JP4887732B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

この発明は、カソード側に金属部材を備える燃料電池の運転制御技術に関する。
燃料電池は、通常、複数の単セルを積層することにより構成される。この単セルを積層する際に、隣接する単セルのアノード側とカソード側との空間を分離するとともに、隣接する単セルを電気的に接続するため、単セルには導電性とガス不透性とを有するセパレータが設けられる。セパレータは、種々の材料で形成することが可能であるが、加工性と耐久性を高めるために金属材料で形成される場合がある。一般に、燃料電池のセパレータは、酸素や高濃度のプロトンに曝されるため、セパレータを形成する金属材料としては耐食性が高い材料が使用される。
特開2000−353531号公報 特開2004−356030号公報 特開平11−219715号公報
しかしながら、セパレータに耐食性の高い材料を使用しても長時間の通電により酸化が進行し、生成される酸化物の堆積により燃料電池の発電性能が低下するおそれがある。この問題は、金属製のセパレータを使用する燃料電池をはじめ、カソード側に金属部材を有する燃料電池一般に共通する。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、カソード側に金属部材を有する燃料電池の酸化物の堆積による発電性能の低下を抑制することを目的とする。
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の燃料電池システムは、電解質膜と前記電解質膜の両面に設けられた触媒層とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の一方の側に接して設けられ金属部材を含むカソード側集電体と、前記膜電極接合体の他方の側に接して設けられたアノード側集電体と、を備える燃料電池と、前記アノード側集電体に対する前記金属部材の電位を設定する電位設定部と、前記金属部材に形成された表面酸化物の膜厚を推定する膜厚推定部と、を備え、前記電位設定部は、前記膜厚推定部が推定した前記表面酸化物の膜厚が所定の上限値を越えるときに、前記燃料電池による発電を行ないつつ、前記アノード側集電体に対する前記金属部材の電位を前記燃料電池の出力電力が最大になる最大出力点電圧よりも低い所定の低電位モード電圧に設定する低電位モードを有していることを特徴とする。
この構成によれば、低電位モードの実行により金属部材の酸化物を還元することができる。そのため、酸化物の堆積が抑制されるので燃料電池の発電性能の低下が抑制される。また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記所定の低電位モード電圧は、単セル当たり0.3V以下であることとしても良い。
前記所定の低電位モード電圧は、−0.2V以上であるものとしてもよい。
この構成によれば、低電位モードの実行による燃料電池の損傷のおそれをより低減することができる。
前記電位設定部は、前記燃料電池の出力電流を調整することにより前記アノード側集電体に対する前記金属部材の電位を前記低電位モード電圧に設定する出力電流調整部を備えるものとしてもよい。
この構成によれば、出力電流の調整により金属部材の電位を設定することができるので、金属部材の電位の設定がより容易となる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システムおよび燃料電池システム制御方法、その燃料電池システムや制御方法を利用した発電装置およびその燃料電池システムを搭載した電気自動車等の態様で実現することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施形態:
B.実施例:
C.変形例:
A.実施形態:
図1は、本発明の一実施形態としての燃料電池システム10の構成を示す概略構成図である。燃料電池システム10は、燃料電池100と、燃料電池100に導線422,424を介して接続された燃料電池出力制御部410と、を備えている。なお、通常、燃料電池は、複数の単セルが積層された燃料電池スタックとして構成されるが、ここでは図示の便宜上、1つの単セルからなる燃料電池100を示している。
