JP4980163B2 - 成形性に優れる複合組織鋼板およびその製造方法 - Google Patents

成形性に優れる複合組織鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、伸び及び打ち抜き穴広げ性等の成形性に優れた複合組織鋼板およびその製造方法に関するものである。特に、自動車の足廻り部品やロードホイール等のように成形性に加え耐久性も求められる複合組織鋼板及びその製造方法に関するものである。
近年、自動車の燃費向上などのために軽量化を目的として、Al合金等の軽金属や高強度鋼板の自動車部材への適用が進められている。ただし、Al合金等の軽金属は比強度が高いという利点があるものの、鋼に比較して著しく高価であるため、その適用は特殊な用途に限られている。従って、より広い範囲で自動車の軽量化を推進するためには、安価な高強度鋼板の適用が強く求められている。
このような高強度化の要求に対して、これまでは車体重量の1/4程度を占めるホワイトボティーやパネル類に使用される冷延鋼板の分野において、強度と深絞り性を兼ね備えた鋼板や焼付け硬化性のある鋼板等の開発が進められ、車体の軽量化に寄与してきた。ところが現在、軽量化の対象は車体重量の約20%を占める構造部材や足廻り部材にシフトしてきており、これらの部材に用いる高強度熱延鋼板の開発が急務となっている。
ただし、高強度化は一般的に成形性(加工性)等の材料特性を劣化させるため、材料特性を劣化させずに如何に高強度化を図るかが高強度鋼板開発の鍵になる。特に構造部材や足廻り部材用鋼板に求められる特性としては、伸び、打ち抜き穴広げ性、疲労耐久性等が重要であり、高強度とこれら特性を如何に高次元でバランスさせるかが重要である。
例えば、昨今普及しつつある高意匠性ロードホイールディスク用鋼板に求められる特性としては、張り出し成形性、打ち抜き穴広げ性と疲労耐久性が特に重要視されている。これは、ロードホイールディスクの成形工程の中でも、スポーク部・ハット部の張り出し成形、飾り穴近傍のバーリング加工(穴広げ加工)が特に厳しく、またホイールの部材特性で最も厳しい基準で管理されているのが疲労耐久性であるためである。
現在、これらロードホイールディスク用高強度熱延鋼板として、部材での疲労耐久性を重視して疲労特性に優れる590MPa級のフェライト−マルテンサイトの複合組織鋼板(いわゆるDua1 Phase鋼)が用いられている。しかし、近年、ロードホイールディスクの高意匠化に伴い、より複雑な形状に成形する必要性が生じているため、そのための鋼板には、より高いレベルの成形性(伸び、打ち抜き穴広げ性)が求められるようになっている。打ち抜き穴広げ性とは、打ち抜きにより剪断された鋼板の打ち抜き端面の成形性であり、変形により打ち抜き端面に生じた亀裂の伝播しやすさによってその成形性が定まり、通常「打ち抜き穴広げ率(穴広げ率、λ)」により測定される。
打ち抜き穴広げ率(λ)とは、図1(a)の打ち抜き金型の模式図に示すように、まず、材料4を打ち抜きダイ2及びしわ押さえ3で固定し、次に図1(b)の打ち抜き図に示すように、打ち抜きポンチ1を移動させることにより材料4を剪断部分5及び被剪断部分6に分離し、得られる被剪断部分6の打ち抜き穴を図1(c)の穴拡げ試験の図に示すようにポンチ7の移動9で押し広げて穴径の拡大10をし、打ち抜き端面8に入った亀裂が板厚貫通した時点での穴径の、初期穴径に対する拡大率である。即ち、打ち抜き穴広げ率(λ)=(d−d)/d×100(%)で表すことができる。ここで、dはポンチが移動し、打ち抜き端面8の亀裂が板厚を貫通した時点の穴径、dは初期穴径を意味する。この試験を打ち抜き穴広げ試験と呼ぶ。この打ち抜き抜き穴広げ率(λ)に対しては、打ち抜き金型のクリアランス(Cl)(図1(a)でs/t×100(%)、ここで、tは板厚、sは隙間)も重要な影響因子となっている。
前述のニーズに対応するためには、TS590MPa級で伸び=28%、打ち抜き穴広げ率=80%以上、望ましくは110%以上の熱延鋼板が求められる。
更には、実際の部品の製造工程における打ち抜きは、金型の取り付け精度や金型磨耗等の問題から5〜20%の間で変動するため、そのクリアランスの範囲で上目標を達成する必要がある。
