JP4981830B2 - 軸方向出力分布予測方法及び軸方向出力分布予測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、原子炉の軸方向における出力分布を制御する技術に関し、特に、加圧水型原子炉内で発生しうるキセノン振動を抑制することに関する。
従来、原子力発電所等で用いられる加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)においては、キセノン振動という現象が発生することが知られている。このキセノン振動は、核分裂で発生する核分裂生成物のうち、中性子の吸収能力が高いキセノンの空間濃度分布が変動することにより引き起こされる原子炉内における出力分布の空間振動のことである。
キセノン振動が発生すると、原子炉内の出力分布の歪みが大きくなり、局所的に出力が過大となり、原子炉の炉心には局所的に温度が上昇する部分が発生することがある。原子炉の運転中において炉心の健全性を確保するために、キセノン振動が発生した場合には、これを安全性に問題がない範囲内に抑制する必要がある。
上記のような出力分布の過大な歪みを抑制する技術として、軸方向出力分布を一定の範囲内に収めるような「出力分布制御法」が知られている。例えば、軸方向出力分布一定値制御法では、定格出力において、制御棒がほぼ全引き抜きの状態で安定している状態の軸方向出力分布偏差(AO:Axial Offset)を目標値と定める。そして、運転時の軸方向出力分布偏差AO(出力が定格出力より低い場合はAOに相対出力を乗じた値)が、当該目標値から一定の許容範囲内に収まっているか否かを監視し、軸方向出力分布偏差AOが当該許容範囲から逸脱した場合、制御棒を用いて直ちに許容範囲内に誘導するように制御している(特許文献1、非特許文献1)。
また、本願発明者による発明として、特許第3202430号公報に記載のキセノン振動制御方法が知られている(特許文献2、非特許文献2、非特許文献3)。このキセノン振動制御方法では、原子炉の炉心における軸方向出力分布偏差(AO)と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応する軸方向出力分布偏差(AO)と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応する軸方向出力分布偏差(AO)とを利用する。そして、パラメータDAOPX(=AO−AO)をX軸に、パラメータDAOIX(=AO−AO)をY軸にプロットしたときの軌跡に基づいて、この軌跡を原点に移動させるように制御棒を挿入あるいは引き抜くことによって発生したキセノン振動を消滅させるようになっている。
特開2000−121779号公報 特許第3202430号公報
火力原子力発電Vol.31 No.2「PWRのロードフォロー運転」 日本原子力学会誌Vol.33 No.3「軸方向出力分布偏差のオンラインデータ処理に基づくPWRの軸方向キセノン振動の最適制御法」 日本原子力学会誌Vol.38 No.1「負荷追従運転時のキセノン振動制御に対するアキシャルオフセット軌跡法の改良」
ところで、キセノン振動が発生すると、原子炉の軸方向出力分布偏差は、キセノン振動に同期して増加し減少する。このため、例えば、原子炉の軸方向出力分布偏差が許容範囲に接近した場合であっても、原子炉の軸方向出力分布偏差が減少する時期であれば、制御棒を操作しなくとも原子炉の軸方向出力分布偏差が許容範囲を超えることはなく、無駄な燃料棒の操作が回避できる。このためには、原子炉の軸方向出力分布偏差の変化を予測できることが必要である。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、原子炉のキセノン振動を抑制するにあたり、原子炉の軸方向出力分布偏差の変化を予測することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る軸方向出力分布予測方法は、原子炉の炉心上半分での相対出力(P)及び同炉心下半分での相対出力(P)に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出ステップと、前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップで算出されたキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定ステップと、前記軸方向出力分布偏差算出ステップの後に、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出ステップと、軸方向出力分布偏差判定ステップの後に、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定ステップと、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、制御棒を移動させる操作が必要であることを報知する報知ステップと、を含むことを特徴とする。
炉心軸方向出力分布偏差:(P−P)・・・式(1)
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTX−PBX)・・・式(2)
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTI−PBI)・・・式(3)
炉心軸方向出力分布偏差:(P−P)/(P+P)・・・式(1)’
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTX−PBX)/(PTX+PBX)・・・式(2)’
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTI−PBI)/(PTI+PBI)・・・式(3)’
ただし、
TX:キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BX:キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
TI:ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BI:ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
また、本発明に係る軸方向出力分布予測方法は、原子炉の炉心上半分での相対出力(P )及び同炉心下半分での相対出力(P )に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出ステップと、前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップで算出されたキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定ステップと、前記軸方向出力分布偏差算出ステップの後に、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出ステップと、軸方向出力分布偏差判定ステップの後に、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定ステップと、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータが、前記楕円の長径に向かって移動するように制御棒を移動制御する制御棒移動ステップと、を含むことを特徴とする。
炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )・・・式(1)
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )・・・式(2)
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )・・・式(3)
炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )/(P +P )・・・式(1)’
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )/(P TX +P BX )・・・式(2)’
