JP4948678B2 - 銅合金板材、これを用いたコネクタ、並びにこれを製造する銅合金板材の製造方法 - Google Patents

銅合金板材、これを用いたコネクタ、並びにこれを製造する銅合金板材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は銅合金板材に関し、さらに詳しくは車載部品用や電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに適用される銅合金板材、これを用いたコネクタ、並びにこれを製造する銅合金板材の製造方法に関する。
車載部品用や電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどの用途に使用される銅合金板材には、特性項目として、導電率、耐力(降伏応力)、引張強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性が要求される。近年、電気・電子機器の小型化、軽量化、高機能化、高密度実装化や、使用環境の高温化に伴って、これらの特性に要求されるレベルが高まっている。いくつか代表的な事例を示す。
鉱物資源の低減や、部品の軽量化を背景に、材料の薄肉化が進行しており、なおかつバネ接圧を保つために、従来よりも高強度な材料が使用されている。その際、一般的に曲げ加工性は強度とトレードオフの関係にあるため、高強度の材料を従来通りの曲げ半径で加工すると、クラックが発生する問題が生じる。特に、車載端子や電子機器用途のコネクタなどにはU字型に180°に曲げる設計が必要な場合が多いが、曲げ部外側に大きな応力が付与されるため、曲げ加工性に乏しい材料では、クラックが発生し、コネクタの接圧低下による導通障害が問題になる。対策として、180°曲げする内側に複数のノッチ加工を施したり、密着曲げの設計から内側曲げ半径を大きく取る設計変更などを行ったりする場合があるが、曲げ部品の設計がプレスコストの低減や電子機器部品の小型化と両立できないという問題が生じている。
また、使用環境の高温化が進行している。例えば自動車部品では、二酸化炭素発生量の低減のために、車体軽量化をはかっており、従来、ドアに設置していたような、エンジン制御用のECUなど、電子機器をエンジンルーム内やエンジン付近に設置し、電子機器とエンジンの間のワイヤーハーネスを短くする動きが進んでいる。また、電気自動車化に伴って高電流の用途が増加すると、ジュール熱が問題になる。コネクタに使用される接点材料が100℃以上の高温に長くされされた場合、弾性限内の変位が塑性変位となり、端子嵌合部の接触圧力が低下する問題がある。そこで、耐応力緩和特性に優れた銅合金板材の開発が望まれている。
上記のような問題を解決するため、耐応力緩和特性に優れ、かつ、曲げ加工性を向上させた銅合金材料が要望されている。
この銅合金材料の曲げ加工性向上の要求に対して、結晶方位の制御によって解決する提案がいくつかなされている。
特許文献1では、Cu−Ni−Si系銅合金において、結晶粒径と、{311}、{220}、{200}面からのX線回折強度がある条件を満たす様な結晶方位の場合に、曲げ加工性が優れることが見出されている。また、特許文献2では、Cu−Ni−Si系銅合金において、{200}面および{220}面からのX線回折強度がある条件を満足する結晶方位の場合に、曲げ加工性が優れることが見出されている。また、特許文献3では、Cu−Ni−Si系銅合金において、Cube方位{100}<001>の割合を適宜制御することによって曲げ加工性が優れることが見出されている。
また、耐応力緩和特性向上の要求に対して、一般的に結晶粒径が大きいほど応力緩和し難い特徴があるため、それを利用して、Cu−Ni−Si系銅合金において耐応力緩和特性と曲げ加工性を両立させることが特許文献4などに示されている。
特開2006−009137号公報 特開2008−013836号公報 特開2006−283059号公報 特開2008−106356号公報
ところで、特許文献1、2、4に記載された発明においては、特定面からのX線回折による結晶方位の測定は、ある広がりを持った結晶方位の分布の中のごく一部の特定の面にのみ関するものである。しかも、板面方向の結晶面のみを測定しているに過ぎず、圧延方向や板幅方向にどの結晶面が向いているかについては評価されていないため、結晶方位の制御が不十分であり、曲げ加工性の改善が不十分な場合があった。また、これらの文献に示されている板表面のX線測定では、X線の侵入長は数十ミクロンであるため、それより内部の結晶方位については制御されていなかった。また、特許文献3に記載された発明においては、Cube方位の有効性が指摘されているが、板厚方向の分布やその他の結晶方位成分については制御されていなかった。このように、先行技術では曲げ加工性の改善が不十分な場合があり、特に180°密着曲げの高い応力においてクラックなく曲げ加工ができるレベルには不十分な場合があった。
上記のような課題に鑑み、本発明の目的は、曲げ加工性に優れ、優れた強度を有し、なおかつ、耐応力緩和特性に優れ、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや端子材、リレー、スイッチなどに適した銅合金板材を提供することにある。また、上記銅合金板材を用いたコネクタ、並びにこれを好適に製造する銅合金板材の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、種々検討を重ね、電気・電子部品用途に適した銅合金について研究を行い、板厚表層及び、板厚1/4位置のCube方位面積率を制御することによって、180°密着曲げ特性を著しく向上させることができ、加えて結晶粒径を特定範囲に制御することで上記課題を解決しうることを見出した。また、Brass方位の低減が曲げ加工性にさらに寄与することを見出した。また、それに加えて、上記銅合金において特定の添加元素を用いることにより、導電率や曲げ加工性を損なうことなく、強度や応力緩和特性を向上させうることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき本発明をなすに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の手段を提供するものである。
