以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。ここでは、この発明の燃料電池システム100を、輸送機器の一例である自動二輪車10に搭載した場合について説明する。
まず、自動二輪車10について説明する。この発明の実施の形態における左右、前後、上下とは、二輪車10のシートにドライバがそのハンドル24に向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
図1〜図7を参照して、自動二輪車10は車体11を含み、車体11は車体フレーム12を有する。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から後方へ斜め下方に延びる縦断面I字型のフロントフレーム16と、フロントフレーム16の後端部に連結されかつ後方へ斜め上方に立ち上がるリヤフレーム18と、リヤフレーム18の上端部に取り付けられるシートレール20とを備えている。フロントフレーム16の後端部はリヤフレーム18の中央部よりもやや下端部寄りの位置に接続され、フロントフレーム16およびリヤフレーム18全体で側面視略Y字状を呈している。
フロントフレーム16は、上下方向に幅を有して後方へ斜め下方に延びかつ左右方向に対して直交する板状部材16aと、それぞれ板状部材16aの上端縁および下端縁に形成されかつ後方へ斜め下方に延び左右方向に幅を有するフランジ部16bおよび16cと、板状部材16aの両表面に突設される補強リブ16dと、後端部に設けられたとえばボルト等によってリヤフレーム18が連結される連結部16eとを備えている。補強リブ16dは、フランジ部16bおよび16cと共に板状部材16aの両表面を区画して、後述する燃料電池システム100の構成部材を収納する収納スペースを形成している。
一方、リヤフレーム18は、それぞれ後方へ斜め上方に延び前後方向に幅を有しフロントフレーム16の連結部16eを挟むように配置される板状部材18aおよび18bと、板状部材18aと18bとを連結する板状部材(図示せず)とを備えている。
ヘッドパイプ14内には、図1に示すように、車体方向変更用のステアリング軸22が回動自在に挿通されている。ステアリング軸22の上端には、ハンドル24が固定されたハンドル支持部26が取り付けられており、ハンドル24の両端にはグリップ28が取り付けられている。右側のグリップ28は回動可能なスロットルグリップを構成している。
ハンドル支持部26のハンドル24の前方には表示操作部30が配置されている。表示操作部30は、電動モータ60(後述)の各種データを計測表示するためのメータ30a、走行状態等の各種情報提供用のたとえば液晶ディスプレイ等で構成された表示部30b、および各種情報入力用の入力部30c等が一体化されたものである。ハンドル支持部26における表示操作部30の下方には、ヘッドランプ32が固定されており、ヘッドランプ32の左右両側には、フラッシャランプ34がそれぞれ設けられている。
また、ステアリング軸22の下端には左右一対のフロントフォーク36が取り付けられており、フロントフォーク36それぞれの下端には、前輪38が前車軸40を介して取り付けられている。前輪38は、フロントフォーク36によって緩衝懸架された状態で前車軸40によって回転自在に軸支されている。
一方、リヤフレーム18の後端部には、フレーム状のシートレール20が取り付けられている。シートレール20は、リヤフレーム18の上端部にたとえば溶接によって固設され、略前後方向に配設されている。シートレール20上には図示しないシートが開閉自在に設けられている。シートレール20の後端部には取り付けブラケット42が固設されており、取り付けブラケット42にはテールランプ44および左右一対のフラッシャランプ46がそれぞれ取り付けられている。
また、リヤフレーム18の下端部には、スイングアーム(リヤアーム)48がピボット軸50を介して揺動自在に支持されており、スイングアーム48の後端部48aには電動モータ60(後述)を介して駆動輪である後輪52が回転自在に支持されており、スイングアーム48および後輪52は、図示しないリヤクッションによってリヤフレーム18に対して緩衝懸架されている。
さらに、リヤフレーム18の下端部の前側には、リヤフレーム18から左右方向に突出するようにフットレスト取付用バー54が固定され、フットレスト取付用バー54には図示しないフットレストが取り付けられる。フットレスト取付用バー54の後方には、メインスタンド56が回動可能にスイングアーム48に支持されており、メインスタンド56は、リターンスプリング58によって閉じ側に付勢されている。
