JP4982934B2 - 生分解性樹脂複合材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性樹脂複合材料及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、ポリ乳酸と層状粘土鉱物とを含有する生分解性樹脂複合材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリ乳酸は、微生物や酵素の働きにより分解する性質、いわゆる生分解性を示すことが知られている。そして、ポリ乳酸の生分解速度、あるいは剛性や結晶化速度といった性能の向上を目的として、有機化剤で有機化された層状粘土鉱物をポリ乳酸に添加した生分解性樹脂複合材料が提案されている。
【0003】
例えば特開2000−256087号公報には、ポリ乳酸等の乳酸系ポリエステルと膨潤性無機フィラーとを含む皮膜材料を用いて肥料の溶出速度を制御した徐放性肥料が開示されており、膨潤性無機フィラーとして、12−アミノドデカン酸アンモニウム塩等で膨潤化された層状ケイ酸塩が例示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の生分解性樹脂複合材料であっても、ポリ乳酸中に層状粘土鉱物の分散均一性は必ずしも十分とは言えず、層状粘土鉱物の添加による剛性や結晶化速度の向上効果は十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポリ乳酸中に層状粘土鉱物が十分に均一に分散しており、優れた剛性と十分に高い結晶化速度とを有する生分解性樹脂複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水酸基を有する有機オニウム塩で有機化された層状粘土鉱物をポリ乳酸に添加し、ポリ乳酸と層状粘土鉱物とを有機オニウム塩の水酸基を介して結合させることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の生分解性樹脂複合材料は、ポリ乳酸と、水酸基を有する有機オニウム塩で有機化され、該有機オニウム塩の水酸基を介して前記ポリ乳酸と結合した層状粘土鉱物とを含有し、前記層状粘土鉱物が、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化されており、前記水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の樹脂複合材料では、水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化し、該有機オニウム塩の水酸基を介してポリ乳酸と層状粘土鉱物とを結合させることによって、有機オニウム塩により広げられた層状粘土鉱物の層間にポリ乳酸が安定的に保持されるので、層状粘土鉱物をポリ乳酸中に十分に均一に分散させることができる。その結果、優れた剛性と十分に高い結晶化速度とを達成することが可能となる。また、本発明においては、前記層状粘土鉱物が、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化されている。水酸基を有する有機オニウム塩と、水酸基を有さない有機オニウム塩とを併用することによって、層状粘土鉱物の分散均一性を高水準に維持しつつその添加量を増加することができ、このように有機オニウム塩を併用する手法は本発明の第2の製造方法において特に効果的である。また、上記本発明の第2の製造方法のように有機オニウム塩の水酸基を反応点として重合性単量体を重合させる場合には、これら2つの有機オニウム塩の含有比率を適宜選択することによって、生成するポリ乳酸の分子量を調整することができるので、ポリ乳酸の分子量を低下させずに層状粘土鉱物の添加量を増加することができる。このような層状粘土鉱物を含有する生分解性樹脂複合材料は、本発明の第1又は第2の製造方法にかかる有機化工程において、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化することによって得ることができる。
【0009】
また、本発明の生分解性樹脂複合材料の第1の製造方法は、水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物とポリ乳酸とを溶融混練し、前記有機オニウム塩の水酸基と前記ポリ乳酸の末端カルボキシル基とを反応させる溶融混練工程とを含み、前記有機化工程において、前記層状粘土鉱物を、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化し、前記水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の生分解性樹脂複合材料の第2の製造方法は、水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物と、