JP4981036B2 - コンフォメーション病医薬組成物 - Google Patents
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Description
これまで、プリオン病を対象として予防、治療効果のある医薬品として、例えば、ラミニン結合部位を構成するアミノ酸配列からの6個の連続するアミノ酸残基から成る人為的に設計されたペプチド〔特許文献1参照〕、キノリン環やナフチリジン環などの含窒素複素環に、キノリン環、キニクリジン環、ピリジン環などの含窒素複素環式基、または芳香族アミン、ヒドラゾンなどの含窒素側鎖を有する化合物〔特許文献2参照〕などが、アルツハイマー病を対象として、例えばコオウレン属植物、バシクルモン属植物、ニチニチソウ、アヤメ属植物など特定の植物およびその抽出液〔特許文献3参照〕、ミリセチン、モリン、カテキン、エピカテキンなどのポリフェノール類〔特許文献4参照〕などが、また、アルツハイマー病を含むアミロイドーシスを対象として、グルコース・ペンタスルフェートのようなアニオン置換基を含有する糖〔特許文献5参照〕、アミロイドーシスを含む疾病を対象として、熱ショック蛋白質を誘導するゲラニルゲラニオール〔特許文献6参照〕、コンフォメーション病を対象として、例えば特定のアミノ酸配列を有する蛋白質〔特許文献7参照〕、神経保護作用を有する神経ペプチド〔特許文献8参照〕、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ペプチド、血管作動性腸管ペプチドなど血流促進、血圧低下作用をもつ生理活性ペプチド〔特許文献9参照〕などが提案されている。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC−TC5RW);信越化学工業(株)製、「TC−5RW」(商品名)(メトキシル基含量29.2重量%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9重量%、20℃における2重量%水溶液の粘度5.81mm2/s、1重量%水溶液のpH6.8)を用いた。
プリオン持続感染細胞を用いるイシカワ(Ishikawa)、ドウウラ(Doh−ura)らの検定評価法〔K.Ishikawa,K.Doh−ura,et al.、Journal of General Virology、2004年、85巻、1785−1790頁〕に準じ、抗プリオン効果のインビトロ評価を行った。ここでは神経芽細胞種細胞N2aに、スクレイピープリオンであるRML株を持続感染させたScN2a細胞を用い、これを6穴の培養用シャーレにコンフルエントの10%に相当する細胞数をまき、培養液中のHPMC濃度が0.1、または1mg/mLとなるようにHPMC水溶液を加えた。対照(0mg/mL)として滅菌蒸留水を培養液に加えた。細胞培養条件としては、終濃度10%の胎児ウシ血清を加えたOpti−MEM(GibcoBRL社製)を培養液として用いて、5%CO2雰囲気、37℃に調整した炭酸ガスインキュベータ内に培養用シャーレを3日間静置することにより行なった。コンフルエントとなった細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、細胞溶解バッファー[0.5%ポリオキシエチレン−p−オクチルフェノール(和光純薬工業(株)、「NP−40」(商品名)を使用した)及び0.5%デオキシコール酸ナトリウム添加PBS]で細胞を溶解し、溶解液を軽遠心(5,000×g、5分間)して得られた上清にプロテイナーゼK(PK)(メルク社製)を終濃度10μg/mLとなるように加え37℃で30分反応(蛋白質分解)させた後、フェニルメタンスルホニルフロライド(PMSF)を終濃度1mMとなるように加えて反応をとめた。その後、超遠心(100,000×g、4℃、30分間)して異常型プリオン蛋白を沈査として回収し、ウエスタンブロット法にてプリオン蛋白を解析した。ウェスタンブロット法の条件としては、15%トリス・グリシンSDS−PAGEゲルで電気泳動し、電気泳動した蛋白質をナイロンメンブラン(ミリポア社製、PVDFメンブレイン)にブロッティングし、プリオン蛋白に対するマウスモノクローナル抗体(SPI−BIO 社製、SAF83 (5,000倍希釈))、及びアルカリフォスファターゼ・コンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(プロメガ社製(20,000倍希釈)、化学発光検出試薬(アマーシャム社製、CDP−Star detection reagent)を使用してプリオン蛋白の検出を行った。
結果を図1に示す。この結果から、HPMC(TC−5RW)は濃度依存的にプリオン持続感染細胞中の異常型プリオン蛋白(すなわちプリオン)の形成を阻害していることがわかる。
〔評価方法〕
HPMC(TC−5RW)を用いて、Tg7マウス(ハムスター型プリオン蛋白を過剰発現した遺伝子改変マウス)と263K(ハムスターで継代されているスクレイピーのプリオン株)脳ホモジネートを用いるドウウラ(Doh−ura)らの検定評価法〔Katsumi Doh−ura,et al.、Journal of Virology、2004年、78巻、4999−5006頁〕に準じ、抗プリオン効果のインビボ評価を行った。ここでは、生理食塩水で1%(W/V)濃度とした263K脳ホモジネートの20μLをマウスの脳内に接種し、プリオンに感染させた。接種後14日、21日、28日、35日経過後それぞれについてマウスの背部皮下にHPMC(TC−5RW)75mgを投与した。投与方法としては、粉末状のHPMCをオブラート(旭光社製、三角型フクロ(商品名))1包に包み、皮下に埋入することにより行なった。
14日経過後に投与を開始した群では一週毎に計4回、21日経過後に投与を開始した群では一週毎に計3回、28日経過後に投与を開始した群では一週後の計2回、HPMC(TC−5RW)75mgを皮下に投与した。対照はHPMC非投与群(オブラートのみ投与)である。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを一元配置分散分析(one−way ANOVA)及びターキイ−クレイマー法(Turkey−Kramer法)による多重比較検定で解析した。
結果を図2に示す。
プリオン脳内感染から14日経過後にHPMC(TC−5RW)の投与を開始した群の潜伏期間は83.3±14.5日であり、21日経過後に投与を開始した群では72.0±7.0日、28日日経過後に投与を開始した群では65.3±6.3日、35日経過後に投与を開始した群では63.2±6.2日であり、対照群の47.6±2.7日よりHPMC投与により有意(いずれもp<0.01)な潜伏期間延長が見られた。さらに、14日目投与開始群は28日目投与開始群や35日目投与開始群に比して有意(ともにp<0.05)に潜伏期間が長く、脳内感染後の投与時期が早いほどプリオン病に対する治療効果は優れていた。
〔評価方法〕
HPMC(TC−5RW)を、単回の皮下投与と複数回の皮下投与の比較を行った。
実施例2と同様の実験を行い、HPMC(TC−5RW)100mgを脳内感染から1週間経過後に皮下に1回投与した群(単回)と、脳内感染から1週間経過後、2週間経過後、3週間経過後の3回投与した群とで比較を行った。同様にして、HPMC(TC−5RW)100mgを脳内感染から3週間経過後に皮下に1回投与した群(単回)と、脳内感染から3週間経過後、4週間経過後、5週間経過後の3回投与した群での比較も行った。なお対照群としてHPMC非投与群(オブラートのみ投与)を準備した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータは、実施例2と同様に解析した。
結果を図3に示す。
脳内感染から1週間経過後にHPMCを単回投与した群の潜伏期間は86.0±4.4日で、脳内感染から1週間経過後より1週毎に3回投与した群の潜伏期間は97.8±5.6日であり、複数回投与で有意(p<0.01)な潜伏期間延長が見られ、その差は約12日であった。しかし、脳内感染から3週間経過後にHPMCを単回投与した群の潜伏期間84.2±10.4日と、脳内感染から3週間経過後より1週毎に3回投与した群の潜伏期間85.2±6.9日では、有意差はみられなかった。従って、感染早期からの投与では複数回投与は有効であるものの、その効果は大きくはなかった。
〔評価方法〕
実施例2と同様の実験を行い、脳内感染から5日経過後にHPMC(TC−5RW)15、25、50、100、150、200mgのそれぞれを背部皮下に単回投与した。なお対照群としてHPMC非投与群(オブラートのみ投与)を準備した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータは、実施例2と同様に解析した。
結果を図4に示す。
HPMC(TC−5RW)は100mgまでは用量依存的に潜伏期間の延長が見られ、100mg投与では潜伏期間93.0±12.5日、150mg投与では117±18.6日、200mg投与では110.7±30.9日で有意差が認められず、100mgの投与でほぼ飽和状態となった。なお、200mg投与群では2匹がこの量のHPMC投与に耐えられずに投与2日目に死亡した。
〔評価方法〕
実施例2と同様の実験を行い、脳内感染の74日前、同18日前、同9日前、脳内感染時、および脳内感染から22日経過後のそれぞれのマウス群にHPMC(TC−5RW)75mgを背部皮下に単回投与した。なお対照群としてHPMC非投与群を準備した。マウスは8週齢以上で、各群内で雄雌を各3匹(体重20〜25g)使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図5に示す。
対照群であるHPMC非投与では潜伏期間が45.3±1.9日であり、HPMC(TC−5RW)を脳内感染前74日に投与した群では潜伏期間が76.7±9.7日、同18日に投与した群では80.8±8.3日、同9日に投与した群では86.8±6.2日、脳内感染時の投与では85.3±8.9日、脳内感染から22日経過後では75.1±7.8日であり、対照群とは有意(いずれもp<0.01)に潜伏期間の延長がみられた。特筆すべきデータとして、脳内感染74日前、同18日前、同9日前、脳内感染時のそれぞれの群の間ではプリオン病に対する治療予防効果に有意差が認められなかった。脳内感染以前(実施例5の実験では2ヶ月以上前であっても)の単回投与で、脳内感染時に投与した場合と同等のプリオン病に対する治療予防効果が見られたことより、HPMC(TC−5RW)は極めて優れた予防的効果を発揮することが明らかとなった。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−50)〕;信越化学工業(株)製、「60SH−50」(商品名)(メトキシル基含量28.8%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9%、20℃における2重量%水溶液の粘度50.4mm2/s(HPMC(TC−5RW)の約9倍の分子量)、1重量%水溶液のpH6.3、)を使用した。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−4K)〕;信越化学工業(株)製、「60SH−4000」(商品名)(メトキシル基含量29.4%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9%、20℃における2重量%水溶液の粘度3860mm2/s(HPMC(TC−5RW)の約700倍の分子量)、1重量%水溶液のpH6.7)を使用した。
〔評価方法〕
