JP4973569B2 - 繊維状炭素系材料絶縁物、それを含む樹脂複合材、および繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法 - Google Patents

繊維状炭素系材料絶縁物、それを含む樹脂複合材、および繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維状炭素系材料絶縁物およびその製造方法に関し、より詳しくは、繊維状炭素系材料と前記繊維状炭素系材料上に形成された絶縁被膜とを備える繊維状炭素系材料絶縁物に関する。また、本発明は、前記繊維状炭素系材料絶縁物を含む複合材に関する。
カーボンファイバー(CF)やカーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)といった繊維状炭素系材料は、熱伝導性、機械的特性などに優れ、また貯蔵安定性も有することから注目され、例えば、顕微鏡探針、電界放出ディスプレイ用エミッタ、リチウム二次電池負極などの電極材料、燃料電池の拡散層やセパレーター、電界効果トランジスタ、ドラッグデリバリーシステム用材料などの医療用材料、樹脂やセラミックスとの複合材料、分子貯蔵材料などへの用途展開に向けた開発が進められている。
このような繊維状炭素系材料は、一般に電気伝導性を示すため、そのままでは、絶縁性が要求される用途、例えば、電子デバイス材料などには使用できない。このため、このような繊維状炭素系材料に絶縁性を付与する方法として、特開2007−107151号公報(特許文献1)には、炭素繊維にシリカをコーティングする方法が提案されている。しかしながら、シリカをコーティングした炭素繊維は凝集しやすく、このシリカ被覆炭素繊維を含む樹脂複合材においては十分な絶縁性が発揮されない傾向にある。
一方、特開2006−49729号公報(特許文献2)には、金属と、この金属の表面にカチオン性ポリマーを含むポリマー層と、このポリマー層表面に負に帯電した金属酸化物を付着させることにより形成された酸化物層とを備え、必要に応じて前記ポリマー層と前記酸化物層とが交互に積層されている被覆金属が開示されている。また、Decher. Gら、Thin Solid Films、1992年、210−211、Part2、831−835頁(非特許文献1)には、基材を、カチオン性電解質ポリマーの水溶液とアニオン性電解質ポリマーの水溶液に交互に浸漬して基板上にカチオン性電解質ポリマーとアニオン性電解質ポリマーとの複合有機薄膜を形成する方法が開示されている。
特開2007−107151号公報 特開2006−49729号公報 Decher G.ら、Thin Solid Films、1992年、210−211、Part2、831−835頁
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、分散性に優れ、また、樹脂に配合することによって樹脂複合材の絶縁性を向上させることが可能であり、且つ樹脂複合材の熱伝導性を少なくとも維持することが可能である繊維状炭素系材料絶縁物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維状炭素系材料上に、カチオン性ポリマー層と酸化物層とを順次形成した絶縁被膜を配置することにより、繊維状炭素系材料の凝集を防ぐことができ、さらにこのような絶縁被膜を備える繊維状炭素系材料絶縁物を樹脂に配合することによって樹脂複合材の絶縁性が高まり且つ熱伝導性が少なくとも維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は、繊維状炭素系材料と前記繊維状炭素系材料上に形成された絶縁被膜とを備える繊維状炭素系材料絶縁物であって、前記絶縁被膜が、前記繊維状炭素系材料上に形成されたカチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層と、前記カチオン性ポリマー層上に形成された金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層とを備えるものであることを特徴とするものである。
また、前記絶縁被膜が2層以上のカチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層と2層以上の金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層とを備えるものである場合には、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は、前記カチオン性ポリマー層と前記酸化物層とが交互に配置されていることを特徴とするものである。また、本発明の樹脂複合材は本発明の繊維状炭素系材料絶縁物と樹脂とを含有するものである。
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物においては、前記絶縁被膜が、前記繊維状炭素系材料上または前記酸化物層上に形成されたアニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層をさらに備えるものであり、前記カチオン性ポリマー層が前記アニオン性ポリマー層上に形成されたものであることが好ましい。また、前記繊維状炭素系材料としてはカーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種が好ましい。
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法は、カチオン性高分子電解質を含む溶液と繊維状炭素系材料とを混合し、前記繊維状炭素系材料上に前記カチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層を形成する工程と、
前記カチオン性ポリマー層を備える繊維状炭素系材料と、負に帯電した金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む溶液とを混合し、前記カチオン性ポリマー層上に前記金属酸化物および前記ケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法においては、金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、カチオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、前記酸化物層上に前記カチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層を形成する工程と、
前記工程で形成したカチオン性ポリマー層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、負に帯電した金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む溶液とを混合し、前記カチオン性ポリマー層上に前記金属酸化物および前記ケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層を形成する工程と、
がさらに含まれることが好ましい。
さらに、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法においては、前記カチオン性ポリマー層形成工程の前に、前記繊維状炭素系材料または前記酸化物層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、アニオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、該繊維状炭素系材料上または該酸化物層上に前記アニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層を形成する工程を含むことが好ましい。
なお、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を配合することによって樹脂複合体の絶縁性が高くなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法においては、電荷を利用してカチオン性ポリマー層と酸化物層とを備える絶縁被膜(好ましくは、さらにアニオン性ポリマー層を備えるもの)を繊維状炭素系材料上に形成するため、単層および単分子膜といった均質な絶縁被膜を形成することが可能であり、さらに絶縁処理回数を調整することによる膜厚制御が可能である。その結果、繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性を容易に確保することができるものと推察される。
また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は分散性に優れているため、樹脂複合体中に均一に分散し、樹脂複合体全体にわたって絶縁性が発現する。このため、本発明の樹脂複合体の絶縁性が高くなるものと推察される。
本発明によれば、分散性に優れた繊維状炭素系材料絶縁物を得ることができ、また、これを樹脂に配合することによって樹脂複合材の絶縁性を向上させることが可能となり、さらに樹脂複合材の熱伝導性を少なくとも維持することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<繊維状炭素系材料絶縁物>
先ず、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物について説明する。本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は、繊維状炭素系材料と前記繊維状炭素系材料上に形成された絶縁被膜とを備えるものであり、前記絶縁被膜は、前記繊維状炭素系材料上に形成されたカチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層と、前記カチオン性ポリマー層上に形成された金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層とを備えることを特徴とするものである。
また、前記絶縁被膜が2層以上のカチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層と2層以上の金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層とを備えるものである場合には、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は、前記カチオン性ポリマー層と前記酸化物層は交互に配置されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物においては、前記絶縁被膜が、前記繊維状炭素系材料上または前記酸化物層上に形成されたアニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層をさらに備えるものであり、前記カチオン性ポリマー層が前記アニオン性ポリマー層上に形成されたものであることが好ましい。
(繊維状炭素系材料)
本発明に用いられる繊維状炭素系材料としては、カーボンファイバー系材料や、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、フラーレンおよびこれらの誘導体といったカーボンナノ構造体などが挙げられる。これらの繊維状炭素系材料は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、これらのうち、熱伝導性の向上および機械強度などの力学特性の向上という観点から、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブが好ましい。
また、繊維状炭素系材料としてカーボンナノファイバーおよび/またはカーボンナノチューブを用いる場合には、コスト面から多層カーボンナノファイバーおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
