以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
本発明のレーザー加工用組成物の一実施形態は、(A1)熱可塑性エラストマー100質量部と、(A2)1,2−ビニル含量が60%以上である液状ブタジエンゴム5〜80質量部と、(B)シリカ粒子0.1〜50質量部と、を含み、(A1)熱可塑性エラストマーが、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、水添ジエン系共重合体、及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも一種のものである。以下、その詳細について説明する。
(A1)熱可塑性エラストマー
本実施形態のレーザー加工用組成物には、(A1)熱可塑性エラストマーが含有される。この熱可塑性エラストマーとしては、具体的には(A1−1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、(A1−2)水添ジエン系共重合体、及び(A1−3)スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
(A1−1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン
本実施形態のレーザー加工用組成物に含まれる(A1)熱可塑性エラストマーとして、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンが好適に用いられる。用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンとしては、例えばその結晶化度が5%以上であるものが好ましく、10〜40%であるものが更に好ましい。また、その融点が50〜150℃であるものが好ましく、60〜140℃であるものが更に好ましい。結晶化度及び融点がこれらの範囲内であることにより、引張強度や引裂強度等の力学強度と柔軟性とのバランスに優れたレーザー加工用組成物とすることができる。
シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンのブタジエン結合単位における1,2−結合含有量は、70%以上であることが、良好な熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されるために好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、例えば、コバルト化合物及びアルミノオキサンを含有する触媒の存在下にブタジエンを重合して得ることができるが、このような製造方法には限定されない。
シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、ブタジエン以外の共役ジエンが少量共重合したものであってもよい。ブタジエン以外の共役ジエンとしては、1,3−ペンタンジエン、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体、2−アルキル置換−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体としては、1−ペンチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシル−1,3−ブタジエン、1−ヘプチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。
2−アルキル置換−1,3−ブタジエンとしては、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらの共役ジエンのうち、ブタジエンと共重合される好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタンジエンを挙げることができる。重合に供される単量体成分中のブタジエンの含有量は、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。
シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、上述したように、例えば、コバルト化合物及びアルミノオキサンを含有する触媒の存在下にブタジエンを重合して得ることができる。コバルト化合物としては、好ましくは炭素数4以上のコバルトの有機酸塩を挙げることができる。このコバルトの有機酸塩の具体例としては、酪酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプチル酸塩、2−エチル−ヘキシル酸塩等のオクチル酸塩;デカン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、エルカ酸塩等の高級脂肪酸塩、安息香酸塩、トリル酸塩、キシリル酸塩、エチル安息香酸塩等のアルキル、アラルキル、アリル置換安息香酸塩やナフトエ酸塩;アルキル、アラルキル、又はアリル置換ナフトエ酸塩を挙げることができる。これらのうち、2−エチルヘキシル酸等のいわゆるオクチル酸塩や、ステアリン酸塩、安息香酸塩が、炭化水素溶媒に対する優れた溶解性を有するものであるために好ましい。
前述のアルミノオキサンとしては、例えば下記一般式(1)又は(2)で表されるものを挙げることができる。
上記一般式(1)及び(2)中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭化水素基であり、なかでもメチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。また、mは2以上の整数であり、5以上の整数であることが好ましく、10〜100の整数であることが更に好ましい。アルミノオキサンの具体例としては、メチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、プロピルアルミノオキサン、ブチルアルミノオキサン等を挙げることができ、メチルアルミノオキサンが特に好ましい。
重合触媒には、コバルト化合物とアルミノオキサン以外に、ホスフィン化合物を含有させることが特に好ましい。ホスフィン化合物は、重合触媒の活性化、ビニル結合構造、及び結晶性の制御に有効な成分であり、好適例として下記一般式(3)で表される有機リン化合物を挙げることができる。
P(Ar)n(R’)3-n (3)
但し、上記一般式(3)中、Arは下記一般式(4)で表される基であり、R’はシクロアルキル基、又はアルキル置換シクロアルキル基であり、nは0〜3の整数である。
(上記一般式(4)中、R1、R2、及びR3は同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルコキシ基、又は炭素数が好ましくは6〜12のアリール基である)
上記一般式(3)で表されるホスフィン化合物としては、具体的にはトリ(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−エチルフェニル)ホスフィン、トリ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(3,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリ(3−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−エチルフェニル)ホスフィン等を挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものとしては、トリフェニルホスフィン、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン等を挙げることができる。
また、コバルト化合物としては、下記一般式(5)で表される化合物を用いることができる。
上記一般式(5)で表されるコバルト化合物は、塩化コバルトに対し、配位子として、前記一般式(3)においてn=3であるホスフィン化合物が配位した錯体である。このコバルト化合物は、予め合成したものを使用してもよいし、重合系中で塩化コバルトとホスフィン化合物を接触させる方法で使用してもよい。錯体中のホスフィン化合物を種々選択することにより、得られるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの1,2−結合の量、及び結晶化度の制御を行うことができる。
