JP4845272B2 - ガスバリア性コート剤およびガスバリア性被膜並びにガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

ガスバリア性コート剤およびガスバリア性被膜並びにガスバリア性フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性コート剤およびガスバリア性被膜並びにガスバリア性フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムは強度、透明性、成形性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかしながら、これらの熱可塑性樹脂フィルムは酸素ガス等のガス透過性を有しているため、一般食品、レトルト処理食品等の包装に使用した場合、長期間保存する内にフィルムを透過した酸素ガス等のガスにより食品の変質が生じることがある。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂フィルムのガスバリア性を向上させるために、これら熱可塑性樹脂フィルムの表面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略記する)のエマルジョン等を塗布し、ガスバリア性の高いPVDC層を形成した積層フィルムが食品包装等に幅広く使用されてきた。しかし、PVDCは焼却時にダイオキシン等の有害物質を発生するおそれがあることから、他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
このような要望に応えるため、PVDCに替わる材料の一つとしてガスバリア性を有していて有毒ガスが発生することがないポリビニルアルコールが挙げられるが、ポリビニルアルコールは低湿度雰囲気下でのガスバリア性は高いが、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下するので、水分を含む食品等の包装には用いることができない場合が多い。
【0005】
ポリビニルアルコールの高湿度雰囲気下でのガスバリア性の低下を改善したポリマーとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)が知られているが、このポリマーにおいては高湿度雰囲気下でのガスバリア性を実用レベルに維持するためにはエチレンの含有量をある程度高くする必要があり、エチレンの含有量を高くしたEVOHは水に難溶となり、これをコート剤とする場合には有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒を用いる必要があり、環境問題の観点から望ましくなく、また有機溶媒の回収工程などを必要とするため、コスト高になるという問題がある。
【0006】
さらに、水溶性のポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高湿度雰囲気下でも高いガスバリア性を発現させる方法として、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とからなる水溶液をフィルムにコートし、これを熱処理することにより、両ポリマーをエステル結合により架橋する方法が提案されているが(特開平10−237180号公報)、この方法ではエステル化を充分に進行させてフィルムのガスバリア性を高めるためには、高温で長時間の加熱が必要であり、生産性に問題があった。さらに高温で長時間反応させることによりフィルムが着色し、外観を損ねるため食品包装用には改善が必要である。
【0007】
また、熱ロールを使って熱処理を効率よく行うことにより、熱処理時間を短時間で行って生産性を高めたガスバリアフィルムの製造方法が特開平7−266441号公報に開示されている。この方法によれば、熱処理の時間は短縮されるが、工業生産を考えると依然長時間の熱処理を必要としており、生産性が充分高いとはいえず、さらにフィルムにしわが入りやすいという欠点もある。
【0008】
さらに、特開平10−316779号公報および特開2000−37822号公報にはポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの部分中和物からなる水溶液を未延伸の熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、その後フィルムを延伸してから熱処理をするインラインコート法によって生産性を高めたガスバリア性フィルムの製造方法が提案されている。しかし、この方法では延伸工程の後に高温かつ長時間の熱処理を必要とするため、依然生産性が充分高いとはいえない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、高湿度雰囲気下でも高いガスバリア性を有しかつ燃焼時にダイオキシンを発生することがないガスバリア性フィルムを生産性よく製造することができるガスバリア性コート剤およびガスバリア被膜並びにガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0010】
【問題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の樹脂組成を有するコート剤をフィルムの表面に塗布し、このコート剤からなるガスバリア性の被膜層を形成することにより、上記の課題が解決できることを見出し、それに基づいて本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)水系溶媒中に平均重合度300以下のポリビニルアルコール(A)とマレイン酸系共重合体(B)とを質量比(A/B)97/3〜10/90の割合で含有する混合液からなり、マレイン酸系共重合体が、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体又はエチレン−無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種、または2種の混合物であることを特徴とするガスバリア性コート剤。
(2)上記ポリビニルアルコールとマレイン酸系共重合体との総固形分濃度w(質量%)と20℃における上記混合液の粘度η(mPa・s)が下記式
