JP4846790B2 - 音像定位装置 - Google Patents

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Description

本発明は、三次元空間の任意の位置に音像を定位させる音像定位装置に関する。
従来の音像定位装置は、図20に示すように、音像を定位させる位置毎に作成された頭部伝達関数を記憶する頭部伝達関数記憶部901と、音像を定位させるための目標位置情報に基づいて頭部伝達関数を選択する頭部伝達関数選択部902と、選択された頭部伝達関数に基づいて音源信号のフィルタ処理を行い、音像定位処理を施された音像定位信号を出力する音像定位処理部903とを備えている。
また、上述した従来の音像定位装置において、入力された音源信号は、設定された目標位置情報に基づいた頭部伝達関数を用いて畳み込まれ、音像定位された音像定位信号としてヘッドホンやスピーカなどの音響再生装置に出力される。音像定位信号が音響再生装置に出力されたとき、図21に示すように、頭部伝達関数H(f)の振幅成分に含まれるピーク(山)の帯域が0dBを超える場合、出力される音像定位信号にクリッピングと呼ばれるひずみが発生することがある。
このため、従来の音像定位装置では、図22に示すように、全周波数帯域のゲインを落し、かつピークとなる周波数帯域が0dBを超えないようにする頭部伝達関数が用いられる。また、他の従来の音像定位装置では、リミッタおよびコンプレッサと呼ばれる音量圧縮手法を用いて、音像定位信号に対しクリッピングを起こさないような処理が施される。
一方、スピーカ等の音響再生装置から出力される音声の音質を制御する装置としては、音量が大きくなるにつれて音質調整の機能を抑圧することにより、音声にクリッピングが発生することを防止できるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平07−059187号公報
しかしながら、上述した音像定位装置では、図22に示すような、ピークが0dBを超えないようにする頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行った場合、出力される音像定位信号の音量が、入力された元の音源信号と比べて著しく小さくなってしまうという問題があった。
また、リミッタおよびコンプレッサ等の手法は、信号を時間軸で非線形に操作する圧縮手法であるため、出力される信号の周波数特性にも非線形な変化を引き起こし、頭部伝達関数の振幅成分のピーク(山)やディップ(谷)といった、音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させてしまうという問題点があった。
また、特許文献1のように、音質調整の機能を抑圧する手段を音像定位装置に応用した場合、頭部伝達関数の振幅成分のピークやディップを小さくしてしまうため、同様に音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させてしまうという問題点があった。
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、音像定位信号の音量低下を抑止すると共にクリッピングの発生を防止し、かつ音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能な音像定位装置を提供するものである。
本発明の音像定位装置は、頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行う音像定位装置であって、音源信号から得られる周波数成分と、目標位置に対応する頭部伝達関数から得られる周波数成分とを比較することにより、特定の周波数帯域によってクリッピングが発生するか否かを判定し、前記クリッピングが発生する場合、前記音源信号の周波数成分または前記頭部伝達関数の周波数成分を補正する周波数成分比較補正部と、前記周波数成分比較補正部によって補正された音源信号と頭部伝達関数を用いて演算処理を行い、音像定位信号を出力する音像定位処理部とを備え、前記周波数成分比較補正部は、前記頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で振幅成分の抑圧処理を行う構成を有している。
この構成により、クリッピングが発生すると判定された場合、頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で、振幅成分の抑圧処理を行うため、音像定位信号の音量低下を抑止すると共にクリッピングの発生を防止し、かつ音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能である。