この実施形態では、スイングアーム48には、後輪52に連結されかつ後輪52を回転駆動させるためのたとえばアキシャルギャップ型の電動モータ60と、電動モータ60に電気的に接続される駆動ユニット62とが内蔵されている。駆動ユニット62は、電動モータ60の回転駆動を制御するためのコントローラ64を含む。
このような自動二輪車10の車体11には、車体フレーム12に沿って燃料電池システム100が取り付けられている。燃料電池システム100は、電動モータ60やその他の構成部材を駆動するための電気エネルギーを生成する。
以下、燃料電池システム100について説明する。
燃料電池システム100は、メタノール(メタノール水溶液)を改質せずにダイレクトに発電に利用する直接メタノール型燃料電池システムである。
燃料電池システム100は、フロントフレーム16の下方に配置される燃料電池セルスタック(以下、単にセルスタックという)102を含む。
図8および図9に示すように、セルスタック102は、メタノールに基づく水素イオンと酸素との電気化学反応によって電気エネルギーを生成することができる燃料電池(燃料電池セル)104を、セパレータ106を挟んで複数個積層(スタック)して構成されている。セルスタック102を構成する各燃料電池セル104は、固体高分子膜等から構成される電解質(電解質膜)104aと、電解質104aを挟んで互いに対向するアノード(燃料極)104bおよびカソード(空気極)104cとを含む。アノード104bおよびカソード104cはそれぞれ、電解質104a側に設けられる白金触媒層を含む。
図4等に示すように、セルスタック102はスキッド108上に載せられ、スキッド108はフロントフレーム16のフランジ部16cから吊されるステースタック110によって支持されている。
図6に示すように、フロントフレーム16の下方でありかつセルスタック102の上方には、水溶液用のラジエータ112と気液分離用のラジエータ114とが配置されている。ラジエータ112と114とは一体的に構成され、その前面が車両の前方やや下向きに配置され、前面に対して直交するように設けられる複数の板状のフィン(図示せず)を有する。このようなラジエータ112および114は、走行時に風を十分に受けることができる。
図6等に示すように、ラジエータ112は、旋回するように形成されるラジエータパイプ116を含む。ラジエータパイプ116は、ステンレス等からなる直線状パイプとU字状の継手パイプとを溶接することによって、入口118a(図5参照)から出口118b(図3参照)までの1本の連続したパイプに形成されている。ラジエータ112の裏面側にはラジエータパイプ116と対向するようにラジエータ冷却用のファン120が設けられている。
同様に、ラジエータ114は、それぞれ蛇行するように形成される2本のラジエータパイプ122を含む。各ラジエータパイプ122は、ステンレス等からなる直線状パイプとU字状の継手パイプとを溶接することによって、入口124a(図3参照)から出口124b(図3参照)までの1本の連続したパイプに形成されている。ラジエータ114の裏面側にはラジエータパイプ122と対向するようにラジエータ冷却用のファン126が設けられている。
図1〜図7に戻り主に図3を参照して、フロントフレーム16の連結部16eの後側には、上方から順に燃料タンク128、水溶液タンク130および水タンク132が配置されている。燃料タンク128、水溶液タンク130および水タンク132は、たとえばPE(ポリエチレン)ブロー成型によって得られる。
燃料タンク128は、シートレール20の下側に配置され、シートレール20の後端部に取り付けられている。燃料タンク128は、セルスタック102の電気化学反応の燃料となる高濃度(たとえば、メタノールを約50wt%含む)のメタノール燃料(高濃度メタノール水溶液)を収容している。燃料タンク128はその上面に蓋128aを備え、蓋128aを取り外してメタノール燃料が供給される。
また、水溶液タンク130は、燃料タンク128の下側に設けられ、リヤフレーム18に取り付けられている。水溶液タンク130は、燃料タンク128からのメタノール燃料をセルスタック102の電気化学反応に適した濃度(たとえば、メタノールを約3wt%含む)に希釈したメタノール水溶液を収容している。つまり、水溶液タンク130は、水溶液ポンプ146(後述)によってセルスタック102に向けて送り出すべきメタノール水溶液を収容している。
