第1の発明は、高周波磁界を発生し被加熱物を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルと共振する共振コンデンサと、前記共振コンデンサを直列接続で構成する複数のコンデンサと、前記複数のコンデンサの少なくとも1つのコンデンサに並列接続された短絡/開放切り換え手段と、前記加熱コイルに高周波共振電流を供給するインバータと、前記短絡/開放切り換え手段の制御および前記インバータの出力制御を行う制御手段と、前記インバータの出力の大きさを検知して前記制御手段へ検知信号を出力するインバータ出力検知手段とを備え、前記制御手段は、前記インバータ出力検知手段の出力信号に基づいて前記被加熱物の材質を低抵抗非磁性金属と判別した場合、前記共振コンデンサの合成容量が小さくなるよう短絡/開放切り換え手段の出力を開放とする制御を行い、その他の材質と判別した場合、前記共振コンデンサの合成容量が大きくなるよう短絡/開放切り換え手段の出力を短絡とする制御を行い、短絡/開放切り換え手段が並列接続されたコンデンサの合成容量を、その他の複数のコンデンサにおける合成容量と同じまたは小さく設定する誘導加熱装置とするものである。
これによって、短絡/開放切り換え手段は、共振コンデンサを構成する複数のコンデンサのうち一部を短絡/開放することで、共振コンデンサ全体の合成容量を変更することが可能であるため、例えば、鉄系の被加熱物を加熱するための共振コンデンサを追加で配置する必要がなく、部品点数の削減が可能である。
また、短絡/開放切り換え手段は、直列に接続されている複数のコンデンサの一部に接続されている。例えば、アルミニウムなどの低抵抗非磁性金属被加熱物を加熱する際に、共振コンデンサ全体には高電圧が印可されるが、短絡/開放切り換え手段には接続されているコンデンサのインピーダンスに従った割合で高電圧の一部が印可されるため、要求される耐圧性能が従来と比べて低い。従って、短絡/開放切り換え手段の小型化、低コスト化が可能である。
そしてまた、回路部品中、大きな基板占有面積を占める共振コンデンサおよび短絡/開放切り換え手段の部品削減、省スペース化によって、全体を小型化することが可能であり、低コストを実現する誘導加熱装置とすることができる。
さらに、第1の発明は、短絡/開放切り換え手段が並列接続されたコンデンサの合成容量を、その他の複数のコンデンサにおける合成容量と同じまたは小さく設定するものである。ここで、被加熱物がアルミニウムなどの低抵抗非磁性金属であった場合、効率よく誘導加熱するために、共振電流の周波数を例えば90kHzと高く設定するべく共振コンデンサ容量を小さくする。逆に鉄系の被加熱物であった場合、インバータ損失を低減するために、共振電流の周波数を例えば23kHzと低く設定するべく共振コンデンサ容量を大きくする。それぞれの場合、共振電流の周波数設定は大きく異なっているため、共振コンデンサ容量も切り換え幅を大きくする必要がある。
本発明では、短絡/開放切り換え手段が並列接続されたコンデンサの合成容量が、その他の複数のコンデンサにおける合成容量と同じもしくは小さく設定されているために、短絡/開放切り換え手段の短絡時、開放時の共振コンデンサ容量の切り換え幅を大きく設定することが容易に可能である。
第2の発明は、特に、第1の発明において、インバータは複数のスイッチング素子を内包し、制御手段は、加熱コイルの発生する磁界が低抵抗非磁性金属を誘導加熱すると、少なくとも1つのスイッチング素子に流れる高周波共振電流が前記スイッチング素子の駆動期間より短い周期で共振するよう前記スイッチング素子の駆動信号を出力する制御モードを持つものである。ここで、被加熱物が低抵抗非磁性金属であった場合、被加熱物内部に渦電流が誘導されても高周波抵抗が小さいためにジュール熱が発生しにくく十分な誘導加熱が困難である。そのため加熱コイルから発生する磁界周波数を高めることによって、被加熱物の高周波抵抗を高めてジュール熱の発生、誘導加熱を容易にする。しかしながら、一方でインバータに内包されるスイッチング素子の駆動周波数も高くなってしまうため、スイッチング時に発生する損失が増加してしまうという課題が発生する。
本発明では、スイッチング素子に流れる高周波共振電流がスイッチング素子の駆動期間より短い周期で共振するように制御する加熱モードを有している。そのため、加熱コイルから発生する磁界周波数に対して、スイッチング素子の駆動周波数を低く設定することが可能である。従って、スイッチング素子のスイッチング損失増加を抑制することができる。
