JP4972049B2 - 脱塩方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脱塩方法に関し、さらに詳しくは少なくとも水溶性の塩を含む水(以下単に「原水」または「塩水」という)を、該原水中に含まれる有機有価物(以下単に「有価物」という)を損なうことなく効率的に脱塩する方法に関する。
従来、各種原水から水のみを採取する方法や、原水中に含まれている塩を取り除く方法がいろいろ提案されている。これらの方法により、飲料水、化学工業や電子工業に使用される水、医療や医薬品に使用される水、あるいは有価物を含む水などが製造されている。例えば、海水から淡水を取り出す装置としては、常圧または真空蒸留装置、あるいは逆浸透膜などの分離膜装置や電気透析装置が実用化されている。
医薬品原料、色素、シリカゾルなどの有価物を含む原水の濃縮や精製には、上記の蒸留装置、逆浸透膜装置、限外濾過膜装置などが利用されている。また、原水を脱塩するためにイオン交換樹脂装置や電気透析装置が使用されている。純水や超純水の製造には、蒸留や逆浸透膜を用いる純水化装置に、イオン交換樹脂や電気透析装置を用いる脱塩装置を併用している。
また、脱塩の対象になる原水としては、海水あるいは海洋深層水などの生理活性を有する有機や無機の有価物を含有する原水がある。
上記の海洋深層水などの生理活性を有する物質(有価物)を含有する原水中の有価物は、温度に対して敏感なものが多く、原水の処理中に高温に曝されると上記有価物が変質して、該有価物の機能が低下または消滅する場合がある。
また、上記の脱塩方法のうちで、電気透析法で原水を脱塩する場合には、該原水に含有されている塩の量に対応した電力が必要である。また、脱塩の進行に従って原水の塩濃度が下がるにつれて、原水の電気抵抗による原水の液温の上昇が見られ、多くの場合、脱塩される原水に含有されている有価物(有機物)の変質や劣化などを招くことが多い。また、イオン交換樹脂装置による原水の脱塩方法では、当然ながらイオン交換樹脂のイオン交換能力以上の脱塩はできず、高濃度の塩を含む原水の脱塩に使用する場合には、イオン交換樹脂の高頻度の再生が必要であり、工業的に使用するには経済的ではない。
工業的に使用できる特異な脱塩方法として、アニオン性およびカチオン性イオンチャンネルを有するモザイク荷電膜を使用する方法が提案されている(特許文献1)。後述するように、モザイク荷電膜を使用する脱塩方法は、蒸留法のような熱エネルギーを必要とせず、また、電気透析のような塩のイオン量に対応する電気エネルギーを必要とせず、さらにイオン交換樹脂のような再生処理は不要である。また、使用するモザイク荷電膜は構造が簡単で、安価に製造でき、脱塩装置を構成する際の各種設備の初期投資およびランニングコストともに安く、非常に経済的である。また、上記モザイク荷電膜の使用は、脱塩中に原水の液温を上昇させず、従って脱塩時の液温の上昇による原水中の有価物の変質や劣化などを生じさせない。
さらに上記モザイク荷電膜は、本質的に無孔膜であるので、該膜によって分離される物質の分画分子量が非常に小さく、原水中の塩の分子量よりも大きい分子量の有価物が塩とともに分離されない(膜から漏れない)など、他の分離装置や方法に見られない優れた特徴を有している。
特開2000−309654公報
しかしながら、モザイク荷電膜の脱塩機構は、脱塩槽をモザイク荷電膜により二つに区切り、一方を原水槽として原水を入れ、他方を透析水槽として淡水を入れ、原水槽中の原水中の塩をモザイク荷電膜を通して透析水槽中の淡水(以下「透析槽水」という)に移行させるというものである。この際の脱塩の駆動力は、原水の塩濃度と透析槽水の塩濃度との濃度差にあることから、原水をモザイク荷電膜を用いて常圧で脱塩する場合、モザイク荷電膜を用いる脱塩装置においては、原水槽中の原水に対して、透析槽水は、その塩の濃度を常に低く保持する必要があった。
本来、モザイク荷電膜は、上記原水と透析槽水との塩の濃度差が小さくても、原水中の塩の脱塩が可能であるが、原水と透析槽水との塩の濃度差が小さくなるにつれて脱塩の速度が低下する。従って、モザイク荷電膜を利用した脱塩方法においても、透析水槽に大量のイオン交換水や上水などの真水を供給することが必要であり、このことは、脱塩を工業的に行なう場合には経済的に好ましくない。また、脱塩時間についても、原水槽中の原水の塩濃度が低くなるに従って、モザイク荷電膜の透過流束(塩が膜を透過する速度)が著しく低くなり、脱塩時間が非常に長くなって、工業化における問題点となっている。
