JP4937656B2 - 車両用衝突制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の衝突による乗員への被害を軽減する車両用衝突制御装置に関する。
最近、自動車等の車両においては、TVカメラやレーザ・レーダ等を搭載して前方の車両や障害物を検知し、それらに衝突する危険度を判定してドライバーに警報を発したり、自動的にブレーキや操舵装置を作動させる等して衝突被害を回避或いは軽減する衝突制御装置が積極的に開発されている。
このような衝突制御装置は、例えば、特許文献1に開示されている。この従来技術では、自車両の進行方向に存在する対象物を検出し、自車両と対象物との衝突を回避できないと判別された場合に、対象物の形状または自車両の搭乗人員、搭乗位置に応じて自車両の走行状態を変化させ、衝突時のダメージを小さく抑えるようにしている。
特開2000−95130号公報
ところで、特許文献1のような車両の衝突被害を小さく抑えるための車両の回避制御では、衝突時のダメージが比較的大きくなる場合においてのみ回避制御を実行するのが好ましく、衝突時のダメージが比較的小さくて済む場合には、回避制御を実行せずに車両のドライバに運転を委ねることが好ましい。特許文献1に開示の技術では、衝突被害の大きさによって回避制御の実行を判断することについて考慮していないため、衝突の被害が比較的小さくて済む場合でも回避制御を実行してしまいドライバによる回避制御を阻害する虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、乗員の衝突被害を定量的に把握し、乗員の衝突被害を軽減することのできる衝突制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明による車両用衝突制御装置は、自車両の周囲に存在する立体物を検出する立体物検出手段と、上記立体物と自車両との衝突可能性を判断する衝突判断手段と、上記立体物と自車両との衝突が不可避と判断されたとき、衝突による自車両のキャビン変形量を推定するキャビン変形量推定手段と、自車両の乗員の搭乗状態を検出する乗員状態検出手段と、上記キャビン変形量と上記乗員の搭乗状態とに基づいて上記乗員が障害を受ける乗員傷害確率分布を設定し、上記乗員の衝突被害を推定する乗員傷害推定手段と、上記乗員の衝突被害に基づ回避制御の車両制御量を、上記乗員傷害確率分布の総和を最小化する制御量として算出する車両制御量算出手段とを備え、上記車両制御量に基づいて車両姿勢制御を実行することを特徴とする。
本発明による衝突制御装置は、乗員の衝突被害を定量的に把握し、乗員の衝突被害を軽減することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図11は本発明の実施の第1形態に係り、図1は車両用衝突制御装置のシステム構成図、図2は衝突直前の状況を示す説明図、図3はキャビンの変形を示す説明図、図4はキャビン変形の確率分布を示す説明図、図5は乗員状況を示す説明図、図6は乗員の存在確率分布を示す説明図、図7はキャビンの変形による乗員傷害のリスクを示す説明図、図8は乗員の受傷部位別の重み付けを示す説明図、図9は衝突制御処理のフローチャート、図10は側面衝突に対する車両制御を示す説明図、図11は単独の前面衝突に対する車両制御を示す説明図である。
図1に示す車両用衝突制御装置1は、自車両の車外状況及び車内の乗員の搭乗状態を監視し、他車両の自車両への衝突や自車両の電柱やガードレール等の立体物への衝突が不可避の状況下にあると判断すると、その衝突不可避の状況下で自車両及び乗員の被害が最も小さくなるよう車両制御の実行を指示し、また警報出力を行うものである。この車両用衝突制御装置1は、マイクロコンピュータ等からなる制御部2に、車両状態を検出するためのセンサ、自車両の車外状況を監視するためのセンサ、自車両の車内状況を検出ためのセンサ等を接続して構成されている。