しかし、被加熱物が鉄系の金属である場合、被加熱物の抵抗が非常に大きいため、スイッチング素子に流れる高周波共振電流の減衰(つまり被加熱物で消費されるエネルギー)が大きく、本発明のような制御方法では共振が継続しないが、被加熱物が低抵抗非磁性金属である場合、スイッチング素子に流れる高周波共振電流の減衰が小さいため、この制御方法がスイッチング素子の損失低減に非常に有効である。
第3の発明は、特に、第1の発明において、インバータは2つのスイッチング素子の直列接続体を複数個内包し、それぞれの直列接続体のスイッチング素子における接続点間に加熱コイルおよび共振コンデンサを接続するものである。
ここで、インバータ定数の設計上、加熱コイルや共振コンデンサ容量に制限があり、コンデンサの短絡/開放切り換え手段の制御やスイッチング素子の駆動周波数などでは、被加熱物加熱電力の確保が困難となる場合がある。
本発明では、2つのスイッチング素子の直列接続体を2つ有し、かつそれぞれの直列接続体のスイッチング素子における接続点間に加熱コイルおよび共振コンデンサを接続するよう配置されているため、電源と加熱コイルおよび共振コンデンサ間に配置されるスイッチング素子のいずれかが導通するよう制御することが可能である。つまり、電源から加熱コイルへ電力を供給する時間を長くすることができるため、入力可能な被加熱物加熱電力を高く設定できる。従って、インバータ設計の自由度を大きくすることが可能である。
第4の発明は、特に、第3の発明において、インバータ出力検知手段は少なくともインバータが発生する高周波電流の大きさを検知するものである。
被加熱物の材質判別を行うためには、インバータの出力の大きさを検知して制御手段へ検知信号を出力するインバータ出力検知手段が必要である。しかしながら、第4の発明の場合、スイッチング素子のスイッチングによって、加熱コイルおよび共振コンデンサの両端が不安定な電圧であるため、インバータ出力に密接に相関を持つ加熱コイルや共振コンデンサの電圧を検知することが難しい。
本発明では、インバータが発生する高周波電流の大きさ、つまり加熱コイルおよび共振コンデンサ電流を検知する構成としている。電流はカレントトランスなどにより電気的に非接触で検知することが可能であるため、加熱コイル、共振コンデンサの電圧安定度に関係なく、精度よく電流検知することが可能である。
第5の発明は、特に、第1の発明において、インバータの電源として作用する平滑手段と、力率改善手段としても作用する昇圧手段とを備え、制御手段はインバータ出力検知手段の出力信号に応じて前記昇圧手段の昇圧量を制御して前記平滑手段電圧を変更するものである。
これによって、インバータ方式の適切な選定などにより入力可能な被加熱物加熱電力を高く設定することが可能である。さらに、被加熱物加熱電力を高く設定することを可能にし、インバータ設計自由度を高めるために、昇圧手段の昇圧量を制御する。
アルミニウムなどの低抵抗非磁性金属からなる被加熱物を誘導加熱した場合、加熱コイルから発生する高周波磁界と、被加熱物内部に誘導される渦電流から発生する誘導磁界とは反発するように作用する。また、一般にアルミニウムなどからなる被加熱物は、その材質の特性から非常に軽量なものが多い。そのため、被加熱物加熱電力によっては、被加熱物が振動して音が発生する。インバータの電源が平滑されていない場合には、商用電源周波数の2倍に同期して被加熱物が振動するため、非常に耳障りな音が発生する。
このような音を抑制するために、インバータ電源として大容量の電解コンデンサなどからなる平滑手段を設けることがあるが、これによって力率の低下、入力電流の高調波成分の増加が課題となる。
本発明では、力率改善手段としても作用する昇圧手段を有しているため、被加熱物の振動から発生する音の抑制と、力率改善、入力電流の高調波成分低減を両立させることが可能である。
さらに、インバータ出力に応じて昇圧手段の昇圧量を制御し、平滑手段の電圧を変更することにより、被加熱物加熱電力の可変制御も可能である。昇圧量を高く設定すれば、被加熱物加熱電力も高くすることができる。
また、新たに昇圧手段を設けるわけではなく、被加熱物の振動音を抑制する平滑手段のための力率改善と電源昇圧を兼ねた昇圧手段としているため、部品点数の増加を抑制することが可能である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置として、誘導加熱調理器を示しているものである。
図1に示すように、本実施の形態における誘導加熱装置は、商用交流電源101からの交流電圧を整流するダイオードブリッジからなる整流手段102の出力側には、チョークコイル103および第3のスイッチング素子(MOS−FET)104が直列接続されている。さらに、チョークコイル103および第3のスイッチング素子104の接続点にはダイオード105のアノード側が接続されている。