そのような、複合組織鋼板の成形性をより改善するために、フェライト分率及び第二相の硬さを適度の範囲に制御することによりそれらの界面の歪みを制御して穴広げ成形でのミクロクラックを防止し穴広げ性を改善する発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、380〜540MPa級の引張強度であっても軟鋼板並みのプレス成形性を得ることができる薄鋼板として、質量%にて、C:0.01〜0.1%、Si:0.6〜1.8%、Mn:0.1〜2%、P≦0.1%、S≦0.03%、Al:0.005〜1%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板であって、そのミクロ組織が主にポリゴナルフェライトから成り、5μm以上の炭化物を含む第二相の体積分率が5%以下かつアスペクト比が2以下であることを特徴とする局部延性に優れる薄鋼板(例えば、特許文献2参照)や、鋼板の加工硬化性を向上させ、部品強度を著しく向上させることを可能とする加工硬化性に優れた熱延鋼板として、質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.005〜1.0%、Mn:0.2〜2.5%、P:0.005〜0.05%、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N:0.007〜0.02%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、鋼組織が、フェライトからなる主相と、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる第二相とで構成され、該第二相は体積分率3〜30%、平均径5μm以下のものであり、かつ該第二相の平均硬度の前記主相の平均硬度に対する比が3.0以下であることを特徴とする加工硬化性に優れた熱延鋼板(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
しかし、鋼板の成形性を改善するには、主に鋼板の穴広げ性と伸び(El)を同時に改善する必要があるが、上記に提案されている発明等では、穴広げ性と伸びのバランスは必ずしも良好でなく、また、広い打ち抜きクリアランスの範囲で安定して打ち抜き穴広げ率を改善する技術は開示されておらず、高意匠性ホイールディスクに適した十分な材質とは言えないという問題がある。
特開2001−303187号公報 特開2003−293082号公報 特開2005−298967号公報
本発明は、上記に鑑み、伸び及び打ち抜き穴拡げ性等の成形性に優れる複合組織鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、590MPa級の複合組織熱延鋼板の穴広げ性と伸び(El)の双方を同時に改善することについて鋭意研究し、穴広げ性の改善には、フェライト主相(面積分率で90%以上)とし、第二相の形状(第二相の最大の長径≦20μm)、密度(1mm 当たりに10000個未満)を最適化した上で、さらには、集合組織を制御し、板厚1/2t部の{100}面の面強度を2.5以下とすることが重要であることを知見した。このようにすることによって、打ち抜き・穴広げ成形時の端面の亀裂先端でのボイド発生を抑制し、亀裂の成長を妨げることが可能となるものである。また、伸び(El)の改善には、Si:0.8〜3.0%の添加が有効であることを知見した。即ち、Siはフェライト中に固溶することによりフェライトの加工硬化を促進するので、伸び(El)が改善されるものと推定される。
本発明は、これらの知見に基づいて完成したもので、その発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.01〜0.2%、
Si:0.8〜3.0%、
Mn:0.5〜3%、
P≦0.1%、
S≦0.01%、
Al:0.005〜2.0%、
N≦0.02%、
を含み、
残部がFe及び不可避的不純物からなる成分の鋼板であって、面積分率が90%以上、100%未満であるフェライトを主相とし、第二相がマルテンサイト、またはベイナイトまたはその双方からなる組織であり、かつ、圧延方向に平行な断面での第二相の密度が1mm当たりに10000個未満であり、かつ第二相の最大の長径が20μm以下であり、かつ1/2t部の{100}面強度が2.5以下であることを特徴とする、成形性に優れた複合組織鋼板。
(2) 前記鋼が、さらに質量%で、Cu:0.01〜2%を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