燃料タンク128にはレベルセンサ129が装着され、燃料タンク128内のメタノール燃料の液面の高さが検出される。水溶液タンク130にはレベルセンサ131が装着され、水溶液タンク130内のメタノール水溶液の液面の高さが検出される。レベルセンサ129,131で液面高さを検出することによって、タンク内の液量を検出できる。水溶液タンク130内の液面は、たとえば図4においてAで示す範囲内にコントロールされる。
水タンク132は、リヤフレーム18の板状部材18aおよび18b間でありかつセルスタック102の後側に配置されている。水タンク132にはレベルセンサ133が装着され、水タンク132内の水面の高さが検出される。
また、燃料タンク128の前側でありかつフロントフレーム16のフランジ部16bの上側には、二次電池134が設けられている。二次電池134はリヤフレーム18の板状部材(図示せず)の上面に配置される。二次電池134は、セルスタック102で生成された電気エネルギーを蓄え、コントローラ156(後述)の指令に応じて電気エネルギーを対応する電気構成部材に供給する。たとえば、二次電池134は、補機類や駆動ユニット62に電気エネルギーを供給する。
二次電池134の上側かつシートレール20の下側には、燃料ポンプ136、検出用バルブ138が配置されている。また、水溶液タンク130の上側にはキャッチタンク140が配置されている。
キャッチタンク140はその上面に蓋140aを備え、たとえば燃料電池システム100を一度も起動したことがない状態(水溶液タンク130が空の状態)において、蓋140aを取り外してメタノール水溶液が供給される。キャッチタンク140は、たとえばPE(ポリエチレン)ブロー成型によって得られる。
また、フロントフレーム16とセルスタック102とラジエータ112,114とによって囲まれた空間には、気体に含まれる塵等の異物を除去するためのエアフィルタ142が配置され、エアフィルタ142の後方斜め下側には水溶液フィルタ144が配置されている。
また、図4に示すように、フロントフレーム16の左側の収納スペースには、水溶液ポンプ146およびエアポンプ148が収納されている。エアポンプ148の左側にはエアチャンバ150が配置されている。水溶液ポンプ146の駆動によってセルスタック102に向けてメタノール水溶液が送り出される。
さらに、図5に示すように、フロントフレーム16の右側の収納スペースには、前方から順にメインスイッチ152、DC−DCコンバータ154、コントローラ156、防錆用バルブ158および水ポンプ160が配置される。なお、メインスイッチ152はフロントフレーム16の収納スペースを右側から左側に貫通するように設けられている。セルスタック102の前面にはホーン162が設けられている。また、DC−DCコンバータ154は電圧を24Vから12Vに変換し、変換された12Vの電圧によってファン120,126が駆動される。
このように配置される燃料電池システム100の配管について、図4〜図7および図10を参照して説明する。
燃料タンク128と燃料ポンプ136とはパイプP1によって連通され、燃料ポンプ136と水溶液タンク130とはパイプP2によって連通されている。パイプP1は、燃料タンク128の左側面下端部と燃料ポンプ136の左側面下端部とを結び、パイプP2は、燃料ポンプ136の左側面下端部と水溶液タンク130の左側面下端部とを結ぶ。燃料ポンプ136を駆動させることによって、燃料タンク128内のメタノール燃料がパイプP1,P2を介して水溶液タンク130に与えられる。
水溶液タンク130と水溶液ポンプ146とはパイプP3によって連通され、水溶液ポンプ146と水溶液フィルタ144とはパイプP4によって連通され、水溶液フィルタ144とセルスタック102とはパイプP5によって連通されている。パイプP3は、水溶液タンク130の左側面下隅部と水溶液ポンプ146の後部とを結び、パイプP4は、水溶液ポンプ146の後部と水溶液フィルタ144の左側面とを結び、パイプP5は、水溶液フィルタ144の右側面とセルスタック102の前面右下隅部に位置するアノード入口I1とを結ぶ。水溶液ポンプ146を駆動させることによって、水溶液タンク130からのメタノール水溶液が、パイプP3側からパイプP4側へと送り出され、水溶液フィルタ144で不純物が除去された後、パイプP5を介してセルスタック102に与えられる。この実施形態ではパイプP4およびP5によって水溶液ポンプ146が送り出すメタノール水溶液をセルスタック102の各燃料電池104に案内するパイプが構成される。
