以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。例えば、非分岐型シース40−1は、右腋窩動脈でなく上腕動脈に挿入してもよい。
図1および図2に、本発明の薬剤灌流方法を、骨盤内悪性腫瘍が傍大動脈リンパ節に転移したケースにおいて適用した実施形態を示す。図1は本発明の実施例に係る血管分岐の概要およびカテーテルの挿入位置を示す説明図である。図2は、図1の点線で示された領域を拡大して表示した説明図である。なお、発明の理解を容易にするために、血管や器具等に隠れたバルーンカテーテルを破線で表してある。
まず、大動脈周辺の主要な臓器および血管分岐について説明する。心臓1の左心室から出た血管は大動脈弓2をへて大動脈3へと続き、骨盤周辺で右総骨動脈と左総骨動脈に分岐している。右総骨動脈および左総骨動脈はそれぞれ右大腿動脈5および左大腿動脈6に連通している。
大動脈弓2は腕頭動脈7に分岐しており、腕頭動脈7は更に右鎖骨下動脈8および右総頚動脈に分岐している。右鎖骨下動脈8は更に第一肋骨外側で右腋窩動脈9へ移行している。腕頭動脈7との分岐部の下流において、大動脈弓2は更に左鎖骨下動脈10へと分岐しており、左鎖骨下動脈10は更に第一肋骨外側で左腋窩動脈11へ移行している。
大動脈3は途中で腹腔動脈12に分岐しており、腹腔動脈12は更に、胃冠状動脈13,総肝動脈14および脾動脈15に分岐している。胃冠状動脈13,総肝動脈14および脾動脈15はそれぞれ胃16,肝臓17および脾臓18へ連通している。
腹腔動脈12との上記分岐部の下流において、大動脈3は更に上腸間膜動脈19へと分岐しており、小腸(図示せず)へと連通している。上腸間膜動脈19との上記分岐部の下流において、大動脈3は更に右腎動脈20および左腎動脈21へと分岐しており、それぞれ右腎臓22および左腎臓23へと連通している。また、右腎動脈20及び左腎動脈21との上記分岐部の下流において、大動脈3は更に下腸間膜動脈24へと分岐しており、後腸(図示せず)へと連通している。
総肝動脈14および上腸間膜動脈19間には、第一の側副路29aが存在する。また、上腸間膜動脈19および下腸間膜動脈24間には、第二の側副路29bが存在する。
右腎動脈20および左腎動脈21の分岐部下流において、大動脈3から第一から第四の腰動脈が左右にそれぞれ4本ずつ分岐しており、それぞれの先端は第一から第四の傍大動脈リンパ節26aに注いでいる。右大腿動脈5および左大腿動脈6の交差部からは正中仙骨動脈3aが分岐しており、正中仙骨動脈3aからは更に第五の腰動脈が左右に分岐している。左右の第五腰動脈の先端はそれぞれ第五の傍大動脈リンパ節26bに連通している。図1では、第一から第五までの腰動脈を符号25で示している。また、第一から第五までの傍大動脈リンパ節を符号26で示している。
動脈は、各臓器や組織の中で毛細血管となり、臓器や細胞に栄養や酸素を供給する。栄養や酸素を供給した血液は老廃物と二酸化炭素を受け取り、再び毛細血管に戻る。毛細血管は集合して静脈となる。
右下肢の右大腿静脈27と左下肢の左大腿静脈28は腹部において合流し、下大静脈4となる。下大静脈4は下流において心臓の右心房に連通している。
患者は、傍大動脈リンパ節26内に腫瘍を有している。傍大動脈リンパ節腫瘍の原発巣としては、例えば、膀胱癌や子宮癌などの骨盤内悪性腫瘍がある。膀胱癌は、表面に覆われた伸縮性に富む移行上皮が癌化することによって引き起こされる。膀胱癌は膀胱内に発生する傾向があるが、尿の流れの上流である尿管や腎盂にも同様の病変が存在している場合もある。子宮癌には、子宮肉腫、子宮頸部癌、子宮内膜癌などがある。骨盤内悪性腫瘍が進行すると、膀胱や子宮周辺のリンパ管や血管を通じて腫瘍細胞が傍大動脈リンパ節へ転移することがある。
次に、本発明に使用されるシースイントロデューサ、シースおよびカテーテルについて図3ないし図8を用いて説明する。
図3および図4に、本発明にかかる非分岐型イントロデューサ30の構成を示す。図3は本発明の実施例に係る非分岐型イントロデューサ30の外観図である。また、図4は本発明の実施例に係る非分岐型シース40の縦断面図である。
非分岐型イントロデューサ30は、バルーンカテーテルを血管内に経皮的に挿入する際に血管内への案内として用いられる器具である。非分岐型イントロデューサ30は、非分岐型シース40と、ダイレータ50と、ガイドワイヤ60とを主要な構成要素として備えている。
非分岐型シース40は、管状体41と、後端部42とを主要な構成要素として備えている。管状体41と後端部42は接着剤や熱融着など公知の手法を用いて連結されている。
管状体41は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる可撓性もしくは剛性の管状部材である。管状体41内には、管状体41の一端から他端まで連通する挿通路が備えられている。管状体41の一端は、シース挿入方向に向かって先端部が縮径している。これにより、管状体41とダイレータ50との間で段差が生じず、非分岐型イントロデューサ30の血管への導入がスムーズになる。
後端部42は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる可撓性もしくは剛性の円筒状部材である。後端部42は、管状体41の後端に取り付けられている。後端部42内には、管状体41の挿通路と連通する挿通路が備えられている。図4では、管状体41の挿通路と後端部42の挿通路とで形成される挿通路を挿通路45として符号を付してある。
後端部42内には、合成ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料からなる止血弁43が備えられている。止血弁43は、その外周部が後端部42と蓋部材44によって挟持されることにより後端部42内に固定されている。蓋部材44には、ダイレータ後端部50aに設けられた螺合片(不図示)と螺合するための螺旋状の切れ込み44aが設けられている。
止血弁43の中心部には、止血弁43の一方の端面から他方の端面へ連通する小孔43aが設けられている。ダイレータやバルーンカテーテルは、小孔43aを貫通して挿通路45内へ挿入される。
後端部42の側面には突出部42aが設けられている。突出部42aの内部には、突出部42aの先端から挿通路45まで連通するサイドポート46が設けられている。突出部42aには可撓性を有するチューブ47が装着されており、チューブ47の他端には三方活弁48が装着されている。
三方活弁48は複数のポートを備えている。三方活弁48には、切換弁48aが設けられており、チューブ47へ連通するポートをこの切換弁により切り替えることができる。三方活弁48のポートには送液ポンプや脱液ポンプを接続することができる。送液ポンプから送られる薬液等は、三方活弁48を通じてチューブ47,サイドポート46,挿通路45に順次流入して、生体内に送液される。また、生体内の体液等は、脱液ポンプの作用により、挿通路45,チューブ47,三方活弁48に順次流入して、生体外へ脱液される。
ダイレータ50は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる可撓性の棒状部材である。ダイレータ50は、血管内に非分岐型イントロデューサ30を挿入する際に、管状体41がキンクするのを防止するために使用される。ダイレータ50内には、先端側から後端側まで連通する管路(図示せず)が設けられている。この管路にはガイドワイヤ60を挿通することができる。
ダイレータ50は、止血弁43の小孔43aを貫通して非分岐型シース40の挿通路45内に導入される。ダイレータ50の先端部は非分岐型シース40の先端部より突出している。また、ダイレータ50の後端部は蓋部材44の切れ込み44aと螺合するように構成されている。これにより、非分岐型イントロデューサ30を血管内に導入する際にダイレータ50がずれるのが防止される。
ガイドワイヤ60は、ダイレータ50の先端部を目的位置まで導くための部材である。ガイドワイヤ60は、ステンレスやニッケルチタン系合金等の材料で構成、紐状をしている。ガイドワイヤ60はダイレータ50の管路(図示せず)内に挿通される。ガイドワイヤ60の先端部はダイレータ50の先端部より突出しており、ガイドワイヤ60の後端部はダイレータ50の後端部より突出している。