燃料電池100は、膜電極接合体110と、膜電極接合体110を両側から挟み込むカソード側集電体200とアノード側集電体300と、を備えている。膜電極接合体110は、電解質膜112と、電解質膜112を両側から挟み込む2つの触媒層120,130と、を備えている。電解質膜112は、ナフィオン(デュポン社の商標)などのフッ素系樹脂材料で形成されており、湿潤状態において良好な導電性を有するプロトン伝導性のイオン交換膜である。触媒層120,130は、白金または白金と他の金属からなる合金を担持したカーボン粉を作成し、このカーボン粉を適当な有機溶剤に分散させ、電解質(例えばナフィオン)を適量添加してペースト化し、電解質膜上にスクリーン印刷することにより形成されている。
カソード側集電体200は、カソード側拡散層210と、カソード側セパレータ220と、を備えている。アノード側集電体300は、アノード側拡散層310と、アノード側セパレータ320と、を備えている。カソード側拡散層210とアノード側拡散層310(以下、これらを併せて「ガス拡散層」とも呼ぶ)は、触媒層120,130よりも気孔率が高い導電性の多孔質材料(例えば、カーボンフェルト)で形成されている。
カソード側セパレータ220とアノード側セパレータ320(以下、これらを併せて「セパレータ」とも呼ぶ)は、チタンを成形することにより形成されている。セパレータ220,320には、それぞれガス拡散層210,310に面した側に凹部が設けられている。カソード側セパレータ220に設けられた凹部とカソード側拡散層210とで形成される空間(カソード流路222)には、酸素を含む酸化ガスが供給される。アノード側セパレータ320に設けられた凹部とアノード側拡散層310とで形成される空間(アノード流路322)には、水素を含む燃料ガスが供給される。なお、これらの酸化ガスと燃料ガスとはいずれも燃料電池反応に用いられるガスであるので、これらのガスは併せて「反応ガス」とも呼ばれる。
なお、本実施例では、セパレータ220,320として、ガス拡散層210,310側に反応ガスの流路を形成するための凹部を有するものを使用しているが、ガス拡散層210,310側に凹凸のないセパレータを使用することもできる。この場合、ガス拡散層210,310が反応ガスの流路となる。
アノード流路322に供給された水素分子は、アノード側拡散層310を透過して触媒層130に到達する。触媒層130では、水素分子が電子とプロトンとに解離する。解離によって生じたプロトンは、電解質膜112を通して触媒層120に移動する。また、解離によって生じた電子は、アノード側拡散層310とアノード側セパレータ320を介して外部の導体に供給される。
なお、このとき、白金等の触媒を含む触媒層130には水素が供給されているので、触媒層130の電位と、触媒層130と電気的に接続されたアノード側拡散層310およびアノード側セパレータ320のそれぞれの電位とは、ほぼ標準水素電極電位となる。
カソード流路222に供給された酸素分子は、カソード側拡散層210を透過して触媒層120に到達する。触媒層120では、カソード側拡散層210を通して供給された酸素分子と、電解質膜112を通して供給されたプロトンと、外部の導体からカソード側セパレータ220とカソード側拡散層210とを通して供給された電子との燃料電池反応により水が生成される。
燃料電池出力制御部410は、通常モードと、低電位モードと、の2つの動作モードを有している。通常モードにおいて、燃料電池システム10の負荷(図示しない)が要求する電力(要求電力)に基づいて燃料電池100の出力を制御する。一方、低電位モードにおいて、燃料電池出力制御部410は、アノード側セパレータ320に対するカソード側セパレータ220の電位を通常モードの実行時よりも低く設定する。なお、これらの2つの動作モードにおける燃料電池100の出力制御については、後述する。
図2は、燃料電池100(図1)の発電特性を示す説明図である。図2(a)および図2(b)の横軸は、燃料電池100の出力電流Iを表している。図2(a)の縦軸は、燃料電池100のアノード側セパレータ320に対するカソード側セパレータ220の電位(セル電圧)Vを表し、図2(b)の縦軸は、燃料電池100の出力電力Pを表している。なお、本明細書において、アノード側セパレータ320に対する電位を単に「電圧」とも呼ぶ。
図2(a)に示すように、燃料電池100が電流を出力しない出力電流I=0の場合、燃料電池100のセル電圧Vは開回路電圧(OCV≒1V)となる。そして、出力電流Iの増加に伴ってセル電圧Vは低下し、出力電流Iが限界電流Ilimになるとセル電圧Vは0になる。