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド及びmeso−ラクチドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体とを混合し、前記有機オニウム塩の水酸基を反応点として前記重合性単量体を重合させてポリ乳酸を生成させる重合工程とを含み、前記有機化工程において、前記層状粘土鉱物を、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化し、前記水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第1及び第2の製造方法はいずれもポリ乳酸と層状粘土鉱物との間に有機オニウム塩の水酸基を介した結合を形成させるもので、これにより、層状粘土鉱物がポリ乳酸中に十分に均一に分散されており、優れた剛性と十分に高い結晶化速度とを有する本発明の生分解性樹脂を効率よく且つ確実に得ることができる。
【0012】
本発明においては、前記水酸基を有する有機オニウム塩の炭素数が6以上であることが好ましい。水酸基を有する炭素数6以上の有機オニウム塩を用いると、当該有機オニウム塩により層状粘土鉱物の層間距離がより広められるので、ポリ乳酸中における層状粘土鉱物の分散均一性が高められ、生分解性樹脂複合材料の剛性及び結晶化速度が向上する傾向にある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の生分解性樹脂複合材料は、ポリ乳酸と、水酸基を有する有機オニウム塩で有機化され、該有機オニウム塩の水酸基を介して前記ポリ乳酸と結合した層状粘土鉱物とを含有するものである。なお、本発明においては、生分解性樹脂複合材料に含まれる全てのポリ乳酸が有機オニウム塩の水酸基を介して層状粘土鉱物と結合している必要はなく、それらの一部が結合したものであればよい。
【0016】
本発明にかかるポリ乳酸は、下記一般式(1):
【0017】
【化1】
Figure 0004982934
(式中、nは整数を表す)
で表される繰り返し単位を有するポリマーである。当該ポリ乳酸の平均分子量は特に制限されないが、5,000〜1,000,000であることが好ましい。ポリ乳酸の平均分子量が前記下限値未満であると、強度、弾性率等の機械物性が不十分となる傾向にあり、また、前記上限値を超えると、成形の際に流動性が著しく低下する傾向にある。
【0018】
また、ポリ乳酸の重合方法は特に制限されず、L−乳酸、D−乳酸の直接重合でもよく、乳酸の環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチドの開環重合であってもよい。更に、これらの重合性単量体を用いて得られるポリ乳酸には光学異性体が存在するが、D−体、L−体、DL−体のいずれであってもよく、またこれらのうちの2種以上の混合物でもよい。
【0019】
なお、後述するように、ポリ乳酸の一端には、層状粘土鉱物との間に有機オニウム塩の水酸基を介した結合が形成されるが、他端には、グリコリド、カプロラクトン等の他の重合性単量体を更に重合させて共重合体としてもよい。これらの他の重合性単量体による重合鎖は、共重合体全体を基準として20mol%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる層状粘土鉱物としては特に制限されないが、具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト族;カオリナイト、ハロサイト等のカオリナイト族;ジオクタヘドラルバーミキュライト、トリオクタヘドラルバーミキュライト等のバーミキュライト族;テニオライト、テトラシリシックマイカ、マスコバイト、イライト、セリサイト、フロゴバイト、バイオタイト等のマイカ等が挙げられる。これらの層状粘土鉱物は、天然鉱物であってもよく、水熱合成、溶融法、固相法等による合成鉱物であってもよい。また、本発明では、上記の層状粘土鉱物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、層状粘土鉱物の陽イオン交換容量は30〜300meq/100gであることが好ましい。
【0021】
本発明にかかる水酸基を有する有機オニウム塩とは、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機ピリジニウム塩、有機スルホニウム塩等のオニウム塩において有機基に水酸基が結合した化合物をいい、層状粘土鉱物を有機化してその層間距離を広げると共に、水酸基を介してポリ乳酸と層状粘土鉱物とを結合せしめるものである。なお、本発明において有機化とは、有機物を層状粘土鉱物の層間及び/又は表面に物理的、化学的方法(好ましくは化学的方法)により吸着及び/又は結合させることを意味する。
【0022】