(3) 前記鋼が、さらに質量%で、B:0.0002〜0.003%を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
(4) 前記鋼が、さらに質量%で、Ni:0.01〜1%を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
(5) 前記鋼が、さらに質量%で、Ca:0.0005〜0.01%、REM:0.0005〜0.02%の一種または二種を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
(6) 前記鋼が、さらに質量%で、Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.005〜0.5%、Mo:0.05〜1%、V:0.02〜0.5%、Cr:0.01〜1%、Zr:0.02〜0.2%の一種または二種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
(7)第二相の硬さの平均値をフェライトの硬さの平均値で除した値が1.5以上2以下であることを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
(8)上記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar3+250℃以上の温度で粗圧延を終了し、かつその歪速度を0.2/秒以下とし、かつAr3変態点温度+40℃以上Ar3変態点温度+140℃以下で熱間仕上圧延を終了し、次に30℃/秒以上の冷却速度で冷却し、その後650以上750℃以下の温度域で15℃/秒以下の冷却速度で5秒以上緩冷却を行い、その後、30℃/s以上の冷却速度で冷却して、340℃以下の巻取温度で巻き取ることを特徴とする成形性に優れた複合組織鋼板の製造方法。
本発明によれば、打ち抜き穴広げ性と伸び(El)との双方に優れた複合組織鋼板を得ることができ、高意匠性ホイールディスクに適した性質を有する成形性に優れた複合組織鋼板を提供できるという顕著な効果を奏するものである。
本発明の打ち抜き穴広げ性に優れる複合組織熱延鋼板の特徴とするところは、穴広げ性の改善のために、フェライト主相(面積分率で90%以上)とし、第二相の形状(第二相の最大の長径≦20μm)、密度(1mm当たりに10000個未満)を最適化した上で、さらには打ち抜き端面での亀裂の発生を抑制するために、集合組織を制御し、板厚1/2t部の{100}面の面強度を2.5以下とし、そして、伸び(El)の改善のために、Si:0.8〜3.0%を添加した点にある。
初めに以上の知見を得た経過について説明する。
表1に示す成分(鋼P)の鋼塊を用いて、実機または実験室にて、図2及び表2に示す熱延条件にて熱間圧延を行い、次に諸々のフェライト分率となるように冷却条件を変えて冷却を行い、最後にフェライト及びマルテンサイトからなる組織となるように室温まで急冷し、熱延鋼板を得た。この際粗圧延ではその最大の歪速度が0.1〜0.3/秒となるようにした。
得られた熱延板の引張試験は、供試材の1/2W部よりJIS Z 2201記載の5号試験片を加工し、JIS Z 2241記載の試験方法に従って行った。一方、打ち抜き穴広げ率については、同じく1/2W部より150mm×150mmの試験片を3枚加工し、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の穴広げ試験方法に従って評価した。また、その際、打ち抜きクリアランスを5、15、20%の3水準として広い打ち抜きクリアランス範囲での穴広げ率を調べた。
また、幅方向1/2W部から板面方向を向いた結晶方位を観察するためのX線回折試験片を加工し、板面方向を向いた{100}方位の面強度を求めた。
また、幅方向1/2W部から圧延方向断面の埋め込みサンプルを作成し、研磨した後、ナイタール腐食を行い、1/4t部にて組織硬さ調査を行った。組織硬さの測定は、荷重2.5gで10点測定でビッカース硬さを測定し求めた。また、全厚で第二相の圧延方向の最大サイズを測定した。また、同じく1/4t部にて0.2mm×0.2mmの視野内で第二相の個数(円相当径1.0μm以上)を測定し、1mm当たりの個数(密度)に換算した。同じく1/4t部より、フェライト分率を測定した。フェライト分率とは、ミクロ組織中におけるフェライト組織の面積分率で定義される。第二相の分率は、100−フェライト分率(%)となる。