燃料電池100の出力電流Iとセル電圧Vとの間には図2(a)に示す関係(電流−電圧特性)があるため、図2(b)に示すように、燃料電池100の出力電力Pは、出力電流Iが0と限界電流Ilimとの2点で0になる。そして、燃料電池100の出力電力Pは、図2(a)の電流−電圧特性によって定まる出力電流IXPで最大出力電力PXPになる。なお、本明細書において、出力電力Pが最大出力電力PXPとなる出力電流I(=IXP)を最大出力点電流とも呼ぶ。また、図2(a)の電流−電圧特性によって最大出力点電流IXPに対応付けられるセル電圧V(=VXP)を最大出力点電圧とも呼ぶ。
燃料電池出力制御部410(図1)が通常モードで動作する場合、燃料電池100の出力制御は、上述のように、要求電力PRQに基づいて行われる。具体的には、負荷の要求電力PRQが決定されると、図2(b)に示す関係に基づいて目標電流ITGが決定される。なお、図2(b)に示すように、要求電力PRQには2点の出力電流Iが対応するが、目標電流ITGは図2(b)のグラフの実線で示す関係に基づいて決定される。これは、同一の電力を出力する場合において、図2(b)のグラフの点線で示す最大出力点電流IXPより大電流の領域では、図2(b)のグラフの実線で示す最大出力点電流IXPよりも小電流の領域よりも燃料電池100の損失が大きくなるためである。
目標電流ITGが決定されると、燃料電池出力制御部410は、図2(a)の電流−電圧特性に従って燃料電池100のセル電圧Vを目標電圧VTGに設定する。燃料電池100のセル電圧Vが目標電圧VTGになると、燃料電池100の出力電流Iは目標電流ITGとなり、燃料電池100からは要求電力PRQに相当する電力が出力される。燃料電池100が出力する電力は、燃料電池出力制御部410を介して燃料電池システム10の負荷に供給される。なお、本実施形態においては、要求電力PRQに基づいて目標電流ITGが決定され、決定された目標電流ITGに基づいて目標電圧VTGにセル電圧Vを設定しているが、要求電力PRQから直接目標電圧VTGを決定し、決定された目標電圧VTGにセル電圧を設定するものとしても良い。
このように、燃料電池出力制御部410が通常モードの出力制御を実行している場合、セル電圧Vは、図2(a)のグラフの実線で示すように、最大出力点電圧VXPよりも高い状態に維持される。セル電圧Vが高い状態では、カソード側セパレータ220の表面酸化反応が進行する。このカソード側セパレータ220の表面酸化反応により、カソード側セパレータ220の表面には電気伝導度の低い酸化チタン(TiO2)膜が形成され、時間の経過とともに酸化チタン膜の厚さが増大する。
カソード側セパレータ220の表面に酸化チタン膜が形成されると、カソード側セパレータ220とカソード側拡散層210との間の抵抗が増大する。カソード側セパレータ220とカソード側拡散層210との間の抵抗が増大すると、燃料電池100の損失が増大し、燃料電池100の発電効率が低下するおそれがある。
燃料電池出力制御部410が低電位モードで動作する場合、燃料電池100は、セル電圧Vを最大出力点電圧VXPよりも低い所定の低電位モード電圧VLVに設定する。具体的には、燃料電池出力制御部410は、図2(a)の電流−電圧特性によって低電位モード電圧VLVに対応づけられる低電位モード電流ILVを燃料電池100から取り出すことにより、セル電圧Vを低電位モード電圧VLVに設定する。なお、燃料電池出力制御部410は、燃料電池の出力電流Iを調整することによりセル電圧Vを低電位モード電圧VLVに設定するので、出力電流調整部とも呼ぶことができる。
このように、燃料電池出力制御部410が低電位モードの出力制御を実行している場合、セル電圧Vが低くなる。そのため、カソード側セパレータ220の表面還元反応が進行する。この表面還元反応により、カソード側セパレータ220の表面に形成された酸化チタン膜がチタンに還元され、酸化チタン膜の厚さが減少する。
なお、所定の低電位モード電圧VLVは、カソード側セパレータ220の表面に形成された酸化チタン膜の還元反応が進行する電圧であればよい。具体的には、低電位モード電圧VLVは最大出力点電圧VXPよりも低電圧であれば良い。なお、低電位モード電圧VLVは、酸化チタン膜の還元反応がより確実に進行するように、0.3V以下とするのが好ましい。低電位モード電圧VLVとしては、酸化チタン膜の還元反応がより速く進行するように、0.2V以下とするのがより好ましく、0.1V以下とするのがさらに好ましい。
また、所定の低電位モード電圧VLVは、燃料電池出力制御部410として両極性の電流シンクを用いることにより、負の値とすることも可能である。この場合、燃料電池100からは、限界電流Ilimより大きい電流が取り出される。そのため、燃料電池100での発熱量が増大し、燃料電池100が損傷するおそれがある。所定の低電位モード電圧VLVは、このような特性を考慮して、所定の下限電圧以上に設定されるのが好ましい。なお、所定の下限電圧は、実験等によって求めることが可能であるが、燃料電池100の損傷をより確実に抑制するため、−0.2V以上に設定するのが好ましく、−0.1V以上に設定するのがより好ましい。