本発明にかかる水酸基を有する有機オニウム塩としては、水酸基を有するものであれば特に制限されないが、その炭素数は6以上であることが好ましい。当該有機オニウム塩の炭素数が6未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、層状粘土鉱物をポリ乳酸中に均一に分散することが困難となる傾向にある。
【0023】
水酸基を有する有機オニウム塩の含有量は、層状粘土鉱物100重量部に対して10〜150重量部であることが好ましく、20〜100重量部であることがより好ましい。当該有機オニウム塩の含有量が前記下限値未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広げられず、層状粘土鉱物をポリ乳酸中に均一に分散させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限値を超える場合には物理吸着によって導入される有機オニウム塩の量が増加して樹脂複合材料の物性が損なわれる(例えば可塑化)傾向にある。
【0024】
本発明で好ましく用いられる水酸基を有する有機オニウム塩として、下記一般式(2)又は(3)で表される有機アンモニウム塩が例示される。これらの有機アンモニウム塩は、1種を単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。
【0025】
【化2】
Figure 0004982934
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、lは6〜20の整数を表す。]
【0026】
【化3】
Figure 0004982934
[式中、R4及びR5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R4とR5との合計の炭素数は6以上であり、m及びnは同一でも異なっていてもよく、1〜20の整数を表す。]
【0027】
上記一般式(2)中、R1、R2又はR3は水素原子又はアルキル基を表す。かかるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、直鎖又は分岐鎖状のペンチル基、直鎖又は分岐鎖状のヘキシル基、直鎖又は分岐鎖状のヘプチル基、直鎖又は分岐鎖状のオクチル基、直鎖又は分岐鎖状のノニル基、直鎖又は分岐鎖状のデシル基、直鎖又は分岐鎖状のウンデシル基、直鎖又は分岐鎖状のドデシル基、直鎖又は分岐鎖状のトリデシル基、直鎖又は分岐鎖状のテトラデシル基、直鎖又は分岐鎖状のペンタデシル基、直鎖又は分岐鎖状のオクタデシル基等が挙げられるが、当該アルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。アルキル基の炭素数が前記上限値を超えると有機オニウム塩の合成が困難となる傾向にある。
【0028】
また、上記一般式(2)中、lはメチレン基(−CH2−)の重合度を表し、6〜20、好ましくは8〜18の整数である。lが6未満の場合、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広がらず、層状粘土鉱物がポリ乳酸中に均一に分散されにくくなる傾向にある。他方、lが20を越えると、有機オニウム塩の合成が困難となる傾向にある。
【0029】
また、上記一般式(3)中、R4及びR5は水素原子又はアルキル基を表す。かかるアルキル基としては、一般式(2)中のR1、R2及びR3の説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
【0030】
一般式(3)中のR4及びR5は同一でも異なっていてもよいが、それらの合計の炭素数は、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。R4とR5との合計の炭素数が6未満であると、層状粘土鉱物の層間距離が十分に広がらず、層状粘土鉱物がポリ乳酸中に均一に分散されにくくなる傾向にある。例えばR4が水素原子でR5がドデシル基である化合物、R4がメチル基でR5がオクタデシル基である化合物、R4及びR5がオクタデシル基である化合物は、上記の条件を満たす化合物として好ましく用いられる。
【0031】
また、上記一般式(3)中、m及びnはオキシエチレン基(−CH2CH2O−)の重合度を表し、1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の整数であり、特に好ましくは1である。m又はnが20を越えると、層状粘土鉱物の親水性が過剰に高くなり、調整が困難となる傾向にある。なお、m及びnは同一でも異なっていてもよい。
【0032】
