JP4904458B2 - Pm燃焼触媒用複合酸化物およびフィルター - Google Patents

Pm燃焼触媒用複合酸化物およびフィルター Download PDF

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Description

本発明は、自動車等のディーゼルエンジンから排出されるPM(粒子状物質)を燃焼するための触媒に適した複合酸化物、並びにそれを用いた触媒およびディーゼル排ガス浄化用フィルターに関する。
ディーゼルエンジンの排ガスに関しては、特に窒素酸化物(NOx)とPMが問題となっている。このうちPMはカーボンを主体とする微粒子であり、その除去方法として排気ガス流路にパーティキュレート・フィルター(DPF)を設置してPMをトラップする方法が一般化されつつある。トラップされたPMは間欠的または連続的に燃焼され、当該DPFは再生される。
このDPF再生処理には、電気ヒーターやバーナー等を用いて外部加熱によりPMを燃焼させる方法、DPFよりもエンジン側に酸化触媒を設置し、排ガス中のNOを酸化触媒によりNO2にし、NO2の酸化力によりPMを燃焼させる方法などがある。しかし、電気ヒーターやバーナーなどは外部からエネルギーを加える必要があり、システムが複雑化する。また、酸化触媒については触媒活性が十分発揮されるほど排ガス温度が高くないことや、ある一定の運転状況下でなければPM燃焼に必要なNOが排ガス中に含まれてこないことなど、種々の問題がある。そのような中、DPFに触媒を担持させ、その触媒作用によりPMの燃焼温度を低下させ、排ガス温度にて連続的に燃焼させる触媒方式が望ましいとされている。
特許文献1には触媒金属としてPtを担持したものが開示されている。しかし、排ガス温度レベルではPtはPMを燃焼させる触媒作用が低いため、燃料排ガス温度にてPMを連続的に燃焼させるのは困難と考えられる。また、貴金属を使用しているためコストの増大が避けられない。
特開平11−253757号公報
本出願人は、貴金属元素を使用しない触媒として、Ceと遷移金属元素の複合酸化物を含むPM燃焼触媒を特願2005−336408号にて提案し、これによりPM燃焼温度の大幅な低温化が実現されている。しかし、この技術ではPM燃焼触媒の耐熱性については特段の配慮がなされておらず、PM燃焼時の発熱により触媒温度が急激に上昇した場合を考慮すると、高温の熱履歴を受けた場合にも触媒活性が高く維持できる耐熱性を具備した触媒物質の開発が待たれている。
本発明は、貴金属元素を含まずにディーゼルエンジン排ガスのPMを低温で燃焼させることができる触媒活性を有し、かつPM燃焼時の発熱に耐えうる耐熱性を備えた複合酸化物を開発し提供しようというものである。
上記目的は、Ce、遷移金属元素Tおよび1種以上の元素Mと、酸素で構成される複合酸化物によって達成される。より具体的には、Ce、遷移金属元素Tおよび元素Mのモル比が下記[a]を満たす組成のPM燃焼触媒用複合酸化物が提供される。
[a]Ce、遷移金属元素Tおよび元素Mのモル比を、Ce:T:M=(1−x−y):x:yとするとき、0<x≦0.6、0<y≦0.4、x+y<1が成立する
前記遷移金属元素Tとして、ここではFeを採用する。すなわち、下記[a]’を満たす組成を有するものが対象となる。
[a]’Ce、Feおよび元素Mのモル比を、Ce:Fe:M=(1−x−y):x:yとするとき、0<x≦0.6、0<y≦0.4、x+y<1が成立する。
ただしこの場合、元素MはLa、Y、Co、Baからなる元素群から選ばれる元素である。
この複合酸化物は酸化セリウム(CeO2)構造を主体とするものであり、Ce、Feおよび1種以上の前記元素Mと、酸素で構成され、下記組成式(1)において、0<x≦0.6、0<y≦0.4、x+y<1を満たす組成の複合酸化物として捉えることもできる。
Ce(1-x-y)Fexyδ ……(1)
ここで、δ>0であり、代表的にはδ=2あるいはそれに近い値、例えば1≦δ≦3、あるいは1.3≦δ≦2.5が挙げられる。すなわち、下記組成式(1)’に近い組成を有するものが例示できる。
Ce(1-x-y)Fexy2 ……(1)’
この複合酸化物はX線回折によれば酸化セリウム構造のピークが認められ、また、ミクロ的な分析手段から、酸化セリウム相の他に、鉄酸化物相が検出される場合がある。
