実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置について図面を参照して説明する。この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於いては、エンジンが成層混合気による燃焼モード(以下、成層燃焼モードと称する)で運転されており、燃料は圧縮行程で筒内に直接噴射され、成層燃焼モード運転時に於いて、吸気バルブが開弁している間にタンブル流動の中心位置を推定し、この推定したタンブル流動の中心位置(以下、タンブル流動推定中心位置と称する)に応じて、吸気バルブが閉弁している間に実行される燃料制御及び点火制御に関するパラメータの一つである点火時期を補正する実施例について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示す制御装置を構成するタンブル流動制御手段25、吸気流速演算手段26、タンブル流動中心位置推定手段27、中心位置補正手段28、筒内流動判定手段29、及び筒内流動変化補正手段30は、後述するエンジン制御用電子コントロールユニット(以下、ECUと称する)のメモリに記憶されたソフトウェアにより構成されている。図1に示す夫々の手段の動作等の詳細については後述する。
図2は、この発明の実施の形態1、及び後述する実施の形態2に係る内燃機関の制御装置を含むシステム全体を示す構成図である。尚、一般的にエンジンには、複数のシリンダが設けられているが、図2では、便宜上、そのうちの1つのシリンダについてのみ図示している。
図2に於いて、エンジン1には、筒状のシリンダ2が設けられている。シリンダ2内にはその軸線方向に自在に往復運動するピストン3が設けられており、ピストン3の頂面にはタンブル流動の案内やシリンダ2の上部への成層混合気を形成するために皿状に窪んだキャビティ4が形成されている。ここで、キャビティ4を形成すると後述する燃焼室5内の容積が増加して圧縮比が低下してしまうため、圧縮比を低下させること無くピストン3にキャビティ4を形成するために、ピストン3の頂面は山状に傾斜が形成されて盛り上った形状に形成され、その山状に形成された頂部にキャビティ4が形成されている。
シリンダ2とピストン3によって、燃料と空気との混合気が燃焼する燃焼室5が形成される。又、ピストン3の往復運動を回転運動に変換するクランク軸6が設けられており、クランク軸6の回転角度(クランク角)を検出するクランク角センサ7が設けられている。更に、シリンダ2には、エンジン1を冷却するための冷却水(図示せず)の温度に応じた電圧を出カする水温センサ8が設けられている。
シリンダ2内に空気を吸入する吸気マニホールド9と、燃焼室5内で混合気が燃焼して生成された排気ガスを排出する排気マニホールド10とがシリンダ2に接続されている。又、シリンダ2には、燃焼室5と吸気マニホールド9との間を開閉する吸気バルブ11と、燃焼室5と排気マニホールド10との間を開閉する排気バルブ12とが取り付けられている。適切な開弁タイミング及び適切なリフト量で吸気バルブ11及び排気バルブ12を制御するために、吸気カム13及び排気カム14が設けられている。
シリンダ2内の吸気バルブ11の近傍には、適切なタイミングでシリンダ2内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁15が取り付けられている。更に、シリンダ2の頂部には、燃焼室5に形成された混合気に火花点火する点火プラグ16と、この点火プラグ16に高電圧エネルギを供給する点火コイル17が取り付けられている。
吸気マニホールド9には、吸気マニホールド9の下部を閉塞するタンブル流動制御バルブ18が取り付けられている。ここで、タンブル流動制御バルブ18は、バルブの開度が小さくなれば、吸気マニホールド9の閉塞領域が拡大するように取り付けられている。タンブル流動制御バルブ18の開度を小さくし、吸気マニホールド9に於ける閉塞領域が拡大した場合、吸気マニホールド9の図に於ける上部の偏流が増加することに伴い吸気バルブ11の上方、即ちシリンダ2の中心方向から通過する吸気量が増加することで、シリンダ2内に形成されるタンブル流動が強化される。又、吸気バルブ11の上方から通過する吸気量が増加したときに於いては、吸気バルブ11を通過する全方向の平均的な流速、特に吸気バルブ11の上方の流速、は増加する。
吸気マニホールド9の上流側には、燃焼室5に吸入される空気を一時的に溜めるサージタンク19が接続されており、サージタンク19の上流側には、スロットルバルブ20が設けられている。又、スロットルバルブ20の下流側には、ブースト圧に応じた電圧を出力するブースト圧センサ21が設けられている。
排気マニホールド10の下流側には、排気ガス中の有害物質を取り除く触媒装置22が接続されており、触媒装置22の下流側には、排気ガスを外部に排気するテールパイプ23が接続されている。又、排気マニホールド10には、排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ(図示せず)が設けられている。
ECU24は、演算処理をするCPU、プログラムデータや固定値データを記憶するROM、格納されているデータを更新して順次書き換えられるRAM、及びECU24の電源が切られても格納されているデータを保持するバックアップRAMを有するマイクロコンピュータ(図示せず)と、燃料噴射用駆動装置のアクチュエータ(図示せず)を駆動するため駆動回路(図示せず)と、各種信号の入出力を行うI/Oインターフェース(図示せず)とで構成されている。
ECU24のメモリには、図1に示すタンブル流動制御手段25、吸気流速演算手段26、筒内流動判定手段29、タンブル流動中心位置推定手段27、中心位置補正手段28、筒内流動変化補正手段30、がソフトウェアとして記憶されている。又、ECU24には、水温センサ8、及びブースト圧センサ21からの電圧出力値もA/D変換されて入カされ、これらA/D変換された各出カ値は、夫々冷却水温TW、及びブースト圧Pbとして前述のソフトウェアとして記憶されている夫々の手段での演算に用いられる。又、ECU24にはクランク角センサ7の信号が割り込み入力されて、ECU24に内蔵されたタイマーとクランク角センサ7の信号とからエンジン回転数NEが演算される。