従って、本発明の第一の目的は、原水の脱塩を、工業的かつ経済的に行なうことができる脱塩方法を提供することである。また、本発明の第二の目的は、モザイク荷電膜を用いる脱塩方法において、透析槽水の使用量が少なく、かつ脱塩時間も短くすることができる脱塩方法を提供することである。さらに本発明の第三の目的は、有価物を含む原水の脱塩方法において、原水中の有価物を損なうことなく、原水を脱塩する方法を提供することである。
上記目的は以下の本発明の方法によって達成される。すなわち、本発明は、海洋深層水を、塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留により濃縮する工程、該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.5〜12質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程、該脱塩水を塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留により濃縮する工程、および該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含むことを特徴とする海洋深層水の脱塩方法を提供する。
また、本発明は、海洋深層水を、塩濃度が5〜7質量%になるまで逆浸透膜により濃縮する工程、該濃縮された海洋深層水を塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留によりさらに濃縮する工程、該濃縮水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含むことを特徴とする海洋深層水の脱塩方法を提供する。
また、本発明は、海洋深層水を、容積が、1/5〜1/50になるまでナノフィルトレーション膜により濃縮する工程、および該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含むことを特徴とする海洋深層水の脱塩方法を提供する。
上記本発明の方法によれば、下記の効果が奏される。
(1)原水の脱塩を、工業的かつ経済的に行なうことができる。
(2)モザイク荷電膜を用いる脱塩方法において、透析槽水の使用量が少なく、かつ脱塩時間も短くすることができる。さらに、濃縮時に得られた水を透析槽水として使用することができる。
(3)有価物を含む原水の脱塩において、原水中の有価物を損なうことなく、原水を脱塩することができる。
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の脱塩方法の対象となる原水としては、種々の塩のイオンを含む水が挙げられる。ここで塩のイオンは、少なくとも1種がナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのイオンである。原水の代表的な例として海水が挙げられる。従来、海水から淡水や塩を製造する場合には、主として表層海水(海の浅い部分の海水)が使用されている。
上記海水は、上記の塩のイオンの他に、リチウム、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、ウランなどのイオンを含有している。一方、近年、深さ200m以上の深海の海水(海洋深層水と称されている)が注目され、該海洋深層水は、有用な有価物(有機物)や有用なミネラルを含むことから、化粧品、生理活性水、飲料などの原料となっており、本発明における有用な原水である。
