本発明の実施態様について、図を引用しながら以下に説明する。ただし、本発明はここに挙げる態様に限定されるものではない。なお、本実施形態では3種類のドープを用いて3層構造の流延膜を形成する。
図1に示すように、本実施形態に用いるフィルム製造設備10は、流延バンド12上に流延膜13を形成する流延室14と、流延バンド12から流延膜13を剥ぎ取ることで形成される湿潤フィルム15を搬送する渡り部16と、湿潤フィルム15の乾燥を促進させてフィルム17とするテンタ18と、フィルム17を十分に乾燥させる乾燥室19と、フィルム17の温度を略室温とする冷却室20と、フィルム17をロール状に巻取る巻取室21等を備えている。
流延室14の内部には、流延バンド12の他に、フィードブロック25と、ドープの流延口となる流延ダイ26と、流延膜13を乾燥させる第1送風装置27および第2送風装置28と、加熱装置29と、流延バンド12を走行させる回転ローラ30a,30bと、流延バンド12の表面温度を制御する伝熱媒体循環装置32と、凝縮器(コンデンサ)33と、回収装置34と、流延バンド12から流延膜13を剥ぎ取る剥取ローラ35とが備えられている。また、流延室14の外部には、その内部温度を調整する温調設備37が取り付けられている。その他にも、流延ダイ26には、流延されるドープの流れである流延ビードの背部周辺を所望の圧力に減圧させる減圧チャンバ38が取り付けられており、さらに、第1送風装置27の流延ダイ26側には、流延するドープが風により不安定になるのを抑制するための遮風板39が取り付けられている。
流延バンド12は、回転ローラ30a,30bに掛け渡されており、駆動装置(図示しない)により回転ローラ30bを回転させることで無端で走行する。流延バンド12の移動速度(流延速度)は、10〜200m/分であることが好ましい。流延バンド12の表面温度は伝熱媒体循環装置32により調整される。すなわち、回転ローラ30a,30bの内部には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、この流路内に所定の温度に調整された伝熱媒体を流し込み、これを伝熱媒体循環装置32により循環させることで、各回転ローラ30a,30bの表面温度を所望の値に調整される。なお、流延バンド12の表面温度は、−20〜40℃の範囲内で略一定であることが好ましい。
流延バンド12の幅は特に限定されるものではないが、流延するドープの幅に対して1.1〜2.0倍のものが好ましい。また、その長さが20〜200m、厚みが0.5〜2.5mm、全体の厚みムラが0.5%以下であり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されているものが好ましい。なお、流延バンド12は、形成される流延膜13の剥ぎ取り易さや耐久性、耐熱性等を考慮して、ステンレス製であることが好ましく、中でも、十分な耐腐食性と強度とを有するSUS316製であることが好ましい。
フィードブロック25の内部には、所望の層構造を有するフィルムを形成することができるように各ドープの流路が形成されている。そして、流延ダイ26はドープの流延口が形成されており、この流延口より流延バンド12の上に適宜ドープが流延される。流延ダイ26はコートハンガー型のものを用いることが好ましい。その幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.05〜1.5倍の範囲のものであり、最終製品となるフィルム17の幅に対して1.01〜1.3倍程度のものを用いることが好ましい。その表面粗さは0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。これにより、ドープの流れを安定させながら流延することができる。
流延ダイ26の材質は、ジクロロメタンやメタノールと水との混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いることが好ましく、ステンレス製であることが好ましい。より好ましくは、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることであるが、電解質水溶液での強制腐食試験により、SUS316製と略同等の耐腐食性を有するものも好ましく用いることができる。なお、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下である素材を用いると、流延ダイ26への熱ダメージを考慮する必要が低減されるので好ましい。なお、上記のような材質のうち、鋳造後1ヵ月以上経過したものを、研削加工して作製することが好ましい。これにより、流延ダイ26の内部にドープを円滑かつ一様に流すことができるので、流延膜13にスジ等が発生しない。
その他にも、流延ダイ26の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下であり、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。そして、ドープの流延口となるスリットのクリアランスは、自動調整により0.5〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いることが好ましい。その他にも、流延ダイ26のリップ先端におけるドープが接触する接液部の角部分において、Rがスリット全幅に亘り50μm以下のものを用いることが好ましい。なお、流延ダイ26の内部の剪断速度は、1〜5000(1/秒)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
また、流延ダイ26に温調機(図示しない)を取り付けて、その内部の温度が所定の範囲で保持されるように調整することが好ましい。さらに、流延ダイ26の幅方向に、所定の間隔で厚み調整ボルト(ヒートボルト)とこのヒートボルトによる自動厚み調整機構とを取り付けて、さらに、あらかじめ設定されるプログラムによりヒートボルトを制御することにより、ドープ製造設備11からドープを送り出す際に使用するポンプ(図示しない)の送液量を調整して製膜を行うことが好ましい。このとき、厚み計(例えば、赤外線厚み計)を設けて、このプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。なお、流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向での厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ26のリップ先端には、耐摩耗性の向上等を目的として硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、セラミックスコーティングやハードクロムめっき、および窒化処理方法等が挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削加工が可能であること、低気孔率であり、かつ脆性および耐腐食性に優れること、加えて、流延ダイ26に対する密着性が高い一方でドープに対する密着性が低いものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)やAl2 O3 、TiN、Cr2 O3 等が挙げられる。中でも、WCを用いることが好ましい。なお、WCのコーティングは、溶射法で行うことができる。
また、スリット端に溶媒供給装置(図示しない)を取り付けて、ドープを可溶化させる溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部、メタノール13質量部、n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部及びスリットと外気との両気液界面に供給することが好ましい。これにより、流延ダイ26のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止することができる。可溶化溶媒の供給量は、特に限定されるものではないが、スリット端部の片側ごとに0.1〜1.0mL/分の範囲で供給すると、流延膜13の内部への異物の混入を防止することができるので好ましい。なお、可溶化溶媒を供給する際には、脈動率が5%以下のポンプを用いることが好ましい。
第1送風装置27および第2送風装置28は、流延膜13の搬送方向に向けられた送風口を有しており、この送風口から流延膜13に対して略平行な乾燥風が送り出される。このように、流延膜13の搬送方向に略平行の乾燥風を送ると、流延膜13の表面に乾燥風による厚みムラやしわ等を発生させずに乾燥することができるので好ましい。流延室14の内部温度は、温調設備37により常時所定の温度範囲を満たすように制御されている。また、流延膜13の乾燥が促進されると流延膜13中の溶媒が揮発して流延室14の内部に浮遊するが、本実施形態では、この揮発溶媒を凝縮器(コンデンサ)33により液化した後、回収装置34に送り込み再生溶媒とする。この再生溶媒をドープ調製用溶媒として再利用すると、製造コストの低減を実現することができる。