車両状態を検出するためのセンサとしては、車速センサ3、舵角センサ4を用い、また、自車両の車外状況を監視するセンサとして、全方位の走査或いは撮像が可能な機構を備えたレーザレーダやカメラ等を用いる。本形態においては、自車両を中心とした360°の範囲を撮像可能な全方位カメラ5と全方位の走査が可能なレーザレーダ6(ミリ波レーダでも良い)とを併用して車外状況の監視センサとしている。また、自車両の乗員の搭乗状態を監視するセンサとしては、シートに着座した乗員の荷重を検知するシートセンサ7と車内をモニタする車内カメラ8とを併用している。
尚、乗員の搭乗状態を監視するセンサとして、シートセンサ7や車内カメラ8に加え、乗員のシートベルト装着を検出するシートベルトセンサを併用するようにしても良い。
一方、制御部2は、各種センサからの信号に基づいて処理対象となる立体物を認識し、衝突被害を単一の指標で表現して衝突判断及び衝突被害の軽減処理を実行する。すなわち、衝突の際に乗員の受けるダメージは、車両前方への衝突(前突)、車両側方への衝突(側突)、或いは車両後方への衝突(後突)といった衝突形態によって異なり、従来の技術では衝突被害を定量的に把握することが困難であったが、後述するように、制御部2においては、リスク確率という単一の指標を用いて衝突被害を把握することにより、衝突形態を問わない定量的な比較を可能としている。
このため、制御部2は、全方位カメラ5及びレーザレーダ6からの信号に基づいて立体物を検出する立体物検出部10、抽出した立体物と自車両との衝突可能性を判断する衝突判断部11、衝突による自車両のキャビンの変形量を推定するキャビン変形推定部12、シートセンサ7及び車内カメラ8からの信号に基づいて乗員の搭乗状態を検出する乗員状態検出部13、キャビン変形と乗員の搭乗状態とに基づいて乗員の傷害を推定する乗員傷害推定部14、乗員傷害のリスクを最小化する回避制御の車両制御量を算出する車両制御量算出部15の各機能を有している。
尚、後述するように、制御部2は、事故発生時、GPS等により自車両の絶対位置情報を検出する車両位置情報検出部20、自車両と外部との通信を制御する外部通信制御部21に必要なデータの送信を指示し、救命救急体制を支援する。
立体物検出部10は、全方位カメラ5とレーザレーダ6とのセンサフュージョンによる周知の技術により、自車両の周囲に存在する立体物を認識する。このセンサフュージョンによる立体物の認識においては、全方位カメラ5で撮像した画像を処理して抽出した立体物と、レーザレーダ6から送信したレーザ光の反射波を受信して生成したレーダ画像から抽出した立体物とを融合し、また、レーザ光の送光から受光までの時間に基づく距離情報を用いて最終的な認識を行う。
そして、車速センサ3からの自車両の速度と経過時間とで求めた車両の移動量、舵角センサ4からの舵角に基づいて、立体物の座標分布を計算する。この立体物の座標分布の計算においては、舵角により直進・旋回を判断し、直進の場合、車両移動量を前回までに計算した立体物座標の車両前後方向成分に加算し、また、旋回の場合には、移動量と舵角とから車両の回転中心及び回転角を求め、前回までに計算した立体物座標を回転中心に対して回転させる。
衝突判断部11は、車速センサ3からの車両速度、舵角センサ4からの舵角、立体物検出部10からの自車両と周辺の物体との相対位置を示す座標分布に基づいて、この座標分布上で、自車両を現在の舵角及び車両速度のままで走行させた場合、自車両に対して衝突の可能性のある物体を判定し、衝突条件を算出する。例えば、図2に示すように、自車両100の側面後方に、立体物として検出した他車両150が接近してきたとき、自車両100の位置及び速度(速度ベクトル)と他車両150の位置及び速度(速度ベクトル)から衝突の可能性を判断し、車両の衝突位置及び寸法、衝突速度(自車両と衝突物との相対速度)、衝突物の重量等の衝突条件を算出する。