前記一般式(5)で表されるコバルト化合物の具体例としては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−エチルフェニルホスフィン)〕、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−イソプロピルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−t−ブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチル−5−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−フェニルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4,5−トリメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ドデシルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド等を挙げることができる。
これらのうち、特に好ましいものとしては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド等を挙げることができる。
重合触媒としてのコバルト化合物の使用量は、ブタジエンの単独重合の場合はブタジエン1モル当たり、共重合の場合はブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンの合計量1モル当たり、コバルト原子換算で0.001〜1ミリモルが好ましく、0.01〜0.5ミリモルが更に好ましい。一方、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、0.1〜50とすることが好ましく、0.5〜20とすることが更に好ましく、1〜20とすることが特に好ましい。また、アルミノオキサンの使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するアルミニウム原子の比(Al/Co)として、4〜107とすることが好ましく、10〜106とすることが更に好ましい。なお、前記一般式(5)で表される錯体を用いる場合は、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、2とすることが好ましく、また、アルミノオキサンの使用量は上述の場合と同様である。
重合溶媒として用いられる不活性有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタン等の脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
重合温度は、−50〜120℃が好ましく、−20〜100℃が更に好ましい。また、重合反応は、回分式でも連続式でもよい。なお、溶媒中の単量体濃度は、5〜50質量%とすることが好ましく、10〜35質量%とすることが更に好ましい。また、重合体を製造するに際し、用いる触媒や重合体を失活させないようにするために、酸素、水、又は炭酸ガス等の失活作用を有するガスの重合系内への混入を極力避けることが好ましい。重合反応が所望とする段階まで進行したら、反応混合物をアルコール、その他の重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加し、次いで、通常の方法に従って生成した重合体を分離、洗浄、及び乾燥すれば、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの重量平均分子量は、1万〜500万であることが好ましく、1万〜150万であることが更に好ましく、5万〜100万であることが特に好ましい。重量平均分子量が1万未満であると、流動性が高くなり過ぎるために加工が困難になるとともに、成形品(レーザー加工用シート)がべたつく傾向にある。一方、重量平均分子量が500万超であると、流動性が低くなり過ぎるために加工が困難になる傾向にある。
(A1−2)水添ジエン系共重合体
本実施形態のレーザー加工用組成物に含まれる(A1)熱可塑性エラストマーとして、水添ジエン系共重合体が好適に用いられる。水添ジエン系共重合体としては、例えば、共役ジエン単量体の単独重合体、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とのランダム共重合体、ビニル芳香族単量体の重合体ブロックと共役ジエン単量体の重合体ブロックとからなるブロック共重合体、ビニル芳香族単量体の重合体ブロックと共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体のランダム共重合体ブロックとからなるブロック共重合体、共役ジエン単量体の重合体ブロックと共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体の共重合体ブロックとからなるブロック共重合体、共役ジエン単量体の重合体ブロックとビニル芳香族単量体及び共役ジエン単量体からなりビニル芳香族単量体が漸増するテーパー状ブロックとからなるブロック共重合体、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体のランダム共重合体ブロックとビニル芳香族単量体及び共役ジエン単量体からなりビニル芳香族単量体が漸増するテーパー状ブロックとからなるブロック共重合体、ビニル結合が30質量%以下のポリブタジエンブロックとビニル結合が30質量%を超える共役ジエン単量体の重合体ブロックとからなるブロック共重合体、等のジエン系重合体(以下、「水添前重合体」ともいう)の水素添加物等を挙げることができる。
上記の水添ジエン系共重合体のなかでも、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロックAと共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックBとを含有する共役ジエン系重合体の水素添加物が好ましく、特に、以下に例示するブロック構造を有するジエン系共重合体の水素添加物が好ましい。
重合体ブロックAは、ビニル芳香族単量体の単独重合体又はビニル芳香族単量体単位を80質量%以上、好ましくは90質量%を超えて含有するビニル芳香族単量体単位と、共重合可能なその他の単量体、好ましくは共役ジエン単量体とを共重合した構造を有するものである。また、重合体ブロックBは、共役ジエン単量体の単独重合体又はビニル芳香族単量体等の他の単量体を20質量%以下の割合で共重合した構造を有するものである。そして、ブロック共重合体は、そのブロック構造が、(A−B)n−A型(nは1〜10の整数)、又は(A−B)m型(mは2〜10の整数)で表される。なお、端部の重合体ブロックAに、比較的短い重合体ブロックBを有していてもよい。
また、そのブロック構造が、[(A−B)n]m−Y型(Yはカップリング剤残基、mはカップリング剤残基の価数であって2〜4の整数、nは1〜10の整数、好ましくは1又は2である)であるものも含まれる。更に、ブロック共重合体は、そのブロック構造が、A1−B−A2型、又はA1−B1−A2−B2型であってもよい。なお、重合体ブロックB1と重合体ブロックB2の各々の質量平均分子量は、同一であってもよく、重合体ブロックB2の質量平均分子量の方が重合体ブロックB1の質量平均分子量に比して小さくてもよい。
ビニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
また、共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等の単独物、又は2以上の混合物を挙げることができる。これらのうち、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
重合体ブロックAにおける、ビニル芳香族単量体と共重合可能なその他の単量体としては、主として上記の共役ジエン単量体と同一のものを挙げることができる。これらのうち、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。また、重合体ブロックBにおける、共役ジエン単量体と共重合する他の単量体の好適例としては、スチレンを挙げることができる。
