JP4892208B2 - 塗膜形成方法及び塗装物品 - Google Patents
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Description
従来からこのような袋構造の内板膜厚を確保して耐食性を得るために電着塗装条件の工夫がなされているものの、内板膜厚10μm確保するために電着塗装の電圧を上げると合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の外板面にクレタリング(ガスピンホール)が発生する。一方、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の外板面にクレタリング発生のない塗装電圧に設定すると、内板膜厚10μmを確保できないという問題点を抱えていた。
従来の発明として、カチオン電着塗装において、単位膜厚当たりの分極抵抗値(a)が120〜300kΩ・cm2/μm、かつ単位電気量当たりの塗料析出量(b)が50〜150mg/Cの範囲であるカチオン電着塗料を用い、実効電圧(V)230V以下で塗装することを特徴とする塗膜形成方法が挙げられる[特許文献1]。
特許文献1における外板膜厚10〜12μmでは、自動車車体において要求される仕上り性には不十分であった。その対策として塗料中の顔料濃度を下げると塗面上にハジキが発生していた。例え、外板膜厚を確保したとしても、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の耐クレタリング性、や仕上り性が不十分であった。
他に、カチオン電着塗料の電着塗装時において、塗膜の析出開始に必要な電気量が100〜400C/m2であること、単位膜厚当たりの分極抵抗値が50〜300kΩ・cm2/μmであることを特徴とする塗膜形成方法が挙げられる[特許文献2]。
特許文献2には、10μm(内板膜厚)/14μm(外板膜厚)のつきまわり性に関しての例示があるが、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の耐クレタリング性や仕上り性が不十分であった。
他に、基体樹脂としてアルキルフェノール及びポリカプロラクトンで変性したアミン付加エポキシ樹脂(I)、硬化成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤(II)を含有するカチオン電着塗料組成物を用いて、電着塗装時における、塗膜の単位膜厚当たりの分極抵抗値(a)が125〜150kΩ・cm2/μmであり、かつ単位電気量当たりの塗料析出量(b)が28〜50mg/Cであり、つきまわり性試験における内板と外板の膜厚(c)が、内板膜厚が10μmで外板膜厚が10μm〜12μmである塗膜を得ることを特徴とする電着塗膜形成方法が挙げられる[特許文献3]。
特許文献3には、10μm(内板膜厚)/10〜12μm(外板膜厚)のつきまわり性が得られる。しかし、内板膜厚/外板膜厚=10μm/15〜17μmの膜厚を確保し、耐クレタリング性、耐ハジキ性、仕上り性に優れた塗膜は得られなかった。
該塗膜形成方法を用いることによって、袋部を有する被塗物、例えば、自動車車体の袋部の膜厚10μmを確保し、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にクレタリングやハジキの発生なく、仕上り性に優れる外板膜厚15〜17μmの被塗物を得ることができる。
(注1)つきまわり性:つきまわり性は、図1に示されるように、りん酸亜鉛処理した冷延鋼板で下部に8mmφの穴が設けられているAB面〜EF面と、GH面の4枚を20mm間隔で平行に配置した4枚ボックス法により評価する。
電着塗装は、図2に示すような配線図で行い、A面鋼板(外板想定)に形成された塗膜の膜厚と、G面鋼板(内板想定)に形成された膜厚により、以下の式(3)によってつきまわり性を評価する。
つきまわり性=[G面膜厚(μm)/A面膜厚(μm)]×100(%)・式(3)
本発明の特徴とする「つきまわり性」において内板膜厚/外板膜厚=10μm/15〜17μmとし、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上のクレタリングの発生を抑え、かつ外板面にハジキ発生がなく、仕上り性(塗面平滑性)に優れるためには、カチオン電着塗料の組成内容を工夫して電着塗料特性を特定の範囲とする必要がある。
塗膜の析出開始に必要な電気量(a):
電着塗料特性として、塗膜の析出開始に必要な電気量(a)を100〜200C/m2、好ましくは120〜180C/m2とすることにあり、これにより通常、電流密度が低く塗膜が十分析出し難い袋構造内部において塗膜を早く形成させ、内板膜厚を10μmとすることができる。
塗膜の析出開始に必要な電気量(a)は、各電圧(例えば、100V、150V、200V、250V、300V)の3分間の電着塗装において、電気量 X(クーロン)に対して析出した乾燥質量Y(mg)の関係から得られる式(4)のX軸切片値(乾燥質量Y=0の時に流れた電気量X)である。
Y=(c)X+Z・・・式(4)
なお式中、(c)は、単位電気量当たりの塗料析出量(c)を表す。(図3を参照)ここで塗膜の析出開始に必要な電気量(a)が200C/m2を超える場合には、外板膜厚を15〜17μmとした場合に、内板膜厚10μmを得難い。