図5および図6に、三又型イントロデューサ31の構成を示す。図5は本発明の実施例に係る三又型イントロデューサ31の外観図である。また、図6は本発明の実施例に係る三又型シース70の縦断面図である。
三又型イントロデューサ31は、バルーンカテーテルを血管内に経皮的に挿入する際に、血管内への案内として用いられる器具である。三又型イントロデューサ31は、三又型シース70と、ダイレータ50と、ガイドワイヤ60とを主要な構成要素として備えている。なお、ダイレータ50およびガイドワイヤ60は、上述した非分岐型イントロデューサ30で使用するダイレータ50およびガイドワイヤ60と同一のものを使用することができる。
三又型シース70は、管状体71と、第一の分岐コネクタ72と、第二の分岐コネクタ81と、第一の後端部73と、第二の後端部82と、第三の後端部90とを備える。
管状体71はPTFEからなる可撓性もしくは剛性部材である。管状体71は、長さ300mm、直径5mmの管状部材であり、一端から他端まで連通する挿通路96を備える。この挿通路96は本発明の第一の挿通路に相当する。管状体71の一端は、シース挿入方向に向かって先端部が縮径している。これにより、管状体71とダイレータ50との間で段差が生じず、三又型イントロデューサ31の血管への導入がスムーズになる。
第一の分岐コネクタ72はPTFE等の材料からなる可撓性もしくは剛性部材で形成される。第一の分岐コネクタ72は、円筒形をした主管72aと、主管72aから分岐する分岐管72bからなる。
主管72aは、長さ25mm,直径6mmの円筒形をしており、一端から他端まで連通する挿通路76を備えている。この挿通路76は本発明の第二の挿通路に相当する。主管72aの一端は、接着など公知の手法を用いて管状体71の端部と接続している。主管72aの挿通路76は管状体71の挿通路96と直結している。主管72aの他端は、第二の分岐コネクタ81の主管81aと接続している。主管72aからは、管状体71との連結端から約8mmの地点において内角約30°で分岐管72bが分岐している。
分岐管72bは、長さ15mm,直径6mmの円筒形をしており、その端部から挿通路76まで連通する挿通路77を有している。この挿通路77は本発明の第三の挿通路に相当する。分岐管72bの開放端には後端部73が連結している。後端部73内には、合成ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料からなる止血弁74が備えられており、その外周部が後端部73と蓋部材75によって挟持されることにより後端部73内に固定されている。止血弁74の中心部は、一方の端面から他方の端面へ連通する小孔74aが設けられている。バルーンカテーテルは、小孔74aを貫通して、挿通路77,76,96内へ順次挿入される。この挿通路77,76,96により構成される通路は、本発明の第二のカテーテル挿通路に相当する。
後端部73の側面には、突出部73aが備えられている。突出部73aの内部には、突出部73aの先端から挿通路77まで連通するサイドポート78が設けられている。
第二の分岐コネクタ81はPTFEからなる可撓性もしくは剛性部材で形成される。第二の分岐コネクタ81は、上述の第一の分岐コネクタ72と同一のものであり、円筒形をした主管81aと、主管81aから分岐する分岐管81bを備える。
主管81aは、長さ25mm、直径6mmの円筒形をしており、一端から他端まで連通する挿通路85を備えている。この挿通路85は本発明の第四の挿通路に相当する。主管81aの一端は、接着などの公知の手法を用いて第一の分岐コネクタ72の主管72aの一端と接続している。主管81aの挿通路85は第一の分岐コネクタ72の挿通路76と直結している。主管81aの他端は、後端部90と接続している。主管81aからは、第一の分岐コネクタ72との連結端から約8mmの地点において内角約30°で分岐管81bが分岐している。
分岐管81bは、長さ15mm、直径6mmの円筒形をしており、端部から挿通路85まで連通する挿通路86を有している。この挿通路86は本発明の第五の挿通路に相当する。分岐管81bの開放端には後端部82が連結している。後端部82内には、合成ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料からなる止血弁83が備えられている。止血弁83は、その外周部が後端部82と蓋部材84によって挟持されることにより後端部82内に固定されている。止血弁83の中心部は、一方の端面から他方の端面へ連通する小孔83aが設けられている。バルーンカテーテルは、小孔83aを貫通して、挿通路86,85,76,96内へ順次挿入される。この挿通路86,85,76,96により構成される通路は、本発明の第三のカテーテル挿通路に相当する。
後端部82の側面には、突出部82aが備えられており、突出部82aの先端から挿通路86に連通するサイドポート87が設けられている。
主管81aの他端には後端部90が備えられている。後端部90内には、合成ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料からなる止血弁91が備えられている。止血弁91は、その外周部が後端部90と蓋部材92によって挟持されることにより後端部90内に固定されている。蓋部材92には、ダイレータ後端部50aに設けられた螺合片(不図示)と螺合するための螺旋状の切れ込み92aが設けられている。止血弁91の中心部は、一方の端面から他方の端面へ連通する小孔91aを有している。ダイレータやバルーンカテーテルは、小孔91aを貫通して挿通路85,76,96内へ順次挿入される。この挿通路85,76,96により構成される通路は、本発明の第一のカテーテル挿通路に相当する。
後端部90の側面には、突出部90aが備えられている。突出部90aには、その先端から挿通路85まで連通するサイドポート93が設けられている。
突出部73a,82a,90aには可撓性を有するチューブ79,88,94がそれぞれ装着されている。チューブ79,88,94の他端には三方活弁80,89,95がそれぞれ装着されている。三方活弁は複数のポートを備えており、それぞれのチューブおよびサイドポートを通して挿通路96内に生理的食塩水等を注入したり、体液等を排出したりすることが可能となる。
第二の分岐コネクタ81は、好ましくは第一の分岐コネクタ72と同じものが用いられる。これらの分岐コネクタは、いずれも二又用のカテーテルシースのコネクタとして使用されるものである。このように、二又用のコネクタ部材をそのまま三又用のコネクタとして転用することができる態様としたことで、三又用として新たなコネクタを設計する必要が無く、低コストで三又用シースを製造することができる。なお、二又用の分岐コネクタを3つ以上連結することにより、四又以上のシースを製造することも可能である。
また、上記のように第一の分岐コネクタ72と第二の分岐コネクタ81とを連結した構成としたことで、挿通路76と挿通路77の分岐部と、挿通路85と挿通路86の分岐部とは、一定距離だけ離間した位置に存在することとなる。このように、二つの分岐路の分岐部を離間したことで、一方のコネクタの分岐管からバルーンカテーテルを挿入したとき、他のコネクタの分岐部にバルーンカテーテルの先端部が引っかかるという問題が発生しにくくなり、バルーンカテーテルの挿入をスムーズに行うことができる。
更に、図5に示すように、第一の分岐コネクタ72の分岐管内に位置する挿通路77の通路方向の軸Aと、第二の分岐コネクタ81の分岐管内に位置する挿通路86の通路方向の軸Bと、挿通路85,76,96により構成される通路方向の軸Cとが、互いに同一平面上にはない位置関係となる。このように、互いに同一平面上にない位置関係に分岐管を設けたことで、例えば第二の分岐コネクタ81の分岐管からバルーンカテーテルが挿入されたとき、バルーンカテーテルの先端部が第一の分岐コネクタ72の分岐部に入り込んで分岐部を塞いでしまうという不都合を防止することができる。
次に、本発明に用いるバルーンカテーテルについて説明する。本発明に係る実施例では、3種類のバルーンカテーテルを使用している。
図7に、本発明の実施例に係るバルーンカテーテル32の縦断面図を示す。バルーンカテーテル32は、本発明に係る実施例において使用される第一のバルーンカテーテルである。バルーンカテーテル32は、基部101と、後端部102と、分岐管102bと、バルーン104と、先端コイルマーカ105と、管路108と、管腔路106と、シリンジ109aと、プランジャ109bとを主要な構成要素として備えている。