本発明に使用するモザイク荷電膜とは、カチオン性重合体成分とアニオン性重合体成分とからなる膜であって、膜の表裏を貫通しておりかつ互いに隣接して存在しているイオンチャンネルを有する膜である。該イオンチャンネルを通して、原水中の分子量(原子量)の小さいイオン(例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンなど)が原水槽側から透析槽水側に移行し、原水が脱塩される。該膜の脱塩の起動力は、該膜によって区画されている原水と透析槽水との塩の濃度差、および原水および透析槽水に付加されている圧力差である。該膜は、原水中の比較的低分子の塩のイオンを、該膜のイオンチャンネルを通じて透析槽水中に容易に移行させるが、原水中の非イオン性物質や、分子量の大きい分子(例えば、有機物)を透過させないという性質を有し、該膜を使用して原水中の塩のイオンと有価物とを容易に分離することができる。該モザイク荷電膜は、従来から常圧での塩透析および加圧での塩透析(ピエゾ塩透析)(脱塩)に使用されている。
本発明において、工業的に使用できる大型のモザイク荷電膜としては、特に、特許第2681852号公報、特許第2895705号公報、特許第3012153号公報、特許第3234426号公報、特許第3236754号公報および特許第3156955号公報に示されているように、荷電性重合体成分の少なくとも一成分として、架橋した粒状重合体を使用して構成されたモザイク荷電膜が好ましい。
上記公報の記載では、モザイク荷電膜の塩透析特性の評価は次のようにして行なわれている。先ず、モザイク荷電膜を用いる脱塩装置を構成し、その原水槽には、電解質として、塩化カリウムを濃度0.05mol/lに調整し、非電解質としてグルコース(分子量:180)を濃度0.05mol/lに調整した水溶液(原水に相当する)を入れる。上記装置の透析水槽には脱イオン水を入れる。この状態で常圧で放置して塩化カリウムを透析水槽側に移行させることで、モザイク荷電膜の透析性能を評価している。該モザイク荷電膜は、塩化カリウムとグルコースとを含む原水に対し優れた分離性能を示したが、塩化カリウムの透過流束は透析開始1時間では45g/m2hである。
そこで、本発明では、上記原水中の塩化カリウム濃度を60倍(3mol/l(約20質量%))に高めた場合の、モザイク荷電膜の透析特性を調べたところ、塩化カリウムの透過流束は、透析開始1時間では959g/m2hであり、4〜5時間では714g/m2hを示した。上記原水の塩濃度と透析槽水の塩濃度との差(mol/l)と、塩の透析量の目安である透過流束(g/m2h)との関係を経時的に測定し、両対数グラフでプロットしたところ、透過流束と塩濃度差はほぼ一直線上に並び、両者の間には比例関係が成り立っていることを示した。このことは原水の塩濃度が高ければ高いほど、また、原水と透析槽水との塩濃度の差が大きければ大きいほど、透析速度が大になることを示している。
従って、モザイク荷電膜を工業的な脱塩方法に用いる場合の問題点、すなわち、透析槽水として大量の真水を必要とするという問題と、塩透析(脱塩)に長時間がかかるという問題は、原水の塩濃度を高くすることで解決できることが判った。原水の塩濃度を高くする場合には、原水中の有価物である溶質(例えば、有機物)を変質させることなく、原水を濃縮することが好ましい。原水を濃縮することによって、当然原水の容積が減少し、原水の塩濃度が上昇するとともに、脱塩時には上記したように塩の透過流束が増加するため、短時間で原水の脱塩を行なうことができる。
また、脱塩に際して、原水の取水時、搬送あるいは貯蔵中や、脱塩、濃縮あるいはそれに継続する処理中に、大気中あるいは製造装置から細菌などの微生物が原水中に混入し、原水が汚染され、該微生物が原水中で繁殖してしまう場合がある。通常の原水であれば塩素殺菌、酸素殺菌、あるいは殺菌剤の添加などで殺菌することができる。しかながら、原水が有価物(例えば、有機物)を含み、該有価物を利用する場合には、上記原水は上記有価物を変質させる畏れのある殺菌剤などを含まないことが望ましい。
本発明においては、前記原水の濃縮により原水の塩濃度を高めることで、前記の如き原水の殺菌処理や原水に殺菌剤などを添加することなく、原水中に混入する細菌などの微生物を殺菌できることを見出した。
一般に、細菌などの微生物には、増殖や生存に適した環境があり、特に塩濃度においては、微生物が生存または繁殖できる限界がある。塩濃度を高くすると細菌などの微生物の増殖が抑制され、さらに塩濃度を高くすると微生物が生存できなくなる。微生物が生存できる、あるいは繁殖できる塩濃度の限界は、細菌などの微生物種により異なり、一概に規定できないが、塩水(原水)の場合には、該塩水の塩濃度を10質量%以上とすることで、塩水に侵入した微生物を充分に死滅させることが可能である。すなわち、高い塩濃度の塩水では、微生物は、その細胞外との浸透圧差により細胞内の水分が高濃度原水中に引き出され、細菌などの微生物が死滅すると考えられる。