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )/(P TI +P BI )・・・式(3)’
ただし、
TX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
TI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る軸方向出力分布予測装置は、原子炉の炉心上半分での相対出力(P)及び同炉心下半分での相対出力(P)に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出部と、前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出部と、前記パラメータ算出部が算出したキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定部と、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出部と、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定部と、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、制御棒を移動させる操作が必要であることを報知する報知部と、を含むことを特徴とする。
炉心軸方向出力分布偏差:(P−P)・・・式(1)
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTX−PBX)・・・式(2)
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTI−PBI)・・・式(3)
炉心軸方向出力分布偏差:(P−P)/(P+P)・・・式(1)’
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTX−PBX)/(PTX+PBX)・・・式(2)’
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTI−PBI)/(PTI+PBI)・・・式(3)’
ただし、
TX:キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BX:キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
TI:ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BI:ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
また、本発明に係る軸方向出力分布予測装置は、原子炉の炉心上半分での相対出力(P )及び同炉心下半分での相対出力(P )に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出部と、前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出部と、前記パラメータ算出部が算出したキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定部と、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出部と、軸方向出力分布偏差判定ステップの後に、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定部と、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータが、前記楕円の長径に向かって移動するように制御棒を移動制御する制御棒移動部と、を含むことを特徴とする。
炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )・・・式(1)
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )・・・式(2)
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )・・・式(3)
炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )/(P +P )・・・式(1)’
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )/(P TX +P BX )・・・式(2)’
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )/(P TI +P BI )・・・式(3)’
ただし、
TX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
TI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
BI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
本発明は、キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する。これによって、前記楕円の長径と、現時点における前記楕円上のプロット点(キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータ)との位置関係のみから、簡単に炉心軸方向出力分布偏差の将来における変化を判定できるので、これを利用して、原子炉のキセノン振動を抑制するにあたっては、原子炉の軸方向出力分布偏差の変化を予測することができる。
本発明は、原子炉のキセノン振動を抑制するにあたり、原子炉の軸方向出力分布偏差の変化を予測できる。
図1は、本実施形態に係る軸方向出力分布予測装置及び原子炉の全体構成を示す模式図である。 図2は、本実施形態において、キセノン振動が安定している場合におけるプロット軌跡を示す図である。 図3は、本実施形態において、キセノン振動が発散性の場合におけるプロット軌跡を示す図である。 図4は、本実施形態において、キセノン振動中のAOを示す図である。 図5は、図4に対応する(DAOPX、DAOIX)のプロット軌跡を示す図である。 図6は、キセノン振動が発生しているときの楕円軌跡を示す模式図である。 図7は、図6に示すキセノン振動に対応したΔIの時間変化を示す模式図である。 図8は、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法の手順を示すフローチャートである。 図9は、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法の手順を示すフローチャートである。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る軸方向出力分布制御プログラム1aを搭載した軸方向出力分布制御装置1と、この軸方向出力分布制御装置1によって制御される原子炉10の全体構成を示している。本実施形態において、原子炉10は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。原子炉10は、圧力容器11と、この圧力容器11内に設けられる炉心12と、この炉心12内の核分裂反応を制御する制御棒13と、この制御棒13を上下方向に駆動する制御棒駆動装置14と、炉心12の高さ位置に対応して分割して配置される炉外中性子束検出器15a、又は炉内中性子束検出器15bと、炉外中性子束検出器15a、又は炉内中性子束検出器15bの検出値に基づいて炉心12の相対出力を算出する中性子束計測装置16とを有している。
炉心12の内部には、核燃料となる複数の燃料棒13が配置されている。制御棒13は、制御棒駆動装置14によって駆動され、炉心12に対して挿入及び抜き出しの制御が可能に構成されている。なお、本実施形態において、「軸方向」とは、炉心12の軸方向をいうものであり、燃料棒13の長手方向及び制御棒13の駆動方向に一致している。そして、加圧水型原子炉では、軸方向におけるキセノン振動が優位であることから、本実施形態では軸方向におけるキセノン振動について説明する。
