JP4886131B2 - ブラインおよびこれを使用する金属の腐食防止方法 - Google Patents

ブラインおよびこれを使用する金属の腐食防止方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱交換に使用するブラインおよびこれを使用する金属の腐食防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱交換器は、プロセス流体の冷却等の目的で塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液などのブライン(熱媒体)によって熱エネルギーの除熱等を行うものであり、化学装置等において広く使用されている。この熱交換器としては、隔壁式、直触式、蓄熱式、ヒートパイプ式等があり、また前記プロセス流体とブラインは、液体と液体、気体と気体、液体と気体等の組み合わせで使用される。前記熱交換器のうち、多管円筒型熱交換器に代表される隔壁式熱交換器はプロセス流体とブラインとを管や平板等の金属隔壁により隔てて熱交換させるものである。例えば多管円筒型熱交換器は、筒状の胴部、その内部に配置された管、ブラインの流れを調節するためのじゃま板等から構成されており、前記管内外にプロセス流体およびブラインが流通することによって熱交換が行われる。
【0003】
通常、上記のような熱交換器では、前記金属隔壁等の熱交換器内部の部材はブラインに曝されているため腐食が生じ易いという問題があり、その対策として腐食抑制剤がブラインに添加され、前記金属隔壁等の腐食が抑制されている。一般に、金属隔壁が鉄製の場合、腐食抑制剤としてはクロム酸塩やリン酸塩等が使用されており、銅およびその合金製の場合には、前記クロム酸塩、リン酸塩の他、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等のアゾール系が使用されている。これらの腐食抑制剤を添加することで金属の腐食速度を低下させることができる。
【0004】
しかしながら、ブラインに前記腐食抑制剤を添加していても、金属の腐食は徐々に進行する。特に前記ブラインが滞留して対流が生じにくい熱交換器内部に存在する隙間(例えば前記管とじゃま板との隙間等)では、局部的に隙間腐食が発生するという問題があり、これらの局部的な腐食が進行すると、管等の隔壁に穴が開く等の不具合が生じることがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱交換器内部における金属の腐食を防止することができるブラインおよびこれを使用する金属の腐食防止方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱交換器内部で腐食が発生するのは、前記金属隔壁やじゃま板等で局部的に酸素濃淡電池が形成されるからであるという点に着目し、熱媒体として不活性ガス置換され溶存酸素濃度が低減されたブラインを使用することで、酸素濃淡電池の形成が抑制されるだけでなく、ブライン中における金属の腐食電位が低下し、腐食、とりわけ局部的な隙間腐食を防止することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のブラインは、溶存酸素が不活性ガスと置換され、溶存酸素量が低減されていることを特徴とし、実質的に溶存酸素を含有しないのが好ましい。
【0007】
本発明のブラインは、強アルカリ性であるのが好ましい。これにより、前記ブライン中における金属の腐食電位が低下するので、金属の腐食をより一層抑制することができる。
【0008】
本発明のブラインは、炭酸カリウム水溶液からなることを特徴とする。この炭酸カリウム水溶液からなるブラインは、通常使用されている塩化カルシウム水溶液などからなるブラインと比較して、金属に対する腐食を抑制する効果が高い。また、本発明の炭酸カリウム水溶液からなるブラインは、前記と同様に、溶存酸素が不活性ガスと置換され、溶存酸素量が低減されているのが好ましく、実質的に溶存酸素を含有しないのがより好ましい。さらに、本発明の炭酸カリウム水溶液からなるブラインは、前記と同様に、強アルカリ性であるのが好ましい。
【0009】
本発明における金属の腐食防止方法は、金属隔壁を介してプロセス流体とブラインとの間で熱交換をするに際して、前記ブラインを使用することを特徴とする。
【0010】
本発明における金属の腐食防止方法は、金属隔壁を介してプロセス流体とブラインとの間で熱交換をするに際して、ブライン中における金属の腐食電位を−300mV以下にすることで、金属の腐食をより確実に抑制することができる。なお、上記腐食電位は、電位測定の際に照合電極として飽和カロメル電極を用いたときの値である。また、腐食電位は例えば以下の方法により測定することができる。図5は腐食電位を測定する装置の一例である。リード線をつけた金属試験片27は、恒温槽25により温度制御された測定用ブラインセル26中に浸漬される。飽和塩化カリウム水溶液29中に浸漬された照合電極30は、ブラインの汚染を防ぐために液絡23,バッファ用ブラインセル28,塩橋24を介して測定用ブラインセル26と接続される。金属試験片27と照合電極30の電位差は電位差計21で測定される。測定用ブラインセル26には必要に応じてガス吹き込み管22を通じてガスが吹き込まれる。電位差計21には、例えば北斗電工社製のHA−151を用いることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のブラインは、熱交換器においてプロセス流体との間で熱交換され、このプロセス流体を所定温度に調節するために用いられるものである。
【0012】