Figure 0004980163
Figure 0004980163
以上の結果から得られたフェライト分率、第二相の最大の長径(μm)サイズと1/2W部の打ち抜き穴広げ率の関係を図3に示す。図中には、各々材料ごとにクリアランスを変えて調べた打ち抜き穴広げ率の最大値と最小値を示している。図3から明らかなように、フェライト分率が90%以上、第二相の最大長径が20μm以下の領域において、穴広げ率が最も良好となっていることが分かる。
図4に、1/2t部で測定した{100}方位の面強度と1/2W部の打ち抜き穴広げ率の関係を示す。図中には、各々材料ごとにクリアランスを変えて調べた打ち抜き穴広げ率を示している。ここでは、{100}方位は粗圧延条件が変わることにより変化しており、フェライト分率、第二相の形状は変化していない(フェライト分率=95%、第二相の最大長径長さ=17μm)。これより、打ち抜き穴広げ率を改善するには{100}方位が板面と平行になった集合組織を抑制する必要があり、板厚tの1/2t部における{100}面強度は2.5以下とする必要があることが分かる。これは、この方位の集合組織が発達することにより、変形時に板面方向に平行なクラックが発生しやすくなり穴広げ性を劣化させるためと推定される。本発明の鋼では、強度の確保のためにフェライトを微細化するため低温圧延を志向しており、そのため特に{100}方位が板面と平行になった特異な集合組織が発達しやすく、これを規制する必要がある。
図5に、第二相の密度と1/2W部の打ち抜き穴広げ率の関係を示す。図中には、各々材料ごとにクリアランスを変えて調べた打ち抜き穴広げ率を示している。ここで、第二相密度は、圧延温度により変化しており、フェライト分率、集合組織は大きく変化していない。これより、第二相の密度が小さくなり、10000個/mm以下とすることにより所定の穴広げ率が得られることが分かる。これは、この密度が小さいほど、第二相間の間隔が大きくなるため、変形時に第二相で発生したボイドの連結が抑えられるため、端面亀裂の成長が遅くなり穴広げ性が改善されるものと考えられる。
以上の組織の最適化により強度と打ち抜き穴広げ率のバランスは、広いクリアランスの範囲にわたって十分改良される(打ち抜き穴広げ率≧80%)が、厳しい加工を受ける用途が対象の場合、穴広げ率≧110%程度まで、更なる改善を行うことが望ましく、そのためは上記に加え、第二相の硬さを制御することが必要であることを本発明者らは知見した。次に、実験により、第二相の硬さの影響について調べた結果について説明する。
表1に示す成分の鋼塊を図2、表3に示す条件で熱間圧延、冷却を行い、巻き取り温度を室温から300℃の間で変え、第二相硬さのみの異なる熱延鋼板を得た。その熱延鋼板の第二相の硬さ(Hvs)とフェライト硬さ(Hvα)との比と打ち抜き穴広げ値(λ)との関係を図6に示す。図中には、各々材料ごとにクリアランスを変えて調べた打ち抜き穴広げ率を示している。ここで、得られた鋼板ではTS=590〜620MPaであり、またフェライト分率=94%、第二相長径=12.5μmの鋼について、第二相の硬さ(Hvs)とフェライト硬さ(Hvα)との比(Hvs/Hvα)を調べたものであるが、Hvs/Hvα=2以下の場合に、上記に述べたように穴広げ値(λ)が良好となることが分かる。
Figure 0004980163
本発明は以上を元に為されたものであり、以下に各々の要件の限定理由を説明する。
まず、本発明の打ち抜き穴広げ性に優れる複合組織鋼板の成分を限定した理由について説明する。
Cは、強度を確保し、また疲労特性の良好な複合組織鋼とするために必要な元素であるので0.01%以上の添加を必要とする。しかし、過多にあると、第二相が増加し穴広げ性が劣化するので上限を0.2%とする。穴広げ性を最適とし、かつ疲労強度も大きく劣化させない観点からは、C量は0.03%以上0.1%以下が好ましい。
Siは、本発明においては、強度及び伸びのバランスを良好とするために必要であり、特に、伸び(El)の改善には重要な役割を果たす元素であり、0.8%以上の添加を必要とする。その効果をROT冷却条件のばらつきがあっても確実に得るためには1.3%以上添加することが望ましい。しかし、過多になると、Ar3変態点が高くなりすぎ実際の熱間圧延工程において仕上げ圧延温度をそれ以上にすることが困難となり実際の圧延が不可能となるので、上限を3.0%とする。