また析出開始に必要な電気量が100C/m2未満の場合には過度に塗料の析出が早くなり、鋼板や化成処理の不均一部の影響を受け易く仕上り性が低下し易くなる。
塗膜の単位膜厚当たりの分極抵抗値(b):
さらにカチオン電着塗料の電着塗装において、塗膜の析出開始に必要な電気量(a)を100〜200C/m2とすることに加え、塗膜の単位膜厚当りの分極抵抗値(b)を80〜100kΩ・cm2/μmとする。このことにより、袋構造を有する被塗物において析出塗膜の抵抗を適度に調整する効果によって、外板膜厚を15〜17μmとして、かつ内板膜厚を10μmとすることができる。
塗膜の単位膜厚当たりの分極抵抗値(b)とは、電着塗装(例えば、浴温30℃、極比A/C=1/2、極間距離15cmの一定条件)において、各電圧(例えば、50〜300V)にて3分間塗装し、3分後に流れた電流値(A)、電圧(V)、塗装面積(cm2)の数値を用いて、
分極抵抗値Y(kΩ・cm2)=電圧(V)×塗装面積(cm2)/(定電圧塗装3分後の電流値(A)×1000)・・・ 式(5) を求め。
次に、各電圧(V)で析出した乾燥膜厚X(μm)と、各電圧(V)での分極抵抗値Y(kΩ・cm2)の関係を、回帰分析を適用して得られる近似式の傾きから塗膜の単位膜厚当たりの分極抵抗値Y(kΩ・cm2)が求められ、式(6)のように表される。
分極抵抗値Y(kΩ・cm2)=単位膜厚当たりの抵抗値(b)×乾燥膜厚X(μm)+Z・・・式(6) (図4を参照)
単位膜厚当りの分極抵抗値(b)が80kΩ・cm2/μm未満であると、外板膜厚が17μmを越え易くなり、また単位膜厚当りの分極抵抗値(b)が100kΩ・cm2/μmを越えると析出した塗膜が硬くなって、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の耐クレタリング性が低下し易くなる。
単位電気量当たりの塗料析出量(c):
さらに、カチオン電着塗料の電着塗装において、塗膜の析出開始に必要な電気量(a)を100〜200C/m2として、単位膜厚当りの分極抵抗値(b)を80〜100kΩ・cm2/μmであることに加え、単位電気量当たりの塗料析出量(c)が50〜150mg/Cの範囲であることによって、「つきまわり性」において内板膜厚/外板膜厚=10μm/15〜17μmが得られ、かつ合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の耐クレタリング性、耐ハジキ性、仕上り性に優れる塗装物品を得ることができる。
単位電気量当たりの塗料析出量(c)は、図3に示すような、電気量 X(クーロン)に対して析出した乾燥質量 Y(mg)の関係から得られる式(7)の傾きから求められる。
Y=(c)X+Z ・・・ 式(7) (図3を参照)
ここで単位電気量当たりの塗料析出量(c)が150mg/Cを超える場合には、カチオン電着塗料の析出量が多くなり外板膜厚が17μmを越えることから、塗料使用量が増加する。また単位電気量当たりの塗料析出量(c)が50 mg/C未満の場合には、全体膜厚が低下して合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にクレタリングが発生する。
上記に述べた塗膜の析出開始に必要な電気量(a)を適性範囲内とすることによって、内板膜厚/外板膜厚=10μm/15〜17μmの膜厚が得ることができる。
前記塗料特性の範囲として、かつ耐クレタリング性、耐ハジキ性及び仕上り性に優れる塗膜を得る為には、通常のカチオン電着塗料とは異なった塗料設計が必要となり、カチオン電着塗料における、アミン付加エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び添加等の選定が重要となる。
カチオン電着塗料の組成について、以下に詳細に述べる。
基体樹脂として用いるアミン付加エポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量180〜2,500のエポキシ樹脂に、式(1)で表されるアルキルフェノール(1)、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール(2)、及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなる樹脂である。
骨格となるエポキシ樹脂は、エポキシ当量180〜2,500、好ましくは200〜2,000であり、また、少なくとも200、好ましくは400〜4,000、更に好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量を有するものが適している。
エポキシ当量が180未満であると防食性やつきまわり性効果がなく、また2,500を越えるものは耐クレタリング性を低下させる。また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
該ポリエポキシド化合物の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