次に、図1に示すこの発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の構成について説明する。図1に於いて、タンブル流動制御手段25は、入力されたクランク角センサ7の出力に基づく前述のエンジン回転数NEとブースト圧センサ21からのブースト圧Pbとに基づいて、エンジン1の運転状態に応じたタンブル流動制御バルブ開度TCVを演算し、この演算したタンブル流動制御バルブ開度TCVに応じてタンブル流動制御バルブ18を開閉してシリンダ2内のタンブル流動の強さを制御する。より具体的には、後述するように、エンジン回転数NEとブースト圧Pbの値により予め設定されたマップを参照して更新されるタンブル流動制御バルブ開度TCVに応じて、タンブル流動制御バルブ18を開閉制御する。タンブル流動制御手段25に於ける処理の詳細については後述する。
吸気流速演算手段26は、吸気バルブ11が開弁している間、タンブル流動制御手段25により演算されたタンブル流動制御バルブ開度TCVと、吸入空気量Qaと、吸気バルブリフト量INTLと、吸気バルブ開弁タイミングINTTとに基づいて、吸気マニホールド9から吸気バルブ11を通過してシリンダ2内に吸入される空気の流速(バルブ通過流速)を表す吸気流速VVを演算する。より具体的には、後述するように、タンブル流動制御バルブ開度TCV、吸入空気量Qa、吸気バルブリフト量INTL、及び吸気バルブ開弁タイミングINTTから予め設定されたマップを参照した値、及び予め設定してある重み付け係数KVを乗算して演算される。吸気流速演算手段26に於ける処理の詳細については後述する。
タンブル流動中心位置推定手段27は、吸気バルブ11が開弁している間の所定のタイミングで、吸気流速演算手段26により演算された吸気バルブ11を通過する吸気流速VVに応じて予め設定されて一意に決定するタンブル流動推定中心位置CTの特性を用いてタンブル流動推定中心位置CTを演算する。タンブル流動中心位置推定手段27に於ける処理の詳細については後述する。
ここで、吸気バルブ11を通過する吸気流速VVと燃焼室5内のタンブル流動形成位置の関係を、図を用いて説明する。図3は、吸気流速が変化した時のタンブル流動形成の変化を示す説明図で、(a)はタンブル流動制御バルブ開度が大きく、吸気バルブ11を通過する吸気流速が低いとき、(c)はタンブル流動制御バルブ開度が小さく、吸気流速が高いとき、(b)はタンブル流動制御バルブ開度が(a)と(c)の開度の間であり、吸気流速が(a)と(c)の間となるとき、のシリンダ2内のタンブル流動の主流を夫々図示している。
図3の(a)に於いて、吸気流速VVが小さいときには、ピストン3頂面近傍のタンブル流動の主流Aは、シリンダ2の上部へ向かうようにキャビティ4によって流動が案内されている。従って、形成されるタンブル流動の中心位置CTは、キャビティ4の中心位置とほぼ同じ位置となる。
図3の(b)では、(a)よりも吸気流速VVが高くなっているため、吸気バルブ11を通過した後、タンブル流動の主流Aは、排気バルブ12の近傍、シリンダ2の排気側壁面、ピストン3頂面の傾斜を通過し、キャビティ4に沿うことなくシリンダ2の上部へ向かう流動を形成する。そのため、形成されるタンブル流動の中心位置CTは、キャビティ4の中心位置CCから図の右横方向、即ち排気側方向にずれる。
又、図3の(c)では、(b)よりもさらに吸気流速VVが高くなっていることから、タンブル流動の主流Aは、(b)と同様にキャビティ4に沿わず、(b)よりもさらに吸気側のシリンダ2の上部へと向かう流動を形成する。そのため、形成されるタンブル流動Cの中心位置CTは、キャビティ4の中心位置CCから排気側へずれるが、(b)に於けるタンブル流動Aの中心位置CTよりはキャビティ4の中心側に近づく。図3の(a)、(b)に於けるCdは、キャビティ4の中心位置CCからのタンブル流動Cの中心位置CTのずれ(以下、タンブル流動中心ずれと称する)を示す。
図1に示すタンブル流動中心位置推定手段27には、図3に示す現象に基づいて、吸気流速VVに応じたタンブル流動推定中心位置CTの特性が予め記憶されている。そして、入力される吸気流速VVに対応するタンブル流動推定中心位置CTを読み出して出力する。
次に、中心位置補正手段28は、後述する筒内流動変化補正手段30に於いて補正を行う基本点火時期SAbから、予め設定されたクランク角に応じて一意に決定する中心位置補正量CHの特性を用いて演算される中心位置補正量CHをタンブル流動中心位置推定手段27から出力されたタンブル流動中心位置CTに乗算することにより補正してタンブル流動中心位置CTを更新する。中心位置補正手段28に於ける処理の詳細については後述する。
筒内流動判定手段29は、タンブル流動中心位置推定手段27から出力されたタンブル流動推定中心位置CTと予め設定してあるキャビティ中心位置CCとの差に基づいて演算し、その差が予め設定してある判定値CdTよりも大きい場合には、キャビティ4に沿わないタンブル流動を形成すると判定されて、後述する筒内流動変化補正手段30による制御を実行する。筒内流動判定手段29に於ける処理の詳細については後述する。
筒内流動変化補正手段30は、タンブル流動推定中心位置CTに応じた値をエンジン回転数NEとブースト圧Pbとに基づいて演算される基本点火時期SAbから減算して補正を施す。筒内流動変化補正手段30に於ける処理の詳細については後述する。
次に、前述のように構成されたこの発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於いて、タンブル流動が制御され、吸気流速を演算し、タンブル流動中心位置を推定し、タンブル流動推定中心位置を補正し、点火時期を補正する一連の動作について説明する。
先ず、タンブル流動が制御され、吸気流速を演算する動作について説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於けるECUのタンブル流動制御手段、及び吸気流速演算手段の動作を示すフローチャートである。尚、このフローチャートによる動作は、ECU24に於いてメインルーチンが所定時間周期で実行される中でサブルーチンとして実行される。又、この実施の形態1に於いては、所定時間周期のメインルーチン内のサブルーチンとして実行されるが、所定クランク角度毎に割り込んで実行される割り込みルーチン内のサブルーチンとして実行されても良い。
図4に於いて、先ず、ステップS101に於いて、タンブル流動制御条件が成立しているか否かを判定する。タンブル流動制御条件は、例えばエンジン回転数NEが予め設定された所定値以下であり、スロットル開度が予め設定された所定値以下であり、且つ水温TWが予め設定された所定値以下である場合に条件が成立するものである。
ステップS101に於いてタンブル流動制御条件が成立していないと判定された場合(N)、ステップS102に進んで初期化処理が実行される。ステップS102での初期化処理は、吸気流速VV、タンブル流動推定中心位置CT、中心位置補正量CH、キャビティ4の中心位置CCからのタンブル流動の中心位置CTのずれであるタンブル流動中心ずれCdに、夫々「0」を入力することによる行われる。ステップS102の初期化処理が終了すると、そのまま何もせずにリターンしてメインルーチンに戻る。