尚、この衝突判断部11で衝突の可能性有りと判断された場合には、その判断結果が警報装置22に出力され、音声や画像による警報がなされる。
キャビン変形推定部12は、衝突判断部11で算出した衝突条件に基づいて、立体物と自車両との衝突による自車両のキャビン変形量を推定する。例えば、図2に示す自車両100へ他車両150の衝突では、図3に示すように、自車両100のキャビン側面後方が変形することが推定される。
このキャビン変形量の推定は、衝突条件に応じたキャビン変形のリスクを評価するためのマップを予め作成しておき、このマップを用いて推定する。マップの作成は、実際の衝突事故に対応するため、広範囲な衝突条件でのキャビン変形量のデータを数値シミュレーションによる衝突解析で取得し、更に、衝突条件のバラツキによる誤差を加味して作成する。
すなわち、衝突条件である、相対速度、重量、寸法、衝突位置等は、衝突前に推定された推定値であるため、ある程度の誤差が発生する。条件のバラツキを考慮せずに推定した衝突条件のみでキャビンの変形量を推定すると、誤差が大きい場合、実際には推定と大きく異なる変形を起こす可能性が考えられる。従って、衝突解析の数値シミュレーションを実行する際に、衝突条件がばらついた場合のキャビン変形量データを予め全て求めておき、これらのデータの分布に基づいて、キャビンが変形する確率分布としてリスクを評価する。
キャビン変形のリスク評価は、本形態においては、図4に示すように、キャビンを含む空間を立方体形状の要素(ボクセル)に分割したボクセルモデルを用い、各ボクセル毎に評価する。すなわち、衝突不可避と判定した場合、ボクセル毎に衝突条件を照らし合わせ、ボクセルモデル全体(キャビン全体)に渡って変形のリスクを推定する。
図4においては、図3に対応して、衝突による変形のリスクが最も高い部位であるキャビン側面の後部コーナ側において、該当する3つのボクセル群VXaが最も変形の確率が高く(例えば、81%)、その次に、このボクセル群VXaにキャビン前方側で隣接する3つのボクセル群VXbの変形確率が高くなる(例えば、80−61%)。また、ボクセル群VXa,VXb周囲のボクセル群VXcは、変形の確率が低くなって(例えば、60−41%)変形の度合いが小さくなり、更に、ボクセル群VXa,VXbから離れたボクセル群VXdでは変形確率が低く(例えば、20%以下)、比較的軽微な変形で済むことを示している。
尚、これらのボクセル毎の変形確率は、予め保有するマップ(予め数値シミュレーションを行って作成したマップ)から衝突条件に応じて設定され、同じ図2,図3に示す衝突形態であっても、例えば、自車両100に対する他車両150の相対位置が離れる程、また、相対速度が小さくなる程、変形確率は小さくなる。
また、図4のボクセルモデルは、説明を簡単にするため、便宜上、2次元で表現しているが、実際の評価は、3次元のボクセルモデルを用いる。この3次元のボクセルモデルは、衝突不可避の状況下におけるリスク空間を示すものであり、あらゆる衝突形態に対応可能なリスクマップであると言える。
乗員状態検出部13は、シートセンサ7により乗員の搭乗位置を検出し、検出した位置での乗員の体型や姿勢等を車内カメラ8で撮像した画像から推定する。そして、乗員の位置や姿勢、体型のバラツキを評価し、乗員の存在する確率分布をキャビン変形のボクセルモデルと同様のボクセルモデルに設定する。
例えば、図5に示すように、自車両100の前席に2名の乗員101,102が搭乗している場合、シートセンサ7により検出した搭乗位置と、車内カメラ8の撮像画像から推定した体型や姿勢等を評価することにより、図6に示すような乗員の存在確率分布を設定する。図6においては、乗員101,102の搭乗位置に該当するボクセルVX1,VX2の存在確率が最も高く、乗員の体系や姿勢による乗車位置のバラツキにより、周囲のボクセルの存在確率が設定される。