図3は、燃料電池100(図1)の出力制御を行う出力制御ルーチンを示すフローチャートである。この出力制御ルーチンは、一定時間毎に、繰り返し実行される。なお本実施形態では、出力制御ルーチンは一定時間毎に開始されるが、このルーチンは所定の運転時間内に少なくとも1回実行されていればよく、例えば発電量毎に1回実行するものとしても良い。
図4は、燃料電池出力制御部410が図3に示す出力制御ルーチンを実行する際の、燃料電池100の状態の一例を示す説明図である。図4の各グラフの横軸は時間を表している。図4(a)の縦軸は、要求電力PRQを表し、図4(b)の縦軸は、燃料電池出力制御部410の動作モードを表している。図4(c)と図4(d)との縦軸は、それぞれ、燃料電池100の出力電流Iとセル電圧Vとを表している。また、図4(e)の縦軸は、カソード側セパレータ220の表面に形成される酸化チタン膜厚を示している。
図3のステップS100において、燃料電池出力制御部410は、低電位モードの実行の要否を判断する。低電位モードの実行が不要であると判断された場合には、制御はステップS200に移される。一方、低電位モードの実行が必要であると判断された場合には、制御はステップS300に移される。
低電位モードの実行の要否は、例えば、カソード側セパレータ220(図1)の表面に形成される酸化チタン膜厚を推定し、膜厚推定値が所定の膜厚上限値(例えば、30nm)を超えた場合に低電位モードの実行が必要であると判断することができる。この場合、膜厚推定値は、燃料電池100の通電時間や発電量と、酸化チタン膜厚との関係を実験的に求め、求められた関係と通電時間や発電量に基づいて算出することが可能である。
また、低電位モードの実行の要否は、燃料電池システム10(図1)に設けられた直列抵抗測定部(図示しない)が燃料電池100の直列抵抗を測定し、直列抵抗測定値が所定の直列抵抗上限値を超えた場合に低電位モードの実行が必要であると判断することもできる。なお、燃料電池100の直列抵抗は、例えば、燃料電池システム10の運転中に、燃料電池100の出力電流を所定の直列抵抗測定電流に設定した際の燃料電池100の出力電圧を測定することによって測定することができる。燃料電池100の直列抵抗は、また、燃料電池システム10の起動や停止等の際に、燃料電池100の出力電流と出力電圧との関係を測定し、その関係を表すグラフの傾きによって求めることもできる。この場合、燃料電池100の直列抵抗を求める際に設定される出力電流は、図2(a)に示す電流−電圧特性のグラフがほぼ直線となっている領域の値に設定されるのが好ましい。
なお、燃料電池システム10の起動と停止の間の運転継続時間に対して、低電位モードの実行が必要と判断される周期が十分長い場合、直列抵抗が所定の直列抵抗上限値を超えた後、燃料電池システム10を起動もしくは停止する際に低電位モードの実行をするものとしても良い。
図3のステップS200において、燃料電池出力制御部410は、通常モードの出力制御を行ない、その後、出力制御ルーチンは終了する。図4の例では、図4(b)に示すように、時刻t0から時刻t1の期間と、時刻t2から時刻t3の期間と、時刻t4以降の期間とにおいて通常モードの出力制御が行われる。通常モードの出力制御では、図4(c)に示すように、要求出力PRQに基づいて目標電流ITGが決定される。そして、図4(d)に示すように、決定された目標電流ITGと図2(a)の電流−電圧特性とに基づいてセル電圧Vが目標電圧VTGに設定される。
上述のように、通常モードの出力制御の実行によりセル電圧Vが高くなっている状態では、カソード側セパレータ220の表面酸化反応が進行する。そのため、図4(d)に示すように、時刻t0から時刻t1の期間と、時刻t2から時刻t3の期間と、時刻t4以降の期間とにおいて、酸化チタン膜厚は時間とともに増加する。
図3のステップS300において、燃料電池出力制御部410は、低電位モードの出力制御を行ない、その後、制御はステップS310に移される。ステップS310では、所定の待機時間が経過するまで、低電位モードの出力制御状態が維持される。なお、所定の待機時間は、カソード側セパレータ220に形成された酸化チタン膜の還元に十分な時間が設定される。所定の待機時間は、例えば、推定された酸化チタン膜厚と、実験的に求められた酸化チタンの還元速度とに基づいて決定することができる。なお、ステップS310は、図3に示す燃料電池出力制御ルーチンの実行周期や、酸化チタンの還元速度等に応じて省略することも可能である。
