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで基体11上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。また、下部電極13は共振部を構成する機能を有するため、バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、材料の固有音響インピーダンスや密度,音速,波長等を考慮して、精密に設計する必要がある。最適な電極厚みは、使用周波数,共振子の要求特性、圧電体14の材料,電極材料,その他共振部と接して設けられる部材の構成等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.01〜0.5μm程度である。
圧電体14は、例えばZnOやAlN,PZT等の圧電体材料からなり、下部電極13及び上部電極15によって印加された高周波電圧に応じて伸縮し、電気的な信号を機械的な振動に変換する機能を持つ。圧電体14はスパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで下部電極13上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するために、圧電体14の厚みは、材料の固有音響インピーダンスや密度,音速,波長等を考慮して、精密に設計する必要がある。最適な厚みは、使用周波数,共振子の要求特性,圧電体14の材料,下部電極13及び上部電極15の材料等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.3〜2.0μm程度である。
上部電極15は、下部電極13とともに、圧電体14に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W、Mo、Au、Al、Cu等の金属材料で形成される。上部電極15はスパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで圧電体14上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。また、上部電極15は、電極としての機能と同時に、共振部を構成する機能も有するため、バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、材料の固有音響インピーダンスや密度,音速,波長等を考慮して、精密に設計する必要がある。最適な電極厚みは、使用周波数、共振子の要求特性、圧電体14の材料,電極材料等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.01〜0.5μm程度である。
下部電極13,上部電極15としては、金属材料単層ではなく、導電率を向上させたり、必要な音響特性を得たりするために、複数の金属層を積層したものや、基体,圧電体14との密着層やバッファ層を追加したものも用いられる。
また、圧電体14が上下から下部電極13及び上部電極15により挟まれて構成される共振部は、前述のように、その内部で音響波が厚み縦振動による共振を起こすものであり、使用周波数,共振子の要求特性,圧電体14の材料,下部電極13及び上部電極15の材料等を考慮して精密に設計する必要がある。共振部は、下部電極13,圧電体14,上部電極15が重なった部分であり、下部電極13,圧電体14,上部電極15のそれぞれは、共振部よりも広く形成されていてもよい。通常、全体の厚みが、おおむねλ/2(λは使用周波数での音響波の波長)となるように設計される。また、平面形状は、図1に示す例では矩形状になっているが、不要振動(スプリアス)を防ぐため、円形状や不定形状,台形状とされる場合もある。さらに、その面積は、共振子のインピーダンスを決定する要素となるため、厚みと同様に精密に設計する必要がある。50Ωインピーダンス系で使用する場合は、通常、共振部の電気的なキャパシタンスが、使用周波数でおおむね50Ωのリアクタンスを持つように設計される。共振部の面積は、例えば2GHzの振動子の場合であれば、100μm×100μmから200μm×200μm程度となる。
貫通孔12は、例えば基体11に共振部を形成した後に、基体11の裏側にフォトリソグラフィの技術でフォトレジストパターンを形成し、Deep−RIEや異方性ウエットエッチングで基体11をエッチングすることによって形成することができる。この場合、下部電極13と基体11との間に、SiO、SiNx、AlNなどのエッチングストップ層が設けられることがある。