基部101はポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル等の樹脂で構成された可撓性部材である。基部101内には管路108が設けられている。管路108は、後端部102の後端からバルーン104中央部のバルーン拡張孔103まで連通している。後端部102には生理食塩水等の液体(不図示)を封入したシリンジ109aが接続され、シリンジ109aのプランジャ109bを術者が加圧することで液体が管路108およびバルーン拡張孔103を通じてバルーン104の内腔に流入する。
バルーン104は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル等の樹脂で形成された可撓性部材である。バルーン104は基部101よりも柔らかい材料で形成されている。また、バルーン104の壁面は基部101の壁面よりも薄く形成されている。このため、バルーン内腔に液体が流入すると、バルーン104は風船のように拡張する。拡張したバルーン104が血管内壁に密着することで、血管内で血流が遮断される。
基部101内には更に管腔路106が備えられている。管腔路106は、後端部102の 大径部102aから分岐する分岐管102bの後端から側孔107まで連通している。側孔107はバルーン104よりも先端部の基部101に設けられている。このため、バルーン104を拡張して血管を閉塞した後でも、バルーン閉塞部の先端部側の領域に、管腔路106を通じて薬液等を送液することが可能となる。
分岐管102bの末端には、薬液等を封入したシリンジや送液ポンプ等(不図示)を接続することができる。これにより、管腔路106を通じて側孔107から血流遮断部の先端部側の血管へ薬剤等を送液することができる。
先端コイルマーカ105は、チタン等のX線不透過性材料からなる部材である。先端コイルマーカ105は、X線透視下によるインターベンションを行う際に、バルーンカテーテル32先端部の位置を術者が把握することができるようマーカの役割を果たす。先端コイルマーカ105を備えることで、X線透視下にて血管造影を行う際に、先端コイルマーカ105の位置を確認しながら、バルーン104を目的部位まで選択的に誘導することができる。
図8に、本発明の実施例に係るバルーンカテーテル33の縦断面図を示す。バルーンカテーテル33は、本発明に係る実施例において使用される第二のバルーンカテーテルである。バルーンカテーテル33は、基部111と、後端部112と、分岐管112bと、拡張可能なバルーン114と、先端コイルマーカ115と、管路118と、管腔路116と、シリンジ119aと、プランジャ119bとを備える。
基部111,後端部112,大径部112aから分岐する分岐管112b,バルーン拡張孔113,バルーン114,先端コイルマーカ115,管路118は、シリンジ119aと、プランジャ119bとバルーンカテーテル32における基部101,後端部102,分岐管102b,バルーン拡張孔103,バルーン104,先端コイルマーカ105,管路108,シリンジ109a,プランジャ109bとほぼ同じ構成をしている。
バルーンカテーテル32とバルーンカテーテル33との相違点は、基部111に設けられた側孔117の位置にある。すなわち、基部111内には管腔路116が設けられており、管腔路116は分岐管112bの後端から側孔117まで連通している。側孔117はバルーン114よりも後端部の基部111に設けられている。このため、バルーン114を拡張して血管を閉塞した後でも、バルーン閉塞部の後端部側の領域に管腔路116を通じて薬液等を送液したり、バルーン閉塞部の後端部側の領域から体液等を脱液したりすることが可能となる。
本発明に用いるバルーンカテーテル32および33は、医療において一般的に使用されているバルーンカテーテルとは異なり、基部内にバルーン拡張用の管路と薬液投与用の管腔路を備えている。このため、バルーンの拡張と薬液の投与を一つのバルーンカテーテルで同時に行うことができる。これにより、血管閉塞用のバルーンカテーテルと薬液投与用のカテーテルの2本のカテーテルを体内に挿入する必要が無く、患者への身体的負担を低減することが可能となる。
バルーンカテーテル34は、本発明に係る実施例において使用される第三のバルーンカテーテルである。本発明の実施例に係るバルーンカテーテル34は、上述のバルーンカテーテル32,33とは異なり、医療において一般的に使用されているバルーンカテーテルである。すなわち、バルーンカテーテル34は、基部,後端部,バルーンを有しているが、バルーンカテーテル32,33のように薬液投与用の管腔路を備えていない。
なお、本発明の実施形態におけるバルーンカテーテル32,33,34は、ガイドワイヤは使用せずに単体で血管内に挿入できるように構成されているが、ガイドワイヤを使用するオーバーワイヤタイプ、RXタイプ、モノレールタイプで構成されてもよい。
非分岐型イントロデューサ30,三又型イントロデューサ31およびバルーンカテーテル32,33,34の構成は上記の通りである。以下に、図1を参照して、イントロデューサを用いてバルーンカテーテルを血管内に挿入し、所定の位置で留置する工程について説明する。
本実施形態において、腹腔動脈12、上腸間膜動脈19、下腸間膜動脈24、右腎動脈20および左腎動脈21の閉塞には、図7に示されるタイプのバルーンカテーテル32が用いられる。これは、バルーンカテーテル32は、バルーン104の先端側に連通する管腔路106を備えているため、バルーン104を拡張した後に臓器側へ管腔路106を通じて酸素化された血液を送液することができるからである。
また、本実施形態において、大動脈3の閉塞には、図8に示されるタイプのバルーンカテーテル33が用いられる。これは、バルーンカテーテル33は、バルーン114の後端側に連通する管腔路116を備えているため、バルーン114を拡張した後に閉鎖血管側へ管腔路116を通じて造影剤などの薬液を送液することができるからである。
また、本実施形態に置いて、下大静脈4の閉塞には、バルーンカテーテル34が用いられる。バルーンカテーテル34は管腔路を備えておらず、単にバルーンを拡張して下大静脈4の血流を遮断するために用いられる。
バルーンカテーテル32,33,34は、非分岐型シース40または三又型シース70を介して生体内に導入される。以下に、バルーンカテーテル挿入用のシースを経皮的に生体内に導入する方法について述べる。
非分岐型シース40を挿入するには、まず挿入しようとする血管の位置する皮膚に局所麻酔を施す。麻酔が効いたことを確認した後、公知の穿刺針などを用いて皮膚のその位置に穿刺し、穿刺部から血管内にガイドワイヤ60を挿入して所定の位置で留置する。
次に、ガイドワイヤ60の後端側をダイレータ50の管路に通し、ガイドワイヤ60の後端部がダイレータ50の後端部から現れるまで、非分岐型イントロデューサ30の先端を経皮的に血管内に徐々に挿入してゆく。非分岐型シース40の管状体41が血管内の所定位置まで挿入されたら挿入動作を停止して、非分岐型シース40を留置する。
その後、ガイドワイヤ60を血管内から体外へ抜去する。続いて、後端部42に設けられた蓋部材44の切れ込み44aとダイレータ50の螺合片との係合を解除し、ダイレータ50を非分岐型シース40の挿通路45から体外へゆっくりと引き抜く。このようにして、非分岐型シース40の先端を経皮的に血管内に留置する。以上のような方法で、非分岐型シース40を血管内に挿入する。
図1には、非分岐型シース40を生体に挿入した状態が示されている。本実施形態において、非分岐型シース40は、右腋窩動脈9,左腋窩動脈11,左大腿動脈6,右大腿静脈27にそれぞれ挿入されている。図1において、これらの血管に挿入されている非分岐型シース40をそれぞれ符号40−1,40−2,40−3,40−4として示している。
ここで、非分岐型シース40−3については、のちに非分岐型シース40−3を通じて抗癌剤を投与するため、管状体41の先端部が腰動脈25の近傍に位置するよう、大動脈3内に配置する。
三又型イントロデューサ31を用いて三又型シース70を血管内に挿入する方法も非分岐型シース40を血管内に導入する場合と同様である。本実施形態では、三又型シース70は、右大腿動脈5から挿入されている。
次に、血管内に挿入した非分岐型シース40または三又型シース70を経由して、バルーンカテーテル32,33,34を血管内に導入し、所定の位置に留置する工程について説明する。