セルスタック102と水溶液用のラジエータ112とはパイプP6によって連通され、ラジエータ112と水溶液タンク130とはパイプP7によって連通されている。パイプP6は、セルスタック102の後面左上隅部に位置するアノード出口I2とラジエータ112の下面右側端部から引き出されるラジエータパイプ116の入口118a(図5参照)とを結び、パイプP7は、ラジエータ112の下面左側端部からやや中央寄りの位置から引き出されるラジエータパイプ116の出口118b(図3参照)と水溶液タンク130の左側面上隅部とを結ぶ。セルスタック102から排出される未反応メタノール水溶液および二酸化炭素はパイプP6を介してラジエータ112に与えられ温度が下げられて、パイプP7を介して水溶液タンク130に戻される。これによって水溶液タンク130内のメタノール水溶液の温度を下げることができる。
上述したパイプP1〜P7は主として燃料の流路となる。
また、エアフィルタ142とエアチャンバ150とはパイプP8によって連通され、エアチャンバ150とエアポンプ148とはパイプP9によって連通され、エアポンプ148と防錆用バルブ158とはパイプP10によって接続され、防錆用バルブ158とセルスタック102とはパイプP11によって接続されている。パイプP8は、エアフィルタ142の後部とエアチャンバ150の中央部よりもやや前方寄りの位置とを結び、パイプP9は、エアチャンバ150の中央部の下側とエアポンプ148の後部とを結び、パイプP10は、フロントフレーム16の板状部材16aの左側に位置するエアポンプ148と板状部材16aの右側に位置する防錆用バルブ158とを結び、パイプP11は、防錆用バルブ158とセルスタック102の後面右上端部に位置するカソード入口I3とを結ぶ。燃料電池システム100の運転時には防錆用バルブ158を開いておき、その状態でエアポンプ148を駆動させることによって、酸素を含む空気が外部から吸入される。吸入された空気は、エアフィルタ142で浄化された後、パイプP8、エアチャンバ150およびパイプP9を介してエアポンプ148に流入し、さらに、パイプP10、防錆用バルブ158およびパイプP11を介してセルスタック102に与えられる。防錆用バルブ158は、燃料電池システム100の停止時には閉じられており、エアポンプ148への水蒸気の逆流を防ぎエアポンプ148の錆を防止する。
セルスタック102と気液分離用のラジエータ114とは2本のパイプP12によって連通され、ラジエータ114と水タンク132とは2本のパイプP13によって連通され、水タンク132にはパイプ(排気管)P14が設けられている。各パイプP12は、セルスタック102の前面左下隅部に位置するカソード出口I4とラジエータ114の下面左側端部から引き出される各ラジエータパイプ122の入口124a(図3参照)とを結び、各パイプP13は、ラジエータ114の下面左側端部からやや中央寄りの位置から引き出される各ラジエータパイプ122の出口124b(図3参照)と水タンク132の前面上部とを結び、パイプP14は、水タンク132の後面上部に接続され、一旦上昇しその後下降するようにくの字状に形成されている。セルスタック102のカソード出口I4から排出される水分(水および水蒸気)や二酸化炭素を含む排気は、パイプP12を介してラジエータ114に与えられ、水蒸気が液化される。ラジエータ114からの排気は、パイプP13を介して水と共に水タンク132に与えられ、パイプP14を介して外部に排出される。
上述したパイプP8〜P14は、主として排気の流路となる。
さらに、水タンク132と水ポンプ160とはパイプP15によって連通され、水ポンプ160と水溶液タンク130とはパイプP16によって連通されている。パイプP15は、水タンク132の右側面下部と水ポンプ160の中央部とを結び、パイプP16は、水ポンプ160の中央部と水溶液タンク130の左側面上隅部とを結ぶ。水ポンプ160を駆動させることによって、水タンク132内の水がパイプP15,16を介して水溶液タンク130に戻される。
上述したパイプP15,16は水の流路となる。
また、パイプP4には、水溶液ポンプ146によって送り出されパイプP4を流れるメタノール水溶液の一部が流入するように、パイプP17が接続される。図4に示すように、パイプP17には、パイプP17内でのメタノール濃度を検出するための超音波センサ164が取り付けられている。超音波センサ164は、流入したメタノール水溶液のメタノール濃度(メタノール水溶液におけるメタノールの割合)に応じて超音波の伝播速度が変化することを利用してパイプP17内のメタノール水溶液のメタノール濃度を検出するために用いられる。