(1)NiとCoの少なくとも1種を合計で0.5〜5.0mass%、Siを0.1〜1.2mass%含み、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金組成よりなる板材であって、電子後方散乱回折測定における結晶方位解析における、材料表層のCube方位{0 0 1}<1 0 0>の面積率をW0、材料の深さ位置で全体の1/4の位置でのCube方位面積率をW4としたときに、W0/W4の比が0.8以上1.5以下、W0が5〜48%、平均結晶粒径が12〜100μmであることを特徴とする、180°密着曲げ加工性と耐応力緩和特性に優れた銅合金板材。
(2)さらに、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Fe、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0.005〜2.0mass%含有する(1)に記載の銅合金板材。
(3)Brass方位{1 1 0}<1 1 2>の面積率が20%以下であることを特徴とする、(1)または(2)記載の銅合金板材。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の合金板材からなるコネクタ。
(5)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の合金板材の製造方法であって、
(1)又は(2)に記載の組成を有する銅合金鋳塊に対し、少なくとも下記の工程I、II、IIIIV、及びVによる処理をその順で施した後、加工率5〜40%の仕上げ圧延を行うことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
[工程I:1パス加工率を30%以下とし各パス間の保持時間を20〜30秒とした熱間圧延工程]
[工程II:加工率80%〜99%の冷間圧延工程]
[工程III:300〜700℃の温度で10秒〜5時間の中間熱処理工程及びその後に行う加工率5〜50%の冷間圧延工程]
[工程IV:800〜1000℃で行う溶体化熱処理工程]
[工程V:350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理工程及び加工率5〜40%の仕上げ冷間圧延工程]
本発明の銅合金板材は、曲げ加工性に優れ、優れた強度を有し、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや端子材、リレー、スイッチなどに好適である。また、本発明の銅合金板材の製造方法によれば、上記の優れた特性を有する銅合金板材を好適に製造することができる。
Cube方位からの回転角の計算方法を示した説明図である。 実施例における応力緩和特性の試験方法の説明図であり、(a)は熱処理前、(b)は熱処理後の状態をそれぞれ示す。
本発明の銅合金板材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。ここで、「銅合金材料」とは、銅合金素材が所定の形状(例えば、板、条、箔、棒、線など)に加工されたものを意味する。そのなかで板材とは、特定の厚みを有し形状的に安定しており面方向に広がりをもつものを指し、広義には条材を含む意味である。ここで、板材において、「材料表層」とは、「板表層」を意味し、「材料の深さ位置」とは、「板厚方向の位置」を意味する。板材の厚さは特に限定されないが、本発明の効果が一層よく顕れ実際的なアプリケーションに適合することを考慮すると、8〜800μmが好ましく、50〜70μmがより好ましい。
なお、本発明の銅合金板材は、その特性を圧延板の所定の方向における原子面の集積率で規定するものであるが、これは銅合金板材としてそのような特性を有していれば良いのであって、銅合金板材の形状は板材や条材に限定されるものではなく、本発明では、管材も板材として解釈して取り扱うことができるものとする。
(EBSD測定による規定)
材料の曲げ加工時のクラックが発生する原因を明らかにするために、本発明者らは、曲げ変形した後の断面の金属組織を電子顕微鏡及び電子後方散乱回折測定(以下、EBSDともいう)によって詳細に調査した。その結果、基体材料は均一に変形しているのではなく、特定の結晶方位の領域のみに変形が集中する、不均一な変形が進行することが観察された。そして、その不均一変形により、曲げ加工した後の基体材料表面には、数μmの深さのシワや、クラックが発生することが解った。
さらに、90°曲げ加工では歪みは板厚方向最表層に付与されるのに対し、180°曲げにおいては薄板の板厚方向最表層のみならず、板厚1/4位置まで大きく歪んでおり、表層から発達する局所変形領域に対し、表層近傍の結晶粒のみならず板厚1/4位置の深さまでの結晶粒が関与していることが解った。そして、その局所変形帯はCube方位粒にはあまり観察されず、Cube方位は不均一変形を抑制する効果があることが解った。その結果、板表面に発生するシワが低減され、クラックが抑制されることが解った。またBrass方位は曲げ変形後に局所変形が伴っていることが多く、曲げ性には悪影響を及ぼすことが解った。
板表層のCube方位の面積率W0が5〜48%で、板厚1/4深さ位置でのCube方位面積率W4との比であるW0/W4が0.8以上の場合に、180°密着曲げ性が優れる。好ましくはW0は10〜40%、W0/W4は0.9以上である。W0/W4を上記の範囲とすることで、特に曲げ加工性の向上が図られ、曲げ加工性と材料強度とを好適に両立することができる。
板表層のBrass方位面積率は20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。Brass方位面積率を上記の範囲とすることが、同様に、高い曲げ加工性を実現し、これと材料強度との両立の観点から好ましい。
本明細書における結晶方位の表示方法は、材料の圧延方向(RD)をX軸、板幅方向(TD)をY軸、圧延法線方向(ND)をZ軸の直角座標系を取り、材料中の各領域がZ軸に垂直な(圧延面に平行な)結晶面の指数(hkl)と、X軸に平行な結晶方向の指数[uvw]とを用いて、(hkl)[uvw]の形で示す。また、(1 3 2)[6 −4 3]と(2 3 1)[3 −4 6]などのように、銅合金の立方晶の対称性のもとで等価な方位については、ファミリーを表すカッコ記号を使用し、{hkl}<uvw>と示す。
Cube方位とは、圧延面法線方向(ND)に(100)面を、圧延方向(RD)に(100)面を向いている状態であり、{0 0 1}<1 0 0>の指数で示される。