図1では、右腋窩動脈9及び左腋窩動脈11にそれぞれ挿入されている非分岐型シース40−1,40−2を経由して血管内に導入され、右腎動脈20,左腎動脈21に留置されているバルーンカテーテル32をそれぞれ符号32−1,32−2として示している。
また、右大腿動脈5に挿入されている三又型シース70を経由して血管内に導入され、腹腔動脈12、上腸間膜動脈19、下腸間膜動脈24に留置されているバルーンカテーテル32をそれぞれ符号32−3,32−4,32−5として示している。
バルーンカテーテル33は、左大腿動脈6に挿入されている非分岐型シース40−3を経由して血管内に導入され、大動脈3の所定の位置に留置されている。また、バルーンカテーテル34は、右大腿静脈27に挿入されている非分岐型シース40−4を経由して血管内に導入され、下大静脈4の所定の位置に留置されている。
以下に、バルーンカテーテル32−1を、右腋窩動脈9に挿入された非分岐型シース40−1を通じて血管内に挿入し、右腎動脈20内の所定の位置に留置する方法を述べる。
バルーンカテーテル32−1のバルーン104は最初、収縮した状態にある。バルーンカテーテル32−1の先端部は、非分岐型シース40−1の止血弁43に設けられた小孔43aを貫通して管状体41の挿通路45に導入され、右腋窩動脈9内へと挿入される。
術者は、X線透視下でX線画像を見ながらバルーンカテーテル32−1を操作し、その先端部が右腎動脈20内の所定の位置に来るよう誘導し、留置する。
バルーンカテーテル32−2を、左腋窩動脈11に挿入された非分岐型シース40−2を通じて血管内に挿入し、左腎動脈21内の所定の位置に留置する方法も上記と同様である。また、バルーンカテーテル32−3,32−4,32−5を、右大腿動脈5に挿入された三又型シース70を通じて血管内に挿入し、それぞれ腹腔動脈12,上腸間膜動脈19,下腸間膜動脈24内の所定の位置に留置する方法も上記と同様である。
バルーンカテーテル33を、左大腿動脈6に挿入された非分岐型シース40−3を通じて血管内に挿入し、大動脈3の所定の位置に留置する方法も上記と同様である。また、バルーンカテーテル34を、右大腿静脈27に挿入された非分岐型シース40−4を通じて血管内に挿入し、下大静脈4の所定の位置に留置する方法も上記と同様である。
それぞれのシースやバルーンカテーテルが挿入される位置は限定されないが、上述のように右腋窩動脈、左腋窩動脈、右大腿動脈、左大腿動脈、右大腿静脈等、異なる血管に配置されることが望ましい。これは、同一の血管から複数のシースやバルーンカテーテルが導入された場合には、既に留置済みのシースやカテーテルにより、後に挿入されるシースやカテーテルが挿通妨害を受けることがあるからである。また、狭小な血管内通路を複数のシースやカテーテルが通過することにより、患者に負担がかかったり、シースあるいはカテーテルの損傷を生じるおそれがあったりするからである。
また、三又型シース70が挿入される位置は、大腿動脈であることが望ましい。これは、三又型シースには三本のカテーテルが導入されるため、シースの直径が大きく、このため所定の径を有する大腿動脈から導入されることが好ましいからである。
同様に、バルーンカテーテル33が挿入される位置も、大腿動脈であることが望ましい。これは、バルーンカテーテル33は大動脈閉塞用であるため直径が大きく、このため所定の径を有する大腿動脈にシースを挿入することが好ましいからである。
次に、タニケットを下肢に装着する方法について述べる。図1では、右大腿部に装着されるタニケット35を符号35−1、左大腿部に装着されるタニケット35を符号35−2として示している。
タニケットは、膨張可能なチューブを内部に有する可撓性ベルトと、チューブに接続された加圧器具を主要な構成要素として備えている。タニケットを装着するには、可撓性ベルトを装着位置に巻きつけ、外れないように締結する。タニケット35−1の装着位置は、右大腿部における三又型シース70および非分岐型シース40−4の導入位置よりも下肢側である。また、タニケット35−2の装着位置は、左大腿部における非分岐型シース40−3の導入位置よりも下肢側である。
タニケット35−1は、図示しない加圧器具からタニケット内のチューブに空気もしくは液体を送り込むことで膨張する。これによりタニケット装着位置の血管が圧迫され、右側下肢動脈および右側下肢静脈における血流が遮断される。また、タニケット35−2についても同様で、タニケット35−2の膨張により左側下肢動脈および左側下肢静脈における血流が遮断される。
バルーンカテーテル32−1のバルーン104を、右腎動脈20内の所定の位置へ留置した後、シリンジ109aのプランジャ109bをコネクタ方向へ押し込み、シリンジ109a内の液体を基部101の管路108へ流入させる。管路108へ流入した液体は更にバルーン104内に流入し、バルーン104を拡張する。拡張したバルーン104は、その周囲が右腎動脈20の血管内部壁に密着し、この位置に血流遮断部を形成する。これにより、大動脈3から右腎臓22への薬剤流入が遮断される。
なお、バルーンカテーテル32−2のバルーン104を拡張し、左腎動脈21における血流を遮断する方法も同様である。これにより、大動脈3から左腎臓23への薬剤流入が遮断される。
また、バルーンカテーテル32−3のバルーン104を拡張し腹腔動脈12における血流を遮断する方法も同様である。これにより、大動脈3から胃16、肝臓17および脾臓18への薬剤流入が遮断される。
また、バルーンカテーテル32−4のバルーン104を拡張し上腸間膜動脈19における血流を遮断する方法も同様である。これにより、大動脈3から小腸への薬剤流入が遮断される。
また、バルーンカテーテル32−5のバルーン104を拡張し下腸間膜動脈24における血流を遮断する方法も同様である。これにより、大動脈3から後腸への薬剤流入が遮断される。
また、バルーンカテーテル33のバルーン114を拡張し大動脈3内の所定の位置における血流を遮断する方法も上記と同様である。これにより、大動脈3の下流から心臓や上肢への薬剤の逆流が防止される。
また、バルーンカテーテル34のバルーンを拡張し下大静脈4内の所定の位置における血流を遮断する方法も上記と同様である。これにより、大動脈3から上肢側下大静脈への薬剤流入が防止される。
上記の工程により、タニケット35−1,35−2と、バルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32―5,33,34のそれぞれのバルーン拡張領域で囲まれた領域に血流閉塞領域を生成することができる。
図9は本発明の実施例に係る薬剤灌流設備の構成を示す説明図である。以下に、上記手法で閉塞された大動脈内に薬剤を投与する方法を示す。本実施形態では、臓器を保護する目的で行われる臓器保護用灌流Aと、抗癌剤などの薬剤を投与する薬剤投与用灌流Bの二種類の灌流が行われる。
(臓器保護用灌流A)
本灌流は、上大静脈および下大静脈より脱血した静脈血を人工肺にて酸素化し、右腎動脈20,左腎動脈21,腹腔動脈12,上腸間膜動脈19,下腸間膜動脈24に送液している。これは、バルーン拡張により血流が遮断された臓器に対して酸素化血液を送液して、臓器の保護を行うためである。
灌流Aは、脱血用カニューレ121,122、脱液チューブ123、リザーバ124、ポンプ125、人工肺126、熱交換器127、フィルター128、送液チューブ129、およびバルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32−5より構成される。これらの構成要素により、図9中の点線で囲まれた酸素化血液灌流装置120が構成される。この酸素化血液灌流装置120は、本発明の酸素化血液供給装置に相当する。
脱血用カニューレ121,122は公知の手法で頚静脈より挿入され、それぞれ上大静脈および下大静脈内に留置される。静脈血はこれら2本のカニューレによって体外へ送出され、脱液チューブ123を通過してリザーバ124へ貯蔵される。脱血用カニューレ121,122とリザーバ124の間に流量センサなどを設けてもよい。リザーバ124に貯蔵された静脈血は、ポンプ125の働きにより人工肺126に送られる。ポンプ125にはローラポンプや遠心ポンプなど公知のポンプが用いられる。