次に、ステップS101に於いて、タンブル流動制御条件が成立していると判定された場合(Y)、ステップS103に進んでタンブル流動制御が実行される。ステップS103によるタンブル流動制御は、タンブル流動を形成しタンブル流動の強さを制御するものであり、例えば次に示す式(1)により、エンジン回転数NEとブースト圧Pbの値により予め設定されたマップを参照して更新されるタンブル流動制御バルブ開度TCVに応じて、タンブル流動制御バルブ18を開閉制御することにより行なわれる。
TCV=map(NE,Pb)・・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
このステップS103が、タンブル流動制御手段25に相当する。
ここで、この実施の形態1に於いては、エンジン運転状態に応じてタンブル流動制御バルブ開度TCVを変化させることのみでタンブル流動の強さを制御しているが、これに限ったものではない。即ち、タンブル流動制御バルブ18が開弁している間、例えばエンジン回転数、吸気バルブ11の位相(開弁タイミング)、及び吸気バルブ11の最大リフト量の変化によってもタンブル流動の強さが変化することから、タンブル流動の制御は、エンジン回転数NE、後述する吸気バルブ開弁タイミングINTT、及び後述する吸気バルブリフト量INTLのうちの少なくとも何れか一つと、タンブル流動制御バルブ開度TCVとを組み合わせて、タンブル流動を制御するようにしても良い。
次に、ステップS104に於いて、吸気バルブ11が開弁中であるか閉弁中であるかを判定する。例えば、後述する吸気バルブ開弁タイミングINTT、及び後述する吸気バルブリフト量のプロフィールより、吸気バルブ11が開弁するクランク角及び閉弁するクランク角を演算し、現在のクランク角が、吸気バルブ11が開弁するクランク角以降であり且つ閉弁するクランク角よりも前であれば吸気バルブが開弁中であると判定する。
ステップS104に於ける判定の結果、吸気バルブ11が閉弁中であれば(N)、そのまま何もせずにリターンしてメインルーチンに戻る。ステップS104に於いて、吸気バルブ11が開弁中であると判定すれば(Y)、吸気バルブ11に於いて空気が通過しているため、ステップS105に於いて吸気バルブ11を通過する流速を表す吸気流速VVを演算する。
吸気流速VVは、次に示す式(2)により、タンブル流動制御バルブ開度TCV、吸入空気量Qa、吸気バルブリフト量INTL、及び吸気バルブ開弁タイミングINTTより予め設定されたマップを参照した値、及び予め設定してある重み付け係数KVを乗算して演算される。
VV=TCV×Qa×map(INTL,INTT)×KV・・・・・式(2)
このステップS105が、吸気流速演算手段26に相当する。
ここで、吸気バルブ開弁タイミングINTTは、吸気バルブ11の開弁動作の位相を制御するパラメータであり、例えばエンジン回転数NEとブースト圧Pbからマップを参照して更新され、吸気バルブ開弁タイミングINTTに応じて吸気カム13の位相を変化させて制御される。又、吸気バルブリフト量INTLは、例えば予め記憶している吸気バルブリフト量のプロフィール(マップ)に対して吸気バルブ開弁タイミングINTTを与え、現在のクランク角に於ける吸気バルブリフト量を参照するようにして演算される。但し、吸気バルブリフト量INTLの演算方法はこれに限ったものではなく、吸気バルブ11の開口面積を演算して吸気バルブリフト量を演算することや、吸気バルブ11に取り付けて吸気バルブ11のリフト量を検出するセンサの出力値により演算すること等でも求めることができる。
又、吸入空気量Qaは、次に示す式(3)により、エンジン回転数NEとブースト圧Pbを乗算することによって演算される。
Qa=NE×Pb・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(3)
このステップS105が、吸気流速演算手段26に相当する。
尚、吸入空気量Qaは式(3)のように演算されるものに限らず、例えば吸気マニホールド9を通過する空気量を検出するセンサの出力値を用いて演算しても良い。
又、この実施の形態1に於いては、タンブル流動制御バルブ開度TCV、吸気バルブリフト量INTL、吸気バルブ開弁タイミングINTT、及びエンジン回転数NEに基づいて吸気流速VVを演算しているが、これに限ったものではない。即ち、吸気バルブ11の近傍に設置してその領域を通過する流速を検出するセンサの出力値や、吸気バルブ11を通過する前後の圧力差等によって、吸気流速VVが得られるようにしても良い。
次にステップS106に於いて、タンブル流動中心位置推定ルーチンを実行する。図5は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置のECUのタンブル流動中心位置推定手段、中心位置補正手段、筒内流動判定手段、筒内流動変化補正手段の動作を示すフローチャートであって、図4に於けるステップS106の処理内容の詳細である。次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、タンブル流動中心位置を推定し、タンブル流動推定中心位置を補正し、点火時期を補正する動作について説明する。
図5に於いて、先ず、ステップS201に於いて、現在のクランク角が、後述するタンブル流動推定中心位置CTを演算するための予め設定された所定のタイミングとなるクランク角であるかどうかを判定する。この実施の形態1に於いては、予め設定された所定のタイミングは、吸気バルブ11のリフト量が最大(ピーク)となるタイミング(バルブ開口面積が最大となるタイミング)としており、予め設定された所定のタイミングとなるクランク角は、予め記憶している吸気バルブリフト量のプロフィール(マップ)に対して吸気バルブ開弁タイミングINTTを与えることで、吸気バルブリフト量が最大値となるクランク角として求められる。
ここで、この実施の形態1に於いては、予め設定された所定のタイミングを吸気バルブ11のリフト量が最大となるタイミングとしているが、これに限ったものではなく、例えば吸気バルブ11の開弁途中における吸気流速が最大となる近傍のタイミングとしても良い。吸気流速が最大となる吸気バルブのリフト量を予め記憶しておくことで、吸気流速が最大となる吸気バルブのリフト量、予め記憶している吸気バルブリフト量のプロフィール(マップ)、及び吸気バルブ開弁タイミングINTTから、予め設定された所定のタイミングとなるクランク角を検出できる。但し、吸気バルブ11が早開けや遅閉じなどに制御されている場合に発生するシリンダ2から吸気マニホールド9へ空気が戻る吹き戻し(吸気流速VVが負の値)の期間や、吸気流速VVが急速に増減しているタイミング等は予め設定される所定のタイミングとしない。