Brass方位とは、圧延面法線方向(ND)に(110)面を、圧延方向(RD)に(112)面を向いている状態であり、{1 1 0}<1 1 2>の指数で示される。
本発明における上記結晶方位の解析には、EBSD法を用いる。EBSDとは、Electron Back Scatter Diffraction(電子後方散乱回折)の略で、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折(菊池パターン)を利用した結晶方位解析技術のことである。本発明においては、結晶粒を200個以上含む、500μm四方の試料面積に対し、0.5μmのステップでスキャンし、方位を解析する。
Cube方位及びBrass方位の面積率とは、各理想方位(上記Cube方位またはBrass方位)からのずれ角度が10°以内の領域の面積を、測定面積で割って算出したものである。
理想方位からのずれ角度については、共通の回転軸を中心に回転角を計算し、ずれ角度とした。図1に、Cube方位からのずれ角度が10°以内の方位の例を示した。ここでは、(100)及び(110)及び(111)の回転軸に関して、10°以内の方位を示しているが、あらゆる回転軸に関してCube方位との回転角度を計算した。回転軸は最も小さいずれ角度で表現できるものを採用した。全ての測定点に対してこのずれ角度を計算して小数第一位までを有効数字とし、Cube方位、Brass方位のそれぞれから10°以内の方位を持つ結晶粒の面積を全測定面積で除し、面積率とした。
EBSDによる方位解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの方位情報を含んでいるが、測定している広さに対して充分に小さいため、本明細書中では面積率として記載した。また、方位分布は板表面から測定した。
なお、EBSD測定にあたっては、鮮明な菊池線回折像を得るために、機械研磨の後に、コロイダルシリカの砥粒を使用して、基体表面を鏡面研磨した後に、測定を行うことが好ましい。
板厚1/4位置でEBSD測定にあたっては、電解研磨によって1/4位置までの表層部を溶解させた後、その面を鏡面研磨し、上記の板表層の場合と同様に測定した。
ここで、EBSD測定の特徴について、X線回折測定との対比として説明する。まず1点目に挙げられるのは、X線回折測定によったのでは測定することができない結晶方位があり、それがS方位及びBR方位となる。換言すれば、EBSDを採用することにより、初めて、S方位及びBR方位に関する情報が得られ、それにより特定される合金組織と作用との関係が明らかになる。2点目は、X線回折はND//{hkl}の±0.5°程度に含まれる結晶方位の分量を測定している。一方、EBSDは当該方位から±10°に含まれる結晶方位の分量を測定している。したがって、EBSD測定によれば桁違いに広範な合金組織に関する情報が網羅的に得られ、合金材料全体としてX線回折では特定することが難しい状態が明らかになる。以上のとおり、EBSD測定とX線回折測定とで得られる情報はその内容及び性質が異なる。なお、本明細書において特に断らない限り、EBSDの結果は、銅合金板材のND方向に対して行ったものである。
(合金組成等)
コネクタ用材料として好適に用いられる銅系材料は、純銅系と高強度銅系に分けられ、高強度銅系材料はさらに固溶型と析出型に分けられる。本発明においては、コネクタに要求される導電性、機械的強度および耐熱性を有する析出型銅合金が好ましい。特に、高強度と高導電性を両立させるためには、Cu−Ni−Si系、Cu−Ni−Co−Si系、Cu−Co−Si系合金が好ましい。
・Ni,Co,Si
本発明において、銅(Cu)に添加する第1の添加元素群であるニッケル(Ni)とコバルト(Co)とケイ素(Si)について、それぞれの添加量を制御することにより、Ni−Si、Co−Si、Ni−Co−Siの化合物を析出させて銅合金の強度を向上させることができる。その添加量は、NiとCoのいずれか1種または2種を合計で、好ましくは0.5〜5.0mass%、さらに好ましくは0.6〜4.5mass%、より好ましくは0.8〜4.0mass%である。Siの含有量としては、好ましくは0.1〜1.5mass%、さらに好ましくは0.2〜1.2mass%である。これらの元素は多すぎると導電率を低下させやすく、また、少なすぎると強度が不足しやすい。なお、導電率を高めたい場合は、Coの添加を必須とすることが好ましく、その場合のCoの添加量は、0.4〜1.5mass%、より好ましくは0.6〜2.0mass%である。なお、Coは希少元素であるとともに、添加によって溶体化温度を高めるため、用途に応じて顕著に導電性を高める必要が無い場合は、添加しないことが好ましい。
・平均粒径
平均結晶粒径は12〜100μmとする。小さすぎると耐応力緩和特性が劣り、また大きすぎる場合は曲げ加工性が劣るため、好ましくない。また、結晶粒径を12μmよりも小さい範囲に制御するためには、後述するように最終溶体化熱処理にて到達温度を比較的低温に制御する必要があるが、その場合、溶質元素の固溶が不十分となり、時効析出硬化の減少を伴う場合がある。その観点からも平均結晶粒径は12μm以上とする。更に好ましくは、22〜80μmである。
なお、本発明における平均結晶粒径は、JIS H 0501(切断法)に準じて測定したものをいう。
・その他の元素
本発明の銅合金板材は、上記第1の添加元素群とともに、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Fe、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。この組成での平均結晶粒径とその好ましい範囲も上記と同じである。
添加効果を充分に発現させ、かつ導電率を低下させないためには、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Fe、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素の含有量は、総量で0.005〜2.0mass%とし、好ましくは0.1〜1.5mass%、より好ましくは、0.7〜1.2mass%である。これらの添加元素が総量で多すぎると導電率を低下させる。少なすぎると、これらの元素を添加した効果がほとんど発揮されない。
以下に、各元素の添加効果を示す。Mg、Sn、Znは、Cu−Ni−Si系、Cu−Ni−Co−Si系、Cu−Co−Si系銅合金に添加することで耐応力緩和特性が向上する。それぞれを添加した場合よりも併せて添加した場合に相乗効果によってさらに耐応力緩和特性が向上する。また、半田脆化を著しく改善する効果がある。Mg、Sn、Znの合計の好ましい範囲は、合計で0.12〜1.0mass%である。