図4に示すように、超音波センサ164は、超音波を発生させる発信部164aと超音波を検出する受信部164bとを有する。発信部164aは、パイプP4に介挿される。発信部164aの分岐口165にはパイプP17の始端が接続され、パイプP17内には分岐口165を介してメタノール水溶液が導入される。受信部164bは、パイプP17の終端に接続され二次電池134の左側面に配置される。超音波センサ164では、発信部164aで超音波を発生させ、受信部164bで超音波を受信して、発信部164aでの超音波の発生開始から受信部164bでの超音波の受信までの時間によって得られる超音波の伝播速度を検出し、その伝播速度を電圧値に変換して物理的な濃度情報とする。コントローラ156は、その濃度情報に基づいて、パイプP17内のメタノール水溶液のメタノール濃度を検出する。
受信部164bと検出用バルブ138とはパイプP18によって連通されている。また、検出用バルブ138と水溶液タンク130とはパイプP19によって連通されている。パイプP18は、受信部164bの上面と検出用バルブ138の左側面とを結び、パイプP19は、検出用バルブ138の右側面と水溶液タンク130の上面とを結ぶ。
上述したパイプP17〜P19は主として濃度検出用の流路となる。
さらに、水溶液タンク130とキャッチタンク140とはパイプP20によって連通され、キャッチタンク140と水溶液タンク130とはパイプP21によって連通され、キャッチタンク140とエアチャンバ150とはパイプP22によって連通されている。パイプP20は、水溶液タンク130の左側面上隅部とキャッチタンク140の左側面上隅部とを結び、パイプP21は、キャッチタンク140の下端部と水溶液タンク130の左側面下隅部とを結び、パイプP22は、キャッチタンク140の左側面上部寄りの位置とエアチャンバ150の上端面とを結ぶ。水溶液タンク130内にある気体(主に、二酸化炭素、気化したメタノールおよび水蒸気)は、パイプP20を介してキャッチタンク140に与えられる。気化したメタノールと水蒸気とはキャッチタンク140で冷却、液化された後、パイプP21を介して水溶液タンク130に戻される。キャッチタンク140内の気体(二酸化炭素、液化されなかったメタノールおよび水蒸気)は、パイプP22を介してエアチャンバ150に与えられる。
上述したパイプP20〜P22は主として燃料処理用の流路となる。
なお、図10に示すように、超音波センサ164の受信部164bには、超音波センサ164を通るメタノール水溶液の温度を検出するための第1温度センサ166が設けられている。また、セルスタック102のアノード入口I1付近には、セルスタック102に供給されたメタノール水溶液の濃度に対応する濃度情報をメタノール水溶液の電気化学的特性を利用して検出するための電圧センサ168とセルスタック102に供給されたメタノール水溶液の温度を検出するための第2温度センサ170とが設けられている。さらに、エアフィルタ142付近には、外気温度を検出するための外気温度センサ171が設けられている。電圧センサ168は、燃料電池(燃料電池セル)104の開回路電圧(Open Circuit Voltage)を検出し、その電圧値を電気化学的な濃度情報とする。
このような燃料電池システム100の電気的構成について、図11を参照して説明する。
燃料電池システム100のコントローラ156は、必要な演算を行い燃料電池システム100の動作を制御するためのCPU172、CPU172にクロックを与えるクロック回路174、燃料電池システム100の動作を制御するためのプログラムやデータおよび演算データ等を格納するための、たとえばEEPROMからなるメモリ176、燃料電池システム100の誤動作を防ぐためのリセットIC178、外部機器と接続するためのインターフェイス回路180、自動二輪車10を駆動する電動モータ60にセルスタック102を接続するための電気回路182における電圧を検出するための電圧検出回路184、燃料電池104ひいてはセルスタック102を流れる電流を検出するための電流検出回路186、電気回路182を開閉するためのON/OFF回路188、電気回路182の過電圧を防止するための電圧保護回路190、電気回路182に設けられるダイオード192、および電気回路182に所定の電圧を供給するための電源回路194を含む。
このようなコントローラ156のCPU172には、超音波センサ164、電圧センサ168、第1温度センサ166、第2温度センサ170および外気温度センサ171からの検出信号、ならびに電流検出回路186からの電流検出値が入力される。また、CPU172には、転倒の有無を検知する転倒スイッチ196からの検知信号や、電源をオンオフするためのメインスイッチ152からの入力信号や、各種設定や情報入力のための入力部30cからの信号が与えられる。さらに、CPU172には、レベルセンサ129,131および133からの検出信号も与えられる。