人工肺126に送られた静脈血は、酸素および二酸化炭素のガス交換が行われ、酸素を多く含む酸素化血液となる。人工肺126では中空糸膜やフィルム膜等の膜を通してガス交換が行われる。人工肺126には熱交換器127が備えられている。熱交換器127は血液の温度を調整する働きをする。熱交換器127における温度の調整は、金属板などの熱伝導率の高い媒体を介して温水や冷水に血液を接触させることで行われる。
人工肺126でガス交換された酸素化血液はフィルター128でろ過されたのちに、動脈に戻される。フィルター128では、血液中に含まれる血栓や気泡などの異物が排除される。フィルター128を通過した酸素化血液は、送液チューブ129を通過してバルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32−5を通じて動脈内へ戻される。なお、図9には示していないが、バルーンカテーテル32−3,32−4,32−5は、図1に示すように、三又型シース70を介して体内に導入される。この三又方シース70も、本発明の送液手段を構成する。
バルーンカテーテル32−1へ戻された酸素化血液は、図1および図2に示すように、管腔路106を通じて右腎動脈20へ送られ、右腎臓22へ供給される。また、バルーンカテーテル32−2へ戻された酸素化血液は、管腔路106を通じて左腎動脈21へ送られ、左腎臓23へ供給される。
バルーンカテーテル32−3へ戻された酸素化血液は、管腔路106を通じて腹腔動脈12へ送られ、胃16,肝臓17および脾臓18へ供給される。バルーンカテーテル32−4へ戻された酸素化血液は、管腔路106を通じて上腸間膜動脈19へ送られ、小腸へ供給される。バルーンカテーテル32−5へ戻された酸素化血液は、管腔路106を通じて下腸間膜動脈24へ送られ、後腸へ供給される。
ここで、バルーンカテーテル32−3,32−4,32−5へ送られる酸素化血液については、いずれか1または2のバルーンカテーテルのみについて血液を送り、残りのバルーンカテーテルについては酸素化血液を送らない態様とすることもできる。
これは、図2に示すように、総肝動脈14と上腸間膜動脈19、および上腸間膜動脈19と下腸間膜動脈24との間には、それぞれ側副路29a,29bが連通しているため、腹腔動脈12,上腸間膜動脈19,下腸間膜動脈24の3つの動脈すべてに対して酸素化血液を送る必要は無く、いずれか1または2の動脈に送るだけで上記3つの動脈すべてについて酸素化血液を送ることができるからである。このような態様とすることで、上記3つの動脈すべてについて酸素化血液を送るという煩雑な操作を行う必要がなくなる。
特に、上腸間膜動脈19に挿入されたバルーンカテーテル32−4にのみ酸素化血液を送液する態様とすることが好ましい。これは、小腸は酸素不足による臓器の損傷が大きいため、小腸に連通する上腸間膜動脈19には優先的に酸素化血液を送液する必要がある。一方、その他の臓器は短時間脱血状態が継続しても損傷はそれほど大きくなく、側副路29a,29bから送られてくる酸素化血液で十分臓器を保護することが可能となるからである。
この場合、酸素化血液を送る必要のないバルーンカテーテルは、バルーンカテーテル32に示されるような管腔路を有するタイプのバルーンカテーテルである必要は無く、バルーンカテーテル34のように管腔路を有さない通常のタイプのバルーンカテーテルであってもよい。
図10は、本発明の実施例に係る灌流Aで使用される制御装置160の設定表示パネル161を示す説明図である。設定表示パネル161は、灌流Aに用いられる灌流装置の各設定を行い、動作状況を確認する画面であり、酸素化血液灌流設定表示162と、動作表示163と、運転・停止表示164と、酸素化血液送液キー165を備える。
酸素化血液灌流設定表示162は、酸素化血液の「送液速度設定」を表示する送液速度設定表示166と、「灌流時間設定」を表示する灌流時間設定表示167と、血液中の酸素飽和度(SO2)を設定する「酸素飽和度設定」を表示する酸素飽和度設定表示168を備える。
ファンクションキー169を押すことにより、送液速度設定表示166、灌流時間設定表示167、酸素飽和度設定表示168の順に、設定値を入力可能に切り換えることができる。また、アップキー170、ダウンキー171により設定値を連続的に変更することができる。
送液速度設定表示166、灌流時間設定表示167、酸素飽和度設定表示168の設定値に基づいた信号が図9の制御装置160に送信され、制御装置160は、所定時間にて所定量の血液等を灌流するように、ポンプ125を所定動作に駆動制御することができる。
また、手技中の任意な時間に、酸素化血液送液キー165を操作することにより、送液速度設定表示166の「送液速度設定」に基づいた信号が図9の制御装置160に送信され、制御装置160、ポンプ125を所定動作に駆動制御することができる。
なお、始動時には、運転・停止表示164を押すことにより、送液速度設定表示166の「送液速度設定」に基づいた信号が制御装置160に送信され、制御装置160は、ポンプ125を所定動作に駆動制御する。
動作表示163は、運転中の各動作状況を表示するものであり、運転・停止状態表示を行う運転・停止表示172と、送液した酸素化血液の総量を表示する送液総量表示173と、酸素飽和度を表示する酸素飽和度表示174と、残灌流時間を表示する残灌流時間表示175を備える。送液総量表示173の表示値は、流速センサなどによる測定値より算出される。
次に、制御装置160の動作について説明する。術者は、設定表示パネル161用いて、「送液速度設定」、「灌流時間設定」、「酸素飽和度設定」を行う。設定をした後、運転・停止表示164を押すことにより、図9の点線で囲まれた酸素化血液灌流装置120を稼動させる。すなわち、制御装置160は、酸素化血液灌流設定表示162による酸素化血液灌流設定に基づき、ポンプ125、人工肺126の駆動制御を行い始動する。また、このとき、運転・停止表示164は、「停止」から「運転」に切り換わる。
図9に示すように、はじめに、ポンプ125の吸引・吐出動作により、脱血用カニューレ121,122を通じて静脈血が脱液チューブ123に送液され、リザーバ124に貯蔵される。
リザーバ124に貯蔵された静脈血は、ポンプ125の動作により人工肺126に送られる。人工肺126では制御装置160の制御により静脈血の酸素化処理が行われる。人工肺126には溶存酸素センサが設けられており、制御装置160は、溶存酸素センサの測定値を元にして、酸素飽和度設定表示168で設定した酸素飽和度となるように人工肺の動作をフィードバック制御する。
酸素化された静脈血は、ポンプ125の吸引・吐出動作により送液チューブ129に送液される。酸素化血液は、フィルター128を通過して、送液ポンプの作用で所定の流速に調整されつつ、バルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32−5を介して体内へ送液される。
以上の酸素化血液灌流を所定時間行うと、制御装置160内の図示しないカウンタが作動し、制御装置160は、ポンプ125、人工肺126の動作を停止させる。また、このとき、運転・停止表示172は、「運転」から「停止」に切り換わる。
(薬剤投与用灌流B)
本灌流では、非分岐型シース40−3より抗癌剤を含む薬液を投与し、非分岐型シース40−4から抗癌剤を含む体液の回収を行っている。
灌流Bは、非分岐型シース40−3,非分岐型シース40−4,脱液チューブ131,脱液ポンプ132,リザーバ133,送液ポンプ134,送液チューブ135,薬剤送液器136,制御装置137,流速センサ138−1,流速センサ138−2,設定表示パネル139より構成される回路を循環する。これらの構成要素により、図9中の点線で囲まれた抗癌剤灌流装置130が構成される。ここで、抗癌剤灌流装置130は、本発明の薬剤投与装置に相当し、本発明の体液回収装置にも相当する。
非分岐型シース40−4の三方活弁48は脱液チューブ131に接続されている。脱液チューブ131はリザーバ133に接続されている。脱液チューブ131には流速センサ138−2および脱液ポンプ132が設けられている。
下大静脈の血液は、脱液ポンプ132の作用により吸引され、非分岐型シース40−4の挿通路45、サイドポート46、チューブ47、三方活弁48を順次通過して、脱液チューブ131に流入する。脱液チューブ131に流入した血液はリザーバ133に送られる。脱液ポンプ132としてはローラポンプや遠心ポンプなど公知のポンプが用いられる。