原水が海水、特に海洋深層水の場合には、元々海洋深層水中に内在している細菌などの微生物が、原水として採取した海洋深層水中に静菌状態で存在しており、該微生物は塩水環境に対しても順応しており、塩水である海洋深層水に馴化しているものと考えられる。そのために、上記したような塩濃度(10質量%)の海洋深層水中において、微生物が生存し得るため、海洋深層水の塩濃度を15質量%あるいは20質量%の如くさらに高くすることによって、海洋深層水中の細菌などの微生物を実質的に死滅させることができることが判った。細菌などの微生物を死滅させることを前提にした原水の塩濃度は、10質量%〜塩の飽和溶解度、好ましくは15質量%〜塩の飽和溶解度、さらに好ましくは20質量%〜塩の飽和溶解度の範囲である。このようにして本発明では、上記したように塩素殺菌や殺菌剤、静菌剤などを使用しないで、海洋深層水を無菌状態で脱塩し、有価物を含む脱塩水を得ることができる。さらに、必要に応じて紫外線照射を行ない微生物の殺菌を徹底することもできる。
次に本発明の脱塩方法の具体的な実施の態様を示す。
(A)少なくとも水溶性の塩を含む原水から水分を除去して、上記原水を濃縮する第一工程、次いで第一工程で濃縮された原水をモザイク荷電膜を用いて常圧または加圧下で脱塩する第二工程を行なうことにより脱塩水が得られる。この第一工程と第二工程は1サイクルのみ行なってもよいし、多数回繰り返し行なってもよい。また、上記の原水の濃縮は、例えば、逆浸透膜濃縮装置または遠心式薄膜真空蒸留装置のような減圧蒸留装置を用いて行なうことができる。また、上記方法において原水の濃縮によって得られた水(例えば、蒸留水)は、脱塩時の透析槽水として使用したり、また、得られた脱塩水の塩濃度や有価物の濃度の調整のために使用することができる。
(B)本発明の方法を実施する前処理として、モザイク荷電膜を用いて、原水、特に1%以上の塩を含有する原水を常圧または加圧下で脱塩することにより、塩濃度が低下した脱塩水を調製する工程、次いでこの脱塩水を原水として、該脱塩水から水分を除去して、上記脱塩水を濃縮する第一工程を行ない、次いで第二工程を行なうことにより脱塩水が得られる。例えば、海洋深層水を原水とした場合、海洋深層水をそのままモザイク荷電膜を用いて脱塩し、次いで得られた脱塩水を逆浸透膜や減圧蒸留装置を用いて濃縮し、さらに第二工程を実施する。これを繰り返すことで海洋深層水が元々含有していた有価物をそのまま含有している脱塩水を得ることができる。
(C)「原水中の有価物の濃縮を目的とした場合」
有価物を含む原水からナノフィルトレーション膜で、原水中の塩および水分を系外に取り出して原水中の有価物の濃度を高める工程、次いで該有価物の濃度が高められた原水を、モザイク荷電膜を用いて脱塩する工程を行なうことにより、塩濃度が低くかつ有価物の濃度が高い脱塩水が得られる。例えば、海洋深層水からナノフィルトレーション膜により塩および水分を分離して、有価物濃度が高い海洋深層水とし、これをモザイク荷電膜で脱塩することにより有価物濃度が高くかつ脱塩された海洋深層水が得られる。
(D)「原水中の有価物の濃縮を目的とした場合」
有価物を含む原水(例えば、海洋深層水)からナノフィルトレーション膜で、原水中の塩および水分を系外に取り出して、原水中の有価物の濃度を高める工程、次いで該有価物の濃度が高い原水をナノフィルトレーション膜を用いて、該原水に純水を加えながら水および塩を系外に取り出し、有価物の濃度が高く塩濃度が低い脱塩水を得る。
(E)上記の方法で得られた脱塩水、または有価物を含む脱塩水を濃縮したり、淡水で希釈したりして、有価物の濃度の調整を行い、有価物を含有する脱塩水を得ることができる。
上記のA〜Eの方法は、それぞれ1サイクルのみで行なってもよく、さらに複数回繰り返して行なってもよい。
前記第一工程である濃縮工程では、蒸留により水を除去する方法や、逆浸透膜を用いて水を分離する方法が使用される。蒸留法として、常圧蒸留法のほか、蒸留しようとする原水が温度に対して敏感な物質を含有する場合には減圧蒸留法が好ましい。例えば、高速旋回式、流下膜式、汲み上げ散布式、掻面式などの固定伝熱面方式の真空蒸留装置や、遠心式薄膜真空蒸留装置(Centrifugal-flow thin-film vacuum evaporator)などの回転伝熱面方式の真空蒸留装置などが使用される。これらについては公知の装置が使用できるが、後述するように、原水を加温して濃縮する場合には、高濃度の原水による装置の錆の発生や腐食に留意して装置の材質を選択することが必要である。