水添前重合体を構成する共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体との組成割合(共役ジエン化合物/ビニル芳香族化合物)は、質量比で、95/5〜40/60であることが好ましく、93/7〜50/50であることが更に好ましく、92/8〜60/40であることが特に好ましい。また、水添前重合体の共役ジエン部分のビニル結合含量(水添前重合体の共役ジエン部分の1,2−及び3,4−ビニル結合の割合)に特に制限はないが、50〜85%であることが好ましく、55〜80%であることが更に好ましい。50%未満であると、架橋処理前の組成物が硬いため、ハンドリングが困難になる傾向にある。85%超であると、架橋がかかり難くなる傾向にある。
水添前重合体は、カップリング剤の使用により、重合体分子鎖がカップリング剤残基を介して延長又は分岐した重合体であってもよい。使用されるカップリング剤としては、例えばアジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、テトラクロロシラン四塩化ケイ素、ブチルトリクロロシランケイ素、ジメチルジクロロシラン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等を挙げることができる。
なお、水添ジエン系共重合体としては、二種以上の水添前重合体の混合物を水素添加したものも好適に用いられる。更に、二種以上の水添ジエン系共重合体の混合物も好適に使用することができる。水添ジエン系共重合体の、共役ジエン単量体由来の二重結合は、水素添加により80%以上飽和されていることが好ましく、90%飽和されていることが更に好ましく、95%以上が飽和されていることが特に好ましい。80%未満であると、耐インク溶剤性が劣る傾向にある。更に、水添ジエン系共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、5万〜70万であることが好ましく、5万〜60万であることが更に好ましい。5万未満であると、十分な強度が得られない傾向にある。一方、70万超であると、加工性が不十分なものとなる傾向にある。なお、水添ジエン系共重合体は、例えば特開平3−72512号公報に開示されている方法によって製造することができる。
本実施形態においては、上述してきた水添ジエン系共重合体に、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基等の官能基を導入した変性水添ジエン系共重合体を用いることも可能である。このような変性水添ジエン系共重合体としては、例えば以下に示す(a)〜(c)の共重合体を挙げることができる。
(a)共役ジエン単量体又はビニル芳香族単量体と、共役ジエン単量体とを有機アルカリ金属化合物の存在下で重合して共重合体を得、得られた共重合体の活性点に、エポキシ化合物又はケトン化合物を反応させた後、水素添加して得られた共重合体。
(b)共役ジエン単量体又はビニル芳香族単量体と、共役ジエン単量体とを有機アルカリ金属化合物の存在下で重合して共重合体を得、得られた共重合体を水素添加したものに、(メタ)アクリロイル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、及び無水マレイン酸からなる群より選択される少なくとも一種を溶液中又は押出機等の混練機中で反応して得られる共重合体。
(c)共役ジエン単量体又はビニル芳香族単量体と、共役ジエン単量体とを有機アルカリ金属化合物の存在下で重合して共重合体を得、得られた共重合体に、カップリング剤として、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド等を反応させることにより、分子鎖の中央に−OH基、−NH−CO基、−NH2基、−NH−基等の官能基を導入した共重合体。
(A1−3)スチレン系熱可塑性エラストマー
本実施形態のレーザー加工用組成物に含まれる(A1)熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ビニル化合物から主として作られる一以上の重合体ブロックCと、共役ジエン化合物から主として作られる一以上の重合体ブロックDとからなるブロック共重合体(特定ブロック共重合体)が好ましい。
特定ブロック共重合体の具体例としては、例えば、C−D、C−D−C、D−C−D−C、C−D−C−D−C等のブロック構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を挙げることができる。このような芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を構成する、重合体ブロックCの含有割合は5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましい。
重合体ブロックCは、芳香族ビニル化合物の単独重合体、又は、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上の芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物とを共重合した構造を有するものである。また、重合体ブロックDは、共役ジエン化合物の単独重合体、又は、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上の共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物とを共重合した構造を有するものである。
特定ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、5,000〜1,500,000であることが好ましく、10,000〜550,000であることが更に好ましく、100,000〜400,000であることが特に好ましい。また、特定ブロック共重合体の多分散度(Mw/Mn)は、10以下であることが好ましい。なお、特定ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、若しくは放射状、又はこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
重合体ブロックC、及び重合体ブロックDの分子鎖中の共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の分布は、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、若しくは一部ブロック状、又はこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。なお、重合体ブロックC、及び重合体ブロックDをそれぞれ二以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックの構造は、同一構造であっても異なる構造であってもよい。
上記の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びp−第三ブチルスチレンからなる群より選択される一種以上を好適例として挙げることができる。これらのなかでも、スチレンが更に好ましい。また、上記の共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される一種以上を好適例として挙げることができる。これらのなかでも、ブタジエン、若しくはイソプレン、又はこれらの組合せが更に好ましく、イソプレンが特に好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーのより具体的な好適例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等のブロック共重合体を挙げることができる。これらのなかでも、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)が特に好ましい。