ダイオード105のカソード側と整流手段102の出力低電位側間には、電解コンデンサからなる平滑手段106と、内部に逆導通ダイオードを内包する第1のスイッチング素子(IGBT)107と第2のスイッチング素子(IGBT)108の直列接続体が接続されている。
平滑手段106は、後述するインバータ117の電源となるよう作用しており、電圧変動を極力抑制するよう十分大きな容量の電解コンデンサで構成され、具体的には560μFの電解コンデンサを4本使用している。
第1のスイッチング素子107と第2のスイッチング素子108の接続点と、整流手段102の出力低電位側間には、高周波磁界を発生し鍋などの被加熱物116を加熱する加熱コイル109と、加熱コイル109と共振する共振コンデンサ110が直列接続されている。
加熱コイル109上部には、絶縁体であり、耐熱セラミックス製のトッププレート(図示せず)が設けられており、被加熱物116はトッププレートを挟んで加熱コイル109と対向するように載置される。加熱コイル109は、素線を束ねた撚り線を多層にして平板上に巻き回されて構成されており、内径80mm、外径180mmの略ドーナツ形状をなしている。
共振コンデンサ110は、複数のコンデンサ110a、110b、110c、110dで構成されており、コンデンサ110aおよび110bの並列接続体、コンデンサ110cおよび110dの並列接続体の直列接続で構成している。
コンデンサ110aおよびコンデンサ110bはそれぞれ0.025μF、コンデンサ110cおよびコンデンサ110dはそれぞれ0.01μFの容量のものが選定されている。従って、共振コンデンサ110の合成容量は約0.014μFとなる。
コンデンサ110cおよびコンデンサ110dには、リレーからなる短絡/開放切り換え手段111が並列接続されている。つまり、共振コンデンサ110を構成する少なくとも1つのコンデンサに短絡/開放切り換え手段111が並列接続されている状態にある。また、短絡/開放切り換え手段111が並列接続されたコンデンサ110c、110dの合成容量を、その他の複数のコンデンサ110a、110bの合成容量と同じまたは小さく設定している。短絡/開放切り換え手段111の出力が開放時の共振コンデンサ110合成容量は前述の通り0.014μF、短絡時の共振コンデンサ110の合成容量は0.05μFとなる。
インバータ117は、加熱コイル109に高周波共振電流を供給するもので、第1のスイッチング素子107、第2のスイッチング素子108、加熱コイル109、共振コンデンサ110(広い意味で短絡/開放切り換え手段111も含む)で構成されている。
制御手段112は、短絡/開放切り換え手段111の制御およびインバータ117の出力制御を行うもので、各種検知手段からの検知信号、使用者による操作などに基づいて、第1のスイッチング素子107、第2のスイッチング素子108の導通/遮断を制御する。
入力電流検知手段113は、具体的にはカレントトランスで構成されている。入力電流検知手段113の検知信号は、制御手段112に出力されるよう接続されている。
インバータ出力検知手段114は、加熱コイル109の電流検知手段であるカレントトランスである。インバータ出力検知手段114は、インバータ117の出力の大きさである加熱コイル109の電流を検知して、制御手段112へ検知信号を出力する。
第3のスイッチング素子104を駆動制御する第2の制御手段115は、平滑手段106の電圧、入力電流などを検知しながら(図示せず)、入力電流が略正弦波状となり、平滑手段106の電圧が所定値となるよう第3のスイッチング素子104の駆動周波数、導通比を制御する。
以上のような構成において、その動作を説明する。
制御手段112は、使用者による操作に基づいて第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108が排他的に導通/遮断するよう駆動信号を出力して、入力電流検知手段113およびインバータ出力検知手段114からの検知信号を入力する。
図2は、制御手段112内部に保持している入力電流検知手段113の検知出力−インバータ出力検知手段114の検知出力平面での被加熱物116の材質判別領域を示している。第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108の駆動によって、入力電流およびインバータ出力が変化し、図2の上方に設定されたアルミなどの低抵抗非磁性金属領域になった場合、制御手段112は第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108の駆動を継続して、所定の入力電力となるようインバータ117の出力を制御する。