logη≦0.115w+0.275
を満たすことを特徴とする(1)記載のガスバリア性コート剤。
)上記マレイン酸系共重合体が実質的に交互共重合体であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のガスバリア性コート剤。
)上記マレイン酸系共重合体が、これに含まれるカルボキシル基に対して0.1〜20当量%のアルカリ化合物で部分的に中和されたマレイン酸系共重合体を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性コート剤。
上記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性コート剤中に含有するポリビニルアルコールとマレイン酸系共重合体とから形成され、温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下における酸素ガス透過係数が700ml・μm/m・day・MPa以下であることを特徴とするガスバリア性被膜。
)熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に(5)記載のガスバリア性被膜の層を形成したことを特徴とするガスバリア性フィルム。
)熱可塑性樹脂フィルムがナイロン6からなることを特徴とする(6)記載のガスバリア性フィルム。
)熱可塑性樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする(6)記載のガスバリア性フィルム。
上記(6)〜(8)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを製造するときに、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、水系溶媒中に平均重合度300以下のポリビニルアルコール(A)とマレイン酸系共重合体(B)とを質量比(A/B)97/3〜10/90の割合で含有する混合液を塗布し、次いで、120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
10上記(6)〜(8)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを製造するときに、熱可塑性樹脂未延伸フィルムの少なくとも一方の面に、水系溶媒中に平均重合度が300以下のポリビニルアルコール(A)とマレイン酸系共重合体(B)とを質量比(A/B)97/3〜10/90の割合で含有する混合液を塗布し、乾燥後、延伸処理と同時に120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【0012】
本発明のガスバリア性コート剤によれば、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)とマレイン酸系共重合体とを特定の割合で含有する混合液からなるので、これをフィルムに塗布した後に熱処理を施すと、両者がエステル結合によって架橋して緻密な架橋構造を形成し、それによって高湿度雰囲気下でも高いガスバリア性を示す被膜を形成することができる。また、PVAとして平均重合度が300以下と低い重合度のPVAを用いるので、固形分濃度の割に混合液の粘度が低く取り扱いが容易であって、塗布作業などの作業性がよく、また、平均重合度が300を超える高い平均重合度のPVAに比べて高いガスバリア性を有する被膜を形成することができる。しかも、上記PVAとマレイン酸系共重合体とは短時間の熱処理によってガスバリア性の被膜を形成することができるので、生産性よくガスバリア性の被膜を形成することができる。さらにまた、燃焼時にダイオキシン等の有害物質を発生することがないので、環境を汚染することがないガスバリア性フィルムを提供することができる。
【0013】
また、本発明のガスバリア性被膜は、温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下における酸素ガス透過係数が700ml・μm/m2・day・MPa以下と低い値を示すので、それを形成したガスバリア性フィルムに優れたガスバリア性を付与することができる。
【0014】
さらに、本発明のガスバリア性フィルムは、その表面に上記ガスバリア性被膜の層を形成したので、上記ガスバリア性被膜の高湿度雰囲気下における低い酸素ガス透過係数が反映されて、高湿度雰囲気下において高いガスバリア性を有し、食品包装材料などとして好適に利用することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の製造方法によれば、上記コート剤が塗布されたフィルムを加熱雰囲気中すなわち発熱体に直接接触させることなく熱処理するので、フィルムにしわが入りにくく、かつ巻取り速度を速くすることができて、高湿度雰囲気下においても優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを生産性よく製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるガスバリア性コート剤は、水系溶媒中にPVAとマレイン酸系共重合体とを含有する混合液からなるものであって、このコート剤を熱可塑性フィルムの表面に塗布した後に熱処理することによって両者がエステル結合によって架橋して緻密な架橋構造を形成するものであるが、上記PVAとマレイン酸系共重合体の配合割合は、質量比で97/3〜10/90の範囲である必要がある。好ましくは、90/10〜15/85の範囲である。PVAの割合が上記範囲よりも少ないと、被膜形成能が低下するおそれがあり、一方、マレイン酸系共重合体の割合が上記範囲よりも少ないと、PVAとの間に充分な架橋密度をもって架橋構造を形成することができず、高湿度雰囲気下におけるガスバリア性を充分に発現することができないことがある。
【0017】
また、上記混合液は、作業性上から、水溶液または水分散液であることが好ましく、水溶液であることがより好ましい。したがって、PVAは水溶性であることが好ましく、また、マレイン酸系共重合体も水溶液もしくは水分散性のものが好ましい。
【0018】