乗員傷害推定部14は、キャビン変形の確率分布と乗員存在の確率分布とに基づいて、乗員が傷害を受けるリスクを推定する。すなわち、キャビンが変形する空間と乗員が存在する空間とがラップする部分を、乗員が傷害を受ける空間として、キャビンが変形する確率と、乗員が存在する確率とを掛け合わせることにより、乗員傷害のリスクを評価する。具体的には、キャビンの変形確率をPc、乗員の存在確率をPjとして、以下の(1)式でキャビン変形による乗員傷害の確率Prをボクセル毎に算出する。
Pr=Pc×Pj …(1)
図7は、キャビン変形確率のボクセルモデル(図4参照)と乗員存在確率のボクセルモデル(図6参照)とを用いて算出される乗員傷害のボクセルモデルである。この乗員傷害のボクセルモデルは、キャビン変形の確率Pcが最も高い部位と乗員存在確率Pjの最も高い部位とが離れていることから、衝突部位の前方となる乗員位置のボクセルVX2に隣接するボクセルVX3で傷害確率Prが若干大きくなり、衝突部位の反対側前方となる乗員位置のボクセルVX1では傷害確率Prが小さく、重大な傷害を回避可能であることを示している。
この場合、キャビン変形による乗員傷害のリスクには、予想される受傷部位や乗員の個人差等による様々な要因を考慮した重み付けを行うことが望ましい。(1)式に重み係数Kを導入して書き換えると、以下の(2)式となり、より緻密なリスク評価を行うことができる。重み係数Kは、各要因毎の重み係数の掛け合わせ或いは単独で設定することができる。
Pr=Pc×Pj×K …(2)
例えば、車内カメラ8による画像から乗員の乗車姿勢、年齢、性別等を特定し、以下の(a)〜(c)に示すように、受傷部位、年齢や性別による身体耐性の差を考慮した重み付けを行うことができる。尚、乗車の年齢や性別は、乗車可能性のある乗員、例えば、家族等の年齢、性別等を予め入力しておくようにしても良い。
(a)受傷部位別の重み付け
図8に示すように、頭部や頸部と脚部といったように、予想される傷害の重度が異なる部位毎に重みを変え、例えば、頭部や頸部の重みを10とした場合、脚部の重みを1とする。尚、図8においては、乗員Hの頭部及び頸部の領域H1、領域H周囲の領域H2、胴部及び手足の領域H3の3段階に重みを設定し、領域H1の重みを最も大きくし、次に領域H2の重みを大きくする例を示している。
(b)年齢別の身体耐性の重み付け
加齢による身体耐性の低下を考慮し、例えば、65歳以上の乗員に対する重みを10とした場合、20歳〜40歳の乗員に対する重みを1とする。
(c)性別による身体耐性の重み付け
女性と男性との身体耐性の差を考慮し、乗員の性別によって重み付けを行う。例えば、エアバッグ展開時、女性は男性よりも傷害が大きい傾向にあることから、女性に対する重みを10とした場合、男性に対する重みを5とする。
以上の乗員傷害のリスク(乗員傷害確率Pr)は、本形態においては全ボクセルで総和され、リスクの総和ΣPrを最小とする回避制御の車両制御量が車両制御量算出部15で算出される。この回避制御の車両制御量は、車両の操舵角、加速制御量、ブレーキ制御量等であり、車両挙動シミュレーションや、勾配法(GM;Gradient-based Method)、焼きなまし法(SA;Simulated Annealing)、遺伝的アルゴリズム(GA;Genetic Algorithm)等の周知の最適化手法を用いることにより、リスクの総和ΣPrを目的関数、操舵角、加速制御量、ブレーキ制御量等を設計変数とする最小設計問題を解いて得ることができる。リスクの総和ΣPrを最小とする操舵角、加速制御量、ブレーキ制御量等の車両制御量は、車両制御装置23に出力され、加減速を含む車両姿勢制御の実行により、乗員被害を最小とすることが可能となる。