また同時に、制御手段112は、入力電流検知手段113およびインバータ出力検知手段114の出力信号に基づいて被加熱物116の材質を低抵抗非磁性金属と判別した場合、共振コンデンサ110の合成容量が小さくなるよう短絡/開放切り換え手段111出力を開放とする制御を行う。
共振コンデンサ110の合成容量は、短絡/開放切り換え手段111出力が開放時に0.014μFとなるよう選定されており、また被加熱物116が載置された際の加熱コイル109のインダクタンスは225μHとなるよう設計されているため、加熱コイル109、共振コンデンサ110および被加熱物116の共振周波数は約90kHzとなる。
図3は、低抵抗非磁性金属製の被加熱物116を誘導加熱している際の各部電圧電流波形を示している。
制御手段112の制御により第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108が排他的に導通/遮断され、インバータ117は加熱コイル109および共振コンデンサ110に高周波共振電流を供給する。加熱コイル109は高周波磁界を発生して被加熱物116を加熱する。
図3に示すように、第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108の導通期間中には、共振電流が1周期以上流れるように制御手段112は制御を行っている。つまり、インバータ117は複数のスイッチング素子107、108を内包し、制御手段112は加熱コイル109の発生する磁界が低抵抗非磁性金属を誘導加熱すると、少なくとも1つのスイッチング素子に流れる高周波共振電流がスイッチング素子の駆動期間より短い周期で共振するようスイッチング素子の駆動信号を出力する制御モードを持っている。
この制御モードは、被加熱物116が低抵抗非磁性金属である場合に有効となる。被加熱物116が低抵抗非磁性金属であった場合、抵抗が低いために、高周波共振電流の減衰が少ない。そのため、第1のスイッチング素子107または第2のスイッチング素子108の駆動時間を長く設定しても共振が継続される。第1のスイッチング素子107または第2のスイッチング素子108に共振電流が流れている期間中に、制御手段112がスイッチング素子を遮断させ、もう一方のスイッチング素子を導通制御することにより、第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108に負担をかけることなく共振を継続することが可能である。
ここで、高周波共振電流の周波数は、加熱コイル109、共振コンデンサ110および被加熱物116で決定され、前述の約90kHzとなる一方、スイッチング素子の駆動周波数は本実施の形態の場合、約30kHzとなる。スイッチング素子が導通から遮断する移行期間には、スイッチング損失が発生するため、スイッチング素子の駆動周波数が高いほどスイッチング回数が多く、スイッチング損失増加につながる。
本実施の形態では、加熱コイル109に供給される高周波共振電流の周波数は90kHzと高く設定することで、低抵抗非磁性金属の被加熱物116であっても見かけの高周波抵抗を高くできるため、少ない加熱コイル109の電流で十分な加熱電力を得ることが可能である。さらに、スイッチング素子の駆動周波数は、90kHzに対して十分低い30kHzであるため、スイッチング損失の増加を抑制することができる。
所定の入力電力時の共振コンデンサ110の電圧は、本実施の形態では実効値で約3kVrmsとなっている。従来方式のように、短絡/開放切り換え手段111と追加コンデンサ(図示せず)の直列接続体が、共振コンデンサ110に並列接続されている場合には、短絡/開放切り換え手段111出力には約3kVrmsの高電圧が印可されることになる。
しかしながら、本実施の形態では、短絡/開放切り換え手段111がコンデンサ110c、110dに並列接続されているために、短絡/開放切り換え手段111出力にはコンデンサ容量に従って、約2.1kVrmsとなり、約30%低減されることになる。短絡/開放切り換え手段111はリレーで構成されており、内部に電極を備えている。確実に切り換えを行うために電極間距離はある程度制限があるが、耐圧を上げるためには電極間距離を取る必要がある。本実施の形態によって、印可される電圧を下げることが可能であるため、電極間距離の自由度を高めることができる。
また、一般に短絡/開放切り換え手段111外殻は耐圧の高い樹脂で構成されているが、高周波の高電圧が印可されると、樹脂が誘電体の働きを成してしまい、電極を保持する樹脂間で放電が生じてしまう。そのため、電極と樹脂間にできるだけ空間を設ける対策が取られるが、印可電圧を下げることによって、外殻形状を小型化することが可能である。