また、本発明の音像定位装置は、頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行う音像定位装置であって、目標位置に対応する頭部伝達関数を用いて音源信号を演算処理して音像定位信号を出力する音像定位処理部と、前記音像定位信号の特定の周波数帯域によってクリッピングが発生するか否かを判定し、前記クリッピングが発生する場合、前記音像定位信号の周波数成分を補正する周波数成分補正部を備え、前記周波数成分補正部は、前記頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で振幅成分の抑圧処理を行う構成を有している。
この構成により、クリッピングが発生する場合には、頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で、振幅成分の抑圧処理を行うため、音像定位信号の音量低下を抑止すると共にクリッピングの発生を防止し、かつ音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能である。
以上のように本発明は、音像定位信号の音量低下を抑止すると共にクリッピングの発生を防止し、かつ音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能な音像定位装置を提供するものである。
以下、本発明の実施の形態に係る音像定位装置について、図面を参照して説明する。
(本発明の第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る音像定位装置のブロック図である。
図1に示した音像定位装置は、音像を定位させる位置毎に作成された頭部伝達関数を記憶する頭部伝達関数記憶部101と、音像を定位させる目標位置情報に基づいて頭部伝達関数を選択する頭部伝達関数選択部102と、頭部伝達関数の周波数成分の分析を行う周波数成分分析部103と、音源信号を構成する周波数成分の分析を行う周波数成分分析部104と、音像定位処理を施された音像定位信号がクリッピングを起こすかどうかを判定し、クリッピングが発生する場合、頭部伝達関数の周波数成分を補正する周波数成分比較補正部105と、頭部伝達関数に基づいてフィルタ処理を行い、音像定位処理を施された音像定位信号を図示しないヘッドホンやスピーカなどの音響再生装置に出力する音像定位処理部106とを備えている。
なお、頭部伝達関数記憶部101は、音像を定位させたい位置毎に作成された頭部伝達関数を、FIR(Finite Impulse Response)フィルタの係数として予め記憶している。
ここで、頭部伝達関数記憶部101に記憶されている頭部伝達関数を用いて、入力される音源信号が畳み込まれたとき、音源信号と比較して音量の低下が起きない特性を有するものでもよい。つまり、この頭部伝達関数は、図21に示すような、ピークの帯域が0dBを超えるようなものであってもよい。
図1に示した音像定位装置を構成するこれらの構成要素は、集積回路で実現されてもよく、音像定位装置がCPU等のプロセッサで駆動するものであれば、これらの構成要素は、プログラムのモジュールで実現される。
以上のように構成された本発明の第1の実施の形態に係る音像定位装置の動作について以下に説明する。
まず、目標位置情報が設定されたとき、頭部伝達関数選択部102は、頭部伝達関数記憶部101から、設定された目標位置情報に応じて頭部伝達関数を選択し、選択した頭部伝達関数を周波数成分分析部103に出力する。
このとき、目標位置に対応する頭部伝達関数が存在しない場合には、例えば、近接する目標位置の頭部伝達関数を基に、一般的な補間処理等を用いて、目標位置に対応した頭部伝達関数を作成してもよい。
次に、周波数成分分析部103は、出力された頭部伝達関数を、フーリエ変換等の手法を用いて周波数成分に変換し、変換した周波数成分を周波数成分比較補正部105に出力する。
一方、周波数成分分析部104は、入力された音源信号を、フーリエ変換等の手法を用いて、周波数成分に変換し、変換した周波数成分を周波数成分比較補正部105に出力する。
周波数成分比較補正部105は、頭部伝達関数の周波数成分と、音源信号の周波数成分とを比較することにより、特定の周波数帯域によってクリッピングが発生するか否かを判定し、クリッピングが発生する場合には、頭部伝達関数の周波数成分を補正して音像定位処理部106に出力する。
具体的な周波数成分比較補正部105の動作としては、図2に示すように、正規化した音源信号の周波数成分の絶対値を取った振幅成分|S(f)|と、頭部伝達関数の周波数成分の絶対値を取った振幅成分の、正負を逆転した成分−|H(f)|とを比較する。
例えば、全ての周波数帯域において、−|H(f)|>|S(f)|となる場合には、このまま畳み込み演算を行ってもクリッピングは発生しないものと判定し、頭部伝達関数の補正は行わずそのまま音像定位処理部106に処理させる。