前記繊維状炭素系材料の平均直径は特に制限されないが、前記繊維状炭素系材料としてカーボンファイバー系材料を用いる場合には30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。また、前記繊維状炭素系材料としてカーボンナノ構造体を用いる場合には、500nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。平均直径が前記上限を超えると樹脂複合材の力学特性、熱伝導性および絶縁性が十分に向上しない傾向にある。なお、繊維状炭素系材料の平均直径の下限値は特に制限されないが、均質な絶縁層を形成するためには0.8nmが好ましく、1.0nmがより好ましい。
前記繊維状炭素系材料のアスペクト比(長さ/直径)は特に制限されないが、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましくは、50以上が特に好ましく、100以上が最も好ましい。アスペクト比が前記下限未満になると樹脂複合材の力学特性および熱伝導性が十分に向上しない傾向にある。
本発明においては、ラマン分光光度計で測定して得られる繊維状炭素系材料のラマンスペクトルのピークのうち、グラフェン構造での炭素原子のずれ振動に起因する約1585cm−1付近に観察されるGバンドと、グラフェン構造にダングリングボンドのような欠陥があると観測される約1350cm−1付近に観察されるDバンドの比(G/D)は特に制限されないが、高熱伝導樹脂材料など高熱伝導性が要求される用途においては、1.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、5.0以上が特に好ましい。G/D値が前記下限未満になると熱伝導性が十分に向上しない傾向にある。なお、G/D値が大きくなりすぎると繊維状炭素系材料の表面活性が低下しやすく、カチオン性高分子電解質および/またはアニオン性高分子電解質の被覆量が減少しやすい傾向にあるため、G/D値の上限は20が好ましい。
本発明に用いられる繊維状炭素系材料は従来公知の方法により製造することができる。例えば、カーボンナノ構造体の場合には、レーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)などの従来公知の製造方法を用途に応じて適宜選択することにより製造できるが、本発明に用いられるカーボンナノ構造体はこれらの方法により製造されたものに限定されるものではない。
また、本発明に用いられる繊維状炭素系材料は、通常、ファイバーが絡みあった凝集状態またはπ−πスタッキングにより凝集した状態のものであるため、超音波処理、ホモジナイザーによる処理、グラインダーミルやビーズミルによる処理、衝突混合処理などにより予め凝集を解砕することが好ましい。これにより、分散性に優れた繊維状炭素系材料絶縁物を得ることができる。このような凝集の解砕は、アスペクト比が20以上、および/または、直径が200nm以下の繊維状炭素系材料を使用する場合に特に有効である。
また、本発明においては、繊維状炭素系材料の溶媒への分散性を向上させるために、前記繊維状炭素系材料の表面を酸化処理して繊維状炭素系材料の表面に官能基を形成させてもよい。前記酸化処理としては、発煙硝酸や発煙硫酸などを用いた化学的酸化、電解酸化、熱処理による空気酸化、プラズマ処理による酸化などが挙げられる。
(アニオン性高分子電解質)
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物においては、必要に応じてアニオン性高分子電解質などの両親媒性化合物を付着(吸着)させて前記繊維状炭素系材料の表面を負に帯電させることが好ましい。また、後述するようにカチオン性ポリマー層と酸化物層とを繰り返して形成する場合においても、必要に応じて繊維状炭素系材料絶縁物の表面(酸化物層の表面)にアニオン性高分子電解質を付着させることが好ましい。このようにアニオン性高分子電解質を付着させることによって、繊維状炭素系材料および繊維状炭素系材料絶縁物の分散性を向上させたり、カチオン性高分子電解質の被覆量を増大させたりすることが可能となる。
前記アニオン性高分子電解質としては、ポリ(4−スチレンスルフォン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アニオン化ポリビニルアルコール、ポリビニルフォスフェート、スチレンスルホン酸−マレイン酸コポリマー、アクリル酸アミド・アクリル酸ナトリウム共重合物などが挙げられる。これらのアニオン性高分子電解質は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明においては、アニオン性高分子電解質として、π−πスタッキングなどの相互作用により繊維状炭素系材料のグラフェン構造に付着(吸着)する芳香環やマレイミド構造などを有する化合物を用いることは、アニオン性高分子電解質の被覆量の増大が期待できる点で好ましい。
(カチオン性高分子電解質)
本発明に用いられるカチオン性高分子電解質は、容易にカチオンを生成することが可能であり、且つ前記繊維状炭素系材料またはその絶縁物に吸着可能な高分子または配位可能な官能基を有する高分子である。例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩、ポリエチルイミン、塩酸ポリアリルアミンなどが挙げられる。これらのカチオン性高分子電解質は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(金属酸化物およびケイ素酸化物)
本発明に用いられる金属酸化物およびケイ素酸化物(以下、これらをまとめて「金属酸化物類」という)は負に帯電したものであるが、その形状はシート状、微粒子状のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。シート状の金属酸化物類を用いた場合には、極めて薄く、均一な酸化物層を形成することが可能である。一方、微粒子状の金属酸化物類を用いた場合には、相対的に少ない絶縁処理回数で比較的厚い酸化物層を形成することができる。また、前記金属酸化物およびケイ素酸化物は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記金属酸化物類の大きさは、溶媒中に分散させたときに自然沈降せず、且つチンダル現象を示す大きさ以下、すなわちコロイド状態を維持できる大きさ以下が好ましい。これにより薄く且つ均一な酸化物層を形成することが可能となる。このような金属酸化物類の具体的な大きさとしては、シート状の場合には、その厚さはナノメートルオーダであることが好ましく、0.7nm以上5nm以下がより好ましい。また、シート状金属酸化物類の横方向の長さは2μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。一方、微粒子状の場合には、その平均粒子径は2nm以上1μm以下が好ましく、4nm以上100nm以下がより好ましく、4nm以上20nm以下が特に好ましい。
本発明に用いられるナノメートルオーダのシート状金属酸化物類(金属酸化物類ナノシート)としては、層状化合物と塩酸とを反応させ、これにより得られた水素型層状化合物をサイズの大きなイオンを含む溶液に加えて溶液を振とうし、ホスト層をはく離したもの、および層状粘土鉱物が挙げられる。これらのうち、層状粘土鉱物は、簡便に金属酸化物類ナノシートが得られる点で好ましい。具体的な層状粘土鉱物としては、モンモリロナイト、スメクタイト、合成サポナイトなどの膨潤性粘土鉱物が挙げられる。一方、層状化合物をはく離したナノシートとしては、層状シリコン化合物(CaSi、YbSiなど)を濃塩酸で処理して得られたシリカナノシート、層状チタン酸化物を濃塩酸で処理して得られたチタニアナノシートなどが挙がられる。
前記微粒子状の金属酸化物類としては、金属化合物、ケイ素化合物または無機塩化合物の加水分解などにより得られるもの、例えば、コロイダルシリカなどが挙げられる。
(繊維状炭素系材料絶縁物の特性)
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は、繊維状炭素系材料とその上に形成された絶縁被膜とを備えるものであり、前記絶縁被膜は、前記繊維状炭素系材料上に形成されたカチオン性ポリマー層と、前記カチオン性ポリマー層上に形成された酸化物層とを備えるものであり、好ましくは、前記繊維状炭素系材料上に形成されたアニオン性ポリマー層と、前記アニオン性ポリマー層上に形成されたカチオン性ポリマー層と、前記カチオン性ポリマー層上に形成された酸化物層とを備えるものである。
また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物においては、前記絶縁被膜が、2層以上のカチオン性ポリマー層と2層以上の酸化物層とを備えるものである場合には、前記カチオン性ポリマー層と前記酸化物層とは交互に配置され、さらに必要に応じて前記アニオン性ポリマー層が前記酸化物層上に配置され、このアニオン性ポリマー層上に前記カチオン性ポリマー層が配置されていることが好ましい。
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物において、繊維状炭素系材料を被覆するカチオン性高分子電解質の割合は、繊維状炭素系材料絶縁物100質量%に対して0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましい。カチオン性高分子電解質の被覆割合が前記下限未満になると前記カチオン性ポリマー層上に十分に前記酸化物層が形成されず、繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると繊維状炭素系材料の特性を損ないやすい傾向にある。なお、カチオン性高分子電解質の被覆割合は、カチオン性高分子電解質の熱分解温度に基づいて熱重量分析における質量減少より求めることができる。
また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物において、繊維状炭素系材料を被覆する金属酸化物類の割合は、繊維状炭素系材料絶縁物100質量%に対して0.01質量%以上80質量%以下が好ましく、0.1質量%以上65質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。金属酸化物類の被覆割合が前記下限未満になると十分な酸化物層が形成されず、繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると繊維状炭素系材料の特性を損ないやすい傾向にある。なお、金属酸化物類の被覆割合は、蛍光X線分析、誘導結合プラズマ励起発光分光分析、誘導結合プラズマ励起質量分析などにより求めることができ、また、熱重量分析おける残渣の割合によっても求めることができる。
さらに、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物において、繊維状炭素系材料を被覆するアニオン性高分子電解質の割合は、繊維状炭素系材料絶縁物100質量%に対して0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましい。アニオン性高分子電解質の被覆割合が前記下限未満になるとアニオン性高分子電解質による効果が十分に発現されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると繊維状炭素系材料の特性が損なわれやすい傾向にある。
また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物において、アニオン性高分子電解質とカチオン性高分子電解質との被覆量の合計は、金属酸化物類の被覆量100質量部に対して0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上40質量部以下がより好ましく、2.0質量部以上25質量部以下が特に好ましい。アニオン性およびカチオン性高分子電解質の被覆量が前記下限未満になると繊維状炭素系材料を被覆する金属酸化物類の絶対量が少ないため繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属酸化物類の絶縁性が高分子電解質により阻害されて繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性が低下しやすい傾向にある。