例えばエポキシ樹脂の具体例として、エピコート828EL、同左1002、同左1004、同左1007(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)などを用いることができる。
アルキルフェノール(1)のR1で表される炭素原子数1〜15の炭素水素基としては、酸素原子、窒素原子などを一部含有していてもよいが、なかでも、例えば、メチル、エチル、n−ブチル、tert−ブチル、ノニル基などの炭素原子数1〜15のアルキル基が好適である。
ポリオール(2)は、複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンを、既知の方法により付加させて得られる。ポリオール(2)は、下記の式(8)で示される構造である。
−(CO−(CHR2)n−CH2−O)m−
式(8)
(式中、nは4〜6、mは1〜100、R2は水素原子、アルキレン基、シクロアルキル基、またはアルコキシ基である。)
末端がポリカプロラクトン性の水酸基であるポリオールの製造に用いられる、ε−カプロラクトンは上記の式(8)においてn=4であり、R2は水素を示す。
この反応には、触媒として例えば、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のチタン化合物、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ラウレート等の有機錫化合物、塩化第1錫などの金属化合物の存在化で、複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンと100〜250℃の温度で約1〜15時間加熱することによって行うことができる。
上記触媒は一般に、複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンとの合計量に基づいて0.5〜1,000ppmの量で使用するのが良い。ポリオールは、複数の活性水素基を含有する化合物の活性水素1モルに対して、カプロラクトンのモル比が1〜30、好ましくは1〜20である。
上記変性によって得られたポリオール(2)は、末端がポリカプロラクトン性の水酸基を有し、ポリオールに基づく高い可塑性能とポリカプロラクトンに基づくエポキシ樹脂に対する高い相溶性と末端水酸基による高い反応性をもつので、本発明で明示した性能を持たせることができる。ポリオール(2)であるが、分子量が数平均分子量で62〜5,000、好ましくは70〜4,000である。
活性水素基の数としては2個以上、10個未満が好ましい。活性水素基が2個未満では目的とするポリオールができず。また10個以上では未反応物ができる為、防食性の低下を招く。
低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
線状または分枝状のポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコール、ビスフェノールAポリプロピレングリコール等が挙げられる。線状または分岐状のポリエステルポリオールは、例えば、有機ジカルボン酸またはその無水物を、有機ジオールでエステル化することにより製造することができる。
なお、ポリエステルの製造のために使用するジオールは、たとえばアルキレングリコール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびその他のジオール、たとえばジメチロールシクロヘキサンからなる。
しかし、少量のポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリットを添加してもよい。ポリエステルの酸成分は、第1に、1分子中2〜44、好ましくは4〜36個の炭素原子を有する低分子ジカルボン酸またはその無水物からなる。例えば、その酸としてo−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸及び/又は脂肪酸の三量体である。またポリエステルポリオールの形成の際に、少量の3個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸無水物や不飽和脂肪酸の付加物を併用しても構わない。
1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を含有するアミン化合物やこれらのアミノ基と水酸基を含有するアミン化合物としては、例えば、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、などのアルキルアミン類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどのアルカノールアミン類:1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサノン、イソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン類;キシリレンジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類:エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン類:ピペラジンやこれらのポリアミン類を変性してなる、ポリアミド、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、ケチミン、アルジミンなどのその他のアミン化合物を挙げることができる。