ステップS201に於ける判定の結果、吸気バルブ11のリフト量が最大となるタイミングでない場合(N)には、そのまま何もせずリターンしてメインルーチンとしての図4に示すタンブル流動制御ルーチンに戻る。一方、ステップS201に於ける判定の結果、吸気バルブ11のリフト量が最大となるタイミングである場合(Y)には、ステップS202に進み、タンブル流動推定中心位置CTを演算する。
図6は、この発明の実施の形態1及び後述する実施の形態2に係る内燃機関の制御装置に於ける吸気流速とタンブル流動推定中心位置の特性を示すマップである。ステップS202にて演算するタンブル流動推定中心位置CTは、前述の図3に示した現象に基づいて予め設定された図6に示すような吸気流速VVに応じたタンブル流動推定中心位置特性マップを参照して、次に示す式(4)により演算される。
CT=map(VV)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(4)
このステップS202が、タンブル流動中心位置推定手段27に相当する。
図6に示すマップは、吸気流速VVが低い場合にはタンブル流動の中心位置CTはキャビティ中心位置CCと同じ値となるが、吸気流速VVが高くなるとタンブル流動の中心位置CTは排気側に移動し、更に吸気流速VVが高くなるとタンブル流動の中心位置CTは除々にキャビティ中心位置CCの方向に移動する特性となっている。図7は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於けるタンブル流動推定中心位置、キャビティ中心位置、及びタンブル流動中心ずれの関係を示す説明図である。図7に示すように、タンブル流動推定中心位置CT及びキャビティ中心位置CCは、シリンダ2に対する横方向の位置を表している。尚、キャビティ中心位置CCは、同一キャビティ形状である限り固定の値である。
次に、図5のステップS203に於いて、中心位置補正量CHを演算する。中心位置補正量CHは、ステップS202で演算されたタンブル流動推定中心位置CTを補正して更新するものである。即ち、後述する筒内流動変化補正手段30に於いてタンブル流動推定中心位置CTに応じて補正する点火時期は、吸気バルブが閉弁している間に実行される点火制御のパラメータであることから、吸気バルブ11が開弁している間にタンブル流動中心位置が若干移動することを鑑みて、タンブル流動推定中心位置CTを補正して更新する。
ここで、吸気バルブ11が閉弁している間のタンブル流動の中心位置について説明する。吸気行程の終了時(吸気バルブ11が閉弁される近傍のタイミング)にはピストン3は下死点BDC(Bottom Dead Center)となっており、次の圧縮行程に於いてピストン3は上死点TDC(Top Dead Center)へと移動する。その間、燃焼室5の容積は減少し、吸気バルブ11の開弁時に形成されたタンブル流動はピストン3に押し潰される。ここで、排気側に位置してキャビティ4に沿わないタンブル流動が押し潰されると、タンブル流動の中心位置はより排気側へ移動する傾向がある。又、圧縮行程が終了し、燃焼行程でピストン3がTDCからBDCへ移動する間、燃焼室5の容積は増加し、排気側に位置してキャビティ4に沿わないタンブル流動はピストン3による押し潰しから開放されて、タンブル流動の中心位置はキャビティ4の中心位置へ向けて移動する傾向がある。
このことを鑑みて、タンブル流動推定中心位置CTを補正して更新する。即ち、次に示す式(5)のように基本点火時期SAbから予め設定された特性マップを用いて中心位置補正量CHを演算し、中心位置補正量CHを補正前のタンブル流動推定中心位置CTに乗算してタンブル流動推定中心位置CTを更新する。図8は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於けるクランク角と中心位置補正量の特性を示すマップである。
CH=map(SAb)・・・・・・・・・・・・・・・式(5)
CT←CT×CH
このステップS203が中心位置補正手段28に相当する。
尚、この実施の形態1では、中心位置補正量CHをタンブル流動中心位置CTに乗算して補正しているが、これに限ったものではなく、中心位置補正量CHをタンブル流動中心位置CTに加算して補正するようにしても良い。
次に、ステップS204に於いて、次に示す式(6)により、ステップS203により補正されて更新されたタンブル流動中心位置CTからキャビティ中心位置CCを減算してタンブル流動中心ずれCdを演算する。
Cd=CT−CC・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(6)
ここで、タンブル流動中心ずれCdは、図7に示すように、タンブル流動中心位置CTがキャビティ中心位置CCに対してどれだけシリンダ2の横方向へ移動しているかを表している。タンブル流動中心ずれCdが正の値であれば、キャビティ中心位置CCよりも排気側へタンブル流動の中心位置が移動していることを示し、負の値であればキャビティ中心位置CCよりも吸気側へタンブル流動の中心位置が移動していることを示す。
更に、図5のステップS205に於いて、タンブル流動中心ずれCdが予め設定された判定値CdT以上であるか否かを判定する。判定値CdTは、キャビティ4に沿わないタンブル流動となるときのタンブル流動中心位置として予め設定されている。
ステップS205に於いて、タンブル流動中心ずれCdが判定値CdT以上でないと判定された場合(N)には、そのまま何もせずに図4に示すタンブル流動制御ルーチンであるメインルーチンに戻る。ステップS205に於いて、タンブル流動中心ずれCdが判定値CdT以上であると判定された場合(Y)には、ステップS206に進み、点火時期の補正を行う。
これらステップS204及びステップS205が、筒内流動判定手段29に相当する。
ステップS206に於いて、タンブル流動中心位置CTに応じて基本点火時期SAbを補正して点火時期SAを演算する。点火時期SAは、次に示す式(7)により、タンブル流動中心位置CTが大きい程(排気側に位置している程)進角するように補正される。
SA=SAb−CT×KIGN・・・・・・・・・式(7)
尚、KIGNは、点火時期補正用重み付け係数であり、タンブル流動中心位置CTの変化量に対する点火時期変化量として「0」よりも大きい値が予め設定されている。