前記ブラインは、溶存酸素が不活性ガスと置換され、溶存酸素量が低減されていることを特徴とし、好ましくはブライン中の酸素分圧が2.5kPa以下(オービスフェア−ラボラトリーズ製溶存酸素計 model27152により測定)、より好ましくは実質的に溶存酸素を含有しないのがよい。ブライン中の溶存酸素量が低いほど、熱交換器内、とりわけ熱交換器内に存在する隙間において酸素濃淡電池が形成されにくい。また、ブライン中の溶存酸素量を低減させることで、ブライン中における金属の腐食電位を低下させることができる。前記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを使用することができる。
【0013】
前記ブラインは、好ましくは強アルカリ性であるのがよく、より好ましくはpHが14以上であるのがよい。ブラインのpHを上昇させることで、ブライン中における金属の腐食電位を低下させることができる。前記ブラインのpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性物質を前記ブライン中に適量添加することで調製することができる。
【0014】
前記ブラインとしては、例えば炭酸カリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、メタノール水溶液、エタノール水溶液等からなるものを使用できるが、好ましくは、熱交換器内における金属の腐食を抑制する効果が高い炭酸カリウム水溶液からなるものがよい。炭酸カリウム水溶液は、凝固点および粘度が低いというブラインに必要な特徴も兼ね備えている。また、前記炭酸カリウム水溶液の濃度は、5〜50重量%程度、好ましくは35〜46重量%程度とするのがよい。
【0015】
図1は本発明における金属の腐食防止方法を実施するための装置の一例を示す概略図である。図1に示すように、本発明における金属の腐食防止方法は、熱交換器3内の金属隔壁を介してプロセス流体8とブライン6との間で熱交換をするに際して、不活性ガス置換されたブライン6を使用するものである。
【0016】
密閉されたブライン槽1には所定量のブライン6が入れられ、このブライン6内に不活性ガス供給管5から不活性ガスが通気される。これにより、ブライン6内の酸素が不活性ガスに置換され、ブライン6の溶存酸素量を低下させるとともに、ブライン中における金属の腐食電位を低下させることができる。このブライン中における金属の腐食電位は、好ましくは−300mV以下にするのがよい。これにより、金属の腐食をより確実に抑制することができる。前記腐食電位を−300mV以下にするには、上記したブライン中の溶存酸素量を低減させる方法の他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどをブライン中に適量添加して、ブラインを強アルカリ性にする方法も用いることができる。
【0017】
ブライン6内から除去された酸素および過剰に供給された不活性ガス等のガスはバルブ9を備えた排気管7から排気される。ブライン6内の酸素が十分に不活性ガスに置換され、実質的に溶存酸素を含有しないようになった場合は、不活性ガス通気を停止しバルブ9を閉じて密閉してもよい。
【0018】
不活性ガス置換されたブライン6はポンプ2により熱交換器3に供給され、熱交換器3内部の隔壁を介してプロセス流体8から除熱することにより、プロセス流体8を所定の温度まで低下させる。この熱交換により温度上昇したブライン6は、冷媒を循環させるブライン冷却器4により所定の温度まで冷却され、再度ブライン槽1に循環供給される。
【0019】
熱交換器3としては、前記した隔壁式の熱交換器等が使用できる。隔壁式の熱交換器とは、プロセス流体8とブライン6等の熱媒体とを管や平板等の金属隔壁により隔てて熱交換させるものである。隔壁式の熱交換器としては、多管円筒型熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル式熱交換器等が挙げられる。
【0020】
前記した管や平板等の金属隔壁は、その内外に接触するプロセス流体8とブライン6との熱交換を担う重要なものであり、通常、銅またはその合金、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル基合金、チタン等の材料が使用されている。特に銅またはその合金は、熱伝導率が高いことから前記金属隔壁の材料として好適に使用されている。また、炭素鋼は、安価であることから前記金属隔壁の材料として好適に使用されている。
【0021】
以上のように、本発明では、金属の腐食を防止するために、(1)ブライン中の溶存酸素量を低減させる(酸素濃淡電池の形成が抑制される。金属の腐食電位が低下する。)、(2)ブラインを強アルカリ性にする(金属の腐食電位が低下する。)、(3)炭酸カリウム水溶液を使用する、という手段を用いることができる。本発明においては、これら(1)〜(3)の手段をそれぞれ単独で実施しても金属の腐食防止効果を得ることができるが、好ましくはこれらを併用するのがよい。
【0022】
なお、本発明におけるブラインは、冷凍装置、冷蔵装置、製氷装置等に用いる冷媒としても使用することができる。また、本発明の炭酸カリウム水溶液からなるブラインに、他の成分、例えば公知の塩化カルシウム水溶液などのブラインを必要に応じて加えて使用してもよい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0024】
実施例1
金属の腐食に対する影響を炭酸カリウム水溶液ブラインと塩化カルシウム水溶液ブラインとで比較した。試験方法を以下に示す。