尚、リスクの総和ΣPrを最小化する車両制御は、リスク総量の大きさを感度とした最適化であり、あらゆる衝突形態に対して効果的にリスクを軽減することが可能であるが、リスクの高い領域がある程度限定される場合等には、ボクセル全体の総和を取ることなく、前述の重み付けを含んで乗員傷害確率Prが最も高い部位を主体とする最適化を行い、重度傷害を積極的に回避するようにしても良い。
以上の制御部2における各機能は、具体的には、図9のフローチャートに示す衝突制御のプログラム処理として実行される。次に、この衝突制御のプログラム処理について説明する。
この衝突制御処理では、最初のステップS1において、車速センサ3や舵角センサ4等かの情報に基づいて自車両の走行状態を検出し、ステップS2で、全方位カメラ5やレーザレーダ6を用いて自車両の周囲に対衝突物として存在する立体物を検出する。次に、ステップS3で全方位カメラ5による画像とレーザレーダ6による距離情報とから自車両周囲の周辺状況を把握し、ステップS4で衝突が不可避か否かの判定を行う。
その結果、衝突を回避可能(可避)と判定した場合には、ステップS4からステップS5へ進み、加減速を含む車両姿勢制御による回避を要するか否かを判定する。そして、操舵や加減速を制御するまでもなく衝突を回避できると判定した場合には、そのまま処理を抜け、操舵や加減速を制御する必要があると判定した場合、ステップS6で操舵や加減速を自動的に制御して車両姿勢制御を実行する。
一方、ステップS4において、衝突回避が不可能(不可避)と判定した場合には、ステップS4からステップS7へ進み、衝突被害のリスクを推定する。この衝突被害のリスクは、前述したように、キャビン変形確率分布のボクセルモデルと乗員存在確率分布のボクセルモデルとを用い、キャビン変形確率Pcと乗員存在確率をPjとをボクセル毎に掛け合わせた乗員傷害確率Prによって推定される。
ステップS7で衝突被害のリスクを推定した後は、ステップS7−1に進み、乗員傷害確率Prが予め設定された閾値Psetを超えているか否か判定する。この判定により、乗員傷害確率Prが閾値Pset以下と判定した場合には、処理を抜ける。一方、乗員傷害確率Prが閾値Psetを超えていると判定した場合には、ステップS8でリスクを最小とする車両姿勢を決定し、ステップS9で加減速を含む車両姿勢制御を実行する。この車両姿勢制御の例として、図10に示すような車両Aと車両Bとの衝突が不可避の状況での制御、図11に示すような単独事故での制御について説明する。
図10の例では、車両Aにはドライバーのみが搭乗し(車両前部の右側席)、車両Bには前席側に2名の乗員が搭乗しており、車両Aが車両Bの左側面側に接近し、車両Aと車両Bとの衝突が不可避の状況下にある。このような状況下において、車両Bは、後部座席に乗員がいないため、後部のリスクが比較的低い。従って、車両Bは、現在の舵角を維持したまま急加速するといった姿勢制御を実行することにより、衝突によるキャビン変形をリスクの低い後部側として、前席側の乗員の傷害を最小限にすることが可能となる。一方、車両Aは、ドライバーのみの乗車であるため、助手席側のリスクが比較的低い。従って、車両Aは、減速しながら右に操舵する姿勢制御を実行することにより、リスクの低い助手席側を変形させ、ドライバーの傷害を最小限にすることが可能となる。
また、図11は、電信柱等の固定された構造物200に車両Cが前方から衝突する場合であり、一般に、電信柱等の固定構造物は車両よりも剛性が高く、車両の変形が局所的となって被害が大きくなることが予想される。従って、図11(a)に示すように、車両Cが前部のバンパービームC1を支えるフロントフレームC2の間で構造物200に衝突すると、変形リスクが高くなる。
このため、車両Cにおいては、図11(b)に示すように、剛性が高く変形リスクの低いフロントフレームC2の前方で構造物200に衝突させるよう、減速しながら進行方向左(或いは右)に操舵する姿勢制御を実行することで車両の変形を小さくし、乗員の傷害を最小限に抑制することが可能となる。