また、図3に示すように、−|H(f)|<|S(f)|となる周波数帯域が存在する場合には、この周波数帯域によってクリッピングが発生するものと判定し、この周波数帯域に対し−|H(f)|>|S(f)|となるように、頭部伝達関数を補正して音像定位処理部106に出力することにより、クリッピングの発生を抑えることができる。
このとき、−|H(f)|<|S(f)|となる周波数帯域だけを補正するのではなく、図4に示すように、この周波数帯域を含むピークごとの単位で、その差分であるΔLだけ抑圧するように、頭部伝達関数H(f)を補正することにより、音像定位の成分を劣化させないことが可能となる。
補正の具体的な例としては、図5に示すように、ピークの両端の周波数fl、fuを、再現する方向のHRTFの付随情報としてあらかじめ用意するか、あるいは与えられたHRTFから自動的に算出する。そして、これらの周波数を基にして、クリッピングが発生する周波数成分をΔLだけ抑圧するように、IIRフィルタを構成し、HRTFに適用する。
あるいは、図6に示すように、ピークの中心周波数fcと帯域幅wを、再現する方向のHRTFごとにあらかじめ用意するか、あるいは与えられたHRTFから自動的に算出する。そして、これらの周波数を基にして、クリッピングが発生する周波数成分をΔLだけ抑圧するように、IIRフィルタを構成し、HRTFに適用する。
さらに、本発明者は、頭部伝達関数の振幅成分に現れるピークに対応する周波数帯域の両端部のうち、少なくとも一方の周波数帯域の振幅成分を抑圧することによっても、目標位置に音像を定位させることが可能であることを明らかにしている(特願2004−270316参照)。
従って、図4に示したように、頭部伝達関数H(f)のピークを抑圧するのに加え、例えば、図7に示すように、ピークに対応する周波数帯域の両端部のうち少なくとも一方にあるディップ(谷)を強調するか、あるいはディップを作成するように補正することにより、ピークを抑圧しても、音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能であり、さらにクリッピングの発生を抑えることができる。
この場合の補正の具体的な例としては、図8に示すように、ピークの両端にあるディップの周波数、あるいはディップを作成する周波数をfl、fuとし、再現する方向のHRTFの付随情報としてあらかじめ用意するか、あるいは与えられたHRTFから自動的に算出する。そして、これらの周波数を基にして、クリッピングが発生する周波数成分をΔLだけ抑圧するように、IIRフィルタを構成し、HRTFに適用する。
あるいは、図9に示すように、中心周波数fcと帯域幅wを、ピークの両端にあるディップ、あるいは作成するディップを包含するようにし、再現する方向のHRTFごとにあらかじめ用意するか、あるいは与えられたHRTFから自動的に算出する。そして、これらの周波数を基にして、クリッピングが発生する周波数成分をΔLだけ抑圧するように、IIRフィルタを構成し、HRTFに適用する。
いずれの場合でも、ピークの両端のディップが十分に強調できない場合や、新たなディップが作成できないようであれば、図10に示すように、該当する帯域に対して,IIRフィルタを追加して構成してもよい。
音像定位処理部106は、音源信号の周波数成分と頭部伝達関数の周波数成分とに対し、時間軸の波形での畳み込み演算に相当する、周波数成分の掛け合わせ演算を行い、逆フーリエ変換等の手法を用いて、時間軸の波形に変換した音像定位信号を出力する。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、音源信号と頭部伝達関数との周波数成分を比較し、クリッピングが発生する周波数帯域とその周辺帯域について、ピークあるいはディップごとの単位で頭部伝達関数を補正して音像定位処理を行うことにより、音像定位信号の音量低下を抑止すると共にクリッピングの発生を防止し、かつ音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能である。
なお、本発明の第1の実施の形態において、周波数成分比較補正部105は、頭部伝達関数を補正することにより、クリッピングの発生を抑えていたが、音源信号を補正することによっても、同等の効果を得ることができる。
本発明の第1の実施の形態における他の態様としては、図1で説明した構成に替えて、図11に示すように、頭部伝達関数記憶部111に、FIR(Finite Impulse Response)フィルタの係数ではなく、フーリエ変換等の手法を用いて、周波数成分に変換された頭部伝達関数を予め記憶しておき、頭部伝達関数選択部112は頭部伝達関数記憶部111に記憶された頭部伝達関数を、入力された目標位置情報に応じて選択し出力するようにする。このように構成することによって、図1で説明した頭部伝達関数を周波数分析する手間が省け、より少ない演算量で音像定位を行うことができる。