このステップS206が筒内流動変化補正手段30に相当する。
ここで、タンブル流動中心位置が移動した際の点火時期の補正方向について説明する。一般にエアガイド式の燃料噴射手法で、且つ成層燃焼モードでは、圧縮行程で噴射される燃料を点火プラグ16の近傍にのみ拡散させて成層混合気を形成し、成層混合気が点火プラグ16の近傍に位置したときに点火を行うよう、燃料制御及び点火制御を行う必要がある。
タンブル流動の中心位置がキャビティ4の中心位置に一致する場合、圧縮行程で噴射される燃料噴霧は、タンブル流動のキャビティ4からシリンダ2上部への流動と正面衝突することで流動の勢いが低下し、除々に点火プラグ16の近傍に拡散して成層混合気が形成される。
一方、タンブル流動の中心位置がキャビティ4の中心位置よりも排気側にずれている場合、圧縮行程で噴射される燃料噴霧は、排気側に位置したタンブル流動のピストン3の傾斜からシリンダ2上部へ流れる流動と正面衝突せず、流動によって噴霧がシリンダ2上部へと撒きあがるため、点火プラグ16の近傍に拡散して成層混合気が形成されるタイミングが早まる。従って、タンブル流動中心位置が排気側に位置する程、点火時期を進角方向に補正をする必要がある。
図5に於けるステップS206が終了すれば、図4に示すタンブル流動制御ルーチンであるメインルーチンに戻る。
尚、この実施の形態1では、タンブル流動推定中心位置CTに応じた値を基本点火時期SAbに減算して補正を施しているが、これに限ったものではなく、タンブル流動推定中心位置CTに応じた値を基本点火時期SAbに乗算して補正を施すようにしても良い。
又、この実施の形態1では、タンブル流動推定中心位置CTに応じて点火時期を補正したが、これに限らず、燃料制御及び点火制御に関するパラメータである点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量、燃料噴射回数、燃圧(噴霧ペネトレーション)、及び燃料噴射方向のうちの少なくとも何れか一つを補正するようにしても良い。
ここで、圧縮行程で噴射されている燃料制御に関する燃料噴射時期、燃料噴射量、燃料噴射回数、燃圧、及び燃料噴射方向のうちの少なくとも何れか一つを補正する場合、タンブル流動中心位置推定手段27、中心位置補正手段28、筒内流動判定手段29に於けるタンブル流動推定中心位置(燃料用)CTF、中心位置補正量CHF、補正後のタンブル流動推定中心位置(燃料用)CTF、タンブル流動中心ずれCdFは、夫々次に示す式(8)から式(11)により演算され、点火時期を補正する場合のパラメータとは別に記憶する。これは、燃料が噴射されるタイミングに於けるタンブル流動中心位置と点火が実行されるタイミングに於けるタンブル流動中心位置が異なることから、点火時期とは異なったタンブル流動推定中心位置によって燃料制御を補正する必要があるからである。
CTF=map(VV)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(8)
CHF=map(TINJb)・・・・・・・・・・・・・・・・式(9)
CTF←CTF×CHF ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(10)
CdF=CTF−CC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(11)
更に、燃料噴射時期、燃料噴射量、燃料噴射回数、燃圧、及び燃料噴射方向のうちの少なくとも何れか一つを補正する場合に於いて、燃料噴射時期TINJ、燃料噴射量MINJ、燃料噴射回数NINJ、燃圧PINJ、及び燃料噴射方向DINJは、筒内流動変化補正手段30に於いて、夫々次に示す式(12)から式(16)により演算される。
TINJ=TINJb+CTF×KINJ ・・・・・・・・・・・式(12)
MINJ=MINJb−CTF×KINJM ・・・・・・・・・・式(13)
NINJ=NINJb−CTF×KINJN ・・・・・・・・・・式(14)
PINJ=PINJb−CTF×KINJP ・・・・・・・・・・式(15)
DINJ=DINJb−CTF×KINJD ・・・・・・・・・・式(16)
ここで、TINJb、MINJb、NINJb、PINJb、DINJbは、夫々、エンジン回転数やブースト圧等のエンジン運転状態から得られる基本値であり、KINJ、KINJM、KINJN、KINJP、KINJDは、夫々のパラメータに対する重み付け係数である。
式(12)から式(16)に於いて、タンブル流動推定中心位置(燃料用)CTFが大きくなる(排気側に位置している)程、燃料噴射時期は遅角側に、燃料噴射量は減少側に、燃料噴射回数は減少側に、燃圧は減少側に、燃料噴射方向は下方向に、夫々補正されることとなる。
以上説明したこの発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於いて、タンブル流動制御時に吸気流速を演算し、吸気流速に応じたタンブル流動中心位置を推定し、タンブル流動推定中心位置に基づいて点火時期を補正するように実行した実施例を図9のタイミングチャートを用いて説明する。図9は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置に於けるタンブル流動が制御されたときのタンブル流動推定中心位置及び推定中心位置に応じた点火時期補正の挙動を示すタイミングチャート図であり、(a)は吸気バルブリフト量、(b)はタンブル流動制御バルブ開度TCV、(c)は吸気流速Vv、(d)はタンブル流動推定中心位置CT、(e)はタンブル流動中心ずれ、(f)は点火時期SA、を夫々示している。尚、図9は、その説明を簡略化するために、一つのシリンダ2、即ち単気筒で動作している場合を示している。
図9に於いて、先ず、最初の時点に於いてはタンブル流動制御が成立していなく、(b)のタンブル流動制御バルブ開度TCVが最大値となっており、(c)の吸気流速VV、(d)のタンブル流動推定中心位置CT、(e)のタンブル流動中心ずれCdは、夫々初期値の「0」となっている。
次に、あるタイミングでタンブル流動制御が成立し、(b)のタンブル流動制御バルブ開度TCVが最大値から開度(1)に小さくなると、(c)の吸気流速VVが吸気バルブ11の開弁中、即ち現在のクランク角が、吸気バルブ開弁タイミングINTT及び吸気バルブリフト量のプロフィールより得られる、吸気バルブ11が開弁するクランク角から閉弁するクランク角の間にある間、に演算される。