被加熱物116が低抵抗非磁性金属である場合、加熱コイル109から発生する高周波磁界に対して被加熱物116の内部に渦電流が誘起される。この渦電流は、加熱コイル109からの高周波磁界に対して反発するように作用するため、被加熱物116自体が振動する。
インバータ117の電源となる平滑手段106の電圧が商用交流電源101電圧に同期して変動する場合、被加熱物116も同期した振動を生じるため、使用者が不快に感じる鍋音が発生する。本実施の形態では、平滑手段106の容量を十分大きく設定してインバータ117の電源の変動を抑制し、鍋音が発生しないようにしている。
しかしながら、その一方で、平滑手段106の容量を大きく設定すると、商用交流電源101からの入力電流が歪んだ形になってしまい、本来の正弦波状とは異なった波形になって力率が低下する。この入力電流は高調波成分を含んでいるために、同じ商用交流電源101に接続された他機器に影響を与える場合もある。
本実施の形態では、チョークコイル103、第3のスイッチング素子104およびダイオード105が力率改善手段としても作用する昇圧手段118を備えている。制御手段112は、使用者の操作に基づいてインバータ117の動作を開始するとともに、第2の制御手段115に動作開始信号を出力する。第2の制御手段115は、平滑手段106の電圧、入力電流などを検知しながら(図示せず)、入力電流が略正弦波状となり、平滑手段106の電圧が所定値となるよう第3のスイッチング素子104の駆動周波数、導通比を制御する。
第3のスイッチング素子104が導通すると、チョークコイル103の短絡電流が流れ、チョークコイル103にエネルギーが蓄積される。第3のスイッチング素子104が遮断されるとともに、チョークコイル103に蓄積されたエネルギーはダイオード105を通して平滑手段106へ送られて電圧上昇させる。
第2の制御手段115は、内部に基準電圧を保持しており、平滑手段106の電圧検知信号と比較して同じ値になるよう制御を行うが、制御手段112からも平滑手段106の電圧検知を操作するよう電圧印可または抵抗切り換えがなされるために、結果として制御手段112によって平滑手段106の電圧が制御されることになる。
制御手段112は、入力電流検知手段113およびインバータ出力検知手段114の出力信号に応じて、平滑手段106の電圧検知信号を操作し、間接的に昇圧手段118の昇圧量を制御して平滑手段106の電圧を変更している。
被加熱物116が低抵抗非磁性金属であった場合、加熱コイル109、共振コンデンサ110が共振を継続できる周波数領域が非常に狭いため、インバータ117出力の制御が非常に難しい。しかしながら、平滑手段106はインバータ117電源としても作用しているため、平滑手段106の電圧を変更することによってもインバータ117出力の制御が可能である。
制御手段112によってインバータ117が動作開始をした際、制御手段112が被加熱物116材質を低抵抗非磁性金属以外と判別した場合、制御手段112はインバータ117の動作を一時(約2秒間)停止して、共振コンデンサ110の合成容量が大きくなるよう短絡/開放切り換え手段111の出力を短絡とする制御を行う。本実施の形態では、前述の通り、共振コンデンサ110の合成容量は0.05μFとなるよう設定されている。
短絡/開放切り換え手段111の切り換え完了後、制御手段112は再度インバータ117の動作を開始させる。
図4は、低抵抗非磁性金属以外の被加熱物116を誘導加熱している際の各部電圧電流波形を示している。おおよそは低抵抗非磁性金属を加熱している際の各部波形と似ているが、大きく異なる点は第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108に流れている電流波形である。
低抵抗非磁性金属以外の被加熱物116を加熱する際は、被加熱物116自体が抵抗が高いために磁界周波数をさほど高める必要がない。従って共振コンデンサ110の容量が大きくなるよう切り換えて、加熱コイル109、共振コンデンサ110および被加熱物116の共振周波数を低くなるよう(本実施の形態では約43kHz)設定している。
共振周波数が低いために、第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108の駆動周波数を共振周波数と同一としてもスイッチング損失の大幅な増加は生じない。また、被加熱物116抵抗が高いために、必要となる高周波共振電流も少なく、スイッチング損失、導通時の損失も低く抑えられる。