Mn、Ag、B、Pは添加すると熱間加工性を向上させるとともに、強度を向上する。Mn、Ag、B、Pの合計の好ましい範囲は、合計で0.12〜0.5mass%である。
Cr、Fe、Ti、Zr、Hfは、主な添加元素であるNiやCoやSiとの化合物や単体で微細に析出し、析出硬化に寄与する。また、化合物として50〜500nmの大きさで析出し、粒成長を抑制することによって結晶粒径を微細にする効果があり、曲げ加工性を良好にする。Cr、Fe、Ti、Zr、Hfの合計の好ましい範囲は、合計で0.12〜0.5mass%である。
(製造方法等)
次に、板厚表層付近及び板厚1/4位置のCube方位及びBrass方位の面積率を制御する方法について説明する。ここでは、析出型銅合金の板材(条材)を例に挙げて説明するが、固溶型合金材料、希薄系合金材料、純銅系材料に展開することが可能である。
一般に、析出型銅合金は、均質化熱処理した鋳塊を熱間圧延と冷間圧延の各ステップで薄板化し、700〜1020℃の温度範囲で最終溶体化熱処理を行って溶質原子を再固溶させた後に、時効析出熱処理と仕上げ冷間圧延によって必要な強度を満足させるように製造される。時効析出熱処理と仕上げ冷間圧延の条件は、所望の強度及び導電性などの特性に応じて、調整される。集合組織は、この一連のステップにおける、最終溶体化熱処理中に起きる再結晶によってそのおおよそが決定し、仕上げ圧延中に起きる方位の回転により、最終的に決定される。
上記熱間圧延は、高温での低い変形抵抗と高い変形能を利用するためであり、冷間に比べて加工に必要なエネルギーを少なくする大きな利点がある。一方、析出硬化型合金においては、熱間圧延温度によっては析出が起きる場合があるが、この高温での析出物は一般的に粗大であるため、最終溶体化熱処理においても完全に固溶されず、結果として時効析出熱処理での析出硬化が不足する場合がある。もしくは、最終溶体化熱処理を高温化し、熱間圧延中の析出物を完全固溶させると結晶粒が粗大化し、今度は曲げ加工性が劣化する場合がある。この様な理由から、熱間圧延中には極力析出を抑制するために、1パス加工率を極力高めて総パス数を減少させ、パスとパスの間の保持は取らないことで、熱間圧延を高温短時間で終え、熱間圧延後は水冷などの方法によって急冷し、過飽和固溶体に近い状態に保つことが一般的な熱間圧延工程の設計指針である。
上記のような一般的な熱間圧延及び一連の製造方法では板厚表層付近及び板厚1/4位置のCube方位及びBrass方位の面積率を、本発明の規定する範囲に安定して制御することは困難であり、下記に示す製造方法によって達成されることが確認された。
・ 工程条件I
一つ目に、熱間圧延は、1パス加工率は30%以下とし、リバース式圧延によって材料にとっての圧延方向が1パスごとに交互に変わる圧延が良い。これは、大きな剪断応力が付与される表層に対して1回毎の圧延において交互に圧延方向を変えることで、剪断歪みを打ち消し合って板表層の結晶の回転を制御し、圧縮応力が付与される内部とは異なる組織が形成されることを抑制する効果によると考えられる。上記の条件によって、板厚方向の組織の変動を軽減できる。また、パスとパスの間の保持時間は20秒〜100秒(好ましくは20〜50秒、より好ましくは20〜30秒)とし、パスとパスの間の温度低下は5〜100℃とするのが良い。このパスとパスの間の時間及び温度の制御によって材料中に静的な再結晶及び回復が起き、板厚方向の組織の変動を軽減にすることができる。パスとパスの間の温度は放射温度計や接触式熱電対温度計によって測定する。パスとパスの温度の制御にあたっては、バーナーなどによって加熱、及び空冷や水冷によって冷却する。
なお、パスとパスの保持時間が100秒を超える場合は、材料温度が下がり過ぎてしまうために、圧延中に面割れやエッジ割れを起こすため、好ましくない。
・工程条件II
二つ目に、熱間圧延とその後のスケール除去の後に行う冷間圧延は、加工率が90%〜99%で潤滑圧延が好ましい。90%未満では、熱間圧延で形成された表層と内部の組織変動の影響を受ける場合がある。また99%を超えるとエッヂ割れが発生する場合がある。
・工程条件III
三つ目に、最終溶体化熱処理の前に、焼鈍熱処理(中間熱処理)とその後に低い加工率の冷間圧延を導入し、その後に最終溶体化熱処理を施すのが良い。この導入される焼鈍熱処理は300〜700℃の温度で10秒〜5時間が、その後の冷間圧延は、5〜50%の加工率が良い。
・工程条件IV
四つ目に、最終溶体化熱処理を平均結晶粒径が12〜100μmのサイズになるような比較的高い温度で行うのが良い。これは上記熱間圧延のパスとパスの間に発生した析出物と、最終溶体化熱処理の前の焼鈍熱処理に発生した析出物を固溶させるためである。上記の一般的な工程では、最終溶体化熱処理の温度を高めると結晶粒の粗大化により曲げ加工性が低下するが、本発明のようにCube方位面積率を高めた場合には、結晶方位の効果によって曲げ性の劣化は軽微である。平均結晶粒径を12〜100μmに制御するための温度は、合金成分によって異なるが、800℃〜1000℃の温度が良い。
上記の四つの中でも、一つ目(条件I)、三つ目(条件III)及び四つ目(条件IV)に示した製造方法は従来の一般的な析出型銅合金の製造方法とは異なり、本発明にとって極めて重要である。二つ目に示した製造方法を併用することによって、更に好ましい状態が得られる。
Cu−Ni−Si系における熱間圧延についてのこれまでの文献では、熱間圧延中の析出は極力抑制すべき現象と記載されている。そのため、曲げ加工性や強度の低下を招くNi及びSiの析出、及びその析出物の粗大化を抑制する方法として、例えば特許第4209749号の段落[0025]では、熱間圧延時間を短縮する方法が開示されている。また、例えば特許第4444143号では、熱間圧延自体を行わない方法として双ロール鋳造法が開示されている。
本発明における新規の製法は、板厚方向の組織差低減という困難な課題を達成するために、工程条件Iの様にパス間の保持時間をあえて長くとり、一方でその間に起こる析出の対策として、工程条件IVのように積極的に高い温度を採用するものである。