本発明においては、水酸基を有する有機オニウム塩に加えて、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化された層状粘土鉱物を用いることが好ましい。このように水酸基を有する有機オニウム塩と、水酸基を有さない有機オニウム塩とを併用することによって、層状粘土鉱物の分散均一性を高水準に維持しつつその添加量を増加することができ、このように有機オニウム塩を併用する手法は本発明の第2の製造方法において特に効果的である。また、本発明の第2の製造方法のように、有機オニウム塩の水酸基を反応点として重合性単量体を重合させる場合には、これら2つの有機オニウム塩の含有比率を適宜選択することによって、生成するポリ乳酸の分子量を調整することができるので、ポリ乳酸の分子量を低下させずに層状粘土鉱物の添加量を増加することができる。
【0033】
本発明において好ましく用いられる水酸基を有さない有機オニウム塩としては、下記一般式(4)で表される有機アンモニウム塩を例示することができる。
【0034】
【化4】
Figure 0004982934
[式中、R6、R7、R8及びR9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R6、R7、R8及びR9の合計の炭素数は6以上である。]
【0035】
上記一般式(4)中、R6、R7、R8及びR9はそれぞれ水素原子又はアルキル基を表す。かかるアルキル基としては、一般式(2)中のR1、R2及びR3の説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
【0036】
上記一般式(4)中、R6、R7、R8及びR9の合計の炭素数は6以上であり、好ましくは8以上である。R6、R7、R8及びR9の合計の炭素数が6未満であると、その有機オニウム塩での有機化により層状粘土鉱物の層間距離を更に広げることが困難となり、層状粘土鉱物のポリ乳酸への分散効果が得られにくくなる。
【0037】
また、本発明では、上記一般式(4)中のN(窒素原子)がP(リン原子)で置換された有機ホスホニウム塩を用いることもできる。
【0038】
水酸基を有する有機オニウム塩と水酸基を有さない有機オニウム塩とを併用する場合、水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合は、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、15mol%以上であることが更に好ましい。水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が5mol%未満であると、ポリ乳酸又はその重合性単量体(乳酸、ラクチド)との親和性が不十分となり、これらが層状化合物の層間に安定的に保持されにくくなる傾向にある。
【0039】
本発明の生分解性樹脂複合材料において、ポリ乳酸と有機化された層状粘土鉱物との含有比率は、前者100重量部に対して後者が好ましくは0.5〜30重量部であり、より好ましくは1〜20重量部である。層状粘土鉱物の含有量が前記下限値未満であると、剛性及び結晶化速度の向上の程度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超える場合には、ポリ乳酸が連続層を形成できなくなる傾向にあり、生分解性樹脂複合材料の剛性が低下する恐れがある。
【0040】
また、本発明の生分解性樹脂複合材料に含まれる層状化合物の層間距離は、各層の重心間の平均距離を基準として5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。層状化合物の層間距離が5nm未満であると、ポリ乳酸の分散性が不十分となる傾向にある。
【0041】
次に、本発明の生分解性樹脂複合材料の第1及び第2の製造方法について説明する。
【0042】
本発明の第1の製造方法は、水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、有機化工程で得られる層状粘土鉱物とポリ乳酸とを溶融混練し、有機オニウム塩の水酸基とポリ乳酸の末端カルボキシル基とを反応させる溶融混練工程とを含むものである。
【0043】
有機化工程は、例えば本出願人により特許第2627194号公報に開示されている方法により行うことができる。すなわち、層状粘土鉱物中の無機イオンを、水酸基を有する有機オニウム塩から生じる有機オニウムイオン(例えば有機アンモニウム塩においては有機アンモニウムイオン)によりイオン交換することによって、層状粘土鉱物の有機化を行うことができる。
【0044】
より具体的には、例えば水酸基を有する有機アンモニウム塩を用いる場合には、次のような方法により有機化を行うことができる。すなわち、塊状の層状粘土鉱物を用いる場合は、先ずこれをボールミル等により粉砕し粉体化する。次いで、ミキサー等を用いてこの粉体を水中に分散させ層状粘土鉱物の水分散物を得る。これとは別に、水酸基を有する有機アミン及び塩酸等の酸を水に加えて、水酸基を有する有機アンモニウム塩の水溶液を調整する。この水溶液を上記層状粘土鉱物の水分散物に加え混同することにより、層状粘土鉱物中の無機イオンが有機アンモニウム塩から生じた水酸基を有する有機アンモニウムイオンによりイオン交換される。この混合物から水を除去することにより有機化された層状粘土鉱物を得ることができる。
