JP4969841B2 - 赤外線遮蔽発煙組成物 - Google Patents
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具体的には、本発明に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、対象物の発する赤外線に対する探知から所定時間の間免れるカムフラージュに利用したり、また、金融施設や対象物等のエリアにおける保護物件を煙により保護する際、侵入者による赤外線透視を防止するために利用する。
例えば、煙生成剤として赤リン、酸化鉄、アルミニウム粉末およびマグネシウム粉末とから成る発煙成分と、これに加えて、圧縮成型体にするために結合剤としてブタジエンゴム等が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、赤外線遮蔽発煙組成物の燃焼により得られる赤外線遮蔽効果の原理としては、赤外線の散乱、吸収、放射の3つの要因がある。
放射は、赤外線遮蔽発煙組成物の燃焼に伴う反応熱および水和熱の発生により遮蔽効果を有する。しかしながら、反応熱および水和熱は、反応後次第に低下していくので、遮蔽の持続性がなくなるという問題があった。
本発明者は、散乱、吸収、放射の3つの要因の中で一番大きい有効な要因が吸収であることに着目し、煙生成剤の主剤として赤リンを用いた赤外線遮蔽発煙組成物において、赤外線の吸収効率を改善し、可視光線波長域はもとより赤外線波長域で遮蔽効果が著しく高く、特に8〜12μmの遠赤外線波長域で赤外線の透過性が著しく低下する赤外線遮蔽発煙組成物を得ることと、圧縮成型体の形状、成型強度を維持しながら赤リンと発熱剤との反応温度を低下させずに赤外線遮蔽発煙性能を向上させることとを達成することができる技術を見い出し、本発明を完成するに至った。
(1)赤外線遮蔽の要因であるリン酸の煙濃度が従来より高い組成物。
(2)赤外線遮蔽性能を保持しつつ、破壊強度、燃焼速度の制御範囲が広い組成物。
(成分を変えずに、配合比を変えることで、様々な製品用途に対応できる組成)
そこで、本発明に係る赤外線遮蔽発煙組成物は、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、ポリアルキレングリコールとを有することを特徴とする。
エネルギーバインダは、燃焼剤兼結合剤であり、燃焼時に発熱反応するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することにより、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度を高くする性能を有する。エネルギーバインダとしては、例えば、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれる。
本発明に係る別の赤外線遮蔽発煙組成物は、赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、フッ素ゴムとを有することを特徴とする。
フッ素ゴムとしては、例えば、バイトンA(デュポンパフォーマンスエラストマー社製の登録商標)が知られている。バイトンAは、VF2(vinylidene fluoride)およびHFP(hexafluoropropylene)を66%含むフッ素化された炭化水素ポリマーであり、燃焼時に多量の熱を発生するため、リン酸の生成に必要な燃焼熱を補足することで、リン酸の煙濃度を高くすることができ、また、燃焼速度が高くなる性能を有する。また、成型した場合、破壊強度が高くなる性能を有する。
また、本発明に係る赤外線遮蔽発煙組成物によれば、3〜5μm、特に8〜12μmの遠赤外線波長域に遮蔽効果が顕著に現れる。
赤外線遮蔽発煙組成物において、赤リンは、酸化剤、金属、非金属の反応熱により気化する。
4P(赤リン)+ 燃焼熱 → P4(g) ・・・(式1)
大気中の酸素と反応して五酸化リンを生成する。
五酸化リンは、大気中の水分と反応してリン酸を生成する。
P2O5 + 3H2O → 2H3PO4 + 熱 ・・・(式3)
このリン酸(水和物)は、赤外線を吸収する性質を有しており、その赤外線吸収特性は、図1に示すリン酸スペクトルのリファレンスシートによる赤外線吸収スペクトルで示される波形とほぼ一致する。
上記の反応を100%実現することが理想であるが、赤リンの含有量を増加させると、式1の赤リンを気化させるための、酸化剤、金属、非金属の反応による、燃焼熱が不足し、結果として未反応の赤リンが生じる。