制御棒駆動装置14は、後述する演算処理手段5によって制御され、制御棒13を上下方向に駆動する。また、炉外中性子束検出器15a、又は炉内中性子束検出器15bは、炉心12の上半分及び下半分の中性子束を検出するものである。中性子束計測装置16は、炉外中性子束検出器15a又は炉内中性子束検出器15bの検出値に基づき、炉心上半分の相対出力(以下、Pという)及び炉心下半分の相対出力(以下、Pという)を算出する。なお、本実施形態において、相対出力とは、原子炉10の定格出力を1.0に規格化した際の出力をいうものとする。
軸方向出力分布制御装置1は、図1に示すように、主として、液晶ディスプレイ等からなる表示手段2と、キーボードやマウス等からなる入力手段3と、本実施形態の軸方向出力分布制御プログラム1aや各種のデータ等を記憶する記憶手段4と、これら各構成手段を制御するとともに各種のデータを取得して演算処理を実行する演算処理手段5とから構成されている。軸方向出力分布制御装置1は、原子炉10の軸方向出力分布を制御して、キセノン振動を抑制する他、本実施形態に係る軸方向出力予測方法を実行して、原子炉10の軸方向出力分布を予測する軸方向出力分布予測装置としても機能する。
軸方向出力分布制御装置1が備える記憶手段4は、ハードディスクやRAM(Random Access Memory)等から構成されており、図1に示すように、プログラム保存部41と、制御情報保存部42とを有している。次に、記憶手段4の各構成部についてより詳細に説明する。プログラム保存部41には、本実施形態の軸方向出力分布制御プログラム1aがインストールされている。この軸方向出力分布制御プログラム1aは、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法を実現するための軸方向出力分布予測プログラムが組み込まれている。そして、演算処理手段5によって軸方向出力分布制御プログラム1aが実行されることにより、原子炉10の軸方向出力分布が予測される。
制御情報保存部42は、原子炉10の炉心12における軸方向出力分布偏差(炉心軸方向出力偏差分布)に関する許容範囲(許容値)を記憶するものである。この許容範囲は、炉心12の安全解析と矛盾がないように、炉心12の特性によって定められるものであり、炉心12の軸方向における出力が変化することにより発生するキセノン振動の影響を抑制し、炉心12の安全性を確保しうる範囲に設定される。
軸方向出力分布制御装置1が備える演算処理手段5は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等から構成されている。演算処理手段5は、図1に示すように、相対出力取得部51と、軸方向出力分布偏差算出部52と、パラメータ算出部53と、軌跡表示部54と、軸方向出力偏差判定部55と、余裕度算出部56と、許容範囲判定部57と、報知部58と、制御棒移動部59とを有する。演算処理手段5は、プログラム保存部41にインストールされた軸方向出力分布予測プログラム1aを読み込んで実行することにより、原子炉10の軸方向出力分布を予測する。
すなわち、演算処理手段5が軸方向出力分布予測プログラム1aを読み込んで実行することにより、相対出力取得部51、軸方向出力分布偏差算出部52、パラメータ算出部53、軌跡表示部54、軸方向出力偏差判定部55、余裕度算出部56、許容範囲判定部57、報知部58、制御棒移動部59それぞれの機能が実現される。なお、軸方向出力分布制御装置1が、本実施形態に係る軸方向出力分布予測装置の機能を実現するためには、少なくとも、軸方向出力分布偏差算出部52と、パラメータ算出部53と、軸方向出力偏差判定部55とがあればよい。
次に、演算処理手段5の各構成部についてより詳細に説明する。相対出力取得部51は、炉心12の上下領域における相対出力P及びPを取得するものである。本実施形態において、相対出力取得部51は、所定の時間間隔で中性子束計測装置16から相対出力P及びPを取得し、軸方向出力分布偏差算出部52へ出力する。
軸方向出力分布偏差算出部52は、原子炉10の炉心12における軸方向出力分布偏差(炉心軸方向出力分布偏差)と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応する軸方向出力分布偏差(キセノン対応炉心軸方向出力偏差分布)と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応する軸方向出力分布偏差(ヨウ素対応炉心軸方向出力偏差分布)とを算出する。
軸方向出力分布偏差算出部52は、相対出力取得部51から相対出力P及び相対出力Pを取得し、下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により炉心軸方向出力分布偏差、キセノン対応炉心軸方向出力偏差分布、ヨウ素対応炉心軸方向出力偏差分布を算出する。ここで、式(1)〜(3)は、相対出力P、P、キセノン濃度についての相対出力PTX、PBX、ヨウ素濃度についての相対出力PTI、PBIの差であり、式(1)’〜(3)’は、式(1)〜(3)を、全炉心相対出力P=(P+P)=(PTX+PBX)=(PTI+PBI)で除したものである。
炉心軸方向出力分布偏差:(P−P)=ΔI・・・式(1)
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTX−PBX)・・・式(2)
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTI−PBI)・・・式(3)
炉心軸方向出力分布偏差:(P−P)/(P+P)=AO・・・式(1)’
キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTX−PBX)/(PTX+PBX)=AO・・・式(2)’
ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(PTI−PBI)/(PTI+PBI)=AO・・・式(3)’
ただし、
TX:キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の相対出力
BX:キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の相対出力
TI:ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の相対出力
BI:ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の相対出力
ここで、AO及びAOの算出方法についてより詳細に説明する。炉心上半分及び炉心下半分における平均キセノン濃度X、Xの変化は、それぞれ下記関係式(4)、(5)により軸方向出力分布偏差算出部52が算出する。
dX/dt=yΣφ+λ−(σφ+λ)X・・・式(4)
dX/dt=yΣφ+λ−(σφ+λ)X・・・式(5)
また、炉心上半分及び炉心下半分における平均ヨウ素濃度I、Iの変化は、それぞれ下記式(6)、(7)により算出される。
dI/dt=yΣφ−λ・・・式(6)
dI/dt=yΣφ−λ・・・式(7)
ただし、
、y:キセノン及びヨウ素の核分裂による発生割合
λ、λ:キセノン及びヨウ素の崩壊定数
Σ:巨視的核分裂断面積
σ:キセノンの微視的吸収断面積
φ:定格出力時の平均中性子束
したがって、軸方向出力分布偏差算出部52が上記式(4)〜(7)を逐次積分することにより、炉心上半分及び炉心下半分における平均キセノン濃度X、X、及びヨウ素濃度I、Iが算出される。一方、平衡状態のキセノン濃度X Eq、X Eqは、炉心上半分及び炉心下半分における平衡状態の相対出力P Eq、P Eqを用いて下記関係式(8)、(9)により表される。
Eq=(y+y)Σφ Eq/(σφ Eq+λ)・・・式(8)
Eq=(y+y)Σφ Eq/(σφ Eq+λ)・・・式(9)
また、炉心上半分及び炉心下半分における平衡状態のヨウ素濃度I Eq、I Eqは、炉心上半分及び炉心下半分における平衡状態の相対出力P Eq、P Eqを用いて下記関係式(10)、(11)により表される。
Eq=yΣφ Eq/λ・・・式(10)
Eq=yΣφ Eq/λ・・・式(11)
上記式(8)、(9)より、炉心上半分及び炉心下半分におけるキセノン濃度X、Xが軸方向出力分布偏差算出部52に与えられると、軸方向出力分布偏差算出部52は、それらに対応した出力レベルPTX、PBXを算出する。したがって、AOは、下記関係式(12)により算出することができる。