脱液チューブ131はリザーバ133に連結されており、リザーバ133は薬剤送液器136に連通している。薬剤送液器136は、脱液チューブ131内に抗癌剤を送液する装置であり、シリンジポンプから構成され、制御装置137により駆動制御される。
シリンジポンプは、ウォームギア構造もしくはボールネジ構造を有し、シリンジ本体を不動状態に保持しつつ、スライダを用いて前記シリンジの押し子を一定に押し込むことにより、前記シリンジに封入された薬液を一定量で吐出できるものである。リザーバ133内に貯蔵された抗癌剤は、送液ポンプ134の吸引・吐出動作により、体内に送液される。
また、薬剤送液器136と同様な送液器に、輸液、生理食塩水、抗凝固剤等の必要薬剤をそれぞれ封入し、送液器を血液回路に併設することで、灌流Bの回路内に輸液、生理食塩水、抗凝固剤等の所定量の必要薬剤を含ませることができる。これにより、体内に送液する必要薬剤、抗癌剤、血液等の配分を自由に設定し、制御することができる。
流速センサ138は、抗癌剤や血液等に直接触れることなく、送液および脱液量を測定できるドップラ式超音波流速計から構成される。なお、超音波を用いた流速計測には、ドップラ法以外に、時間差法や、シング・アラウンド法があり、これらを用いて構成してもよい。
流速センサ138は、図示していないが、内部に超音波を発する送信側圧電素子と、ドップラ信号を受信する受信側圧電素子を備え、該送信側圧電素子から、送液チューブ135内もしくは脱液チューブ131内に流れる血液等に、超音波を発し、血液等の流速に応じて得られるドップラ信号を該受信側圧電素子で受信するものである。
受信したドップラ信号は、図示しない増幅器で増幅された後に、ローパスフィルタで高周波成分を除去され、流速に応じた測定値として、制御装置137に送信される。
なお、流速センサ138−1および流速センサ138−2は、送液チューブ135外周および脱液チューブ131外周にそれぞれ配設されているが、流速センサ138−1の配設位置を、送液チューブ135外周の代わりに、送液ポンプ134内の図示しない流路にし、流速センサ138−2の配設位置を、脱液チューブ131外周の代わりに、脱液ポンプ132内の図示しない流路にしてもよい。
図11に、灌流Bに用いられる制御装置137の設定表示パネル139を示す。設定表示パネル139は、抗癌剤灌流療法を実施する際の各設定を行い、動作状況を確認する画面であり、抗癌剤灌流設定表示141と、動作表示142と、運転スイッチ143と、抗癌剤投与キー144を備える。
抗癌剤灌流設定表示141は、抗癌剤を含んだ血液等の「送液速度設定」を表示する送液速度設定表示145と、血液等の「脱液速度設定」を表示する脱液速度設定表示146と、「灌流時間設定」を表示する灌流時間設定表示147と、手技中の任意な時間に体内に送液する「抗癌剤送液量設定」を表示する抗癌剤送液量設定表示148を備える。
ファンクションキー149を押すことにより、送液速度設定表示145、脱液速度設定表示146、灌流時間設定表示147、抗癌剤送液量設定表示148の順に、設定値を入力可能に切り換えることができる。また、アップキー157、ダウンキー158により設定値を連続的に変更することができる。
送液速度設定表示145、脱液速度設定表示146、灌流時間設定表示147の設定値に基づいた信号が制御装置137に送信され、図9の制御装置137は、所定時間にて所定量の血液等を灌流するように、送液ポンプ134、脱液ポンプ132を所定動作に駆動制御することができる。
また、手技中の任意な時間に、抗癌剤投与キー144を操作することにより、抗癌剤送液量設定表示148の「抗癌剤送液量設定」に基づいた信号が制御装置137に送信され、図9の制御装置137は、薬剤送液器136を所定動作に駆動制御することができる。
なお、始動時には、運転スイッチ143を押すことにより、抗癌剤送液量設定表示148の「抗癌剤灌流時間設定」に基づいた信号が制御装置137に送信され、制御装置137は、薬剤送液器136を所定動作に駆動制御する。
動作表示142は、運転中の各動作状況を表示するものであり、運転・停止状態表示を行う運転・停止表示152と、抗癌剤を送液した総量を表示する抗癌剤投与総量表示153と、血液等を送液した総量を表示する送液総量表示154と、血液等を脱液した総量を表示する脱液総量表示155と、残灌流時間を表示する残灌流時間表示156を備える。
抗癌剤投与総量表示153の表示値は、抗癌剤送液量設定表示148による「送液量設定」と、抗癌剤投与キー144を操作した回数から求められるものであり、抗癌剤を投与した総量を表示するものである。送液総量表示154の表示値は、流速センサ138−1による測定値より算出され、脱液総量表示155の表示値は、流速センサ138−2による測定値より算出される。
次に、抗癌剤灌流装置130の動作を説明する。術者はまず、設定表示パネル139を用いて、「送液速度設定」、「脱液速度設定」、「灌流時間設定」、「抗癌剤送液量設定」を行う。設定をした後、運転スイッチ143を押すことにより、図9の点線に囲まれた抗癌剤灌流装置130を稼動させる。すなわち、制御装置137は、抗癌剤灌流設定表示141による抗癌剤灌流設定に基づき、送液ポンプ134、脱液ポンプ132、薬剤送液器136の駆動制御を行い始動する。また、このとき、運転・停止表示152は、「停止」から「運転」に切り換わる。
図9に示すように、はじめに、薬剤送液器136から血液回路内に抗癌剤が送液される。抗癌剤は、送液ポンプ134の吸引・吐出動作により、送液チューブ135側に送液される。
抗癌剤は生理的食塩水と混合され、適当な濃度とされ、あらかじめリザーバ133に貯蔵されている。リザーバ133内の抗癌剤は、送液ポンプ134の作動により送液チューブ135に送られる。送液チューブ135内に送られてきた抗癌剤は、送液ポンプ134の吐出動作により、所定の流速に調整され、非分岐型シース40−3を介して体内へ送液される。
流速センサ138−1は、送液チューブ135内を送液される抗癌剤の流速を測定し、流速に応じた信号を制御装置137に送信する。該流速に応じた信号が、「送液速度設定」の設定値に対して、予め定められた範囲以上の誤差を生じている場合は、制御装置137による送液ポンプ134のフィードバック制御が行われ、「送液速度設定」の設定速度に保たれる。
送液ポンプ134が駆動することにより、送液チューブ135から送液された抗癌剤が、体内を灌流する。抗癌剤を含む体液は非分岐型シース40−4から脱液され、脱液チューブ131に送液される。脱液チューブ131内に送られてきた体液は、脱液ポンプ132の吸引・吐出動作により、リザーバ133に貯蓄される。
リザーバ133に貯蓄された体液に、薬剤送液器136より抗癌剤が投与される。リザーバ133内には抗癌剤の濃度を検知するセンサ(図示しない)が設けられており、抗癌剤の濃度が適当になるまで薬剤送液器136から抗癌剤がリザーバ133内に送液される。
送液ポンプ134の吸引・吐出動作により送液チューブ135側に送液され、送液チューブ135内に送られてきた血液等は、送液ポンプの作用で200ml/minの流速に調整され、非分岐型シース40−3を介して体内へ送液される。
流速センサ138−2は、脱液チューブ131内に脱液される血液等の流速を測定し、流速に応じた信号を制御装置137に送信する。制御装置137は、「脱液速度設定」の速度設定を保つように、流速に応じた信号に基づき、脱液ポンプ132のフィードバック制御を行う。
また、手技中の任意な時間に、図11に示す抗癌剤投与キー144を操作することにより、抗癌剤送液量設定表示148の設定値に基づき、薬剤送液器136は200mlの抗癌剤を血液回路内に送液する。
血液回路内に送液された抗癌剤は、送液ポンプ134の吸引・吐出動作によりリザーバ133から送液されてくる血液等と混合される。このようにして、抗癌剤を混合した血液等は、再び、送液ポンプ134の吐出動作により、所定の流速に調整され、非分岐型シース40−3を介して体内へ送液される。
なお、リザーバ133に貯蓄される血液を遠心分離する検査や、尿検査など、周知の方法で測定される血液中の抗癌剤含有量に基づき、術者は、手技中に抗癌剤の送液量を任意に変更することができ、また、送液回数を決定することができる。
以上の抗癌剤灌流を所定時間行うと、制御装置137内の図示しないカウンタが作動し、制御装置137は、送液ポンプ134、脱液ポンプ132、薬剤送液器136の動作を停止させる。また、このとき、運転・停止表示152は、「運転」から「停止」に切り換わる。