また、流延ダイ26のスリットからドープを流延する際には、流延ダイ26に取り付けられている減圧チャンバ38により、流延ビードの背面側における減圧度を調整することが好ましい。これにより、流延箇所の周辺に存在する風で流延ビードが波打つことが抑制されて安定した流延ビードが形成されるので、流延膜13の表面にしわやつれ等が発生せず、面状に優れる流延膜13が得られる。なお、流延ビードの背面は、特に限定されるものではないが、(大気圧−2000Pa)以上(大気圧−10Pa)以下の範囲で減圧することが好ましい。
また、減圧チャンバ38にはジャケット(図示しない)を取り付けて、その内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ38の温度は特に限定されるものではないが、使用する溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。くわえて、流延ビードの形状を所望のものに保つため、流延ダイ26のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1〜100L/分の範囲であることが好ましい。
流延室14の下流には、渡り部16が設けられている。渡り部16には、複数のパスローラ及び乾燥装置43が備えられており、各パスローラで流延バンド12から流延膜13を剥ぎ取り得られる湿潤フィルム15を支持しながら搬送する間に、乾燥装置43から所望の温度に調整した乾燥風を供給して、湿潤フィルム15の乾燥を促進させる。なお、剥取ローラ35及び渡り部16に関しては、後で詳細に説明する。
テンタ18は、湿潤フィルム15の両側の位置に配された2本のレールとこのレールにしたがって無端で走行するチェーンと乾燥装置とを有する(いずれも図示しない)。このチェーンには、把持手段として複数のクリップ(図示しない)が取り付けられている。テンタ18では、湿潤フィルム15の両側端部がクリップで把持された後、チェーンの走行に伴い湿潤フィルム15を搬送する間に、乾燥装置により所望の乾燥風を供給する。これにより湿潤フィルム15の乾燥が進められフィルム17となる。
テンタ18の下流には、フィルム17の両側端部を切断するための耳切装置45が設けられている。この耳切装置45にはクラッシャ46が備えられており、耳切装置45により切断されたフィルム17の切断片がチップ状に粉砕される。
乾燥室19は、複数のローラ47と吸着回収装置48とを有する。さらに、冷却室20の下流には、強制除電装置(除電バー)49とナーリング付与ローラ50とが設けられている。また、巻取室21の内部には巻取ローラ51とプレスローラ52とが備えられている。
図2に示すように、渡り部16には複数のパスローラ60〜63が設置されている。渡り部16に配するパスローラの本数やパスローラ同士の配置間隔等は特に限定されるものではない。
流延バンド12からテンタ18までの間に配される5本のローラ、すなわち剥取ローラ35及びパスローラ60〜63は、それぞれ所定の形態を有する2種類のローラが使用されている。この2種類のローラとは、径が中央から両側端に向かって略同等、あるいは径が中央から両側端に向かって次第に小さくなる第1ローラおよび、径方向の中央部から両側端部に向かって径が次第に大きくなる第2ローラである。このとき、5本のローラは隣り合うローラの形態が交互になるように配されている。
ローラの配置は、接触させる湿潤フィルム15の接触面(支持体面あるいは反支持体面)により決定される。すなわち、湿潤フィルム15の支持体面側が接触する位置には第1ローラを配し、反支持体面側が接触する位置には第2ローラを配するようにする。
上記のような第1ローラとしては、例えば、図3に示すストレートローラ65が挙げられる。ストレートローラ65は、両側端部での外径をD1(mm)とし、中央部での外径をd1(mm)とするとき、D1=d1あるいはD1≒d1であり、径が中央から両側端に向かって略同等である形状を有している。また、図4に示すようなクラウンローラ66も第1ローラに含まれる。クラウンローラ66は、D1<d1であり、径が中央から両側端に向かって次第に小さくなる形状を有している。このように中央部が高いもしくは水平な形態を有する第1ローラを使用してフィルムを搬送すると、フィルムを中央部に寄せたり、水平に保ったままで搬送することができるので、蛇行を防止する効果が得られる。なお、本発明では、第1ローラおよび第2ローラの形態の中で、各ローラの形態に係わらず、両側端部の外径をD1、中央部での外径をd1、長手方向の長さをW(mm)として説明を行う。このとき、第1ローラおよび第2ローラのWは、搬送する湿潤フィルム15の幅に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではない。
上記のような第2ローラとしては、例えば、図5に示すようなコーンケーブローラ68が挙げられる。コーンケーブローラ68は、D1>d1であり、径方向の中央部から両側端部に向かって径が次第に大きくなる形状を有している。また、図6に示すような段差型ローラ69も第2ローラに含まれる。段差型ローラ69は、任意に調整された切り込みを有するものである。このように、径の両端に対して中央部が凹んでいるような第2ローラを使用してフィルムを搬送すると、フィルムの幅方向に対して拡げようとする力を付与することができるので、しわの発生が抑制されるだけでなく、しわ伸ばし効果を得ることができる。なお、段差型ローラ69での切り込みの長さL1や深さL2は、特に限定されるものでなく、巻き掛ける湿潤フィルム15の幅に応じて適宜選択すれば良い。
より優れたしわ伸ばし効果を得る上では、第2ローラの段差、つまりコーンケーブ量(D1−d1)/d1は、0.001≦(D1−d1)/d1≦0.03を満たすようにする。これにより、搬送する湿潤フィルム15の幅方向に拡げる力を効率よく付与することができる。より好ましくは、コーンケーブ量を0.005≦(D1−d1)/d1≦0.01とすることである。
第1ローラおよび第2ローラの材質や表面の仕上がり程度等は特に限定されるものではないが、長時間連続的に品質に優れるフィルム製品を製造するために、耐摩耗性や耐腐食性に優れる材質を使用し、できる限り研磨されて平均粗さを小さくなるように調整されたローラを使用することが好ましい。このようなローラとしては、例えば、表面が研磨され、かつSUS316を代表とするステンレス製のものが挙げられる。なお、耐摩耗性等の向上を目的として、タングステン等でコーティングされたものを用いることがより好ましい。
本実施形態では、1番目のパスローラ60及び3番目のパスローラ62を第1ローラとして、図3に示すようなストレートローラを使用し、剥取ローラ35、2番目のパスローラ61、4番目のパスローラ63を第2ローラとして、図5に示すようなコーンケーブローラを使用している。このように、流延バンド12の下流側に、接触させる湿潤フィルム15の面に応じて形態を選択した第1ローラと第2ローラとを複数配し、さらには、形態が交互になるように各ローラを配した区間を設けて、流延バンド12から剥ぎ取った直後の湿潤フィルム15を搬送すると、第1ローラによる蛇行防止効果と、第2ローラによるしわ伸ばし効果とを実現することができる。なお、本発明に係わるストレートローラ及びコーンケーブローラについては後で説明する。
また、本実施形態のように剥取ローラ35として第2ローラであるコーンケーブローラ68を使用し、流延バンド12から剥ぎ取った直後の湿潤フィルム15の反支持体面側が接触させれば、形成直後の湿潤フィルム15においてその内部から多量の溶媒が揮発することで生じる急激な体積減少に伴う収縮を効率よくかつ効果的に抑制することができる。さらには、第2ローラによるしわ伸ばし効果をより発現させることができる。
搬送する湿潤フィルム15の膜厚に応じて、各ローラに対する湿潤フィルム15の巻き掛け角度、すなわちラップ角度θ(°)を変更することが好ましい。ラップ角度を変更するために、本実施形態では、各ローラにシフト機構64を取り付けて、高さや横方向の位置を調整する。図2では、パスローラ60に対する湿潤フィルム15の接触開始点をP1、湿潤フィルム15がパスローラ60から離れる点をP2とするとき、P1およびP2とパスローラ60との軸のなす角度がθである。これにより、搬送する湿潤フィルム15の膜厚に応じて、各ローラの形態に係わるフィルムへの効果(しわ伸ばし効果や蛇行防止効果等)の強弱を適度に調整することができる。また、このラップ角度θを調整することで、各ローラを搬送する湿潤フィルム15に対して接触させたり、非接触状態にさせたりすることができる。この接触/非接触の調整は、搬送する湿潤フィルム15の表面状態等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