モザイク荷電膜を用いる脱塩方法としては、常圧での脱塩透析法および加圧によるピエゾ脱塩透析法が使用される。また、これらの方法における原水と透析槽水の接触の方式も、回分(バッチ)方式あるいは連続方式、循環方式あるいは一過方式、対向流方式あるいは平行流方式など、種々の方式が使用できる。これらの方式において、高い塩濃度の原水を脱塩する場合には、透析槽水として淡水(真水)を使用する代わりに、低い塩濃度の塩水を使用することによって、透析槽水として使用する真水の使用量を削減することができる。
本発明における脱塩水または有価物を含有する脱塩水の製造装置は、所望の設計に従って、原水貯槽、前処理装置、減圧濃縮装置、逆浸透膜濃縮装置、ナノフィルトレーション膜濃縮装置、モザイク荷電膜脱塩装置、電気透析装置、透析塩水受槽、透析淡水受槽、脱塩水受槽など、およびそれらに付属する設備群から選択され、組み合わせて構成される。
各装置に使用する材質は、特に遠心式薄膜真空蒸留装置のような蒸発濃縮工程で高濃度塩水と接触する装置または部材、例えば、塩水を加熱するのための熱交換器、塩水の蒸発装置面、配管などの如く、塩水による錆や腐食に留意して選択することが必要である。これらの材質として好ましいのはSUS316L、NAS354N(高ニッケルオーステナイトステンレス鋼)、ハステロイC−22(ニッケル・クロム・モリブデン系合金)、チタンおよびガラス(グラスライニング)などである。
本発明の脱塩方法および脱塩装置は、例えば、飲料用水、純水、超純水、工業用水などの水処理工業における各種塩水の脱塩、発酵工業および食品工業などの生化学関連工業において発生する各種塩水の脱塩、塩を含む医薬品原料の脱塩、化学工業、金属工業などの塩を含む工業排水の脱塩、色素製造工業における塩を含む染料および顔料の脱塩などに有用である。
特に本発明に使用するモザイク荷電膜による脱塩方法は、原水を加熱することもなく、また、脱塩時に熱が発生することもないので、有価物を含む海洋深層水の脱塩、熱の影響を受けやすい食品工業や発酵工業分野における各種塩水の脱塩に有用である。このような塩水の脱塩を、従来の電気透析法を用いて行なうと、処理時の発熱による有価物(目的物質)が分解したり変質したりする。また、イオン交換膜を用いる脱塩では、イオン的吸着によりイオン交換膜が汚染されるという問題があった。本発明によれば上記従来技術の課題が解決される。
有価物や有価ミネラル分を含む海洋深層水は、アトピー性皮膚炎やアレルギー反応のときに増加する好酸球に対して有効性があるとされ、また、繊維芽細胞への生理活性および皮膚の保湿、抗菌機能についても有効性があると言われている。このような有効性は、財団法人高知県産業振興センター発行の平成10年度 科学技術総合研究委託費地域先導研究 研究成果報告書「室戸海洋深層水の特性把握および機能解明」(平成11年3月)、および平成10〜12年度 科学技術総合研究委託費地域先導研究 研究成果報告書「3年間全体の室戸海洋深層水の特性把握および機能解明」(平成13年3月)に報告されており、本発明の方法によって得られる海洋深層水由来の有価物を含有する脱塩水、特にその濃縮水は、特に、皮膚疾患、皮膚欠陥、皮膚欠損など、損傷皮膚細胞の治癒のための湿潤水、湿布液、ゲル貼布の含浸液、培養皮膚の培地の培養液成分として有効である。
本発明の最も具体的な実施形態は下記の通りであるが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
(1)海洋深層水を、塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留により濃縮する工程、該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.5〜12質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程、該脱塩水を塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留により再度濃縮する工程、および該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により再度脱塩する工程を含む海洋深層水の脱塩方法。