調整膜16は、例えば上部電極15を成膜した後に、スパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで上部電極15上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。調整膜16の材料,厚みは、バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するように選定する必要がある。最適な厚みは、使用周波数,共振子の要求特性,圧電体14の材料,電極材料等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.5〜2.0μm程度である。
調整膜16の材料に特に限定はないが、薄膜プロセスとの整合性から、W,Mo,Au,Al,Cu等の金属材料及びSiO,SiNxなどの絶縁体材料が望ましい。また、調整膜16の材料が金属材料の場合、上部電極15と調整膜16とを電気的に接続することにより、上部電極15の厚みを厚くしたのと同様の効果が得られ、電極の導電率を実質上向上させることができるため望ましい。さらに調整膜16と上部電極15を連続して成膜し、同時に加工することにより、同様の外形形状を持つようにしても良い。このようにした場合、工程が削減できるため、より低コストでデバイスを製造することができる。
さらに、調整膜16の周縁部を、共振部の厚み方向に垂直な断面における周縁部と一致させている場合には、調整膜を追加することによる寄生容量が発生しなくなるため、共振子の特性を劣化させることがなくなる。ここで、調整膜16の周縁部とは、厚み方向で、調整膜16の共振部側の周縁部を指す。即ち、図1のように共振部に調整膜16が接している場合には、共振部に接する部分の周縁部をいい、そこから逆テーパー状及び逆テーパー状になっていてもよい。調整膜16の共振部に接する部分の周縁部を、共振部の厚み方向に垂直な断面における周縁部と一致させていない場合(図2(a))では、図中Aで示す部分の共振周波数が、他の部分と異なってしまうため、この部分が共振に寄与しない寄生容量となってしまうことがある。これに対し、調整膜16の共振部に接する部分の周縁部を、共振部の厚み方向に垂直な断面における周縁部と一致させている場合(図2(b))では、このような部分がなくなるため、寄生容量による特性劣化がなくなる。
なお、本発明のバルク音響波共振子における共振部、基体、その他材料や構造、製造工程等については以上の例に特に限定されるものではなく、さらに、保護膜やパッケージ、共振部と外部接続のための端子部(図示せず)とを接続する配線及び電極の取り回しや、複数の共振部を接続してフィルタとする構成や構造についても特に限定されるものではない。これは以下に説明するバルク音響波共振子についても同様である。
例えば、図1においては、貫通孔12により共振部を基体11から音響的にアイソレートしているが、0.25λgの厚みの、高インピーダンス材料からなる層と低インピーダンス材料からなる層とを交互に積層してなる音響多層反射膜を共振部と基体11との間に設けてもよい。
さらに、図1では、調整膜16を上部電極15上に形成したが、下部電極13と基体11との間に設けてもよいし、両方に設けてもよい。また、調整膜16と上部電極15もしくは下部電極13との間には、密着層やバッファ層を追加することができる。また、調整膜が複数の層からなっていてもよい。
図3に、調整膜16の厚みとバルク音響波共振子の共振周波数(共振周波数f0と反共振周波数fa)との関係のシミュレーション結果を示す。シミュレーションの際には、材料がZnOで厚みが0.92μmの圧電体14と、材料がWで厚みが0.1μmの上部電極15,下部電極13とからなる共振部上に、Alからなる調整膜16が形成された場合をモデルとした。図中において、調整膜16がない場合の共振周波数および反共振周波数を破線で示している。
図3から分かるように、調整膜16なしの場合の共振周波数に対し、調整膜16がある場合は周波数差(fa−f0)が小さくなる。すなわち、調整膜16により、実効電気機械結合係数が小さくなる。このように、調整膜16を形成することにより、バルク音響波共振子の共振部の材料、膜厚などを変更することなく、周波数差を変更することができるようになる。すなわち、共振部の実効電気機械結合係数を所定の目標値に設定することができる。
また、調整膜16の膜厚が概略0.5λ×nであることが望ましい。図3(a)ではn=1の場合について示している。図3から判るように、調整膜16の厚みと共振周波数の間には密接な関係があり、調整膜16の膜厚が概略0.5λ近傍の時に、調整膜16がない場合とほぼ同じ共振周波数を持つようになる。このため、共振周波数または反共振周波数をほぼ変えることなく、周波数差のみを変更したバルク音響波共振子を得ることができ、設計の自由度の高いバルク音響波共振子を、低コストで提供できるようになる。