【0045】
有機アンモニウム塩や層状粘土鉱物の分散媒体としては、水以外にもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール及びこれらの混合物、並びにこれらと水との混合物を使用することができる。
【0046】
かかる有機化工程においては、水酸基を有さない有機オニウム塩(例えば上記一般式(4)で表される有機アンモニウム塩)で層状粘土鉱物を更に有機化してもよいが、第1の製造方法では、これらの2種の有機オニウム塩による共有機化を行わなくとも、層状粘土鉱物の分散均一性を高水準に維持しつつその添加量を増加することができる。なお、水酸基を有さない有機オニウム塩での有機化は、水酸基を有する有機オニウム塩での有機化と同時に行ってもよく、水酸基を有する有機オニウム塩での有機化の後に行ってもよい。
【0047】
次に、溶融混練工程において、有機化工程で得られる層状粘土鉱物とポリ乳酸とを溶融混練し、有機オニウム塩の水酸基とポリ乳酸の末端カルボキシル基とを反応させることによって、本発明の生分解性樹脂組成物が得られる。
【0048】
混練工程における温度は、有機オニウム塩の水酸基とポリ乳酸の末端カルボキシル基とが反応可能であれば特に制限されないが、好ましくは150〜250℃である。当該温度が前記下限値未満であると、ポリ乳酸の溶融が不十分となり、層状粘土鉱物をポリ乳酸中に均一に分散させにくくなる傾向にある。また、当該温度が前記上限値を超えると、ポリ乳酸の分子量が低下して樹脂複合材料の物性が損なわれる(例えば可塑化)傾向にある。
【0049】
また、混練工程の際には、本出願人により国際公開WO99/50340号公報に開示されている方法に準じて行うことが好ましい。すなわち、高樹脂換算圧力、高総せん断量、高せん断エネルギーを加えることが可能なスクリューを備える二軸混練機を用い、樹脂換算圧力の平均値が5×104Pa以上、最大値が1×105Pa、総せん断量が105〜107、総せん断エネルギーが1010〜1014Paの条件下で有機化された層状粘土鉱物とポリ乳酸とを溶融混練することによって、層状粘土鉱物をポリ乳酸中に均一に微分散することができる。
【0050】
本発明の第2の製造方法は、水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド及びmeso−ラクチドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体とを混合し、前記有機オニウム塩の水酸基を反応点として前記重合性単量体を重合させてポリ乳酸を生成させる重合工程とを含むものである。
【0051】
第2の製造方法にかかる有機化工程は、上記した第1の製造方法にかかかる有機化工程と同様にして行うことができる。また、第2の製造方法にかかる有機化工程においても、水酸基を有さない有機オニウム塩(例えば上記一般式(4)で表される有機アンモニウム塩)で層状粘土鉱物を更に有機化することが好ましい。これにより、後述する重合工程において、層状粘土鉱物の分散均一性を高水準に維持しつつその添加量を増加することができる。更に、これら2つの有機オニウム塩の含有比率を適宜選択することによって、層状粘土鉱物の層間及び/又は表面における水酸基の存在割合を制御し、生成するポリ乳酸の分子量を調整することができるので、ポリ乳酸の分子量を低下させずに層状粘土鉱物の添加量を増加することができる。なお、水酸基を有さない有機オニウム塩での有機化は、水酸基を有する有機オニウム塩での有機化と同時に行ってもよく、水酸基を有する有機オニウム塩での有機化の後に行ってもよい。
【0052】
次に、重合工程において、有機化工程で得られる層状粘土鉱物と、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド及びD−ラクチドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体とを混合し、前記有機オニウム塩の水酸基を反応点として前記重合性単量体を重合させることによって、ポリ乳酸が生成する。ここで、L−乳酸及び/又はD−乳酸を用いる場合にはこれらの直接重縮合によりポリ乳酸が生成し、他方、L−ラクチド及び/又はD−ラクチドを用いる場合にはこれらの開環重合によりポリ乳酸が生成する。これらの重合は、所定の触媒を用いて行ってもよく、無触媒下で行ってもよい。触媒としては、具体的には、オクチル酸スズ、塩化スズ、塩化亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられ、その使用量は重合性単量体100重量部に対して0.001〜1重量部であることが好ましい。また、重合工程における反応温度は100〜200℃であることが好ましい。
【0053】
