JP4869871B2 - メルカプト基含有物質検知装置及び方法 - Google Patents
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そこで、硫化水素やメルカプタン類を検知する検知装置として、酸化物半導体を感応層として用いるものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、オキシン金属錯体やポルフィリン金属錯体を蛍光物質として用いる検知装置も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
一方、チオール基を有する物質を蛍光標識する化合物として、2−ピリジルアミノエチルマレイミド塩酸塩等が知られており、この化合物はチオール基と結合することにより蛍光を発するという性質を有している(例えば、特許文献3を参照)。
特許文献2に記載される従来の検知装置では、悪臭物質濃度が高くなるほど蛍光光度が減少するので、感度が十分に得られないという課題がある。
特許文献3には、2−ピリジルアミノエチルマレイミド塩酸塩等を検知装置に応用することは何ら記載されていない。
従って、発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、メチルメルカプタン、硫化水素等のメルカプト基含有物質に対して高い識別性を有し且つ高感度で検知することのできるメルカプト基含有物質検知装置を得ることを目的としている。
また、この発明に係るメルカプト基含有物質検知方法は、マレイミド基が直接または他の機能原子団を介して蛍光機能団に結合され、メルカプト基含有物質と反応することにより蛍光収率が増大する蛍光物質とメルカプト基含有物質とを反応させ、その反応生成物を励起したときの蛍光光度を測定し、測定された蛍光光度に基づいてメルカプト基含有物質の濃度を求めるものであり、前記蛍光物質が、下記式:
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるメルカプト基含有物質検知装置の構成を説明するための図である。図1において、実施の形態1に係るメルカプト基含有物質検知装置は、マレイミド基が直接または他の機能原子団を介して蛍光機能団に結合され、メルカプト基含有物質と反応することにより蛍光収率が増大する蛍光物質を含む蛍光膜からなる反応部1と、蛍光膜に対して励起光を照射できるように配置された光源2と、蛍光物質とメルカプト基含有物質との反応生成物が発する蛍光を受光し、その蛍光光度に応じた電気信号を出力する蛍光検出部3と、反応部1と蛍光検出部3との間に配置され、光源2からの励起光L1を吸収または反射して透過させず且つ反応生成物が発する蛍光L2を選択的に透過させる光学フィルタ4と、蛍光検出部3から出力された電気信号に基づいてメルカプト基含有物質の濃度を算出する演算部5とを備えている。反応部1は、アルミ板、ガラス板等の基板6上に形成されている。また、反応部1は、光源2からの励起光L1及び反応生成物が発する蛍光L2を透過可能な反応セル9内に配置されており、この反応セル9には、サンプルガスを導入するためのサンプルガス導入管7とサンプルガスを排出するためサンプルガス排出管8とが接続されている。さらに、蛍光検出部3は、受光素子10と光検出回路基板11とから構成されており、この光検出回路基板11は信号線を介して演算部5に接続されている。ここで用いる蛍光物質の蛍光機能団としては、ポルフィリン骨格、ピレン骨格またはクマリン骨格を有することが好ましく、ポルフィリン骨格が更に好ましい。
例えば、マレイミド基が直接または他の機能原子団を介して蛍光機能団に結合された蛍光物質として、下記式(1):
一方、励起光L1の一部は、蛍光膜や反応セル9によって反射または散乱され、反射・散乱光L3となって受光素子10に向かうが、光学フィルタ4により遮光(カット)されて受光素子10には殆ど入射されない。受光素子10は、一般的に波長依存性はあるものの光が入射すれば電気信号を出力してしまうため、本実施の形態のように反射・散乱光L3の光路に光学フィルタ4を配置することで、励起光の影響を抑えて蛍光の強弱を感度良く検出することが可能となる。上記したような式(1)蛍光物質及び青色発光ダイオードを用いる構成の場合、光学フィルタ4として青色カットフィルタ(例えば、赤色光のみを透過するバンドパスフィルタや青色光のみを遮光するローパスフィルタ等)を、蛍光膜と受光素子10との間であって、光源2から蛍光膜に照射される励起光L1をなるべく遮光しない位置に配置すればよい。なお、上記したフィルタは、色素を用いたり蒸着積層膜を用いたりすることにより実現されている。なお、発光ダイオードの種類によっては、1000nm程度の近赤外線を出すものもあるので、そのような発光ダイオードを光源2として用いる場合には、赤外線カットフィルタや近赤外線カットフィルタを、青色光カットフィルタに積層させるか、あるいは光源2と蛍光膜との間に適宜配置することが望ましい。