上記内容を満たすことで、たとえばコネクタ用銅合金板材に要求される特性を満足することができる。本発明の銅合金板材の一つの好ましい実施態様では、0.2%耐力が500MPa以上、かつ導電率が30%IACS以上である。特に好ましくは、0.2%耐力については700MPa以上、曲げ加工性については試験片幅が1mmの180°密着曲げ試験においてクラックなく曲げ加工が可能、導電率については35%IACS以上、耐応力緩和特性については後述する温度150℃で1000時間保持する測定方法によって30%以下の良好な特性を有する銅合金板材であり、このような特性を実現可能なことが、本発明の一つの利点である。なお、本発明において、0.2%耐力はJIS Z 2241に基づく値である。また、上記の%IACSとは、万国標準軟銅(International Annealed Cupper Standard)の抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%IACSとした場合の導電率を表したものである。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
表1−1及び表1−2の合金成分の欄の組成に示すように、Ni、Co、Siを含有し、残部がCuと不可避不純物から成る合金を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造して鋳塊を得た。この状態を提供材とし、下記A〜Gのいずれかの工程にて、本発明例1−1〜1−12および比較例1−1〜1−8の銅合金板材の供試材を製造した。なお、表1−1及び表1−2にA〜Gのいずれの工程を用いたのかを示した。最終的な合金板材の厚さは特に断らない限り150μmとした。
なお、A〜Gには示していないが、パスとパスの保持時間が100秒を超える条件で試作した場合は、材料温度が下がり過ぎてしまい、圧延中に面割れやエッジ割れを起こしたため、試作を中止した。
(工程A)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が10〜30%のリバース式圧延を合計4〜12パス行い、パスとパスの間の保持時間は20〜100秒とした。その後に90〜99%の加工率の冷間圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜5時間の熱処理を行い、5〜50%の加工率の冷間圧延を行った。その後に、800℃以上の温度に5秒以上保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜40%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程B)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が10〜30%のリバース式圧延を合計4〜12パス行い、パスとパスの間の保持時間は20〜100秒とした。その後に80〜89%の加工率の冷間圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜5時間の熱処理を行い、5〜50%の加工率の冷間圧延を行った。その後に、800℃以上の温度に5秒以上保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜40%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程C)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が10〜30%のリバース式圧延を合計4〜12パス行い、パスとパスの間の保持時間は20〜100秒とした。その後に90〜99%の加工率の冷間圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜5時間の熱処理を行い、5〜50%の加工率の冷間圧延を行った。その後に、800℃以上の温度に5秒以上保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、40〜50%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程D)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が30%を超えるタンデム式の1方向圧延を合計2〜8パス行い、パスとパスの間の保持時間は20秒未満とした。その後に80〜89%の加工率の冷間圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜5時間の熱処理を行い、5〜50%の加工率の冷間圧延を行った。その後に、800℃以上の温度に5秒以上保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜40%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程E)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が30%を超えるタンデム式の1方向圧延を合計2〜8パス行い、パスとパスの間の保持時間は20秒未満とした。その後に80〜89%の加工率の冷間圧延を行い、800℃以上の温度に5秒以上保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜40%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程F)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が10〜30%のリバース式圧延を合計4〜12パス行い、パスとパスの間の保持時間は20〜100秒とした。その後に90〜99%の加工率の冷間圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜5時間の熱処理を行い、5〜50%の加工率の冷間圧延を行った。650〜750℃の温度に2時間保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜40%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程G)