本発明においてθの大きさは特に限定されるものではないが、10°≦θ≦120°を満たすようにすると、各ローラに対して湿潤フィルムをしっかりと巻き掛けることができるので、優れた搬送安定性を保持することできる。また、平面性に優れるフィルムを得ることが可能となるので好ましい。なお、θ変更の対象となるローラは、1本でも良いし、同時に複数本でも良く、特に限定されるものではない。
流延バンド12の下流からテンタ18までの間では、第1ローラと第2ローラとの配列は交互に行なうほかに、一方、または両方のローラを複数個連続させてもよい。同種のローラの連続個数は2個以上であればよいが、3個以上連続させると連続させたローラによる優れた効果が得られるものの、反作用としてコーンケーブローラ68や段差型ローラ69等の第2ローラの場合には蛇行が発生しやすく、ストレートローラ65やクラウンローラ66等の第1ローラの場合にはしわが発生しやすくなる。このため、同種のローラの連続する個数は2個が特に好ましい。また、交互に配置する同種のローラの数は同じにするほか、変更してもよい。この場合には、しわが発生しやすい区間にコーンケーブローラ68等の第2ローラを多く配し、逆にしわ伸ばし効果による蛇行が大きくなる区間ではストレートローラ65等の第1ローラの数を増やすとよい。
次に、フィルム製造設備10によりフィルム17を製造する方法の一例を説明する。ただし、本発明は、ここに示す形態に限定されるものではない。
予め、ドープ製造設備11で調製したドープを第1〜第3送液ラインL1〜L3に適宜適量送り込む。このとき、第1送液ラインL1および第3送液ラインL3には外層用ドープを送液し、第2送液ラインL2には基層用ドープを送液する。
外層用ドープおよび基層用ドープを、それぞれ所望の流量となるように調整しながらフィードブロック25に送り込む。そして、フィードブロック25で所定の位置で合流した各ドープを、流延ダイ26から流延ビードを形成させながら流延バンド12の上に流延し、流延膜13を形成する。このとき、回転ローラ30a,30bの駆動は、流延バンド12に生じる張力が104 〜105 N/mとなるように調整されることが好ましい。また、回転ローラ30a,30bと流延バンド12との相対速度差は0.01m/分以下となるように調整する。
流延時の各ドープの温度は−10〜57℃であることが好ましい。なお、流延膜13の厚みは10〜400μmの範囲内で略一定の値とする。より好ましくは20〜150μmの範囲内で略一定の値とすることであり、特に好ましくは厚みを25〜100μmの範囲内で略一定の値とすることである。上記の範囲を満たすような膜厚となる流延膜13を形成すると、より短時間で流延膜13の乾燥を促進することができる。
本発明では、上記のように複数のドープを共流延することにより複層構造の流延膜13を形成する。流延膜13は、基層とこの基層に接するように形成される少なくとも1層の外層とからなる多層構造であることが好ましい。本実施形態では、基層とこの両側に接する2層の外層とからなる3層構造の流延膜13を形成する。このように共流延により多層構造の流延膜13を形成すると、製造速度の向上を図りながらも凹凸ムラが低減された平面性に優れるフィルムを製造することが出来、かつ、外層に機能性材料を含ませることで様々な機能を発現させたフィルムを製造することができる。
複数のドープを用いる場合、外層用ドープの粘度(Pa・s)は40Pa・s以下となるすることが好ましい。これにより、外層となる層が基層よりも早く乾燥されるので基層を保護する効果を得ることができる。このように外層で保護された基層の内部では徐々に乾燥が促進されるので、溶媒の発泡が抑制される。このため、平面性に優れ、さらには内部欠陥が低減された流延膜13を形成することができる。ただし、外層用ドープの粘度が40Pa・sよりも大きいと、高粘度のために流延膜13の表面に凹凸ムラが生じやすく、かつ流延速度の遅延により製造時間が延長される等の問題が生じるので好ましくない。
流延バンド12の速度変動は0.5%以下とし、流延バンド12が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために、本実施形態では、流延バンド12の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設けて、その測定値に基づき、流延バンド12の位置制御機(図示しない)によりフィードバック制御を行うことで、流延バンド12の位置調整を行う。そして、流延ダイ26直下では、流延バンド12の変動が流延ビードに伝達することを抑制するために、回転ローラ30aの回転に伴う上下方向の位置変動を200μm以下となるように調整することが好ましい。なお、流延室14の内部温度は、温調設備37により−10〜57℃の範囲で略一定とされていることが好ましい。
第1送風装置27および第2送風装置28により所定の温度に調整した乾燥風を供給するとともに、加熱装置29を用いて所望の温度に加熱することにより、流延膜13の乾燥を促進させる。流延膜13の乾燥が促進して自己支持性を有するものとなった後、この流延膜13を剥取ローラ35で支持しながら流延バンド12から剥ぎ取って湿潤フィルム15を形成する。本実施形態では、剥取ローラ35としてコーンケーブローラ68(図5参照)を使用している。剥ぎ取り時での流延膜13の残留溶媒量は、固形分基準で10〜200質量%となるようにする。なお、本発明におけるフィルム等の残留溶媒量とは、流延膜13中の主溶媒の残留溶媒量であり、流延膜13中に多種の溶媒が存在する場合には、流延膜13にもっとも多量に含まれる溶媒を主溶媒とみなす。この残留溶媒量は乾量基準でのものであり、サンプリング時におけるフィルム質量をx、そのサンプリングフィルムを110°で1時間熱風乾燥した後の質量をyとするとき{(x−y)/x}×100で算出される値である。
続けて、湿潤フィルム15を渡り部16に送り込む。本実施形態では、図2に示すように4本のパスローラ60〜63を配する渡り部16を設ける。このとき、各パスローラ60〜63の形態は、接触する湿潤フィルム15の接触面に応じて適宜選択されている。すなわち、1番目のパスローラ60、3番目のパスローラ62には、幅方向において径が均一なストレートローラ65(図3参照)を使用し、2番目のパスローラ61、4番目のパスローラ63には、幅方向において外側から中心に向かって径が大きいコーンケーブローラ68(図5参照)を使用している。
剥取直後の湿潤フィルム15の反支持体面を剥取ローラ35に接触させた後、渡り部16において各パスローラ60〜63に支持体面および反支持体面を適宜接触させて搬送する。このとき、乾燥装置43から所望の温度に調整した乾燥風を供給して、湿潤フィルム15の乾燥を促進する。乾燥風の温度は20〜250℃で略一定であることが好ましい。なお、渡り部16では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより、湿潤フィルム15に張力を付与することもできる。
続いて、湿潤フィルム15をテンタ18の内部に送る。テンタ18では湿潤フィルム15の両側端部をクリップにより把持した後、チェーンの走行に伴いクリップが移動するにつれて湿潤フィルム15を搬送する間に、幅方向に対して適度の張力を付与しながら湿潤フィルム15の乾燥を促進させてフィルム17とする。これにより、湿潤フィルム15のレタデーション値を所望の値に制御することができる。そして、テンタ18の出口付近でクリップによる固定を解放したフィルム17を乾燥室19へ送り出す。
渡り部16やテンタ18では、湿潤フィルム15の搬送方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5〜300%程度に延伸することが好ましい。ただし、テンタ18において湿潤フィルム15を延伸している間は、乾燥温度を略一定に保持することが好ましい。これにより、乾燥温度による延伸への影響を低減することができるので、湿潤フィルム15が過度に伸縮されるのを抑制することができる。また、本実施形態では、把持乾燥装置として、クリップを有するテンタ18を示したが、搬送させるフィルムの両側端部を把持または固定しながら搬送する間に、幅方向に対して延伸させることができる装置であればよく、特に限定されるものではない。