これらの複合酸化物は、高温の熱履歴を受けたときにも熱劣化が生じにくい優れた耐熱性を有する。すなわち、当該複合酸化物を大気中800℃で2h加熱処理した後にカーボンブラックと乳鉢で混合して、(加熱処理した複合酸化物):(カーボンブラック)=6:1の質量比とした粉体試料において、下記[b]で定義されるカーボンブラック燃焼温度T90が520℃以下となる優れた耐熱性を有する。
[b]カーボンブラック燃焼温度T90は、粉体試料をTG/DTA装置により常温から10℃/minで昇温したときの粉体試料の重量変化において、50℃から700℃までの重量減少量に対し、50℃からの重量減少量が90%となる時点の温度と定義する(後述図2参照)。
このような複合酸化物は、ディーゼルエンジン排ガス中のPMを燃焼させる触媒(PM燃焼触媒)として極めて好適である。この複合酸化物を触媒物質として用いた酸化触媒を、例えばSiC、コージェライト、ムライト、アルミナなどの多孔質物質からなるDPFに担持させることにより、捕集されたPMを排ガスの熱を有効利用して燃焼除去することのできるディーゼル排ガス浄化用フィルターが構築される。
本発明の複合酸化物は比較的低温から高い触媒活性を発揮するので、これを触媒物質として用いるとPM燃焼温度を低下させることができ、排ガス温度を有効利用してPMを燃焼除去することのできるディーゼル排ガス浄化フィルターを構築することが可能になる。また、本発明の複合酸化物は耐熱性に優れるため、PM燃焼による急激な発熱が生じた場合でも、高い触媒活性が維持される。さらに、貴金属元素を必要としないのでDPFの材料コスト低減にも寄与できる。
本発明の複合酸化物では、Ce、遷移金属元素T(具体的にはFe)、および前記の元素Mを必須成分として含有する。この複合酸化物は、酸化セリウム構造体にFeあるいはさらに元素Mが複合化した形態を有する酸化物相が主体となっている。代表的な組成式は前述の(1)式のように表示される。
この酸化セリウム構造体のセリウム原子の一部は遷移金属元素T(具体的にはFe)の原子で置換されている。このとき、セリウム原子を主とする複合酸化物の陽イオンの見かけ上の価数変化が起こり、また、イオン半径が異なる元素同士の置換による格子の歪のため、格子中の酸素が格子外に放出されやすい状態となり、これによって比較的低温の温度域からPMの燃焼に必要な活性酸素がPMに供給され、PM燃焼温度の低下が実現されるものと考えられる。遷移金属元素Tを含有しない、従来知られている単なる酸化セリウム(CeO2)の場合は、格子中の酸素の放出が起こりにくい安定な構造をとるものと考えられるため、PMの燃焼に対する高い触媒活性を得ることは困難である。
発明者らの検討によれば、酸化セリウム構造体において遷移金属元素T(具体的にはFe)との複合体を形成した複合酸化物は、PMに対する高い触媒活性が得られるものの、800℃といった高温に加熱される熱履歴を一旦受けると、本来の高い触媒活性が十分維持できない(熱劣化が生じる)ことがわかった。そこで詳細な研究を進めた結果、前記元素Mを添加した複合酸化物構造とすることによって、熱劣化の問題は大幅に改善されることが明らかになった。すなわち元素Mを複合させることにより、遷移金属元素T(例えばFe)で一部を置換した酸化セリウム構造の複合酸化物の耐熱性が向上し、高温の熱履歴を受けてもPM燃焼温度の優れた低減効果が維持される。その理由については現時点で十分解明されていないが、元素Mの添加によって熱による複合酸化物粒子の粗大化が抑制されることが影響しているものと推察される。
遷移金属元素T(具体的にはFe)のモル比を表すxは、前記[a]で示されるように、0<x≦0.6の範囲にあることが望ましい。x=0、すなわち遷移金属元素Tが存在しない場合は前述のように高い触媒活性が得られない。xが0.6より大きくなると遷移金属元素T(具体的にはFe)が酸化セリウム構造体のCeを置換する形で存在する以外に、酸化セリウム構造の相と遷移金属元素Tの酸化物相(具体的には酸化鉄相)との混合相が形成されやすいと考えられる。そうなると、遷移金属元素Tの酸化物相(具体的には酸化鉄相)はPMの燃焼に対する触媒活性が低いため、そのような異相の存在が複合酸化物の触媒活性点を低減させ、触媒活性が低下すると考えられる。xの範囲は0.05≦x≦0.6であることがより好ましく、0.05≦x≦0.5が一層好ましい。