以上のような車両姿勢制御を実行した後は、ステップS10で実際の衝突を回避できた否かを調べる。そして、衝突を回避できた場合、処理を抜け、衝突に至った場合、ステップS10からステップS11へ進み、車両位置情報検出部20でGPS等により検出した車両位置(衝突発生現場の位置)、衝突時の速度・衝突部位等から推測した乗員の受傷部位や傷害の大きさ等のデータを車載の外部通信制御部21を介して外部の救命救急センター等に連絡し、乗員の救命救急に対する支援を行う。
以上のように、本実施形態においては、様々な衝突形態に対して、キャビン変形による乗員傷害のリスクを確率分布という単一の指標で表現しているため、衝突形態を問うことなしに乗員の衝突被害を的確に把握し、乗員の衝突被害を軽減することが可能となる。
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。図12は本発明の実施の第2形態に係り、車両用衝突制御装置のシステム構成図である。
第2形態は、前述の第1形態に対し、キャビン変形によるリスクに加え、乗員挙動によるリスクを考慮するものである。すなわち、衝突による乗員傷害は、キャビン変形が軽微であっても、乗員の挙動によっては重大な傷害を招く場合がある。例えば、助手席側の乗員がシートベルトを着用していない場合には、前方衝突時にインストルメントパネル等に顔面及び頭部を強打する虞があり、また、シートベルトを着用していても、着用の仕方が不適切であったり、乗車姿勢が不適切であった場合には、ベルトの拘束による急激な減速度で胸部を損傷する可能性もある。従って、キャビンの変形に加え、加速度(加減速)による乗員に傷害を評価することで、より広範囲な乗員傷害の軽減が可能となる。
このため、第2形態における車両用衝突制御装置1Aは、第1形態の車両用衝突制御装置1の制御部2の構成を若干変更する。具体的には、図12に示すように、第2形態の制御部2Aは、キャビン変形による乗員の傷害を推定する乗員傷害推定部14に対して、加速度による乗員の傷害を推定する乗員傷害推定部14Aを第2の乗員傷害推定部として追加した構成とする。以下では、第1形態との機能の相違を主として説明し、同様の機能についての詳細は省略する。
乗員傷害推定部14Aにおける乗員挙動によるリスクの評価は、実際の事故の衝突条件に対応するため、広範囲な衝突条件での乗員挙動のデータを予めマップ化しておき、このマップを用いて評価する。マップの作成は、広範囲な衝突条件での乗員挙動のデータを数値シミュレーションによる衝突解析を行って作成する。この解析は、第1形態で説明したキャビン変形を反映した解析モデル(ボクセルモデル)とし、発生する加速度をボクセル毎に評価する。
この加速度による乗員挙動のリスクは、衝突条件がばらついた場合の乗員挙動を予め数値シミュレーションによって求めておき、以下の(3)式に示すように、発生する加速度Gと、そのときの衝突条件が出現する確率Paとに基づく乗員傷害確率Pr2として、ボクセル毎に算出される。尚、加速度Gは、標準化されたデータである。
Pr2=G×Pa …(3)
第2形態においては、キャビン変形による乗員傷害確率Prと乗員挙動による乗員傷害確率Pr2とが車両制御量算出部15に入力され、以下の(4)式に示すように、キャビン変形による乗員傷害確率Prと乗員挙動による乗員傷害確率Pr2とが加算された乗員傷害確率PrTとして算出される。第2形態においては、この乗員傷害確率PrTがキャビン変形及び乗員挙動による乗員傷害の総リスクを表している。
PrT=Pr+Pr2 …(4)
尚、乗員傷害のリスクに対する各種要因の重み付けは、第1形態と同様であり、ボクセル毎の乗員傷害確率PrTの総和ΣPrTを最小とする回避制御の車両制御量が車両挙動シミュレーション及び最適化手法によって算出され、衝突時のキャビン変形及び乗員挙動に起因する乗員被害の軽減が可能となる。