乾燥が進行したフィルム17を耳切装置45に送り、その両側端部を切断する。なお、フィルム17の両側端部を切断する本処理は省略することもできるが、流延室14から巻取室21までのいずれかで行うことが好ましい。本実施形態のように、テンタ18の下流側に耳切装置45を設けて切断処理を行うと、延伸させる際にクリップで把持される等して傷付いたフィルム17の両側端部を切断して、傷の無い平面性に優れるフィルム17とすることができるので好ましい。
乾燥室19では、フィルム17を多数のローラ47に支持しながら搬送する間に乾燥を促進させる。乾燥室19の内部温度は、特に限定されるものではないが、フィルム17の膜温度が100〜220℃となるように調整すると、フィルム17を構成するポリマーの熱ダメージを抑制しながらも、溶媒を効果的に揮発させることができる。なお、フィルム17中の溶媒が蒸発することにより生成した溶媒ガスは吸着回収装置48により回収し、溶媒成分を除去した後、再度、乾燥室19の内部に乾燥風として送風する。
十分に乾燥させたフィルム17を冷却室20に送り、略室温となるまで冷却する。なお、乾燥室19と冷却室20との間に調湿室(図示しない)を設けて、フィルム17を調湿した後に冷却室20へ送ると、しわやつれ等を矯正することが出来、平面性に優れるフィルム17を得ることができるので好ましい。
強制除電装置49によりフィルム17の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3〜+3kV)となるように調整する。なお、図1では、強制除電装置49の設置箇所を冷却室20の下流側とする形態を示しているがこの位置に限定されるものではない。また、ナーリング付与ローラ50によりフィルム17の両側端部にエンボス加工を施してナーリングを付与させる。これにより平面性に優れるフィルム17を得ることができる。
最後に、プレスローラ52により巻き取り時の張力を調整しながらフィルム17を巻取ローラ51に巻き取る。なお、巻取り時の張力は巻取開始時から終了時までの間で徐々に変化させることがより好ましい。巻き取るフィルム17は搬送方向に少なくとも100m以上とすることが好ましく、幅方向が1400〜2500mmであることが好ましい。ただし、本発明は、2500mmより大きい場合にも効果を得ることができる。また、フィルム17の厚みは、20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは20〜80μmであり、特に好ましくは30〜70μmである。
また、回転ローラ30a,30bを支持体として用いることもできる。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましく、回転ローラ30a,30bの表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そのために、回転ローラの表面にクロムめっき処理等を行い、十分な硬度と耐久性を持たせるようにする。なお、回転ローラ30a,30bや流延バンド12を支持体とする場合、これらの支持体の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、表面欠陥として30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールが1個/m2 以下であり、10μm未満のピンホールが2個/m2 以下であることが好ましい。
また、耳切装置45と乾燥室19との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて、フィルム17を予備乾燥すると、乾燥室19においてフィルム17の膜面温度が急激に上昇することによる形状変化等を抑制することができるので好ましい。
なお、本発明では2種類以上のドープを用いる場合、これらのドープを支持体上に同時に流延しても良いし、逐次に流延させても良い。また、各流延方法を組み合わせても良い。同時に流延を行う場合には、使用する流延ダイの形態はフィードブロックを取り付けた形態でも良いし、マルチマニホールド型でも良い。ただし、共流延により多層からなるフィルムを製造する場合には、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。その他にも、同時積層共流延を行なう場合には、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
複数のドープを逐次に流延する場合には、図7に示すように、流延バンド12の上方にドープの数に応じた複数の流延ダイ70〜72を設置する。各流延ダイ70〜72にはドープ製造設備から支持体面層用ドープ、基層用ドープ、エア面層用ドープが適宜送られ、支持体面層用ドープから逐次、流延バンド12の上に流延される。ここで、支持体面とは、外層のうち支持体である流延バンド12に接触して存在する外層であり、エア面層とは、流延バンド12の上で空気に面して存在する外層のことである。これにより支持体面層の上に基層、エア面層が順重ねられた3層構造の流延膜13が形成される。流延ダイは、フィードブロックを取り付けたものでも良いし、マルチマニホールド型でも良い。なお、図7において、図1に示すフィルム製造設備10と同じ部材には同符号を付すると共に、説明は省略する。
次に、本発明に係わるドープの製造方法について説明する。図8に示すように、本実施形態に用いるドープ製造設備11には、溶剤を貯留するための第1タンク111と、所定の添加剤を貯留する第2タンク112と、TACを供給するためのホッパ115と、ドープを構成する材料を混合し、溶解させる溶解タンク116とが備えられている。また、溶解タンク116の下流には、溶解タンク116で攪拌混合された混合液117を加熱する加熱装置121と、加熱された混合液117の温度を調整してポリマー溶液122とする温調装置123と、この混合液117を濾過する第1濾過装置124および第2濾過装置125と、ポリマー溶液122の濃度を調整するフラッシュ装置127と、ポリマー溶液122の濃度をフラッシュ装置127で調整する際に発生する溶剤を回収する回収装置131と、この溶剤を再生する再生装置132と、さらには、ポリマー溶液122を貯留するためのストックタンク133とが備えられている。そして、このストックタンク133には、片端がフィルム製造設備10へと接続された3本の送液ラインL1〜L3が接続されており、各送液ラインL1〜L3を介して、調製されたドープはフィルム製造設備10へと供給される。なお、本発明において溶剤とは、ドープの原料となるポリマー等を分散又は溶解させ、溶媒として作用するものを言う。
第1送液ラインL1および第3送液ラインL3には、分散液134が貯留されている第3タンク135がインライン接続されている。この分散液134は、予め、マット剤である微粒子と所定の溶媒とを混合し分散させた溶液である。さらに、第1送液ラインL1および第3送液ラインL3には、第3タンク135との接続点の下流側にスタティックミキサ136、137がそれぞれ配されており、各ラインにそれぞれインラインで添加された分散液134とポリマー溶液122とを攪拌混合する。
第1送液ラインL1および第3送液ラインL3において、各ラインに設けられたスタティックミキサの下流には、濾過装置138、139が配されている。そして、分散液84が混合されたポリマー溶液82を各濾過装置138、139で濾過することにより、各ライン内で流延用ドープである外層用ドープが調製される。また、ストックタンク133から第2送液ラインL2に送液されるポリマー溶液122は、分散液84を添加させずに、そのままの状態でフィルム製造設備10に送られる。この第2送液ラインL2で調製されるドープが基層用ドープとされる。
また、溶解タンク116には、その外面を包み込んで伝熱媒体を流すためのジャケット145と、モータ146により回転する第1攪拌機147と、モータ148により回転する第2攪拌機149とが取り付けられている。第1攪拌機147はアンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機149はディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。加えて、ストックタンク133にも溶解タンク116と同様に、その外面を包み込んで伝熱媒体を流すためのジャケット151と、モータ152により回転する攪拌機153とが取り付けられている。その他にも、ドープ製造設備11には、送液用の第1〜第3ポンプP1〜P3と、バルブV1〜V3とが備えられているが、ポンプおよびバルブを設ける位置や設置数等は適宜変更される。