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物において、前記絶縁被膜の厚さは0.8nm以上1000nm以下が好ましく、0.8nm以上200nm以下がより好ましく、繊維状炭素系材料の直径以下がさらに好ましい。絶縁被膜の厚さが前記下限未満になると樹脂複合材の絶縁性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると繊維状炭素系材料の特性が損なわれやすい傾向にある。
本発明のように、酸化物層とカチオン性ポリマー層とを備える絶縁被膜(好ましくは、さらにアニオン性ポリマー層を備えるもの)を繊維状炭素系材料上に配置することにより、得られる繊維状炭素系材料絶縁物の表面抵抗率は、絶縁被膜のない繊維状炭素系材料の表面抵抗率の好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上、特に好ましくは1000倍以上となる。
このような本発明の繊維状炭素系材料絶縁物は、通常そのまま使用されるが、熱処理などを施してアニオン性ポリマー層およびカチオン性ポリマー層を熱分解などにより除去または無機化して使用することもできる。
<繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法>
次に、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法について説明する。本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法は、前記繊維状炭素系材料上に前記カチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層を形成する工程(カチオン処理工程)と、前記カチオン性ポリマー層上に前記金属酸化物類を含む酸化物層を形成する工程(酸化物処理工程)とを含む方法である。
また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法においては、前記製造方法により製造されたカチオン性ポリマー層と酸化物層とを備える繊維状炭素系材料絶縁物上に前記カチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層を形成する工程(カチオン処理工程)と、該カチオン性ポリマー層上に前記金属酸化物類を含む酸化物層を形成する工程(酸化物処理工程)とをさらに含んでいてもよい。
本発明の製造方法が2工程以上のカチオン性ポリマー層形成工程と2工程以上の酸化物層形成工程とを含むものである場合には、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法は、前記カチオン性ポリマー層形成と前記酸化物層形成とを交互に実施する方法、いわゆる交互吸着法であることが好ましい。
また、本発明においては、前記カチオン性ポリマー層形成工程の前に、繊維状炭素系材料またはその絶縁物上にアニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層を形成する工程(アニオン処理工程)を含むことが好ましい。さらに、最初のカチオン性ポリマー層形成工程の前においては繊維状炭素系材料に前記酸化処理を施してもよい。これらにより前記繊維状炭素系材料またはその絶縁物の分散性を向上させたり、カチオン性高分子電解質の被覆量を増加させることが可能となる。
(酸化処理工程)
本発明にかかる酸化処理工程は、繊維状炭素系材料に、発煙硝酸や発煙硫酸などを用いた化学的酸化、電解酸化、または熱処理による空気酸化、プラズマ処理による酸化といった酸化処理を施す工程である。これにより繊維状炭素系材料の表面に官能基が生成し、この官能基とカチオン性高分子電解質とを反応または配位させることによりカチオン性高分子電解質が脱離しにくい繊維状炭素系材料絶縁物が得られ、カチオン性高分子電解質の被覆量を増加させることが可能となる。
(アニオン処理工程)
本発明にかかるアニオン処理工程は、繊維状炭素系材料またはその絶縁物と、アニオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、繊維状炭素系材料またはその絶縁物(具体的には、その酸化物層)上にアニオン性高分子電解質を付着(吸着)させてアニオン性ポリマー層を形成する工程である。これにより繊維状炭素系材料またはその絶縁物の表面が負に帯電し、カチオン性高分子電解質の被覆量を増加させることが可能となる。
前記混合後の分散液中の繊維状炭素系材料またはその絶縁物の濃度は、繊維状炭素系材料絶縁物の生産性の観点から、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には0.01質量%以上が好ましく、カーボンナノ構造体の場合には0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、分散液の流動性や繊維状炭素系材料またはその絶縁物の分散性の観点から、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には前記濃度は50質量%以下が好ましく、カーボンナノ構造体の場合にはさらに分散液の流動性が維持できる濃度がカーボンナノ構造体の直径が細く、アスペクト比が大きくなるほど低下する傾向にあるという観点から、例えば、アスペクト比50以上且つ直径150nmでは6質量%以下が好ましく、アスペクト比50以上且つ直径80nmでは2質量%以下が好ましい。
また、前記分散液中のアニオン性高分子電解質の濃度は、0.0001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上1質量%以下がより好ましい。アニオン性高分子電解質の濃度が前記下限未満になるとアニオン性ポリマー層の形成効率が低下しやすく、また、均一なアニオン性ポリマー層を形成しにくい傾向にある。他方、前記上限を超えると分散液中に多量のアニオン性高分子電解質が残存するともにアニオン性高分子電解質同士が干渉して、薄く且つ均一なアニオン性ポリマー層を形成しにくい傾向にある。
本発明においては、前記分散液中の繊維状炭素系材料またはその絶縁物、およびアニオン性高分子電解質の濃度が前記範囲となるように適宜溶媒を添加してもよい。
(カチオン処理工程)
本発明にかかるカチオン処理工程は、前記繊維状炭素系材料またはその絶縁物(必要に応じて酸化処理を施したものやアニオン性ポリマー層を形成したものを含む)と、カチオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、前記繊維状炭素系材料またはその絶縁物上、あるいは前記アニオン性ポリマー層上にカチオン性高分子電解質を付着(吸着)させてカチオン性ポリマー層を形成する工程である。
前記混合後の分散液中の繊維状炭素系材料またはその絶縁物の濃度は、繊維状炭素系材料絶縁物の生産性の観点から、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には0.01質量%以上が好ましく、カーボンナノ構造体の場合には0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、分散液の流動性や繊維状炭素系材料またはその絶縁物の分散性の観点から、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には前記濃度は50質量%以下が好ましく、カーボンナノ構造体の場合にはさらに分散液の流動性が維持できる濃度がカーボンナノ構造体の直径が細く、アスペクト比が大きくなるほど低下する傾向にあるという観点から、例えば、アスペクト比50以上且つ直径150nmでは6質量%以下が好ましく、アスペクト比50以上且つ直径80nmでは2質量%以下が好ましい。
また、前記分散液中のカチオン性高分子電解質の濃度は、0.0001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上1質量%以下がより好ましい。カチオン性高分子電解質の濃度が前記下限未満になるとカチオン性ポリマー層の形成効率が低下しやすく、また、均一なカチオン性ポリマー層を形成しにくい傾向にある。他方、前記上限を超えると分散液中に多量のカチオン性高分子電解質が残存するとともにカチオン性高分子電解質同士が干渉して、薄く且つ均一なカチオン性ポリマー層を形成しにくい傾向にある。
本発明においては、前記分散液中の繊維状炭素系材料またはその絶縁物、およびカチオン性高分子電解質の濃度が前記範囲となるように適宜溶媒を添加してもよい。
(酸化物処理工程)
本発明にかかる酸化物処理工程は、前記カチオン処理工程で得た最外層としてカチオン性ポリマー層を備える繊維状炭素系材料またはその絶縁物(以下、「カチオン性ポリマー層含有繊維状炭素系材料またはその絶縁物」という)と、負に帯電した金属酸化物類を含む溶液とを混合し、前記カチオン性ポリマー層上に金属酸化物類を付着(吸着)させて酸化物層を形成する工程である。
前記混合後の分散液中のカチオン性ポリマー層含有繊維状炭素系材料またはその絶縁物の濃度は、繊維状炭素系材料絶縁物の生産性の観点から、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には0.01質量%以上が好ましく、カーボンナノ構造体の場合には0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、分散液の流動性や繊維状炭素系材料またはその絶縁物の分散性の観点から、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には前記濃度は50質量%以下が好ましく、カーボンナノ構造体の場合にはさらに分散液の流動性が維持できる濃度がカーボンナノ構造体の直径が細く、アスペクト比が大きくなるほど低下する傾向にあるという観点から、例えば、アスペクト比50以上且つ直径150nmでは6質量%以下が好ましく、アスペクト比50以上且つ直径80nmでは2質量%以下が好ましい。
また、前記分散液中の金属酸化物類の濃度は、金属酸化物類がシート状のものの場合には0.0001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上1質量%以下がより好ましく、一方、微粒子状のものの場合には0.001質量%以上20質量%以下が好ましく、0.01質量%以上5質量%以下がより好ましい。金属酸化物類の濃度が前記下限未満になると酸化物層の形成効率が低下しやすく、また、均一な酸化物層を形成しにくい傾向にある。他方、前記上限を超えると分散液中に多量の金属酸化物類が残存するため好ましくない。
本発明においては、前記分散液中のカチオン性ポリマー層含有繊維状炭素系材料またはその絶縁物、および金属酸化物類の濃度が前記範囲となるように適宜溶媒を添加してもよい。
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法において用いられる溶媒としては、水、有機溶媒(ケトン類、アルコール類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類など)、および水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。中でも、水および水を主成分とする混合溶媒が好ましい。また、これらの溶媒はいずれの工程においても使用することができる。
本発明の製造方法においては、前記各工程で用いられる分散液にはpH調整用の酸(塩酸、硫酸、リン酸など)やアルカリ(水酸化ナトリウム、アンモニアなど)、および繊維状炭素系材料の表面を帯電させるための金属塩化物(塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)を適量加えることができる。また、前記各工程で用いられる分散液の粘度は、処理時の温度において10000Pa・s以下が好ましく、1000Pa・s以下がより好ましく、100Pa・s以下が特に好ましい。