AO=(PTX−PBX)/(PTX+PBX)=(y+y)Σ(X−X)/{(y+y)Σ(X+X)−2σ}・・・式(12)
同様に、AOは、下記関係式(13)により算出することができる。
AO=(PTI−PBI)/(PTI+PBI)=(I−I)/(I+I)・・・式(13)
パラメータ算出部53は、パラメータDAOPX及びパラメータDAOIXを算出するものである。具体的には、パラメータ算出部53は、軸方向出力分布偏差算出部52からAO、AO、AOを取得し、パラメータDAOPX(=AO−AO)及びパラメータDAOIX(=AO−AO)を算出する。ここで、パラメータDAOPXは、AOとAOとの差を用いて表されるキセノンパラメータであり、パラメータDAOIXは、AOとAOとの差を用いて表されるヨウ素パラメータである。
本実施形態では、DAOPX及びDAOIXを、それぞれキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとして用いるが、これらに原子炉10の全相対出力Pを乗じた値を、それぞれキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとしてもよい。この場合、キセノンパラメータは、DAOPX×P={(P−P)/(P+P)−(PTX−PBX)/(PTX+PBX)}×P、ヨウ素パラメータはDAOIX×P={(PTI−PBI)/(PTI+PBI)−(PTX−PBX)/(PTX+PBX)}×Pとなる。
ここで、P=(P+P)=(PTX+PBX)=(PTI+PBI)なので、キセノンパラメータDAOPX×Pは、(P−P)−(PTX−PBX)、ヨウ素パラメータDAOIX×Pは、(PTI−PBI)−(PTX−PBX)となる。すなわち、キセノンパラメータDAOPX×Pは、炉心軸方向出力分布偏差(P−P)とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差(PTX−PBX)との差分である(式(1−式(2))。また、ヨウ素パラメータDAOIX×Pは、ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差(PTI−PBI)とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差(PTX−PBX)との差分である(式(3)−式(2))。なお、キセノンパラメータとしてDAOPX×P、ヨウ素パラメータとしてDAOIX×Pを用いると、原子炉10の出力変化に対する一般性を持たせることができるので、原子炉10の出力が一定でない場合においても常時原子炉10を監視できる。
なお、負荷追従運転によって出力が変動する場合、本実施形態の制御方法をそのまま適用することができない。したがって、特に、炉心軸方向出力分布偏差(AOあるいはΔI)を算出する際には特別な配慮が必要となる。次に、具体的に説明する。まず、上記関係式(4)、(5)には、出力P、Pと、キセノン濃度X、Xの積の項があるため、キセノン濃度変化は炉心12の各領域の出力に対して非線形となる。このため、平衡キセノン濃度と出力の関係式(上記関係式(8)、(9))から分かるように、出力が増加すれば、平衡キセノン濃度は(y+y)Σ/σに漸近する。
もし、キセノン濃度がこの漸近値に近づくと、この値から逆算して得られる出力は無限大になり得る。このようなキセノン濃度は、例えば、定格出力運転から部分出力へ出力を低下すれば出現し得る。すなわち、上記関係式(12)を用いて得られる炉心軸方向出力分布偏差AOあるいはΔIは非常に大きくなり、実際の運転条件で考えられる値から大きく逸脱してしまうおそれがある。この場合、軌跡は発散する。
上記の問題は、炉心軸方向出力分布偏差AOあるいはΔIを運転時の出力で、現時点のキセノン分布のオフセットを平衡条件下で与えるような軸方向出力分布のオフセットと定義することにより解決できる。
まず、キセノンオフセットXを次式で定義する。
=(X−X)/(X+X)・・・式(14)
次に、上記関係式(8)、(9)を上記関係式(14)に代入すると、
=λ(P−P)/{λ(P+P)+2σφ}・・・式(15)
また、定義より、PとPは次式で表される。
=P(1+AO)・・・式(16)
=P(1−AO)・・・式(17)
ここで、Pは実際の運転出力(相対出力)であり、測定値から得られる。なお、上述した定義では、キセノン濃度からの逆算により得られるPTX、PBXから算出していたため、実際の出力と一致しない場合があった。
上記関係式(16)、(17)を上記式(15)に代入し、炉心軸方向出力分布偏差AOについて解くと、下記関係式(18)で表される。この関係式(18)を使用することにより、どのような運転状態であっても本実施形態の制御方法を適用することができる。ΔIは、式(18)に全相対出力Pを乗ずることにより求めることができる。
AO={−1+√(1−4AC)}/2A・・・式(18)
ただし、
A=σφPX/λ
C=−X−A
軌跡表示部54は、パラメータ(DAOPX、DAOIX)をプロットした軌跡(プロット軌跡)を表示手段2に表示させる。具体的には、軌跡表示部54は、パラメータ算出部53により算出されたパラメータ(DAOPX、DAOIX)を取得し、直交座標系においてパラメータ(DAOPX)をX軸(一方の軸であり横軸)とし、またパラメータ(DAOIX)をY軸(他方の軸であり縦軸)とするプロット軌跡を表示手段2に表示させる。この場合、炉心軸方向出力分布偏差は、式(1)’のAOを用いる。
炉心軸方向出力分布偏差として式(1)に示すΔIを用いる場合、軌跡表示部54は、パラメータ(DAOPX、DAOIX)それぞれに全相対出力Pを乗じた値(DAOPX×P、DAOIX×P)をプロットした軌跡(プロット軌跡)を表示手段2に表示させる。具体的には、軌跡表示部54は、パラメータ算出部53により算出されたパラメータ(DAOPX×P、DAOIX×P)を取得し、直交座標系においてパラメータ(DAOPX×P)をX軸(一方の軸であり横軸)とし、またパラメータ(DAOIX×P)をY軸(他方の軸であり縦軸)とするプロット軌跡を表示手段2に表示させる。なお、軌跡の表示方法は、これに限られるものではなく、例えば直交座標系において、パラメータDAOPXやDAOPX×PをY軸に、パラメータDAOIXやDAOIX×PをX軸にした軌跡を表示するようにしてもよい。
なお、パラメータ(DAOPX、DAOIX)あるいは(DAOPX×P、DAOIX×P)のプロット軌跡は、次に示す(1)〜(5)の特徴を有していることが知られている。
(1)キセノン振動が安定している場合、図2に示すように、軌跡は原点を中心とする偏平な楕円になる。当該楕円の長径aは、第1象限と第3象限に存在し、キセノン振動の大きさによらず、横軸に対して一定角度(約36°前後)で傾斜する。
(2)軌跡は、常に反時計回りで進行し、キセノン振動の1周期(約30時間)で原点の周りを1周する。よって、この楕円上を移動する速さは、楕円の長径aから離れるほど速くなる。
(3)キセノン振動が発散性の場合、図3に示すように、楕円状の渦巻きが大きくなり、収束性の場合には小さくなって原点に収束する。
(4)制御棒13をステップ状に炉心12に挿入すると、軌跡は横軸に平行に負側に移動し、制御棒13を炉心12から引き抜くと、軌跡は横軸に平行に正側に移動する。また、制御棒13を停止すると、軌跡はその位置から上記(1)〜(3)の特徴を有する新たな楕円を描く。
(5)軌跡が原点にあるとき(AO=AO=AO、あるいはΔI=AO×P=AO×Pである条件のとき)、キセノン振動は消滅する。
軸方向出力偏差判定部55は、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法を実行することにより、パラメータ算出部53が算出したキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータ(パラメータ(DAOPX、DAOIX)あるいは(DAOPX×P、DAOIX×P))によって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づき、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差(AOあるいはΔI)が増加するか減少するかを予測する。この方法については後述する。
