JP4983967B2 - 発泡樹脂複合構造体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
つまり、酸素指数が21より大きい発泡樹脂製の母材に酸素指数が21より大きい充填材料を特定の充填率以上充填すると、発泡樹脂複合構造体の難燃性という特性が損なわれるおそれのあることが分かった。
なお、以下において、ビーズ法ポリスチレンフォームとは、JIS A 9511に規定されたA種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温材の特性に一致するビーズ法ポリスチレンフォームのことをいうものとし、通常販売されているものの標準的な酸素指数は26とされている。
ここで、ビーズ法ポリスチレンフォームにより形成された母材とは、金型内に発泡ビーズを充填し、それを加熱発泡させて成型した金型の形状通りの発泡樹脂成型体そのもの、あるいは、その発泡樹脂成型体を、加熱したニクロム線などによって溶断して作成された発泡樹脂成型体などのことである。
本願発明者らの実験によれば、酸素指数が21より大きく有機系物質が主成分の充填材料を酸素指数が21より大きくビーズ法ポリスチレンフォームにより形成される母材の空隙および連通孔に充填して成る発泡樹脂複合構造体は、充填材料の充填率を充填材料の種類に応じて0.1〜4.5vol%の範囲から決定することにより、難燃性が損なわれ難くできることが分かった。
酸素指数が21より大きく塩化ビニリデンが主成分として含有率85%以上含有される充填材料を0.1〜4.5vol%の範囲から決定した充填率で充填した発泡樹脂複合構造体も難燃性が損なわれ難い。特に、充填率を0.1〜2.5vol%の範囲から決定すれば、発泡樹脂複合構造体の難燃性がより一層損なわれ難い。
特に、請求項2に係る発明のように、酸素指数が21より大きく樹脂が主成分の充填材料を充填する場合は、その充填率の下限値を0.1から1.0vol%に上げ、1.0〜4.5vol%の範囲から充填率を決定しても、発泡樹脂複合構造体の難燃性が損なわれ難い。
特に、請求項3に係る発明において、充填率の上限値を4.5から2.5vol%に下げ、1.0〜2.5vol%の範囲から充填率を決定すれば、発泡樹脂複合構造体の難燃性がより一層損なわれ難い。
有機系物質が主成分の難燃剤を添加した充填材料を充填する場合も、その種類に応じて請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の特徴に従って充填率を決定すれば、発泡樹脂複合構造体の難燃性が損なわれ難い。
充填材料を母材の空隙および連通孔に充填した後に、母材の一の面から気体を母材の連通孔に通すため、充填された充填材料を母材から排出することができるので、充填材料の充填率を調節することができる。また、充填ムラを軽減して充填の安定化を図ることができる。
[母材の構造]
発泡樹脂複合構造体を製造するための母材の構造について説明する。
図1は、母材1の説明図であり、(a)は母材1の斜視図、(b)は(a)に示す領域Dの拡大図である。図2は、図1(b)に示す領域Dのさらなる拡大図であり、(a)は充填材料が空隙に充填されていない状態を示す拡大図、(b)は充填材料が空隙に充填された状態を示す拡大図である。図3は、図1に示す母材に形成された連通孔の模式図であり、(a)は充填材料が連通孔に充填された状態を示す模式図、(b)は充填材料の膜が母材の一の面に形成された状態を示す模式図である。
本願発明者らは、図2(b)に示すように、母材1に形成された空隙1dに充填材料4を充填するとともに、図3に示すように、連通孔1eにも充填材料4を充填して発泡樹脂複合構造体5を製造し、充填材料4の充填率と発泡樹脂複合構造体5の難燃性との関係を求めるための実験を行った。図4は、充填装置に母材1および充填材料4がセットされた状態を示す縦断面図である。図5は実験1〜4の結果をまとめた図表であり、図6は実験5の結果をまとめた図表である。図7は各実験で用いた充填材料の詳細を示す図表である。
この実験において母材1の空隙1dおよび連通孔1eに充填材料4を充填するために用いた充填装置について図を参照して説明する。
以下の各実験では、上記の充填装置10を用いた。また、母材1として、大きさが150×25×10(mm)で空隙率が3%のEPS製の母材を用いた。そして、以下の各工程によって母材1に充填材料を充填して試験片(発泡樹脂複合構造体)を製造した。
(実験1−1)
難燃性の有機系物質を母材1に充填して試験片を製造し、その試験片の難燃性を評価した。難燃性の有機系物質として、旭化成ケミカルズ株式会社製造のサランラテックスL131A(サランラテックスは旭化成ケミカルズ株式会社の登録商標)を用いた。
また、充填率の上限値を4.5vol%から2.5vol%に下げ、充填率を0.1〜2.5vol%の範囲から決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