Mnは、固溶強化元素として強度上昇に有効である。所望の強度を得るためには0.5%以上必要である。また、3%超添加するとスラブ割れを生ずるため、3%以下とするが、好ましくは1.0〜3%である。
Pは、鋼中に不可避的に含有される不純物であり低いほど好ましく、0.1%超含有すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼすと共に、疲労特性も低下させるので、0.1%以下とする。適用される部品によっては要求される疲労特性が厳しい場合もあるので、0.01%以下とすることが好ましい。
Sは、Pと同様に鋼中に不可避的に含有される不純物であり低いほど好ましく、多すぎると穴広げ性を劣化させるA系介在物を生成するので、極力低減させるべきであるが、0.01%以下ならば許容できる範囲である。加工の厳しい部品へ適用される場合もあるので、好ましくは0.003%以下とする。
Alは、溶鋼脱酸のために0.005%以上含有させる必要がある。また、固溶強化により強度を得るためにも添加することが好ましい。しかし、コストの上昇を招くためその上限を2.0%とする。
Nが過多にあると時効硬化を促進し成形性を劣化させるので好ましくないが、完全に除去するのは大幅なコスト増加につながるため、0.02%を上限とする。成形性を確保する観点から、好ましくは0.005%以下とする。
Cuは、固溶状態で疲労特性を改善する効果があるので、必要に応じ添加する。ただし0.01%未満ではその効果は少なく、2%を超えて含有しても効果が飽和する。そこでCuの含有量は0.01〜2%の範囲とするが、好ましくは0.1〜1%である。
Bは、Cuと複合添加することにより疲労限を上昇させる効果があるので、必要に応じ添加する。ただし、0.0002%未満ではその効果を得るために不十分であり、0.003%超添加するとスラブ割れが起こる。よってBの添加は0.0002%以上、0.003%以下とするが、好ましくは0.0002〜0.001%である。
Niは、Cu含有による熱間脆性防止のために必要に応じ添加する。ただし、0.01%未満ではその効果が少なく、1%を超えて添加してもその効果が飽和するので、0.01〜1%とするが、好ましくは0.03〜0.5%とする。
CaおよびREMは、破壊の起点となったり、加工性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、0.0005%未満添加してもその効果がなく、Caならば0.01%超、REMならば0.02%超添加してもその効果が飽和するのでCa=0.0005〜0.01%、REM=0.0005〜0.02%添加することが好ましい。
さらに、強度を付与するために、Ti、Nb、Mo、V、Cr、Zrの析出強化もしくは固溶強化元素の一種または二種以上を添加しても良い。ただし、それぞれ0.01%、0.005%、0.05%、0.02%、0.01%、0.02%未満ではその効果を得ることができない。また、それぞれ0.5%、0.5%、1%、0.5%、1%、0.2%を超え添加しても、その効果は飽和する。
次に、本発明で限定したミクロ組織(複合組織)について説明する。
本発明の複合組織鋼板においては、穴広げ性と伸び(El)との双方を改善するために鋼板のミクロ組織を面積分率最大の相をフェライトとする必要がある。第二相は、強度を確保する観点から必要である。しかし、フェライトのみで十分な強度が得られる場合は必ずしも必要ではない。より高い強度を得るためには、第二相はできるだけ硬質とすることが好ましく、マルテンサイト、ベイナイト等の低温変態組織とする必要がある。
高い強度を得る観点からは最も硬質なマルテンサイトを第二相とすることが好ましい。しかし、これは硬質であるために変形時にフェライトとの界面に歪が溜まり、ボイドを発生しやすく、穴広げ値を劣化させるので、より高い穴広げ値を得る場合には、第二相にマルテンサイトよりも軟質のベイナイトを含ませる、または全てベイナイトとすることが好ましい。第二相の分率は、変形時に第二相とフェライトとの界面での歪を低減し変形時のボイドを防ぐため第二相を低減する必要があるので、10%以下とする必要がある。より厳しい要求に耐える穴広げ性を得るためには、第二相分率は好ましくは6%以下とする。一方、第二相分率が低すぎると強度が得られなくなるのに加え、C、Mn量が多い時等ではROT冷却においてフェライト変態しにくくなるため、そのためのROT冷却(緩冷却時間の確保など)を行うことが困難となるので、好ましくは2%以上とする。以上から、フェライト分率(=100−第二相分率)は、90%以上、好ましくは94%以上98%以下とする。