次に、このドープ製造設備11を用いたドープ製造方法を説明する。最初に、バルブV1を開いて第1タンク111から溶解タンク116に所定量の溶媒が送られる。このとき、ホッパ115からは適宜適量のTACが溶解タンク116に送られる。そして、バルブV2を開いて第2タンク112から添加剤が溶解タンク116に送られる。この添加剤は予め所定の溶剤に溶解させた溶液状態あるいは、分散させた分散状態で、バルブV2の開閉を調整することにより必要量が溶解タンク116へと送られる。添加剤を溶解または分散させる溶剤は、通常、第1タンク111に貯留される溶剤と同一のものとされるが、添加剤の種類に応じて適宜代えることができる。
なお、添加剤が固体の場合には第2タンク112に代えてホッパ等を用いて、溶解タンク116に送り込んでも良い。さらに、複数種類の添加剤を添加する場合には、予め、各添加剤を溶剤に溶解させた溶液を調製しておき、それを第2タンク112から溶解タンク116へと送液したり、各添加剤を含有した溶液の種類に応じて複数のタンクを用意し、各タンクと溶解タンク116とを送液ラインにより接続してから、溶解タンク116へと送液しても良い。また、添加剤が常温で液体の場合には、溶剤を使用せずに溶解タンク116に送り込むこともできる。
なお、本実施形態では、溶解タンク116に送液するドープ原料の順番を、溶媒、TAC、添加剤の順としたが、この順番に限定されるものではない。例えば、TAC、溶媒、添加剤の順でも良い。また、添加剤は溶解タンク116の中で各ドープ原料と混合する必要はなく、分子量が小さく揮発しやすい添加剤を使用する場合等は加熱処理を行なった後の工程で添加する等その種類や性質等を考慮して適宜混合させれば良い。
溶解タンク116の内部温度はジャケット145内部に流れる伝熱媒体の温度により制御されており、その好ましい温度範囲は−10〜55℃である。また、第1攪拌機147および第2攪拌機149を適宜選択して回転させることにより、溶剤中にTACを膨潤させた膨潤液としての混合液117を得ることができる。ただし、混合液117は、溶剤種により決定される溶媒組成等により溶媒に対するTACの溶解性や親和性等が変化するので、必ずしも膨潤液となるわけではないが、本発明は、混合液117が膨潤液であるかどうかに影響を受けるものではないため、その形態は特に限定されない。
調製された混合液117はポンプP1により加熱装置121に送られる。加熱装置121は温調制御が可能なジャケット付き配管であることが好ましい。このように、加熱装置121により混合液117を加熱すると、膨潤状態の混合液117における固形分の溶解を促進させることができる。この加熱装置121による混合液117の加熱温度は、混合液117中に含まれる各原料が熱ダメージを受けないようにするため、0〜97℃であることが好ましい。したがって、ここでの加熱とは、室温以上の温度に混合液117を加熱するという意味ではなく、溶解タンク116から送られてきた混合液117の温度を上昇させると言う意味である。すなわち、例えば、送られてきた混合液117の温度が−7℃であるときには、0℃にする場合等も含まれる。なお、この加熱装置121には、混合液117を加圧するための加圧手段が備えられていることが好ましい。この加圧手段により混合液117を加圧することで、溶媒に対するTACの溶解をより促進させることができる。
なお、加熱装置121による加熱溶解に代えて、膨潤液である混合液117を冷却することにより溶解を促進させる冷却溶解法を適用することもできる。このとき、周知の冷却溶解法により、混合液117を−100〜−10℃に冷却させれば良い。上記の加熱溶解法および冷却溶解法を、各原料の性状等に応じて適宜選択して実施することにより、混合液117の溶解性を制御することができる。
加熱して溶解を促進させた混合液117を温調装置123で略室温とする。これにより、溶剤に対するポリマーの溶解度が高められたポリマー溶液122が得られる。第1濾過装置124でポリマー溶液122は濾過されて、その中に含まれる不純物が除去される。第1濾過装置124で使用されるフィルタは、不純物の除去を効率良く行なうために、その平均孔径が100μm以下であることが好ましく、濾過流量は50L/時以上であることが好ましい。濾過後のポリマー溶液122は、バルブV3を介してストックタンク133に送られ、ここに貯留される。なお、本実施形態では、説明の便宜上、流延に供するドープを調製する際に、溶剤に対するポリマー等の固形分の溶解度の違いにより、溶解度が低い順に混合液、ポリマー溶液、ドープと称する。これらの液中におけるポリマーの溶解度は高いものほど好ましい。
上記のように混合液117を作ってからポリマー溶液122を調製する方法では、高濃度のポリマー溶液を調製する場合ほど調製に要する時間が長くなるため、製造コストが増える等の問題が生じる。そこで、このような問題を回避するためには、目的とする濃度よりも低濃度のポリマー溶液を調製した後、所望の濃度となるように濃縮させることが好ましい。この方法としては、先ず、上述の手順により、所望の濃度よりも低濃度のポリマー溶液122を調製する。そして、このポリマー溶液122を第1濾過装置124により濾過した後、バルブV3を介してフラッシュ装置127に送り込み、そこでポリマー溶液122中の溶媒の一部を蒸発させる。これにより、ポリマー溶液122を濃縮させて所望の濃度に調整する。なお、蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮液化された後に、回収装置131により回収される。そして、回収された溶媒は、再生装置132により再生される。この再生された溶媒を、混合液117を調整する際に使用すると、原料コストを削減できる等の効果を得ることができる。
濃縮されたポリマー溶液122は、ポンプP2によりフラッシュ装置127から抜き出された後、第2濾過装置125で濾過されて不純物が除去される。第2濾過装置125で濾過する際のポリマー溶液122の温度は0〜200℃であることが好ましい。この後、ストックタンク133に送られ、流延に供するまでの間、ここに貯留される。ポリマー溶液122をフラッシュ装置127から抜き出す際、ポリマー溶液122中に気泡が発生し易い。このため、ポリマー溶液122には泡抜き処理を施すことが好ましい。泡抜き処理は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、ポリマー溶液122に超音波をあてて泡抜きする超音波照射法が挙げられる。
ストックタンク133に貯留されるポリマー溶液122は、ジャケット151に温度を調節した伝熱媒体を流すことで、その温度が好適に調整される。また、攪拌機153の回転により常時、攪拌混合され、不純物の凝集を抑制しながら均一な品質が保持される。ストックタンク133から適宜適量のポリマー溶液122が各送液ラインへ送られる。このとき、第1送液ラインL1および第3送液ラインL3に送られたポリマー溶液122には、第3タンク135から分散液134がインラインで添加される。分散液134の添加量はポンプP3により調節される。この後、スタティックミキサ136、137により分散液134が入れられたポリマー溶液122は攪拌混合される。そして、濾過装置138、139により濾過されて外層用ドープが調製される。本明細書中では、微粒子を含む分散液134が添加されたポリマー溶液122を外層用ドープと称する。第1送液ラインL1及び第3送液ラインL3の内部で調製される外層用ドープは同一である。ここで、添加する分散液の種類を変えたり、添加量を調節すれば、異なる外層用ドープの調製が可能となる。第2送液ラインL2に送り込まれたポリマー溶液122は、そのままの状態で基層用ドープ141としてフィルム製造設備10に送られる。なお、本実施形態では、外層用ドープおよび基層用ドープを総称して流延用ドープとする。
流延用ドープを形成する場合、透明度が高く、光学特性に優れたフィルムを製造する上で、ポリマーとしてトリアセチルセルロース(TAC)が好適に用いられる。この場合、ポリマー溶液122中のTAC濃度は5〜40質量%であることが好ましい。より好ましくは、TAC濃度が15〜30質量%であり、特に好ましくは、17〜25質量%である。また、添加剤(主に可塑剤)の濃度は、ポリマー溶液122中の固形分全体に対して、1〜20質量%とすることが好ましい。このようなTACフィルムを製造する溶液製膜法での流延用ドープの製造方法(例えば、素材、原料、添加剤の溶解方法および添加方法、濾過方法、脱泡等)は、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。なお、本発明に好適なポリマーの詳細は後で説明する。
なお、本実施形態では、微粒子をポリマー溶液122に添加して分散させる方法として、インライン添加する方法(第1添加方法とする)を示したが、この形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示すような第2添加方法や第3添加方法も本発明に好ましく用いることができる。前者の第2添加方法とは、先ず、溶剤と微粒子とを攪拌混合した後、さらに、分散機を用いて分散を行なうことで分散液を調製する。次に、少量のセルロースアシレートを溶剤に加えてから攪拌溶解させたものに、前述の分散液を加え攪拌した後、ポリマー溶液に加えることで外層用ドープとする。後者の第3添加方法とは、先ず、溶剤に少量のセルロースアシレートを添加し、攪拌溶解させたところに、微粒子を加えてから分散機により攪拌分散を行う。次に、これをポリマー溶液に加えて十分に混合させる。