実施例2と同様の実験を行い、脳内感染の6.5ヶ月前にマウスに各種セルロースエーテル類100mgを背部皮下に単回投与した。なお対照群としてHPMC非投与群を準備した。マウスは8週齢以上で、各群内で雄雌を各7匹(体重20〜25g)使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図6に示す。
対照であるHPMC非投与群では脳内感染から67日以内に全例が発症死亡したのに対して、脳内感染後102日を経過してHPMC(TC−5RW)投与群およびHPMC(60SH−4K)投与群では約4割が生存しており、HPMC(60SH−50)投与群では9割以上が発症死亡を逃れている。対照群に比較してセルロースエーテル類投与群では有意(いずれもp<0.01)な潜伏期間の延長がみられた。特にHPMC(60SH−50)投与は、HPMC(TC−5RW)投与やHPMC(60SH−4K)投与よりも有意(P<0.01)に発症遅延効果が高かった。以上の結果よりHPMC、特にHPMC(60SH−50)は半年以上前の投与であっても極めて優れた予防効果を発揮することが明らかとなった。
〔評価方法〕
実施例2と同様の実験を行い、脳内感染の1週間前、5週間前、あるいは1週間前および5週間前にHPMC(TC−5RW)の25mg/mL濃度のPBS溶液をマウス腹腔内に0.6mLあるいは1.2mL投与した。なお対照群として脳内感染1週間前に腹腔内にPBS1.2mLを投与した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図7に示す。
脳内感染の1週間前と5週間前に2回投与を行っても、1週間前あるいは5週間前に2回分の投与量を1回投与したものと発症遅延効果に差がなく、複数回投与による加乗効果は見られなかった。このことは抗体を介する獲得免疫のような生体防御機構が作用機序に関与しているとは考え難いことを示している。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5EW)〕;信越化学工業(株)製、「TC−5EW」(商品名)(メトキシル基含量28.9%、ヒドロキシプロポキシル基含量9.0%、20℃における2重量%水溶液の粘度2.9mm2/s(TC−5RWの約2分の1の分子量)、1重量%水溶液のpH6.8)を用いた。
・メチルセルロース〔MC(SM−4)〕;信越化学工業(株)製、「SM−4」(商品名)(メトキシル基含量29.5%、20℃における2重量%水溶液の粘度3.93mm2/s、1重量%水溶液のpH6.9)を用いた。
・ヒドロキシプロピルセルロース(HPCL);日本曹達(株)製、「HPC−SSL」(商品名)(ヒドロキシプロポキシル基含量62.4%、20℃における2重量%水溶液の粘度2.7mm2/s、1重量%水溶液のpH5.5)を用いた。
実施例2と同様の実験を行い、HPMC(TC−5RW)、HPMC(TC−5EW)、MC、HPCLのそれぞれを25mg/mL濃度のPBS溶液とし、脳内感染から5日経過後のマウス腹腔内に1mL単回投与した。なお対照群として同様に腹腔内にPBS1mLを単回投与した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図8に示す。図中、[TC−5EW]、[TC−5RW]、[SM−4]、[HPCL]、[PBS]は、それぞれHPMC(TC−5EW)、HPMC(TC−5RW)、MC(SM−4)、HPCL、PBSを示している。
HPMC(TC−5RW)の潜伏期間が75.4±10.6日、HPMC(TC−5EW)が74.0±5.0日、MC(SM−4)が79.3±8.5日で、これらの群間ではプリオン病に対する治療効果に有意差はみられなかった。一方、HPCLの潜伏期間は56.3±3.2日であり、前の3つの群とは有意(p<0.01)に治療効果が低かった。しかし、HPCL群は、対照群であるPBSの潜伏期間48.0±3.5日と比較して約8日程度の延長ではあるが、PBSとは有意(p<0.01)な差があった。
〔評価方法〕
実施例8と同様にして実験を行った。ただし、HPMC(TC−5RW)の25mg/mL PBS溶液を、脳内感染の6時間前に尾静脈内に300μL単回投与した。対照群は、同様に尾静脈内にPBSを300μL単回投与した。マウスは、8週齢以上の雄各6匹(体重約25g)を一群として、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。
結果を図9に示す。対照群の潜伏期間49.8±2.6日に対し、HPMC投与群では64.2±4.5日であり、HPMC投与群で有意な(P<0.01)発症遅延効果を示した。この結果は、末梢静脈内への単回投与でもHPMCが有効であることを示している。
〔評価方法〕
実施例8と同様にして実験を行った。ただし、4週間連続注入が可能なアルゼット(Alzet)浸透圧ポンプ〔デュレクト社(DURECT Corporation)製、「Model 2004」(型番)〕を用い、ポンプをカニューレに接続し、カニューレの先端をマウスの大脳の第3脳室に挿入してマウス脳室内に4週間連続的に注入した。浸透圧ポンプをマウス背部皮下に留置し、ここでは、HPMC(TC−5RW)の0.25mg/mL、2.5mg/mL、25mg/mL濃度の各PBS溶液、およびPBSのみ(対照群)をそれぞれ充填したポンプから、脳内感染から8日経過したマウスの脳室内に送り込み、HPMC(TC−5RW)を1日あたり1.5μg、15μg、150μg、および0μg(対照群)投与した。マウスは8週齢以上の雄各6匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図10に示す。
対照群の潜伏期間が54.0±5.7日に対し、HPMC投与群では、1.5μg/日の投与で68.6±9.7日、15μg/日の投与で80.8±4.4日、150μg/日の投与で128.8±17.0日となり、有意(それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.01)な治療効果を示し、かつ投与濃度依存的に効果が増大した。検討した限りの投与濃度では、マウスに障害を起こさず効果の飽和状態は観察されなかったが、150μg/日投与群の治療効果は、HPMC皮下投与で得られた効果の飽和状態〔図4における100mg(潜伏期間:93.0±12.5日)、200mg(潜伏期間:110.7±30.9日)に近いと考えられる。
〔評価に用いたセルロースエーテル類および比較の薬剤〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC(60SH−400);信越化学工業(株)製、「60SH−400」(商品名)(メトキシル基含量29.1重量%、ヒドロキシプロポキシル基含量9.0重量%、20℃における2重量%水溶液の粘度450mm2/s(TC−5RWの約80倍の分子量)、1重量%水溶液のpH6.8)を使用した。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC(HPMC602);信越化学工業(株)製、「HPMC602」(商品名)(メトキシル基含量29.1%、ヒドロキシプロポキシル基含量9%、20℃における2重量%水溶液の粘度1.68mm2/s(TC−5RWの約3.5分の1の分子量)、1重量%水溶液のpH6.8)を使用した。
・ペントサンポリサルフェート(PPS);ペントサンポリサルフェートナトリウム〔オーストラリア・バイオファーム社(Biopharm Australia Pty Ltd.)製、「Cartrophen Vet」(商品名)〕を使用した。
〔評価方法〕
実施例10と同様にして実験を行った。用いたHPMCはHPMC類は、PBS液で25mg/mL濃度に調製し、PPSは、PPSナトリウム注射液から乾固してアルコール性防腐剤を除いた後にPBS液で1.25mg/mL濃度に溶解し、それぞれポンプに充填した。0.1%(W/V)濃度の263K脳ホモジネートの20μLをマウスの脳内に接種した後、3日目より試料溶液を脳室内への投与を開始した。マウスは8週齢以上の雄各7匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図11に示す。
対照群の潜伏期間が62.0±3.2日、PPS投与群の潜伏期間は109.0±7.2日であった。それに対してHPMC(HPMC602)投与群が138.3±6.5日、HPMC(60SH−400)投与群およびHPMC(TC−5RW)投与群がそれ以上の潜伏期間を示し、224日を経過しても各々14%、20%が発症死亡を逃れており、HPMC類はPPSよりも有意(それぞれp<0.01)に有効である。用いたPPSの製品、調製の仕方は報告例〔Katsumi Doh−ura, et al.,Journal of Virology,2004年、78巻、4999−5006頁〕と全く同じであり、最も治療効果が発揮されたと報告のある濃度にほぼ近い濃度を用いて比較検討した結果であり、HPMCが極めて安全で優れた治療効果を発揮することを示している。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・メチルセルロース〔MC(SM−4)〕;実施例8に記載。
〔評価方法〕
皮下投与は実施例2と同様に、脳室内投与は実施例8と同様にして実験を行った。ただし、1%(W/V)濃度の263K脳ホモジネートの20μLをマウスの脳内に接種した後に、MC(SM−4)の50mg/mL水溶液を0.5mLまたは1.0mL腹腔内投与、あるいは25mgまたは50mgを皮下投与した。重複投与群には、0.5mLの腹腔内投与と25mgの皮下投与を行った。対照群には蒸留水0.5mLの腹腔内投与とオブラートのみの皮下投与を行った。マウスは8週齢以上の雄各4匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図12に示す。図中の〔ip〕は腹腔内投与、〔sc〕は皮下投与を示している。25mg腹腔内投与群、50mg腹腔内投与群、25mg皮下投与群、50mg皮下投与群のそれぞれの潜伏期間は77.5±5.8日、83.0±3.9日、82.4±3.1日、89.0±3.2日であるのに対して、25mg腹腔内投与+25mg皮下投与の重複投与群の潜伏期間は129.0±22.6日であった。このことは、異なる投与経路からの重複投与がプリオン病に対する治療効果を顕著に高めることを示している。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
〔評価方法〕
皮下投与は実施例2と同様に、脳室内投与は実施例10と同様に行った。0.1%(W/V)濃度の263K脳ホモジネートの20μLをマウスの脳内に接種した後、3日目にHPMC(TC−5RW)50mgを皮下投与あるいはHPMC(TC−5RW)25mg/mL濃度のPBS溶解液をポンプに充填して脳室内投与を開始した。重複投与群には、50mgを皮下投与し、同時に25mg/mL濃度液をポンプに充填して脳室内投与を行った。対照群にはオブラートのみの皮下投与またはPBS液のみをポンプに充填して脳室内投与を行った。マウスは8週齢以上の雄各7匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図13に示す。図中の〔icv〕は脳室内投与、〔sc〕は皮下投与を示している。
50mg皮下投与群の潜伏期間は111.5±14.1日であった。25mg/mL脳室内投与群や25mg/mL脳室内投与+50mg皮下投与の重複投与群では脳内感染後224日を経過しても各々14%、71%のマウスが発症死亡を逃れている。従って、皮下と脳室内への重複投与が皮下あるいは脳室内への単一経路投与よりも明らかに発症遅延効果に優れており、皮下投与と脳室内投与の組み合わせでも重複投与が治療効果を顕著に高めることが確認された。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