本発明において用いられるPVAは、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0019】
上記ビニルエステルに対して、その特性を損ねない範囲で、他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0020】
上記のようにPVAは、水溶性であることが好ましいので、これに疎水性の共重合成分を多量に含有させると水に対する親和性が損なわれるので、好ましくない。
【0021】
上記PVAは、通常ケン化したものが用いられる。ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。ケン化度が低すぎるとガスバリア性が低下する傾向があるので、ガスバリア性の観点からケン化度は通常90%以上、好ましくは95%以上のものが用いられる。
【0022】
また、PVAの平均重合度は作業性を考慮すると、300以下が好ましく、100〜280がより好ましい。平均重合度が300を超えると高濃度混合液としたときにその粘度が高くなるために作業性が低下することがある。一方、平均重合度が100未満のものは、工業的に製造することが困難となる。
【0023】
ここで、PVAの平均重合度は、日本工業規格K6726に記載の方法によって求められる。すなわち、約10gのPVA試料に、メタノール200mlを加えた後、12.5mol/l水酸化ナトリウム溶液を、ケン化度に応じて(ケン化度97モル%以上の場合は3ml、97モル%以下の場合は10ml)加えて、40℃で1時間加熱し、残存酢酸基を完全にケン化する。これをメタノールでよく洗浄してから乾燥させ、完全ケン化PVAを得る。この試料約1gを量り採り、水100mlを加えて加熱溶解後、室温に戻してろ過し、ろ液10mlをオストワルド粘度計に入れて30℃の高温槽に浸けて、水に対する相対粘度ηrelを求める。そして、この相対粘度ηrelからPVAの平均重合度Mが下記式より求められる。
【0024】
logM=1.613log{([η]×104)/8.29}
[η]=(2.303logηrel)/C
ηrel=t1/t0
ここで、[η]は極限粘度、Cは試料溶液の濃度(g/l)、t0は水の落下秒数(s)、t1は試験溶液の落下秒数(s)を表す。
【0025】
また、PVAとして、平均重合度が300以下のPVAを用いると、これを無水マレイン酸系共重合体と架橋反応させたとき、平均重合度が300を超えるPVAを用いた場合に比べて、より高いガスバリア性を有する被膜を形成することができる。
【0026】
さらに、平均重合度が300以下のPVAを用いると、水系溶媒中にPVAとマレイン酸系共重合体を含むコート剤において、PVAとマレイン酸系共重合体との総固形分濃度w(質量%)と20℃における混合液の粘度η(mPa・s)との間に下記式で表される関係式が成り立つ。
【0027】
logη≦0.115w+0.275
これは上記のコート剤が総固形分濃度の割に混合液の粘度が低いことを表しており、総固形分濃度の割に粘度が低いことはコート剤をフィルムに塗布する際の作業性に優れていることを意味する。すなわち、塗布作業が容易であり、比較的高濃度のコート剤をフィルムに塗布して所望厚みの被膜を容易に形成することができる。この式に従えば、上記コート剤は、例えば総固形分濃度が10質量%のときの20℃における混合液の粘度は26.6mPa・s以下、20質量%のときは375.8mPa・s以下である。
【0028】
次に、本発明で使用されるマレイン酸系共重合体は、無水マレイン酸と、イソブチレン、エチレンなどの二重結合を持つビニル化合物を、ラジカル重合などの公知の方法で重合することで得られるものである。これらのマレイン酸系共重合体のうち、ガスバリア性を向上させることができる点でイソブチレン−無水マレイン酸共重合体又はエチレン−無水マレイン酸共重合体が好ましく用いられる。
【0029】
上記マレイン酸系共重合体には、その特性を損なわない範囲で、他のビニル化合物を共重合することも可能である。用いることのできるビニル化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数3〜30のオレフィン類や、ポリビニルアルコールの水酸基などと反応する反応性基を有する化合物を挙げることができる。
【0030】
ここで、マレイン酸系共重合体に疎水性の共重合成分を多量に含有されると、上記PVAと同様に、水に対する親和性が損なわれるので、好ましくない。
本発明に用いるマレイン酸系共重合体中のマレイン酸単位は、10モル%以上含有することが好ましい。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、PVA単位との反応による架橋構造の形成が不充分になって、ガスバリア性が低下することがある。
【0031】
また、2成分からなるマレイン酸系共重合体を形成するときは、共重合すべき2つのモノマーの反応性比r1とr2は、どちらも0に近いモノマー同士の組み合わせが多く、通常のラジカル重合では実質的に2つのモノマーからなる構造単位が交互に配列した交互共重合体となることが多いが、このような交互共重合体のマレイン酸系共重合体はマレイン酸系共重合体中のマレイン酸単位はほぼ50%とマレイン酸単位が多くなるので、特に高いガスバリア性を示す。
【0032】
なお、マレイン酸系共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、一方、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となるが、本発明ではこれら閉環、開環を区別することなく、単にマレイン酸として記述する。
【0033】
本発明においては、上記コート剤にPVAとマレイン酸系共重合体との架橋反応を促進させてガスバリア性を向上させるために、架橋剤を添加することもできる。
【0034】
架橋剤の添加量は、PVAとマレイン酸系共重合体の合計質量100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。架橋剤の添加量が0.1質量部未満では、架橋剤を添加しても架橋剤を添加しない場合に比べて顕著な架橋効果を得ることができず、一方、30質量部を超えると、逆に架橋剤がガスバリア性の発現を阻害することがあるので好ましくない。
【0035】