なお、図3(b)に示すように、調整膜16の厚みを0.5λ×nのnを大きくしていくにしたがって、共振周波数は変わらずに、周波数差がさらに小さくなっていくことがシミュレーションで確認できた。
さらに、調整膜16の厚みを、0.5λ×nの値から所定値ずらすことで、共振周波数及び反共振周波数を所定の目標値に設定することができる。これは、バルク音響波共振子を組み合わせてラダー型フィルタを構成する場合に、その直列共振子と並列共振子との共振周波数を、フィルタ特性を満たすようにシフトさせるときに有用である。従来、この目的のため、上部電極15上に周波数調整膜を追加したり、上部電極15の膜厚をエッチングにより減じたりしている。これに対して、本発明のバルク音響波共振子では、調整膜16により、実効電気機械結合係数及び周波数差の他に、共振周波数及び反共振周波数そのものを変化させることができる。図3からも明らかなように、調整膜16の厚みを増やすにしたがって、共振周波数,反共振周波数ともに低周波数側にシフトしていく。このため、調整膜16は、周波数差を調整するとともに、共振周波数,反共振周波数を調整することもできるものとなる。例えば、図3において、調整膜16がない場合の共振子と、反共振周波数を一致させるためには、調整膜16の厚さを0.50λとすればよい。また、共振周波数を一致させるためには、調整膜16の厚さを0.52λとすればよい。さらに、調整膜16がない場合の共振子の反共振周波数と、調整膜16がある場合の共振子の共振周波数を一致させるためには、調整膜16の厚さを0.45λとすればよい。すなわち、調整膜16の厚みが0.50λの場合は、調整膜無しの場合と同じ反共振周波数faを持つと同時に、約20MHz高い共振周波数f0を持つようになる。つまり、反共振周波数が等しく、周波数差が約20MHz小さい(実効電気機械結合係数が小さい)バルク音響波共振子となる。また、調整膜16の厚みが0.52λの場合は、調整膜無しの場合と同じ共振周波数f0を持つと同時に、約20MHz低い反共振周波数を持つようになる。すなわち、共振周波数が等しく、周波数差が約20MHz小さい(実効電気機械結合係数が小さい)バルク音響波共振子となる。さらにまた、調整膜16の厚みが0.45λの場合は、調整膜無しの場合の反共振周波数faと同じ共振周波数f0を持つと同時に、周波数差が約20MHz小さい(実効電気機械結合係数が小さい)バルク音響波共振子となる。このことから明らかなように、本発明の調整膜16によれば、従来の周波数調整膜では不可能であった、高周波側への共振周波数の調整も可能となる。
このように、調整膜16の膜厚を調整したときのバルク音響波共振子のインピーダンス特性をシミュレーションした結果を図4に示す。
図4(a)に反共振周波数faが等しく、周波数差が約20MHz小さいバルク音響波共振子と、調整膜16がないバルク音響波共振子のインピーダンス特性との関係を示す。また、図4(b)には、共振周波数f0が等しく、周波数差が約20MHz小さいバルク音響波共振子と、調整膜16がないバルク音響波共振子との関係を示す。図4(a),(b)ともに、実線は調整膜16がない場合の特性と示し、破線は調整膜16がある場合の特性を示している。なお、図4に示すシミュレーション結果は、図4(a)のバルク音響波共振子の反共振周波数faと、図4(b)のバルク音響波共振子の共振周波数f0が等しくなるように、圧電体14の膜厚を変化させている。
このように、調整膜16は、周波数差を調整するとともに、その厚みを0.5λ×nの値から所定値ずらすことで、共振周波数,反共振周波数を低周波数側にも高周波数側にも調整することができる。また、バルク音響波共振子の共振部の材料,膜厚などを変更することなく、このような共振周波数の調整が可能となるので、生産性が高く、かつ信頼性の高いものとすることができる。
また、上述のように、周波数差の変化量はnの大きさによっても調整できるが、調整膜16の材料によっても調整することができる。前述の例では、調整膜16としてAlを用いた場合について例示したが、実効電気機械結合係数、周波数差の変化量は、調整膜16に使用する材料に依存する。以下、材料によって周波数差を調整する方法について説明する。
図5に、前述のバルク音響波共振子上に、さまざまな材料からなる調整膜16を形成した時の(a)周波数差、及び(b)実効電気機械結合係数のシミュレーション結果の一例を示す。調整膜16がない場合には、バルク音響波共振子の周波数差は83MHz、実効電気機械結合係数は8.2%であったものが、調整膜16の材料としてAlを使用した場合は、60MHz,5.8%に、Wを使用した場合は24MHz,2.3%となっている。このように、調整膜16を形成したバルク音響波共振子の周波数差,実効電気機械結合係数は、調整膜16の材料によるため、本発明のバルク音響波共振子では、調整膜16の材料が、所望の実効電気機械結合係数に基づいて選定されていることが望ましい。