〔評価方法〕
実施例2と同様にTg7マウスと263K株プリオンを用い、プリオンを腹腔内接種して末梢感染させた。生理食塩水を用い1%(W/V)濃度とした263K脳ホモジネートを調製し、この100μLをマウスの腹腔内に接種してプリオン感染させた。なお、試験は腹腔内感染直前にマウスの背部皮下にHPMC(TC−5RW)100mgを投与しておき、対照群はHPMC非投与群(オブラートのみ)とした。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、腹腔内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。
結果を図14に示す。
HPMC非投与群(対照群)の潜伏期間が93.0±7.4日であったのに対し、HPMC投与群では610日を過ぎてもプリオン病の発病が全く観察されなかった。HPMCは、プリオンの標的臓器である脳に直接感染した際にも、末梢からの投与(皮下投与や末梢血管内投与や腹腔内投与)で優れた発症遅延効果を発揮したが、プリオンの末梢感染においてはその効果がより一層顕著であった。
〔評価方法〕
スクレイピープリオン株である263Kは、ハムスターでも感染によりプリオン病を起こす。5〜6週齢の雌のシリアンハムスター(3匹/群)(日本エスエルシーより入手、体重90g前後/匹)の脳内に、生理食塩水で1%(W/V)濃度とした263K脳ホモジネート40μLを接種してプリオン感染させた。脳内感染させて8日経過後、シリアンハムスターの背部皮下にHPMC(TC−5RW)を150mg、300mg、450mg、600mgのそれぞれを投与した。また、脳内感染させて8日経過後、16日経過後、56日経過後(発病による明らかな神経症状(失調症状)の出現が既に見られる時期)にシリアンハムスターの背部皮下にHPMC(TC−5RW)を300mg投与した(投与方法は実施例2の場合と同様オブラートに包み皮下に埋入)。対照群としてはHPMC非投与群(オブラートのみ)を準備した。脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定し、得られたデータを実施例2と同様に解析した。
投与量に関する検討結果を図15に、投与時期に関する検討結果を図16に示す。
投与量との関係をみると、HPMC非投与群(対照群)の潜伏期間が80.0±2.1日であるのに対し、HPMC投与群では150mg投与の群で潜伏期間が132.0±5.6日、300mg投与の群で155.0±12.7日、450mg投与の群で154.5±2.1日、600mg投与の群で157.5±2.1日でありいずれも顕著な潜伏期間の延長がみられた(いずれもp<0.01)。300mg以上では効果は飽和しており、150mgの効果は300mgの効果よりも少し劣っていた(p<0.01)。
投与時期との関係をみると、HPMC非投与群(対照群)の潜伏期間が80.0±2.1日に対して、HPMC投与群では、脳内感染8日経過後投与で潜伏期間が155.0±12.7日、16日経過後投与で123.2±4.3日、56日経過後投与で85.0±0.3日となり、感染後の投与時期が早いほど潜伏期間が長くなった(いずれもp<0.01)。発病後(脳内感染後56日目)の単回投与においても程度は小さいものの明らかな生命予後改善効果が観察されたことは特筆すべきことである。
以上の結果は、マウス以外の動物種でもセルロースエーテル類によるプリオン病に対する治療予防効果がみられることを示している。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5EW)〕;実施例8に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−50)〕;実施例6に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−4K)〕;実施例6に記載。
・メチルセルロース〔MC(SM−4)〕;実施例8に記載。
・ヒドロキシプロピルセルロース(HPCL);実施例8に記載。
・カルメロースカルシウム(カルボキシメチルセルロースカルシウム)〔CMC(ECG−505)〕;五徳薬品(株)製、「ECG−505」(商品名)を使用した。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート〔HPMCAS(AS−MG)〕;信越化学工業(株)製、信越AQOAT「AS−MG」(商品名)(メトキシル基含量23.3%、ヒドロキシプロポキシル基含量7.3%、アセチル基含量8.8%、サクシノイル基含量10.9%、20℃における2重量%水溶液の粘度2.74mm2/s)を使用した。
生理食塩水で1%(W/V)濃度とした脳ホモジネートを調製した。このホモジネート20μLを、C57BL/6マウス(日本エスエルシーより入手)の脳内にRML株を接種してプリオンに感染させた後、HPMC(TC−5EW)、HPMC(TC−5RW)、HPMC(60SH−50)、HPMC(60SH−4K)、MC(SM−4)、HPCL、CMC(ECG−505)、HPMCAS(AS−MG)のそれぞれ100mgを、脳内感染直前にマウス背部皮下に単回投与した(投与方法は実施例2の場合と同様オブラートに包み皮下に埋入)。なお対照群として化合物非投与群(オブラートのみ)を準備した。マウスは8週齢以上の雌5匹(体重約20g/匹)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図17に示す。図中、[TC−5EW]、[TC−5RW]、[60SH−50]、[60SH−4K]、[SM−4]、[HPC]、[ECG−505]、[AS−MG]は、それぞれHPMC(TC−5EW)、HPMC(TC−5RW)、HPMC(60SH−50)、HPMC(60SH−4K)、MC(SM−4)、HPCL、CMC(ECG−505)、HPMCAS(AS−MG)を示している。
対照群の潜伏期間が149.3±8.5日であるのに対し、ここに用いたセルロースエーテル類では、HPMC(TC−5EW)が174.3±5.9日、HPMC(TC−5RW)が202.5±13.4日、HPMC(60SH−50)が189.6±4.2日、HPMC(60SH−4K)が191.0±9.9日、MC(SM−4)が175.7±9.8日、HPCLが181.0±4.2日、CMC(ECG−505)が167.5±3.5日、HPMCAS(AS−MG)が164±0日となり、潜伏期間が長くなりプリオン病に対する治療効果を示した(いずれもp<0.01)。ただし、HPMCAS(AS−MG)では、3匹が100mgの投与量に耐えられずに投与2日以内に死亡した。
この実験系では、HPMC(TC−5RW)の分子量が2分の1程度〔HPMC(TC−5EW)〕になると効果が落ちることが示された。また、メチルセルロースがHPCLと同程度の効果を持ち、HPMC(TC−5RW)より効果が劣る点は263Kプリオン株を用いた結果とは異なる点であった。
〔評価方法〕
生理食塩水で1%(W/V)濃度とした福岡1株脳ホモジネート20μLを脳内に接種してプリオンに感染させたC57BL/6マウスにて、実施例16と同様にして実験を行った。
結果を図18に示す。
HPCL群の潜伏期間183.0±5.7日とCMC(ECG−505)群の潜伏期間169.0±3.6日)は、対照群の潜伏期間171.3±10.7日と有意差がなかったが、他のセルロースエーテル類では、HPMC(TC−5EW)群の潜伏期間が204.3±22.5日、HPMC(TC−5RW)群が218.0±8.4日、HPMC(60SH−50)群が235.5±7.8日、HPMC(60SH−4K)群が220.5±14.1日、MC(SM−4)群が191.7±11.0日、HPMCAS(AS−MG)群が200±0日であり有意な治療効果を示した(HPMC(TC−5EW)、MC(SM−4)はp<0.05、それ以外はp<0.01)。ただし、HPMCAS(AS−MG)では、3匹が100mgの投与量に耐えられずに投与2日以内に死亡した。
以上の結果は、RMLプリオンと同様に福岡1株プリオンに対しても、HPMCが最も有効なセルロースエーテル類であることを示している。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
〔評価方法〕
生理食塩水で1%(W/V)濃度とした22L株脳ホモジネート20μLを脳内に接種してプリオンに感染させたC57BL/6マウスにて、実施例16と同様にして行った。
結果を図19に示す。
対照群の潜伏期間150.3±6.2日に対して、HPMC(TC−5RW)投与群の潜伏期間は220.3±15.1日であり有意な治療効果を示した(p<0.01)。以上の実施例より、セルロースエーテル類は特定のプリオン株に限定されることなく広い範囲のプリオン株に対して効果を示すことが明らかとなった。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−4K)〕;実施例6に記載。(メトキシル基含量29.4%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9%、20℃における2重量%水溶液の粘度3860mm2/s、1重量%水溶液のpH6.7。)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(90SH−4K)〕;信越化学工業(株)製、「90SH−4000」(商品名)(メトキシル基含量23.1%、ヒドロキシプロポキシル基含量9.3%、20℃における2重量%水溶液の粘度4450mm2/s(60SH−4Kと同程度の分子量)、1重量%水溶液のpH6.8)を用いた。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(HPMC602)〕;実施例11に記載。(メトキシル基含量29.1%、ヒドロキシプロポキシル基含量9%、20℃における2重量%水溶液の粘度1.68mm2/s、1重量%水溶液のpH6.8。)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(HPMC902)〕;信越化学工業(株)製、「HPMC902」(商品名)(メトキシル基含量22.6%、ヒドロキシプロポキシル基含量6.7%、20℃における2重量%水溶液の粘度1.87mm2/s(HPMC602と同程度の分子量)、1重量%水溶液のpH6.8)を用いた。
〔評価方法〕
1%(W/V)濃度の263K株脳ホモジネート20μLを脳内に接種してプリオンに感染させたTg7マウスにて、感染の3日前に各セルロースエーテル類50mgを皮下に投与した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図20に示す。
ここでは、水溶液粘度が相対的に高い(高分子量)グループ〔HPMC(60SH−4K)とHPMC(90SH−4K)〕と、水溶液粘度が相対的に低い(低分子量)グループ〔HPMC(HPMC602)とHPMC(HPMC902)〕について、プリオン病に対する治療効果を比較した。水溶液粘度の高いグループでは、HPMC(60SH−4K)投与群の潜伏期間99.2±11.5日に対しHPMC(90SH−4K)投与群の潜伏期間99.7±9.5日であり、それぞれメトキシル基とヒドロキシプロポキシル基含量の相違があってもこの範囲では効果に有意差が見られなかった。水溶液粘度の低いグループにおいては、HPMC(HPMC602)投与群の潜伏期間59.8±1.6日とHPMC(HPMC902)投与群の潜伏期間63.3±8.1日で、それぞれのメトキシル基とヒドロキシプロポキシル基含量の範囲では治療効果に有意差が見られなかった。一方、水溶液粘度の高いグループと低いグループでは、潜伏期間に有意差が見られ、効果に差が認められ、プリオン病に対する治療効果に対してはセルロースエーテル類の分子量がむしろ大きく影響していることがわかる。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