元素Mのモル比を表すyは、前記[a]で示されるように、0<y≦0.4の範囲にあることが望ましい。y=0、すなわち元素Mが存在しない場合は熱劣化を抑止する効果が生じない。yが0.4を超えて元素M含有量が多くなると、複合酸化物粒子の粗大化は抑制されるが、粒子同士のネッキングが過剰に起こりやすくなり、PM燃焼の活性点減少によって触媒活性の低下が生じやすくなると考えられる。yの範囲は0<y≦0.3であることがより好ましく、0.01≦y≦0.15が一層好ましい。
本発明の複合酸化物は、例えば、通常の共沈法、有機錯体法、非晶質前駆体を用いた製法などによって製造することができる。以下、各製法について説明する。
〔共沈法〕
共沈法では、複合酸化物を構成する各元素の塩を、Ce、遷移金属元素T(具体的にはFe)、および元素Mのモル比が前述のようになる複合酸化物を生成するにふさわしい化学量論比で含む原料塩水溶液を調整し、この水溶液と中和剤を混合して共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。各元素の塩としては特に限定されないが、例えば硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物などの無機塩、酢酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩などが使用できる。中でも酢酸塩、硝酸塩が好適に使用できる。原料塩水溶液は、上記の各元素の塩を目的の化学量論比となるように水に加えて、撹拌することにより調製することができる。
そして、この原料塩水溶液と中和剤を混合し、共沈させる。中和剤としては特に限定されないが、例えばアンモニア、苛性ソーダ、苛性カリなどの無機塩基、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基が使用できる。また中和剤は、その中和剤を加えた後に生成されるスラリーのpHが6〜14となるように混合する。このように混合することにより、結晶性のよい各元素の水酸化物の共沈物を得ることができる。
得られた共沈物は必要に応じて水洗され、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば500〜1200℃、好ましくは550〜1000℃で熱処理することにより、目的とする組成の複合酸化物を得ることができる。この際、熱処理時の雰囲気は上記複合酸化物が生成される範囲であれば特に制限されず、例えば空気中、窒素中、アルゴン中、水素中およびそれらに水蒸気を組み合わせた雰囲気、好ましくは空気中、窒素中およびそれらに水蒸気を組み合わせた雰囲気が使用できる。
〔有機錯体法〕
有機錯体法では、例えばクエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン4酢酸ナトリウムなどの有機錯体を形成する塩と、前述の各元素の塩とを目的の化学量論比となるように水に加えて、攪拌することにより調製することができる。
この原料水溶液を乾固させ、前述の各元素の有機錯体を形成させた後、仮焼成・熱処理することにより目的とする組成の複合酸化物を得ることができる。
各元素の塩としては、共沈法の場合と同様の塩が使用でき、また原料塩水溶液は各元素の原料塩を目的の化学量論比に混合して水に溶解した後、有機錯体を形成する塩の水溶液と混合することにより、調製することができる。なお、有機錯体を形成する塩の配合比率は得られる複合酸化物1モルに対して1.2〜3モル程度であることが好ましい。
その後、この原料溶液を乾固させて、前述の有機錯体を得る。乾固は有機錯体が分解しない温度であれば特に限定されず、例えば室温〜150℃程度、好ましくは室温〜110℃で、速やかに水分を除去する。これにより前述の有機錯体が得られる。
得られた有機錯体は仮焼成後に熱処理される。仮焼成は、例えば真空または不活性ガス雰囲気下において250℃以上で加熱すればよい。その後、例えば500〜1000℃、好ましくは550〜950℃で熱処理することにより、目的とする組成の複合酸化物を得ることができる。この際、熱処理時の雰囲気は上記複合酸化物が生成される範囲であれば特に制限されず、例えば空気中、窒素中、アルゴン中、水素中およびそれらに水蒸気を組み合わせた雰囲気、好ましくは空気中、窒素中およびそれらに水蒸気を組み合わせた雰囲気が使用できる。