次に、(a)の吸気バルブ11のリフト量が最大となるタイミングt1に於いて、(c)の吸気流速VVに応じて(d)のタンブル流動推定中心位置CTが演算される。同時に、最終的に補正される点火時期は吸気バルブが閉弁している間に行われることから、(d)のタンブル流動推定中心位置CTを基本点火時期SAbに応じた値で補正して、補正後のタンブル流動推定中心位置CTが演算される。補正後のタンブル流動推定中心位置CTとキャビティ中心位置CCとの差である(e)のタンブル流動中心ずれCdは、(e)に破線で示す予め設定された判定値CdTよりも小さいため、基本点火時期SAbは補正されずにそのまま(f)の点火時期SAとなる。この点火時期SAに基づいて点火が実行される。
次に、別のあるタイミングで(b)のタンブル流動制御バルブ開度TCVが更に減少して開度(2)となった場合、吸気バルブ11の開弁中に演算される吸気流速VVが開度(1)のときよりも(c)に示すように増加し、タンブル流動が強まったことが表される。吸気バルブ11のリフト量が最大となるタイミングt2に於いて、吸気流速VVに応じてタンブル流動推定中心位置CTが演算され、タンブル流動推定中心位置CTを基本点火時期SAbに応じた値で補正して、(d)に示す補正後のタンブル流動推定中心位置CTが演算される。
補正後のタンブル流動推定中心位置CTから演算されるタンブル流動中心ずれCdは、(e)に示すように予め設定された判定値CdTよりも大きいため、補正後のタンブル流動推定中心位置CTに応じて基本点火時期SAbを補正して点火時期SAが(f)に示すように進角され、点火時期SAに基づいて点火が実行される。
更に、タンブル流動制御バルブ開度TCVが開度(3)に減少された場合、(c)の吸気流速VVが更に増加する。しかし、開度(3)に於いては吸気流速VVが非常に高いため、(a)の吸気バルブリフト量が最大となるタイミングt3で演算されるタンブル流動推定中心位置CTは、前回のタイミングt2以降t3までのタンブル流動制御バルブ開度TCVに於けるタンブル流動推定中心位置CTよりも若干小さい値となり、タンブル流動の中心位置は排気側からキャビティ4へ近づく。しかし、補正後のタンブル流動推定中心位置CTから演算されるタンブル流動中心ずれCdは、(e)に示すようにまだ判定値CdTよりも大きいため、補正後のタンブル流動推定中心位置CTに応じて基本点火時期SAbを補正して点火時期SAが進角されて点火が実行される。
以上述べたように、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置によれば、タンブル流動が制御されている場合に、吸気バルブを通過する吸気流速に基づいて横方向に移動するタンブル流動の中心位置を推定することで、タンブル流動形成状態を検出することができる。加えて、吸気バルブが開弁している所定のタイミングでタンブル流動の中心位置を推定することで、演算処理の負荷を軽減できる。
又、タンブル流動中心位置を推定することで、タンブル流動中心位置に応じて燃料制御及び点火制御に関するパラメータを補正することが可能となり、タンブル流動形成状態が変化してタンブル流動中心位置が変化してもエンジンの燃焼状態を悪化させず、排ガス、燃費、およびドラビリを向上することができる。
又、吸気バルブ閉弁中のピストン移動によるタンブル流動の押し潰しによって、タンブル流動の中心位置が移動するため、点火時期又は燃料噴射時期に応じてタンブル流動中心位置を補正することで、吸気バルブが閉弁しているときのタンブル流動中心位置の推定精度を向上することができる。更に、精度が向上したタンブル流動中心位置に応じて燃料制御及び点火制御に関するパラメータを補正することが可能となり、吸気バルブが閉弁しているときに実行される燃料制御および点火制御に対する補正の精度を向上することができる。
更に、タンブル流動推定中心位置が所定量ずれており、タンブル流動がキャビティに沿わない流動となるときのみに燃料制御及び点火制御に関するパラメータの補正を行うことで、燃料制御および点火制御に対する補正の精度を向上することができる。
実施の形態2.
前述の実施の形態1による内何機関の制御装置に於いては、エンジンが成層燃焼モードで運転されていたが、この発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置では、エンジンが燃焼室5内全体に均質な混合気を形成して点火を行うモードである均質燃焼モードで運転されている。
以下、この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置について、燃料は吸気行程で噴射されている運転状態にあり、均質燃焼モード運転時に於いて、吸気バルブ11が開弁している間にタンブル流動中心位置を推定し、吸気バルブ11が開弁している間に実行される燃料制御に関するパラメータの一つである燃料噴射時期と、吸気バルブ11が閉弁している間に実行される点火制御に関するパラメータの一つである点火時期とを組み合わせて、タンブル流動推定中心位置に応じて夫々補正する場合について説明する。
図10は、この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置を示すブロック図である。図10に示す制御装置を構成するタンブル流動制御手段25、吸気流速演算手段26、タンブル流動中心位置推定手段27、中心位置補正手段28、筒内流動判定手段29、及び筒内流動変化補正手段30は、エンジン制御用電子コントロールユニット(ECU)のメモリに記憶されたソフトウェアにより構成されている。尚、内燃機関の制御装置を含むシステム全体を示す構成図は、前述の実施の形態1に於ける図2と同様である。又、図10に示すタンブル流動制御手段25、吸気流速演算手段26、中心位置補正手段28、筒内流動判定手段29は、夫々、実施の形態1に於ける図1に示すタンブル流動制御手段25、吸気流速演算手段26、中心位置補正手段28、筒内流動判定手段29と同様である。
図10に於いて、タンブル流動中心位置推定手段27は、吸気バルブ11が開弁している間、吸気流速VVに応じて予め設定されて一意に決定するタンブル流動推定中心位置CTの特性を用いてタンブル流動推定中心位置CTを逐次演算する。
筒内流動変化補正手段30は、タンブル流動推定中心位置CTに応じた値をエンジン回転数NEとブースト圧Pbとに基づいて演算される基本点火時期SAbに加算して補正を施す。更に、タンブル流動推定中心位置CTに応じた値をエンジン回転数NEとブースト圧Pbとに基づいて演算される基本燃料噴射時期TINJbから減算して補正を施す。尚、図10に示す構成の動作の詳細については後述する。