本発明において、流延用ドープを調製する際に使用する各種原料について説明する。
微粒子は、二酸化ケイ素誘導体を用いることが好ましい。この二酸化ケイ素誘導体とは、二酸化ケイ素を含み、かつ派生するものであり、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂も含まれる。このように微粒子として二酸化ケイ素誘導体であり、さらにはその表面がアルキル化処理されたものを使用すると、アルキル化処理という疎水化処理が施されているために、溶媒に対しての分散性が向上させることができるので好ましい。これにより、微粒子同士の凝集を抑制し、異物欠陥が少なく、また非常に透明性に優れるフィルムを製造することができる。
なお、アルキル化処理された微粒子の表面に導入されるアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。より好ましくは、導入されるアルキル基の炭素数が、1〜12であり、特に好ましくは、炭素数が1〜8である。このようなアルキル基が導入された微粒子では、微粒子同士の凝集をより抑制し、かつ分散安定性を向上させることができる。上記のように表面に炭素数が1〜20のアルキル基を有する微粒子は、例えば、二酸化ケイ素の微粒子をオクチルシランで処理することにより得ることができる。また、表面にオクチル基を有する二酸化ケイ素誘導体の一例としては、アエロジルR805(日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、本発明では、これも好ましく用いることができる。
ドープ中に含まれるポリマーや添加剤等の固形分に対する微粒子の含有量は0.2%以下となるようにすることが好ましい。このように含有量を制御しながら微粒子を添加して調製したドープでは、微粒子の凝集による異物の発生を抑制することができるので、優れた透明性を有する等の光学特性を示すフィルムを製造することができる。また、上記の微粒子は平均粒径が1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1.0μmであり、特に好ましくは0.4〜0.8μmである。
本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものがより好ましい。なお、式(a)〜(c)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(a) 2.5≦A+B≦3.0
(b) 0≦A≦3.0
(c) 0≦B≦2.9
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿、パルプ綿のどちらから得られたものでも良い。
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
ドープを調製する際に使用する溶媒には、セルロースアシレートを溶解することができる溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)等が挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
溶媒は疎水性のものを用いることが好ましい。中でも、塩化メチレンを用いることが好ましく、ポリマーに対する溶解性に優れ、かつ微粒子を均一に分散させることができる。なお、上記のハロゲン化炭化水素においては、炭素原子数1〜7のものが好ましく用いられる。また、ドープを調製する際にポリマーとして使用するセルロースアシレートの溶解性や、調製したドープにより支持体上に形成される流延膜と支持体との剥ぎ取り性、さらには、フィルムの機械強度、光学特性等の観点から、塩化メチレンの他に、炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないしは、数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
なお、最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、塩化メチレンを用いない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン,炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。なお、これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していても良いし、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も有機溶媒として用いることができる。また、有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していても良い。そして、2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合には、その炭素原子数が、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良く、特に限定はされない。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤等の添加剤についても、同じく、特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたフィルムの性能及びそれらの測定法は、特開2005−104148号公報の[1073]段落から[1087]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
[表面処理]
フィルムには、少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。そして、この表面処理は、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
フィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに、本発明より得られるフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。機能性層としては、帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層および光学補償層のうち、少なくとも1層を設けることが好ましい。そして、この機能性層は少なくとも一種の界面活性剤を0.1〜1000mg/m2 含有することが好ましく、少なくとも一種の滑り剤を0.1〜1000mg/m2 含有することが好ましい。また、機能性層が少なくとも一種のマット剤を0.1〜1000mg/m2 含有することが好ましく、少なくとも一種の帯電防止剤を1〜1000mg/m2 含有することが好ましい。なお、フィルムに様々な機能や特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも特開2005−104148号公報の[0890]段落から[1072]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
本発明により得られるフィルムの用途について説明する。本発明により得られるフィルムは、高レタデーション値を有し、透明性に優れている。そのため、特に、偏光板保護フィルムとして有用である。なお、このフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を液晶層に2枚貼ることにより作製した液晶表示装置は、液晶表示能力に優れる等の特長を示す。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特開2005−104148号公報(例えば、[1088]段落から[1265]段落)には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この方法も本発明に適用させることができる。また、同出願には光学的異方性層を付与したセルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルム、適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとした光学補償フィルムも記載されている。これらは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもでき、これらの記載も本発明に適用させることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。なお、実施した本発明に係る実験1〜6の中で、実験1、4、5は本発明に係わる実施例に相当し、実験2、3、6は本発明に係わる比較例に相当する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実験1〕