(2)海洋深層水を、塩濃度が5〜7質量%になるまで逆浸透膜により濃縮する工程、該濃縮された海洋深層水を塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留によりさらに濃縮する工程、該濃縮水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含む海洋深層水の脱塩方法。
(3)海洋深層水を、容積が、1/5〜1/50になるまでナノフィルトレーション膜により濃縮する工程、および該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含む海洋深層水の脱塩方法。
なお、上記例示の各実施形態おける各工程は、必要に応じてそれぞれ2回以上繰り返して行なうことができる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
実施例1
(1)有価物を含有する原水の脱塩装置の構成
原水貯槽、前処理装置、減圧蒸留濃縮装置、蒸留淡水受槽、塩水受槽、モザイク荷電膜脱塩装置、脱塩水受槽、透析水槽用の水貯槽、透析水受槽およびそれらに付属する設備を設置して脱塩装置を構成した。
(2)海洋深層水の減圧蒸留による濃縮
減圧蒸留装置として遠心式薄膜真空蒸留装置を使用した。この装置は、蒸発機としてSUS316Lを使用した回転式蒸発面板を有し、蒸発面板を高速回転させることによって、中央の配管より流出された海洋深層水を遠心力で薄膜にして蒸発させる方式である。原水としての海洋深層水(塩濃度約3.5%)2,000kgを上記減圧蒸留装置に仕込み、装置内を約4kPaに減圧し、およそ30℃〜40℃にて減圧蒸留をした。該蒸留は、液量がほぼ3分の1の700kgになるまで行なった。得られた濃縮原水(濃縮液)の塩濃度はほぼ10%であった。また、蒸留水(淡水)の採取量は約1,300kgであった。該濃縮液中の全有機炭素(TOC)値を測定した。濃縮前の原水のTOC値は1ppmであるのに対して、濃縮液のTOC値は2.9ppmであった。
(3)モザイク荷電膜による濃縮海洋深層水(濃縮原水)の脱塩
平膜型モザイク荷電膜脱塩装置を準備した。原水の入る原水槽、透析水の入る透析水槽を交互に配列し、各原水槽と各透析水槽の間にそれぞれ脱塩有効面積が0.1m2の平膜モザイク荷電膜を合計で100枚をパッキングで挟んで固定した。各原水槽および各透析水槽を、それぞれパラレルに連結し、それぞれ原水貯槽からポンプで送液される原水、および透析水貯槽からポンプで送液される透析水が、上記の複数の原水槽および複数の透析水槽間を循環するように配管した。原水槽に原水として上記(2)で得た塩濃度10%の濃縮液700kgを入れた。上記の透析水槽には脱イオン水を入れて循環流水して脱塩を行なった。原水の塩濃度の変化を、原水の電気伝導度の変化を測定してモニターした。脱塩は、原水の塩濃度がほぼ2%になるまで行った。この時点での透析槽水中のTOC値は0ppmを示し、原水中の有機有価物は殆ど透析されなかった。
なお、上記で使用したモザイク荷電膜の調製は、特開2000−309654公報の記載に基づいて下記のようにして行った。カチオン性ミクロゲルとして4−ビニルピリジン:ジビニルベンゼン(モル比10:1)架橋共重合体(平均粒子径は約350nm)を、アニオン性ミクロゲルとしてスチレン:アクリロニトリル:ヒドロキシエチルメタクリレート:ジビニルベンゼン(モル比41.6:7.1:8.1:8.7)架橋共重合体のスルホン化物のソーダ塩(平均粒子径は約240nm)を準備した。上記カチオン性ミクロゲル、上記アニオン性ミクロゲルおよび別に用意したアクリロニトリル−ブタジエン樹脂の水素添加物からなる組成物(質量比3:7:10)を含む塗布液を、乾燥膜厚が約30μmになるようにポリエステル不織布に均一に塗布および乾燥し、その後該膜をヨウ化メチル雰囲気に放置して、上記4−ビニルピリジンのピリジン単位を第4級ピリジニウム塩単位とし、洗浄などの後処理を行ってポリエステル不織布で補強されたモザイク荷電膜を得た。