なお、(A1)熱可塑性エラストマーは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。特に、(A1−1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、(A1−3)スチレン系熱可塑性エラストマーとを組み合わせて使用した場合には、レーザー加工用組成物、及びこれを用いたレーザー加工用シートの柔軟性、及び透明性が更に向上するために好ましい。
(A1)熱可塑性エラストマーが、(A1−1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、及び(A1−3)スチレン系熱可塑性エラストマーである場合に、(A1−1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、(A1−3)スチレン系熱可塑性エラストマーの質量比は、80:20〜20:80であることが好ましく、70:30〜30:70であることが更に好ましい。(A1−1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、(A1−3)スチレン系熱可塑性エラストマーの質量比をこの範囲に規定することにより、より柔軟性と透明性に優れたレーザー加工用組成物、及びレーザー加工用シートを提供することができる。
(A2)未架橋ゴム
本実施形態のレーザー加工用組成物には、前述の(A1)熱可塑性エラストマーに加え、更に未架橋ゴムを好適に含有させることができる。未架橋ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴム、各種液状ポリマー等を使用することができる。より具体的には、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソブチレン・イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等)、液状ブタジエンゴム、液状イソプレンゴム、液状ポリイソブテンゴム、液状ポリブテンゴム、液状エチレン−プロピレンゴム、及び液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムのうちの単独物、又は二種以上の混合物等を挙げることができる。これらのうち、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状イソプレンゴム、液状ポリイソブテンゴム、液状ポリブテンゴム、液状エチレン−プロピレンゴム、又は液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムが好ましく、液状ブタジエンゴムが特に好ましい。なお、これら未架橋ゴムは、その分子末端が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基で修飾されたものであってもよい。
液状ブタジエンゴムの1,2−ビニル含量は、60%以上であり、80%以上であることが好ましく、85%以上であることが特に好ましい。1,2−ビニル含量が60%以上であると、得られるレーザー加工用組成物の透明性が優れるとともに、経時変化によるべたつきが起こり難い。また、液状ブタジエンゴムの数平均分子量は、1500以上、1万未満であることが好ましく、2000以上、5000未満であることが更に好ましい。数平均分子量が1500以上、1万未満であると、加工性に優れるとともに得られるレーザー加工用組成物の経時変化によるべたつきが起こり難い。これらの条件を満たす液状ブタジエンゴムの具体例としては、日本曹達社製のB−3000、G−3000(いずれも商品名)を挙げることができる。
(A2)未架橋ゴムの含有量は、(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、5〜80質量部であることが更に好ましく、10〜60質量部であることが特に好ましい。未架橋ゴムの含有量が100質量部超であると、レーザー加工用シートがべたつく傾向にある。一方、未架橋ゴムを5質量部以上含有させることにより、柔軟性、成形性を向上することができる。なお、未架橋ゴムは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
(B)シリカ粒子
本実施形態のレーザー加工用組成物には、前述の(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して、シリカ粒子が0.1〜50質量部、好ましくは1〜45質量部、更に好ましくは5〜40質量部含まれる。(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して、シリカ粒子が0.1質量部未満であると、レーザー加工後の残渣がべたつく。一方、50質量部超であると、柔軟性、加工性が損なわれる。
シリカ粒子としては、様々な種類のものを挙げることができるが、レーザー加工時に生ずる不快な臭気や発炎を更に抑制し、加工表面のべたつきを更に抑えるといった観点からは、無水シリカ粒子が好ましい。また、シリカ粒子の平均一次粒子径は、0.005μm以上、0.1μm未満であることが好ましく、0.01以上、0.1μm未満であることが更に好ましく、0.01〜0.05μmであることが特に好ましい。シリカ粒子の平均一次粒子径が0.1μm以上であると、レーザー加工性、及びレーザー加工後の洗浄性が劣る傾向にある。一方、0.005μm未満であると、実質的に入手が困難となる傾向にある。なお、本実施形態のレーザー加工用組成物に含まれる好適なシリカ粒子のより具体的な一例としては、アエロジル(商品名(デグサ社製))等を挙げることができる。なお、シリカ粒子は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態のレーザー加工用組成物には、必要に応じて、架橋助剤、開始剤、熱付加重合抑制剤、着色剤、抗酸化剤、可塑剤、補強剤、活性剤、難燃剤、老化防止剤、顔料、又はその他の重合体等を配合することもできる。架橋助剤、開始剤としては、(1)アルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、(2)エーテル系(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3)アルコール系(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、(4)カルボン酸系(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、(5)二官能アクリレート類;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、とりエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA,EO付加物ジ(メタアクリレート)、ビスフェノールF,EO付加物ジ(メタアクリレート)、(6)多官能アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、その他、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエンオリゴマーやウレタンアクリレートポリマー等を挙げることができる。
上記架橋助剤、開始剤は、(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1質量部以上使用することが好ましい。使用量が0.1質量部未満であると、十分な機械的強度及びレーザー加工性を発現できない場合がある。
重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−アクリルオキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−アクリルオキシ−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(2−フェニル−2,2−ジメトキシアセトフェノン)、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等を用いることができる。
上記重合開始剤は、(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して0〜10質量部使用することが好ましく、0〜5質量部使用することが更に好ましく、0〜3質量部使用することが特に好ましい。使用量が10質量部超であると、不経済であるだけでなく、材料硬度が高くなり過ぎて脆くなる傾向にある。