図8に示すドープ製造設備11により、流延用ドープ(外層用ドープ、基層用ドープ)の基となるポリマー溶液122を調製した。なお、使用する溶媒を貯留するタンクとしては、第1タンク111と同形のタンク(図示しない)を別途用意し、第1タンク111に塩化メチレンを貯留するとともに、一方のタンクにはメタノールを貯留した。
[混合液]
トリアセチルセルロース(酢化度60.9%) 17.0質量部
可塑剤a(トリフェニルフォスフェート) 1.3質量部
可塑剤b(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 0.7質量部
塩化メチレン 75.0質量部
メタノール 6.0質量部
混合液117をポンプP1により流量を調整しながら加熱装置121および温調装置123に順次送り込み、溶液中の固形分を十分に溶解させた後、濾紙として東洋濾紙製#63(保有粒子径4μm)を備えた第1濾過装置124で濾過したものをポリマー溶液122としてストックタンク133に送った。
次に、ストックタンク133から第1,第3送液ラインL1、L3に送り込んだポリマー溶液122に対して、第3タンク135から、予め所定の溶媒に微粒子を分散させた分散液134をインラインで添加した。なお、ポリマー溶液122中の全固形分中の微粒子の質量比率が0.13%となるように分散液134をポリマー溶液122に添加した。
分散液134の調製方法を、以下に記述する。先ず、微粒子R972(日本アエロジル製):6.0質量部、塩化メチレン:76.0質量部、メタノール:6.0質量部を、攪拌機を有するタンクに入れて混合攪拌した後、さらに、混合液117を12.0質量部添加して混合均一化することにより第1分散液を調製した。次に、この第1分散液をアトライター(三井鉱山製 アトライター SE60)により攪拌分散させて後、粒径分布測定機(堀場製作所製 LA920)により平均粒径を測定しながら、平均粒径の値が約0.5μmとなるように分散させて第2分散液とした。続けて、この第2分散液:12.0質量部に対して、塩化メチレン:66.0質量部、メタノール:6.0質量部を混合し、さらに、混合液117を16.0質量部添加し、攪拌混合して分散液134とした。
分散液134を添加して調製した外層用ドープおよび基層用ドープは、濾過装置138、139により濾過した後、各ドープに対して、紫外線吸収剤をインラインで適量添加し、スタティックミキサ(図示しない)により攪拌混合させて流延用ドープとした。なお、紫外線吸収剤を添加する前の各ドープは、第1送液ラインL1および第3送液ラインL3ともに、濾過装置として濾紙の異なる3種類の濾過装置を続けて設け、段階的に濾過を行なった。すなわち、第1濾過としては、東洋濾紙製#63を備えた濾過装置で濾過した後、第2濾過として、日本精線製ナスロンフィルター06N(公称孔径10μm)を備えた濾過装置で濾過し、最後に、第3濾過として、日本精線製ナスロンフィルター12N(公称孔径40μm)を備えた濾過装置で濾過した。なお、外層用ドープおよび基層用ドープともに、ドープ固形文中の紫外線吸収剤の質量比率は1.04%となるようにした。
[紫外線吸収剤溶液]
紫外線吸収剤a(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)) 6.0質量部
紫外線吸収剤b(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル))ベンゾトリアゾール 12.0質量部
塩化メチレン 66.0質量部
メタノール 6.0質量部
上記の各原料を混合したものに、混合液117を10.0質量部投入し、攪拌混合させた後、冨士写真フィルム社製アストロポアフィルター(公称孔径10μm)により2回濾過したものを紫外線吸収剤溶液とした。
なお、本実験で使用したトリアセチルセルロースは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また、6位のアシル置換度は0.91であり、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基が置換されたアセチル基であった。加えて、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その質量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。なお、このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
図1に示すフィルム製造設備10と、上記により調製した流延用ドープとを用いて、このドープを共流延することにより、基層の両側に外層を設けた3層構造のフィルム17を製造した。
流延ダイ26には幅が1.8mであり、共流延用に調整したフィードブロック25を装備して、基層の両面に外層を積層して3層構造のフィルム17を成形できるように調整された装置を用いた。
目的とするTACフィルムの膜厚(エア面層、基層、支持体面層)がそれぞれ4μm,73μm,3μmであり、製品厚みが80μmとなるように、流延幅を1700mmとして各ドープ(基層用ドープ、支持体面層用ドープ、エア面層用ドープ)の流量を調整しながら、流延ダイ26から流延バンド12上に3種類のドープを共流延した。このとき、各ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイ26にジャケット(図示しない)を設けて、ジャケットの内部に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
製膜時には、フィードブロック25と流延ダイ26と各配管とを、すべて36℃に保温した。流延ダイ94はコートハンガータイプのものを用い、厚み調整ボルト(ヒートボルト)が20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。ヒートボルトはあらかじめ設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することも出来、フィルム製造設備10の内部に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものである。流延エッジ部20mmを除いたフィルムで50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、各層の平均厚み精度は両外層が±2%以下、主流が±1%以下に制御され、全体厚みは±1.5%以下となるように調整した。
流延ダイ26の1次側には減圧するための減圧チャンバ38を設置した。また、ビード前後および後部にラビリンスパッキン(図示しない)を設けるとともに、その両端には開口部を設け、さらに、流延ビードの両縁の乱れを調整するためにエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられているものを用いた。
流延室14の内部であり、流延ダイ26の直下には、支持体として、回転ローラ30a,30bに巻き掛けられた流延バンド12を設けた。そして、回転ローラ30aの回転数を制御しながら流延バンド12を回転させた状態で、各ドープを流延した。なお、流延バンド12は、伝熱媒体循環装置32により、その表面温度が30℃となるように調整した。また、流延室14の内部温度は、温調設備37により、35℃となるように調整した。そして、流延室14の内部に浮遊する揮発溶媒を、凝縮器(コンデンサ)33により凝縮液化した後、この液化溶媒を回収装置34で回収してから、再生装置(図示しない)で再生した。なお、この再生溶媒は、ドープ調製用溶媒として再利用した。
第1送風装置27および第2送風装置28から所望の温度に調整した乾燥風を吹き付けるとともに、加熱装置29により加熱することで流延膜13の乾燥を促進させた。そして、自己支持性を有するまで流延膜13の乾燥を促進した後、流延膜13を流延バンド12から剥ぎ取って湿潤フィルム15を形成した。このとき、流延バンド12から流延膜13を剥ぎ取る際に用いる剥取張力を、1×102 N/m2 とし、剥取不良を抑制するために流延バンド12の速度に対して、剥取速度(剥取ローラドロー)を100.1〜110%の範囲で調整した。