〔非晶質前駆体を用いた製法〕
非晶質前駆体を用いた製法では、目的とする組成の複合酸化物を生成するにふさわしい化学量論比で前述の各元素を含む、粉状の非晶質からなる前駆体物質を、低温で熱処理することによって得ることができる。
このような非晶質の前駆体は、前述の各元素の塩を目的とする組成の複合酸化物を生成するにふさわしい化学量論比で含む原料塩水溶液を調整し、それと炭酸アルカリまたはアンモニウムイオンを含む炭酸塩などの沈殿剤とを、反応温度60℃以下、pH6以上で反応させて沈殿生成物を作り、その濾過物を乾燥させて得ることができる。
より具体的には、まず、各元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の水溶性鉱酸塩を目的とする組成のモル比となるように溶解させた水溶液を用意する。沈殿を生成させる液中の構成元素のイオン濃度は、用いる塩類の溶解度によって上限が決まるが、構成元素の結晶性化合物が析出しない状態が望ましく、通常は、前述の各元素の合計イオン濃度が0.01〜0.60mol/L程度の範囲であるのが望ましいが、場合によっては、0.60mol/Lを超えてもよい。
この液から非晶質の沈殿を得るには、炭酸アルカリまたはアンモニウムイオンを含む炭酸塩からなる沈殿剤を用いるのがよく、このような沈殿剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等を使用することができ、必要に応じて、水酸化ナトリウム、アンモニア等の塩基を加えることも可能である。また、水酸化ナトリウム、アンモニア等を用いて沈殿を形成した後、炭酸ガスを吹き込むことによっても本発明の複合酸化物を得るための前駆体物質に適した非晶質を得ることができる。非晶質の沈殿を得る際、液のpHを6〜11の範囲に制御するのがよい。pHが6未満の領域では、希土類元素類が沈殿を形成しない場合があるので不適切である。他方、pHが11を超える領域では、沈殿剤単独の場合には生成する沈殿の非晶質化が十分に進行せずに、水酸化物などの結晶性の沈殿を形成する場合がある。また、反応温度は60℃以下にするのがよい。60℃を超える温度で反応を開始した場合、構成元素の結晶性の化合物粒子が生成する場合があり、前駆体物質の非晶質化を妨げるので好ましくない。
得られた非晶質前駆体は必要に応じて水洗され、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば500〜1000℃、好ましくは500〜800℃で熱処理することにより、目的とする複合酸化物を得ることができる。この際、熱処理時の雰囲気は上記複合酸化物が生成される範囲であれば特に制限されず、例えば空気中、窒素中、アルゴン中、水素中およびそれらに水蒸気を組合わせた雰囲気、好ましくは空気中、窒素中およびそれらに水蒸気を組合わせた雰囲気が使用できる。
《触媒物質の作製》
各実施例、比較例の触媒物質を以下のようにして作製した。
〔実施例1〜7〕
硝酸セリウム、硝酸鉄および硝酸ランタンを、Ce:Fe:Laのモル比が表1に示す値になるように混合した。この混合物を、Ce、Fe、元素M(ここではLa)の液中合計モル濃度が0.2mol/Lとなるように水を添加して原料溶液を得た。この溶液を撹拌しながら溶液の温度を15℃に調整し、温度が15℃に達した段階で、沈殿剤として炭酸アンモニウムを添加しながら、pH=8に調整した。得られた沈殿物を濾過して回収した後、水洗し、125℃で乾燥した。得られた粉末を前駆体粉という。
次に、この前駆体粉を大気雰囲気下において600℃で2h熱処理して焼成した。耐熱性を評価するために、焼成後の上記粉体を大気雰囲気下において800℃で2h加熱処理することにより、高温の熱履歴を受けた粉体からなる触媒物質を得た。以下この加熱処理を「耐熱処理」という。
耐熱処理は、アルミナ製るつぼ(容量50cc、外径54mm、高さ43mm)に粉体3gを入れ、そのるつぼを炉内温度800℃のマッフル炉に入れて2h保持し、その後炉外の大気中で急冷する方法で行った。