ポリオール(2)の製造に用いるカプロラクトンとしては、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどがあるが、ε−カプロラクトンが好ましい。
アミノ基含有化合物(3)は、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアルキルアミン類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、及びこれらのポリアミン化合物のケチミン化物を挙げることができる。
アルキルフェノール及びポリカプロラクトンで変性したアミン付加エポキシ樹脂における各成分の配合割合は、各成分の固形分総合計量に対して、以下の範囲が適当である。
エポキシ樹脂が、60〜85質量%、好ましくは62〜83質量%の範囲、アルキルフェノール(1)が、0.5〜15質量%の範囲、好ましくは1〜10質量%、ポリオール(2)が、5〜20質量%、好ましくは5〜18質量%の範囲、アミノ基含有化合物(3)が、5〜25質量%、好ましくは6〜19質量%の範囲である。
エポキシ樹脂が、60質量%未満であると防食性が不十分であり、85質量%を越えると耐クレタリング性が劣る。アルキルフェノール(1)が、0.5質量%未満であると、「つきまわり性」の内板膜厚と外板膜厚の比10μm/15〜17μmを得るために効果がなく、15質量%を越えるとアミン付加エポキシ樹脂(A)の安定性が不良になる。
ポリオール(2)が5質量%未満であると耐クレタリング性が低下し、20質量%を越えると防食性が低下する。アミノ基含有化合物(3)が5質量未満であるとアミン付加エポキシ樹脂(A)の水分散性が低下し、25質量%を越えると防食性が低下する。
硬化剤(B)は、ポリイソシアネート化合物とブロック剤の付加反応生成物である。ここで使用されるポリイソシアネート化合物としては、従来からあるものが使用でき、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族のポリイソシアネート化合物;
これらのポリイシアネート化合物の環化重合体、イソシアネートビゥレット体;これらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物などを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
一方、前記ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生するものであることが望ましい。
このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系化合物を挙げることができる。
カチオン電着塗料におけるアミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の配合割合は、これら両成分の固形分合計100質量部を基準にして、基体樹脂(A)は一般に50〜85質量部、好ましくは55〜80質量部、さらに好ましくは65〜75質量部、そして硬化剤(B)は一般に15〜55質量部、好ましくは20〜45質量部、さらに好ましくは25〜35質量部の範囲内とすることができる。
本発明に用いるカチオン電着塗料は、アミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の固形分合計100質量部に対して、付加体(C)を0.1〜10質量部含有する。付加体(C)は、ポリアルキレングリコール(a1)とモノエポキシシラン(a2)を反応させることにより得られる。ポリアルキレングリコール(a1)は、式(2)で示されるような1分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する化合物であり、具体的には、サンニックスPP−1000、サンニックスPP−2000、サンニックスPP−4000(以上、三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール)等が挙げられる。
モノエポキシシラン(a2)は、1分子中に1個のエポキシ基と1個の下記の式
この開環反応は、通常、適当な不活性溶媒中にて、約50〜約130℃、好ましくは約70〜約110℃の範囲内の温度で、30分間〜6時間程度、好ましくは1〜3時間程度攪拌することにより実施することができる。
ポリアルキレングリコール(a1)に対するモノエポキシシラン(a2)の使用割合は、厳密に制限されるものではないが、一般には、ポリアルキレングリコール(a1)1モルあたり、モノエポキシシラン(a2)を1〜2モル、特に1〜1.5モルの範囲内で使用することが好ましい。
また、使用しうる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記のポリアルキレングリコール(a1)とモノエポキシシラン(a2)との反応を、出発原料として、上記式(2)の化合物と上記式(9)の化合物を用いた場合を例にとって反応式で示せば以下のとおりである。