ここでは、粘度の異なる各種HPMCを用いた。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(HPMC602)〕;実施例11に記載。(メトキシル基含量29.1%、ヒドロキシプロポキシル基含量9%、20℃における2重量%水溶液の粘度1.68mm2/s)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5EW)〕;実施例8に記載。(メトキシル基含量28.9%、ヒドロキシプロポキシル基含量9.0%、20℃における2重量%水溶液の粘度2.9mm2/s)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
(メトキシル基含量29.2重量%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9重量%、20℃における2重量%水溶液の粘度5.81mm2/s)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−50)〕;実施例6に記載。
(メトキシル基含量28.8%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9%、20℃における2重量%水溶液の粘度50.4mm2/s)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(HPMC1657)〕;信越化学工業(株)製、「HPMC1657」(商品名)を用いた。(メトキシル基含量32.2%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.5%、20℃における2重量%水溶液の粘度210mm2/s)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−4K)〕;実施例6に記載。
(メトキシル基含量29.4%、ヒドロキシプロポキシル基含量8.9%、20℃における2重量%水溶液の粘度3860mm2/s)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−10K)〕;信越化学工業(株)製、「60SH−10000」(商品名)を用いた。(メトキシル基含量29.3%、ヒドロキシプロポキシル基含量9%、20℃における2重量%水溶液の粘度9730mm2/s)
〔評価方法〕
1%(W/V)濃度の263K株脳ホモジネート20μLを脳内に接種してプリオンに感染させたTg7マウスにて、感染の3日前に各セルロースエーテル類50mgを皮下に投与した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図21に示す。
セルロースエーテル類の粘度と治療効果の関係はベル型の曲線になり、粘度が増すに従って治療効果が上昇し、100mm2/s付近で最大の効果となり、さらに粘度が増すと逆に治療効果の減少が観察された。試料であるセルロースエーテル類の供給会社の情報に依れば、20℃における2重量%水溶液の粘度100mm2/sは、分子サイズ(分子量)はおよそ90kDaである。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・メチルヘキサオース(M−6C);生化学工業(株)製、6糖セルロースエーテル「セロヘキサオース」(カタログ番号、400406)を用い、これにメチル基を付加させてメチル化6糖セルロースエーテル(メトキシル基含量30%)とした。
・ヒドロキシプロピルメチルヘキサオース(HPM−6C);生化学工業(株)製、6糖セルロースエーテル「セロヘキサオース」(カタログ番号、400406)を用い、これにヒドロキシプロピル基とメチル基を付加させてヒドロキシプロピルメチル化6糖セルロースエーテル(メトキシル基含量30%、ヒドロキシプロポキシル基含量13%)とした。
〔評価方法〕
実施例10と同様にして脳室内投与によりプリオン病に対する治療効果判定実験を行った。
各6糖セルロースエーテル類をPBS液で25mg/mL濃度に調製しポンプに充填してマウスの第3脳室内に投与を行った。対照群はPBS液のみをポンプに充填して同様に脳室内投与を行った。なお、0.1%(W/V)濃度の263K脳ホモジネートの20μLをTg7マウスの脳内に接種した後、2日目より脳室内への投与を開始した。マウスは8週齢以上の雄各8匹(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図22に示す。
対照群、M−6C投与群、HPM−6C投与群の潜伏期間は、それぞれ58.2±1.3日、76.5±3.5日、83.4±4.7日であった。HPM−6C群は、M−6C群及び対照群より有意に(各々p<0.05およびp<0.01)治療効果が見られた。また、M−6C群は対照群より有意に(p<0.01)治療効果が見られた。この結果は、セルロースエーテル類の分子サイズとしては6糖でプリオン病に対して治療効果を発揮できることを示している。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・加水分解HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕(実施例1に記載)を使用し、この25mg/mL水溶液に、HPMC(TC−5RW)に対して塩酸0.3重量%、4重量%、40重量%をそれぞれ加え、撹拌しながら90℃で6時間反応させた。重炭酸ソーダで中和した後に80℃以上に加熱して析出したHPMCを3MM濾紙〔ワットマン社(Whatman)製〕で濾過して回収した。濾紙上のHPMCを80℃以上に加熱した滅菌水で3回洗浄した後に凍結乾燥した。
〔評価方法〕
実施例2と同様に、脳内感染から10日経過後に、加水分解HPMC15mgを皮下に単回投与した。比較のため加水分解を行っていないHPMC(TC−5RW)15mg投与群、および化合物非投与群(オブラートのみ)を準備した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹(体重20〜25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
結果を図23に示す。加水分解していないHPMC(TC−5RW)投与群での潜伏期間が56.7±4.0日に対し、0.3%塩酸による加水分解HPMC投与群の潜伏期間が70.0±2.6日で有意(p<0.01)に治療効果が向上したが、4%塩酸による場合には60.3±3.4日、40%塩酸による場合には52.3±0.6日であり、有意差は見られなかった。0.3%塩酸での加水分解物が最も効果が高く、塩酸濃度が高くなるに従って効果は明らかに低下した(いずれもp<0.01)が、非投与群(対照)の潜伏期間47.0±1.6日と比べると治療効果は明らかに見られた(いずれもp<0.01)。この結果は、加水分解による低分子化がプリオン病に対する治療効果を高めることを示唆しているが、過度に加水分解すると、逆に抗プリオン活性を発揮する構造が損なわれる可能性があることを示唆している。
〔評価に用いた化合物〕
・2糖類;D(+)−セロビオース〔ナカライテスク(株)製、カタログ番号07511−42〕、ラクトース一水和物〔ナカライテスク(株)製、カタログ番号20014−52〕、マルトース一水和物〔ナカライテスク(株)製、カタログ番号21117−82〕、シュクロース〔和光純薬工業(株)製、カタログ番号198−13525〕、D(+)−トレハロース二水和物〔和光純薬工業(株)製、カタログ番号203−02252〕、メチルセロビオース〔焼津水産工業(株)製〕をそれぞれ使用した。
・6糖類;セロヘキサオース〔生化学工業(株)製、カタログ番号400406〕、イソマルトヘキサオース〔生化学工業(株)製、カタログ番号400481〕、マルトヘキサオース〔生化学工業(株)製、カタログ番号400516〕、ラミナリヘキサオース〔生化学工業(株)製、カタログ番号400493〕、ヘキサ−N−アセチルキトヘキサオース〔生化学工業(株)製、カタログ番号400427〕、キトサンヘキサマー〔生化学工業(株)製、カタログ番号400436〕をそれぞれ使用した。
・シクロデキストリン類;アルファーシクロデキストリン〔純正化学(株)製、カタログ番号33730−0410〕、ベータシクロデキストリン〔純正化学(株)製、カタログ番号33735−0410〕、ガンマーシクロデキストリン〔純正化学(株)製、カタログ番号33740−0410〕、モノアセチルベータシクロデキストリン〔純正化学(株)製、カタログ番号77016−1610〕、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−ベンゾイル)ベータシクロデキストリン〔SIGMA社製、カタログ番号T3196〕、ヘプタキス(2,3,6−トリ−アセチル)ベータシクロデキストリン〔SIGMA社製、カタログ番号T3446〕をそれぞれ使用した。
・メチル基あるいはヒドロキシプロピル基を有するシクロデキストリン類;メチルベータシクロデキストリン〔ALDRICH社製(カタログ番号332615)〕、2−ヒドロキシプロピルアルファシクロデキストリン〔ALDRICH社製、カタログ番号390690〕、2−ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン〔ALDRICH社製、カタログ番号389145、置換度1.0モル〕、2−ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン〔ALDRICH社製、カタログ番号332607、置換度0.8モル〕、2−ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン〔ALDRICH社製、カタログ番号332593、置換度0.6モル〕、2−ヒドロキシプロピルガンマーシクロデキストリン〔SIGMA社製、カタログ番号H125〕、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)ベータシクロデキストリン〔SIGMA社製(カタログ番号H4645)〕、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)ベータシクロデキストリン〔SIGMA社製(カタログ番号H0513)〕をそれぞれ使用した。
・キチンあるいはキトサン;キトサン−10〔和光純薬工業(株)、カタログ番号039−16122〕、キトサン−100〔和光純薬工業(株)、カタログ番号032−16092〕、キトサン−1000〔和光純薬工業(株)、カタログ番号039−14422〕、キチン〔和光純薬工業(株)、カタログ番号034−13632〕をそれぞれ使用した。
・セルロース;セルロース〔SIGMA社製、カタログ番号S3504〕を使用した。
・ヒドロキシプロピル基を有するキチンあるいはキトサン;ヒドロキシプロピルキトサン−100〔焼津水産工業(株)製)〕、ヒドロキシプロピルキチン〔焼津水産工業(株)製〕をそれぞれ使用した。
・メチル基およびヒドロキシプロピル基を有する長鎖アルキル基含有セルロース類;長鎖アルキル基含有ヒドロキシプロピルメチルセルロース(SG−60M)〔大同化成工業(株)製、「サンジェロース−60M」(商品名)〕、長鎖アルキル基含有ヒドロキシプロピルメチルセルロース(SG−60L)〔大同化成工業(株)製、「サンジェロース−60L」(商品名)〕をそれぞれ使用した。
・メチル基を有するセルロース類;実施例8に記載メチルセルロース〔MC(SM−4)〕を使用した。