上記架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよく、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物または多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物等が、優れたガスバリア性を発現させることができることから好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、架橋反応を促進させてガスバリア性を向上させるために、酸などの触媒を添加することもできる。
上記のように、架橋剤または触媒を添加すると、PVAとマレイン酸系共重合体との間にエステル結合による架橋反応が促進され、ガスバリア性をより一層向上させることができる。
さらに、本発明のコート剤には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。
【0037】
上記熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
また、強化剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0039】
さらに、本発明のコート剤にはガスバリア性をより高めるために、その特性を大きく損わない限りにおいて、無機層状化合物を添加することもできる。ここで無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物のことを指す。具体的には、燐酸ジルコニウム(燐酸塩系誘導体型化合物)、カルコゲン化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、グラファイト、粘土鉱物などがあり、特に溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
【0040】
上記粘土鉱物の好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどがあり、膨潤性フッ素雲母又はモンモリロナイトが特に好ましい。
【0041】
これらの粘土鉱物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0042】
上記粘土鉱物の中で、膨潤性フッ素雲母系鉱物は白色度の点で最も好ましく、これは次式で示されるもので、容易に合成できるものである。
α(MF)・β(aMgF2 ・bMgO)・γSiO2
(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1≦α≦2、2≦β≦3.5、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば、酸化珪素と酸化マグネシウムと各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で14000〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0043】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法がある(特開平2−149415号公報)。この方法によると、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃の温度で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物を得ることができる。
【0044】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35質量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成収率が低下するので好ましくない。
【0045】
上記の膨潤性フッ素雲母系鉱物を得るためには、珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムとすることが必要である。これらのアルカリ金属は単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、アルカリ金属のうち、カリウムの場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られないが、ナトリウムあるいはリチウムと併用し、かつ限定された量であれば膨潤性を調節する目的で用いることも可能である。
【0046】
さらに、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。
上記粘土鉱物の中で、モンモリロナイトは、次式で示されるもので、天然に産出するものを精製することにより得ることができる。
【0047】
aSi4(Al2-aMga)O10(OH)2・nH2
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、以下において、式中ではnH2Oで表す。)
また、モンモリロナイトには次式群で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
【0048】
aSi4(Al1.67-aMg0.5+a)O10(OH)2・nH2
aSi4(Fe2-a 3+Mga)O10(OH)2・nH2
aSi4(Fe1.67-a 3+Mg0.5+a)O10(OH)2・nH2
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。)
通常モンモリロナイトは、その層間にナトリウムやカルシウム等のイオン交換性カチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。本発明においては、イオン交換処理等によって層間のイオン交換性カチオンがナトリウムに置換されているものが好ましい。また、水ひ処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0049】
さらに、本発明においては、このような無機層状化合物と上記架橋剤とを併用することもできる。