(注2)重量平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー株式会社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラムとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
上記付加体(C)を含有したカチオン電着塗料の硬化塗膜は、耐ハジキ性が向上する。このことから厳しい条件下(例えば、機械油やシーラーの飛沫が飛散する塗装ライン)においても、ハジキの発生がみられない。
さらに、外板膜厚を15〜17μmとした場合、仕上り性(特に、顔料の降り積もる水平部)が低下する場合がある。この対策として顔料濃度(注3)を10〜18質量%、好ましくは12〜15質量%(従来カチオン電着塗料の顔料濃度は通常18質量%を越えて、かつ25質量%以下である)とすることが望ましい。また顔料濃度を18質量%以下とするとハジキ易くなるが、付加体(C)を添加することによって、耐ハジキ性の向上と仕上り性(塗面平滑性)を達成できる。
(注3)顔料濃度:顔料濃度は、下記の式(10)のように表される。
顔料濃度=[顔料成分の質量(a)/カチオン電着塗料の固形分(b)]×100(%)・・式(10)
(式中、顔料成分の質量(a)は、顔料分散ペーストを800〜1000℃にて加熱して残存した質量を示し、カチオン電着塗料の固形分(b)は、カチオン電着塗料を2g採取し、その塗料を105℃で3時間加熱して水と有機溶剤を揮散させた残量の質量を示す。)
以上に述べたアミン付加エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び付加体(C)を含有してなるカチオン電着塗料の中和に用いる有機カルボン酸としては、特に、酢酸、ギ酸、又はこれらの混合物が好適であり、これらの酸の使用によりつきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の耐クレタリング性、塗料安定性が向上する。
また、カチオン電着塗料には、従来から使用されている顔料であれば、特に制限なく配合することができ、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;腐食抑制や防錆を目的として、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム等の防錆顔料の他に、ビスマス化合物やアンチモン化合物を含有することができ、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、硝酸アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモンなどが挙げられる。これらの顔料の配合量は、アミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との合計固形分100質量部あたり、5〜50質量部、好ましくは10〜18質量部の範囲、さらに好ましくは12〜15質量部の範囲であることが、本発明の目的とする外板膜厚が15〜17μmでの仕上り性確保にも好ましい。
カチオン電着塗料は、上記の顔料を顔料分散用樹脂で分散して顔料分散ペーストを予め製造しておき、これをアミン付加エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び付加体(C)などを分散したエマルションと混合し、脱イオン水などで希釈して製造することが好ましい。
カチオン電着塗料の塗装は、浴槽の中に塗料を満たした後、被塗物を陰極として、極比=陽極/陰極=1/1〜1/10、浴温25〜35℃、電圧100〜400V、塗装時間30〜480秒間の範囲で電着塗装を行うことができる。乾燥焼付けは120〜200℃で、10分間〜120分間の範囲で行った後、塗膜を得ることができる。
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部にε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を合成した。
次に、別のフラスコにてエピコート828EL(油化シェルエポキシ社製、商品名、エポキシ樹脂エポキシ当量190 分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部、ジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。その中にノニルフェノール120部を加えて、130℃でエポキシ当量1000になるまで反応させた。
次に変性剤1を200部、ジエタノールアミンを95部、ジエチレントリアミンのケチミン化物65部を120℃で4時間反応させ、エチレングリコールモノブチルエーテル414部を加え、アミン価40mgKOH/g、アルキルフェノール及びポリカプロラクトンで変性した樹脂固形分80%の基体樹脂No.1を得た。
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、ビスフエノールンAとエピクロルヒドリンとの反応によって得られた数平均分子量370、エポキシ当量1185のエポキシ樹脂518部を仕込み、ビスフェノールA 57部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量が250となるまで反応させた。