このように、本発明の第1及び第2の製造方法はいずれもポリ乳酸と層状粘土鉱物との間に有機オニウム塩の水酸基を介した結合を形成させるもので、これにより、層状粘土鉱物がポリ乳酸中に十分に均一に分散され、優れた剛性と十分に高い結晶加速度とを有する本発明の生分解性樹脂を効率よく且つ確実に得ることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
参考例1
(層状粘土鉱物の有機化)
ナトリウム型モンモリロナイト(クニミネ鉱業製クニピアF、陽イオン交換容量:115meq/100g)100gを80℃の水5000mlに分散させ、一方、ジヒドロキシエチルメチルステアリルアンモニウムブロミド59.2gを80℃の水2000mlに溶解させた後、両者を混合してモンモリロナイトの有機化を行った。得られた有機化モンモリロナイト(以下、18(OH)2−Montという)を80℃の水で3回洗浄し、凍結乾燥した後、これを粉砕した。灼残法により求めた18(OH)2−Montの無機分の残量は63%であった。
【0056】
(層状粘土鉱物とポリ乳酸との混練)
スクリューを備える二軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、ポリ乳酸樹脂(島津製作所製ラクティ#9030)に18(OH)2−Montを無機分換算値で3重量%添加した混合物を、スクリュー回転数300rpm、樹脂温度200℃、樹脂供給速度5kg/hで溶融混練し、目的の樹脂複合材料を得た。得られた樹脂複合材料をストランド状に押し出した後、水で急冷し、ストランドカッターでペレットとした。
【0057】
(分散状態の評価)
上記のペレットをミクロトームで切り出して超薄切片を作製した。これを透過型電子顕微鏡(日本電子製JOEL−200CX)で観察し、層状粘土鉱物の分散状態を以下の基準:
○:層状粘土鉱物がほぼ単層ごとに微分散している
△:2〜3層が凝集した状態の層状粘土鉱物が50%以上認められる
×:ほとんどの層状粘土鉱物が数十層以上凝集した状態で分散している
に基づいて評価した。得られた結果を表1に示す。
【0058】
(剛性の評価)
射出成形機(日精樹脂工業製PS40E2ASE)及びFS75型を用いて上記の樹脂複合材料の射出成形を行い、ダンベル型引張試験片を得た。この試験片を用い、ASTM D638Mに準じて引張り試験を行い、引張強さ、破断伸び、弾性率を評価した。また、ASTM D256に準じてIzod衝撃試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0059】
(結晶化時間の測定)
上記のペレットを用い、DSC測定装置(パーキンエルマー社製DSC−7)により結晶化時間を測定した。すなわち、試料0.3mgをアルミパンに入れ、200℃で5分間保持してから110℃まで急激に降温して保持し、降温してから結晶化の吸熱ピークが現れるまでの時間を結晶化時間とした。得られた結果を表1に示す。
【0060】
参考例2
ジヒドロキシエチルメチルステアリルアンモニウム塩の代わりに、ジヒドロキシエチルメチルアルキルアンモニウム塩(花王製アミート102、アルキル:ヤシ油由来のアルキル基、組成:オクチル/デシル/ドデシル/テトラデシル/オクタデシル/オレイル=7/7/51/19/8/2/6)を用いてモンモリロナイトの有機化を行い、得られた有機化モンモリロナイト(A102−Mont)を使用したこと以外は参考例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0061】
参考例3
先ず、参考例1と同様にして18(OH)2−Montを合成した。次に、L−ラクチド100g、18(OH)2−Mont3.5g、オクチル酸スズ200mgを反応容器に入れ、10-2mmHgまで減圧した。続いて十分撹拌しながら徐々に温度を上昇させ、160℃で3時間保持した。反応生成物をクロロホルムに溶解し、メタノール中に滴下して樹脂複合材料を単離精製した。
【0062】
得られた樹脂複合材料について、参考例1と同様にして、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0063】
参考例4
18(OH)2−Montの代わりに、(CH3CH23+(CH211OHBr-で有機化したモンモリロナイト(11OH−Mont)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0064】
実施例1
18(OH)2−Montの代わりに、ジヒドロキシエチルステアリルアンモニウム塩とトリメチルステアリルアンモニウム塩との混合物(モル比7:3)で有機化したモンモリロナイト(OH/C18−Mont)を用いたこと以外は参考例3と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0065】
比較例1
ポリ乳酸を単独で用い、参考例1と同様にして、剛性の評価及び結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0066】
比較例2