本発明の第1の実施の形態における他の態様としては、まず、図12に示すように、HRTFを複数のIIRフィルタで構成する。なお、図12においては、バイクワッド(biquad)型IIRフィルタの例を示しているが、他の型のIIRフィルタを用いてもよい。
そして、図1で説明した構成において、頭部伝達関数記憶部101はそれぞれのIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを構成するパラメータ、すなわち中心周波数fc、レベルL、先鋭度Qを保持し、周波数成分分析部103は、頭部伝達関数選択部102によって出力された頭部伝達関数を周波数分析する。
周波数成分比較補正部105は、図2あるいは図3と同様に、頭部伝達関数から得られた周波数成分と、音源信号で得られた周波数成分とを比較し、クリッピングが発生する場合には、図13に示すように、該当するピークを構成するIIRフィルタのレベルLを、クリッピングする周波数成分がΔLだけ抑圧されるように補正する。
このとき、図14に示すように、該当するピークを構成するIIRフィルタのレベルを抑圧するのに加え、その両端にあるディップを強調するようにIIRフィルタのレベルを補正するか、あるいは新たにディップを作成するようにIIRフィルタを追加で構成してもよい。
音像定位処理部106は、補正されたIIRフィルタのパラメータを基に、音源信号に対してフィルタ処理を行い、音像定位信号を出力する。
このように構成することによって、FIRフィルタを用いる場合に比べて、より少ない演算量で音像定位処理を行うことができる。
(本発明の第2の実施の形態)
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る音像定位装置のブロック図である。
図15に示した音像定位装置は、音像を定位させる位置毎に作成された頭部伝達関数を記憶する頭部伝達関数記憶部101と、音像を定位させる目標位置情報に基づいて頭部伝達関数を選択する頭部伝達関数選択部102と、入力された音源信号に対し頭部伝達関数に基づいてフィルタ処理を行い、音像定位処理を施す音像定位処理部201、音像定位処理部201で演算処理された音像定位信号を構成する周波数成分の分析を行う周波数成分分析部202と、音像定位信号にクリッピングが発生する場合、周波数成分を補正する周波数成分補正部203とを備えている。
なお、本発明の第2の実施の形態に係る音像定位装置を構成する構成要素のうち、本発明の第1の実施の形態に係る音像定位装置を構成する構成要素と同一のものには、同一の符号を付している。
以上のように構成された本発明の第2の実施の形態に係る音像定位装置の動作について以下に説明する。
図15に示した音像定位処理部201は、入力された音源信号に、頭部伝達関数選択部102によって出力された頭部伝達関数を用いて畳み込み演算し、演算処理された音像定位信号を出力信号として周波数成分分析部202に出力する。なお、出力信号がクリッピングを起こさないようにする必要があるため、出力信号の値の範囲を広く取っておく。例えば、音像定位処理部201がディジタル信号処理を行う場合、一例としてその出力信号が16ビット以上になるとき、出力信号を16ビット以上の整数で表すか、あるいは、浮動小数点等で表す。
周波数成分分析部202は、音像定位処理部201で演算処理された音像定位信号を、フーリエ変換等の手法を用いて周波数成分に変換して周波数成分補正部203に出力する。
周波数成分補正部203は、特定の周波数帯域によってクリッピングが発生するか否かを判定し、クリッピングが発生すると判定された場合には、本発明の第1の実施の形態で説明した周波数成分比較補正部105と同様に、例えば頭部伝達関数のピークの両端の周波数をあらかじめ用意しておくか、あるいは自動的に算出しておくことにより、頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で音像定位信号の補正を行い、逆フーリエ変換等の手法を用いて、時間軸の波形に変換した音像定位信号を出力する。
クリッピング判定の具体的な例としては、図16に示すように、音像定位信号の周波数成分の絶対値を取った振幅成分|P(f)|が、全ての周波数帯域において0dBを超えない場合は、クリッピングは発生しないものと判定する。