本発明において、PVAとマレイン酸系共重合体とを混合してそれらを含有する水溶液を調製するに際しては、マレイン酸系共重合体中のカルボキシル基に対して0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。
【0050】
マレイン酸系共重合体は、それに含まれるマレイン酸単位が多いとそれ自身の親水性が高いので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができるが、アルカリ化合物を適正量添加することにより、コート剤を塗布して得られるフィルムのガスバリア性が格段に向上される。
【0051】
かかるアルカリ化合物としては、マレイン酸系共重合体中のカルボキシル基を中和できるものであればよく、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、有機水酸化アンモニウム化合物等が挙げられる。このうち、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
【0052】
上記水溶液を調整方法としては、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて公知の方法で行えばよい。例えば、PVAとマレイン酸系共重合体を別々に水溶液とし、使用前に混合して用いる方法が好ましい。この時、上記アルカリ化合物をマレイン酸系共重合体の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
【0053】
また、PVAとマレイン酸系共重合体を同時に溶解釜中の水に加えてもよいが、アルカリ化合物を最初に水に添加しておく方がマレイン酸系共重合体の溶解性がよい。また、マレイン酸系共重合体の水に対する溶解性を高める目的や乾燥工程の短縮、水溶液の安定性の改善などの目的で、水にアルコールや有機溶媒を少量添加することもできる。
【0054】
上記ガスバリア性コート剤のポリマー濃度すなわちPVAとマレイン酸系共重合体との総濃度は、所望とする混合液の粘度、ポリマーの反応性、用いる装置の仕様などによって適宜変更されるが、あまりに希薄な混合液ではガスバリア性を発現させるのに充分な厚みの被膜を形成することが困難となり、かつ、その後の乾燥工程において長時間を要することになる。一方、混合液の濃度が高すぎると、粘度が高くなって、混合液の調製操作、保存性などに問題を生じることがある。このような観点から、ポリマー濃度は5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0055】
本発明において、上記コート剤を塗布してガスバリア性を有する被膜層を形成する熱可塑性樹脂フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂またはそれらの混合物よりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられ、これらのフィルムは未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。また、フィルムの表面をコロナ処理したもの、フィルムにアンカーコートを施したものなどでもよい。
【0056】
未延伸フィルムを製造する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を押出機で加熱、溶融してTダイより押し出し、冷却ロールなどにより冷却固化して未延伸フィルムを得る方法、もしくは円形ダイより押し出して水冷あるいは空冷により固化させて未延伸フィルムを得る方法が挙げられる。また、延伸フィルムを製造する方法としては、未延伸フィルムを一旦巻き取った後2軸延伸する逐次2軸延伸法、または未延伸フィルムを巻き取ることなく連続して同時2軸延伸する同時2軸延伸法により延伸する方法が好ましい。フィルムの機械的特性や厚み均一性などの性能面の観点からは、Tダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法を組み合わせる方法が好ましい。
【0057】
本発明において、ガスバリア性フィルムは、フィルムの片面または両面に上記コート剤を塗布し、しかる後に熱処理して水不溶性のガスバリア性被膜層を形成することによって得られる。
【0058】
フィルムの表面に形成するガスバリア性の被膜層の厚みは、フィルムのガスバリア性を充分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましい。
【0059】
上記ガスバリア性被膜層は延伸フィルムまたは未延伸フィルムのいずれに形成してもよい。
例えば、延伸フィルムまたは未延伸フィルムの少なくとも一方の面に上記コート剤を塗布し、次いで、120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことによって、延伸フィルムまたは未延伸フィルムの表面に水不溶性のガスバリア性被膜層が形成されたガスバリア性フィルムが得られる。
【0060】
また、未延伸フィルムの少なくとも一方の面に上記コート剤を塗布し、乾燥後、延伸処理と同時に120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以上の熱処理を施すことによって、延伸されたフィルムの表面に水不溶性のガスバリア性被膜層が形成されたガスバリア性フィルムが得られる。この場合には、例えば、まず未延伸フィルムにコート剤を塗布して乾燥した後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)し、これと同時に熱処理する。または、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後にコート剤を塗布し、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)し、しかる後に熱処理する。このとき、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることもできる。
【0061】
上記コート剤をフィルムに塗布する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0062】