このように、調整膜16の材料によっても、バルク音響波共振子の周波数差を調整することができることが確認できた。
次に本発明のバルク音響波共振子を用いたフィルタ装置について説明する。
図6は、本発明のフィルタ装置に実施の形態の一例を示す等価回路図である。
本発明のフィルタ装置は、図6(a)に示すように、入力端子Inと出力端子Outとをつなぐ入出力ラインと基準電位端子との間に、本発明のバルク音響波共振子100を接続すればよい。また、図6(b)に示すように、入出力ライン上に、バルク音響波共振子100を接続してもよい。さらに、入力端子Inと出力端子Outとをつなぐ入出力ラインと基準電位端子との間および入出力ライン上の両方に、バルク音響波共振子100を接続してもよい。すなわち、図8(b)に示すような、複数の直列共振子200及び並列共振子201の少なくとも1つに、本発明のバルク音響波共振子を用いてもよい。
ここで、基準電位端子とは、基準電位に接続されているもので、図6ではグランド電位に接続されている例について示した。
また、本発明のバルク音響波共振子を用いて本発明のフィルタ装置を構成したものとしては、上述のような共振子を電気的に結合させたラダー型フィルタ装置の他に、ラティス型フィルタ装置、共振子を音響的に結合させたスタックト・クリスタル(Sracked Crystal)型フィルタ装置やカップルド・レゾネータ(Coupled Resonator)フィルタ装置等が挙げられるが、これらのフィルタ装置の場合でも、同様な効果がある。
次に、このようなフィルタ装置の特性について説明する。
図4(a)の調整膜16ありの場合に示す特性を持つバルク音響波共振子を、ラダー型フィルタの並列共振子(図8(b)の201)に、図4(b)の調整膜16ありの場合に示す特性を持つバルク音響波共振子を、直列共振子(図8(b)の200)に用いることにより、調整膜16なしのバルク音響波共振子を直列共振子,並列共振子の両方に用いた場合に比して、より通過帯域幅が狭く、かつ共振−反共振間のインピーダンスの変化が急峻になるため、より急峻な減衰特性を持つフィルタを得ることができる。また、例えば、図4(b)の調整膜16ありの場合の特性を持つバルク音響波共振子を、ラダー型フィルタの直列共振子200に、図4(a)の調整膜16がない場合の特性を有するバルク音響波共振子を、並列共振子201に使用することにより、調整膜なしバルク音響波共振子を直列共振子,並列共振子の両方に用いる場合に比して、高周波数側の減衰特性がより急峻なフィルタを得ることができる。
なお、図4の例では、ラダー型フィルタの直列共振子に用いるバルク音響波共振子と並列共振子に用いるバルク音響波共振子とで、直列共振子の反共振周波数と並列共振子の共振周波数とを一致させるように、圧電体14の膜厚を変化させて、共振周波数をシフトさせた例について説明した。しかしながら、この例に限定されず、例えば、共振部の膜厚を含む構成は同一のバルク音響波共振子を用いて、調整膜16の膜厚を調整して共振周波数をシフトさせてもよい。この場合には、圧電体14の膜厚を変化させること無く、調整膜16の周波数調整機能のみにより直列共振子と並列共振子の周波数シフトを得ることができるので、生産性の高いものとなる。
次に、本発明のフィルタ装置を用いて通信装置を形成した例について説明する。
図7は、本発明の通信装置の一実施形態の通信装置を示すブロック図である。
図7において、アンテナ140に送信回路Txと受信回路Rxが分波器150を介して接続されている。送信される高周波信号は、フィルタ210によりその不要信号が除去され、パワーアンプ220で増幅された後、アイソレータ230と分波器150を通り、アンテナ140から放射される。また、アンテナ140で受信された高周波信号は、分波器150を通りローノイズアンプ160で増幅されフィルタ170でその不要信号を除去された後、アンプ180で再増幅されミキサ190で低周波信号に変換される。
図7において、分波器150,フィルタ170,フィルタ210のいずれかに、本発明のフィルタ装置を用いれば、設計自由度が高いため所望の特性を有するとともに生産性の高いものとすることができる。
なお、図7では送信回路Txと受信回路Rxとを有する通信装置について説明したが、送信回路Txまたは受信回路Rxのいずれか一方を有する通信装置としてもよい。
このような構成とすることにより、回路中での損失が小さくなり、より急峻なフィルタ装置により不要波の除去性能が高くなるので、より感度が良い通信装置を提供することができる。