図4の例では、図4(b)に示すように、時刻t1から時刻t2の期間と、時刻t3から時刻t4の期間とにおいて低電位モードの出力制御が維持されている。低電位モードの出力制御では、図4(c)に示すように、要求出力PRQの値にかかわらず燃料電池100の出力電流Iを低電位モード電流ILVにする。そして、燃料電池100から低電位モード電流ILVを取り出すことにより、図4(d)に示すように、セル電圧Vを低電位モード電圧VLVに設定する。
上述のように、低電位モードの出力制御の実行によりセル電圧Vが低くなっている状態では、カソード側セパレータ220の表面に形成された酸化チタンの還元反応が進行する。そのため、図4(d)に示すように、時刻t1から時刻t2の期間と、時刻t3から時刻t4の期間とにおいて、酸化チタン膜厚は時間とともに減少する。
このように、本実施形態においては、低電位モードの出力制御を実行することにより、カソード側セパレータ220の表面に形成された酸化チタンが還元され、酸化チタンの膜厚は時間とともに減少する。そのため、酸化チタンの膜の形成による燃料電池100の抵抗の増大が抑制され、燃料電池100の発電効率の低下が抑制される。
B.実施例:
[チタン板のアノード分極処理]
図5は、標準水素電極に対するチタン板の電位と、チタン板の表面に形成される酸化チタン膜の厚さとの関係の評価の様子を示す説明図である。この評価では、チタン板のアノード分極処理を行いチタン板表面に酸化チタン膜を形成した。なお、評価に使用したチタン板はカソード側セパレータ220(図1)に相当し、標準水素電極はアノード側セパレータ320(図1)に相当する。
図5(a)は、チタン板のアノード分極処理のためのアノード分極処理装置500の構成を示している。アノード分極処理装置500は、ポテンショスタット510と、電解液槽520と、銀・塩化銀電極530とを備えている。
ポテンショスタット510の作用極(W極)にはチタン板540を接続し、対極(C極)には白金電極550を接続した。また、参照極(R極)には銀・塩化銀電極530を接続した。そして、ポテンショスタット510の各極に接続されたチタン板540と、白金電極550と、銀・塩化銀電極530と、を電解液槽520に投入した電解液560に浸漬した。なお、電解液槽520に投入した電解液560は、pHが5となるように調製した。
[実施例]
実施例では、ポテンショスタット510を制御して、図5(b)に示すように、1時間の周期のうち、前半0.5時間は標準水素電極に対するチタン板540の電位(以下、「チタン板電位」ともよぶ)を1.2Vとし、後半0.5時間はチタン板電位を0.1Vとした。そして、この1時間周期のチタン板電位の設定を100回繰り返すことにより、100時間の通電を行った。この説明から分かるように、チタン板のアノード分極処理の100時間のうち、チタン板電位が1.2Vとなっていた時間は、50時間である。
[比較例]
比較例では、図5(c)に示すように、50時間連続してチタン板電位を1.2Vとした。
[接触抵抗の評価]
チタン板の表面に形成される酸化チタン膜の厚さを評価するため、アノード分極処理を行ったチタン板と、拡散層に使用されるカーボンフェルトと、の間の接触抵抗(以下、単に[接触抵抗]とも呼ぶ)を測定した。
図6(a)は、接触抵抗の測定の様子を示す説明図である。接触抵抗の測定では、アノード分極処理を行ったチタン板540と、カーボンフェルト570と、を重ね合わせ、チタン板540とカーボンフェルト570との接触面に垂直に応力を加えた。そして、応力を加えた状態でのチタン板540とカーボンフェルト570との間の抵抗を抵抗測定装置580によって測定した。
図6(b)は、実施例と比較例とにおける接触抵抗の測定結果を示している。図6(b)に示すように、比較例の接触抵抗は実施例の接触抵抗の約3倍となった。このことから、比較例においてアノード分極処理を行ったチタン板表面の酸化チタン膜の厚さは、実施例においてアノード分極処理を行ったチタン板表面の酸化チタン膜の厚さよりも厚いことが分かった。
上述のように、実施例と比較例とのアノード分極処理では、チタン板電位が1.2Vに設定された時間はともに50時間である。そのため、チタン板電位が1.2Vの状態でチタン板表面に形成される酸化チタン膜の厚さは、ほぼ同じと考えられる。一方、実施例においてアノード分極処理を行ったチタン板表面の酸化チタン膜の厚さは、比較例においてアノード分極処理を行ったチタン板表面の酸化チタン膜の厚さよりも薄くなった。このことから、チタン板電位を0.1Vに設定することにより、チタン板表面に形成された酸化チタン膜が還元され、酸化チタン膜の厚さが減少することが分かった。