18(OH)2−Montの代わりに、12−アミノドデカン酸で有機化したモンモリロナイト(12COOH−Mont)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0067】
比較例3
18(OH)2−Montの代わりに、ステアリルトリメチルアンモニウムで有機化したモンモリロナイト(C18Me3−Mont)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0068】
比較例4
18(OH)2−Montの代わりに12COOH−Montを用いたこと以外は参考例3と同様にして、樹脂複合材料を作製し、分散状態及び剛性の評価並びに結晶化時間の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004982934
【0070】
【表2】
Figure 0004982934
【0071】
表1に示すように、参考例1〜4及び実施例1の樹脂複合材料では、いずれも層状粘土鉱物がポリ乳酸中に微細に分散しており、ポリ乳酸単独(比較例1)の場合に比べて剛性及び結晶化速度の向上が認められた。
【0072】
一方、表2に示すように、比較例2〜4の樹脂複合材料では、層状粘土鉱物が凝集したままポリ乳酸中に分散しており、単に硬く脆い材料であることがわかった。
【0073】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の樹脂複合材料では、水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化し、該有機オニウム塩の水酸基を介してポリ乳酸と層状粘土鉱物とを結合させることによって、有機オニウム塩により広げられた層状粘土鉱物の層間にポリ乳酸が安定的に保持されるので、層状粘土鉱物をポリ乳酸中に十分に均一に分散させることができる。その結果、優れた剛性と十分に高い結晶化速度とを達成することが可能となる。
【0074】
また、本発明の樹脂複合材料の製造方法によれば、このように優れた特性を有する本発明の樹脂複合材料を効率よく且つ確実に得ることができる。

Claims (5)

  1. ポリ乳酸と、
    水酸基を有する有機オニウム塩で有機化され、該有機オニウム塩の水酸基を介して前記ポリ乳酸と結合した層状粘土鉱物と
    を含有し、
    前記層状粘土鉱物が、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化されており、
    前記水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることを特徴とする生分解性樹脂複合材料。
  2. 前記水酸基を有する有機オニウム塩の炭素数が6以上であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性樹脂複合材料。
  3. 水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、
    前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物とポリ乳酸とを溶融混練し、前記有機オニウム塩の水酸基と前記ポリ乳酸の末端カルボキシル基とを反応させる溶融混練工程と
    を含み、
    前記有機化工程において、前記層状粘土鉱物を、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化し、
    前記水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることを特徴とする生分解性樹脂複合材料の製造方法。
  4. 水酸基を有する有機オニウム塩で層状粘土鉱物を有機化する有機化工程と、
    前記有機化工程で得られる層状粘土鉱物と、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド及びmeso−ラクチドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体とを混合し、前記有機オニウム塩の水酸基を反応点として前記重合性単量体を重合させてポリ乳酸を生成させる重合工程と
    を含み、
    前記有機化工程において、前記層状粘土鉱物を、水酸基を有さない有機オニウム塩で更に有機化し、
    前記水酸基を有する有機オニウム塩の配合割合が、有機オニウム塩全量を基準として5mol%以上であることを特徴とする生分解性樹脂複合材料の製造方法。
  5. 前記水酸基を有する有機オニウム塩の炭素数が6以上であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の生分解性樹脂複合材料の製造方法。
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