熱付加重合抑制剤の例としては、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、アルコキシハイドロキノン、アリルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルピロカテコール、ピロガロール、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のヒドロキシ芳香族化合物;ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン等のキノン類;ニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル−t−ブチルニトロン、5,5−ジメチル−1−ピロリン−1オキシド等のニトロ又はニトロソ化合物;クロラニル−アミン系、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、フェノール−α−ナフチルアミン、ピリジン、フェノチアジン等のアミン類;ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等のスルフィド類;1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルチオアクリロニトリル等の不飽和化合物;チオニンブルー、トルイジンブルー、メチレンブルー等のチアジン染料;1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン、1,3,5−トリフェニルフェルダジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,6−ジ−t−ブチル−α−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン−p−トリオキシル等の安定ラジカル等を挙げることができる。
上記熱付加重合抑制剤の使用量は、(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.01〜5質量部とすることが好ましい。また、上記熱付加重合抑制剤は単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
着色剤の例としては、ビクトリア・ピュア・ブルー、ビクトリア・ブルー、メチルバイオレット、アイゼン・マラカイト・グリーン(以上、保土谷化学工業社製)、パテント・ピュア・ブルー・VX、ローダミン・B、及びメチレンブルー(以上、住友化学工業社製)等の塩基性染料;スーダンブルー・II、ビクトリア・ブルー・F4R(以上、BASF社製)、オイル・ブルー・#603、オイル・ブルー・BOS、及びオイル・ブルー・IIN(以上、オリエント化学工業社製)等の油溶性染料;ベンジジンイエローG、ブリリアントカーミン6B、パーマネントF−5R、レーキレッドC、フタロシアングリーン等の有機系のものを挙げることができる。また、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、鉛白、鉛黄、カドミウム黄、バリウム黄、カドミウム赤、モリブデン赤、鉛丹(光明丹)、アンバー、群青、紺青、コバルト青、酸化クロム緑、コバルト紫等の無機系のものを用いることができる。これらの着色剤は、単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
抗酸化剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
補強剤としては、カーボンブラックの他、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複合物からなる特殊な炭酸カルシウム系化合物、炭酸マグネシウム、クレー、タルク等の白色系補強剤を使用することができる。これらの補強剤は一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用することもできる。
活性剤としては、加硫促進助剤としての作用をも併有する亜鉛華(酸化亜鉛)を使用することができ、通常の品種の他に、活性亜鉛華、透明亜鉛華、表面処理亜鉛華、複合亜鉛華等の特殊な品種を用いることもできる。更に、その他の無機系活性剤として、酸化マグネシウム、鉛丹、鉛白等を使用することもでき、有機系活性剤であるステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、及びステアリン酸亜鉛、ジブチルアンモニウムオレート等の脂肪酸誘導体を用いることもできる。
難燃剤としては、酸化アンチモン系、アンチモン系、塩化パラフィン系、臭素系、ジルコニウム系、又はホスフェート系の化合物等の他、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛等を使用することができる。老化防止剤としては、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、フェノール系、ヒンダードフェノール系等の化合物を使用することができる。
次に、本発明のレーザー加工用シートの一実施形態について説明する。本実施形態のレーザー加工用シートは、これまで述べてきたいずれかのレーザー加工用組成物がシート状に成形された、少なくとも一方の面を加工面としたものである。このため、本実施形態のレーザー加工用シートは、レーザー加工時に不快な臭気や発炎を生ずることなく、加工表面にべたつきを生じない。
本実施形態のレーザー加工用シートは、架橋処理されてなるものであることが好ましい。架橋処理されることにより、レーザ加工するに際して、加工面における彫刻されない周囲の部分(残す部分)が溶け難くなり、高い彫刻精度で印刷パターンを形成することができる。架橋処理の方法としては、例えば電子線(EB)架橋、紫外線(UV)架橋、熱架橋等を挙げることができる。なお、本実施形態のレーザー加工用シートは、レーザー加工用組成物を押出成形、カレンダー成形、プレス成形等することによって製造することができるが、押出成形によってレーザー加工用シートを製造する場合には、押出成形しつつ架橋することのできるEB架橋やUV架橋が、製造効率の観点から好ましい。
EB架橋により架橋して本実施形態のレーザー加工用シートを製造する場合、電子線の照射線量は200Mrad以下であることが好ましく、100Mrad以下であることが更に好ましい。電子線の照射線量が200Mrad超であると、得られるレーザー加工用シートが硬く、フレキシビリティが不足する傾向にある。また、電子線の加速電圧は800kV以下であることが好ましい。電子線の加速電圧が800kV超であると、電子線照射装置が非常に高価となり、実用性に欠ける傾向にある。
本実施形態のレーザー加工用シートは、架橋処理されてなるものである場合においては、その全量に対する、60℃のトルエンで3時間抽出した場合のゲルの割合(トルエンゲル含有率)が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。トルエンゲル含有率が50質量%未満であると、レーザー加工時の加工精度(彫刻性)が劣る傾向にある。
また、本実施形態のレーザー加工用シートは、一方の面上にシート状の基材層が積層されたものであることが好ましい。このような積層体とすることにより、印刷の際に要する印圧を低くすることができる。また、レーザー加工用シート全体を軽量化することもでき、比較的大型のシートとする場合に好適である。なお、基材層を構成する材料としては、以下に述べる各種エラストマー単体、又はエラストマーと、エチレン性不飽和基を有する化合物と、光重合開始剤とを含む光重合性組成物が光硬化して形成されるもの等を挙げることができる。
上記のエラストマーとしては特に限定されず、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等のゴムや、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。なかでも熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。この熱可塑性エラストマーの例としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ジエン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、及びフッ素系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