従来方式であれば、共振コンデンサ110の容量を大きく設定するために、追加コンデンサ(図示せず)を短絡/開放切り換え手段によって追加するよう接続していたが、本実施の形態では、耐圧を下げて小型化された短絡/開放切り換え手段を採用でき、さらにコンデンサを追加する必要がないため、基板スペースを小さく、コストを低く抑えることが可能である。
本実施の形態では、共振コンデンサ110を2つのコンデンサの並列接続体を2セット直列接続したものとしたが、必要となる共振コンデンサ110の耐圧、電流容量などを鑑みて適宜設定すればよい。2つのコンデンサの直列接続体で構成してもよいし、コンデンサ並列接続体を3セット以上直列接続してもよい。
また、短絡/開放切り換え手段111を低電位側のコンデンサ110c、110dに接続する構成としたが、高電位側コンデンサ110a、110bに接続してもよい。短絡/開放切り換え手段111の出力−入力間の絶縁能力と基板レイアウトを鑑みて適宜設定すればよい。短絡/開放切り換え手段111はリレーに限らず、耐圧、電流容量などが許せば、スイッチング素子を使用してもよい。
インバータ出力検知手段114として、加熱コイル109の電流を検知するカレントトランスの例を挙げたが、共振コンデンサ110の電圧を検知してもよいし、加熱コイル109の電流の一部である第1のスイッチング素子107または第2のスイッチング素子108の電流、インバータ117の電源となる平滑手段106の電流を検知しても同様の効果が得られる。
制御手段112と別に第2の制御手段115を設ける構成を挙げたが、第2の制御手段115の動作を制御手段112で兼ねることも可能である。
また、被加熱物116がアルミニウムなどの低抵抗非磁性金属とそれ以外の例を挙げたが、例えばアルミニウムに比べて抵抗の高い非磁性ステンレスとさらに抵抗の高い金属として材質判別してもよい。材質判別を2種に限らず、3種、4種として判別し、第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108の導通期間制御、短絡/開放切り換え手段111の制御などを組み合わせて、必要なインバータ117出力を得てもよい。
特に、鍋音は、アルミニウムなどの低抵抗非磁性金属で軽い材質のものに特有の現象であるため、それ以外の材質の被加熱物116に加熱対象を限定するのであれば、平滑手段106の容量を過度に大きく設定する必要はないし、力率の低下、入力電流の高調波成分が許容範囲内であれば、昇圧手段118を設ける必要はない。コスト、効果を鑑みて適宜組み合わせて構成すればよい。
また、本実施の形態では、第1のスイッチング素子107と第2のスイッチング素子108の導通期間がほぼ同一となる例を挙げたがこれに限定するものではない。例えば、低抵抗非磁性金属の被加熱物116を加熱する際に、第1のスイッチング素子107の導通期間を共振電流の1周期より短くなるよう制御して低抵抗非磁性金属以外の被加熱物116を加熱する際の電流波形と相似の状態にし、第2のスイッチング素子108の導通期間は共振電流の1周期以上となるように制御してもよい。また、第1のスイッチング素子107と第2のスイッチング素子108の導通期間を入れ替えるように制御してもよい。
本実施の形態のように、低抵抗非磁性金属の被加熱物116を加熱する際に、第1のスイッチング素子107および第2のスイッチング素子108の導通期間を共振電流の1周期以上に制御すると、スイッチング素子駆動1周期中にインバータ117の電源である平滑手段106から電力を供給する時間の比率が低下して、原理的に入力可能な加熱電力が低下する。しかしながら、第1のスイッチング素子107の導通期間は共振電流の1周期より短く、第2のスイッチング素子108の導通期間は共振電流の1周期以上となるよう制御する(またはその逆)で、平滑手段106から電力を供給する時間比率を高めて、原理的に入力可能な加熱電力を増加させることが可能である。
その場合、第1のスイッチング素子107と第2のスイッチング素子108の導通期間差から発生する損失差が生じるが、第1のスイッチング素子107と第2のスイッチング素子108の導通期間を入れ替えるように制御することで、損失の平準化が可能である。
また、導通期間の長い方のスイッチング素子の損失が大きいことは明白であるため、導通期間の長い方のスイッチング素子を冷却が容易な場所に優先的に配置してもよい。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における誘導加熱装置を示すものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態における誘導加熱装置は、ダイオード105のカソード側と整流手段102の出力低電位側間には、電解コンデンサからなる平滑手段106と、内部に逆導通ダイオードを内包する第1のスイッチング素子107aと第2のスイッチング素子108aの直列接続体および第1のスイッチング素子107bと第2のスイッチング素子108bの直列接続体が接続されている。