以下、この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置の動作について詳細に説明する。図11は、この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置に於けるECUのタンブル流動中心位置推定手段、中心位置補正手段、筒内流動判定手段、筒内流動変化補正手段の動作を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、実施の形態1に於ける図5のフローチャートに替わるものである。尚、実施の形態1に於ける動作と同様の動作については、説明を省略する。
前述の図4のステップS101での判定の結果、タンブル流動制御条件中であり(Y)、且つステップS104に於いて吸気バルブ11が開弁中であると判定されて(Y)、ステップS105にて吸気流速VVが演算されると、図11のタンブル流動中心位置推定ルーチンが開始される。
図11に於いて、先ず、ステップS301に於いて、吸気バルブ11が開弁中である間に逐次、前述の図6の特性マップを用いてタンブル流動推定中心位置CTを、次に示す式(17)により演算する。
CT=map(max(VV,0))・・・・・・・・・・・・・式(17)
ここで、吸気バルブ11が早開けや遅閉じなどに制御されている場合に発生するシリンダ2から吸気マニホールド9へ空気が戻る吹き戻し(吸気流速VVが負の値)の期間は、吸気流速VVが「0」のときのタンブル流動推定中心位置CTとするよう、吸気流速VVと「0」との最大値を取ってタンブル流動推定中心位置CTを演算している。
このステップS301がタンブル流動中心位置推定手段27に相当する。
尚、実施の形態1の場合、点火時期と燃料噴射時期等、点火制御と燃料制御を組み合わせて補正する場合に於いては、点火制御用のタンブル流動推定中心位置と、燃料制御用のタンブル流動推定中心位置とを夫々個別に推定しなければならなかったが、この実施の形態2に於いては、逐次タンブル流動中心位置を推定しており、吸気バルブが開弁している間に実行される燃料噴射に関するパラメータに対してのタンブル流動推定中心位置の補正が必要ないことから、点火制御用及び燃料制御用のタンブル流動推定中心位置を夫々個別に推定にする必要はない。
筒内流動変化補正手段30に於いて、吸気弁11が開弁している間に燃料噴射が実行されるときの燃料噴射時期を補正することから、中心位置補正手段28によるタンブル流動中心位置CTに対する補正は必要なく、そのままのタンブル流動推定中心位置CTを用いて、ステップS302により前述の式(6)によりタンブル流動中心位置CTにキャビティ中心位置CCを減算してタンブル流動中心ずれCdを演算する。
次に、ステップS303に於いて、タンブル流動中心ずれCdが予め設定された判定値CdT以上であるか否かを判定し、判定値CdT以上でないと判定された場合(N)には、そのまま何もせずに、ステップS306へ進む。ステップS303に於いて判定値CdT以上であると判定された場合(Y)には、更にステップS304に於いて吸気バルブ11が開弁してから燃料噴射が未実行か実行後かを判定し、燃料噴射が実行後であると判定された場合(N)、次の吸気バルブ11の開弁時まで燃料噴射時期を補正して更新する必要ないため、そのまま何もせずにステップS306へ進む。
ステップS304に於いて、燃料噴射が未実行であると判定された場合(Y)は、ステップS305に進んで燃料噴射時期の補正を行う。即ち、ステップS305に於いて、タンブル流動中心位置CTに応じて基本燃料噴射時期TINJbを補正して燃料噴射時期TINJを演算する。燃料噴射時期TINJは、次に示す式(18)によりタンブル流動中心位置CTが大きい程(排気側に位置している程)進角するように補正される。
TINJ=TINJb−CT×KINJ・・・・・・・・・・・・式(18)
尚、KINJは燃料噴射時期補正用重み付け係数であり、タンブル流動中心位置CTの変化量に対する燃料噴射時期変化量として0よりも大きい値が予め設定されている。
又、この実施の形態2のように燃料噴射時期と点火時期等、複数の燃料制御及び点火制御に関するパラメータに対してタンブル流動中心位置CTに基づいて補正するときには、点火時期補正用重み付け係数KIGN及び燃料噴射時期補正用重み付け係数KINJを夫々小さな値に設定している。燃料制御及び点火制御は相互の制御状態に影響して混合気の燃焼状態が変化することから、仮に燃料噴射時期のみを補正するときに設定される大きな値の燃料噴射時期補正用重み付け係数KINJを用いると、燃料噴射時期は大きな値で補正されて混合気の燃焼状態を向上させるが、点火時期の補正は過剰な補正を施すこととなり、逆に混合気の燃焼状態を悪化させてしまう可能性がある。従って、燃料噴射時期と点火時期等、複数のパラメータを補正する場合には、夫々の重み付け係数を小さく設定し、夫々に対し小さな補正量を施すことで混合気の燃焼状態を向上することができる。
ここで、この実施の形態2に於ける燃料噴射時期の補正方向について説明する。この実施の形態2の均質燃焼モード実行時に於いては、吸気行程中に燃料を噴射して、燃焼室5内全体に均質な混合気を形成して、点火プラグ16で点火を行うよう、燃料制御及び点火制御を行う必要がある。
タンブル流動の中心位置がキャビティ4の中心位置と同じである場合、吸気行程で噴射される燃料噴霧は、タンブル流動によってキャビティ4の中心近傍から吸気側及び排気側にある程度バランスよく拡散して均質混合気が形成される。
一方、タンブル流動の中心位置がキャビティ4の中心位置よりも排気側にある場合、吸気行程で噴射される燃料噴霧は、タンブル流動によって排気側への拡散は早いものの、吸気側への拡散が遅くなってしまい、燃焼室5に均質な混合気が形成されるまでの期間が長くなる。従って、タンブル流動中心位置が排気側に位置する程、燃料噴射時期を進角方向に補正を行い、早いタイミングで燃料噴射を実行する必要がある。
ステップS306以降は、吸気バルブ11が閉弁している間に実行される制御パラメータの点火時期をタンブル流動推定中心位置CTに応じて補正する動作である。ここで、図11のステップS306、ステップS307からステップS309は、図5のステップS201、ステップS203からステップS205と同様の動作である。
次に、ステップS310に於いて、吸気バルブ開弁時の所定のタイミングであるバルブリフト量最大タイミングでのタンブル流動中心位置CTに対し中心位置補正量CHで更新したタンブル流動中心位置CTを用いて点火時期を補正する。ここで、この実施の形態2に於ける点火時期の補正方向は、前述の均質燃焼モードの燃料噴射時期補正方向の説明で述べた通り、タンブル流動の中心位置がキャビティ4の中心位置よりも排気側にある場合、燃焼室5に均質な混合気が形成されるまでの期間が長くなるため、点火時期を遅角方向に補正をする必要がある。