余裕度算出部56は、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する。許容範囲判定部57は、余裕度算出部56が、上述した炉心軸方向出力偏差分布に関する許容範囲(許容値)に基づいて求めた余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する。現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化すると予測される場合、許容範囲判定部57は、その旨の信号(警報信号)を制御棒移動部59と報知部58との少なくとも一方へ出力するようになっている。
報知部58は、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化すると予測される場合、その旨を警報するものである。本実施形態において、報知部58は、許容範囲判定部57から現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化すると予測される旨の出力信号を取得した場合、例えば、その旨を音声や光で原子炉10の作業員に報知する。光を用いる場合、例えば、警告灯を点灯あるいは点滅させたり、表示手段2に警告を表示させたり、表示手段2の表示画面の色を現在とは異なる色に変更したりする。
報知部58によって報知がなされると、作業員は、入力手段3を介して制御棒13を移動させるための操作をしてもよい。この場合、制御棒移動部59は、入力手段3から入力された操作情報(移動方向や移動量)を取得し、当該操作に対応する駆動信号を制御棒駆動装置14へ出力するようになっている。なお、報知部58による警報方法は、上述した構成に限られるものではない。本実施形態では、将来における炉心軸方向出力分布偏差の変化の方向が前記余裕度を減少させる方向に変化することが分かるので、例えば、許容範囲判定部57が前記余裕度を増加させるために必要な制御棒13の移動方向を求めて報知部58へ出力し、報知部58は、この出力に基づいて、制御棒13の移動方向を報知するようにしてものよい。
制御棒移動部59は、制御棒駆動装置14を制御して、制御棒13の炉心に対する挿入・抜き出し・停止の移動制御を実行するものである。現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化する場合、作業者は入力手段3を介して前記余裕度が増加するように制御棒13を移動させるための操作を実行する。これによって、キセノン振動が大きくなる前に原子炉10内の軸方向出力分布を制御できるので、キセノン振動を迅速に抑制できる。また、制御棒移動部59は、許容範囲判定部57から現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化すると予測される旨の信号を受け取った場合に、制御棒13を移動させるようにしてもよい。
本実施形態において、制御棒13を移動させる際には、表示手段2に表示された楕円軌跡のプロット点、すなわち、現時点よりも後における原子炉10のパラメータ(DAOPX、DAOIX)、すなわち、プロット点が、パラメータ(DAOPX、DAOIX)によって描かれる楕円の長径に向けて移動するように操作するだけでよい。これは、本願発明者による従来にない新たな知見に基づく操作方法である。すなわち、本願発明者は、プロット点が楕円軌跡の長径上にある場合、炉心軸方向出力偏差分布AOあるいはΔI一定であるという事実を見出した。
上記事実について、図面を用いてより詳細に説明する。以下においては、炉心軸方向出力偏差分布としてAOを用いる。図4は、炉心12に制御棒13を挿入し(原点〜A点)、一定時間保持した後(A点〜B点)、引き抜くことにより(B点〜C点)外乱を付与し、キセノン振動を誘発させたときの炉心12の炉心軸方向出力分布偏差AOを示している。また、図5は、図4に対応するパラメータ(DAOPX、DAOIX)のプロット軌跡を示している。
図4に示すように、炉心軸方向出力分布偏差AOの挙動は、キセノン振動の発生に繋がる所定の周期で上下に振動を繰り返しているところ、その変化率、すなわち接線の傾きは、極点(D、E、F)において0となる。そして、これらの極点(D、E、F)は、図5の楕円軌跡上においては長径a上に位置している。したがって、プロット点が楕円軌跡の長径a上に存在する場合、炉心軸方向出力分布偏差AOは一定であり、プロット点が長径aから離れているときは、常に炉心軸方向出力分布偏差AOが変化しつつあること、すなわちキセノン振動が大きくなりつつあることが示されている。
また、パラメータDAOPXは、(AO−AO)で定義されるため、楕円軌跡の長径a及び短径は、炉心軸方向出力分布偏差AO(図4の振幅)に比例する。したがって、上記の特徴(4)より、プロット点を楕円軌跡の長径aに向けて誘導するだけで、楕円軌跡の長径が短くなるため、当該炉心軸方向出力分布偏差AOは小さくなる。そして、移動後の位置から長径a及び短径が短縮化された楕円軌跡を描くこととなる。すなわち、キセノン振動が極めて小さなものとなる。
なお、制御棒13を移動する際には、プロット点を長径a上まで移動させることが好ましいが、可能な限り近づけるだけでもよい。これにより、炉心軸方向出力分布偏差AOの変化率が最小になるため、キセノン振動を抑制できる。また、他に外乱が存在しない限り、プロット点を移動させた後は、キセノン振動は振幅が小さくなる方向に進展するため、その後は放置しておいても、プロット点が原点に接近してゆき、キセノン振動は自然に消滅する方向に向かう。
また、本実施形態では、制御棒13を作業員によって操作しているが、この構成に限られるものではなく、制御棒移動部59によって自動制御するようにしてもよい。この場合、制御棒移動部59は、許容範囲判定部57から、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化すると予測される旨の信号を取得すると、現在のプロット点から楕円軌跡の長径aまでのX軸方向距離を算出する。そして、制御棒移動部59は、当該距離に基づいて、制御棒13の移動量を算出し、その分だけ制御棒13を挿入あるいは抜き出しさせる旨の操作信号を制御棒駆動装置14へ出力するように構成される。この場合も、制御棒移動部59が、楕円の長径aに向けてプロット点を誘導するように制御棒13を移動制御することになる。ただし、制御棒13の移動量とプロット点の移動量との関係は、時々刻々変化するものであるため、その時点での条件に応じた演算処理が実行される。
本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法では、現時点におけるキセノンパラメータ(DAOPXあるいはDAOPX×P)、ヨウ素パラメータ(DAOIXあるいはDAOIX×P)と、楕円軌跡の長径aとの関係から、炉心軸方向出力分布偏差(AOあるいはΔI)が今後増加するか、又は減少するかを予測する。次に、図6を用いて、この予測について説明する。次の説明では、炉心軸方向出力分布偏差としてΔIを、キセノンパラメータとしてDAOPX×Pを、ヨウ素パラメータとしてDAOPX×Pを用いる。
キセノンパラメータDAOPX×P、ヨウ素パラメータDAOIX×Pによって描かれる楕円軌跡をTとし、Nを現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータの値(プロット点)とする。(DAOPX×P、DAOIX×P)は、時間の経過とともに、原点Oの周りを図6の矢印方向に回転する。また、図7は、ΔIの時間変化を示しており、図7のG、Hは、それぞれ図6のG、Hに対応する。
図6と図7との対応関係から分かるように、プロット点が楕円軌跡TのGからHへ向かうにしたがって、図7に示すΔIは減少、すなわち負側へ移動する。一方、プロット点が楕円軌跡のHからGへ向かうにしたがって、図7に示すΔIは増加、すなわち、正側へ移動する。これは、現時点におけるプロット点Nが長径aよりも縦軸の正側(ヨウ素パラメータDAOIX×Pの正側)にある場合にはΔIは減少し、現時点における楕円軌跡Tのプロット点Nが長径aよりも縦軸の負側(ヨウ素パラメータDAOIX×Pの負側)にある場合にはΔIは増加することを意味する。したがって、現時点におけるプロット点Nと長径aとを比較することにより、現時点以降において、炉心軸方向出力偏差分布ΔIが増加するか減少するかを予測することができる。このように、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法によれば、簡単に将来の炉心軸方向出力偏差分布ΔIを予測できる。