・ヒドロキシプロピル基を有するセルロース;不溶性低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)〔信越化学工業(株)製、「L−HPC(LH−31)」(商品名)、ヒドロキシプロポキシル基含量11%〕を使用した。
・カルボキシル基およびメチル基を有するセルロース類;カルボキシメチルセルロース(CMC)〔SIGMA社製、カタログ番号C5678〕、カルボキシメチルセルロース(CMC(NS300))〕〔五徳薬品(株)製、「NS−300」(商品名)〕、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)〔五徳薬品(株)製、「T.P.T」(商品名)〕をそれぞれ使用した。
・メチル基およびヒドロキシエチル基を有するセルロース類;ヒドロキシエチルメチルセルロース(MHEC)〔ALDRICH社製、カタログ番号435015〕を使用した。
・ヒドロキシエチル基を有するセルロース類;ヒドロキシエチルセルロース(HEC)〔FLUKA社製、カタログ番号54290〕、ヒドロキシエチルスターチ〔SIGMA社製、カタログ番号H6382〕、ヒドロキシエチルスターチ70000含有輸液剤〔杏林製薬(株)製、「ヘスパンダー」(商品名)〕をそれぞれ使用した。
・免疫賦活作用を有する医薬多糖類;レンチナン(商品名)〔味の素(株)製〕、ピシバニール(商品名〕〔中外製薬(株)製〕、ベスタチン(商品名)〔日本化薬(株)製〕、ソニフィラン(商品名)〔科研製薬(株)製〕をそれぞれ使用した。
〔評価方法〕
1%(W/V)濃度の263K株脳ホモジネート20μLを脳内に接種してプリオンに感染させたTg7マウスにて、感染後5日以内に各化合物を100mg以下で毒性が出ない量を皮下あるいは腹腔内に投与した。皮下投与の際には粉末を、腹腔内投与の際には水溶液の形で投与した。マウスは8週齢以上の雄雌各3匹以上(体重約25g)を一群として使用し、脳内感染から死亡するまでの潜伏期間を測定した。得られたデータを実施例2と同様に解析した。
脳内感染4日目に各化合物50mgをマウス背部皮下に投与した代表的な結果を図24に示す。図中のHPMC(AS−MG)群およびHPMC(TC−5RW)群は陽性対照として、オブラートのみの投与群を陰性対照として載せている。ヒドロキシプロピルメチルセルロース修飾体である長鎖アルキル基を有するHPMC(SG−60M,SG−60L)やヒドロキシエチルメチルセルロース(MHEC)は有効であるが、カルボキチメチルセルロース類(CMC−Na、CMC(NS300)、CMC)やヒドロキシエチルセルロース(HEC)、不溶性の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)は無効であった。
各種化合物を263Kプリオン脳内感染マウスにおける皮下投与あるいは腹腔内投与による方法にて検定し、プリオン病に対する治療効果を×;無効、○;有効、◎;極めて有効の3段階で評価し、結果を表1にまとめた。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
〔評価方法〕
実施例15と同様にして行った。5〜6週齢の雌のシリアンハムスター(6匹)(日本エスエルシーより入手、体重90g前後/匹)の脳内に、1%(W/V)263K脳ホモジネート40μLを接種してプリオン感染させた。脳内感染させて8日経過後、シリアンハムスターの背部皮下にHPMC(TC−5RW)を150mg投与した。対照群(4匹)としてはHPMC非投与群(オブラートのみ)を準備した。脳内感染から64日目、80日目(対照群は病末期状態)にHPMC投与群および対照群のハムスターを各2匹安楽死させた。また脳内感染から136日目(HPMC投与群は病末期状態)に残りのHPMC投与群のハムスター2匹を安楽死させた。各ハムスターより脳を取り出し正中で矢状断に切りバッファー化ホルマリンに浸けて1ヶ月以上固定した。固定した脳を90%以上の蟻酸液に室温で1時間浸漬して感染性を除去した後にパラフィン包埋し、薄切して0.4μmの組織切片を作製した。その組織切片を異常プリオン蛋白の蓄積を検出するためプリオン蛋白に対する抗体で免疫染色を行った。さらに連続する組織切片を神経変性部位で増生するアストログリアを検出するためグリア線維性酸性蛋白(GFAP)に対する抗体で免疫染色を行った。免疫染色はドウウラ(Doh−ura)らの方法〔Katsumi Doh−ura,et al.、Journal of Virology、2004年、78巻、4999−5006頁〕に従い、以下のように実施した。
内因性ペルオキシダーゼのブロック処理を行った組織切片を、プリオン蛋白免疫染色では1mM塩酸に浸漬して121℃で10分間処理した。GFAP免疫染色ではこの処理を行はない。組織切片を蒸留水で3回、50mM Tris塩酸(pH7.5)、0.1%TritonX−100で2回、50mM Tris塩酸(pH7.5)で1回洗浄した後に抗プリオン蛋白抗体(免疫生物研究所(株)製、18631(商品番号)、5%正常ヤギ血清加PBSで200倍稀釈)あるいは抗GFAP抗体(DakoCytomation社製、M0761(商品番号)、0.1%ウシ血清アルブミン加PBSで5000倍希釈)を4℃で一晩反応させた。50mM Tris塩酸(pH7.5)、0.1%TritonX−100で2回、50mM Tris塩酸(pH7.5)で1回洗浄した後に、EnVision+System−HRP Labelled Polymer液(DakoCytomation社製、K4002あるいはK4006(商品番号))を組織切片上に滴下し室温30分反応させた。50mM Tris塩酸(pH7.5)、0.1%TritonX−100で2回、50mM Tris塩酸(pH7.5)で1回洗浄した後に、ジアミノベンチジン(DAB)を用いてペルオキシダーゼ反応で抗原抗体複合体を可視化した。
対照群において異常型プリオン蛋白の蓄積や神経変性が目立った部位のうち、顕微鏡写真として結果を示す海馬近傍と下丘の解剖学的局在を各々図25と図30(「マウスカラーアトラスと写真で見る脳実験マニュアル」黒川衛編集、羊土社、2005年の52頁の矢状断標本拡大図を改変)に示す。なお、図中a〜yの符号は各符号を付した各引き出し線先端近傍の部位を指しており、各符号の指す部位名は次に示すとおりである。
a;第四脳室(Fourth venticle)
b;小脳VIII小葉(Cerebellum VIII lobula)
c;小脳IX小葉(Cerebellum IX lobula)
d;小脳髄体(Cerebellar corpus medullare)
e;小脳VII小葉(Cerebellum VII lobula)
f;小脳IV・V小葉(Cerebellum IV・V lobula)
g;小脳III小葉(Cerebellum III lobula)
h;小脳II小葉(Cerebellum II lobula)
i;下丘(Inferior colliculus)
j;上丘(Superior colliculus)
k;歯状回(Dentate gyrus)
m;アンモン角(Ammon’s horn)
n;背側第三脳室(Dorsaum third venticle)
o;脳梁(Callosum)
p;前頭連合野(Frontal association area)
q;海馬采(Fimbria)
r;外叢状層(External plexiform layer)
s;嗅球顆粒細胞層(Olfactory bulb granule cell layer)
t;前交連(Anterior commissure)
u;乳頭体視床束(Fasciculus mamillothalamicus)
v;視索(Optic tract)
w;乳頭体(Corpus mammillare)
x;視床下部(Hypothalamus)
y;橋核(Pontine nucleus)
海馬近傍での異常プリオン蛋白の蓄積を示す弱拡大の顕微鏡写真を図26に、同部位の一部である海馬と大脳皮質に挟まれた白質領域の強拡大の顕微鏡写真を図27に示す。写真は図25中の矢印から見た方向で示している。対照群では既に脳内感染64日目で海馬と大脳皮質に挟まれた白質領域に異常プリオン蛋白の蓄積があり、病末期の脳内感染80日目には同領域での異常型プリオン蛋白の蓄積が増している。それに対してTC−5RW投与群では脳内感染64日目および80日目に異常プリオン蛋白の蓄積は見られない。そしてTC−5RW投与群で病末期である脳内感染136日目では、異常型プリオン蛋白の蓄積が極軽度に観察された。
GFAP免疫染色で描出されるアストログリア細胞は正常脳でも白質に存在しており、神経変性が起こると変性部位の灰白質や白質でGFAP陽性のアストログリア細胞の数が増えるとともに活性化されるため、GFAP免疫染色は神経変性を評価するために使われる簡便な方法である。図26で観察したのと同じ部位のGFAP免疫染色の顕微鏡写真を図28に示す。また、同部位の一部である海馬の錐体細胞層を含む視野の強拡大の顕微鏡写真を図29に示す。対照群では既に脳内感染64日目で海馬と大脳皮質に挟まれた白質領域から海馬にかけて広汎にアストログリア細胞の増生が観察され、病末期の脳内感染80日目にはその程度は高度に増悪している。それに対してTC−5RW投与群では脳内感染64日目および80日目にアストログリア細胞の増生は見られない。そしてTC−5RW投与群で病末期である脳内感染136日目では、白質領域から海馬にかけてアストログリア細胞の増生が極軽度に観察された。
以上の所見は、下丘においてもほぼ同様であった。下丘の異常プリオン蛋白の蓄積を示す弱拡大の顕微鏡写真を図31に、強拡大の顕微鏡写真を図32に示す。写真は図30中の矢印から見た方向で示している。対照群では既に脳内感染64日目で下丘に異常プリオン蛋白の蓄積があり、病末期の脳内感染80日目にはその程度はやや増している。それに対してTC−5RW投与群では脳内感染64日目および80日目に異常プリオン蛋白の蓄積は見られない。そしてTC−5RW投与群で病末期である脳内感染136日目では異常型プリオン蛋白の蓄積が観察されたが、その程度は対照群の病末期に比べてやや軽い。図31で観察したのと同じ部位のGFAP免疫染色の強拡大の顕微鏡写真を図33に示す。対照群では既に脳内感染64日目で下丘にアストログリア細胞の増生が観察されている。それに対してTC−5RW投与群では脳内感染64日目および80日目にアストログリア細胞の増生は見られず、TC−5RW投与群で病末期である脳内感染136日目でアストログリア細胞の増生が観察された。
以上の結果より、HPMCはプリオン病の病変の主座である脳において異常プリオン蛋白の蓄積と神経変性を抑えることにより治療効果を発揮していることが確認された。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
〔評価方法〕
5〜6週齢の雌のシリアンハムスター15匹(体重90g前後/匹)の背部皮下にHPMC(TC−5RW)400mgを投与した(投与方法は実施例2の場合と同様オブラートに包み皮下に埋入)。対照としてHPMC非投与(オブラートのみ)のものを6匹準備した。HPMC投与してから1.5週間経過後、3週間経過後、4.5週間経過後のそれぞれにHPMC投与群の5匹、非投与群の2匹より全血液を採取し、血清を分離した。得られた血清中の抗プリオン活性の存在を実施例1のインビトロ(in vitro)評価方法で検定した。24穴細胞培養シャーレにコンフルエントの10%に相当する細胞数のScN2a細胞を撒き、1mL培養液中に採取したハムスター血清50μLを加えて培養を続けた。細胞がコンフルエントとなった時点で、実施例1の方法で細胞溶解液より異常型プリオン蛋白(プリオン)を調製し、ウエスタンブロット法で解析した。