〔実施例8、9〕
硝酸セリウム、硝酸鉄および硫酸イットリウムを、Ce:Fe:Yのモル比が表1に示す値になるように混合した以外は、実施例1〜7と同様の条件で作製した。ここではYが元素Mとなる。
〔実施例10〜12〕
硝酸セリウム、硝酸鉄および硝酸コバルトを、Ce:Fe:Coのモル比が表1に示す値になるように混合した以外は、実施例1と同様の条件で作製した。ここではCoが元素Mとなる。
〔実施例13〕
硝酸セリウム、硝酸鉄および硝酸バリウムを、Ce:Fe:Baのモル比が表1に示す値になるように混合した以外は、実施例1〜7と同様の条件で作製した。ここではBaが元素Mとなる。
〔実施例14〕
硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸ランタンおよび硝酸コバルトを、Ce:Fe:La:Coのモル比が表1に示す値になるように混合した以外は、実施例1〜7と同様の条件で作製した。ここではLaとCoが元素Mとなる。
〔実施例15〕
硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸ランタンおよび硝酸バリウムを、Ce:Fe:La:Baのモル比が表1に示す値になるように混合した以外は、実施例1〜7と同様の条件で作製した。ここではLaとBaが元素Mとなる。
〔比較例1〕
市販のγアルミナ(比表面積250m2/g)に、ジニトロジアミン白金水溶液を用いてPtを含浸させた後、90℃で12h通風乾燥を行った。得られた含浸物を大気雰囲気下で500℃×1h熱処理して、Pt担持アルミナを得た。これを実施例1〜7と同様の耐熱処理に供して、試験用の触媒物質とした。耐熱処理後の触媒物質は、アルミナ中におけるPt含有量が3.42質量%であった。
〔比較例2、3〕
硝酸セリウムと硝酸鉄を、Ce:Feのモル比が表1に示す値になるように混合した以外は、実施例1〜7と同様の条件で作製した。ここでは元素Mとなる元素を添加していない。
以上のようにして得られた触媒物質を用いて以下の実験を行った。
《X線回折測定》
各実施例、比較例で得られた触媒物質(比較例1を除く)について、X線回折測定を行った。測定条件は以下のとおりである。
・X線回折装置: 株式会社リガク製、RINT−2100
・測定範囲: 2θ=10〜90°
・管球: Co管球
・管電圧: 40kV
・管電流: 30mA
測定の結果、比較例1を除く各例で得られた触媒物質(耐熱処理後のもの)はいずれもCeO2構造をもつ複合酸化物であることが確かめられた。
図1に実施例1の触媒物質についてのX線回折パターンを例示する。
《粉体試料によるPM燃焼温度評価》
各実施例、比較例で得られた触媒物質について、カーボンブラックとの混合粉を作り、カーボンブラック燃焼温度T90を求めることによってPM燃焼温度を評価した。具体的には以下のようにした。
模擬PMとして市販のカーボンブラック(三菱化学製)を用い、触媒物質の粉体とカーボンブラックの質量比が6:1になるように秤量し、自動乳鉢機(石川工場製AGA型)で20分混合し、カーボンブラックと各粉体の混合粉体を得た。この混合粉体について熱重量測定(TG)を行い、カーボンブラックの燃焼に伴う重量減少からカーボンブラックの燃焼温度を求めた。評価方法はTG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6300型)を用い、混合粉体20mgを50℃の一定温度にしたのち昇温速度10℃/minにて50℃から700℃まで大気中で昇温し、重量測定を行った。図2に、重量変化曲線(TG曲線)を模式的に示す。カーボンブラック燃焼温度T90は、TG曲線の50℃から700℃までの重量変化に対して重量変化が90%起こったときの温度と定める。燃焼温度を90%の重量変化が起こる時点とすることにより、カーボンブラックがおおよそ全量燃焼する温度が評価できる。
結果を表1に示す。
表1に示した実験結果から、Ceと遷移金属元素Feの複合酸化物(比較例2、3)はPt触媒(比較例1)と比較してカーボンブラック燃焼温度T90を大幅に低下させている。すなわちCeと遷移金属元素Feの複合酸化物によればPM燃焼温度の大幅な低下が実現できる。ところが、本発明の対象である各実施例の複合酸化物を用いた場合には、更に顕著なT90の低下が認められる。