上記のいずれの場合においても、コート剤が塗布されたフィルムを120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことによって、コート剤中に含有するPVAとマレイン酸系共重合体とが架橋反応してエステル結合が形成され、それによって水不溶性のガスバリア性を有する被膜層が形成される。
【0063】
上記熱処理温度は120℃以上であることが必要であって、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上であり、その上限は基材フィルムとする熱可塑性樹脂フィルムの耐熱温度にもよるが、通常350℃が好ましい。したがって、本発明においては、120℃〜350℃の熱処理温度が好ましく採用される。
【0064】
熱処理温度が低く過ぎると、上記PVAとマレイン酸系共重合体との架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になることがあり、一方、高過ぎると、被膜などが脆化するおそれなどがあるので好ましくない。
【0065】
また、熱処理時間は1分間以下であることが必要であって、通常1秒間〜1分間、好ましくは3秒間〜45秒間、より好ましくは5秒間〜30秒が適用される。
熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
【0066】
また、上記熱処理は加熱雰囲気中すなわち熱ロールなどの発熱体に直接フィルムを接触させることなく行う必要がある。
熱処理を加熱雰囲気中で行うと、フィルムにしわが入りにくく、かつ巻取り速度も速くすることができるので、生産性を向上させることができる。
【0067】
これに対して、熱ロールなどの発熱体に直接フィルムを接触させて熱処理すると、フィルムにしわが入りやすく、巻き取り速度もあまり速くできないので、生産性が低下する。
【0068】
本発明においては、上記のような比較的短時間の熱処理によって、PVAとマレイン酸系共重合体の間にエステル結合による架橋構造が形成されて、高いガスバリア性を示す被膜層を有するガスバリア性フィルムが得られる。しかも、上記ガスバリア性フィルムを効率よく生産することができる。
【0069】
上記にようにして得られたガスバリア性被膜層の温度20℃、相対湿度85%における酸素透過係数は700ml・μm/m2・day・MPa以下であり、さらに好ましくは500ml・μm/m2・day・MPa以下であり、より好ましくは300ml・μm/m2・day・MPa以下である。
【0070】
本発明においては、ガスバリア性を酸素ガスバリア性として評価する。また、フィルムの酸素ガスバリア性は、基材フィルムの種類や厚み、及び被膜層の厚みにより変化するため、被膜層自体の酸素ガス透過係数を評価する。
【0071】
上記酸素ガス透過係数は、下記式より求めるものである。
1/QF=1/QB+L/Pc、すなわち
c=〔(QF×QB/(QB−QF)〕×L
ただし、
F:被膜形成フィルムの酸素ガス透過度(ml/m2・day・MPa)
B:基材フィルムの酸素ガス透過度(ml/m2・day・MPa)
C:被膜層の酸素ガス透過係数(ml・μm/m2・day・MPa)
L :被膜層の厚み(μm)
したがって、被膜層の酸素ガス透過係数PCは、上記QF、QB及びLが分かれば、上記式より見積もることができる。
(実施例)
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0072】
以下の実施例において、酸素ガスバリア性は、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下における酸素ガス透過度を測定した。すなわち、上記測定器によって被膜形成フィルムの酸素ガス透過度QFと基材フィルムの酸素ガス透過度QBとをそれぞれ測定し、基材フィルムと被膜形成フィルムとの平均厚みの差から被膜層の厚みLを求めた。そして、これらの数値から上記式を用いて被膜層の酸素ガス透過係数Pcを算出した。
【0073】
なお、基材フィルムとして用いた厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム及び厚み15μmのナイロン6フィルムの温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下における酸素ガス透過度は、それぞれ900ml/m2・day・MPa、400ml/m2・day・MPaであった。
【0074】
また、溶液の粘度はB型粘度計にて20℃で測定した。
実施例1
PVA(ユニチカケミカル社製、UMR10HH、ケン化度98.9%、平均重合度240)を純水に溶解し、20質量%の水溶液を得た。
【0075】
また、エチレン−マレイン酸交互共重合体(ALDRICH社製、質量平均分子量100,000〜500,000)をマレイン酸のカルボキシル基に対して5モル%の水酸化ナトリウムを含む水に溶解し、20質量%の水溶液とした。
【0076】
上記PVAとエチレン−マレイン酸共重合体との質量比が70/30となるように両水溶液を混合し、攪拌してコート剤を調製した。得られたコート剤の20℃における粘度は200mPa・sと低く、塗布作業性に優れていた。
【0077】
このコート剤を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)上に乾燥後の被膜層厚みが約2μmになるようにエアナイフコーターで塗布し、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥した後、200℃の加熱雰囲気中で15秒間熱処理した。
【0078】
得られた被膜形成フィルムの外観は着色も無く良好であり、被膜層は水に不溶であった。また、被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は43ml/m・day・MPaであり、被膜層の酸素ガス透過係数は90ml・μm/m・day・MPaであった。
【0081】
実施例2
イソブチレン−マレイン酸共重合体(クラレ社製、イソバン04)を、イソブチレン−マレイン酸共重合体のカルボキシル基に対して5モル%の水酸化カルシウムと60モル%の水酸化アンモニウムを含む水に溶解し、20質量%の水溶液とした。
【0082】