このようなメルカプト基含有物質検知装置は、冷蔵庫、冷暗室等の食料貯蔵における腐敗モニター、室内外の悪臭モニター、あるいはメルカプト基含有物質で着臭されたガスの漏れ検知器として好適に用いることができ、更には、悪臭発生時にのみ運転するといった空気清浄装置や換気装置の運転制御に適用することもできる。
図2は、本発明の実施の形態2によるメルカプト基含有物質検知装置の構成を説明するための図である。図2において、実施の形態2に係るメルカプト基含有物質検知装置では、受光素子10の受光面上に光学フィルタ4及び蛍光膜からなる反応部1がこの順に積層されて、反応部1、光学フィルタ4及び蛍光検出部3が一体化されている。そのため、反応生成物から発せられる蛍光が受光素子10に効率よく入射される。また、これら受光素子10、光学フィルタ4及び蛍光膜のうち、蛍光膜のみが反応セル9内に配置されている。そして、光源2は、蛍光膜に対して励起光を照射できるように、蛍光膜が光学フィルタ4と接する面の反対側に配置されている。なお、より高い感度を得る観点から、受光素子の受光面と光学フィルタ4と蛍光膜とは平行に密着積層されていることが好ましい構成である。その他の構成および検知方法については実施の形態1に係るメルカプト基含有物質検知装置と同じ構成であるので、本実施の形態では、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
なお、実施の形態2では、蛍光膜を反応セル9内に配置したが、図3に示すように、サンプルガスが蛍光物質と接触できるように反応セル9の底面に穴12を適宜設け、この底面にOリング13等を介して蛍光膜が密着するように配置してもよい。このように蛍光膜を反応セル9外に配置することで、蛍光膜の交換を容易にすることができる。
実施の形態3に係るメルカプト基含有物質検知装置では、反応セル内に、蛍光物質を難揮発性有機溶媒に溶解または懸濁してなる蛍光物質溶液が支持体に保持された蛍光物質溶液保持部からなる反応部が、図1における基板6およびその上に形成された反応部1の代わりに配置されている。ここで用いられる難揮発性有機溶媒とは、蛍光物質を溶解または懸濁させることができ、殆ど揮発しないものであればよく、例えば、ジメチルスルホキシドが挙げられる。蛍光物質は、蛍光光度をより増大させる観点から飽和濃度に近くなるように難揮発性有機溶媒に溶解または懸濁させることが望ましい。また、蛍光物質溶液を保持するための支持体としては、セルロース、アセチルセルロース、ガラス繊維などの繊維からなるろ紙や不織布、ガラス塗布シリカ基板(通常薄層クロマトフラフィーに用いられるもの)、アルミ板やガラス板に電気分解やフッ酸溶解により微小孔を生じさせたもの等が挙げられ、これらの支持体に蛍光物質溶液を滴下したり、塗布したり、あるいは含浸させることにより蛍光物質溶液保持部を形成すればよい。蛍光物質溶液保持部は、枠に入れて固定してもよいし、あるいはアルミ板、ガラス板等の基板に接着してもよい。その他の構成および検知方法については実施の形態1に係るメルカプト基含有物質検知装置と同じ構成であるので、本実施の形態では説明を省略する。
<実施例1>
[蛍光物質(マレイミドポルフィリン)の合成]
5,10,15,20−テトラキス−(4−アミノフェニル)−21H,23H−ポルフィン(東京化成工業株式会社製) 100mg(0.148mmol)及び無水マレイン酸(東京化成工業株式会社製) 145mg(1.48mmol)をジクロロメタン(関東化学株式会社製) 500mlに加え、24時間還流を行った。放冷後、沈殿を吸引濾過により回収した。さらに、真空下で乾燥して中間体を得た。
得られた中間体 20mg(0.02mmol)及び塩化亜鉛(関東化学株式会社製) 50mg(0.38mmol)を、ベンゼン(関東化学株式会社製) 27mlとN,N−ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製) 3mlとの混合溶液に加え、懸濁溶液を調製した。この溶液に1,1,1,3,3,3,−ヘキサメチルジシラザン(東京化成工業株式会社製) 400μl(1.89mmol)を加えると、溶液は透明になった。10時間還流を行った。放冷後、沈殿物を吸引濾過により除去し、濾液中のベンゼンを減圧下で留去した。残りのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を冷水に注ぎ、冷却した。生じた沈殿を吸引濾過により回収した。さらに、真空下で乾燥し、目的物質であるマレイミドポルフィリンを得た。この反応スキームを図4に示す。また、マレイミドフェニルポルフィリンの1H−NMR(300MHz)スペクトルを図5に示す。なお、NMR用重水素化溶媒は、MERK社から購入したジメチルスルホキシドを使用した。目的物質が得られていることが確認された。なお、上記合成では溶媒としてジクロロメタンを用いたが、酢酸あるいはクロロホルムを用いても合成することができた。ただし、収率の観点から、ジクロロメタンを用いることが好ましい。