本発明の製造方法にかかる前記各工程においては、超音波処理、スターラーによる処理、ホモジナイザーによる処理、グラインダーミルによる処理、衝突混合、ビーズミルによる処理、ニーダーによる処理、攪拌羽根付きミキサーやシェイカーによる処理などの強制的な攪拌処理を施すことが好ましく、中でもより均一に分散可能な点で超音波処理およびホモジナイザーによる処理がより好ましい。
前記各工程における処理時の温度は特に制限されないが、加熱や冷却といった温度制御装置が不要な条件である室温が好ましい。なお、本発明においては付着や被覆を促進したり、遅延させるために加熱または冷却操作を実施してもよい。
また、前記各工程における処理時間は0.1秒以上60分以下が好ましく、1秒以上30分以下がより好ましい。処理時間が前記下限未満になると均一なポリマー層(カチオン性およびアニオン性)や酸化物層を形成しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると繊維状炭素系材料絶縁物の生産性が低下しやすい傾向にある。
さらに、本発明においては、遊離したカチオン性およびアニオン性高分子電解質や金属酸化物類を除去するために、前記各工程終了ごとに、得られた繊維状炭素系材料またはその絶縁物に洗浄処理を施すことが好ましい。
本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法においては、このようにして形成されたカチオン性ポリマー層と酸化物層とを備える繊維状炭素系材料絶縁物(好ましくは、アニオン性ポリマー層を備えるもの)上に、さらに、前記カチオン処理工程および酸化物処理工程に記載の方法により、カチオン性ポリマー層と酸化物層とを順次繰り返して形成することが好ましい。すなわち、最外層として前記酸化物層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、カチオン性高分子電解質を含む溶液とを混合して前記酸化物層上にカチオン性ポリマー層を形成し、次いで、このカチオン性ポリマー層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、負に帯電した金属酸化物またはケイ素酸化物を含む溶液とを混合して前記カチオン性ポリマー層上に酸化物層を形成する。
また、前記カチオン性ポリマー層を形成する前に、前記繊維状炭素系材料絶縁物上にアニオン性ポリマー層を形成することがより好ましい。すなわち、先ず、最外層として前記酸化物層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、アニオン性高分子電解質を含む溶液とを混合して前記酸化物層上にアニオン性ポリマー層を形成し、次いで、前記方法に従って、このアニオン性ポリマー層上にカチオン性ポリマー層を形成し、さらに、このカチオン性ポリマー層上に酸化物層を形成する。
本発明においては、これらの層形成を繰り返すことが特に好ましい。このようにカチオン性ポリマー層と酸化物層とを交互に(好ましくは、アニオン性ポリマー層とカチオン性ポリマー層と酸化物層とを繰り返して)形成することにより、より均一な絶縁被膜を形成することが可能となり、また、絶縁被膜の膜厚を容易に調整することができ、繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性を任意のレベルに制御することが可能となる。特に、前記の層形成を何度も繰り返すことによって繊維状炭素系材料絶縁物の絶縁性を高めることが可能となる。
本発明の製造方法においては、通常、溶媒に分散した状態の繊維状炭素系材料絶縁物が得られる。この場合、繊維状炭素系材料絶縁物を含有する分散液に樹脂などを溶解したり、前記分散液と樹脂とを溶融混合した後に溶媒を除去することによって繊維状炭素系材料絶縁物が均一に分散した樹脂組成物や樹脂複合材が得られる。例えば、キャスト法におけるポリマー溶解液や押出機中の溶融状態にある樹脂中に、前記繊維状炭素系材料絶縁物の分散液を加圧注入して混練すると繊維状炭素系材料絶縁物の凝集が抑制され、さらにベントから溶媒を除去すると繊維状炭素系材料絶縁物が均一に分散した樹脂複合材を得ることができる。
また、溶媒に分散した状態の繊維状炭素系材料絶縁物に凍結乾燥またはスプレードライなどの乾燥処理を施すことによって凝集を抑制しながら固体状態の繊維状炭素系材料絶縁物を回収することができる。このように凝集を抑制しながら回収した繊維状炭素系材料絶縁物は溶媒や樹脂などへの分散性に優れている。また、前記乾燥処理は、樹脂粒子(粒径5mm以下、好ましくは1mm以下)および/またはフィラー(例えば、平均粒径100μm以下のアルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの無機フィラー)の共存下で実施することが好ましい。これにより繊維状炭素系材料絶縁物の凝集を十分に抑制することができる。また、この場合、樹脂粒子および/またはフィラーの量は繊維状炭素系材料絶縁物の10倍以上であることが好ましい。
<繊維状炭素系材料絶縁物を含む樹脂組成物および樹脂複合材>
本発明の樹脂複合材は、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物および樹脂を含む樹脂組成物を成形加工することにより得られるものである。前記樹脂組成物および樹脂複合材における繊維状炭素系材料絶縁物の含有率は特に制限されないが、樹脂組成物または樹脂複合材100質量%に対して、繊維状炭素系材料がカーボンファイバー系材料の場合には0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。カーボンナノ構造体の場合には0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。繊維状炭素系材料絶縁物の含有率が前記下限未満になると本発明の樹脂複合材の熱伝導性および力学特性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると樹脂組成物の流動性が低下しやすい傾向にある。また、本発明にかかる樹脂組成物の溶融粘度は特に制限されないが、熱可塑性樹脂組成物の場合にはその成形温度におけるMFRで0.1〜200g/(10分、荷重2.16kg)であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物の場合には成形方法、組成、用途などに応じて適宜最適な粘度に調整することが好ましい。
前記樹脂としては特に制限はないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラックエポキシフェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性イミド樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、およびウレタン樹脂といった熱硬化性樹脂;ABS樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリアリレートといったポリエステル樹脂、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリオレフィン系樹脂、酸または酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系エラストマー、酸または酸無水物変性アクリル系エラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸、ポリスルフォン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアミド、ポリアミドイミド、およびポリアミドといった熱可塑性樹脂;各種アロイ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリルゴム、NBRといったゴム架橋体およびこれらと樹脂との複合材なども用いることができる。
本発明にかかる樹脂組成物および本発明の樹脂複合材においては、発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。具体的には、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、粘度調整剤、着色剤、シランカップリング剤などの表面処理剤、ガラス繊維、シリカや熱伝導性フィラーなどの充填剤、エラストマー類などが挙げられる。
前記熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの熱伝導性フィラーは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。この熱伝導性フィラーの熱伝導率は特に制限されないが、10W/mk以上が好ましく、20W/mk以上がより好ましい。本発明にかかる樹脂組成物における熱伝導性フィラーの含有率は特に制限されないが、樹脂組成物100質量%に対して0.5体積%以上80体積%以下が好ましく、1.0体積%以上70体積%以下がより好ましく、5.0体積%以上50体積%以下が特に好ましい。熱伝導性フィラーの含有率が前記下限未満になると得られる樹脂複合材の熱伝導性が十分に向上しない傾向にあり、前記上限を超えると樹脂組成物の流動性が低下しやすい傾向にある。
本発明にかかる樹脂組成物の製造方法としては特に制限はなく、樹脂中にフィラーを分散させる際に採用される従来公知の混合および/または混練方法が挙げられる。例えば、押出機、ロール、ニーダーなどを用いる方法、溶媒中で混合する方法などが挙げられる。また、樹脂として低粘度の熱硬化性樹脂を用いる場合には自公転ミキサーを用いて複合化処理を施すことにより混合することも可能である。本発明にかかる樹脂組成物を製造する際には、超音波処理、熱処理、攪拌処理、混練処理などを少なくとも1つ施すことが好ましい。
また、本発明においては、繊維状炭素系材料絶縁物の分散性を向上させるために、繊維状炭素系材料絶縁物を樹脂またはフィラーの一部に予備混合させることが好ましい。予備混合の方法としては、例えば、樹脂またはフィラーの一部を溶解(分散)させた溶液(分散液)に繊維状炭素系材料絶縁物を混合する方法、溶融させた樹脂と維状炭素系材料絶縁物とを混合させる方法、樹脂、フィラーおよび維状炭素系材料絶縁物をドライブレンドにより混合する方法などが挙げられる。ドライブレンド時の樹脂の形状は特に制限されず、例えば、粉状、ペレット状、粒状、タブレット状などが挙げられる。
本発明の樹脂複合材の製造方法としては特に制限はなく、樹脂の成形方法として一般的に採用される公知の成形方法を適宜採用することができ、目的に応じた形状の樹脂複合体を得ることができる。
このように本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を樹脂に配合することによって、樹脂複合体の絶縁性を高めることができるとともに、カーボン系ナノファイバーの特性(樹脂複合材の熱伝導率向上、力学特性向上、低熱膨張化など)も付与することができる。
例えば、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を配合した樹脂複合材の体積抵抗率は、絶縁処理を施していない繊維状炭素系材料を配合したものに比べて好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上に増大する。具体的には、本発明の樹脂複合材の体積抵抗率は好ましくは10Ω・m以上、より好ましくは1010Ω・m以上となる。また、絶縁破壊電圧は、絶縁処理を施していない繊維状炭素系材料を配合したものに比べて好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上に増大する。具体的には、本発明の樹脂複合材の絶縁破壊電圧は好ましくは10V/mm以上、より好ましくは100V/mm以上となる。体積抵抗率や絶縁破壊電圧が前記いずれかの下限未満になると絶縁性が低く、絶縁性を要求される用途への適用が困難となる傾向にある。