(4)減圧蒸留による二次濃縮およびモザイク荷電膜による二次脱塩
上記(3)で得られた塩濃度2%の塩水700kgを減圧蒸留装置に仕込み、上記(2)と同様にして減圧蒸留により二次濃縮を行なった。該蒸留は、液量が、ほぼ5分の1の140kgになるまで行なった。得られた濃縮液の塩濃度はほぼ10%であった。次いで上記(3)と同様にしてモザイク荷電膜脱塩装置で二次脱塩を行った。該二次脱塩は原水の塩濃度が0.28%になるまで行なった。該脱塩水のTOC値はほぼ14ppmの値を示した。該脱塩時の透析槽水中のTOC値は、1〜0ppmの値を示した。また、最終的に得られた脱塩水の量は、原水である最初の海洋深層水の14.3分の1となった。
(5)水希釈による濃縮倍率の調整
上記(4)で得られた塩濃度0.28%の脱塩水140kgに、上記(2)で得られた海洋深層水由来の蒸留水60kgを加えて希釈した。希釈液の塩濃度は0.2%で、有効な生理活性を示す可溶性有価物をTOC値でほぼ10ppm含有している。
(6)透析槽水の濃縮
さらに、前記(3)のモザイク荷電膜脱塩装置で使用した透析槽水(該透析槽水は原水から脱塩された塩を含んでいる)を、さらに電気透析装置や濃縮装置を使用して濃縮し、塩水および海洋深層水由来の食塩を得た。
実施例2
(1)有価物を含有する原水の脱塩装置の構成
原水貯槽、前処理装置、減圧蒸留濃縮装置、蒸留淡水受槽、塩水受槽、モザイク荷電膜脱塩装置、脱塩水受槽、透析水槽用の水貯槽、透析水受槽、紫外線照射殺菌装置およびそれらに付属する設備を設置して構成した。
(2)海洋深層水の減圧蒸留による濃縮
減圧蒸留装置として実施例1と同じ装置を使用した。原水として海洋深層水2,000kgを減圧蒸留装置に仕込み、装置内を約4kPaに減圧し、およそ30℃〜40℃にて減圧蒸留をした。蒸留は、液量がほぼ8分の1の269kgになるまで行なった。蒸留によって濃縮された液の塩濃度はほぼ26%であった。また、蒸留水(淡水)の採取量は約1,731kgであった。上記濃縮水のTOC値は7.4ppmであった。濃縮水中の生菌数を測定したところ実質的に零であった。
(3)モザイク荷電膜による濃縮海洋深層水の脱塩
実施例1と同じ平膜型モザイク荷電膜脱塩装置を使用した。原水槽に、脱塩する原水として上記(2)で得た塩濃度26%の海洋深層水269kgを入れた。透析水槽には紫外線照射して殺菌された蒸留水を入れ、該蒸留水を連続流水して脱塩を行なった。脱塩は、原水の塩濃度がほぼ12%になるまで行なった。
(4)減圧蒸留による二次濃縮およびモザイク荷電膜による二次脱塩
上記(3)で得られた塩濃度12%の塩水269kgを、減圧蒸留装置に仕込み、上記(2)と同様にして減圧蒸留して二次濃縮を行なった。該蒸留は、液量がほぼ2分の1の124kgになるまで行なった。得られた濃縮液の塩濃度はほぼ26%であった。二次濃縮水中の生菌数を測定したところ実質的に零であった。次いで上記(3)と同様にしてモザイク荷電膜脱塩装置で二次脱塩を行った。二次脱塩は、液の塩濃度が0.80%になるまで行なった。該脱塩水のTOC値はほぼ16ppmの値を示した。また、上記脱塩後の液量は、原水である海洋深層水の16.1分の1になった。
(5)水希釈による濃縮倍率の調整
上記(4)で得られた塩濃度0.80%の脱塩水124kgに、上記(2)で得られた海洋深層水由来の蒸留水76kgを紫外線照射して殺菌した後加えて、上記脱塩水を希釈した。該希釈液は、塩濃度0.5%で、有効な生理活性を示す有価物をTOC値でほぼ10ppm含有している。この有価物を含有する脱塩水中の生菌数を測定したところ実質的に零であった。
実施例3
(1)有価物を含有する原水の脱塩装置の構成
原水貯槽、前処理装置、逆浸透膜装置、逆浸透塩水受槽、逆浸透透析淡水受槽、減圧蒸留濃縮装置、蒸留淡水受槽、塩水受槽、モザイク荷電膜脱塩装置、脱塩水受槽、透析水槽用の水貯槽、透析水受槽およびそれらに付属する設備を設置して構成した。
(2)海洋深層水の逆浸透膜による濃縮
濃縮装置として逆浸透膜装置を使用し、海洋深層水4,000kgを圧力60kg/cm2にて濃縮した。濃縮は、液量がほぼ2分の1の2,000kgになるまで行なった。濃縮液の塩濃度はほぼ7%であった。また、この濃縮の際の淡水の採取量は約2,000kgであった。
(3)減圧蒸留による二次濃縮