ついでε−カプロラクトン213部及びテトラブトキシチタン0.03部を加え、170℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングを行ない、赤外吸収スペクトル測定にて未反応ε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点でビスフェノールA 148部とジメチルベンジルアミン0.4部をさらに加え、130℃でエポキシ当量936となるまで反応させた。
ついでメチルイソブチルケトン257.4部、ジエチルアミン25.6部ジエタノールアミン68.3部を加え80℃で2時間反応後、エチレングリコールモノブエチルエーテル143.4部で希釈し、アミノ価(樹脂固形分)54.5mgKOH/g、樹脂固形分80%の基体樹脂No.2を得た。
反応容器中にコスモネートM−200(三井化学社製、商品名、クルードMDI)270部及びメチルイソブチルケトン25部を加え70℃に昇温した。その中に2,2−ジメチロールブタン酸15部を徐々に添加し、ついでエチレングリコールモノブチルエーテル118部を滴下して加え、70℃で1時間反応させた後、60℃に冷却し、プロピレングリコール152部を添加した。この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がないことを確認し、固形分80%の硬化剤を得た。
反応容器に、サンニックスPP−2000(注4)2000部、KBM−403(信越化学社製、商品名、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、分子量約240)480部及びエチレングリコールモノブチルエーテル620部を加え、90℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、樹脂固形分80%、重量平均分子量2,240の付加体No.1を得た。
(注4)サンニックスPP−2000:三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール、重量平均分子量 約2,000
反応容器に、サンニックスPP−1000(注5)2000部、KBM−403(信越化学社製、商品名、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、分子量約240)480部及びエチレングリコールモノブチルエーテル620部を加え、90℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、樹脂固形分80%、重量平均分子量4,240の付加体No.2を得た。
(注5)サンニックスPP−1000:三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール、重量平均分子量 約1,000
上記、基体樹脂No.1を87.5部(固形分70部)、硬化剤を33.3部(固形分30部)、付加体No.1を12.5部(固形分10部)、10%酢酸13部を配合し、均一に攪拌した後、脱イオン水177.7部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションNo.1を得た。
表1に示される配合にて、エマルションNo.1の製造例6と同様の操作にて、エマルションNo.2〜No.7を得た。
固形分60%のエポキシ系4級アンモニウム型の顔料分散用樹脂 5.8部(固形分3.5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー4.6部、有機錫1.0部、カーボンブラック0.5部、脱イオン水17.4部を加え、ボールミルにて20時間分散した後に取出し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
製造例14〜15 顔料分散ペーストNo.2〜No.3の製造
製造例13と同様にして、表2の配合内容にて、固形分55%の顔料分散ペーストNo.2〜No.3を得た。
実施例1
エマルションNo.1を324部(固形分110部)、製造例14で得た顔料分散ペーストNo.2を37.3部(固形分20.5部)、脱イオン水291.2部を加え、ポールミルにて20時間分散した後取り出して、固形分20質量%のカチオン電着塗料No.1を得た。
次に、カチオン電着塗料No.1を電着槽内に満たし、浴温30℃、陽極/陰極=1/2、極間距離15cmの条件で電着塗装を行い、塗料特性を求めたところ、塗膜の析出開始に必要な電気量(a)が150C/m2、単位膜厚当たりの分極抵抗値(b)が85kΩ・cm2/μm、単位電気量当たりの塗料析出量(c)が100mg/Cであった。
この塗料を用いて、4枚ボックスによるつきまわり性(前記、注1参照)試験を行ったところ内板膜厚(G面)/外板膜厚(A面)=10μm/15μmの結果が得られた。
実施例1と同様の操作にて、表3の塗料特数及び試験結果を得た。
実施例5
電着塗装時の浴温を32℃とする以外は、実施例1と同様の操作にて、表3の塗料特数及び試験結果を得た。