さらに、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を配合した樹脂複合材の熱伝導率は、維状炭素系材料絶縁物を配合していないものに比べて、少なくとも維持されたものであるが、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上に増大する。また、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物と熱伝導性フィラーとを併用すると繊維状炭素系材料絶縁物による熱伝導率向上と熱伝導性フィラーによる熱伝導率向上の相乗効果が期待できる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、繊維状炭素系材料絶縁物中の絶縁被膜の含有率、樹脂複合材の体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率は以下の方法により測定した。
(絶縁被膜の含有率)
熱分析装置(リガク(株)製、熱示差天秤(TG−DTA)「Thermo plus」)を用い、測定温度範囲:室温〜1000℃、昇温速度:20℃/分、空気雰囲気およびガス流量:500ml/分の条件で繊維状炭素系材料絶縁物の質量変化を測定した。250〜400℃の範囲における質量減少率を有機成分(アニオン性高分子電解質およびカチオン性高分子電解質)の含有率とし、残渣の割合を金属酸化物類の含有率として求めた。なお、繊維状炭素系材料についても同様の測定を実施し、繊維状炭素系材料絶縁物についての含有率を補正した。
(体積抵抗率および絶縁破壊電圧)
ハイ・レジスタンス・メータ(アジレント・テクノロジー社製「Agilent4339B」、測定範囲:10Ω・cm〜1015Ω・cm)を用い、JIS K6911(2重リング電極)に準拠して、印加電圧0.1V、1V、10V、100Vおよび1000Vの5条件、設定電圧印加時間20秒、電流リミット500μA、および室温の条件で定電圧印加方式による体積抵抗率を測定した。また、体積抵抗率の電圧依存性から絶縁破壊電圧を調べた。
(熱伝導率)
定常法熱伝導率測定装置(アルバック理工(株)製「HG−1」)を用い、測定温度40℃(上下の温度差24℃)の条件で定常法により厚さ(流動方向に対して垂直)方向の熱伝導率を測定した。
また、実施例および比較例においては以下に示した原料を使用した。
<繊維状炭素系材料>
VGCF:カーボンナノファイバー(昭和電工(株)製、商品名「VGCF」、平均直径
150nm、アスペクト比50以上、G/D値9.6)。
MWNT−7:多層カーボンナノチューブ(ナノカーボンテクノロジーズ(株)製、商品
名「MWNT−7」、平均直径80nm、アスペクト比100以上、G/D値
8)。
XN−100−15M:PAN系カーボンファイバー(日本グラファイトファイバー(株
)製、商品名「グラノックXN−100−15M」、直径9μm、長さ150
μm、G/D値4.8)。
<カチオン性高分子電解質>
PDADMAC水溶液:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の水溶液(ア
ルドリッチ社製、固形分濃度20質量%、中分子量)。
<アニオン性高分子電解質>
PSS水溶液:ポリ(4−スチレンスルフォン酸ナトリウム)の水溶液(アルドリッチ社
製、固形分濃度30質量%、分子量20万)。
<金属酸化物>
シリカ:コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックスXS」、
固形分濃度20質量%)を使用。
チタニアナノシート:層状チタン酸(石原産業(株)製、商品名「LU−007」、固形
分濃度54質量%)に硫酸処理を施して薄片化した後、テトラブチルアンモニウ
ムヒドロキシドを用いて完全剥離し、さらに塩酸を用いてpH9に調整した固形
分濃度1.2質量%のチタニアナノシート分散液を使用。
サポナイト:クレイナノシート(クニミネ工業(株)製合成サポナイト、商品名「スメク
トンSA」)。
<樹脂>
PA6:ナイロン6(宇部興産(株)製、商品名「UBEナイロンP1011F」)。
エポキシ樹脂:2液混合型エポキシ樹脂(主剤成分(A液):ビスフェノールA型エポキ
シ樹脂、硬化剤成分(B液):メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)
、B液には硬化促進剤(イミダゾール化合物)を配合)。
(調製例1)
イオン交換水1000gにPDADMAC水溶液(固形分濃度20質量%)5gと塩化ナトリウム29.22g(0.5モル)とを添加し、0.001g/g(約0.1質量%)のPDADMAC水溶液を作製した。
(調製例2)
イオン交換水1000gにPSS水溶液(固形分濃度30質量%)7gを添加し、0.0021g/g(約0.21質量%)のPSS水溶液を作製した。
(調製例3)
イオン交換水1000gに前記コロイダルシリカ(固形分濃度20質量%)50gを添加し、0.01g/g(約1質量%)のシリカ水分散液を作製した。
(調製例4)
イオン交換水1000gに前記チタニアナノシート分散液(固形分濃度1.2質量%)33gを添加し、0.0004g/g(約0.04質量%)のチタニア水分散液を作製した。
(調製例5)
イオン交換水1000gに前記サポナイト4gを添加し、0.004g/g(約0.4質量%)のサポナイト水分散液を作製した。
(参考例1〜10)
表1に示す種類と量の繊維状炭素系材料とカチオン性高分子電解質水溶液またはイオン交換水とを混合して手攪拌した後、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施し、分散液の分散状態を目視で観察した。その結果を表1に示す。また、分散液(スラリー)の状態を示す写真を図1A〜1Iに示す。
表1および図1A〜1Iに示した結果から明らかなように、分散媒としてPDADMAC水溶液を使用した場合(参考例1〜4、7〜8)とイオン交換水を使用した場合(参考例5〜6、9〜10)とを比較すると、PDADMACの存在により繊維状炭素系材料の水への分散性が向上することが確認された。
また、PDADMAC水溶液中では、カーボンファイバーVGCFは0.06g/g以下の濃度で、カーボンナノチューブMWNT−7は0.02g/g以下の濃度で均一に分散し、それを超える濃度ではペースト状になることが確認された。一方、イオン交換水中では、カーボンファイバーVGCFはおよびカーボンナノチューブMWNT−7は凝集した状態で分散することが確認された。
(実施例A1)
図2〜図5に示すフローチャートに従って表2に示す絶縁処理条件でMWNT−7に6回の絶縁処理を施し、PSS層とPDADMAC層とシリカ層とを繰り返し6層ずつ備えるMWNT−7絶縁物を製造した。以下に具体的な製造方法を示す。
<1回目の絶縁処理>
(アニオン処理工程)
図3に示すように、先ず、水(900g)にMWNT−7(0.5g)を添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理した(図示なし)。この水分散液に調製例2で得たPSS水溶液(100g)を添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理してPSSが付着したMWNT−7の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(1000g)に添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理した後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離PSSを除去し、PSSが付着したMWNT−7を回収した。
(カチオン処理工程)
次に、図4に示すように、このPSSが付着したMWNT−7を水(900g)に添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理した(図示なし)。この水分散液に調製例1で得たPDADMAC水溶液(100g)を添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理してPDADMAC層を備えるMWNT−7の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(1000g)に添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理した後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離PDADMACを除去し、PDADMAC層を備えるMWNT−7を回収した。
(酸化物処理工程)
次に、図5に示すように、このPDADMAC層を備えるMWNT−7を水(900g)に添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理した(図示なし)。この水分散液に調製例3で得たシリカ水分散液(100g)を添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理してPDADMAC層とシリカ層とを備えるMWNT−7絶縁物の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(1000g)に添加し、ホモジナイザーで5分間分散処理した後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離シリカを除去し、濾紙上にMWNT−7絶縁物を回収した。
前記濾紙上のMWNT−7絶縁物の表面抵抗をテスターを用いて電極間隔1cmで5箇所以上測定した。その結果を表2に示す。
<2回目の絶縁処理>
次に、前記濾紙上のMWNT−7絶縁物を回収し、前記MWNT−7の代わりにこのMWNT−7絶縁物を用いた以外は上記と同様にして、前記MWNT−7絶縁物上にPSS層とPDADMAC層とシリカ層とを順次形成した(2回目の絶縁処理)。この2回目の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面抵抗を上記と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
<3回目以降の絶縁処理>
その後、この絶縁処理を繰り返し、合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物を得た。このMWNT−7絶縁物についても上記と同様にして各回ごとに表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
この合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図6Aおよび6Bに示す。
また、前記合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物中のシリカおよびポリマー含有率(アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの合計)を熱重量分析により測定した。その結果を表2に示す。
(実施例A2)
図2および図4〜5に示すフローチャートに従って、表2に示す絶縁処理条件でMWNT−7に6回の絶縁処理を施し、PDADMAC層とチタニア層とを交互に6層ずつ備えるMWNT−7絶縁物を製造した。以下に具体的な製造方法を示す。
<1回目の絶縁処理>
(カチオン処理工程)
図4に示すように、先ず、MWNT−7(0.5g)、調製例1で得たPDADMAC水溶液(100g)および水(300g)を混合して超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施し、PDADMAC層を備えるMWNT−7の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(400g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施して分散させた。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離PDADMACを除去し、PDADMAC層を備えるMWNT−7を回収した。
(酸化物処理工程)