次に、図8、図9を用いて、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法を説明する。本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法は、軸方向出力分布制御装置1が本実施形態に係る軸方向出力分布制御プログラム1aを実行することにより実現される。加圧水型原子炉を制御する場合、まず、ステップS101において、軸方向出力分布制御1の相対出力取得部51は、中性子束計測装置16から炉心上半分の相対出力P及び炉心下半分の相対出力Pを取得する。
次に、ステップS102に進み、軸方向出力分布偏差算出部52は、相対出力取得部51によって取得されたP及びPに基づき、上記関係式(1)〜(3)、あるいは(1)’〜(3)’を用いて原子炉10の軸方向出力分布偏差、より具体的にはキセノン対応軸方向出力分布偏差、ヨウ素対応軸方向出力分布偏差、及び炉心軸方向出力分布偏差を算出する(軸方向出力分布偏差算出ステップ)。また、ステップS103において、パラメータ算出部53は、軸方向出力分布偏差算出部52が算出したキセノン対応軸方向出力分布偏差、ヨウ素対応軸方向出力分布偏差、及び炉心軸方向出力分布偏差から、キセノンパラメータDAOPX×P、ヨウ素パラメータDAOIX×Pを算出する(パラメータ算出ステップ)。
次にステップS104に進み、軸方向出力偏差判定部55は、キセノンパラメータDAOPX×P及びヨウ素パラメータDAOIX×Pによって描かれる楕円の長径a(図6参照)と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータ、すなわち図6のプロット点Nとに基づき、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差ΔIが増加するか減少するかを予測する(軸方向出力分布偏差判定ステップ)。なお、軌跡表示部54は、表示手段2にキセノンパラメータDAOPX×P及びヨウ素パラメータDAOIX×Pによって描かれる楕円を表示させてもよい。次に、図9を用いて、軸方向出力分布偏差判定ステップを説明する。
軸方向出力分布偏差判定ステップのステップS201において、軸方向出力偏差判定部55は、キセノンパラメータDAOPX×P及びヨウ素パラメータDAOIX×Pによって描かれる楕円の長径a(例えば、長径aを表す一次式)を求める。長径aは、キセノンパラメータDAOPX×P及びヨウ素パラメータDAOIX×Pによる楕円軌跡から求めてもよい。また、長径aは、原点を通り、かつ横軸に対して一定角度θ(約36°前後)で傾斜する直線なので、原点を通り、かつ傾きKがtan(DAOPX×P/DAOIX×P)=θとなる直線を、長径aを表す一次式として、記憶手段4へ保存しておいてもよい。そして、軸方向出力分布偏差判定ステップにおいて、軸方向出力偏差判定部55は、適宜記憶手段4から長径aを表す一次式を読み出して、炉心軸方向出力分布偏差の予測に用いる。
次に、ステップS202へ進み、軸方向出力偏差判定部55は、現時点のプロット点N(DAOPX×P_n、DAOIX×P_n)と長径aとを比較する。例えば、軸方向出力偏差判定部55は、長径aを示す式DAOIX×P=K×DAOPX×PのDAOPX×Pに、現時点のプロット点NのDAOPX×P_nを代入して得られる値Yと、現時点のプロット点NのDAOPX×P_nとを比較する。その結果、DAOPX×P_n>Yであれば、軸方向出力偏差判定部55は、Nはaよりも上、すなわち、縦軸の正側にあると判定する。一方、DAOPX×P_n<Yであれば、軸方向出力偏差判定部55は、Nはaよりも下、すなわち、縦軸の負側にあると判定する。なお、DAOPX×P_n=Yである場合、長径a上に現時点におけるプロット点Nがあるので、Nがaよりも上か下かは判定できない。楕円軌跡上のプロット点は時間の経過とともに原点の周りを移動するので、DAOPX×P_n=Yである場合、例えば、軸方向出力偏差判定部55は、現時点から所定の時間が経過してからステップS203の判定を実行する。これによって、プロット点は長径a上から移動するので、Nが長径aよりも上か下かの判定が可能になる。
ステップS203でYesと判定された場合、すなわち、Nはaよりも上であると軸方向出力偏差判定部55が判定した場合、ステップS204へ進む。ステップS204において、軸方向出力偏差判定部55は、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差ΔIは減少する方向であると判定する。ステップS203でNoと判定された場合、すなわち、Nはaよりも下であると軸方向出力偏差判定部55が判定した場合、ステップS205へ進む。ステップS205において、軸方向出力偏差判定部55は、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差ΔIは増加する方向であると判定する。これによって、炉心軸方向出力分布偏差ΔIの変化の方向が予測されるので、軸方向出力分布偏差判定ステップが終了する。すなわち、図1のステップS104が終了する。なお、報知部59は、軸方向出力分布偏差判定ステップによる予測結果を、例えば、表示手段2に表示させてもよい。これによって、原子炉10の運転者は、炉心の状態を把握することができる。
次に、ステップS105へ進み、余裕度算出部56は、現時点における炉心軸方向出力分布偏差ΔIと、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度Mを算出する。原子炉10の安全性を確保できるように設定された許容値の範囲を、ΔI_low(下限許容値)以上ΔI_high(上限許容値)以下とする。余裕度Mは、現時点における炉心軸方向出力分布偏差ΔIと、下限許容値ΔI_low又は上限許容値ΔI_highとを用いて、式(19)、式(20)で定義される。
M_low=ΔI−ΔI_low・・・式(19)
M_high=ΔI−ΔI_high・・・式(20)
式(19)、式(20)から分かるように、余裕度Mは、現時点における炉心軸方向出力分布偏差ΔIと下限許容値ΔI_low又は上限許容値ΔI_highとの差であり、余裕度Mが小さいほど、炉心軸方向出力分布偏差ΔIは下限許容値ΔI_low又は上限許容値ΔI_highに接近することになるので、制御棒13を移動させる必要がある。ステップS106において、制御棒13を移動させるか否かが判定される。この場合、例えば、許容範囲判定部57は、余裕度算出部56が求めた余裕度M_lowとM_highとの少なくとも一方が、予め定めた閾値Ncよりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIが、余裕度Mを減少させる方向に変化するか否かを判定する。予め定めた閾値Mcは、制御棒13を移動させるか否かを判定するものであり、余裕度M_lowとM_highとの少なくとも一方が閾値Mcよりも小さい場合には、制御棒13を移動させると判定される。
余裕度M_lowとM_highとの少なくとも一方が、予め定めた閾値Mcよりも小さい場合、制御棒13を移動させる必要がある。しかし、図6に示す例において、現時点におけるプロット点Nでの余裕度M_high=ΔI−ΔI_highが閾値Mcよりも小さい場合、プロット点Nは、長径aの上にあるので現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIは減少していく。すなわち、そのまの状態でも余裕度M_highは増加して、閾値Mcよりも大きくなっていくので、制御棒13が移動するように操作する必要はない。同様に、余裕度M_low=I−ΔI_lowが閾値Mcよりも小さい場合には、プロット点Nが長径aの下にあれば、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIは増加する。その結果、そのまの状態でも余裕度M_lowは増加して、閾値Mcよりも大きくなっていくので、制御棒13が移動するように操作する必要はない。