各実施例の複合酸化物はCeと遷移金属元素Feの他に前記元素Mを含有させたものである。この元素Mの含有が複合酸化物の耐熱性を向上させ、結果としてカーボンブラック燃焼温度が大きく低減したと考えられる。
図3には実施例1で得られた複合酸化物のTEM写真を示す。また図4には比較例2で得られた複合酸化物のTEM写真を示す。これらの複合酸化物は、焼成後の粉体を800℃×2h加熱する耐熱処理に供したものである。元素Mを添加した図3のものは、元素Mを添加していない図4のものに比べ粒子の粗大化が抑制されていることがわかる。このことから、元素Mを添加すると高温の熱履歴による粗大化が防止され、カーボンブラックの燃焼に対する活性点の減少が抑制されたことにより、耐熱処理後においても優れた触媒活性が維持されたものと考えられる。
前述のように、Ceと遷移金属元素Feの複合酸化物では、酸化セリウム構造体のセリウム原子の一部を鉄原子で置換することにより、セリウムを主とする複合酸化物の陽イオンの見かけ上の価数変化が起こり、またはイオン半径が異なる元素置換による格子の歪みが起こることにより、格子中の酸素が格子外に放出されやすくなり、この酸素の酸化力によりPM燃焼に対する触媒活性が向上するものと考えられる。本発明の対象である複合酸化物にはさらに元素Mが添加されており、元素Mもセリウム原子の一部を置換して上記の見かけの価数変化や格子歪みに寄与していると考えられ、このこともカーボンブラック燃焼温度T90の一層の低下をもたらしている要因になりうると考えられる。
《粒状試料によるPM燃焼温度評価》
実施例4、実施例11および比較例2で得られた各触媒物質の粉体(耐熱処理後のもの)を、それぞれ金型プレスにより100kg/cm2で圧縮成形した後、粉砕して、粒子径0.5〜1.0mmの粒状試料を作製した。この粒状試料にカーボンブラックを5質量%となるように添加し、ガラス瓶中で回転することによりこれらを混合した。
カーボンブラックを混合した上記粒状試料を流通式固定床に充填した状態にし、「500ppmNO+10%O2+残部N2」の模擬ディーゼルエンジン排ガスを空間速度SV75000/hで流通し、昇温速度10℃/minで常温から800℃まで昇温しながら、流通式固定床から排出されるCO2濃度を連続的に測定した。CO2濃度の測定はNICOLET製Nicolet4700FT−IRを用いて行った。
図5に、排出されるCO2濃度の変化を表す曲線を模式的に示す。流通式固定床から排出されたCO2の総発生量に対して、CO2の合計排出量が90%となる時点(図5の斜線域)の温度をここでのカーボンブラック燃焼温度として求めた。
結果を表2に示す。
表2に示されるように、元素Mを添加した複合酸化物からなる実施例の触媒物質を使用した場合には、粒状化した状態においても、元素Mを添加していない比較例の触媒物質を使用した場合に比べ、CO2の排出量から見たカーボンブラック燃焼温度が低下した。このことから、実施例の触媒物質は元素Mを添加しないものに比べ実用的性能が高いと言える。
実施例1で得られた複合酸化物(耐熱処理後)についてのX線回折パターン。 TG曲線を模式的に示した図。 実施例1で得られた複合酸化物(耐熱処理後)のTEM写真。 比較例2で得られた複合酸化物(耐熱処理後)のTEM写真。 模擬ディーゼル排ガス中におけるカーボンブラック燃焼時の排出CO2濃度の変化を模式的に示したグラフ。

Claims (3)

  1. Ce、遷移金属元素Tおよび1種以上の元素Mと、酸素で構成され、Ce、遷移金属元素Tおよび元素Mのモル比が下記[a]を満たすPM燃焼触媒用複合酸化物。
    [a]Ce、遷移金属元素Tおよび元素Mのモル比を、Ce:T:M=(1−x−y):x:yとするとき、0<x≦0.6、0<y≦0.4、x+y<1が成立する。
    ただし、前記遷移金属元素TはFeであり、前記元素MはLa、Y、Co、Baからなる元素群から選ばれる元素である。
  2. 請求項1に記載の複合酸化物を触媒物質として用いたPM燃焼触媒。
  3. 請求項に記載の触媒を用いたディーゼル排ガス浄化用フィルター。
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