次に、図5に示すように、このPDADMAC層を備えるMWNT−7を水(300g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した(図示なし)。この水分散液に調製例4で得たチタニア水分散液(100g)を添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施してPDADMAC層とチタニア層とを備えるMWNT−7絶縁物の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(400g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施して分散させた。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離チタニアを除去し、濾紙上にMWNT−7絶縁物を回収した。
前記濾紙上のMWNT−7絶縁物の表面抵抗をテスターを用いて電極間隔1cmで5箇所以上測定した。その結果を表2に示す。
<2回目の絶縁処理>
次に、前記濾紙上のMWNT−7絶縁物を回収し、前記MWNT−7の代わりにこのMWNT−7絶縁物を用いた以外は上記と同様にして、前記MWNT−7絶縁物上にPDADMAC層およびチタニア層を順次形成した(2回目の絶縁処理)。この2回目の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面抵抗を上記と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
<3回目以降の絶縁処理>
その後、この絶縁処理を繰り返し、合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物を得た。このMWNT−7絶縁物についても上記と同様にして各回ごとに表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
この合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図7Aおよび7Bに示す。
また、前記合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物中のチタニアおよびカチオン性ポリマー含有率を熱重量分析により測定した。その結果を表2に示す。
(実施例A3)
図2〜図5に示すフローチャートに従って表2に示す絶縁処理条件でMWNT−7に6回の絶縁処理を施し、PSS層とPDADMAC層とサポナイト層とを繰り返し6層ずつ備えるMWNT−7絶縁物を製造した。以下に具体的な製造方法を示す。
<1回目の絶縁処理>
(アニオン処理工程)
図3に示すように、先ず、水(200g)にMWNT−7(1.0g)を添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した(図示なし)。この水分散液に調製例2で得たPSS水溶液(200g)を添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施してPSSが付着したMWNT−7の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(400g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離PSSを除去し、PSSが付着したMWNT−7を回収した。
(カチオン処理工程)
次に、図4に示すように、このPSSが付着したMWNT−7を水(200g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した(図示なし)。この水分散液に調製例1で得たPDADMAC水溶液(200g)を添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施してPDADMAC層を備えるMWNT−7の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(400g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離PDADMACを除去し、PDADMAC層を備えるMWNT−7を回収した。
(酸化物処理工程)
次に、図5に示すように、このPDADMAC層を備えるMWNT−7を水(200g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した(図示なし)。この水分散液に調製例5で得たサポナイト水分散液(200g)を添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施してPDADMAC層とサポナイト層とを備えるMWNT−7絶縁物の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)した。
次いで、前記減圧濾過により得た濾滓を水(400g)に添加し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施した後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離サポナイトを除去し、濾紙上にMWNT−7絶縁物を回収した。
前記濾紙上のMWNT−7絶縁物の表面抵抗をテスターを用いて電極間隔1cmで5箇所以上測定した。その結果を表2に示す。
<2回目の絶縁処理>
次に、前記濾紙上のMWNT−7絶縁物を回収し、前記MWNT−7の代わりにこのMWNT−7絶縁物を用いた以外は上記と同様にして、前記MWNT−7絶縁物上にPSS層とPDADMAC層およびサポナイト層を順次形成した(2回目の絶縁処理)。この2回目の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面抵抗を上記と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
<3回目以降の絶縁処理>
その後、この絶縁処理を繰り返し、合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物を得た。このMWNT−7絶縁物についても上記と同様にして各回ごとに表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
この合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図8Aおよび8Bに示す。
また、前記合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物中のサポナイトおよびポリマー含有率(アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの合計)を熱重量分析により測定した。その結果を表2に示す。
(比較例A1)
<洗浄処理>
MWNT−7(0.5g)および水(400g)を混合して超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を20分間施し、MWNT−7の水分散液を得た。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水を除去し、濾紙上にMWNT−7を回収した。前記濾紙上のMWNT−7の表面抵抗をテスターを用いて電極間隔1cmで5箇所以上測定した。その結果を表2に示す。
前記洗浄処理を合計6回の繰り返し、各回ごとに表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。この合計6回の洗浄処理を施したMWNT−7の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図9Aおよび9Bに示す。また、前記合計6回の洗浄処理を施したMWNT−7について熱重量分析を実施した結果を表2に示す。
(比較例A2)
カチオン処理を施さなかった以外は実施例A1と同様にして、MWNT−7に6回の絶縁処理(アニオン処理および酸化物処理)を施し、シリカ層を備えるMWNT−7絶縁物を製造した。このMWNT−7絶縁物についても実施例A1と同様にして各回ごとに表面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
この合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図10Aおよび10Bに示す。
また、前記合計6回の絶縁処理を施したMWNT−7絶縁物中のシリカおよびアニオン性ポリマー含有率を熱重量分析により測定した。その結果を表2に示す。
表2および図6A〜10Bに示した結果から明らかなように、アニオン性ポリマー層とカチオン性ポリマー層と酸化物層とを繰り返し形成させた本発明の繊維状炭素系材料絶縁物(実施例A1、A3)およびカチオン性ポリマー層と酸化物層とを交互に形成させた本発明の繊維状炭素系材料絶縁物(実施例A2)は、絶縁物同士の凝集が少なく、その表面には均一な絶縁被膜が形成されていることが確認された。また、表面抵抗が大きく、絶縁性に優れるものであることが確認された。
一方、アニオン性ポリマー層と酸化物層(シリカ層)とを交互に形成させた繊維状炭素系材料絶縁物(比較例A2)は、酸化物層がほとんど形成していなかった。また、表面抵抗は洗浄処理のみを施した繊維状炭素系材料(比較例A1)と同程度であった。
(実施例B1)
実施例A2で得たMWNT−7絶縁物(チタニア層)と水とを混合してMWNT−7絶縁物濃度1.25mg/mgの水分散液を調製した。この水分散液340g(MWNT−7絶縁物量:約0.42g)をビーカーに秤量し、液体窒素により水分散液中の水を凍らせた状態で真空乾燥機に入れ、減圧処理により前記MWNT−7絶縁物(チタニア層)を凍結乾燥させた。この凍結乾燥させたMWNT−7絶縁物(チタニア層)を目視により観察した結果を表3に示す。
(参考例B1)
実施例B1と同様にして調製したMWNT−7絶縁物(チタニア層)の水分散液340g(MWNT−7絶縁物量:約0.42g)をビーカーに秤量して熱風乾燥機に入れ、前記MWNT−7絶縁物(チタニア層)を80℃で12時間熱風乾燥させた。この熱風乾燥させたMWNT−7絶縁物(チタニア層)を目視により観察した結果を表3に示す。
(実施例B2)
実施例B1と同様にして調製したMWNT−7絶縁物(チタニア層)の水分散液340g(MWNT−7絶縁物量:約0.42g)とPA6パウダー22.58gとをビーカーに秤量して混合し、これに実施例B1と同様にして減圧処理を施して前記MWNT−7絶縁物(チタニア層)とPA6との混合物(PA6:MWNT−7絶縁物=100:1(体積比))を凍結乾燥させた。この凍結乾燥させた混合物を目視により観察した結果を表3に示す。
(参考例B2)
実施例B2と同様にして約0.42gのMWNT−7絶縁物(チタニア層)と22.58gのPA6パウダーとを含む水分散液を調製し、これを熱風乾燥機に入れ、参考例B1と同様にして前記MWNT−7絶縁物(チタニア層)とPA6との混合物(PA6:MWNT−7絶縁物=100:1(体積比))を熱風乾燥させた。この熱風乾燥させた混合物を目視により観察した結果を表3に示す。
(実施例B3)
実施例B1と同様にして調製したMWNT−7絶縁物(チタニア層)の水分散液205g(MWNT−7絶縁物量:約0.26g)とPA6パウダー13.54gとアルミナ28.80gとをビーカーに秤量して混合し、これに実施例B1と同様にして減圧処理を施して前記MWNT−7絶縁物(チタニア層)とPA6とアルミナとの混合物(PA6:MWNT−7絶縁物=100:1(体積比)、PA6+アルミナ:MWNT−7絶縁物=100:0.6(体積比))を凍結乾燥させた。この凍結乾燥させた混合物を目視により観察した結果を表3に示す。
(参考例B3)
実施例B3と同様にして約0.26gのMWNT−7絶縁物(チタニア層)と13.54gのPA6パウダーと28.80gのアルミナとを含む水分散液を調製し、これを熱風乾燥機に入れ、参考例B1と同様にして前記MWNT−7絶縁物(チタニア層)とPA6とアルミナとの混合物(PA6:MWNT−7絶縁物=100:1(体積比)、PA6+アルミナ:MWNT−7絶縁物=100:0.6(体積比))を熱風乾燥させた。この熱風乾燥させた混合物を目視により観察した結果を表3に示す。