PVAとイソブチレン−マレイン酸共重合体との質量比が30/70となるように、実施例1で使用したPVA水溶液と、上記イソブチレン−マレイン酸共重合体水溶液を混合し、攪拌してコート剤を調製した。得られたコート剤の粘度は210mPa・sと低く、塗布作業性に優れていた。
【0083】
このコート剤を2軸延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm)上に乾燥後の被膜層厚みが約2μmになるようにエアナイフコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、200℃の加熱雰囲気中で15秒間熱処理した。
【0084】
得られた被膜形成フィルムの外観は良好であり、被膜層は水に不溶であった。また、この被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は95ml/m・day・MPaであり、被膜層の酸素ガス透過係数は250ml・μm/m・day・MPaであった。
実施例3
実施例1と同様の操作でPVAとエチレン−マレイン酸共重合体との質量比が70/30となるように水溶液を調製し、次いで、PVAとエチレン−マレイン酸共重合体の固形分100質量部に対して、無機層状化合物(クニミネ工業製、クニピアF)を10質量部になるように添加、攪拌し、水を加えて総固形分濃度が10質量%のコート剤を調製した。得られたコート剤の粘度は15mPa・sと低く、塗布作業性に優れていた。
【0085】
このコート剤を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)上に乾燥後の被膜層厚みが約2μmになるようにエアナイフコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥した後、200℃の加熱雰囲気中で15秒間熱処理した。
【0086】
得られた被膜形成フィルムの被膜層は水に不溶であった。また、被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は2ml/m・day・MPaであり、被膜層の酸素ガス透過係数は4ml・μm/m・day・MPaであった。
実施例4
実施例と同様の操作で、実施例と同組成のコート剤を調製した。
【0087】
次に、ナイロン6樹脂を、Tダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度270℃でシート状に押し出し、表面温度10℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み150μmの未延伸フィルムとした。続いて、この未延伸フィルムをグラビアロール式コーターに導き、乾燥後の被膜層厚みが12μmになるように塗布し、80℃の熱風ドライヤー中で45秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時2軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、170℃の加熱雰囲気中で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。次に、横方向弛緩率5%で、200℃の加熱雰囲気中で15秒間の熱処理を行い、室温まで冷却後、延伸フィルムを巻き取った。
【0088】
得られた被膜形成フィルムの外観は良好であり、被膜層は水に不溶であった。この被膜形成フィルムの厚みは16.2μmであり、そのうち被膜層の厚みは1.2μmであった。また、被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は135ml/m2・day・MPaであり、被膜層の酸素ガス透過係数は245ml・μm/m2・day・MPaであった。
比較例1
PVA(ユニチカケミカル社製、UF040G、ケン化度99%、平均重合度400)を純水に溶解し、20質量%の水溶液を得た。
【0089】
また、イソブチレン−マレイン酸共重合体(クラレ社製、イソバン04)を、イソブチレン−マレイン酸共重合体のカルボキシル基に対して60モル%の水酸化アンモニウムを含む水に溶解し、20質量%の水溶液とした。
【0090】
次いで、PVAとイソブチレン−マレイン酸共重合体との質量比が60/40となるように、両水溶液を混合、攪拌してコート剤を調製した。得られたコート剤の粘度は450mPa・sであった。
【0091】
このコート剤をエアナイフコーターで2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)上に塗布しようとしたが、厚みを制御することが困難であり、塗布作業性に劣るものであった。
【0092】
このコート剤をバーコーターにて上記PETフィルム上に乾燥後の被膜層厚みが約2μmになるようにメイヤーバーで塗布し、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥した後、200℃の加熱雰囲気中で15秒間熱処理した。
【0093】
得られた被膜形成フィルムの被膜層は水に不溶であった。この被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は194ml/m2・day・MPaであり、被膜層の酸素ガス透過係数は495ml・μm/m2・day・MPaであった。
比較例2
PVA(ユニチカケミカル社製、UF040G、ケン化度99%、平均重合度400)を純水に溶解し、20質量%の水溶液を得た。
【0094】
また、ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、ポリアクリル酸25質量%水溶液、数平均分子量150000)をポリアクリル酸のカルボキシル基に対して5モル%の水酸化ナトリウムを含む水溶液で希釈し、20質量%の水溶液とした。
【0095】
PVAとポリアクリル酸との質量比が70/30となるように両水溶液を混合し、攪拌してコート剤を調製した。得られたコート剤の粘度は410mPa・sであった。
【0096】
このコート剤を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)上に乾燥後のコート層厚みが約2μmになるようにメイヤーバーで塗布し、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥した後、200℃の加熱雰囲気中で15秒間熱処理した。