記憶手段であるメモリ176には、図13に示す動作を実行するためのプログラムや演算データ等の他、超音波センサ164によって得られたメタノール水溶液の物理的な濃度情報(超音波伝播速度に対応する電圧)を濃度に変換するための変換情報、電圧センサ168によって得られたメタノール水溶液の電気化学的な濃度情報(燃料電池104の開回路電圧)を濃度に変換するための変換情報が格納される。これらの変換情報は、たとえば、センサの出力情報とそれに対応する濃度との対応関係を示すテーブルデータである。
さらに、メモリ176には、電流検出回路186によって得られた電流をCPU172によって積算して得られた値(電流積算値)からなる濃度情報に基づいて、燃料ポンプ136の通電時間(メタノール燃料投入量)を求めるための変換情報が、たとえばテーブルデータとして格納される。また、メモリ176にはメタノール水溶液の目標濃度を示すデータが格納される。
また、CPU172によって、燃料ポンプ136、水溶液ポンプ146、エアポンプ148、水ポンプ160、冷却用ファン120,126、検出用バルブ138および防錆用バルブ158等の補機類が制御される。さらに、CPU172によって、各種情報を表示し自動二輪車の搭乗者に各種情報を報知するための表示部30bが制御される。
また、セルスタック102には二次電池134および駆動ユニット62が接続される。二次電池134および駆動ユニット62は電動モータ60に接続される。二次電池134は、セルスタック102からの出力を補完するものであり、セルスタック102からの電気エネルギーによって充電され、その放電によって電動モータ60や補機類に電気エネルギーを与える。
電動モータ60には、電動モータ60の各種データを計測するためのメータ30aが接続され、メータ30aによって計測されたデータや電動モータ60の状況は、インターフェイス回路198を介してCPU172に与えられる。
この実施形態では、電圧センサ168が第1濃度検出手段に相当し、電流検出回路186およびCPU172が第2濃度検出手段に相当する。パイプP1,P2および燃料ポンプ136を含む燃料供給手段、パイプP15,P16および水ポンプ160を含む水供給手段、ならびにCPU172が、濃度調整手段に相当する。なお、燃料供給手段は少なくとも燃料ポンプ136を含んでいればよく、水供給手段は少なくとも水ポンプ160を含んでいればよい。
ついで、燃料電池システム100の運転時の主要動作について説明する。
燃料電池システム100は、メインスイッチ152がオンされることを契機として、水溶液ポンプ146やエアポンプ148等の補機類を駆動し、運転を開始する。
水溶液ポンプ146の駆動によって、水溶液タンク130に収容されるメタノール水溶液が、パイプP3側からパイプP4側へと送り出され、水溶液フィルタ144に供給される。そして、水溶液フィルタ144で不純物等が除去されたメタノール水溶液は、パイプP5、アノード入口I1を介してセルスタック102を構成する各燃料電池セル104のアノード104bにダイレクトに供給される。
一方、エアポンプ148の駆動によってエアフィルタ142から吸入された空気(エア)は、パイプP8を介してエアチャンバ150に流入することによって消音される。そして、吸入された空気およびエアチャンバ150に与えられたキャッチタンク140からの気体が、パイプP9〜P11、カソード入口I3を介してセルスタック102を構成する各燃料電池セル104のカソード104cに供給される。
各燃料電池セル104のアノード104bでは、供給されたメタノール水溶液におけるメタノールと水とが化学反応し、二酸化炭素および水素イオンが生成される。生成された水素イオンは、電解質104aを介してカソード104cに流入し、そのカソード104c側に供給された空気中の酸素と電気化学反応して水(水蒸気)および電気エネルギーが生成される。つまり、セルスタック102において発電が行われる。生成された電気エネルギーは、二次電池134に送られて蓄えられると共に、自動二輪車10の走行駆動等に利用される。
一方、各燃料電池セル104のアノード104bで生成された二酸化炭素および未反応メタノール水溶液は、上記電気化学反応によって発生する熱によって温度上昇し(たとえば約65℃〜70℃となる)、未反応メタノール水溶液の一部は気化される。二酸化炭素および未反応メタノール水溶液は、セルスタック102のアノード出口I2を介して水溶液用のラジエータ112内に流入し、ラジエータパイプ116を流れる間にファン120によって冷却される(たとえば約40℃となる)。冷却された二酸化炭素および未反応メタノール水溶液は、パイプP7を介して水溶液タンク130に戻される。