表3に示した結果から明らかなように、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物またはそれに樹脂を配合したものを凍結乾燥させた場合(実施例B1〜B2)には、それらを熱風乾燥させた場合(参考例B1〜B2)に比べて繊維状炭素系材料絶縁物の凝集が抑制されることが確認された。また、繊維状炭素系材料絶縁物に樹脂やフィラーを配合したものを凍結乾燥(実施例B2〜B3)または熱風乾燥(参考例B2〜B3)させた場合には、繊維状炭素系材料絶縁物を凍結乾燥(実施例B1)または熱風乾燥(参考例B1)させた場合に比べて繊維状炭素系材料絶縁物の凝集が抑制されることが確認された。
(実施例B4)
実施例B1で得たMWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品約0.42gと、PA6パウダー22.58gとを混合し、単軸スクリュー連続混練押出機(CSI社製「MINI−MAX」)を用いて設定温度260℃、吐出量約2ml/分、スクリュー回転数100rpmの条件で混練してPA6組成物を調製した。得られたPA6組成物を250℃、圧力2MPa、成形時間5分間の条件でフィルム状(約100μm厚)にプレス成形した。得られたフィルムを光に透かして目視によりMWNT−7絶縁物の分散状態を観察した。その結果を表4に示す。
(参考例B4)
MWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品の代わりに参考例B1で得たMWNT−7絶縁物(チタニア層)の熱風乾燥品約0.42gを用いた以外は実施例B4と同様にしてフィルムを作製し、MWNT−7絶縁物の分散状態を目視により観察した。その結果を表4に示す。
(実施例B5)
MWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品とPA6との混合物の代わりに実施例B2で得た凍結乾燥混合物(MWNT−7絶縁物(チタニア層)+PA6)を用いた以外は実施例B4と同様にしてフィルムを作製し、MWNT−7絶縁物の分散状態を目視により観察した。その結果を表4に示す。
(参考例B5)
凍結乾燥混合物(MWNT−7絶縁物(チタニア層)+PA6)の代わりに参考例B2で得た熱風乾燥混合物(MWNT−7絶縁物(チタニア層)+PA6)を用いた以外は実施例B4と同様にしてフィルムを作製し、MWNT−7絶縁物の分散状態を目視により観察した。その結果を表4に示す。
(実施例B6)
MWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品とPA6との混合物の代わりに実施例B3で得た凍結乾燥混合物(MWNT−7絶縁物(チタニア層)+PA6+アルミナ)を用いた以外は実施例B4と同様にしてフィルムを作製し、MWNT−7絶縁物の分散状態を目視により観察した。その結果を表4に示す。
(参考例B6)
凍結乾燥混合物(MWNT−7絶縁物(チタニア層)+PA6+アルミナ)の代わりに参考例B3で得た熱風乾燥混合物(MWNT−7絶縁物(チタニア層)+PA6+アルミナ)を用いた以外は実施例B4と同様にしてフィルムを作製し、MWNT−7絶縁物の分散状態を目視により観察した。その結果を表4に示す。
表4に示した結果から明らかなように、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物またはそれに樹脂やフィラーを配合したものを凍結乾燥させた場合(実施例B4〜B6)には、それらを熱風乾燥させた場合(参考例B4〜B6)に比べて樹脂中において繊維状炭素系材料絶縁物の分散性が向上することが確認された。また、繊維状炭素系材料絶縁物に樹脂やフィラーを配合したものを凍結乾燥(実施例B5〜B6)または熱風乾燥(参考例B5〜B6)させた場合には、繊維状炭素系材料絶縁物を凍結乾燥(実施例B4)または熱風乾燥(参考例B4)させた場合に比べて樹脂中において繊維状炭素系材料絶縁物の分散性が向上することが確認された。
(実施例C1)
エポキシ樹脂99.5質量部と実施例B1と同様にして得たMWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品0.5質量部とを、真空式自公転ミキサー(シンキー社製「ARV−200AJ」)を用いて自転100rpm、公転2000rpm、真空度5torr、攪拌時間10分間の条件で混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を、温度150℃、圧力2MPa、成形時間20分間の条件でプレス成形してエポキシ樹脂複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。さらに、このエポキシ樹脂複合材を、150℃に加熱した熱風乾燥機中に5時間放置して2次硬化処理を施した。
得られたエポキシ樹脂複合材について前記測定法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表5に示す。
(実施例C2)
実施例A2で得たMWNT−7絶縁物(チタニア層)の代わりに実施例A3で得たMWNT−7絶縁物(サポナイト層)を用いた以外は実施例B1と同様にして前記MWNT−7絶縁物(サポナイト層)を凍結乾燥させた。
MWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品の代わりに前記MWNT−7絶縁物(サポナイト層)の凍結乾燥品0.5質量部を用いた以外は実施例C1と同様にしてエポキシ樹脂複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたエポキシ樹脂複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表5に示す。
(比較例C1)
MWNT−7絶縁物を用いなかった以外は実施例C1と同様にしてエポキシ樹脂成形体(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたエポキシ樹脂成形体について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表5に示す。
(比較例C2〜C3)
MWNT−7絶縁物(チタニア層)の凍結乾燥品の代わりに表5に示す量のMWNT−7を用いた以外は実施例C1と同様にしてエポキシ樹脂複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたエポキシ樹脂複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表5に示す。
表5に示した結果から明らかなように、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を含むエポキシ樹脂複合材(実施例C1〜C2)は、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を含まないエポキシ樹脂成形体(比較例C1)に比べて熱伝導率に優れたものであり、繊維状炭素系材料を含むエポキシ樹脂複合材(比較例C2〜C3)に比べて体積抵抗率および絶縁破壊電圧が高く、絶縁性に優れたものであることが確認された。
(実施例D1)
図2〜図5に示すフローチャートに従って表6に示す絶縁処理条件でXN−100−15Mに2回の絶縁処理を施し、1層のPSS層と、交互に2層ずつ配置されたPDADMAC層およびシリカ層とを備えるXN−100−15M絶縁物を製造した。以下に具体的な製造方法を示す。
<1回目の絶縁処理>
(アニオン処理工程)
図3に示すように、先ず、PSS水溶液(100g)にXN−100−15M(15g)を添加し、マグネチックスターラー(300rpm)で20分間攪拌してPSSが付着したXN−100−15Mの水分散液を得た。その後、この水分散液に遠心分離(12000rpm、30分間)を施した。
次いで、前記遠心分離により得た固形分を水(300g)に添加した後、遠心分離(12000rpm、30分間)を施した。この操作を合計3回実施し、PSSが付着したXN−100−15Mを回収した。
(カチオン処理工程)
次に、図4に示すように、このPSSが付着したXN−100−15Mを調製例1で得たPDADMAC水溶液(100g)に添加し、マグネチックスターラー(300rpm)で20分間攪拌してPSSが付着したXN−100−15Mの水分散液を得た。その後、この水分散液に遠心分離(12000rpm、30分間)を施した。
次いで、前記遠心分離により得た固形分を水(300g)に添加した後、遠心分離(12000rpm、30分間)を施した。この操作を合計3回実施し、PDADMAC層を備えるXN−100−15Mを回収した。
(酸化物処理工程)
次に、このPDADMAC層を備えるXN−100−15Mを調製例3で得たシリカ水分散液(100g)に添加し、マグネチックスターラー(300rpm)で20分間攪拌してPDADMAC層とシリカ層とを備えるXN−100−15M絶縁物の水分散液を得た。その後、この水分散液に遠心分離(12000rpm、30分間)を施した。
次いで、前記遠心分離により得た固形分を水(300g)に添加した後、遠心分離(12000rpm、30分間)を施した。この操作を合計3回実施した後、固形分を水(300g)に分散させた。その後、この水分散液を減圧濾過(Whatman濾紙#40)して水および遊離シリカを除去し、濾紙上にXN−100−15M絶縁物を回収した。
<2回目の絶縁処理>
次に、前記濾紙上のXN−100−15M絶縁物を回収し、前記XN−100−15Mの代わりにこのXN−100−15M絶縁物を用い、アニオン処理を施さなかった以外は上記と同様にして、前記XN−100−15M絶縁物上にPDADMAC層およびシリカ層を順次形成した(2回目の絶縁処理)。
この合計2回の絶縁処理を施したXN−100−15M絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図11に示す。
<PA6複合材の作製>
40質量部(25.5体積%換算)の前記XN−100−15M絶縁物(絶縁処理2回)と60質量部のナイロン6とを、単軸スクリュー連続混練押出機(CSI社製「NINI−MAX」)を用いて設定温度260℃、吐出量約2ml/分、スクリュー回転数100rpmの条件で混練し、PA6組成物を調製した。このPA6組成物を、温度250℃、圧力2MPa、成形時間5分間の条件でプレス成形してPA6複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたPA6複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表6に示す。
(実施例D2)
絶縁処理回数を合計3回に変更し、3回目の絶縁処理を2回目の絶縁処理と同様に実施した以外は実施例D1と同様にして、1層のPSS層と、交互に3層ずつ配置されたPDADMAC層およびシリカ層とを備えるXN−100−15M絶縁物を製造した。この合計3回の絶縁処理を施したXN−100−15M絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図12に示す。
XN−100−15M絶縁物(絶縁処理2回)の代わりに40質量部(25.5体積%換算)の前記XN−100−15M絶縁物(絶縁処理3回)を用いた以外は実施例D1と同様にして、PA6複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたPA6複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表6に示す。
(実施例D3)
絶縁処理回数を合計5回に変更し、3〜5回目の絶縁処理を2回目の絶縁処理と同様に実施した以外は実施例D1と同様にして、1層のPSS層と、交互に5層ずつ配置されたPDADMAC層およびシリカ層とを備えるXN−100−15M絶縁物を製造した。この合計5回の絶縁処理を施したXN−100−15M絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図13に示す。
XN−100−15M絶縁物(絶縁処理2回)の代わりに40質量部(25.5体積%換算)の前記XN−100−15M絶縁物(絶縁処理5回)を用いた以外は実施例D1と同様にして、PA6複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたPA6複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表6に示す。