次に、母材1に充填する難燃性の有機系物質として旭化成ケミカルズ株式会社製造のサランラテックスL106Cを用いて上記の実験を行った。サランラテックスL106Cは、塩化ビニリデン(PVDC)を主成分とする水性エマルションであり、酸素指数は21より大きく、一般的に主として難燃バインダーとして用いられる。サランラテックスL106Cの固形分は55%、比重は1.55、粘度は12mPa・s、表面張力は43MN/m、最低成膜温度は0〜5℃である。
また、充填率の上限値を2.5vol%から1.0vol%に下げ、0.1以上1.0vol%未満の範囲から決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
次に、難燃性の有機系物質に可燃性の有機系物質を添加したものを充填した試験片を用いて前述の実験を行った。難燃性の有機系物質として前述のサランラテックスL131Aを用い、可燃性の有機系物質としてBASFジャパン株式会社製造のアクロナールYJ2720D(ACRONALは、ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)を用いた。アクロナールYJ2720Dは、1液常温架橋性化合物のアクリルスチレン系水性エマルション(AS樹脂)であり、酸素指数は21以下、樹脂固形分は48重量%、比重は1.0、造膜温度は6℃である。
また、図5のNo.7に示すように、サランラテックスL131Aに対するアクロナールYJ2720D(表では可燃有機/難燃有機(AS/H−PVDC)と記載)の重量比が1/9の試験片は、充填率が0.1〜0.5vol%の範囲における評価結果は総て○であり、充填率が0.5を超え1.5vol%未満の範囲における評価結果は総て△であった。
また、難燃性を損なわないで充填率を高めるためには、可燃性の有機系物質であるアクロナールYJ2720Dの添加量を少なくすれば良いことが分かった。
(実験2−1)
次に、難燃性の無機系物質を充填した試験片を用いて前述の実験を行った。難燃性の無機系物質として昭和電工株式会社製造のH−42Mを用いた。H−42Mは、水酸化アルミニウムであり、酸素指数は21より大きく、一般的に主として難燃バインダーとして用いられる。また、水にH−42Mを分散した分散液を作成し、それを母材1に充填して試験片を作成した。
また、上記の充填率を0.1vol%に決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
次に、難燃性の無機系物質として白石カルシウム株式会社製造のソフトン1500を用いた。ソフトン1500は、炭酸カルシウムであり、酸素指数は21より大きい。また、水にソフトン1500を分散した分散液を作成し、それを母材1に充填して試験片を作成した。
また、上記の充填率を0.1vol%に決定することにより、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
次に、難燃性の有機系物質に難燃性の無機系物質を添加したものを充填した試験片を用いて前述の実験を行った。難燃性の有機系物質として前述のサランラテックスL131Aを用い、難燃性の無機系物質として前述のソフトン1500を用いた。この混合物の固形分に対する樹脂固形分の比は、80%である。
また、充填率の上限値を2.0vol%から1.5vol%に下げ、充填率を0.1〜1.5vol%の範囲から決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
(実験4−1)
次に、可燃性の有機系物質に難燃剤を添加したものを充填した試験片を用いて前述の実験を行った。可燃性の有機系物質として前述のアクロナールYJ2720Dを用い、難燃剤として丸菱油化工業株式会社製造のノンネンSM−18を用いた(ノンネンは丸菱油化工業株式会社の登録商標)。ノンネンSM−18は有機系の分散液であり、その成分は、ハロゲン・多価金属酸化物系であり、酸素指数は21より大きい。また、アクロナールYJ2720Dに対するノンネンSM−18の重量比は30%である。
さらに、図5のNo.3(実験4−1)と比較して分かるように、可燃性の有機系物質であるアクロナールYJ2720Dに難燃性の有機系物質であるノンネンSM−18を添加することにより、発泡樹脂複合構造体5の難燃性を確保しながらが可燃性の有機系物質の充填率を高めることができる。
次に、可燃性の有機系物質としてポリ酢酸ビニルメタノール溶液を用い、難燃剤として前述のノンネンSM−18を用いて前述の実験を行った。ポリ酢酸ビニルメタノール溶液の酸素指数は21以下である。ポリ酢酸ビニルメタノール溶液に対するノンネンSM−18の重量比は30%である。
また、充填率の上限値を3.0vol%から0.5vol%に下げ、充填率を0.1〜0.5vol%未満の範囲から決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
(実験5−1)
次に、難燃性の有機系物質に難燃剤を添加したものを充填した試験片を用いて前述の実験を行った。難燃性の有機系物質としてハロゲン化エポキシ樹脂を用い、難燃剤として三酸化アンチモンを用いた。三酸化アンチモンは、無機系物質である。ハロゲン化エポキシ樹脂の酸素指数は21より大きい。ハロゲン化エポキシ樹脂に対する三酸化アンチモンの重量比は3%である。