また、式3は大気中の水分という気象条件に左右されるため、大気中の水分が少ないと、リン酸煙の濃度が減少してしまう。
従来の、ブタジエン等の一般に使用されている結合剤は、燃焼する際に吸熱反応を示すため、赤リンの気化に必要な式1に示す燃焼熱を奪ってしまう。
このことから、本発明者は、エネルギーバインダと呼ばれる燃焼剤兼結合剤を用いることとした。このエネルギーバインダは、従来一般に使用されている結合剤と違って燃焼する際に発熱反応を示すため、赤リンを気化させるために必要な式1に示す燃焼熱を補足することができる。そのため、主剤の赤リンの含有量を減らしたり、酸化剤、金属等を増やしたりすることなく、赤リンを完全に気化させることができる。
また、燃焼する際に吸熱反応を示すため、赤リンの気化に必要な式1に示す燃焼熱を補うバインダとして、従来一般に使用されている結合剤と違って燃焼する際に発熱反応を示すバイトンAを用いることにより、赤リンを気化させるために必要な式1に示す燃焼熱を補足することができる。そのため、主剤の赤リンの含有量を減らしたり、酸化剤、金属等を増やしたりすることなく、完全に気化させることができる。
同時に、本発明者は、主成分として赤リン、酸化剤として硝酸塩、硫酸塩、過硫酸塩あるいは酸化物、可燃剤として金属粉、結合剤としてエネルギ−バインダおよびバイトンAを有する赤外線遮蔽発煙組成物を見い出した。
また、付加的性能である燃焼速度と破壊強度に関しては、以下に示すような相反する特徴を示す。
逆に、水酸基を多く含むバインダであるポリアルキレングリコールは、燃焼速度が比較的小さく、成型した時の破壊強度は比較的大きい傾向がある。
本発明の大きな特徴は、結合剤にエネルギーバインダとポリアルキレングリコールとの組合せ、またはエネルギーバインダとバイトンAとの組合せのいずれかを混合したことにより、赤外線遮蔽性能が従来よりも向上し、所定の成型強度を維持できることにある。
通常、破壊強度や燃焼速度は、結合剤の含有量の増減や酸化剤、金属等の含有量を増減させることによって調整できるが、組成中の成分によって制御範囲は限られてしまう。
しかし、この赤外線遮蔽性能が高い2種類の結合剤の相反する特性を利用して、組成物中の結合剤の配合比を調節することにより、赤外線遮蔽性能を向上しつつ破壊強度や燃焼速度の幅広い制御範囲を確保することができる。
例えば、遠方に放出する場合は、破壊強度を高くすることによって放出圧力に耐えられる赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成され、逆に、近距離で成型品を粉砕し瞬時に煙幕を形成させる場合は、破壊強度を低くした赤外線遮蔽組成物の成型品とすることによって達成される。
表1は、実施例1〜23の破壊強度、燃焼速度、赤外線透過率、発煙濃度を表している。ここでは、1実施例に対して5回繰り返し試験行い、その結果の平均値を抽出したものである。
(主剤)
実施例1〜実施例23で用いた主剤(煙生成剤)は、表1に示すように、赤リン(RP)を65%用いた。
実施例1〜実施例23で用いた2つの結合剤には、エネルギーバインダとして、GAP(グリシジルアジドポリマー)を用いた。このGAPには、少しの硬化剤を含有している。例えば、GAP自体:硬化剤=87%:13%の割合で含有している。
また、実施例1〜実施例15で使用した水酸基を多く含むバインダであるポリアルキレングリコールとしては、例えば、市場に流通しているポリエチレングリコールに約10%のポリプロピレングリコールを含むPEG(ポリエチレングリコール)を用いた。その分子量は4000であった。このPEGは、高分子バインダであるため、様々な分子量の形態を持ち、分子量が多い程融点が高くなるが、赤外線遮蔽発煙組成物の性能には、分子量の違いによる影響は生じない。
なお、表1において、GAPとPEGとのカッコ内の数字は、GAP対PEGの割合比を示す。
実施例16〜実施例23で用いたバイトンAは、フッ素含有量が66%で、vinylidene fluoride:ビニリデンフロライド(CH2=CF2)とhexafluoropropylene:ヘキサフロロプロピレン(CF2=CFCF)の重合体である。
実施例1〜実施例23で用いた酸化剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)である。その理由は、燃速が速く火薬類に分類されない利点にある。
なお、表1において、酸化剤:可燃剤=75:25に固定して示す。
(金属粉)
実施例1〜実施例23で用いた可燃剤は、マグネシウム(Mg)粉である。
実施例1〜実施例15の赤外線遮蔽発煙組成物は、次のように作製した。
GAPとPEGをアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての赤リン、酸化剤としてのペルオキソ二硫酸カリウム、金属粉としてのマグネシウム粉末を順に添加して、均一な組成になるまで撹拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで撹拌し続ける。そして、粉末とした。
実施例16〜実施例23の赤外線遮蔽発煙組成物は、次のように作製した。
GAPとバイトンAをアセトン中に溶解させ、この溶液中に煙生成剤としての赤リン、酸化剤としてのペルオキソ酸二カリウム、金属粉としてのマグネシウム粉末を順に添加して、均一な組成になるまで撹拌し、混合物のペーストを製造する。このペースト混合物が乾燥するまで撹拌し続ける。そして粉末とした。
ここでの実施例として用いた円柱ペレットは、本発明よって製造され得る様々なタイプの形態を包括または網羅するものではなく、目的に応じ任意な形態とすることができる。
なお、実施例16,20では、バイトンAを用いていない。
実施例1〜実施例23の赤外線遮蔽発煙組成物を用いて、赤外線透過率、燃焼速度および破壊強度を得るために、それぞれ次のような試験方法を行った。
赤外線透過率は、図2に示すように、燃焼チャンバ内で試料(発煙剤ペレット)を燃焼させ、発煙物質の赤外線吸収スペクトルを計測した結果(2〜14μm)から、8〜12μmの範囲の赤外線透過率(%)を算出した。
着火方法は、ニクロム線に一定の電圧をかけて、発煙剤ペレットを加熱し着火した。
そして、赤外線吸収スペクトルの計測装置は、図2に示すように、赤外線(IR)スペクトルアナライザーと黒体炉(熱源)を用いて、チャンバ計測用窓材には計測波長域で透過率が一定となる性質をもつZnSe(セレン化亜鉛)を用い、計測距離(煙幅)は1mとした。
本実施例では、赤外線遮蔽性能を、赤外線透過率(%)と発煙濃度C(g/m3)を用いて示した。
また、発煙濃度C(g/m3)は、この赤外線透過率(%)と計測距離L(m)から、光の減衰を表す次式のランバートベール則によって算出した。
(赤外線透過率)=exp(−α・C・L)×100
ここでは、expは指数関数を表し、吸収係数αは物質固有値である。発煙物質はリン酸が主となるため、実施例組成物中では定数となる。
燃焼速度は、燃焼チャンバ内で赤外線吸収スペクトルを計測する時に同時に計測した。
燃焼速度は、一定距離(L)の燃焼時間(t)の比(L/t)から算出される。
破壊強度は、図4に示すように、引張圧縮試験機に試料をセットし、試料に圧縮荷重を負荷し、破壊するときの負荷断面積当り(A)の破壊荷重(F)の比(F/A)から算出した。
赤リン(RP)65%、ペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)22.5%、マグネシウム(Mg)7.5%および結合剤総量5%を成分配合して円柱ペレット状に成型した。
その際、表1に示すように、結合剤総量中GAPとPEGの割合を5水準に調整した。
赤リン(RP)65%、ペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)20.625%、マグネシウム(Mg)6.875%および結合剤総量7.5%を成分配合して円柱ペレット状に成型した。
その際、表1に示すように、結合剤総量中のGAPとPEGの割合を5水準に調整した。
赤リン(RP)65%、ペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)18.750%、マグネシウム(Mg)6.250%および結合剤総量10%を成分配合して円柱ペレット状に成型した。
その際、表1に示すように、結合剤総量中のGAPとPEGの割合を5水準に調整した。
赤リン65%、ペルオキソ酸二カリウム24.0%、マグネシウム8.0%および結合剤総量3%を成分配合して円柱ペレット状に成型した。
その際、表1に示すように、結合剤総量中のGAPとバイトンAの割合を2水準に調整した。
赤リン65%、ペルオキソ酸二カリウム24.0%、マグネシウム6.0%および結合剤総量11%を成分配合して円柱ペレット状に成型した。
その際、表1に示すように、結合剤総量中のGAPとバイトンAの割合を2水準に調整した。
赤リン60%、硝酸セシウム23%、マグネシウム5%、ジルコニウム/ニッケル7%および結合剤としてポリブタジエン5%を成分配合して円柱ペレットを調整した。