第1のスイッチング素子(IGBT)107aと第2のスイッチング素子(IGBT)108aの接続点と、第1のスイッチング素子(IGBT)107bと第2のスイッチング素子(IGBT)108bの接続点間には、加熱コイル109と共振コンデンサ110が直列接続されている。
インバータ出力検知手段114は加熱コイル109の電流検知手段であるカレントトランスであり、少なくともインバータ117が発生する高周波電流の大きさ、つまり加熱コイル109および共振コンデンサ110の電流を検知して、制御手段112へ検知信号を出力する。
本実施の形態のような構成であった場合、スイッチング素子のスイッチングによって、加熱コイル109および共振コンデンサ110の両端が不安定な電圧であるため、インバータ117の出力に密接に相関を持つ加熱コイル109や共振コンデンサ110の電圧を検知することは困難であるが、インバータ117が発生する高周波電流の大きさ、つまり加熱コイル109および共振コンデンサ110の電流を検知する構成としている。電流はカレントトランスなどにより電気的に非接触で検知することが可能であるため、加熱コイル109、共振コンデンサ110の電圧安定度に関係なく、精度よく電流検知することが可能である。
以上のような構成で、制御手段112は、使用者による操作に基づいて第1のスイッチング素子107aおよび第2のスイッチング素子108a、第1のスイッチング素子107bおよび第2のスイッチング素子108bが排他的に導通/遮断するよう駆動信号を出力して、入力電流検知手段113およびインバータ出力検知手段114からの検知信号を入力する。
制御手段112は、図2に示すような入力電流検知手段113検知出力−インバータ出力検知手段114検知出力平面での被加熱物116の材質判別領域をもとに被加熱物116の材質を判別して、スイッチング素子、短絡/開放切り換え手段111、第2の制御手段115に制御信号を出力する。
このとき、第1のスイッチング素子107aおよび第2のスイッチング素子108b、第2のスイッチング素子108aおよび第1のスイッチング素子107bが同一動作となるよう制御手段112は制御を行う。
つまり、第1のスイッチング素子107a−加熱コイル109−共振コンデンサ110−第2のスイッチング素子108b−平滑手段106に高周波共振電流が流れる経路、第1のスイッチング素子107b−共振コンデンサ110−加熱コイル109−第2のスイッチング素子107a−平滑手段106に高周波共振電流が流れる経路が入れ替わりながら共振が継続する。
被加熱物116が低抵抗非磁性金属以外の材質であった場合、抵抗が高いために、共振が継続しにくく共振電流が流れにくい。特に、本実施の形態では、従来方式のように共振コンデンサ110にコンデンサを追加することがないため、共振コンデンサ110の調整幅がやや狭いとも言える。
本実施の形態では、被加熱物116が低抵抗非磁性金属以外の材質であった場合、共振周波数が約43kHzになるよう共振コンデンサ110および短絡/開放切り換え手段111が設定されている。被加熱物116の高周波抵抗は、43kHzでの抵抗値となるために従来方式での約20kHzに比べて高い値となる。そのため、被加熱物116の材質が非常に抵抗の高い金属の場合、43kHzでの高周波抵抗では十分な共振電流が流れず、所定の加熱電力が得られない場合も生じる。
しかしながら、本実施の形態のような構成であれば、インバータ117の電源である平滑手段106と加熱コイル109および共振コンデンサ110間に配置されるスイッチング素子のいずれかが導通するよう制御することが可能である。つまり、インバータ117の電源から加熱コイル109へ電力を供給する時間を長くすることができるため、入力可能な被加熱物116の加熱電力を高く設定できる。従って、インバータ117の設計自由度を大きくすることが可能である。
本実施の形態では、インバータ117に2つのスイッチング素子の直列接続体を2個内包する構成を挙げたが、これに限定するものではない。商用交流電源101によっては、2つのスイッチング素子の直列接続体を3個内包しても同様以上の効果が得られる。
また、昇圧手段118の昇圧量を制御して平滑手段106の電圧を変更し、インバータ117出力を高く(または低く)設定してもよい。