一方、各燃料電池セル104のカソード104cで生成された水蒸気の大部分は液化して水となってセルスタック102のカソード出口I4から排出されるが、飽和水蒸気分はガス状態で排出される。カソード出口I4から排出された水蒸気の一部は、ラジエータ114で冷却され露点を下げることによって液化される。ラジエータ114による水蒸気の液化動作は、ファン126を動作させることによって行われる。カソード出口I4からの水分(水および水蒸気)は未反応の空気と共にパイプP12,ラジエータ114およびパイプP13を介して水タンク132に与えられる。
また、各燃料電池セル104のカソード104cでは、キャッチタンク140からの気化したメタノールおよびクロスオーバーによってカソードに移動したメタノールが白金触媒層で酸素と反応して無害な水分と二酸化炭素とに分解される。メタノールから分解された水分と二酸化炭素とは、カソード出口I4から排出されラジエータ114を介して水タンク132に与えられる。さらに、水のクロスオーバーによって各燃料電池セル104のカソード104cに移動した水分が、カソード出口I4から排出されラジエータ114を介して水タンク132に与えられる。
水タンク132に回収された水は、水ポンプ160の駆動によってパイプP15,P16を介して水溶液タンク130に適宜還流され、メタノール水溶液の水として利用される。
運転中の燃料電池システム100では、各燃料電池セル104の劣化を防ぎつつ各燃料電池セル104に効率よく発電させるために、メタノール水溶液の濃度検出処理が定期的に実行される。そして、その検出結果に基づいてセルスタック102に供給すべきメタノール水溶液のメタノール濃度が調整される。具体的には、メタノール濃度の検出結果に基づいて、燃料タンク128内のメタノール燃料が水溶液タンク130へ供給され、水タンク132内の水が水溶液タンク130へ還流される。
このような燃料電池システム100において酸化剤欠乏処理を実行したときのデータを図12に示す。
図12の期間(2)に示す酸化剤欠乏処理の実行直後の一時期においては、反応する酸化剤(酸素)が欠乏することによって発生する電圧が低下する。そのため、燃料電池104の開回路電圧の変化特性はメタノール水溶液の濃度の変化特性と大きく異なり開回路電圧とメタノール水溶液の濃度との相関性が低くなるので、開回路電圧に基づいてメタノール水溶液の濃度を精度よく検出することはできない。一方、燃料電池104すなわちセルスタック102からの電流を検出・積算すれば、電力の取り出し量から燃料の消費量およびメタノール水溶液の濃度を概算できる。したがって、期間(2)に示す酸化剤欠乏処理の実行直後の一時期においては、開回路電圧ではなく燃料電池104からの電流値に基づいてメタノール水溶液の濃度を検出する方が高い検出精度が得られる。つまり、電圧センサ168の開回路電圧の濃度情報を使用せず、電流検出回路186の出力による濃度情報に基づいて濃度調整を実行する。
そして、開回路電圧が酸化剤欠乏処理前の値を下回れば、十分に反応が行われ、開回路電圧は安定状態に戻ったと判断し、期間(3)においては開回路電圧に基づくメタノール水溶液の濃度が用いられる。なお、図12ではグラフの縦軸のスケールが大きいため開回路電圧が酸化剤欠乏処理前の値を下回ったことが把握しにくいが、時点Pにおいて明確に下回っていることに留意されたい。
この実施形態では、期間(1)と(3)とでは開回路電圧に基づくメタノール水溶液の濃度を用いて濃度調整され、期間(2)では燃料電池104からの電流に基づくメタノール水溶液の濃度を用いて濃度調整される。
このような燃料電池システム100の動作について、図13を参照して説明する。
なお、図13に示す動作は、電圧センサ168の検出精度が高い比較的高温において行われ、たとえば第2温度センサ170によって検出された温度が45℃以上であるときに行われる。
まず、酸化剤欠乏処理前に電圧センサ168によって検出された開回路電圧がメモリ176に保存される(ステップS1)。このとき、開回路電圧を複数回取得し平均値を取ってもよい。なお、開回路電圧が低いとメタノール水溶液の濃度は高いことを示し、開回路電圧が高いとメタノール水溶液の濃度は低いことを示す。