結果を図34に示す。図中の[TC−5RW]はHPMC(TC−5RW)投与群、[cont]は非投与群についてそれぞれ個別のハムスター血清で処理したScN2a細胞由来の異常型プリオン蛋白シグナルを示している。[no]はハムスター血清で処理していない対照群である。
検討した中ではHPMC(TC−5RW)投与後1.5週間経過したハムスター血清中に最も強い抗プリオン活性が見られた。同3週間経過後では抗プリオン活性は下がるものの、同4.5週間経過後でもほぼ同程度かあるいは若干低い抗プリオン活性が血清中には存在していた。この結果は、単回投与であってもHPMCに由来する抗プリオン活性が長期間にわたり血清中に存在することを示している。
〔評価方法〕
実施例25におけるHPMC(TC−5RW)投与して1.5週間経過したハムスター血清(図34の[TC−5RW]の1レーン目の検体)と、同じ時期に採取した対照のハムスター血清(図34の[cont]の1レーン目の検体)を用いた。
HPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清10μLおよびHPMC(TC−5RW)加対照血清(対照ハムスター血清にHPMC(TC−5RW)を終濃度4.2mg/mL加えたもの)10μLを35℃、50℃、65℃、80℃、95℃で10分間処理を行い、冷却後に遠心(13,000×g、5分間)を行って上清を分取した。24穴細胞培養シャーレにコンフルエントの10%に相当する細胞数のScN2a細胞を撒き、1mL培養液中に分取した上清を加えて培養を続けた。細胞がコンフルエントとなった時点で、実施例1の方法で細胞溶解液より異常型プリオン蛋白(プリオン)を調製し、ウエスタンブロット法で解析した。
また、モンタージュ・アルブミン・デプリート・キット(Montage Albumin Deplete Kit)〔ミリポア社(Millipore)製〕を用いてハムスター血清からアルブミンを除去した検体について同様に温度処理の影響を検討した。
アルブミンを除去していないときの結果を図35に示す。[cont]は何も添加していないScN2a細胞の異常型プリオン蛋白を示している。HPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清では80℃以上の温度処理で抗プリオン活性が若干低下していたが、HPMC(TC−5RW)加対照ハムスター血清ではもともと加えたHPMC(TC−5RW)の濃度では抗プリオン活性が低いためか同様な変化は明らかではなかった。HPMC(TC−5RW)は80℃や95℃で10分間程度の温度処理では分解・修飾されないため、この結果はHPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清中の抗プリオン活性因子はHPMC(TC−5RW)やHPMC(TC−5RW)様のものでない可能性を示すことになる。しかし、血清は80℃以上の温度処理で血清中に含まれる多量のアルブミン等の蛋白質が熱変性を起こし巨大な沈殿物を形成し、抗プリオン活性因子の一部がこの沈殿物にトラップされて上清中の活性が低下した可能性がある。
〔評価方法〕
HPMC(TC−5RW)投与ハムスターの血清10μL、HPMC(TC−5RW)加対照の血清(対照ハムスター血清にHPMC(TC−5RW)を終濃度20mg/mL加えたもの)10μLをそれぞれバイオマックス−30・フィルター(BIOMAX−30 Filter Unit)〔ミリポア社(Millipore)製、「UFC 3BTK00」(型番)、分子量約3万Daをカット〕、あるいはバイオマックス−100・フィルター(BIOMAX−100 Filter Unit)〔ミリポア社製、「UFC 3BHK00」(型番)、分子量約10万Daをカット〕で濾過処理を行い、濾過液([filtrate])と濾過できなかった残留液([retentate])を分取した。24穴細胞培養シャーレにコンフルエントの10%に相当する細胞数のScN2a細胞を撒き、1mL培養液中に分取した濾過液あるいは残留液を加えて培養を続けた。細胞がコンフルエントとなった時点で、実施例1の方法で細胞溶解液より異常型プリオン蛋白(プリオン)を調製し、ウエスタンブロット法で解析した。
結果を図37に示す。図中、[control]は無添加のScN2a細胞の異常型プリオン蛋白、[no filter]は濾過前のHPMC(TC−5RW)投与ハムスターの血清、あるいはHPMC(TC−5RW)加対照の血清を用いたもの、[30K]はバイオマックス−30・フィルターで処理したもの、[100K]はバイオマックス−100・フィルターで処理したもの、[filtrate +]は濾過液を用いたもの、[retentate +]は濾過できなかった残留液を用いたものを示している。HPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清中の抗プリオン活性因子は、対照ハムスター血清に加えたHPMC(TC−5RW)と同様の挙動を示し、約10万Daの分子量のフィルターを透過しなかった。
〔評価方法〕
HPMC(TC−5RW)投与ハムスターの血清10μL、およびHPMC(TC−5RW)加対照の血清(対照ハムスター血清にHPMC(TC−5RW)を終濃度20mg/mLとなるように加えたもの)10μLのそれぞれをモンタージュ・アルブミン・デプリート・キット(Montage Albumin Deplete Kit)〔ミリポア社(Millipore)製〕でアルブミンを除いた後に、α−アミラーゼ(α−amylase)〔シグマ社(Sigma)製、「A3176」(商品番号)〕を終濃度0.1mg/mLとなるように、アミログルコシダーゼ(amyloglucosidase)〔シグマ社製、「A9228」(商品番号)〕を終濃度0.1mg/mLとなるように、リパーゼ(lipase)〔和光純薬工業(株)製、「548−00212」(商品番号)〕を終濃度0.1mg/mLとなるように、デオキシリボヌクレアーゼI(deoxyribonuclease I)〔シグマ社製、「DN25」(商品番号)〕を終濃度0.1mg/mLとなるように、リボヌクレアーゼA(ribonuclease A)〔シグマ社製、「R4875」(商品番号)〕を終濃度0.05mg/mLとなるように加え、37℃、1時間反応させた。その後プロテナーゼKを終濃度0.1mg/mLとなるように加えて37℃でさらに1時間反応させた。95℃で5分間処理した後に冷却し、遠心〔13,000×g、5分間〕して上清を分取した。24穴細胞培養シャーレにコンフルエントの10%に相当する細胞数のScN2a細胞を撒き、1mL培養液中に分取した上清を加えて培養を続けた。細胞がコンフルエントとなった時点で、実施例1の方法で細胞溶解液より異常型プリオン蛋白(プリオン)を調製し、ウエスタンブロット法で解析した。
結果を図38に示す。図中、[control]は無添加のScN2a細胞の異常型プリオン蛋白、[albumin +]はアルブミンを除去していないHPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清を用いたもの、[albumin −]はアルブミンを除去したHPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清を用いたものを示している。[heat denate +]は95℃5分間の処理をしたもの、[heat denate −]は95℃5分間の処理をしていないもの、[digestion +]は上記6種の酵素で処理をしたもの、[digestion−]は酵素処理していないものを示している。HPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清中の抗プリオン活性は、対照ハムスター血清に加えたHPMC(TC−5RW)による抗プリオン活性と同様の挙動を示し、上記6種の酵素処理に対して影響を受けなかった。
以上実施例25〜28のいずれの結果も、HPMC(TC−5RW)投与ハムスター血清中の抗プリオン活性因子はHPMC(TC−5RW)と同じ性状を有することを示しており、抗プリオン活性因子はHPMC(TC−5RW)そのもの、あるいはHPMC(TC−5RW)が一部修飾(分解)されたものである可能性がある。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・標識化HPMC;HPMC(TC−5RW)(実施例1に記載)を使用し、これをアルカリ塩とした後、[14C]ヨウ化メチル、ヘキサン(溶剤)とともに封管し、40〜45℃で20時間保持した。未反応のヨウ化メチルおよびヘキサンを蒸発除去した後、残渣を水に溶解してイオン交換樹脂(H+とOH−の混床型)カラムを通して精製し、溶出液を濃縮、乾燥して炭素14メチル基を導入した標識化HPMC(比活性;74kBq/mg)とした。
〔評価方法〕
標識化HPMCを、表2に記載の用量で尾静脈より単回投与した動物(Tg7マウス)を、所定時間にエーテル麻酔下,下大静脈より採血致死させ,所定の組織を摘出し,組織内放射能濃度および分布率を求め,各組織への放射能分布および経時的変化について調べた。
Tg7マウス(ハムスター型プリオン蛋白を過剰発現した遺伝子改変マウス)の血漿(Plasma)、血液(Blood)、大脳(Cerebrun)、小脳(Cerebellum)*、下垂体(Pituitary gland)**、眼球(Eyeball)*、ハーダー腺(Harderian gland)*、甲状腺(Thyroid gland)**、顎下腺(Mandibular gland)*、胸腺(Thymus)*、心臓(Heart)*、肺(Lung)*、肝臓(liver)*、腎臓(Kidney)*、副腎(Adrenal gland)**、脾臓(Spleen)*、膵臓(Pancreas)*、白色脂肪(Fat)、骨格筋(Skeleton muscle)*、皮膚(Skin)、骨髄(Bone marrow)**、大動脈(Aorta)**、精巣(Testis)*、精巣上体(Epididymis)*、前立腺(Prostate gland)**、膀胱(Urinary bladder)*、胃(Stomach)*、小腸(Small intestine)*、大腸(Large intestine))*〔*:分布率を求めた。なお,血液および骨格筋については,血液全量を体重の7.78%(参考文献;田嶋嘉雄編集,実験動物学各論,東京,朝倉書店,1972,12頁)、骨格筋を体重の45%(参考文献;Gerlowski LE, Jain RK, Journal of Pharmaceutical Sciences、1983年 72巻10号、1103−1127頁)として計算した。**:3例分を合して測定した。〕のそれぞれから試料を採取した。
血液および骨格筋以外で分布率を求める組織については、すべて全重量を測定した。肝臓は胆嚢を取り除いた後、その全重量を測定した。骨髄は大腿骨より採取し,その全量を測定した。白色脂肪は腎臓周辺部より、皮膚は腋下部より、骨格筋は大腿部より採取した。膀胱および消化管は秤量に際し、内容物を除去後生理食塩液で充分に洗浄を行い、小腸は十二指腸から回腸までを、大腸は盲腸から結腸までを採取した。
a)血液;下大静脈よりヘパリン処理したシリンジを用いて血液を採取した。血液はその100μLをバイアルに採取し、組織溶解剤“SOLUENE−350”(商品名)〔Perkin Elmer社製〕2mLを加えて溶解後、過酸化ベンゾイル飽和のベンゼン溶液0.4mLを加えて脱色した。
b)血漿;放射能測定分を除く残余の血液を遠心分離(8000×g、4℃、5分間)し,得られた血漿はその100μLをバイアルに採取し、組織溶解剤“SOLUENE−350”(商品名)2mLを加えて溶解した。
c)大脳および腎臓;大脳は2分割して片方をバイアルに採取しその重量を測定した後、組織溶解剤“SOLUENE−350”2mLを加えて加温・溶解した。腎臓は片方をバイアルに採取し、その重量を測定した後、組織溶解剤“SOLUENE−350”(商品名)2mLを加えて加温・溶解した。