(実施例D4)
絶縁処理回数を合計10回に変更し、3〜10回目の絶縁処理を2回目の絶縁処理と同様に実施した以外は実施例D1と同様にして、1層のPSS層と、交互に10層ずつ配置されたPDADMAC層およびシリカ層とを備えるXN−100−15M絶縁物を製造した。この合計10回の絶縁処理を施した前記XN−100−15M絶縁物の表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した。その結果を図14に示す。
XN−100−15M絶縁物(絶縁処理2回)の代わりに40質量部(25.5体積%換算)の前記XN−100−15M絶縁物(絶縁処理10回)を用いた以外は実施例D1と同様にして、PA6複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたPA6複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表6に示す。
(比較例D1)
XN−100−15M絶縁物を用いなかった以外は実施例D1と同様にしてPA6成形体(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたPA6成形体について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表7に示す。
(比較例D2)
XN−100−15M絶縁物(絶縁処理2回)の代わりに40質量部(25.5体積%換算)のXN−100−15Mを用いた以外は実施例D1と同様にしてPA6複合材(80mm×80mm×3mm)を作製した。得られたPA6複合材について前記測定方法に従って体積抵抗率、絶縁破壊電圧および熱伝導率を測定した。その結果を表7に示す。なお、XN−100−15Mの表面を走査電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−3600N」)を用いて観察した結果を図15に示す。
図11〜14に示した結果から明らかなように、絶縁処理によりカーボンファイバー表面に均一な絶縁被膜が形成され、絶縁処理回数の増加に伴って絶縁被膜が厚くなる傾向が確認された。
表6〜7に示した結果から明らかなように、本発明のカーボンファイバー絶縁物を用いた場合(実施例D1〜D4)には、樹脂複合材は体積抵抗率が高いものであり、絶縁処理回数の増加とともに高くなる傾向にあった。また、絶縁破壊電圧も高くなる傾向にあり、絶縁性に優れたものであることが確認された。一方、絶縁処理を施していないカーボンファイバーを用いた場合(比較例D2)には、樹脂複合材は、体積抵抗率が低く、絶縁性に劣るものであった。
また、本発明のカーボンファイバー絶縁物を用いた樹脂複合材(実施例D1〜D4)は、絶縁処理を施していないカーボンファイバーを用いた場合(比較例D2)と同等の熱伝導率を維持していることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、交互吸着法により繊維状炭素系材料の表面に絶縁被膜を形成することが可能となり、分散性に優れ、任意の絶縁レベルの繊維状炭素系材料絶縁物を製造することができる。
したがって、本発明の繊維状炭素系材料絶縁物を含む樹脂複合材は、絶縁性が高く且つ熱伝導率が少なくとも維持されたものであるため、プリント基板用樹脂、電気・電子部品の筐体、コイル封止材、モーター用材料、ラジエーターに代表される熱交換器用部品などとして有用である。
参考例1で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例2で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例3で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例5で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例6で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例7で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例8で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例9で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 参考例10で得た繊維状炭素系材料のスラリー(コロイド)を示す写真である。 本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法におけるアニオン処理方法の一例を示す工程図である。 本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法におけるカチオン処理方法の一例を示す工程図である。 本発明の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法における酸化物処理方法の一例を示す工程図である。 実施例A1で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例A1で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例A2で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例A2で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例A3で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例A3で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例A1で得たカーボンナノチューブの表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例A1で得たカーボンナノチューブの表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例A2で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例A2で得たカーボンナノチューブ絶縁物の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例D1で得たカーボンファイバー絶縁物(絶縁処理2回)の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例D2で得たカーボンファイバー絶縁物(絶縁処理3回)の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例D3で得たカーボンファイバー絶縁物(絶縁処理5回)の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例D4で得たカーボンファイバー絶縁物(絶縁処理10回)の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例D2で使用したカーボンファイバーの表面状態を示す電子顕微鏡写真である。

Claims (10)

  1. 繊維状炭素系材料と前記繊維状炭素系材料上に形成された絶縁被膜とを備える繊維状炭素系材料絶縁物であって、
    前記絶縁被膜が、前記繊維状炭素系材料上に形成されたカチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層と、前記カチオン性ポリマー層上に形成された金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層とを備えるものであることを特徴とする繊維状炭素系材料絶縁物。
  2. 前記絶縁被膜が、前記繊維状炭素系材料上に形成されたアニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層をさらに備えるものであり、
    前記カチオン性ポリマー層が前記アニオン性ポリマー層上に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の繊維状炭素系材料絶縁物。
  3. 前記絶縁被膜が、2層以上のカチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層と2層以上の金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層とを備えるものであり、且つ前記カチオン性ポリマー層と前記酸化物層とが交互に配置されているものである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維状炭素系材料絶縁物。
  4. 前記絶縁被膜が、前記酸化物層上に形成されたアニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層をさらに備えるものであり、
    前記カチオン性ポリマー層が前記アニオン性ポリマー層上に形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の繊維状炭素系材料絶縁物。
  5. 前記繊維状炭素系材料がカーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の繊維状炭素系材料絶縁物。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の繊維状炭素系材料絶縁物と樹脂とを含有することを特徴とする樹脂複合材。
  7. カチオン性高分子電解質を含む溶液と繊維状炭素系材料とを混合し、前記繊維状炭素系材料上に前記カチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層を形成する工程と、
    前記カチオン性ポリマー層を備える繊維状炭素系材料と、負に帯電した金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む溶液とを混合し、前記カチオン性ポリマー層上に前記金属酸化物および前記ケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法。
  8. さらに、前記カチオン性ポリマー層形成工程の前に、前記繊維状炭素系材料とアニオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、該繊維状炭素系材料上に前記アニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法。
  9. 金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、カチオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、前記酸化物層上に前記カチオン性高分子電解質を含むカチオン性ポリマー層を形成する工程と、
    前記工程で形成したカチオン性ポリマー層を備える繊維状炭素系材料絶縁物と、負に帯電した金属酸化物およびケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む溶液とを混合し、前記カチオン性ポリマー層上に前記金属酸化物および前記ケイ素酸化物のうちの少なくとも1種を含む酸化物層を形成する工程と、
    をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法。
  10. さらに、前記カチオン性ポリマー層形成工程の前に、前記酸化物層を備える繊維状炭素系材料絶縁物とアニオン性高分子電解質を含む溶液とを混合し、該酸化物層上に前記アニオン性高分子電解質を含むアニオン性ポリマー層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の繊維状炭素系材料絶縁物の製造方法。
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