C.変形例:
なお、この発明は上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
上記実施形態では、燃料電池100(図1)から低電位モード電流ILVを取り出すことによりセル電圧Vを低電位モード電圧VLVに設定しているが、他の方法によりアノード側セパレータ320(図1)に対するカソード側セパレータ220(図1)の電位を設定することも可能である。例えば、電位設定用電極を膜電極接合体110(図1)に設け、電位設定用電極とカソード側セパレータ220との間に適宜電流を流すことによりアノード側セパレータ320に対するカソード側セパレータ220の電位を設定するものとしても良い。
C2.変形例2:
上記実施形態では、本発明をカソード側セパレータ220をチタンで形成した燃料電池100に適用しているが、本発明は、一般に、カソード側集電体200が金属部材を含む燃料電池に適用することができる。金属部材としては、チタン等の単体金属と、チタン合金やステンレス鋼等の合金と、のいずれで形成されたものとしても良い。また、カソード側セパレータ220とカソード側拡散層210との少なくとも一方が金属部材であるものとしても本発明を適用することが可能である。この場合、アノード側集電体300に対する金属部材の電位が低電位モード電圧VLVに設定できればよい。
本発明の一実施形態としての燃料電池システム10の構成を示す概略構成図。 燃料電池100の発電特性を示す説明図。 燃料電池100の出力制御を行う出力制御ルーチンを示すフローチャートである。 燃料電池出力制御部410が出力制御ルーチンを実行する際の、燃料電池100の状態の一例を示す説明図である。 標準水素電極に対するチタン板の電位と、チタン板の表面に形成される酸化チタン膜の厚さとの関係の評価の様子を示す説明図。 標準水素電極に対するチタン板の電位と、チタン板の表面に形成される酸化チタン膜の厚さとの関係の評価結果を示す説明図。
符号の説明
10…燃料電池システム
100…燃料電池
110…膜電極接合体
112…電解質膜
120,130…触媒層
200…カソード側集電体
210…カソード側拡散層
220…カソード側セパレータ
222…カソード流路
300…アノード側集電体
310…アノード側拡散層
320…アノード側セパレータ
322…アノード流路
410…燃料電池出力制御部
422,424…導線
500…アノード分極処理装置
510…ポテンショスタット
520…電解液槽
530…塩化銀電極
540…チタン板
550…白金電極
560…電解液
570…カーボンフェルト
580…抵抗測定装置

Claims (4)

  1. 燃料電池システムであって、
    電解質膜と前記電解質膜の両面に設けられた触媒層とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の一方の側に接して設けられ金属部材を含むカソード側集電体と、前記膜電極接合体の他方の側に接して設けられたアノード側集電体と、を備える燃料電池と、
    前記アノード側集電体に対する前記金属部材の電位を設定する電位設定部と、
    前記金属部材に形成された表面酸化物の膜厚を推定する膜厚推定部と、
    を備え、
    前記電位設定部は、前記膜厚推定部が推定した前記表面酸化物の膜厚が所定の上限値を越えるときに、前記燃料電池による発電を行ないつつ、前記アノード側集電体に対する前記金属部材の電位を前記燃料電池の出力電力が最大になる最大出力点電圧よりも低い所定の低電位モード電圧に設定する低電位モードを有している、燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムであって、
    前記所定の低電位モード電圧は、単セル当たり0.3V以下である、燃料電池システム。
  3. 請求項1または2記載の燃料電池システムであって、
    前記所定の低電位モード電圧は、単セル当たり−0.2V以上である、燃料電池システム。
  4. 請求項1ないし3のいずれか記載の燃料電池システムであって、
    前記電位設定部は、前記燃料電池の出力電流を調整することにより前記アノード側集電体に対する前記金属部材の電位を前記低電位モード電圧に設定する出力電流調整部を備える、燃料電池システム。
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