第2形態においては、キャビン変形によるリスクに加えて乗員挙動によるリスクを考慮しているため、第1形態に対してより精密にリスクを把握することができ、より広範な状況で乗員の衝突被害を軽減することができる。
尚、第2形態においては、キャビン変形によるリスクと乗員挙動によるリスクとをボクセル毎に足し合わせてボクセル全体の総和を最適化し、車両姿勢制御を行うようにしているが、それぞれのリスクの総和を最小化する多目的最適化により、車両姿勢制御を行うようにしても良い。
本発明の実施の第1形態に係り、車両用衝突制御装置のシステム構成図 同上、衝突直前の状況を示す説明図 同上、キャビンの変形を示す説明図 同上、キャビン変形の確率分布を示す説明図 同上、乗員状況を示す説明図 同上、乗員の存在確率分布を示す説明図 同上、キャビンの変形による乗員傷害のリスクを示す説明図 同上、乗員の受傷部位別の重み付けを示す説明図 同上、衝突制御処理のフローチャート 同上、側面衝突に対する車両制御を示す説明図 同上、単独の前面衝突に対する車両制御を示す説明図 本発明の実施の第2形態に係り、車両用衝突制御装置のシステム構成図
符号の説明
1,1A 車両用衝突制御装置
2,2A 制御部
10 立体物検出部
11 衝突判断部
12 キャビン変形推定部
13 乗員状態検出部
14,14A 乗員傷害推定部
15 車両制御量算出部
Pc キャビン変形確率
Pj 乗員存在確率
Pr,Pr2,PrT 乗員傷害確率

Claims (4)

  1. 自車両の周囲に存在する立体物を検出する立体物検出手段と、
    上記立体物と自車両との衝突可能性を判断する衝突判断手段と、
    上記立体物と自車両との衝突が不可避と判断されたとき、衝突による自車両のキャビン変形量を推定するキャビン変形量推定手段と、
    自車両の乗員の搭乗状態を検出する乗員状態検出手段と、
    上記キャビン変形量と上記乗員の搭乗状態とに基づいて上記乗員が障害を受ける乗員傷害確率分布を設定し、上記乗員の衝突被害を推定する乗員傷害推定手段と、
    上記乗員の衝突被害に基づ回避制御の車両制御量を、上記乗員傷害確率分布の総和を最小化する制御量として算出する車両制御量算出手段とを備え
    上記車両制御量に基づいて車両姿勢制御を実行することを特徴とする車両用衝突制御装置。
  2. 上記キャビン変形量推定手段は、
    自車両のキャビンをボクセルモデル化し、該ボクセルモデルに、予め衝突条件に対応して求めたキャビン変形量の衝突条件のバラツキによる確率分布を設定し、
    上記乗員状態検出手段は、
    自車両のキャビンをボクセルモデル化し、該ボクセルモデルに、センサによって検出した上記乗員の検出バラツキを考慮した上記乗員の存在確率分布を設定し、
    上記乗員傷害推定手段は、
    自車両のキャビンをボクセルモデル化し、該ボクセルモデルに、上記キャビン変形量の確率分布と上記乗員の存在確率分布とに基づいて上記乗員傷害確率分布を設定する
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用衝突制御装置。
  3. 上記乗員傷害推定手段は、
    更に、上記乗員の挙動に起因する傷害発生の確率分布を設定し、この確率分布を上記乗員傷害確率分布に加算する
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用衝突制御装置。
  4. 上記乗員傷害確率分布に、少なくとも上記乗員の予想受傷部位による重み付けを行う
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の車両用衝突制御装置。
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