上記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)としては、単純ブレンド型TPO、インプラント化TPO、動的加硫型TPO等を挙げることができる。また、上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−(スチレン−ブタジエン)−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体、ランダムスチレン−ブタジエンゴムの水素添加ポリマー、スチレンの一部又は全部をα−メチレンで置換した上記ブロック共重合体等の芳香族ビニル化合物と共役ジオレフィンのブロック共重合体、これらのブロック共重合体の水素添加物等を挙げることができる。
上記ジエン系熱可塑性エラストマーとしては、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等を挙げることができる。また、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレート、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコールをそれぞれ使用したマルチブロックポリマー等を挙げることができる。更に、上記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてナイロン、ソフトセグメントとしてポリエステル又はポリオールをそれぞれ使用したブロックポリマー等を挙げることができる。
上記熱可塑性エラストマーとしては、材料硬度、反発弾性等の特性バランスと、加工性とを考慮し、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、ランダムスチレン−ブタジエンゴムの水素添加ポリマー等を好適に用いることができる。なお、上記熱可塑性エラストマーは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用することもできる。
上記エチレン性不飽和基を有する化合物としては、上記のエラストマーと混合した際、透明で曇りのない光重合層を形成する程度にバインダーポリマーと相溶するものであれば、特に限定されない。具体的には、(1)アルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、(2)エーテル系(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3)アルコール系(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、(4)カルボン酸系(メタ)アクリレート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、(5)二官能アクリレート類;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA,EO付加物ジ(メタアクリレート)、ビスフェノールF,EO付加物ジ(メタアクリレート)、(6)多官能アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、その他、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエンオリゴマーやウレタンアクリレートポリマー等を挙げることができる。
上記エチレン性不飽和基を有する化合物は、上記エラストマー100質量部に対して、3質量部以上使用することが好ましい。使用量が3質量部未満であると、十分な機械的強度及び弾性を発現させることが困難となる傾向にある。
上記光重合開始剤としては公知のものを使用することができる。例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−アクリルオキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−アクリルオキシ−4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(2−フェニル−2,2−ジメトキシアセトフェノン)、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等を用いることができる。
上記光重合開始剤は、上記(A1)熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.01〜20質量部使用することが好ましく、0.05〜15質量部使用することが更に好ましく、0.1〜10質量部使用することが特に好ましい。使用量が0.01質量部未満であると、得られる組成物の硬化が不十分となる傾向にある。一方、使用量が20質量部超であると、不経済であるだけでなく、材料硬度が高くなり過ぎて脆くなる傾向にある。
また、上記光重合性組成物には、必要に応じて、熱付加重合抑制剤、着色剤、抗酸化剤、可塑剤等を少量含有させることができる。熱付加重合抑制剤の具体例としては、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、アルコキシハイドロキノン、アリルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルピロカテコール、ピロガロール、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のヒドロキシ芳香族化合物;ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン等のキノン類;ニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル−t−ブチルニトロン、5,5−ジメチル−1−ピロリン−1オキシド等のニトロ又はニトロソ化合物;クロラニル−アミン系、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、フェノール−α−ナフチルアミン、ピリジン、フェノチアジン等のアミン類;ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等のスルフィド類;1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルチオアクリロニトリル等の不飽和化合物;チオニンブルー、トルイジンブルー、メチレンブルー等のチアジン染料;1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン、1,3,5−トリフェニルフェルダジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,6−ジ−t−ブチル−α−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン−p−トリオキシル等の安定ラジカル等を挙げることができる。
上記熱付加重合抑制剤の使用量は、光重合性組成物に対して0.01〜5質量%とすることが好ましい。また、上記熱付加重合抑制剤は単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
着色剤の例としては、ビクトリア・ピュア・ブルー、ビクトリア・ブルー、メチルバイオレット、アイゼン・マラカイト・グリーン(以上、保土谷化学工業社製)、パテント・ピュア・ブルー・VX、ローダミン・B、及びメチレンブルー(以上、住友化学工業社製)等の塩基性染料、スーダンブルー・II、ビクトリア・ブルー・F4R(以上、BASF社製)、オイル・ブルー・#603、オイル・ブルー・BOS、及びオイル・ブルー・IIN(以上、オリエント化学工業社製)等の油溶性染料、ベンジジンイエローG、ブリリアントカーミン6B、パーマネントF−5R、レーキレッドC、フタロシアングリーン等の有機系のものを挙げることができる。また、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、鉛白、鉛黄、カドミウム黄、バリウム黄、カドミウム赤、モリブデン赤、鉛丹(光明丹)、アンバー、群青、紺青、コバルト青、酸化クロム緑、コバルト紫等の無機系のものを用いることができる。これらの着色剤は、単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