本発明の鋼の場合、穴広げ性は、フェライトと第二相の界面でのボイドの発生により支配される。第二相のサイズが大きいほど、それとフェライトの界面のボイドは発生しやすい。従って、穴広げ性を改善するには、第二相の中でも最大サイズの第二相を微細とする必要がある。この理由から、第二相の最大の長径は20μm以下とする。
穴広げ性を改善するためには、フェライトと硬質相の界面で発生したボイドの成長、連結を抑制することが必要であるが、この連結を防ぐ観点からは第二相の密度を圧延方向に平行な断面での第二相の密度が1mm当たりに10000個未満と規定する。
また、本発明では、{100}方位が板面と平行になった集合組織を抑制する必要があり、板厚tの1/2t部における{100}面強度は2.5以下とする。これは、この方位の集合組織が発達することにより、変形時に板面方向に平行なクラックが発生しやすくなり穴広げ性を劣化させるためである。本発明の鋼では、強度の確保のためにフェライトを微細化するため低温圧延を志向しており、そのため特に{100}方位が板面と平行になった特異な集合組織が発達しやすく、これを規制する必要がある。
本発明の鋼板を適用するに当たり、より加工の厳しい部品に適用する場合は、より穴広げ性を改善する必要があり、その場合、組織硬さを調整することが好ましい。この観点から第二相及びフェライトの硬さ比(Hvs/Hvα)を2以下に限定する。一方、第二相が軟らかすぎると所定の強度を得るのが困難となるので、Hvs/Hvαは1.5以上とする。フェライト相、第二相等の組織硬さの調査は、荷重2.5g程度のミクロビッカース硬さ計で測定点数を10以上として行う。しかし、第二相が微細な場合、荷重を2.5gより小さくする必要があり、その場合ナノインデンター等を用い1.0g以下の荷重で硬さ測定を行うことが好ましい。
次に、本発明の複合組織鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、目的の成分含有量になるように成分調整した溶鋼を鋳込むことによって得たスラブを、高温鋳片のまま熱間圧延機に直送してもよいし、室温まで冷却後に加熱炉で再加熱した後に熱間圧延してもよい。
本発明では、特に低温での熱間圧延により強くなる{100}面が板面方向に向いた 集合組織を抑制する必要がある。これは、この集合組織の発達により、打ち抜き穴広げ成形時に打ち抜き端面の亀裂先端で板面方向に平行な得意なクラックが発生し、亀裂の伝播を促し、穴広げ性を劣化させるためである。この集合組織は、熱間圧延での歪の蓄積により生ずるため、これを抑制するためには熱間圧延の粗圧延の工程において、できるだけ高温で粗圧延を行い、かつ小さい歪速度で行うことが重要と考えられる。これにより粗圧延工程において各パスの圧下時に動的な再結晶または動的な回復が生じ、圧延による集合組織が弱められる効果が得られる。この観点から、粗圧延の条件は、全パスをAr3+250℃以上で行い、かつ、歪速度を0.2/秒以下に規定する。
尚、歪速度は下式から求める。
ε*:パス歪み速度(S-1
ε*=(v/(R×h10.5)×(1/r0.5)×ln{1/(1−r)}
ここで、h1:パス入側板厚(mm)、h2:パス出側板厚(mm)、r=(h1−h2)/h1、R:ロール径(mm)、v:パス出側速度(mm/秒)を意味する。
仕上げ圧延終了(最終パス)温度(FT)は、フェライト粒を微細化し、それにより第二相を微細としてそのサイズを小さくするためにAr3+140℃以下とする必要がある。しかし、仕上げ圧延終了温度が低すぎ、Ar3温度+40℃以下となると、フェライト、第二相が微細となりすぎて逆に第二相密度が過度に大きくなるのに加え、更には組織が層状組織となって第二相の最大サイズも増加し穴広げ性を劣化させる可能性もあるので、仕上げ圧延終了温度はAr3+40℃以上とする。
尚、Ar3温度は下式から求める。
Ar3=868−396×C+25×Si−68×Mn−36×Ni−21×Cu−25×Cr+30×Mo
また、フェライト粒、および第二相を細粒とするためには、以上の仕上げ圧延の後に30℃/秒以上の冷却速度でAr3温度以下の温度まで、冷却を行う必要がある。30℃/秒未満の冷却速度ではフェライト粒径を細粒とすることができない。フェライト結晶粒や第二相の形状を等方的な形状とし第二相の扁平化を防ぐためには好ましくは仕上げ圧延終了後1.5秒以内の空冷(冷却速度≦15℃/秒)を行うことが望ましい。