本発明に用いられる薬剤には、化学方法、免疫方法、放射性同位元素や遺伝子治療等において癌の治療に直接用いられる薬剤のほか、抗溶血剤など癌の治療のための予備的処置に用いられる薬剤も含む概念である。
化学方法は、抗癌剤等の薬剤を用いて腫瘍細胞を破壊する方法である。抗癌剤は主に、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗癌性抗生物質、植物アルカロイドに分類される。代謝拮抗剤は、増殖の盛んな癌細胞に多く含まれる酵素を利用して、分裂を抑える作用を持つ。アルキル化剤は、毒ガス用に開発された薬であり、遺伝情報の伝達など生命の本質に重要な役割を果たしているDNAに作用する。アルキル化剤が結合した場所でDNAは破損し、癌細胞を死滅させる。
抗癌性抗生物質は、通常の抗生物質と同じように土壌に含まれる微生物から作ったものが主である。植物アルカロイドは、細胞の分裂に重要な微小管の働きを止めることにより、癌細胞を死滅させるものである。微小管に作用する抗癌剤には、パクリタキセル等の物質がある。
免疫方法は、免疫機能を向上させて腫瘍細胞を破壊する方法である。免疫機能を向上させる薬剤としては主に、サイトカイン、ワクチンや患者自身の免疫細胞等が挙げられる。サイトカインは免疫担当細胞が生産する物質で、免疫担当細胞を活性化、増殖させる作用がある。活性化した免疫細胞は直接または間接的に腫瘍細胞を死滅させる。
ワクチンは患者の腫瘍細胞を破壊等して無毒化処理したものであり、この処理ののち本人に接種する。ワクチン接種により患者体内において癌特異的抗原に対する免疫反応が誘導され、腫瘍細胞を死滅させる。患者自身の免疫細胞には、例えば患者のリンパ球や樹状細胞等が挙げられ、これらの細胞を患者本人から採取し、体外で培養した後に患者体内に戻す。このような免疫方法は、化学方法と比べて一般に副作用が少ないものと言われている。
放射性同位元素としては、123I、125I、131I、32P、64Cu、211At、177Lu、90Y、186Re、212Pb、212Bi等の放射性同位元素そのもの、またはこれらの放射性同位元素を公知の腫瘍得意抗原ラベルしたものを用いる。放射性同位元素は、細胞のDNAに直接作用して、細胞の分裂増加能力を無くし、また、アポトーシスを誘導することにより腫瘍細胞を死滅させる。放射性同位元素は、生理食塩水等に混合させて使用する。
遺伝子治療用の遺伝子、DNA分子、RNA分子、細胞としては、癌の遺伝子治療に用いられる物質を用いる。これらの遺伝子治療用の遺伝子、DNA分子、RNA分子、細胞は、単独または他の薬剤と組み合わせて用いられ、癌遺伝子の働きの抑制、失活した癌抑制遺伝子の働きの回復、腫瘍に対する免疫能の強化等の役割を果たすものである。遺伝子、DNA分子、RNA分子、細胞は、生理食塩水等に混合させて使用する。
遺伝子治療用の遺伝子としては、癌抑制遺伝子、薬剤代謝酵素遺伝子、DNAワクチンなどを用いる。癌抑制遺伝子としては、p53遺伝子を用いる。このp53遺伝子は、癌抑制遺伝子が失活、変異した癌細胞に導入されると、腫瘍原性を低下させる。
薬剤代謝酵素遺伝子は、自殺遺伝子治療に用いられる遺伝子であって、本来哺乳動物細胞に存在しない微生物由来の遺伝子である。薬剤代謝酵素遺伝子は、遺伝子を癌細胞に導入し、その酵素で活性化(毒性化)されるプロドラッグを投与することにより、遺伝子導入細胞のみを選択的に死滅させるものである。ここで、プロドラッグは、一般的には抗ウイルス、抗真菌剤などの抗微生物剤である。
薬剤代謝酵素遺伝子とプロドラッグとの組み合わせとしては、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV−TK)とガンシクロビル(GCV)またはアシクロビル(ACV)との組み合わせ、シトシンデアミナーゼと5−フルオロシトシン(5−FC)との組み合わせ、水泡帯状ウイルスチミジンキナーゼと6−メトキシプリンアラビノシド(ara−M)との組み合わせ、E.coli gptと6−チオキサンチン(6−TX)との組み合わせ、E.coli deoDと6−メチルプリン−2'−デオキシリボシド(Mep−dR)との組み合わせを用いる。
遺伝子治療用のDNA分子としては、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(アンチセンスODNs)を用いる。アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドは、標的癌遺伝子の発現を抑制するものであって、標的となる癌のmRNAに相補的な塩基配列をもつ小DNA分子である。アンチセンスは、細胞内で標的mRNAにハイブリッドし、たんぱく質翻訳過程を阻害することにより、標的遺伝子の発現を抑制する。
遺伝子治療用のRNA分子としては、アンチセンスRNA、リボザイムを用いる。アンチセンスRNAは、標的癌遺伝子の発現を抑制するものであって、アンチセンス遺伝子(cDNA)により発現されるRNAである。リボザイムは、相補的なmRNAの切断活性を持つRNA分子であり、標的mRNAに対するアンチセンス部位と切断活性を担う活性部位により構成される。活性部位が標的mRNAを切断し、たんぱく質翻訳過程を阻害することにより、標的遺伝子の発現を抑制する。本実施形態では、ハンマーヘッド型、ヘアピン型、D型肝炎型のいずれを用いてもよい。
遺伝子治療用の細胞としては、サイトカイン遺伝子を導入したエフェクター細胞を用いる。サイトカイン遺伝子には腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン−γ(INF−γ)、FCR、TCR、IL−2R、IL−2、IL−7、IL−12を用いる。また、エフェクター細胞としては、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、LAK細胞、細胞障害性T細胞(CTC)を用いる。
遺伝子治療用の遺伝子,DNA分子,RNA分子,細胞は、これらの遺伝子、DNA分子,RNA分子,細胞に限定されず、他の遺伝子,DNA分子,RNA分子、細胞も用いることができる。
癌の治療のための予備的処置に用いられる薬剤とは、癌の手術、治療または診断等において用いられる薬剤であって、それ自身には直接的または間接的に腫瘍を死滅させる作用がないものを言う。癌の治療のための予備的処置に用いられる薬剤としては、例えばカテーテル導入の際に血管の溶血を防止するハプトグロブリン等の抗溶血剤が挙げられる。癌の診断に用いられる薬剤としては、例えば血管造影検査に用いられるヨード系造影剤等が挙げられる。
体内から回収する体液には、血液やリンパ液等の体内に含まれるすべての体液を含む。
次に、図12に示すフロー図により本発明に係る薬剤灌流療法の手技手順について述べる。なお、以下の手順では、傍大動脈リンパ節26内に位置する部位に進行癌を発症していることが検査段階で明らかであり、当該検査より、外科的手術を行うのではなく、インターベンションによる施行術のみを行うことを決定したときの手順を示す。また、実施形態を図1に示す。
ステップS1は、患者に全身麻酔を施す工程である。全身麻酔は、一般的に用いられる手法で行う。
ステップS2は、患者にタニケット35を装着する工程である。現段階では、タニケット35を解除した状態にしておき、下肢への血流が遮断されないようにする。
ステップS3は、シースを血管内の所定位置に留置する工程である。この工程では、図1および図2に示すように、非分岐型シース40−1,40−2,40−3,40−4及び三又型シース70の先端を、それぞれ右腋窩動脈9,左腋窩動脈11,左大腿動脈6,右大腿静脈27及び右大腿動脈5から経皮的に挿入し、留置する。
また、ステップS3において、図9に示す灌流Aで用いる脱血用カニューレ121および122を頚静脈より挿入し、それぞれ上大静脈および下大静脈内に留置する。脱血用カニューレ121,122は公知の手法を用いて経皮的に上大静脈および下大静脈に留置する。