従って、ステップS310に於いて、次に示す式(19)により基本点火時期SAbを補正して点火時期SAを演算する。
SA=SAb+CT×KIGN・・・・・・・・式(19)
前述のように、燃料噴射時期と点火時期との複数の燃料制御及び点火制御に関するパラメータに対してタンブル流動中心位置CTに応じて補正する時等は、点火時期のみを補正する場合の点火時期補正用重み付け係数KIGNよりも小さな値としている。
尚、ステップS305及びステップS310が筒内流動変化補正手段30に相当する。
ステップS310が終了すれば、図4のタンブル流動制御ルーチンであるメインルーチンに戻る。
尚、この実施の形態2では、タンブル流動推定中心位置CTに基づいて燃料噴射時期と点火時期を組み合わせて補正したが、これに限らず、燃料制御及び点火制御に関するパラメータである点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量、燃料噴射回数、燃圧(噴霧ペネトレーション)、及び燃料噴射方向のうちの少なくとも何れか一つを補正するようにしても良い。
ここで、吸気行程で噴射されているときの燃料噴射量、燃料噴射回数、燃圧、及び燃料噴射方向のうちの少なくとも何れか一つを補正する場合において、燃料噴射量MINJ、燃料噴射回数NINJ、燃圧PINJ、及び燃料噴射方向DINJは、筒内流動変化補正手段30に於いて夫々次に示す式(20)乃至式(23)により演算される。
MINJ=MINJb+CT×KINJM・・・・・・・・・・・式(20)
NINJ=NINJb+CT×KINJN・・・・・・・・・・・式(21)
PINJ=PINJb+CT×KINJP・・・・・・・・・・・式(22)
DINJ=DINJb+CT×KINJD・・・・・・・・・・・式(23)
ここで、MINJb、NINJb、PINJb、DINJbは、夫々エンジン回転数やブースト圧等のエンジン運転状態から得られる燃料噴射量、燃料噴射回数、燃圧、及び燃料噴射方向の基本値であり、KINJM、KINJN、KINJP、KINJDは、夫々のパラメータに対する重み付け係数である。式(20)乃至式(23)に於いて、タンブル流動推定中心位置CTが大きくなる程、つまり排気側に位置している程、燃料噴射量MINJは増加、燃料噴射回数NINJは増加、燃圧PINJは増加、燃料噴射方向DINJは上方向に補正されることとなる。
次に、以上説明したこの発明の実施の形態2による内燃機関の制御装置の均質燃焼モードに於いて、タンブル流動制御時に吸気流速を演算し、吸気流速に基づいてタンブル流動中心位置を推定し、タンブル流動推定中心位置に基づいて燃料噴射時期及び点火時期を補正する実施例を、タイミングチャートを用いて説明する。
図12は、この発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置に於ける均質燃焼モード時にタンブル流動が制御されたときのタンブル流動推定中心位置及び推定中心位置に応じた燃料噴射時期補正及び点火時期補正の挙動を示すタイミングチャート図であり、(a)は吸気バルブリフト量、(b)はタンブル流動制御バルブ開度TCV、(c)は吸気流速Vv、(d)はタンブル流動推定中心位置CT、(e)はタンブル流動中心ずれCd、(f)は噴射時期TINJ、(g)は点火時期SA、を夫々示している。尚、図12は、その説明を簡略化するために、一つのシリンダ2、即ち単気筒で動作している場合を示している。
又、図12は、タンブル流動推定中心位置CT補正後の値は、吸気バルブリフト量が最大となるタイミングでしか演算及び記憶されないが、図12に於いてはその値を確認し易いよう、補正後の値が吸気バルブリフト量最大タイミング以外に於いてもその値を保持すると仮定して、タンブル流動推定中心位置CT補正後の値及びタンブル流動推定中心位置CT補正後の値によるタンブル流動中心ずれCdを図示している。
先ず、燃料噴射時期の補正に関して説明する。図12に於いて、あるタイミングでタンブル流動制御が成立し、(a)のタンブル流動制御バルブ開度TCVが最大値よりも小さい開度(1)になると、(c)の吸気流速VVが演算され、同時に吸気流速VVに応じたタンブル流動推定中心位置CTが吸気バルブ11の開弁中、逐次演算される。しかし、開度(1)に於けるタンブル流動制御バルブ開度TCVでは、(e)のタンブル流動中心ずれCdが予め設定された判定値CdTを越えることがないため、タンブル流動推定中心位置CTで燃料噴射時期TINJbを補正することはなく、燃料噴射時期TINJは変化しない。
次に、(b)に示すタンブル流動制御バルブ開度TCVがさらに減少して開度(2)になった場合、逐次演算される補正前のタンブル流動推定中心位置CTは、(d)に示すように大きな値となるため、(e)のタンブル流動中心ずれCdは判定値CdTを越え、補正前のタンブル流動推定中心位置CTに応じた値で燃料噴射時期TINJbを補正して燃料噴射時期TINJが(f)に示すように進角される。ここで、燃料噴射が実行された後は、次の吸気バルブ開弁時(次回の吸気行程となる)まで燃料噴射は実行されなく、燃料噴射時期TINJの更新が必要ないため、燃料噴射実行時の燃料噴射時期TINJが保持される。
更にタンブル流動制御バルブ開度TCVが減少して開度(3)になると、逐次演算される補正前のタンブル流動推定中心位置CTは、ある吸気流速VVに達すると減少し始めるが、タンブル流動中心ずれCdは判定値CdTを越えているため、補正前のタンブル流動推定中心位置CTに応じた値で燃料噴射時期TINJbを補正して燃料噴射時期TINJが進角される。但し、開度(2)に於ける燃料噴射時期TINJよりも進角されない。燃料噴射実行後、燃料噴射時期TINJが保持される。
次に、点火時期の補正に関して説明する。開度(1)〜(3)に於ける(d)に示すタンブル流動推定中心位置CT及び(e)に示すタンブル流動中心ずれCdの挙動は、実施の形態1と同様であるため省略する。
開度(2)及び(3)に於いて、タンブル流動中心ずれCdが判定値CdTを越えると、補正後のタンブル流動推定中心位置CTに応じて(g)に示すように基本点火時期SAbを補正して点火時期SAが遅角されて点火が実行される。
以上述べたこの発明の実施の形態2に係る内燃機関の制御装置によれば、タンブル流動が制御されている場合に、吸気バルブを通過する吸気流速に応じてタンブル流動の中心位置を、吸気バルブが開弁している間逐次推定することで、均質燃焼モード時など吸気バルブが開弁している間に実行される燃料制御に関するパラメータに於いても、タンブル流動中心位置に応じて補正することが可能となり、タンブル流動中心位置が変化してもエンジンの燃焼状態を悪化させず、排ガス、燃費、及びドラビリを向上することができる。