エマルションNo.1を324部(固形分110部)、製造例14で得た顔料分散ペーストNo.2を37.3部(固形分20.5部)、10%酢酸5部、脱イオン水 286.2部を加え、カチオン電着塗料No.6を得た。
次に、カチオン電着塗料No.6を電着槽内に満たし、浴温30℃、陽極/陰極=1/2、極間距離15cmの条件で電着塗装を行い、塗料特性を求めたところ、塗膜の析出開始に必要な電気量(a)が240C/m2、単位膜厚当たりの分極抵抗値(b)が85kΩ・cm2/μm、単位電気量当たりの塗料析出量(c)が45mg/Cであった。
この塗料を用いて、4枚ボックスによるつきまわり性(前記、注1参照)試験を行ったところ内板膜厚(G面)/外板膜厚(A面)=7μm/15μmの結果が得られた。
比較例1と同様の操作にて、表4の塗料特数及び試験結果を得た。
、塗装電圧230Vで3分間電着塗装を行った。評価は、A面膜厚(μm)、G面膜厚(μm)の膜厚を測定した。
(注7)耐クレタリング性:被塗物として、化成処理を施した合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(10cm×15cm×0.8cm)を浴温30℃のカチオン電着塗料に浸漬して、3分間の電着塗装にて膜厚15μmが得られる塗装電圧にて電着塗装を行った。クレタリング(ピンホール)の発生状況を「10cm×10cm」の範囲内で観察した。
○:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にクレタリング(ピンホール)の発生なく良好。
△:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にクレタリング(ピンホール)の発生が10個未満
×:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にクレタリング(ピンホール)の発生が10個を越える。
(注8)耐ハジキ性:被塗物として、化成処理を施した冷延鋼板(10cm×15cm×0.8cm)をカチオン電着塗料(浴温30℃)に浸漬し、乾燥膜厚で15μmとなるように電着塗装を行った。得られたウェット塗膜上に、王冠に1mlの機械油を入れたものを置いた状態で、熱風電気乾燥炉にて170℃で20分焼き付け乾燥後の塗面状態を観察した。
○は、ヘコミ、ハジキがなく良好、
△は、塗面の一部にヘコミが散見される、
×は、塗面の全体に、素地まで達するハジキがみられる。
(注9)仕上り性(膜厚15μm):被塗物として、化成処理を施した冷延鋼板(10cm×15cm×0.8cm)をカチオン電着塗料(浴温30℃)に浸漬して電着塗装を行い、水洗後、熱風電気乾燥炉にて170℃で20分間焼付け乾燥して得た乾燥膜厚15μmでの平滑性や肌感を評価した。
○は、問題なく良好、
△は、ラウンド感、艶びけ、チリ肌など塗面平滑性の低下が見られる、
×は、ラウンド感、艶びけ、チリ肌など塗面平滑性の低下が著しい。
2.AB面の鋼板
3.CD面の鋼板
4.EF面の鋼板
5.GH面の鋼板
6.H面側
7.4枚ボックスのモデル図(治具)
8.カチオン電着塗料
Claims (4)
- エポキシ樹脂に式(1)
式(1)
[式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜15の炭化水素基を表す]
で示されるアルキルフェノール(1)、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール(2)及びアミノ基含有化合物(3)を、各成分の固形分の合計量を基準にして、エポキシ樹脂60〜85質量%、アルキルフェノール0.5〜15質量%、ポリオール5〜20質量%及びアミノ基含有化合物5〜25質量%の割合で反応させることにより得られるアミン付加エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、式(2)
式(2)
[式中、RはC2H4、C3H6 又はC4H8を表し、nは1〜230の整数を示す]
で示されるポリアルキレングリコールとモノエポキシシランとの付加体(C)とを含有し、アミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の合計固形分100質量部に対して付加体(C)を0.1〜10質量部含有し、かつ塗膜の析出開始に必要な電気量(a)が100〜200C/m2であるカチオン電着塗料。 - エポキシ樹脂のエポキシ当量が100〜2500である、請求項1に記載のカチオン電着塗料。
- アミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の合計固形分100質量部に対して10〜18質量部の顔料を含有する、請求項1に記載のカチオン電着塗料。
- アミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の合計固形分100質量部に対して0.1〜10質量部のアミン付加エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の架橋反応を促進する触媒を含有する、請求項1に記載のカチオン電着塗料。
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