このように、本実施形態に係る軸方向出力分布予測方法では、余裕度Mと、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIによる余裕度Mの変化とに基づいて制御棒13を操作するか否かを判定する。これによって、無駄な制御棒13の操作が不要になるので、迅速にキセノン振動を抑制して安定した原子炉10の運転が実現できる。ここで、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIが、余裕度Mを減少させる方向に変化するか否かは、例えば、表1に示すように判定される。なお、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIが、余裕度Mを減少させる方向に変化するか否かは、許容範囲判定部57が判定してもよいし、原子炉10の作業者が判定してもよい。許容範囲判定部57によって、現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIの変化を判定する場合、表1をデータテーブル化して記憶手段4に格納しておき、許容範囲判定部57は、余裕度Mと閾値Mcとの比較結果及びプロット点Nと長径aとの比較結果を前記データテーブルに与えて、制御棒13の操作が必要か否かを判定する。
Figure 0004981830
ステップS106においてNoと判定された場合、すなわち、余裕度M_low又はM_highの少なくとも一方が予め定めた閾値Ncよりも大きいか、又は現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIが、余裕度Mを増加させる方向に変化する場合、ステップS101へ戻り、軸方向出力分布制御装置1は原子炉10の監視を継続する。ステップS106においてYesと判定された場合、すなわち、余裕度M_lowとM_highとの少なくとも一方が、予め定めた閾値Ncよりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差ΔIが、余裕度Mを減少させる方向に変化する場合、制御棒13の操作が必要なのでステップS107へ進む。
ステップS107において、作業員は、入力手段3から制御棒13を移動させるための操作を実行する(制御棒移動ステップ)。なお、作業員が制御棒13を操作する場合、制御棒移動ステップに先立ち、報知部58は、制御棒13を移動させる操作が必要であることを音声や映像で報知する。これによって、作業者は、制御棒13の操作が必要であることを確実に把握できる。
制御棒13を移動させるにあたって、本実施形態において、作業員は、パラメータ(DAOPX×P、DAOIX×P)の最新のプロット点が、楕円軌跡の長径aに向けて移動するように制御棒13を操作する。すなわち、現時点よりも後におけるパラメータ(DAOPX×P、DAOIX×P)が楕円軌跡の長径aに向けて移動するように制御棒13が操作される。ここで、軌跡表示部54は、制御棒13の操作が必要な場合、表示手段2に、パラメータ(DAOPX×P、DAOIX×P)の楕円軌跡を表示させる。これによって、作業者の操作を補助することができる。
これにより、他に外乱がない限り、炉内軸方向出力分布偏差ΔIの変化率が最小になるため、キセノン振動を抑制できる。また、キセノン振動は振幅が小さくなる方向に進展するため、その後は放置しておいても、プロット点が原点Oに接近してゆき、キセノン振動は自然に消滅する方向に向かう。制御棒13を移動制御した後は、STARTへ戻り、原子炉10の運転状況の監視が継続される。
制御棒移動部59によって制御棒13を自動制御する場合、ステップS106において、許容範囲判定部57は、制御棒13の操作が必要である旨の判定結果を制御棒移動部59へ出力する。この出力を受信した制御棒移動部59は、現在のプロット点Nから楕円軌跡の長径aまでにおけるX軸方向(横軸であり、図6のDAOPX×P)の距離を算出する。そして、当該距離に基づいて、制御棒13の移動量を算出し、その分だけ制御棒13を挿入させる旨の操作信号を制御棒駆動装置14へ出力する。
以上、本実施形態によれば、
1.キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータ(すなわち、前記楕円上のプロット点)との位置関係のみから、簡単に炉心軸方向出力分布偏差の将来における変化を判定できる。その結果、原子炉のキセノン振動を抑制するにあたっては、原子炉の軸方向出力分布偏差の変化を簡単に予測することができる。
2.原子炉10内の軸方向出力分布を制御するだけで、キセノン振動を同時に制御でき、キセノン振動を迅速かつ極めて小さく抑制し、原子炉制御上の安全性を確実なものにすることができる。
3.制御棒13の移動タイミング及び移動量が容易に視認され、簡単かつ確実に制御棒13を操作することができ、制御戦略を極めて簡単明瞭なものにすることができる等の効果を奏する。
以上のように、本発明に係る軸方向出力分布予測方法及び軸方向出力分布予測装置は、炉心軸方向出力分布偏差の将来における変化を予測することに有用である。
1 軸方向出力分布制御装置
1a 軸方向出力分布制御プログラム
2 表示手段
3 入力手段
4 記憶手段
5 演算処理手段
10 原子炉
11 圧力容器
12 炉心
13 制御棒
14 制御棒駆動装置
15a 炉外中性子束検出器
15b 炉内中性子束検出器
16 中性子束計測装置
41 プログラム保存部
42 制御情報保存部
51 相対出力取得部
52 軸方向出力分布偏差算出部
53 パラメータ算出部
54 軌跡表示部
55 軸方向出力偏差判定部
56 余裕度算出部
57 許容範囲判定部
58 報知部
57 制御棒移動部

Claims (4)

  1. 原子炉の炉心上半分での相対出力(P )及び同炉心下半分での相対出力(P )に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出ステップと、
    前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
    前記パラメータ算出ステップで算出されたキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定ステップと、
    前記軸方向出力分布偏差算出ステップの後に、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出ステップと、
    軸方向出力分布偏差判定ステップの後に、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定ステップと、
    前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、制御棒を移動させる操作が必要であることを報知する報知ステップと、
    を含むことを特徴とする軸方向出力分布予測方法。
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )・・・式(1)
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )・・・式(2)
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )・・・式(3)
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )/(P +P )・・・式(1)’
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )/(P TX +P BX )・・・式(2)’
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )/(P TI +P BI )・・・式(3)’
    ただし、
    TX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
    TI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
  2. 原子炉の炉心上半分での相対出力(P )及び同炉心下半分での相対出力(P )に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出ステップと、