本発明の鋼では、第二相分率を10%以下とする必要があるが、そのためには、ROT冷却の際に、650℃以上750℃以下の温度域で15℃/秒以下の冷却速度で5秒以上冷却を行い、フェライト変態を組成により定まる最大の量近くまで生じさせる必要がある。
その後、バーリンク性を劣化させるパーライト等の低温変態組織を出さないためには、再び30℃/秒以上の冷却速度で巻取り温度まで冷却を行う。
巻き取り温度(CT)は、適度な十分な硬さを持った下部ベイナイト、またはマルテンサイトとして強度を得るため、340℃以下とする必要がある。それ以上の巻き取り温度とした場合、第二相が上部ベイナイトまたはパーライトととなり、強度が得られずまた穴広げ性も良好でない。穴広げ性を良好とするためには、適度な硬さを有する下部ベイナイトとすることが好ましく、このためには巻き取り温度は250〜340℃の範囲が好ましい。
本発明の複合組織熱延鋼板の製造方法によれば、鋼組成と相俟って、面積分率にて90%以上のフェライトを主相とし、残部がマルテンサイト、またはベイナイトまたはその双方からなる組織であり、かつ、圧延方向に平行な断面での第二相の密度が1mm当たりに10000個未満であり、かつ、第二相の最大の長径が20μm以下であり、かつ板厚tの1/2t部の{100}面強度が2.5以下である、打ち抜き穴広げ性に優れる複合組織熱延鋼板を得ることができる。
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
表4に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製した後、連続鋳造して製造したスラブを、表5に示す熱間圧延条件にて圧延・冷却を行い、板厚3.2〜3.9mmの熱間圧延鋼板とした。
Figure 0004980163
Figure 0004980163
圧延条件の指標である温度は、コイルの幅方向の1/2W部で測定した。
得られた熱延板の引張試験は、供試材の1/2W部よりJIS Z 2201記載の5号試験片に加工し、JIS Z 2241記載の試験方法に従って行った。一方、打ち抜き穴広げ率については、同じく1/2W部より150mm×150mmの試験片を3枚加工し日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の穴広げ試験方法に従って評価した。打ち抜き穴広げ試験は、打ち抜きクリアランスを、5%、15%、20%で変えて試験を行った。
また、幅方向1/2W部から板面方向を向いた結晶方位を観察するためのX線回折試験片を加工し、板面方向を向いた{100}方位の面強度を求めた。
また、幅方向1/2W部から圧延方向断面の埋め込みサンプルを作成し、研磨した後、ナイタール腐食を行い、1/4t部にて組織硬さ調査を行った。組織硬さの測定は、荷重2.5gで10点測定でビッカース硬さを測定し求めた。また、全厚で第二相の圧延方向の最大サイズを測定した。また、同じく1/4t部にて0.2mm×0.2mmの視野内で第二相の個数を測定し、1mm当たりの個数(密度)に換算した。同じく1/4t部より、フェライト分率を測定した。フェライト分率とは、ミクロ組織中におけるフェライト組織の面積分率で定義される。第二相の分率は、100−フェライト分率(%)となる。
以上の調査結果を表6に示す。
Figure 0004980163
水準(1)、(2)、(12)、(13)、(15)〜(20)は、所定の条件を満たした本発明の鋼であり良好な強度、伸び、穴広げ率(λ)のバランスが得られている。
水準(3)では、粗圧延の歪速度が大きいため、{100}が大きく、穴広げ率が小さい。
水準(4)では、粗圧延の温度が低いため、{100}が大きく、穴広げ率が小さい。
水準(5)では、仕上げ圧延温度が低いため第二相密度が大きすぎ、穴広げ率が低い。
水準(6)では、仕上げ圧延温度が高いため、第二相が粗大となっており、穴広げ率が低い。
水準(7)では、仕上げ圧延後の冷却速度が小さいため、第二相が粗大となっており、穴広げ率が低い。
水準(8)では、ROTでの750〜650℃での緩冷却速度が速く、また750〜650℃での緩冷却時間が短いため、第二相分率が大きく、穴広げ率が低い。
水準(9)では、ROTでの750〜650℃での緩冷却時間が短いため、第二相分率が大きく、穴広げ率が低い。
水準(10)では、ROTでの650℃以下での冷却速度が小さいため、パーライトが生成しており穴広げ率が低い。