上記(2)で得られた濃縮液の二次濃縮を、実施例1(2)と同様に遠心式薄膜真空蒸留装置を使用して行なった。該二次濃縮は、液量がほぼ3分の1の700kgになるまで行なった。濃縮液の塩濃度はほぼ20%であった。また、蒸留水の採取量は約1,300kgであった。
(4)モザイク荷電膜による濃縮海洋深層水の脱塩
上記(3)で得られた濃縮液の脱塩を、実施例1(3)と同様にモザイク荷電膜脱塩装置を用いて行なった。
(5)減圧蒸留による二次濃縮およびモザイク荷電膜による二次脱塩
上記(4)で得られた脱塩水の二次濃縮は、実施例1(2)と同様に遠心式薄膜真空蒸留装置を使用して行ない、二次脱塩は、実施例1(3)と同様にモザイク荷電膜脱塩装置によって行なった。
(6)水希釈による濃縮倍率の調整
上記(5)で得られた脱塩水は、実施例1(5)と同様にして所望の濃縮倍率、塩濃度、あるいは有価物濃度にあわせて、上記(2)または(3)で得られた海洋深層水由来の蒸留水を加えて希釈した。
実施例4
(1)有価物を含有する原水の脱塩装置の構成
原水貯槽、前処理装置、ナノフィルトレーション膜装置、ナノフィルトレーション透過水受槽、モザイク荷電膜脱塩装置、脱塩水受槽、透析水槽用の水貯槽、透析水受槽、およびそれらに付属する設備を設置して構成した。
(2)海洋深層水のナノフィルトレーション膜による脱塩および濃縮
ナノフィルトレーション膜装置を使用し、原水としての海洋深層水2,000kgを圧力20kg/cm2にて脱塩および濃縮を行った。脱塩および濃縮は、上記原水の液量がほぼ20分の1の100kgになるまで行なった。濃縮液の塩濃度はほぼ4%であった。
(3)モザイク荷電膜による濃縮海洋深層水の脱塩
上記(2)で得られた濃縮液の脱塩を、実施例1(3)と同様にモザイク荷電膜脱塩装置によって行ない、脱塩水を得た。
(4)水希釈による濃縮倍率の調整
上記(3)で得られた脱塩水を、実施例1(5)と同様にして所望の濃縮倍率、塩濃度、あるいは有価物濃度になるように、海洋深層水由来の淡水を加えて希釈した。該淡水の代わりに、上記(2)で得られたナノフィルトレーション膜透過塩水、実施例1(4)の遠心式薄膜真空蒸留装置あるいは実施例3(2)の逆浸透膜装置により蒸留あるいは透過して得られた海洋深層水由来の淡水も使用できる。
本発明の産業上の利用可能性は次の通りである。
(1)原水の脱塩を、工業的かつ経済的に行なうことができる。
(2)モザイク荷電膜を用いる脱塩方法において、透析槽水の使用量が少なく、かつ脱塩時間も短くすることができる。さらに、濃縮時に得られた水を透析槽水として使用することができる。
(3)有価物を含む原水の脱塩において、原水中の有価物を損なうことなく脱塩することができる。

Claims (3)

  1. 海洋深層水を、塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留により濃縮する工程、該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.5〜12質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程、該脱塩水を塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留により濃縮する工程、および該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含むことを特徴とする海洋深層水の脱塩方法。
  2. 海洋深層水を、塩濃度が5〜7質量%になるまで逆浸透膜により濃縮する工程、該濃縮された海洋深層水を塩濃度が10質量%〜塩の飽和溶解度になるまで減圧蒸留によりさらに濃縮する工程、該濃縮水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含むことを特徴とする海洋深層水の脱塩方法。
  3. 海洋深層水を、容積が、1/5〜1/50になるまでナノフィルトレーション膜により濃縮する工程、および該濃縮された海洋深層水を塩濃度が0.1〜1.0質量%になるまでモザイク荷電膜により脱塩する工程を含むことを特徴とする海洋深層水の脱塩方法。
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