d)肝臓;ポリ容器に採取して全重量の約2倍量の生理食塩液を加えて再び重量を測定し、細かく砕片化してからホモジネートを調製した。調製後のホモジネート0.5mLをバイアルに採取してその重量を測定した後、組織溶解剤“SOLUENE−350”(商品名)2mLを加えて加温・溶解した。
e)胃、小腸、大腸;採取した全量に0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を3mL加えて加温・溶解後水を加えて5mLに希釈し、それぞれその1mLをバイアルに採取した。
f) 白色脂肪;約50mgをバイアルに移し、組織溶解剤“SOLUENE−350”(商品名)2mLを加えて加温・溶解した。
g)眼球および皮膚;眼球は両眼,皮膚は約150mgを燃焼用カップ濾紙に秤取した。
h)その他の組織;約150mg(全量が約150mgに満たない場合は全量)をバイアルに移し,組織溶解剤“SOLUENE−350”(商品名)2mLを加えて加温・溶解した。
a)眼球および皮膚(燃焼法);燃焼用カップ濾紙に採取した試料は、恒温器を用いて40℃で24時間以上乾燥させてから自動燃焼装置で燃焼し、発生した14CO2をCO2吸収剤“CARBO−SORB E”(商品名)〔Perkin Elmer社製〕6mLに吸収させ、さらにシンチレーター“PERMAFLUOR E+”(商品名)〔Perkin Elmer社製〕12mLを加え、液体シンチレーションカウンター(LSC)〔Perkin Elmer社製、「2700TR」(商品名)〕を用いて放射能の計測を行った。なお,燃焼法による測定値は、サンプルオキシダイザー用14C標準試料〔Perkin Elmer社製、「SPEC−CHEC 14C」(商品名)〕0.2mLを用いて次式より求めた燃焼時の回収率で補正した後,組織内放射能濃度及び分布率を算出した。
回収率(%)=〔標準試料燃焼後に回収された放射能(dpm)/〔燃焼に供した標準試料の放射能(dpm)〕×100
b)眼球および皮膚以外の組織(溶解法);調製後の各試料にはそれぞれシンチレーター“HIONIC−FLUOR”(商品名)〔Perkin Elmer社製〕10mLを加え、LSCを用いて放射能の計測を行い、得られた値より組織内放射能濃度および分布率を算出した。
結果を図39〜44に示す。組織内放射能濃度は大動脈、精巣および膀胱が投与後2時間に、皮膚は投与後72時間に、他の組織は最初の測定時間である投与後5分にそれぞれ最高濃度を示した。いずれの測定時間においても大脳および小脳の放射能濃度は低かった。投与後5分では血漿(1489031ng eq./mL)に最も高い放射能濃度が認められ、次に腎臓(1121869ng eq./g)および血液(763832ng eq./mL)にそれぞれ血漿の0.75倍および0.51倍の放射能濃度が認められた。他の組織内放射能濃度は血漿の0.13倍以下であった。投与後24時間では皮膚に最高濃度の75%が認められた。精巣、白色脂肪、胸腺、脾臓、副腎、眼球、ハーダー腺、甲状腺、精巣上体、胃、顎下腺、骨格筋、骨髄、膵臓、肝臓、前立腺、膀胱および大腸の放射能濃度はそれぞれの最高濃度の47%〜22%に、他の組織はそれぞれの最高濃度の20%以下に減少した。投与後72時間では皮膚に最高濃度(42338ng eq./g)が認められた。白色脂肪、精巣、脾臓、副腎、ハーダー腺、大動脈、骨格筋、甲状腺、顎下腺、肝臓、胸腺、膵臓、膀胱、眼球、精巣上体、前立腺、胃、大腸、心臓および骨髄の放射能濃度はそれぞれの最高濃度の41%〜11%に、他の組織はそれぞれの最高濃度の9%以下に減少した。大脳および小脳での放射能濃度は測定した組織の中では最も低いものであり、その時間的な推移のパターンはほぼ血液や血漿と一致していた。
〔評価方法〕
実施例29と同様にして調製した標識化HPMC(比活性;74kBq/mg)を、表3の用量で単回投与した動物(Tg7マウス)を所定時間にエーテル麻酔下、下大静脈より採血致死させ、所定の組織を摘出し、組織内放射能濃度および分布率を求め、各組織への放射能分布および経時的変化について調べた。
結果を図45〜50に示す。標識化HPMCを雄性Tg7マウスに2.5mg/bodyの用量で単回皮下投与した際の組織内放射能濃度は血漿、血液、大脳、小脳、下垂体、心臓、肺、肝臓、腎臓、白色脂肪、骨格筋、皮膚、骨髄、大動脈、精巣上体、膀胱、胃、小腸および大腸は投与後24時間に、他の組織は投与後336時間に最高濃度を示した。いずれの測定時間においても大脳および小脳の放射能濃度は低かった。投与後2時間では血漿(17822ng eq./mL)に最も高い放射能濃度が認められた。次に腎臓(13106ng eq./g)および血液(9294ng eq./mL)にそれぞれ血漿の0.74倍および0.52倍の放射能濃度が認められた。他の組織内放射能濃度は血漿の0.39倍以下であった。投与後24時間では、血漿(154071ng eq./mL)に最も高い放射能濃度が認められ、次に血液(69708ng eq./mL)および皮膚(299291ng eq./g)にそれぞれ血漿の0.45倍および0.39倍の放射能濃度が認められた。他の組織内放射能濃度は血漿の0.19倍以下であった。投与後336時間では眼球、ハーダー腺、甲状腺、顎下腺、胸腺、副腎、脾臓、膵臓、精巣および前立腺の放射能濃度は、この時点で最高濃度を示しており、これらの組織へ標識化HPMC由来の放射能が蓄積していることを示唆する結果が得られた。さらに血液および血漿以外の組織についてもそれぞれ最高濃度の87%〜37%を示し,各組織からの消失が遅いことも明らかとなった。これらの結果は、HPMC(TC−5RW)が皮下より徐々に血液中に吸収され、各組織に分布して一部の組織では蓄積する傾向にあること、各組織から標識化HPMCが消失するまでにかなりな時間を要することを示唆している。
〔評価方法〕
標識化HPMC(比活性;74kBq/mg)を、表4に示す用量で単回投与した動物(Tg7マウス)を所定時間にエーテル麻酔死させた後、全身オートラジオグラムを作製し、各組織への放射能分布について検討した。
所定時間に動物をエーテル麻酔死させ,速やかに被毛を刈り取り,鼻腔および肛門を4%CMC−Naで塞いだ。ついでドライアイス・アセトン中で凍結し、得られた凍結屍体より前後肢および尾を切り離した後、4%CMC−Naで包埋し、ドライアイス・アセトン中で凍結後クライオミクロトームに固定した。作成した凍結ブロックに接着テープ〔住友スリーエム(株)製、「No.810」(型番)〕を貼り付け、クライオミクロトームにより、厚さ30μmの凍結切片を作製し、凍結乾燥した。乾燥後の切片を保護膜〔三菱ポリエステルフィルム(株)製、「ダイアホイル」(商品名)、厚さ:4μm〕で被った後、イメージングプレート〔富士写真フイルム(株)製、「TYPE BAS SR2040」(商品名)〕と密着させ、室温下で鉛製シールドボックス内で一定期間露出した。露出後、イメージングプレート上の放射能像をBAS〔Bio−imaging Analyzer System、富士写真フィルム(株)製、「FUFIX−BAS2500」(商品名)〕により読み取り、ラジオルミノグラムを作製した。
結果を図51〜53に示す。図中、符号1〜28は各符号を付した各引き出し線矢印近傍の組織を指しており、各符号の指す組織名は次に示す通りである。
1;副腎(Adrenal gland)
2;血液(Blood)
3;骨髄(Bone marrow)
4;脳(Brain)
5;褐色脂肪(Brown fat)
6;精巣上体(Epididymis)
7;白色脂肪(Fat)
8;胃内容物(Gastric contents)
9;ハーダー腺(Harderian gland)
10;心臓(Heart)
11;腸内容物(Intestinal contents)
12;腸(Intestine)
13;腎臓(Kidney)
14;肝臓(Liver)
15;肺(Lung)
16;顎下腺(Mandibular gland)
17;膵臓(Pancreas)
18;下垂体(Pituitary gland)
19;前立腺(Prostate gland)
20;骨格筋(Skeleton muscle)
21;皮膚(Skin)
22;脾臓(Spleen)
23;胃(Stomach)
24;精巣(Testis)
25;胸腺(Thymus)
26;甲状腺(Thyroid gland)
27;膀胱(Urinary bladder)
28;膀胱中の尿(Urine in bladder)
標識化HPMCを雄性Tg7マウスに2.5mg/bodyの用量で単回静脈内投与後2時間における組織内分布について全身オートラジオグラムにより検討したところ、膀胱内尿に最も高い放射能が認められ、次いで血液に高い放射能が認められた。肺、副腎、肝臓、腎臓、腸、下垂体、甲状腺、精巣上体、顎下腺、膀胱、胃、心臓、褐色脂肪、骨髄、膵臓、ハーダー腺、皮膚、前立腺、腸内容物、脾臓、胸腺、精巣には血液より低い放射能が、胃内容物、骨格筋、脳には更に低い放射能が認められた。白色脂肪の放射能は最も低かった。脳での放射能の分布は均一ではなく、放射能シグナルは脳の血管の局在に一致していることが示唆された。
実施例29〜31の結果を考え合わせると、以下の3点が示唆される。
(1)皮下に投与したHPMCは、そのものあるいはその分解修飾産物が徐々に血液中に吸収され体内の各組織に分布し、同時に主に尿中に排泄される。
(2)各組織中に分布したHPMCあるいはその分解修飾産物はきわめて徐々に分解あるいは組織外へ放出される。
(3)HPMCあるいはその分解修飾産物が脳血液関門を越えて脳実質内に直接移行している可能性はきわめて低い。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
・メチルセルロース〔MC(SM−4)〕;実施例8に記載。
・ヒドロキシプロピルセルロース(HPCL);実施例8に記載。
・0.3%塩酸による加水分解HPMC;実施例22に記載。
・40%塩酸による加水分解HPMC;実施例22に記載。
〔評価方法〕
使用直前に蒸留水で溶かしたモノマー型Aβ(1−40)〔(株)ペプチド研究所製、「4379−v」(カタログ番号)〕1mM溶液0.6μLを、セルロースエーテル類のPBS(pH7.5)溶液と混合して、全量をPBSで40μLに調製し、37℃で24時間反応させた。Aβの終濃度は15μMであり、各セルロースエーテル類の終濃度を0.4、2、10、50μg/mLとした。Aβのアミロイド化の程度をナイキ(Naiki)、ナカクキ(Nakakuki)によるチオフラビンT(Thioflavin T)法〔Naiki H、Nakakuki K.,Laboratory Investigation 1996年、74巻、2号、374−383頁〕に基づいて測定した。Aβと化合物の混合反応液にチオフラビンTを終濃度が5μMになるように混合して蛍光・吸光マイクロプレートリーダー〔モレキュラダイナミックス社(MolecularDynamics)製、「Biolumin−960」(型番)、励起波長450nm/蛍光強度測定波長485nm〕で蛍光を測定した。なおチオフラビンTを混合する前に化合物とAβ蛋白の混合反応液の蛍光を測光しておき、その値をチオフラビンTを混合後の蛍光測光値から除算した。測定値は対照(化合物なし)群を100%として相対値(%)に換算した。
結果を図54〜58に示す。図中、[HL]、[SO]、[TO]、[T1]、[T3]はそれぞれHPCL、MC(SM−4)、HPMC(TC−5RW)、0.3%塩酸による加水分解HPMC(TC−5RW)、40%塩酸による加水分解HPMC(TC−5RW)を示す。HPCL(IC50=5.1μg/mL)とMC(SM−4)(IC50=5.3μg/mL)は、ほぼ同程度のAβ蛋白凝集阻害活性を示した。0.3%塩酸による加水分解HPMC(TC−5RW)(IC50=13.8μg/mL)はHPCL、MC(SM−4)よりは活性はやや低かった。一方、加水分解未処理のHPMC(TC−5RW)や40%塩酸加水分解HPMC(TC−5RW)はHPCL、MC(SM−4)より阻害効果がきわめて弱かった。