また、充填率の上限値を2.0vol%から1.0vol%に下げ、充填率を0.1以上1.0vol%未満の範囲から決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
次に、難燃性の有機系物質として前述のサランラテックスL131Aを用い、難燃剤として丸菱油化工業株式会社製造のノンネンBC−52EMを用いた。ノンネンBC−52EMは、有機系のエマルションであり、その成分は、リン・ハロゲン系化合物であり、酸素指数は21より大きい。サランラテックスL131Aに対するノンネンBC−52EMの重量比は30%である。
さらに、図5のNo.5(実験1−1)と比較して分かるように、難燃性の有機系物質であるサランラテックスL131Aのみを母材1に充填した場合と、有機系の難燃剤であるノンネンBC−52EMを添加した場合とでは、難燃性が殆ど変化しない。
前述した実験1ないし5の各実験結果を総括すると、この実施形態に係る発泡樹脂複合構造体の製造方法を実施すれば、以下の効果を奏することができることが明らかとなった。
(1)充填材料4を母材1の一の面から充填する際に、充填材料4が一の面に残留するようにすることもできる。たとえば、図3(b)に示すように、流動状の樹脂4を母材1の一の面1aから充填する際に、その樹脂4を一の面1aに残留させ、その残留した樹脂4を乾燥させれば、一の面を樹脂製の膜4aで覆うことができる。この製造方法によれば、樹脂製の膜4aで覆われた面に防水効果を持った発泡樹脂複合構造体5を製造することができる。
なお、銅粉には生物忌避効果があるため、銅粉を母材1に浸透させれば、生物忌避効果を持った発泡樹脂複合構造体5を製造することができる。
これらの着色剤によってエポキシ樹脂を着色することにより、発泡樹脂複合構造体5の色や模様を変えることができる。
なお、上記の各原料によって母材1を形成する場合も母材1の酸素指数が21より大きいことが必要である。
均質な発泡ビーズ構造を持つ発泡樹脂複合構造体を得るためには、発泡ビーズの大きさは、概略揃っているのが望ましい。しかし、厳密に揃っている必要はない。また、あえて発泡ビーズの大きさに分布を持たせることで、発泡ビーズ膜に特異な3次元構造を持たせることができるので、異なる大きさの発泡ビーズを混ぜて用いることもある。
(実験A)
可燃性の有機系物質を充填した試験片を用いて前述の実験を行った。可燃性の有機系物質として前述のアクロナールYJ2720Dを用いた。
また、上記の充填率を0.1vol%に決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
次に、可燃性の有機系物質として中京油脂株式会社製造のセロゾール524を充填した試験片を用いて前述の実験を行った。セロゾール524は、カルナバワックスと呼ばれるワックスエマルションであり、酸素指数は21以下、比重は0.9である。
また、上記の充填率を0.1vol%に決定すれば、難燃性が損なわれない発泡樹脂複合構造体5を製造できることが分かった。
1e・・連通孔、2・・容器、2d・・減圧室、3・・減圧装置、
4・・充填材料、4a・・膜、5・・発泡樹脂複合構造体、10・・充填装置。
Claims (6)
- 隣接する発泡ビーズ同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、前記発泡ビーズ間に空隙が形成されているとともに、前記空隙間が連通することにより一の面から他の面に連通した連通孔が存在し、かつ、酸素指数が21より大きい母材の前記空隙および連通孔に充填材料を充填して成る発泡樹脂複合構造体であって、
前記母材はビーズ法ポリスチレンフォームにより形成されており、
前記充填材料は、主成分が有機系物質であり、酸素指数が21より大きく、かつ、前記母材の空隙および連通孔に対する充填率を充填材料の種類に応じて0.1〜4.5vol%の範囲から決定したものであることを特徴とする発泡樹脂複合構造体。 - 前記有機系物質は塩化ビニリデンであり主成分として含有率85%以上であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂複合構造体。
- 前記充填率が、1.0〜4.5vol%の範囲から決定されたものであることを特徴とする請求項2に記載の発泡樹脂複合構造体。
- 前記充填率が、1.0〜2.5vol%の範囲から決定されたものであることを特徴とする請求項3に記載の発泡樹脂複合構造体。
- 前記充填材料は主成分に有機系の難燃剤を添加したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の発泡樹脂複合構造体の製造方法であって、
前記母材の一の面に前記充填材料を配置する第1工程と、
前記母材の一の面および他の面間に差圧を発生させて前記一の面に配置された充填材料を前記母材の空隙および連通孔に充填する第2工程と、
前記母材の一の面および他の面間に差圧を発生させて前記一の面から気体を前記母材の連通孔に通す第3工程と、
を有することを特徴とする発泡樹脂複合構造体の製造方法。
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