抗酸化剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
可塑剤の例としては、通常のゴム加工に使用されているアロマティック系、ナフテン系、パラフィン系等のプロセスオイルや、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ−2−エチルへキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジノニルフタレート等のジアルキルフタレート類;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート等のジアルキルアジペート等を挙げることができる。
基材層の厚みは、1〜7mmであることが好ましく、2〜6mmであることが更に好ましく、3〜5mmであることが特に好ましい。基材層の厚みが1mm未満であると、基材として十分な強度及び特性が発揮され難くなる傾向にある。一方、7mm超であると、版が重くなり過ぎて作業性が低下する傾向にある。
レーザー加工用シートの厚みは、0.5〜7mmであることが好ましく、1〜3mmであることが更に好ましい。0.5mm未満であると、照射されるレーザーの強度等にもよるが、レーザーが突き抜けてしまい易くなる傾向にある。一方、7mm超であると厚過ぎるために、取り扱い性が低下するのみならず、UVやEBを使用した架橋性が低下する傾向にある。なお、レーザー加工用シートの全体の厚みが3mm以上となる場合には、レーザー加工用組成物がシート状に成形された層(レーザー加工層)の厚みを3mm以下として上述の基材層を設けることが好ましい。
次に、本発明のフレキソ印刷版、及びその製造方法について説明する。本発明の実施形態であるフレキソ印刷版は、これまで述べてきたいずれかのレーザー加工用シートの加工面がレーザーで彫刻加工され、所定の印刷パターンが形成されたものである。また、このフレキソ印刷版は、これまで述べてきたいずれかのレーザー加工用シートの加工面をレーザーで彫刻加工することにより、この加工面に所定の印刷パターンを形成して製造することができる。このため、本実施形態のフレキソ印刷版は、優れた彫刻精度で容易に製造され得るものであり、十分な彫刻深度を備えたものである。また、本実施形態のフレキソ印刷版の製造方法によれば、優れた彫刻精度、及び十分な彫刻深度を有する印刷パターンが形成されたフレキソ印刷版を容易に製造することができる。
レーザー加工用シートの加工面を彫刻加工するに際して用いるレーザー発振装置としては、主として炭酸ガスレーザーを挙げることができる。レーザーの強度は、使用するレーザー加工用シートの厚みや、所望とする彫刻深度にもよるが、1光源当たりで10〜500Wであることが好ましく、10〜300Wであることが更に好ましい。10W未満であると、十分な彫刻深度で印刷パターンを形成することが困難となる傾向にある。一方、500W超であると、強度が強過ぎるため、彫刻精度が低下する傾向にある。一般的に、レーザー加工速度を上げるためには1光源当たりの強度を増すよりも、光源数を増やして多点を同時並行して加工することが好ましい。
レーザーによる彫刻加工は、レーザー加工用シートを平らに配置した状態で行うことができるが、例えば金属等からなるロール上にレーザー加工用シートを配設した状態で行うこともできる。レーザーによる彫刻加工を行った後は、生じた灰(残査)を除去すべく、加工面を洗浄することが好ましい。加工面の洗浄は、水や適当な有機溶媒を用いた溶媒洗浄の他、空気流の吹き付けによる空気洗浄によって行うことができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び評価方法を以下に示す。
(1)各種物性値の測定方法、評価方法
[ビニル結合含量]:赤外分析法を用い、モレロ法により算出した。
[水添率]:四塩化炭素を溶媒として使用し、100MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
[重量平均分子量]:テトラヒドロフランを溶媒として使用し、40℃におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算で算出した。
[結合スチレン含有量]:四塩化炭素を溶媒として使用し、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
[メルトフローレート(MFR)(1)]:JIS K7210に準拠して、230℃、21.2N荷重で測定した。この数値が大きいほど、成形性に優れている。
[硬度]:JIS K6253に準拠し、高分子計器社製、「アスカー CL150/DD2 DUROMETER」(商品名)を使用して、定荷重法、瞬間値を記録した。
[(シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの)結晶化度]:結晶化度0%のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの密度を0.889g/cm3、結晶化度100%のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの密度を0.963g/cm3として、水中置換法により測定した密度から換算した。
(2)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの製造例
乾燥窒素で置換した内容積5リットルのオートクレーブに、1,3−ブタジエン(BD)600g、シクロヘキサン2400gを入れ、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド0.4%塩化メチレン溶液(Aldrich社製)、20%メチルアルミノキサン(アルベマール社製)をAl原子換算1%に希釈したトルエン溶液を、それぞれ、BD/Co(モル比)=120,000、Al/Co(原子比)=75になるように加え、内温が55℃となるように調整しながら120分間重合した。反応停止は、停止剤として少量のエタノールを加えることによって行った。次いで、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを重合体100部に対して0.3部加え、ホットプレート上で加熱し、溶媒を除去することで重合体(シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(イ−1))510gを得た。なお、重量平均分子量は20万、密度は0.901、算出した結晶化度は16%であった。
(3)水添ジエン系共重合体の製造例
内容積50リットルのオートクレーブに、脱気・脱水したシクロヘキサン25kg、テトラヒドロフラン150g、及びスチレン450gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム4.5gを加え、50℃からの断熱重合を20分間行った。反応液を5℃とした後、1,3−ブタジエン4250gを加え断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、更にスチレン300gを加え重合を行った。重合が完結した後、0.4MPa−Gの圧力で水素ガスを供給して20分間撹拌し、リビングアニオンとして生きているポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にした後、水添触媒としてチタノセンジクロライドを使用して水添反応を行い、水添ジエン系共重合体(イ−2)を得た。得られた水添ジエン系共重合体(イ−2)の水添率は98.5%、重量平均分子量は15万、結合スチレン含量は15%、ビニル結合含量は65%、MFRは3.0g/10minであった。
以下、同様の方法により、表1の各水添ジエン系共重合体となるように、モノマー量、テトラヒドロフラン添加量、触媒量、重合温度、重合時間等を変えて、水添ジエン系共重合体(イ−3)を得た。得られた各水添ジエン系共重合体の物性値測定結果を表1に示す。