ステップS4は、バルーンカテーテルを血管内の所定位置に留置する工程である。この工程では、図1および図2に示すように、バルーンカテーテル32−1を非分岐型シース40−1に通して右腋窩動脈9内に挿入し、バルーン拡張領域を右腎動脈20内の所定位置に留置する。また、バルーンカテーテル32−2を非分岐型シース40−2に通して左腋窩動脈11内に挿入し、バルーン拡張領域を左腎動脈21内の所定位置に留置する。また、バルーンカテーテル32−3、バルーンカテーテル32−4、およびバルーンカテーテル32−5を三又型シース70に通して右大腿動脈5内に挿入し、それぞれのバルーン拡張領域を腹腔動脈12、上腸間膜動脈19、下腸間膜動脈24の所定位置に留置する。
また、バルーンカテーテル33を非分岐型シース40−3に通して左大腿動脈6内に挿入し、バルーン拡張領域を腹腔動脈12より心臓側の大動脈3の所定位置に留置する。また、バルーンカテーテル34を非分岐型シース40−4に通して右大腿静脈27内に挿入し、バルーン拡張領域を下大静脈4内の所定位置に留置する。
X線透視下にてバルーンカテーテル32,33,34を走査する際、非分岐型シース40および三又型シース70の三方活栓に造影剤を封入したシリンジを接続しておく。血管に分岐部があるときには、シリンジを加圧することで、血管内にX不透過性の造影剤を送液し、適当なX線照射による血管造影を行いながら、分岐部において、選択的にバルーン拡張領域を走査する。
なお、ステップS1乃至ステップS4は、本発明の灌流準備工程に相当する。
ステップS5は、大静脈予備閉塞を行う工程である。本ステップでは、ステップS2にて装着したタニケット35を適当な圧力で加圧して拡張し、下肢の血流を遮断する。また、ステップ4において留置したバルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32−5,33,34を適当な圧力で加圧してバルーン拡張領域をそれぞれ拡張し、大動静脈内において大動静脈予備閉塞を行う。
ステップS6は、副側路の位置を確認する工程である。本ステップでは、血管内にX不透過性の造影剤を送液して適当なX線照射による血管造影を行い、前記大動静脈予備閉塞区間における側副路血管の位置、有無等の確認を行っている。この造影剤送液は、バルーンカテーテル33の管腔路116を通じて行われる。すなわち、バルーンカテーテル33の分岐管112bに造影剤が入ったシリンジを装着し、シリンジのプランジャを押圧することにより管腔路116に造影剤を送液する。造影剤は側孔117から血管内に送液される。
腫瘍組織に対する側副路血管が確保されており、薬剤が腫瘍組織に到達可能であることを本ステップで確認した後、直ちにタニケット35とバルーンを減圧し、血流を復帰させる。
ステップS7は、酸素化血液灌流装置120及び抗癌剤灌流装置130のセットアップを行う工程である。図9に示すように、本発明に係る灌流方法では、灌流Aおよび灌流Bの2種類の灌流が行われる。すなわち、非分岐型シース40−3の三方活弁48に備えられているポートの一つに送液チューブ135を接続する。また、ヘパリン等の抗凝固剤、造影剤等の必要薬剤を封入したシリンジ(図示しない)を、バルーンカテーテル33の分岐管112bに接続しておく。
灌流Aにおいては、図10に示す設定表示パネル161にて、送液速度設定表示166に表示される「送液速度設定」を「360ml/min」とし、灌流時間設定表示167に表示される「灌流時間設定」を「30min」とし、酸素飽和度設定表示168に表示される「酸素飽和度設定」を「99〜100%」とする。
灌流Bにおいては、図11に示す設定表示パネル139にて、送液速度設定表示145に表示される「送液速度設定」を「200ml/min」とし、脱液速度設定表示146に表示される「脱液速度設定」を「180〜200ml/min」とし、灌流時間設定表示147に表示される「灌流時間設定」を「30min」とする。
次に、大動静脈閉塞を行う(ステップS8)。すなわち、ヘパリン等の抗凝固剤を適当に送液し、ステップS2にて装着したタニケット35を適当な圧力で加圧して拡張し、下肢の血流を遮断する。また、バルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32−5,33,34のそれぞれの後端部に取り付けられたシリンジを適当な圧力で加圧してバルーンをそれぞれ拡張し、大動静脈内において大動静脈閉塞を行う。
なお、ステップS8は、本発明の閉塞領域生成工程に相当する。
続いて、設定表示パネル161に備えられた運転・停止表示164を操作して灌流Aを行う(ステップS9)。すなわち、バルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4,32−5の管腔路116を通じて、右腎臓、左腎臓、胃16、肝臓17、脾臓18、小腸、後腸へ酸素化血液を送液する。
なお、ステップS9は、本発明の酸素化血液供給工程に相当する。
灌流Aを行っている間に、設定表示パネル139に備えられた運転スイッチ143を操作して灌流Bを開始する(ステップS10)。すなわち、非分岐型シース40−3の挿通路45を通じて、大動静脈閉塞領域に抗癌剤を含む薬液を投与する。この薬液を投与する工程は、本発明の薬剤投与工程に相当する。
また、非分岐型シース40−4の挿通路45を通じて、大動静脈閉塞領域から抗癌剤を含む体液を回収する。この体液を回収する工程は、本発明の体液回収工程に相当する。
抗癌剤の投与は、上記の抗癌剤灌流中において、10分ごとに抗癌剤投与キー144を操作し、抗癌剤を癌組織部へ投与する。本実施形態では、投薬量は。なお、抗癌剤投与量、抗癌剤投与時期、抗癌剤投与回数は、患者の容体、リザーバ133に貯蓄される血液の遠心分離検査や尿検査などによる血液中の抗癌剤含有量に基づき、変更することができる。
また、任意な時期に、ハプトグロブリンを含む抗溶血剤を静脈内に投与しておくことが望ましい。また、術中に輸血や輸液により循環動態を保つことが望ましい。
適当量の薬剤を所定回数投与したのちに灌流Bを終了する(ステップS11)。灌流Bの終了は、所定回数の抗癌剤投与動作が終了すると、自動的に運転・停止表示152が切り替わり灌流Bを停止する。
灌流Bが終了したのちに灌流Aを終了する(ステップS12)。灌流Aを終了するには、運転・停止表示を操作して灌流Aを停止する。その後、タニケット35およびバルーンカテーテル32,33,34のバルーン拡張領域を減圧し、大動静脈閉塞を解除する。また、止血するためにプロタミン等のヘパリン拮抗薬を適当量投与する。
大動静脈閉塞の解除後、器具を除去する(ステップS13)。すなわち、バルーンカテーテル32,33,34、非分岐型シース40、三又型シース70、タニケット35を除去して止血を施す。患者を麻酔から覚醒させて手技を終了する。
以下に、本発明にかかる灌流方法を、子宮頸癌から進行した腫瘍が傍大動脈リンパ節に転移した生体に対して適用した実験例を示す。本実験例では、非分岐型シース40−1,40−2,40−3として、それぞれ6フレンチ、6フレンチ、9フレンチのサイズのものを使用した。また、三又型シース70として、12フレンチのサイズのものを使用した。また、バルーンカテーテル32−1,32−2,32−3,32−4および32−5は、それぞれ6フレンチ、6フレンチ、7フレンチ、4フレンチおよび4フレンチのサイズのものを使用した。
灌流Aでは、脱血用カニューレ121,122より静脈血を360ml/minで脱液し、人工肺で酸素飽和度を99〜100%としたのち送液チューブへ送っている。このとき、酸素化血液の酸素飽和度は99%であった。灌流Aは、下記の灌流Bが終了して血管閉塞を解除するまで行った。
灌流Bで投与する抗癌剤はシスプラチンで、140mgを生理食塩水に混和し、非分岐型シース40−3の挿通路45より大動脈内の閉塞領域へ投薬した。このとき、送液側の流速は200ml/minで、脱液側の流速は190ml/minであった。灌流Bを30分間行い、その間所定位置の血管から採血を行い、プラチナ量を測定することで抗癌剤の定量を行った。採血する血管は、1.血管閉塞領域内の腹部大動脈、2.血管閉塞領域内の下大静脈、3.血管閉塞領域外の撓骨動脈の3箇所であった。
図13に、本実験例で得られたデータを示す。これによると、1.血管閉塞領域内の腹部大動脈、2.血管閉塞領域内の下大静脈では投薬直後に高濃度のシスプラチンが検出され、その後徐々に濃度が減少していることがわかる。一方、3.血管閉塞領域外の撓骨動脈(すなわち全身)では、シスプラチンの濃度はほとんど増加していないことがわかる。これは、本発明にかかる灌流方法では、血管閉塞領域内には高濃度の薬剤を暴露することができ、一方で血管閉塞領域外にはほとんど薬剤の漏出が無いことを示している。