また、図17に示すように、|P(f)|が0dBを越える周波数帯域が存在する場合には、この周波数帯域によってクリッピングが発生するものと判定する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態では、音源信号に頭部伝達関数を畳み込んだ信号に対し、クリッピングが発生する周波数帯域とその周辺帯域に対応する振幅成分のみを抑圧して出力することにより、音像定位信号の音量低下を抑え、クリッピングも発生せず、なおかつ、音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能である。
図18に示すように、本発明の第2の実施の形態における他の態様としては、本発明の第2の実施の形態で説明した音像定位処理部201および周波数成分分析部202の替わりに、周波数成分分析部103、104と音像定位処理部211とを設け、周波数成分に変換された音源信号と頭部伝達関数とに対し、時間軸の波形での畳み込み演算に相当する、周波数成分の掛け合わせ演算を行うようにする。
さらに、図19に示すように、本発明の第2の実施の形態における他の態様としては、図18に示した頭部伝達関数記憶部101、頭部伝達関数選択部102と周波数成分分析部103の替わりに頭部伝達関数記憶部111と頭部伝達関数選択部112を設け、予め周波数成分に変換された頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行うようにする。
なお、上述した各実施の形態において、クリッピングが発生するかどうかを判定するための周波数帯域が、限定できる場合には、全帯域にわたって判定する必要はなく、該当する周波数帯域についてのみ判定を行っても、同等の効果を得ることができる。
例えば、図21に示すように、頭部伝達関数のゲインが0dBを超えない周波数帯域では、クリッピングを引き起こす可能性はないので、クリッピングが発生するか否かを判定するための周波数帯域を、頭部伝達関数のゲインが0dBを超える周波数帯域だけに限定しても、同等の効果を得ることができ、さらに、音像定位に関わる演算量を減らすことも可能となる。
また、周波数成分分析部103が、頭部伝達関数や音源信号を周波数成分に変換する際の時間長は、入力される音源信号の時間長と同じとしてもよいし、それよりも短い時間長にしてもよい。
また、従来の音像定位装置に用いられているリミッタとコンプレッサを併用する場合には、上述の各実施形態において、クリッピングが発生する周波数帯域に対応する振幅成分の抑圧量は若干少なめにしてもよい。このようにすれば、リミッタとコンプレッサの処理によって引き起こされる周波数成分の非線形な変化を低減させることができ、音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能である。
また、ブラウエルトによる「空間音響」(鹿島出版会)によると、聴覚事象の一つである「方向決定帯域」と、音像定位の手がかりとの間に深い関連があることが明らかになっている。この知見に基づき、クリッピングの発生するピークが、目標方向の方向決定帯域と一致する場合としない場合で、処理の内容を変えてもよい。
例えば、目標方向の方向決定帯域と一致する場合には、そのピークは音像定位のための重要な成分であるので、ピークを抑圧するのに加え、その両端部のうち少なくとも一方にあるディップ(谷)を強調するか、あるいはディップを作成するように補正してもよい。一方、目標方向の方向決定帯域と一致しない場合には、そのピークは音像定位のための重要な成分ではないので、ピークを抑圧するだけの補正としてもよい。
以上、本発明の第1および第2の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態に係る音像定位装置は、頭部伝達関数記憶部101で頭部伝達関数を周波数成分のデータとして記憶しているため、頭部伝達関数の周波数分析を行う処理を省き、より少ない演算量で音像定位を実現することができる。
さらに、本発明の実施の形態に係る音像定位装置は、頭部伝達関数の周波数成分に対応する振幅成分が、0dBなどの所定の大きさを超える周波数帯域についてのみ、クリッピングが発生するか否かを判定するため、クリッピングが発生するか否かを判定するための周波数帯域を限定することができ、より少ない演算量で音像定位を実現することができる。
以上のように、本発明は、音像定位信号の音量低下を抑止すると共にクリッピングの発生を防止し、かつ音像定位信号に含まれる音像定位のための成分を劣化させないことが可能であるという効果を有し、音像定位処理を行う携帯電話機、音声再生装置、音声記録装置、情報端末装置、ゲーム機、会議装置、通信および放送システムなど、音声再生等を行う装置全般において有用である。