メルカプト基含有物質検知装置で用いる蛍光膜は以下のように作製した。アセトニトリルにポリスチレンを加えた後、ゆっくり撹拌してポリスチレン溶液を調製した。このポリスチレン溶液に、上記で合成したマレイミドポルフィリンのエタノール溶液を加え、ゆっくり撹拌した。このとき空気が入らないようにした。これをスライドガラス上に塗布した後、自然に乾燥させて、マレイミドポルフィリンからなる蛍光膜を得た。
サンプルガスは以下のように調製した。メルカプト基含有物質であるメルカプトエタノール(分子量78、比重1.114)をエタノールに体積比で0.1%になるように溶解させ、メルカプトエタノール溶液を調製した。次いで、フッ素樹脂製臭い捕集袋(10L)に、1μLのメルカプトエタノール溶液をマイクロシリンジで滴下した後、無臭エアを用いて約9Lに膨らませた。メルカプトエタノール溶液が全て揮発するのを待ち、無臭エアを加えて全体を10Lにした。温度は25℃とした。モル数=圧力×体積/(気体定数×絶対温度)であるので、ニオイ捕集袋中の気体の全モル数は、1×10/(0.0821×(273.15+25)=0.41モルである。一方、メルカプトエタノールのモル数は、0.001×0.001×1.114/78=1.4×10−8モルである。よって、このサンプルガス中のメルカプトエタノール濃度は、1.4×10−8/0.41×109=35ppbである。エアポンプにより、このサンプルガスと無臭エアとを適宜混合して、0、1、2、5、10、20及び35ppbの7つのサンプルガスを得た。
図1に示したものと同じ構成のメルカプト基含有物質検知装置(光源:中心波長430nmの青色光を照射できる青色発光ダイオード)を用いて、上記で調製したサンプルガスの検知を行った。このときのメルカプトエタノール濃度と応答量(電圧)との関係を図6に示す。メルカプトエタノール濃度が0のときにも応答しているが、これは、光学フィルタを透過した励起光によるもの及び未反応のマレイミドポルフィリンからの蛍光と考えられる。前者の原因は、光学フィルタが青色光を完全には遮断しなかったこと及び光源が微量ながらも青色よりも波長の長い光を出しているためである。後者の原因は、マレイミド基によるポルフィリンの蛍光消光が不完全なためである。しかしながら、非常に希薄なメルカプトエタノールに対して、濃度と応答量との間に直線関係が得られた。すなわち、本発明によるメルカプト基含有物質検知装置を用いることにより、サンプルガス中のメルカプト基含有物質濃度を高感度に検出することができた。エタノールに対しては全く応答しなかった。
なお、マレイミドピレンの場合には、励起波長は340nm程度の紫外線になるため、光源として発光ダイオードを用いることはできない。そのために、紫外線ランプを用いる必要があるが、将来、この波長の紫外線を発する発光ダイオードが開発されると当然これを使用できる。光学フィルタは、蛍光物質から発せられる蛍光を透過するものを用いる必要がある。
なお、その他の蛍光機能団であっても、マレイミド基を導入することによって、同様の効果が期待できる。
(1)シリカゲルを塗布したガラス基板に、マレイミドポルフィリンのエタノール溶液を滴下し、乾燥させてマレイミドポルフィリンからなる蛍光膜を得る。
(2)純アルミニウム基板と白金基板とを硫酸水溶液に浸漬し、直流電源により、アルミニウム基板を正電位に、白金基板に負電位を印加する。すると、アルミニウム基板は次第に曇りが出てくる。この状態になったところで蒸留水により洗浄し乾燥する。これに、マレイミドポルフィリンのエタノール溶液を滴下し、乾燥させてマレイミドポルフィリン膜を得る。
図3に示したものと同じ構成のメルカプト基含有物質検知装置を用いて、実施例1と同様の実験を行った。このときの応答量(電圧)は、実施例1の場合に比べて10倍以上大きくなった。ただし、メルカプトエタノールを含まない場合の応答量も4倍以上になった。これは光学フィルタが完全に光源からの励起光を除去できていないからである。しかしながら、いわゆるSN比として、2.5倍向上した。このように、光学フィルタは、光源からの励起光を完全に遮光する必要はない。
Claims (5)
- 前記反応部は、前記蛍光物質を難揮発性有機溶媒に溶解または懸濁してなる蛍光物質溶液が支持体に保持された蛍光物質溶液保持部を有することを特徴とする請求項1に記載のメルカプト基含有物質検知装置。
- 前記反応部と前記蛍光検出部との間に配置され、反応生成物が発する蛍光を選択的に透過させる光学フィルタを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のメルカプト基含有物質検知装置。
- 前記反応部が前記蛍光物質を含む蛍光膜からなり、前記蛍光検出部が受光素子と光検出回路基板とからなり、受光素子の受光面上に前記光学フィルタ及び前記蛍光膜からなる反応部がこの順に積層されていることを特徴とする請求項3に記載のメルカプト基含有物質検知装置。
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