900〜1020℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理後、熱間加工を行った後に水冷し、酸化スケール除去のために面削を行った。その熱間圧延は、1パス加工率が10〜30%のリバース式圧延を合計4〜12パス行い、パスとパスの間の保持時間は20〜100秒とした。その後に80〜89%の加工率の冷間圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜5時間の熱処理を行い、5〜50%の加工率の冷間圧延を行った。730〜770℃の温度に5〜30秒保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜40%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜2時間保持する調質焼鈍を行った。
(工程H)
冷間圧延の間の中間熱処理(300〜700℃の温度で10秒〜5時間)を行わなかった以外、工程Aと同じ条件を採用した。
Figure 0004948678
なお、各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を行った。
この供試材について下記のようにして各特性を測定、評価した。ここで、供試材の厚さは0.15mmとした。結果を表1−1及び表1−2に示す。
a.Cube方位の面積率 [W0、W0/W4]:
EBSD法により、約500μm四方の測定領域で、スキャンステップが0.5μmの条件で測定を行った。測定面積は結晶粒を200個以上含むことを基準として調整した。 上述したように、理想方位からのずれ角度については、共通の回転軸を中心に回転角を計算し、ずれ角度とした。あらゆる回転軸に関してCube方位との回転角度を計算した。回転軸は最も小さいずれ角度で表現できるものを採用した。全ての測定点に対してこのずれ角度を計算して小数第一位までを有効数字とし、Cube方位から10°以内の方位を持つ結晶粒の面積を全測定面積で除し、面積率を算出した。W0は板表面からの測定結果、W4は板厚方向1/4深さ位置の測定結果であり、W0/W4はこれらの比である。
b.Brass方位の面積率 [B0]:
上述のCube方位の面積率と同様に、板表面から測定した。
c.平均結晶粒径 [GS]:
JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。圧延方向に対して平行の断面と、垂直の断面において測定し、その両者の平均をとった。金属組織の観察は、鏡面研磨した材料面を化学エッジングし、光学顕微鏡観察により行った。
d.180°密着曲げ加工性 [曲げ加工性]:
圧延方向に垂直に幅1mm、長さ25mmにプレスで打ち抜き、これに曲げの軸が圧延方向に直角になるようにW曲げしたものをGW(Good Way)、圧延方向に平行になるようにW曲げしたものをBW(Bad Way)とした。JIS Z 2248に準じて曲げ加工を行った。0.4mmRの90°曲げ金型を使用して予備曲げを行った後に、圧縮試験機によって密着曲げを行った。曲げ部外側における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察によりその曲げ加工部位を観察し、割れの有無を調査した。曲げ加工部にクラックがなく、シワも軽微なものを◎、クラックがないがシワが大きいものを○、クラックのあるものを×と判定した。
e.0.2%耐力 [YS]:
圧延平行方向から切り出したJIS Z2201−13B号の試験片をJIS Z2241に準じて3本測定しその平均値を示した。ここでは、YSの値が550MPa以上であるものを、強度に優れているものとした。
f:導電率 [EC]:
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。ここでは、ECの値が35%IACS以上であるものを、導電性に優れているものとした。
g.応力緩和率 [SR]:
日本伸銅協会の仮規格である、JCBA T309:2001(旧日本電子材料工業会標準規格 EMAS−3003に相当)に準じ、以下に示すように、150℃で1000時間保持後の条件で測定した。片持ち梁法により耐力の80%の初期応力を負荷した。ここでは、SRの値が30%以下であるものを、耐応力緩和性に優れているものとした。
図2は応力緩和特性の試験方法の説明図であり、(a)は熱処理前、(b)は熱処理後の状態である。図2(a)に示すように、試験台4に片持ちで保持した試験片1に、耐力の80%の初期応力を付与した時の試験片1の位置は、基準からδの距離である。これを150℃の恒温槽に1000時間保持(前記試験片1の状態での熱処理)し、負荷を除いた後の試験片2の位置は、図2(b)に示すように基準からHの距離である。3は応力を負荷しなかった場合の試験片であり、その位置は基準からHの距離である。この関係から、応力緩和率(%)は(H−H)/(δ―H)×100と算出した。式中、δは、基準から試験片1までの距離であり、Hは、基準から試験片3までの距離であり、Hは、基準から試験片2までの距離である。
Figure 0004948678
Figure 0004948678
表1−2に示すように、比較例の試料では、いずれかの特性が劣る結果となった。
すなわち、比較例1−1は、NiとCoの総量が少ないために、析出硬化に寄与する析出物の密度が低下し強度が劣った。また、NiまたはCoと化合物を形成しないSiが金属組織中に過剰に固溶し導電率が劣った。また、耐応力緩和性も劣った。比較例1−2は、NiとCoの総量が多いために、導電率が劣った。比較例1−3は、Siが少ないために強度が劣った。比較例1−4は、Siが多いために導電率が劣った。
比較例1−5はW0/W4が低く、180°密着曲げ加工性が劣った。比較例1−6はW0/W4及びW0が低く、180°密着曲げ加工性が劣った。比較例1−7はW0と平均結晶粒径が高く、180°密着曲げ加工性が劣った。比較例1−8は平均結晶粒径が小さく、耐応力緩和特性が劣った。
これに対し、表1−1に示すように、本発明例1−1〜1−12は、180°密着曲げ加工性、耐力、導電率、応力緩和特性のいずれにおいても優れていた。特に、表層のBrass方位面積率が20%以下の本発明例1−1、1−2、1−4、1−6、1−7、1−8、1−9、1−11、1−12では、GW、BWの少なくとも一方においてクラックがなく、シワも軽微なものであるという極めて優れた曲げ加工性を示した。
実施例2
表2の合金成分の欄に示す組成で、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金について、実施例1と同様にして、本発明例2−1〜2−8、比較例2−1〜2−3の銅合金板材の供試材を製造し、実施例1と同様に各特性を測定、評価した。結果を表2に示す。