次に、形成した直後の湿潤フィルム15を、剥取ローラ35を介して渡り部16に送った。渡り部16では、湿潤フィルム15を搬送する間に、湿潤フィルム15の搬送方向に対して約30Nの張力を付与して一軸延伸を行い、かつ乾燥装置43により40℃に調整した乾燥風を供給し、湿潤フィルム15の乾燥を促進させた。この後、乾燥を促進させた湿潤フィルム15をテンタ18に送った。
テンタ18の内部では、湿潤フィルム15の両側端部をチェーンの走行により無端で走行する複数のクリップ(図示しない)で把持した後、搬送する間に乾燥を促進させてフィルム17とした。なお、テンタ18では、上記のチェーンが備えられたレールの間隔を調整することにより、湿潤フィルム15を幅方向に延伸させた。また、テンタ18の内部を、複数に区画し、この区画においては乾燥装置(図示しない)による乾燥風の温度を調整することにより、異なる乾燥温度で段階的に湿潤フィルム15の乾燥を促進させてフィルム17とした。
そして、テンタ出口から30秒以内に耳切装置45を設けて、フィルム17の両側端部を切除した。耳切装置45はNT型カッタを備える形態を使用し、フィルム17の両側端部から内側に向かって50mmmの位置で切断した。切断した両側端部(耳)は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ46に風送し、平均80mm2 程度のチップに粉砕した。なお、このチップは、TACフレークと共にドープ調製用原料として再利用した。また、耳切装置45と乾燥室19との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて、100℃の乾燥風を供給することにより乾燥室19で高温乾燥する前にフィルム17を予備加熱した。
残留溶媒量が5質量%となったフィルム17を乾燥室19に送った。乾燥室19の内部には送風機(図示しない)を設けて、この送風機により温調した乾燥風を給気し、フィルム17の膜面温度が140±40℃の範囲となるように調整した。そして、フィルム17の搬送張力を100N/mとしてローラ47で支持しながら搬送する間に、最終的にフィルム17の残留溶媒量が1質量%になるまで約10分間乾燥した。このとき、乾燥室88の内部に浮遊する溶媒ガスを、吸着回収装置48により回収した。吸着回収装置48としては、吸着剤が活性炭であり、脱着剤が乾燥窒素である形態を使用し、溶媒中の水分量が0.3質量%以下になるまで水分を除去した。なお、この水分を除去した溶媒は、ドープ調製用溶媒として再利用した。
乾燥室19と冷却室20との間に第1調湿室と第2調湿室(いずれも図示しない)とを設けて、フィルム17を調湿することによりカール等の矯正を行った。第1調湿室において、温度50℃,露点20℃の空気を給気した後、続けて第2調湿室にフィルム17を搬送して、フィルム17に対して直接、90℃,湿度70%の空気をあてた。
調湿後のフィルム17を冷却室20に送り30℃以下になるまで冷却した。そして、強制除電装置(除電バー)49でフィルム17の帯電圧が常時−3〜+3kVの範囲となるように調整した。続けて、ナーリング付与ローラ50によりフィルム17の両側端部にナーリングの付与を行った。なお、ナーリングはフィルム17の片側からエンボス加工を行うことにより付与した。このとき、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム17の平均厚みよりも平均して12μm高くなるようにナーリング付与ローラによる押し圧を調整した。
そして、巻取室21の内部に設置されている巻取ローラ51(φ169mm)により、巻き始め張力を300N/mとし、巻き終わりを200N/mとなるように調整しながらフィルム17を巻き取って、幅が1340mmであり、ナーリングを付与した内側の幅が1313mmであるフィルム17のロール状製品を得た。巻き取り時のフィルム17の温度は23℃であり、含水量が1.0質量%、残留溶媒量が1質量%であった。巻取室21の内部は、室内温度28℃,湿度70%に保持するとともに、イオン風除電装置(図示しない)を設けて、フィルム17の帯電圧が−1.5〜+1.5kVとなるように調整した。巻き取り時では、巻きズレの変動幅(オシレート幅)を±5mmとし、巻取ローラ51に対する巻きズレ周期を400mとし、巻取ローラ51に対するプレスローラ52の押し圧を50N/mに設定した。フィルム製造設備10では、全工程を通して、流延膜13や湿潤フィルム15およびフィルム17の平均乾燥速度を20質量%/分とした。なお、製膜速度は巻取室21において50m/分とした。
実験1では、図2において、図5に示すコーンケーブローラ68を剥取ローラ35として使用すると共に、渡り部16では、1番目のパスローラ60と3番目のパスローラ62として図3に示すストレートローラ65を使用し、2番目のパスローラ61と4番目のパスローラ63としてコーンケーブローラ68を使用した。また、各ローラの配置箇所およびラップ角度θ等の条件を表1に示す。
テンタ18に送る直前の湿潤フィルム15の表面を目視にて観察した。このとき、その表面にしわやつれがなく製品として使用できる場合を○、製品として使用することができない場合を×として、湿潤フィルム15の平面性を2段階で評価した。また、渡り部16において湿潤フィルム15の搬送具合を目視により観察した。このとき、各パスローラ60〜63により蛇行することなく安定して湿潤フィルム15を搬送することができた場合を○、蛇行が生じてしまい安定して湿潤フィルム15を搬送することができなかった場合を×として、渡り部16での搬送安定性を2段階で評価した。その結果、平面性及び搬送安定性は共に○であった。
〔実験2〕
実験2では、剥取ローラ35及び渡り部16に配される1番目のパスローラ60から4番目のパスローラ63を全てコーンケーブローラとした以外は、実験例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、テンタ18に搬入前の湿潤フィルム15の平面性は○であったが、渡り部16での搬送安定性は×であった。
〔実験3〕
実験3では、剥取ローラ35及び渡り部16に配される1番目のパスローラ60から4番目のパスローラ63を全てストレートローラとした以外は、実験例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、搬送安定性は○であったが、搬送した湿潤フィルム15の表面にはしわやつれなどが大量に確認されて平面性が×となった。
〔実験4〕
実験4では、厚みが110μmの湿潤フィルム15を4番目のパスローラ63でのラップ角度θ4を110°と変更した以外は、実験例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、テンタ18に搬入前の湿潤フィルム15の表面は平面性に優れると共に、搬送安定性も良好であった。
〔実験5〕
実験5では、θ0を75°、θ1を120°、θ2を60°、θ3を120°、θ4を105°とした以外は、全て実験例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、平面性及び搬送安定性共に良好であった。
〔実験6〕
実験6では、図2において、図5に示すコーンケーブローラ68を剥取ローラ35として使用すると共に、渡り部16では、1番目のパスローラ60と3番目のパスローラ62としてコーンケーブローラ68を使用し、2番目のパスローラ61と4番目のパスローラ63としてストレートローラ65を使用した以外は、実験例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果、搬送安定性は良好であったが、平面性は低下した。
各実験でのローラの配置箇所およびラップ角度θ等の条件及び、平面性、搬送安定性に関する評価結果を表1に纏めて示す。なお、表1では、ストレートローラを使用した場合をSとし、コーンケーブローラを使用した場合をCとして表記する。また、θ0は剥取ローラ35のラップ角度であり、θ1は渡り部16の1番目のパスローラ60のラップ角度であり、θ2〜θ4は2番目以降から4番目までのパスローラにおけるラップ角度をそれぞれ意味する。
各実験の結果から、支持体から剥ぎ取った後の湿潤フィルムを搬送するときには、搬送する湿潤フィルムの接触面に応じて各ローラの形態を選択すると、湿潤フィルムに対するしわ伸ばし効果が得られると共に、蛇行させることなく優れた搬送安定性により湿潤フィルムを搬送することが出来ることを確認した。この場合、各パスローラに対する湿潤フィルムの巻き掛け角度を適宜調整することにより、よりしわ伸ばし効果や搬送安定性を向上させることが出来ることも分かった。