本発明の第1の実施の形態に係る音像定位装置のブロック図 音源信号と頭部伝達関数の比較分析を行う例を示す図 音源信号と頭部伝達関数の比較分析を行う例を示す図 頭部伝達関数の補正を行う例を示す図 頭部伝達関数の補正を行うためのIIRフィルタの構成例を示す図 頭部伝達関数の補正を行うためのIIRフィルタの構成例を示す図 頭部伝達関数の補正を行う例を示す図 頭部伝達関数の補正を行うためのIIRフィルタの構成例を示す図 頭部伝達関数の補正を行うためのIIRフィルタの構成例を示す図 頭部伝達関数の補正を行うためのIIRフィルタの構成例を示す図 本発明の第1の実施の形態における他の態様に係る音像定位装置のブロック図 バイクワッド型IIRフィルタの構成例を示す図 バイクワッド型IIRフィルタの構成例を示す図 バイクワッド型IIRフィルタの構成例を示す図 本発明の第2の実施の形態に係る音像定位装置のブロック図 本発明の第2の実施の形態におけるクリッピング判定の例を示す図 本発明の第2の実施の形態におけるクリッピング判定の例を示す図 本発明の第2の実施の形態における第1の他の態様に係る音像定位装置のブロック図 本発明の第2の実施の形態における第2の他の態様に係る音像定位装置のブロック図 従来の音像定位装置のブロック図 頭部伝達関数においてクリッピングを引き起こす可能性がある帯域を示す図 クリッピングの発生を抑える頭部伝達関数の例を示す図
符号の説明
101 頭部伝達関数記憶部
102 頭部伝達関数選択部
103 周波数成分分析部
104 周波数成分分析部
105 周波数成分比較補正部
106 音像定位処理部
111 頭部伝達関数記憶部
112 頭部伝達関数選択部
201 音像定位処理部
202 周波数成分分析部
203 周波数成分補正部
211 音像定位処理部
901 頭部伝達関数記憶部
902 頭部伝達関数選択部
903 音像定位処理部

Claims (8)

  1. 頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行う音像定位装置であって、
    音源信号から得られる周波数成分と、目標位置に対応する頭部伝達関数から得られる周波数成分とを比較することにより、特定の周波数帯域によってクリッピングが発生するか否かを判定し、前記クリッピングが発生する場合、前記音源信号の周波数成分または前記頭部伝達関数の周波数成分を補正する周波数成分比較補正部と、
    前記周波数成分比較補正部によって補正された音源信号と頭部伝達関数を用いて演算処理を行い、音像定位信号を出力する音像定位処理部とを備え、
    前記周波数成分比較補正部は、前記頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で振幅成分の抑圧処理を行うことを特徴とする音像定位装置。
  2. 前記周波数成分比較補正部は、ピーク単位で振幅成分を抑圧するととともに、ピークの周辺帯域に新たなディップを形成するよう、前記音源信号の周波数成分または前記頭部伝達関数の周波数成分を補正することを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
  3. 頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行う音像定位装置であって、
    目標位置に対応する頭部伝達関数を用いて音源信号を演算処理して音像定位信号を出力する音像定位処理部と、
    前記音像定位信号の特定の周波数帯域によってクリッピングが発生するか否かを判定し、前記クリッピングが発生する場合、前記音像定位信号の周波数成分を補正する周波数成分補正部を備え、
    前記周波数成分補正部は、前記頭部伝達関数のピークあるいはディップごとの単位で振幅成分の抑圧処理を行うことを特徴とする音像定位装置。
  4. 前記周波数成分補正部は、ピーク単位で振幅成分を抑圧するととともに、ピークの周辺帯域に新たなディップを形成するよう、前記音像定位信号の周波数成分を補正することを特徴とする請求項3に記載の音像定位装置。
  5. 前記頭部伝達関数を周波数成分のデータとして記憶する頭部伝達関数記憶部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の音像定位装置。
  6. 前記頭部伝達関数の振幅成分が所定の大きさを超える周波数帯域についてのみ、前記クリッピングが発生するか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の音像定位装置。
  7. 前記所定の大きさは、0デシベルであることを特徴とする請求項6に記載の音像定位装置。
  8. 前記クリッピングが発生する周波数帯域が方向決定帯域であるか否かによって、振幅成分の抑圧の方法を変更することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の音像定位装置。
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