(4)その他、(A1)熱可塑性エラストマーとして、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(イ−4)(JSR社製、商品名「JSR SIS5405」)を用いた。また、(A2)未架橋ゴムとして、液状ポリブタジエン(ロ−1)(日本曹達社製、商品名「B3000」、重量平均分子量:3000、1,2−ビニル結合含量:92%)、水素添加液状ポリブタジエン(ロ−2)(日本曹達社製、商品名「BI3000」、重量平均分子量:3000)、液状ポリブタジエン(ロ−3)(JSR社製、商品名「RHPB」、1,2−ビニル結合含量:25%)、及び液状エチレン−プロピレンゴム(ロ−4)(三井化学社製、商品名「ルーカントHC−150」)を使用した。
(参考例1)
(1)シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(イ−1)100部、シリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジルR972」、平均一次粒子径=0.017μm)40部、シランカップリング剤(GE東芝シリコン社製、商品名「TSL8370」)1部、及び滑剤としてステアリルアミン2部を、150℃に調温されたニーダーに投入し、30分間混練してレーザー加工用組成物を調製した。調製したレーザー加工用組成物を、50℃に調温された10インチロールを用いてシート化した後、深さ2mmの金型に充填した。170℃に調温された圧縮成形機により10分間加圧後、室温に冷却して取り出し、更に電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製、商品名「EPS800−35」)にて、加速電圧800kV、20Mradの電子線照射を行い、レーザー加工用シート(厚み=2mm)を作製した。なお、電子線照射面をレーザー加工面とした。
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(JSR社製、商品名「JSR SIS5000」)100部、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート10部、ラウリルメタクリレート10部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン2部、及び熱付加重合抑制剤として2,6−ジ−t−ブチルクレゾール1部を50℃に調温したニーダー内に投入して30分間混練し、無色透明の光重合性組成物を得た。
(3)前述の(1)で作製したレーザー加工用シートの電子線非照射面を紙やすり(#200)で軽く研磨した後、これを深さ7mmの金型内に敷いた。この上に前述の(2)で得た光重合性組成物を置き、更にその上にポリエステルフィルム(厚み=200μm)を置いて、90℃に調温したプレス機を用いて成形することにより、総厚み7mmの柔軟性のある積層体を得た。得られた積層体を露光機(日本電子精機社製、品番「JE−A3−SS」)を使用して、光重合製組成物からなる層の側から5分間露光(紫外線強度=25W/m2)することにより、基材層が積層されたレーザー加工用シートを得た。
(4)密閉型炭酸ガスレーザー発振器(米国シンラッド社製、出力=25W)が搭載されたレーザー加工機(Great Computer Corporation製、商品名「Laser Pro」)を、その設定を、SPEED30(%)、POWER95(%)、及び解像度1000(dpi)として使用した。前述の(3)で得られたレーザー加工用シートをレーザー加工し、加工時の発炎、加工表面のべたつき、臭気(官能試験)、及び彫刻精度を評価した。加工時の発炎、加工表面のべたつき、及び臭気の評価基準を以下に示す。また、彫刻精度は、その加工面を、表面観察装置(キーエンス社製)を使用して観察して判断した。評価結果を表2に示す。
[発炎]:
○:発炎が無いか、又はほとんど無い。
×:発炎が大きい。
[臭気]:
○:臭気が無いか、又はほとんど無い。
×:臭気が大きい。
[べたつき]:
○:べたつきが無いか、又はほとんど無い。
△:少しべたつく。
×:べたつきが大きい。
[彫刻精度]:
○:顕微鏡で観察し、0.1mm幅の線が彫刻されている。
×:顕微鏡で観察し、0.1mm幅の線が彫刻されていない。
(5)トルエンゲル含有率の測定:基材層を積層する前のレーザー加工用シートのトルエンゲル含有率を、以下に示す方法に従って測定した。2gのレーザー加工用シートを約1mm角に切断し、60℃のトルエン100ml中で3時間抽出した後、400メッシュの金網で固形分を採取した。得られた固形分を80℃、2時間真空乾燥してトルエンを揮発させた後、トルエンゲル含有率(%)を測定した。測定結果を表2に示す。
(参考例2)
架橋助剤としてトリメチロールプロパンアクリレート(TMPA)(共栄化学社製)1.5部を添加し、表2の配合としたこと以外は参考例1の場合と同様にして、基材層が積層されたレーザー加工用シート(参考例2)を得た。得られたレーザー加工用シート(参考例2)について、参考例1と同様の評価・測定を行った。結果を表2に示す。
(参考例3,4、実施例1)
表2に示す配合としたこと以外は参考例1の場合と同様にして、基材層が積層されたレーザー加工用シート(参考例3,4、実施例1)を得た。得られたレーザー加工用シート(参考例3,4、実施例1)について、参考例1と同様の評価・測定を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
(イ−2)単体でレーザー加工用シートを構成し、電子線照射を行わずに基材層と積層することによって、積層型のレーザー加工用シート(比較例1)を得た。得られたレーザー加工用シート(比較例1)について、参考例1と同様の評価・測定を行った。結果を表2に示す。
(実施例2、3、比較例2、3)
表3に示す配合としたこと以外は参考例1の場合と同様にして、基材層が積層されたレーザー加工用シート(実施例2、3、比較例2、3)を得た。得られたレーザー加工用シート(実施例2、3、比較例2、3)について、参考例1と同様の評価・測定を行った。結果を表3に示す。なお、MFRは、以下に示す「メルトフローレート(MFR)(2)」に従って測定した。
[メルトフローレート(MFR)(2)]:JIS K7210に準拠して、150℃、2.16kgの条件で測定した。この数値が大きいほど、成形性に優れている。
(実施例4,5、参考例5)
表4に示す配合としたこと以外は参考例1の場合と同様にして、基材層が積層されたレーザー加工用シート(実施例4,5、参考例5)を得た。得られたレーザー加工用シート(実施例4,5、参考例5)について、参考例1と同様の評価・測定を行った。結果を表3に示す。なお、透明性の指標となる「haze(%)」の測定方法を以下に示す。また、MFRは、前述の「メルトフローレート(MFR)(2)」に従って測定した。比較のために、表3で示した比較例2のレーザー加工用シートについての評価・測定結果を、表4にも示す。
[透明性(haze:%)]:基材層を積層する前のレーザー加工用シート(2mm厚さ)を測定試料とし、JIS K6714に準拠して測定した。なお、この数値が大きいほど、透明性に優れている。
表2に示したように、実施例1のレーザー加工用シートは、いずれもトルエンゲル含有率が高いものであるとともに、発炎、臭気、べたつきが少なく、また、彫刻加工性も良好であった。図1及び図2に、参考例1のレーザー加工用シートの顕微鏡写真を示す。なお、スケールは図(写真)中に示している。図1によれば、活字の細かい部分(例えば、反転した「ぴ」の半濁点の中心部)まで彫刻されていることが明らかである。また、図2によれば、0.1mm幅の線部(白破線円内を参照)も良好に彫刻されていることが明らかである。一方、比較例1のレーザー加工用シートのトルエンゲル含有率は0%であり、臭気は少ないものの、発炎、べたつきが大きく、かつレーザー非照射部分が溶融していた。参考までに、比較例1のレーザー加工用シートの顕微鏡写真を図3に示す。
また、表3に示したように、実施例2、3のレーザー加工用シートは、いずれも硬度が低く、成形性の代用特性であるMFRが高く、かつ、レーザー加工性も良好であった。これに対して、比較例2、3のレーザー加工用シートは、いずれも彫刻性は良好であったが、硬度が低く、べたつきが大きいものであった。
更に、表4に示したように、実施例4、5のレーザー加工用シートは、レーザー加工性が良好であるとともに、比較例2のレーザー加工用シートに比べて、透明性が良好であることが明らかである。