本発明のバルク音響波共振子の具体例について図1を参照しつつ以下に説明する。ここでは、2GHzで共振するバルク音響波共振子を作製した。
まず、高抵抗のSi基体11上に、0.1μm厚みのWからなる下部電極13をスパッタリング法により形成した。下部電極13はウエットエッチングによりパターニングを行った。その後、スパッタリング法により0.9μmのZnO膜から成る圧電体14を成膜した。ZnO膜のパターニングは、フォトリソグラフィ及び希塩酸によるウエットエッチングによって行なった。そして、その上に、厚み0.1μmのWからなる上部電極15、1.68μm(=0.5λ)のAlからなる調整膜16をスパッタリング法により形成し、同様にフォトリソグラフィ及びRIEによるドライエッチングによりパターン形成を行なった。なお、同じ基体11上に、調整膜16のないバルク音響波共振子も同時に形成した。このようにして作製した図1に示すような本発明のバルク音響波共振子について、その共振特性をインピーダンスアナライザにて行なったところ、調整膜16がないバルク音響波共振子の並列共振周波数が2.114GHzであり、周波数差70MHzであったのに対し、調整膜16を形成したバルク音響波共振子は、並列共振周波数が2.110GHz、周波数差52MHzとなった。
また、同様の工程で、調整膜16の厚みを1.67μm(=0.52λ)としたものを作製した場合は、並列共振周波数が2.058GHz、周波数差52MHzとなった。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、圧電体の材料として、AlNやPZT等を使用してもよいし、成膜方法としてCVD法やゾルゲル法(材料の溶液を基体にスピンコートし、焼成して圧電体とする方法)等も使用できる。特に、PZT等の電気機械結合係数が大きい強誘電体材料を使用した場合は、周波数差(共振周波数と反共振周波数との差)が大きいバルク音響波共振子を実現することができる。また、それを用いたフィルタは、通過帯域幅が広く、広帯域のスペクトルを使用する無線通信装置に好適に使用することができる。
本発明のバルク音響波共振子の一例を示す、(a)は平面図,(b)は(a)のA−A’部分の断面図である。 (a),(b)はそれぞれ、本発明のバルク音響波共振子の他の例を示す断面図である。 (a),(b)はそれぞれ、本発明のバルク音響波共振子の調整膜厚みと共振周波数,反共振周波数の関係のシミュレーション結果の一例を示す線図である。 (a),(b)はそれぞれ、本発明のバルク音響波共振子のインピーダンス特性のシミュレーション結果の一例を示す線図である。 (a),(b)はそれぞれ、本発明のバルク音響波共振子の、調整膜厚みと周波数差及び実効電気機械結合係数との関係のシミュレーション結果の一例を示す線図である。 (a),(b)はそれぞれ、本発明のフィルタ装置の実施の形態の一例を示す等価回路図である。 本発明の通信装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。 (a),(b)はそれぞれ、従来のバルク音響波共振子の一例を示す断面図およびそれを用いたラダー型フィルタの回路構成を示す回路図である。
符号の説明
11・・・基体
12・・・貫通孔
13・・・下部電極
14・・・圧電体
15・・・上部電極
16・・・調整膜

Claims (7)

  1. 圧電体と、前記圧電体を厚み方向に対して挟持する一対の電極と、を含む共振部と、
    前記共振部の厚み方向の少なくとも一方に設けられ、(0.425〜0.575)λ×nの厚みを有する金属材料からなる調整膜と、
    を備えた、バルク音響波共振子。
    (ただし、λは使用周波数における調整膜中を厚み方向に伝播する音響波の波長であり、nは自然数である。)
  2. 前記調整膜は、Alからなる請求項1に記載のバルク音響波共振子。
  3. 前記調整膜の厚みは、0.5λである、請求項1または2に記載のバルク音響波共振子。
  4. 前記調整膜の周縁部は、前記共振部の厚み方向に垂直な断面における周縁部と一致する、請求項1〜3のいずれかに記載のバルク音響波共振子。
  5. 入力端子と出力端子と基準電位端子とを有し、前記入力端子と前記出力端子とをつなぐ入出力ライン上、または前記入出力ラインと基準電位端子との間に、請求項1〜4のいずれかに記載のバルク音響波共振子を設けたフィルタ装置。
  6. 受信回路もしくは送信回路の少なくとも1つを有し、請求項5に記載のフィルタ装置が前記受信回路もしくは前記送信回路に用いられている通信装置。
  7. 請求項5に記載のフィルタ装置と、受信回路もしくは送信回路の少なくとも1つとを有する通信装置。
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