    前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
    前記パラメータ算出ステップで算出されたキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定ステップと、
    前記軸方向出力分布偏差算出ステップの後に、現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出ステップと、
    軸方向出力分布偏差判定ステップの後に、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定ステップと、
    前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータが、前記楕円の長径に向かって移動するように制御棒を移動制御する制御棒移動ステップと、
    を含むことを特徴とする軸方向出力分布予測方法。
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )・・・式(1)
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )・・・式(2)
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )・・・式(3)
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )/(P +P )・・・式(1)’
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )/(P TX +P BX )・・・式(2)’
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )/(P TI +P BI )・・・式(3)’
    ただし、
    TX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
    TI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
  3. 原子炉の炉心上半分での相対出力(P )及び同炉心下半分での相対出力(P )に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出部と、
    前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出部と、
    前記パラメータ算出部が算出したキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定部と、
    現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出部と、
    前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定部と、
    前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、制御棒を移動させる操作が必要であることを報知する報知部と、
    を含むことを特徴とする軸方向出力分布予測装置。
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )・・・式(1)
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )・・・式(2)
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )・・・式(3)
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )/(P +P )・・・式(1)’
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )/(P TX +P BX )・・・式(2)’
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )/(P TI +P BI )・・・式(3)’
    ただし、
    TX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
    TI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
  4. 原子炉の炉心上半分での相対出力(P )及び同炉心下半分での相対出力(P )に基づいて、炉心軸方向出力分布偏差と、現在のキセノン濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するキセノン対応軸方向出力分布偏差と、現在のヨウ素濃度がその状態で平衡状態として実現するのに対応するヨウ素対応軸方向出力分布偏差とをそれぞれ下記関係式(1)〜(3)、又は(1)’〜(3)’により算出する軸方向出力分布偏差算出部と、
    前記原子炉の運転中における炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるキセノンパラメータ、及び前記原子炉の運転中におけるヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差とキセノン対応炉心軸方向出力分布偏差との差を用いて表されるヨウ素パラメータを算出するパラメータ算出部と、
    前記パラメータ算出部が算出したキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータによって描かれる楕円の長径と、現時点におけるキセノンパラメータ及びヨウ素パラメータとに基づいて、現時点以降において、炉心軸方向出力分布偏差が増加するか減少するかを予測する軸方向出力分布偏差判定部と、
    現時点における炉心軸方向出力分布偏差と、当該炉心軸方向出力分布偏差の許容値との差から、余裕度を算出する余裕度算出部と、
    軸方向出力分布偏差判定ステップの後に、前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が、前記余裕度を減少させる方向に変化するか否かを判定する許容範囲判定部と、
    前記余裕度が、予め定めた閾値よりも小さく、かつ現時点以降の炉心軸方向出力分布偏差が前記余裕度を減少させる方向に変化する場合には、キセノンパラメータ及びヨウ素パラメータが、前記楕円の長径に向かって移動するように制御棒を移動制御する制御棒移動部と、
    を含むことを特徴とする軸方向出力分布予測装置。
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )・・・式(1)
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )・・・式(2)
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )・・・式(3)
    炉心軸方向出力分布偏差:(P −P )/(P +P )・・・式(1)’
    キセノン対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TX −P BX )/(P TX +P BX )・・・式(2)’
    ヨウ素対応炉心軸方向出力分布偏差:(P TI −P BI )/(P TI +P BI )・・・式(3)’
    ただし、
    TX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BX :キセノン濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
    TI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心上半分の出力
    BI :ヨウ素濃度を平衡状態の濃度として出現させる炉心下半分の出力
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