〔評価方法〕
16穴スライドチャンバーで培養を行ったWistarラット胎仔由来神経細胞・グリア混合培養系に凝集Aβ1−40(35μM)と実施例32で検討したセルロースエーテル類のPBS溶液(8、40、200μg/mL)を添加して2日間インキュベートを行った(各n=3)。その後、細胞を固定して神経細胞の細胞体や樹状突起に存在する微小管結合蛋白(MAP2)に対する免疫染色を行った。標本は格子を付けた接眼レンズを装着した光顕下(対物レンズX20 接眼レンズX10)でMAP2陽性細胞数を算定した。算定部位は各ウエルの中心部1箇所を設定した。Wistarラット胎仔由来神経細胞・グリア混合培養は妊娠18−19日目の雌Wistarラットの胎児を用いて、「畠中寛、津久井弘子、実験医学別冊 神経生化学マニュアル(1990) p129−135 中枢諸神経核神経細胞の培養」の方法に基づき神経細胞とアストログリア細胞を調整した。神経細胞106/mLの密度に抗生物質混合液(Sigma, カタログ番号 A9909)を添加した10%FBS/Neurobasal medium(GIBCO、カタログ番号 21103−049)で希釈したものを、アストログリア細胞がconfluentに増殖した16穴スライドチャンバー内に分注し(100uL/well)CO2インキュベーター中で培養を行った。混合培養開始3日後に培地をB27サプリメント(Invitrogen、カタログ番号 17504−044)添加Neurobasal mediumに交換し実験に供した。Aβ凝集体は、Aβ1−40〔(株)ペプチド研究所製、4379−v(カタログ番号)〕を1mMの濃度でDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)〔Invitrogen社製、11885−084(商品番号)〕に溶解させ、2週間CO2インキュベーターでインキュベートさせて作製し、DMEMで稀釈して実験に用いた。MAP2に対する免疫染色は以下のように行った。
細胞をPBSで洗浄した後に、−30℃に冷やした5%酢酸添加95%エタノールに細胞を10分間浸漬して細胞を固定した。PBSで十分に洗浄した後に、内因性ペルオキシダーゼのブロック処理を行った。1%ウシ血清アルブミン加PBSで15分間反応させた後、PBSで3回に洗浄を行い、抗MAP2抗体〔SIGMA社製、「M−1406」(商品番号)、1%ウシ血清アルブミン加PBSで400倍希釈〕を4℃で一晩反応させた。PBSで5回洗浄後にホースラディシュペルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン抗体〔Amersham社製、「NA93IV」(商品番号)、1%ウシ血清アルブミン加PBSで100倍稀釈〕を室温で1時間反応させた。PBSで5回洗浄した後に、ジアミノベンチジン(DAB)を用いてペルオキシダーゼ反応で抗原抗体複合体を可視化した。
結果を図59〜63に示す。図中の[HL]、[SO]、[TO]、[T1]、[T3]はそれぞれHPCL、MC(SM−4)、HPMC(TC−5RW)、0.3%塩酸による加水分解HPMC(TC−5RW)、40%塩酸による加水分解HPMC(TC−5RW)を示す。セルロースエーテル類を8,40,200μg/mL濃度で添加した際に、40μg/mLまでの濃度ではいずれのセルロースエーテル類も濃度依存的にAβに対する神経細胞保護効果を示した。40%塩酸加水分解HPMC(TC−5RW)はやや効果が低かった。40μg/mL濃度においては、HPCLとMC(SM−4)とHPMC(TC−5RW)はほぼ同程度の神経細胞保護効果を示した。200μg/mL濃度ではMC(SM−4)や加水分解HPMC(TC−5RW)でさらに効果の上昇が見られたのに対して、HPCLやHPMC(TC−5RW)では40μg/mL濃度よりやや効果が下がる傾向があった。この結果はAβの凝集阻害効果の結果とそれほど矛盾しないものであった。
〔評価に用いたセルロースエーテル類〕
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(TC−5RW)〕;実施例1に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−50)〕;実施例6に記載。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC(60SH−400)〕;実施例11に記載。
〔評価方法〕
疾患モデルマウスとして変異型アミロイド前駆体蛋白と変異型タウ蛋白を発現しているAPP/Tauトランスジェニックマウス〔Taconic社製、600902(商品番号)〕を用いた。一群は同じ週齢の雌五匹で構成し、セルロースエーテル類は25mg/mL濃度のPBS溶液とし、対照にはPBSのみを用いた。実施例10と同様にして浸透圧ポンプに各溶液を充填して第15週齢時より4週間の脳室内への投与を開始した。第20週齢時からはセルロースエーテル類25mg/mL濃度の各溶液0.25mLをそれぞれのマウスの腹腔内に1週おきに投与を行い第30週齢時まで投与を継続した。第39週齢時よりブドウ糖液消費試験を開始した。また、第40週齢時よりブロウイング(burrowing)試験を開始した。両試験はボーシェ(Boche)らの方法〔D.Boche,C.Cunningham,et al.、Neurobiology of Disease、2006年、22巻、638−650頁〕に準じ、週一回の割合で朝9時より翌日朝9時まで実施した。ブロウイング試験では、パイプ(直径76mm、長さ200mm、床から入り口の高さ30mmの塩化ビニールパイプ)にペレット状のエサを190g入れ、次の日パイプに残っているエサの重さを測定し、移動させた量を計算した。ブドウ糖液消費試験では5%ブドウ糖液〔D(+)glucose、和光純薬工業(株)製、「041−00595」(カタログ番号)〕を蒸留水で溶解)を調製し、給水ビンに充填してマウスに自由給水させた。次の日残量を測定し、ブドウ糖液の消費量を計算した。
ブロウイング試験の結果を図64に示す。HPMC(60SH−50)投与群もHPMC(60SH−400)投与群も、対照群に比して有意に(それぞれp<0.05、p<0.01)成績が良好であった。また、ブドウ糖液消費試験の結果を図65に示す。HPMC(60SH−50)投与群もHPMC(60SH−400)投与群も、対照群に比して有意に(ともにp<0.05)成績が良好であった。以上の結果は、セルロースエーテル類がインビボにおいてもアルツハイマー病に対して治療効果を発揮し得ることを示している。
〔評価方法〕
このモデルではマウスに起炎剤を投与してヒトの病態と同様に炎症反応蛋白である血清アミロイドA蛋白(serum amyloid A protein;SAA)の血中濃度を亢進させ、SAAから切り出されるアミロイド形成蛋白であるアミロイドA蛋白(amyloid A protein;AA)が凝集して末梢緒臓器(脾臓、肝臓が最も好発)に蓄積する。単に炎症だけ惹起するとマウスにアミロイドが蓄積するまで1ヶ月以上の期間がかかるが、起炎剤の投与と同時またはそれ以前にAAアミロイド蓄積組織ホモジネート(amyloid enhancing factor;AEF)を投与するとアミロイドが蓄積するまでの期間を数日に短縮できることが知られている。
内因性ペルオキシダーゼのブロック処理を行った組織切片を98%蟻酸で室温5分間処理した。組織切片をTris塩酸(pH7.5)50mMで2回、蒸留水で1回洗浄した後に0.1%・N−ドデシルサルコシン酸ナトリウム(Sarkosyl)、25mM・NaOH、2%・NaCl液で室温10分間処理した。流水、蒸留水、Tris塩酸50mMで十分に洗浄した後に抗SAA抗体(Santa Cruz Biotechnology社製、sc−20651(商品番号)、0.1%ウシ血清アルブミン加PBSで500倍希釈)を室温で1時間反応させた。Tris塩酸50mMで十分に洗浄した後に、HISTOFINE(株式会社ニチレイバイオサイエンス製)液を組織切片上に滴下し室温30分反応させた。Tris塩酸50mMで十分に洗浄した後に、ジアミノベンチジン(DAB)を用いてペルオキシダーゼ反応で抗原抗体複合体を可視化した。
結果を表5および図66〜71に示す。表中、[−]はアミロイドあるいはAAの蓄積を認めないこと、[±]はごく一部にアミロイドあるいはAAの蓄積を認めること、[+]はアミロイドあるいはAAの蓄積を広汎に認めることを示している。
Claims (7)
- 一般式(1)〔式中、少なくとも1つのRはCH3、C2H5、CH2CH2OH、CH2CH(OH)CH3、CH2COOMから選ばれ、他のRはHであり、MはH、Na、K、Caから選ばれる。〕で表される構造単位を有するセルロースエーテル、前記セルロースエーテルのアルカリ金属塩、前記セルロースエーテルの脂肪族酸エステル、およびこれらの混合物から選ばれる一種以上のセルロースエーテル類を有効成分として含有することを特徴とするコンフォメーション病の予防及び治療薬。
- 前記セルロースエーテル類が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルセルロースから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1記載のコンフォメーション病の予防及び治療薬。
- ヒトを含む哺乳動物に投与可能に製剤化されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンフォメーション病の予防及び治療薬。
- 注射剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、酒精剤、エリキシル剤、リモナーデ剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、チンキ剤、ローション剤、リニメント剤、エアゾール剤、坐剤から選ばれた剤型に製剤化されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンフォメーション病の予防及び治療薬。
- コンフォメーション病が、ヒトにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease;CJD)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(Gerstmann-Straussler-Scheinkersyndrome)、致死性家族性不眠症(Fatal familial insomnia)、ウシにおけるウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy ;BSE)、ヒツジにおけるスクレイピー(scrapie)、シカにおける慢性消耗性疾患のいずれかのプリオン病であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンフォメーション病の予防及び治療薬。
- コンフォメーション病が、アルツハイマー病であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンフォメーション病の予防及び治療薬。
- コンフォメーション病が、アミロイドーシスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンフォメーション病の予防及び治療薬。
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