まず、所定濃度(0、0.1重量%、1重量%、10重量%および40重量%の5種類)に調製した炭酸カリウム水溶液および塩化カルシウム水溶液をそれぞれ容器に750mLずつ入れ、温度を50℃にした。この水溶液中に直径57mm、厚み2mmの円盤状の炭素鋼を浸漬し、炭素鋼を300rpmまたは800rpmの回転速度で24時間回転させた。各濃度と炭素鋼の腐食度(g/(m2・時))との関係を調べた。その結果を図2のグラフに示す。なお、腐食度は、炭素鋼の乾燥重量を前記水溶液への浸漬前後で測定し、これにより得られた炭素鋼の減少重量を炭素鋼の表面積と浸漬時間とで除して求めた。
【0025】
図2に示すように、炭酸カリウム水溶液に浸漬した炭素鋼は各濃度において腐食が抑制されているのに対して、塩化カルシウム水溶液に浸漬した炭素鋼は腐食により著しく重量が減少しており、特に回転速度が800rpmのときに、より重量減が大きい結果となった。
【0026】
実施例2
ブライン中の溶存酸素の窒素置換の有無が隙間腐食に及ぼす影響について確認するために、図3に示す試験部材11を用いた浸漬試験を行った。試験部材11は、ガラス製の丸棒12を銅製のプレート13で挟み、ボルト14およびナット15で固定したものである。この試験部材11を、表1に示す条件1および2に調製したブライン(36重量%炭酸カリウム水溶液)中に浸漬した。なお、ブラインの温度は、40℃とした。前記試験部材11を各ブライン中にそれぞれ2,160時間浸漬した後、試験部材11を10%硫酸で酸洗し、チューブ12とプレート13との隙間部16の腐食状態を走査型電子顕微鏡により観察した。また、前記酸洗は、浸漬試験により試験部材11に付着したスケールを除去するために行った。
【表1】
Figure 0004886131
【0027】
上記浸漬試験を行った結果、条件1(窒素置換無し)よりも、ブライン中の溶存酸素を窒素置換した条件2の方が、銅の腐食が抑制されていた。
【0028】
実施例3
化学製品の製造工程中において実際に使用しているブラインの銅に対する腐食性を確認するために、ブライン中における銅の隙間腐食浸漬試験を行った。各ブラインの性状を表2に示した。隙間腐食浸漬試験は実施例2と同様な方法で表3に示す2条件で実施した。
【0029】
上記浸漬試験の結果、条件3では隙間腐食が発生し、条件4では隙間腐食は発生しなかった。
【表2】
Figure 0004886131
【表3】
Figure 0004886131
【0030】
実施例4
化学製品の製造工程中において実際に使用している表2のブライン中における銅の腐食電位について調べた。腐食電位の測定は表4に示す3条件で実施した。その結果を、図4のグラフに示す。
【表4】
Figure 0004886131
【0031】
図4および表4に示すように、条件5は、運転開始から運転時間約115×103秒(約32時間)までの間、腐食電位が−200mV以上で推移していた。条件6および7は、運転開始から運転時間約95×103秒(約26時間)までの間、腐食電位が−300mV以下で推移していた。また、窒素置換した条件7は窒素置換していない条件6に比べて、腐食電位はさらに低く推移していた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、金属隔壁を介してプロセス流体とブラインとの間で熱交換をするに際して、熱媒体として不活性ガス置換され溶存酸素濃度が低減されたブラインを使用することで、熱交換器内部の部材の腐食、とりわけ近接する部材間における隙間腐食を抑制することができるという効果がある。
【0033】
本発明によれば、ブラインが強アルカリ性であるときは、前記ブライン中における金属の腐食電位が低下するので、金属の腐食をより一層抑制することができるという効果がある。
【0034】
本発明によれば、ブラインが炭酸カリウム水溶液からなるときは、通常使用されている塩化カルシウム水溶液などからなるブラインと比較して、金属に対する腐食を抑制する効果を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における金属の腐食防止方法を実施するための装置の一例を示す概略図である。
【図2】炭酸カリウム水溶液および塩化カルシウム水溶液の濃度と腐食度との関係を示すグラフである。
【図3】実施例2および3の浸漬試験に用いる試験部材を示す斜視図である。
【図4】化学製品の製造工程中において実際に使用しているブライン中における銅の自然電位を示すグラフである。
【図5】腐食電位を測定する装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ブライン槽
2 ポンプ
3 熱交換器
4 ブライン冷却器
5 不活性ガス供給管
6 ブライン
7 排気管
8 プロセス流体
9 バルブ
11 試験部材
12 丸棒
13 プレート
14 ボルト
15 ナット
16 隙間部

Claims (4)

  1. pH調整用のアルカリ物質(但し、炭酸カリウムを除く)を添加した炭酸カリウムの濃度が35〜46重量%の水溶液からなるブラインであって、pHが14以上に調整されており、かつ溶存酸素が不活性ガスと置換され、溶存酸素量が低減されていることを特徴とするブライン。
  2. 実質的に溶存酸素を含有しない請求項1記載のブライン。
  3. 金属隔壁を介してプロセス流体とブラインとの間で熱交換をするに際して、請求項1または2に記載のブラインを使用して、該ブライン中における金属の腐食電位を−300mV以下にすることを特徴とする金属の腐食防止方法。
  4. 前記金属が銅若しくはその合金または炭素鋼からなる請求項3記載の金属の腐食防止方法。
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