Figure 0004948678
比較例3
本発明例1−1の合金組成を採用し、工程Hを介して銅合金板材を作製した。これについて、上記各実施例と同様の評価を行った結果が下記のとおりである。
Figure 0004948678
上記のとおり中間熱処理を介さずに作製した銅合金板材は所定の合金組成及び熱間圧延条件、溶体化熱処理条件を採用したとしても、 W0が少なく、180°密着曲げ加工性が劣っていた。
表2に示すように、比較例2−1、2−2、2−3は、その他の元素として示したSn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Fe、Ti、ZrおよびHfの合計の添加量が多すぎるために、導電率が劣った。
これに対し、本発明例2−1〜本発明例2−8は、曲げ加工性、耐力、導電率、応力緩和特性のいずれにも優れていた。
このように、本発明の銅合金板材は、コネクタ材に適した優れた特性を有する。
つづいて、従来の製造条件により製造した銅合金板材について、本願発明に係る銅合金板材との相違を明確化するために、その条件で銅合金板材を作製し、上記と同様の特性項目の評価を行った。なお、各板材の厚さは特に断らない限り上記実施例と同じ厚さになるように加工率を調整した。
(比較例101)・・・特開2009−007666号公報の条件
上記本発明例1−1と同様の金属元素を配合し、残部がCuと不可避不純物から成る合金を高周波溶解炉により溶解し、これを0.1〜100℃/秒の冷却速度で鋳造して鋳塊を得た。これを900〜1020℃で3分から10時間の保持後、熱間加工を行った後に水焼き入れを行い、酸化スケール除去のために面削を行った。この後の工程は、次に記載する工程A−3,B−3の処理を施すことによって銅合金c01を製造した。なお、上記熱間加工については、上記公報からは詳細な条件が明らかではなく、本願出願当時に一般的な条件であった温度:800〜1020℃、1パス加工率35〜40%、各パス間の保持時間:3〜7秒という条件を採用して行った。
製造工程には、1回または2回以上の溶体化熱処理を含み、ここでは、その中の最後の溶体化熱処理の前後で工程を分類し、中間溶体化までの工程でA−3工程とし、中間溶体化より後の工程でB−3工程とした。
工程A−3:断面減少率が20%以上の冷間加工を施し、350〜750℃で5分〜10時間の熱処理を施し、断面減少率が5〜50%の冷間加工を施し、800〜1000℃で5秒〜30分の溶体化熱処理を施す。
工程B−3:断面減少率が50%以下の冷間加工を施し、400〜700℃で5分〜10時間の熱処理を施し、断面減少率が30%以下の冷間加工を施し、200〜550℃で5秒〜10時間の調質焼鈍を施す。
得られた試験体c01は、上記実施例とは製造条件について 熱間加工条件の点で異なり、180°密着曲げ加工性について要求特性を満たさない結果となった。
(比較例102)・・・特開2006−009137号公報の条件
上記本発明例1−1と同じ組成の銅合金を高周波溶解炉にて熔解し、DC法により厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊に鋳造した。次にこれらの鋳塊を1000℃に加熱し、この温度に1時間保持後、厚さ12mmに熱間圧延し、速やかに冷却した。なお、熱間圧延の条件は、同公報の段落[0027]を参照し、温度を900〜1000℃の範囲で、熱間圧延後の冷間圧延を加工率90%以上とした。1パスの加工率及び各パス間の保持時間は、本願出願当時に一般的な条件であった35〜40%及び3〜7秒間という条件を採用して行った。
次いで熱間圧延板を両面各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した後、冷間圧延(イ)により厚さ0.15〜0.25mmに加工し、次いで溶体化処理温度を825〜925℃の温度範囲で変化させ15秒間熱処理し、その後直ちに15℃/秒以上の冷却速度で冷却した。次に不活性ガス雰囲気中で475℃で2時間の時効処理を施し、次いで最終塑性加工である冷間圧延(ハ)を行い、最終的な板厚を揃えた。前記最終塑性加工後、引き続き375℃で2時間の低温焼鈍を施して銅合金板材(試料c02)を製造した。
得られた試験体c02は、上記実施例とは製造条件について 熱間圧延の条件及び中間熱処理の有無の点で異なり、180°密着曲げ加工性を満たさない結果となった。
(比較例103)・・・特開平11−335756号公報の条件
上記本発明例1−1と同じ成分組成の銅合金を、クリプトル炉にて木炭被覆下で大気溶解し、ブックモールドに鋳造し、50mm×80mm×200mmの鋳塊を作製した。この鋳塊を930℃に加熱して厚さ15mmまで熱間圧延後、直ちに水中急冷した。この熱延材の表面の酸化スケールを除去するため、表面をグラインダで切削した。これを冷間圧延した後、750℃で20秒の熱処理、30%の冷間圧延、480℃で2時間の析出焼鈍を施し、板厚を調整した材料を得て、試験に供した(c02)。なお、熱間圧延において、1パスの加工率及び各パス間の保持時間は、本願出願当時に一般的な条件であった1パス加工率35〜40%、各パス間の保持時間:3〜7秒という条件を採用して行った。
得られた試験体c02は、上記実施例とは製造条件について 熱間圧延の条件及び中間熱処理の有無の点で異なり、180°密着曲げ加工性を満たさない結果となった。
(比較例104)・・・特開2006−283059号公報の条件
上記本発明例1−1の組成の銅合金を、電気炉により大気中にて木炭被覆下で溶解し、鋳造可否を判断した。溶製した鋳塊を熱間圧延し、厚さ15mmに仕上げた。つづいてこの熱間圧延材に対し、冷間圧延及び熱処理(冷間圧延1→溶体化連続焼鈍→冷間圧延2→時効処理→冷間圧延3→短時間焼鈍)を施し、所定の厚さの銅合金薄板(c04)を製造した。なお、溶体化は同公報の段落[0027]を参照し、実体温度800〜950℃で30秒以下保持する条件とした。熱間圧延については詳細な開示はなく、本願出願当時に一般的な条件であった 1パス加工率を35〜40%、各パス間の保持時間を3〜7秒という条件を採用して行った。
得られた試験体c04は、上記実施例1とは製造条件について熱間圧延の条件及び中間熱処理の有無の点で異なり、180°密着曲げ加工性を満たさない結果となった。
(比較例105)・・・特開2006−152392号公報の条件