GAPのみを添加した赤外線遮蔽発煙組成物(以下、GAP単一系と称する)は、各グループ(第1〜第5)において、燃焼速度が、GAPおよびPEGを混合した赤外線遮蔽発煙組成物またはGAPおよびバイトンAを混合した赤外線遮蔽発煙組成物(以下、混合物系と称する)よりも速いが、破壊強度が小さい値を示している。赤外線透過率と発煙濃度については、混合物系と同等の性能を示している。
バイトンAのみを添加した赤外線遮蔽発煙組成物(以下、バイトンA単一系と称する)は、各グループ(第4〜第5)において、破壊強度が、混合物系より強いが、燃焼速度が小さい値を示している。赤外線透過率と発煙濃度については、混合物系と同等の性能を示している。
図5は、結合剤の組成範囲における破壊強度曲線と燃焼速度曲線とを示すグラフである。本発明者は、実施例1〜15のデータをグラフにプロットし、膨大な試験数の計測していない試験の数値を予測するために近似曲線を求め、そして、この近似曲線の関係(この場合、結合剤総量5%、7.5%、10%)から5%〜10%の間の範囲を推定し、図5に示すグラフ曲線を得た。
また、図5に示すグラフの縦軸は、赤外線遮蔽発煙組成物の結合剤における2つの結合剤GAP、PEGの占める内割を示している。結合剤は、GAPとPEGとを合せたものであるから、GAPとPEGとの内割の和は100%となる。
結合剤総量3%〜12%とした理由は、3%を下回ると、成型性が悪く製品化中に壊れ易くなり(例えば、1.0N/mm2以下)、また、12%を超えると、燃焼させた際に立ち消えの虞が高くなるためである。
そして、ここでは、結合剤組成範囲における破壊強度と燃焼速度の特性を示すことができた。
図6により、一例を示す。例えば、結合剤総量5%でそのGAPとPEGとの内割が50%:50%の組成(その際の、赤リン65%、ペルオキソ二硫酸カリウムとマグネシウム30%)の点は、●で示される。ここでの破壊強度が1.6N/mm2と1.8N/mm2の間付近で、燃焼速度が0.26mm/secと0.28mm/secの間付近となる。また、結合剤総量8%でそのGAPとPEGとの内割が20%:80%の組成(その際の、赤リン65%、ペルオキソ二硫酸カリウムとマグネシウム27%)の点は、○で示される。ここでの破壊強度が3.6N/mm2と3.8N/mm2の間付近で、燃焼速度が0.10mm/secと0.12mm/secの間付近となる。
次に、強度曲線について説明する。
グラフ上では燃焼速度を破線で示している。明細書で記述しているように、結合剤量を増加させること、または、結合剤中のPEG量を増加させることで、燃焼速度が低下するという現象のためである。グラフでは、図7に示すように、右上が両方(結合剤量とPEG量)が高く、左下が小さい組成で、燃焼速度の値が左肩下がりになっていることから、この現象を説明できる。
本来の目的は、製品の要求性能(破壊強度、燃焼速度)を満たす組成を検討するためである。明細書に記述しているように、製品によって必要となる破壊強度、燃焼速度が異なる。例えば、破壊強度が2.0N/mm2以上、燃焼速度が0.2mm/sec以上の性能が要求される場合は、図7に示すように、グラフで示す網線範囲がその範囲を満たす組成ということが一目でわかる。
本発明では、結合剤にPEGを添加することで、性能範囲が広がるという点に主眼を置いている。ここでいう性能は、破壊強度と燃焼速度であるが、PEGの添加で、破壊強度は向上し燃焼速度は低下するという相反する効果があるため、製品に合せたPEGの添加量が重要となる。このことを説明するために、このグラフが都合がよい。
Claims (4)
- 赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、ポリアルキレングリコールとを有することを特徴とする赤外線遮蔽発煙組成物。
- 赤リンと、硝酸塩,硫酸塩,過硫酸塩または酸化物から選ばれる酸化剤と、金属粉と、エネルギーバインダと、フッ素ゴムとを有することを特徴とする赤外線遮蔽発煙組成物。
- 前記エネルギーバインダは、GAP(Glycidyl azide polymer)、BAMMO(3,3-bis(azido methylo)methyloxetane)、AMMO(3-azidometyl-3-methyloxetane) から選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤外線遮蔽発煙組成物。
- 前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1または請求項3記載の赤外線遮蔽発煙組成物。
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