水準(11)ではCTが高いため、第二相が比較的軟質な上部ベイナイトとなっており強度が不十分であり、穴広げ率も低い。
水準(14)では、粗圧延の歪速度が大きいため、{100}が大きく、穴広げ率が小さい。
水準(21)では、Cが所定より低いため、強度が低い。
水準(22)では、Si量が規定より低いため、強度と伸びのバランスが劣位である。
水準(23)では、Mn量が規定より低いため、十分な強度が得られていない。
水準(24)では、Cが高すぎるため、第二相分率が大きく、穴広げ値が低い。
打ち抜き穴広げ試験を示す図である。 供試鋼の熱延条件を示す図である。 フェライト分率、第二相粒径と穴広げ率との関係を示す図である。 {100}面強度と穴広げ率の関係を示す図である。 第二相密度と穴広げ率の関係を示す図である。 第二相の硬さ(Hvs)とフェライト硬さ(Hvα)との比と穴広げ値(λ)との関係を示す図である。
符号の説明
1ポンチ
2打ち抜きダイス
3しわ押さえ
4材料
5剪断部分
6被剪断部分
7穴拡げポンチ
8打ち抜き端面
9ポンチの移動
10穴径の拡大
t板厚
s隙間

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.2%、
    Si:0.8〜3.0%、
    Mn:0.5〜3%、
    P≦0.1%、
    S≦0.01%、
    Al:0.005〜2.0%、
    N≦0.02%、
    を含み、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる成分の鋼板であって、面積分率が90%以上、100%未満であるフェライトを主相とし、第二相がマルテンサイト、またはベイナイトまたはその双方からなる組織であり、かつ、圧延方向に平行な断面での第二相の密度が1mm当たりに10000個未満であり、かつ第二相の最大の長径が20μm以下であり、かつ1/2t部の{100}面強度が2.5以下であることを特徴とする、成形性に優れた複合組織鋼板。
  2. 前記鋼が、さらに質量%で、
    Cu:0.01〜2%
    を含有することを特徴とする、請求項1に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
  3. 前記鋼が、さらに質量%で、
    B:0.0002〜0.003%
    を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
  4. 前記鋼が、さらに質量%で、
    Ni:0.01〜1%
    を含有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
  5. 前記鋼が、さらに質量%で、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    REM:0.0005〜0.02%
    の一種または二種を含有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
  6. 前記鋼が、さらに質量%で、
    Ti:0.01〜0.5%、
    Nb:0.005〜0.5%、
    Mo:0.05〜1%、
    V:0.02〜0.5%、
    Cr:0.01〜1%、
    Zr:0.02〜0.2%
    の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
  7. 第二相の硬さの平均値をフェライトの硬さの平均値で除した値が1.5以上2以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の成形性に優れた複合組織鋼板。
  8. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar3+250℃以上の温度で粗圧延を終了し、かつその歪速度を0.2/秒以下とし、かつAr3変態点温度+40℃以上Ar3変態点温度+140℃以下で熱間仕上圧延を終了し、次に30℃/秒以上の冷却速度で冷却し、その後650以上750℃態点温度以下の温度域で15℃/秒以下の冷却速度で5秒以上緩冷却を行い、その後、30℃/s以上の冷却速度で冷却して、340℃以下の巻取温度で巻き取ることを特徴とする成形性に優れた複合組織鋼板の製造方法。
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