上記本発明例1−1の組成をもつ合金について、クリプトル炉において大気中で木炭被覆下で溶解し、鋳鉄製ブックモールドに鋳造し、厚さが50mm、幅が75mm、長さが180mmの鋳塊を得た。そして、鋳塊の表面を面削した後、950℃の温度で厚さが15mmになるまで熱間圧延し、750℃以上の温度から水中に急冷した。次に、酸化スケールを除去した後、冷間圧延を行い、所定の厚さの板を得た。なお、熱間圧延において、1パスの加工率及び各パス間の保持時間は、本願出願当時に一般的な条件であった1パス加工率を35〜40%、各パス間の保持時間を3〜7秒という条件を採用して行った。
続いて、塩浴炉を使用し、温度で20秒間加熱する溶体化処理を行なった後に、水中に急冷した後、後半の仕上げ冷間圧延により、各厚みの冷延板にした。この際、下記に示すように、これら冷間圧延の加工率(%)を種々変えて冷延板(c05)にした。これらの冷延板を、下記に示すように、温度(℃)と時間(hr)とを種々変えて時効処理した。
冷間加工率: 95%
溶体化処理温度: 900℃
人工時効硬化処理温度×時間: 450℃×4時間
板厚: 0.6mm
得られた試験体c05は、上記実施例1とは製造条件について熱間圧延の条件及び中間熱処理の有無の点で異なり、180°密着曲げ加工性を満たさない結果となった。
(比較例106)・・・特開2008−223136号公報の条件
実施例1に示す銅合金を溶製し、縦型連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片(厚さ180mm)から厚さ50mmの試料を切り出し、これを950℃に加熱したのち抽出して、熱間圧延を開始した。その際、950℃〜700℃の温度域での圧延率が60%以上となり、かつ700℃未満の温度域でも圧延が行われるようにパススケジュールを設定した。熱間圧延の最終パス温度は600℃〜400℃の間にある。鋳片からのトータルの熱間圧延率は約90%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。なお、熱間圧延において、各パス間の保持時間は、本願出願当時に一般的な条件であった3〜7秒とした。
次いで、冷間圧延を行った後、溶体化処理に供した。試料表面に取り付けた熱電対により溶体化処理時の温度変化をモニターし、昇温過程における100℃から700℃までの昇温時間を求めた。溶体化処理後の平均結晶粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が10〜60μmとなるように到達温度を合金組成に応じて700〜850℃の範囲内で調整し、700〜850℃の温度域での保持時間を10sec〜10minの範囲で調整した。続いて、上記溶体化処理後の板材に対して、圧延率で中間冷間圧延を施し、次いで時効処理を施した。時効処理温度は材温450℃とし、時効時間は合金組成に応じて450℃の時効で硬さがピークになる時間に調整した。このような合金組成に応じて最適な溶体化処理条件や時効処理時間は予備実験により把握してある。次いで、圧延率で仕上げ冷間圧延を行った。仕上げ冷間圧延を行ったものについては、その後さらに、400℃の炉中に5min装入する低温焼鈍を施した。このようにして供試材を得た。なお、必要に応じて途中で面削を行い、供試材の板厚は0.2mmに揃えた。主な製造条件は下記に記載してある。
[特開2008−223136 比較例1の条件]
700℃未満〜400℃での熱間圧延率: 17%(1パス)
溶体化処理前 冷間圧延率: 90%
中間冷間圧延 冷間圧延率: 20%
仕上げ冷間圧延 冷間圧延率: 30%
100℃から700℃までの昇温時間: 10秒
得られた試験体c05は、上記実施例1とは製造条件について熱間圧延の条件及び中間熱処理の有無の点で異なり、180°密着曲げ加工性を満たさない結果となった。
1 初期応力を付与した時の試験片
2 負荷を除いた後の試験片
3 応力を負荷しなかった場合の試験片
4 試験台

Claims (5)

  1. NiとCoの少なくとも1種を合計で0.5〜5.0mass%、Siを0.1〜1.2mass%含み、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金組成よりなる板材であって、電子後方散乱回折測定における結晶方位解析における、材料表層のCube方位{0 0 1}<1 0 0>の面積率をW0、材料の深さ位置で全体の1/4の位置でのCube方位面積率をW4としたときに、W0/W4の比が0.8以上1.5以下、W0が5〜48%、平均結晶粒径が12〜100μmであることを特徴とする、180°密着曲げ加工性と耐応力緩和特性に優れた銅合金板材。
  2. さらに、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Fe、Ti、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0.005〜2.0mass%含有する請求項1に記載の銅合金板材。
  3. Brass方位{1 1 0}<1 1 2>の面積率が20%以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の銅合金板材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の合金板材からなるコネクタ。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の合金板材の製造方法であって、
    請求項1又は2に記載の組成を有する銅合金鋳塊に対し、少なくとも下記の工程I、II、IIIIV、及びVによる処理をその順で施した後、加工率5〜40%の仕上げ圧延を行うことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
    [工程I:1パス加工率を30%以下とし各パス間の保持時間を20〜30秒とした熱間圧延工程]
    [工程II:加工率80%〜99%の冷間圧延工程]
    [工程III:300〜700℃の温度で10秒〜5時間の中間熱処理工程及びその後に行う加工率5〜50%の冷間圧延工程]
    [工程IV:800〜1000℃で行う溶体化熱処理工程]
    [工程V:350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理工程及び加工率5〜40%の仕上げ冷間圧延工程]
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