【0097】
得られた被膜形成フィルムの被膜層は水に溶解した。また、この被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は790ml/m2・day・MPa、被膜層の酸素ガス透過係数は12900ml・μm/m2・day・MPaであり、ガスバリア性の低いフィルムであった。
比較例3
PVAとポリアクリル酸との質量比を30/70、ポリアクリル酸のカルボキシル基に対して10モル%の水酸化ナトリウムを含む水溶液を用いた以外は、比較例2と同様の操作で被膜形成フィルムを得た。
【0098】
得られたコート剤の粘度は390mPa・sであり、得られた被膜形成フィルムの被膜層は水に溶解した。また、この被膜形成フィルムの酸素ガス透過度は830ml/m2・day・MPa、被膜層の酸素ガス透過係数は21300ml・μm/m2・day・MPaであり、ガスバリア性の低いフィルムであった。
【0099】
以上の結果を表1にまとめて示した。
【0100】
【表1】
Figure 0004845272
以上の実施例から明らかなように、本発明のコート剤によれば、ガスバリア性に優れた被膜形成フィルムを作業性よく製造することができることが分かる。
【0101】
【発明の効果】
本発明のガスバリア性コート剤によれば、高湿度雰囲気下でも高いガスバリア性を示す被膜を形成することができ、また、固形分濃度の割に混合液の粘度が低く取り扱いが容易であって、塗布作業などの作業性がよく高いガスバリア性を有する被膜を形成することができる。しかも、短時間の熱処理によってガスバリア性の被膜を形成することができて、生産性よくガスバリア性の被膜を形成することができる。さらに、燃焼時にダイオキシン等の有害物質を発生することがないので、環境を汚染することがないガスバリア性フィルムを提供することができる。
【0102】
また、本発明のガスバリア性被膜は、高湿度における酸素ガス透過係数が低い値を示すので、それを形成したガスバリア性フィルムに優れたガスバリア性を付与することができる。
【0103】
さらに、本発明のガスバリア性フィルムは、上記ガスバリア性被膜の高湿度雰囲気下における低い酸素ガス透過係数が反映されて、高湿度雰囲気下において高いガスバリア性を有し、食品包装材料などとして好適に利用することができる。
【0104】
さらにまた、本発明の製造方法によれば、フィルムにしわが入りにくく、かつ巻取り速度を速くすることができて、高湿度雰囲気下においても優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを生産性よく製造することができる。

Claims (10)

  1. 水系溶媒中に平均重合度300以下のポリビニルアルコール(A)とマレイン酸系共重合体(B)とを質量比(A/B)97/3〜10/90の割合で含有する混合液からなり、マレイン酸系共重合体が、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体又はエチレン−無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種、または2種の混合物であることを特徴とするガスバリア性コート剤。
  2. 上記ポリビニルアルコールとマレイン酸系共重合体との総固形分濃度w(質量%)と20℃における上記混合液の粘度η(mPa・s)が下記式
    logη≦0.115w+0.275
    を満たすことを特徴とする請求項1記載のガスバリア性コート剤。
  3. 上記マレイン酸系共重合体が実質的に交互共重合体であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のガスバリア性コート剤。
  4. 上記マレイン酸系共重合体が、これに含まれるカルボキシル基に対して0.1〜20当量%のアルカリ化合物で部分的に中和されたマレイン酸系共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性コート剤。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性コート剤中に含有するポリビニルアルコールとマレイン酸系共重合体とから形成され、温度20℃、相対湿度85%の雰囲気下における酸素ガス透過係数が700ml・μm/m・day・MPa以下であることを特徴とするガスバリア性被膜。
  6. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に請求項記載のガスバリア性被膜の層を形成したことを特徴とするガスバリア性フィルム。
  7. 熱可塑性樹脂フィルムがナイロン6からなることを特徴とする請求項記載のガスバリア性フィルム。
  8. 熱可塑性樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項記載のガスバリア性フィルム。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを製造するときに、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、水系溶媒中に平均重合度300以下のポリビニルアルコール(A)とマレイン酸系共重合体(B)とを質量比(A/B)97/3〜10/90の割合で含有する混合液を塗布し、次いで、120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  10. 請求項6〜8のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを製造するときに、熱可塑性樹脂未延伸フィルムの少なくとも一方の面に、水系溶媒中に平均重合度が300以下のポリビニルアルコール(A)とマレイン酸系共重合体(B)とを質量比(A/B)97/3〜10/90の割合で含有する混合液を塗布し、乾燥後、延伸処理と同時に120℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
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