ついで、エアポンプ148を停止させて酸化剤欠乏処理が実行され(ステップS3)、一定時間後にエアポンプ148の駆動を再開させ(ステップS5)、燃料電池104すなわちセルスタック102からの電流が電流検出回路186によって検出され(ステップS7)、CPU172によってその電流値が所定期間分積算され積算電流値が得られる(ステップS9)。そして、CPU172によって、メモリ176に格納された積算電流値から燃料ポンプ通電時間を求める変換情報を参照して、積算電流値に対応する燃料ポンプ136の通電時間が決定され(ステップS11)、燃料ポンプ136が通電されて水溶液タンク130内にメタノール燃料が供給される(ステップS13)。このときだけ、メタノール水溶液の濃度が目標濃度より少し濃くなるように、濃度に対応する燃料ポンプ136の通電時間(ポンプ駆動時間)がやや長くなるように設定したテーブルを使用する。これによって開回路電圧が早く酸化剤欠乏処理前の値を下回るように誘導される。
そして、一定時間(この実施形態では9分)が経過したか否かがCPU172によって判断され(ステップS15)、一定時間が経過していなければ、開回路電圧がメモリ176に記憶された酸化剤欠乏処理前の値を下回ったか否か、すなわちメタノール水溶液の濃度情報が酸化剤欠乏処理前の濃度情報より高濃度を示したか否かがCPU172によって判断される(ステップS17)。
ステップS17において、開回路電圧が酸化剤欠乏処理前の値を下回っていなければ、開回路電圧は正常な値に戻っていないと判断されステップS7に戻る。
一方、開回路電圧が酸化剤欠乏処理前の値を下回れば、開回路電圧も正常値に戻ったと判断されステップS19に進む。また、ステップS15において、一定時間経過したときもステップS19に進む。
ステップS19では、CPU172によって、メモリ176に格納されている変換情報を参照して開回路電圧に基づいてメタノール水溶液の濃度が検出される。そして、検出された濃度と目標濃度との比較に基づいて、燃料ポンプ136の通電時間および水ポンプ160の通電時間が決定される(ステップS21)。このとき、水溶液タンク130の水位をも考慮して、燃料ポンプ136および水ポンプ160の通電時間が決定される。
そして、通電時間が決定されたポンプがその時間分通電され、これによって水溶液タンク130内にメタノール燃料および/または水が供給され水溶液タンク130内のメタノール水溶液の濃度と水溶液量が目標濃度・量に調整され(ステップS23)、終了する。このようにして、酸化剤欠乏処理を実行した場合におけるメタノール水溶液の濃度調整が行われる。
このような燃料電池システム100によれば、酸化剤欠乏処理の実行直後は燃料電池104からの電流に基づいてメタノール水溶液液の濃度情報を取得できるので濃度検出精度の低下を抑制でき、酸化剤欠乏処理を行う場合においてもメタノール水溶液の燃料濃度の検出精度を高く維持することができる。
また、メタノール水溶液の濃度が目標濃度を超えるように高濃度のメタノール燃料を多めに加えることによって、開回路電圧をより短時間で酸化剤欠乏処理前の値に戻し、すなわち電圧センサ168の検出精度を速やかに正常に戻し、濃度調整のために用いる手段を電流検出回路186から電圧センサ168へ早期に切り替えることができる。その結果、酸化剤欠乏処理を行う場合であっても、燃料濃度を精度よく調整できる。
なお、通常モードにおける濃度検出処理では、電圧センサ168による濃度情報にさらに電流検出回路186による濃度情報を加味してもよい。また、酸化剤欠乏処理後は、電流検出回路186による濃度情報にさらに別の検出手段による濃度情報を加味してもよい。
燃料電池システムを含む自動二輪車ひいては自動車、船舶等の輸送機器では、発電効率を向上させるために必要に応じて酸化剤欠乏処理が実行されるので、この発明はこれらの任意の輸送機器に好適に用いられる。
なお、上述の実施形態では、メタノール水溶液の濃度情報を電気化学的に検出する第1濃度検出手段として、電圧センサ168が用いられたが、これに限定されず、たとえば米国特許第6,254,748号に開示されているセンサなど、濃度を電気化学的に検出する任意のセンサを用いることができる。また、電圧センサ168によって、燃料電池104の開回路電圧を検出する代わりに、セルスタック102の開回路電圧を検出しそれを濃度情報としてもよい。
また上述の実施形態では、第2濃度検出手段は電流検出回路186を含むが、これに限定されず、第1濃度検出手段とは異なる方法によって濃度情報を検出する任意の手段を用いることができる。この実施形態では、開回路電圧を検出する電圧センサ168以外の任意のセンサ等を用いることができる。
変換情報は、濃度情報を濃度に変換するための演算式であってもよい。
上述の実施形態では、燃料としてメタノールを、燃料水溶液としてメタノール水溶液を用いたが、これに限定されず、燃料としてエタノール等のアルコール系燃料、燃料水溶液としてエタノール水溶液等のアルコール系水溶液を用いてもよい。