JP4984742B2 - 新規微生物およびそれを用いたカロテノイドの生産方法 - Google Patents

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本発明は新規微生物およびそれを用いたカロテノイド、特にアスタキサンチンの製造方法に関する。
アスタキサンチンは従来よりサケ・マス・マダイなどの養殖魚類の色揚げに用いられており、また近年ではその抗酸化作用から健康食品などへの利用が検討されている化合物である。アスタキサンチンは南極オキアミ等の甲殻類から抽出、或いは酵母や微細藻類などの培養により天然から得られるが、供給の安定性やコストの問題から現在では化学合成品が広く用いられている。しかしながら、化学合成品には製法由来の不純物、とくに合成反応に用いられる劇薬類の混入の不安があり、安全性の面から天然品の供給が望まれている。一方で、天然品には先に述べた供給の安定性やコストの問題があり、特に酵母や微細藻類の培養によって得られたものには副産物として脂肪酸エステル体が混在する問題があり、また細胞壁が硬いため、抽出に複雑な工程を経る必要があるという問題があった。
その改良として特開平7−184668号公報に海洋性アグロバクテリウム属(後に、パラコッカス属に属する細菌に再分類された(例えば、非特許文献1、2、3を参照)細菌N‐81106(寄託番号:FERM P‐14023号))の培養により得る方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。当該発明によれば、海洋性細菌を培養した後の菌体を回収した後、アセトンなどの有機溶媒と菌体を混和・攪拌するだけで容易にアスタキサンチンを抽出できるという利点がある。しかしながら、当該細菌を培養して得られるアスタキサンチンは培養液1リットルあたり0.1mg程度であり、生産量の向上が望まれていた。また、細菌の培養によるアスタキサンチンの製法としては特開2001−352995号公報に土壌細菌を用いた製造法の記述があり、当該発明では1リットルあたり128mgの製造例が報告されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、マスやマダイなど海産物の養殖に使用するためには、それらが生育する環境から得られた微生物を用いることが安全性の面から好ましいと考えられ、前述の海洋性微生物による製造法の改良が望まれていた。
これらの問題を解決するため、海洋性アグロバクテリウム属細菌N‐81106(寄託番号:FERM P−14023号)を用いた変異育種により、培地1リットルあたり19.4mgのアスタキサンチンを生産するTSUG1C11(受託番号:FERM P−19416)株の取得を報告している(特許文献3参照)。その後更なる育種を経て、培地1リットルあたりアスタキサンチン220mg、総カロテノイド量400mgを生産するTSN18E7(受託番号:FERM P−19746)株の取得を報告している(特許文献3参照)。しかし、工業的な生産を考えると、より多くのアスタキサンチン等のカロテノイドを生産できることが好ましいことから、さらに生産性が向上した菌株が望まれていた。
また、工業的な微生物の培養、特に大腸菌や酵母の培養において、必要な栄養源を一度に仕込んで行う回分培養法に比べて、培養中に培地成分を追加しながら培養する流加培養法により目的物や微生物菌体が高い収率で得られることがあることが知られている。ここで培養中に培地成分を追加することを流加と呼ぶ。流加培養は供給する栄養源の濃度を任意に、多くの場合は低い濃度に、制御ができる利点があり、高濃度基質により目的物の生産や増殖が阻害される場合や、アルコールや有機酸などの副生成物が生産される場合に、それらを抑制できるためである。特に培地成分のうち、グルコースのような糖類を高濃度とした場合に異化物抑制と呼ばれる目的物の生産が抑制されることや、メタノールやアルコール類を高濃度にした場合にはその毒性により微生物の増殖が抑制されることが良く知られている。また、グルコースを高濃度とした場合には、酵母の場合ではエタノールが、大腸菌の場合では酢酸が蓄積し、それらがそれぞれ20g/L又は5g/Lを超えると副生成物により増殖が抑制されることが知られている。また、副生物の生産は増殖を抑制するだけでなく、目的物質の品質を低下させることや精製を困難にさせることになり好ましくないことである。しかしながらこれらの知見は、主に大腸菌や酵母の培養において観察される現象であり、当該発明の対象となるカロテノイド生産性微生物においては、栄養源の濃度が与える影響はこれまでまったく知られていなかった。
対象となる栄養源としては消費量が多い糖類などの炭素源があげられるが、その消費速度は微生物の生育状態により一定ではないため、培養中に炭素源の濃度を一定に維持するためには微生物の生育状態を何らかの方法でモニターしつつ、流加量を制御する必要がある。そのために種々の提案がなされている。例えば、酸素消費量を指標として炭素源を流加する方法が知られている。この方法では供給ガスおよび排気ガス中の酸素濃度差より酸素消費量が求められる。しかしながら酸素濃度の測定は比較的誤差が大きく、またレスポンスが遅いという欠点があり、培養中の微生物活性を精度良く推定できないため、予想を越えた変化が起きた場合には制御が困難になるという問題がある。排ガス組成の分析による方法としては呼吸商(RQ)を指標として流加を行う方法も知られている。呼吸商は例えば酵母の培養において醗酵と呼吸の割合を示す指標であり、微生物の代謝状態を大きく反映するという利点がある(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら酵母以外の微生物においてはその有効性は明らかではなく、また、呼吸商は供給ガスおよび排気ガスとの酸素濃度及び炭酸ガス濃度差から計算されるため、上記の酸素濃度測定の問題が存在するだけでなく、酸素濃度と炭酸ガス濃度の二つの指標の測定値からの計算が必要であり、データー処理が比較的複雑であるという問題があった。
その他の物理化学的指標として、pHの変化や溶存酸素(DO)の変化を利用した方法があるが、これらはセンサーの応答速度等に問題があり、炭素源が枯渇した場合にはその修正へのレスポンスが遅く、枯渇によるストレスが生じて生物代謝活性に変化が生じる問題がある。オンライングルコース分析計による方法では、必要サンプル量、分析時間、精度、安定性、液性等の影響から長時間の安定制御に問題がある。オンラインレーザー濁度計による方法は菌体が高密度になると精度が低下するなどの問題があった(例えば、非特許文献5参照)。
以上のことから、新たな方法の提案が求められていただけでなく、これらは酵母や大腸菌を対象として開発された方法であるため、本願発明の対象となるカロテノイド生産性の細菌に対するこれらの指標の有効性は全く知られていないという問題があった。
特開平7−184668号公報 特開2001−352995号公報 特開2005−58216号公報 インターネット(海洋バイオテクノロジー研究所ホームページ)、株式会社 海洋バイオテクノロジー研究所、MBIC(菌株コレクションデータベース)、[online]、掲載年月日不明、9ページ目の「caracteristics」、「strain name」及び「16s」の項、 [平成17年6月8日検索]、インターネット:<URL:http://cod.mbio.co.jp/mbihp/j/index.html> インターネット(国立遺伝学研究所ホームページ)大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 日本DNAデータバンク、"DNA Data Bank of Japan"、[online]、2002年10月8日、3ページ目の「ORIGIN」の項、[平成17年6月8日検索]、インターネット<URL:http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.html> インターネット(米国National Institute of Healthホームページ)、National Institute of Health、National Center for Biotechnology Information、[online]、2002年10月8日、4頁目の「Source origine」および「Features」の項、[2005年10月18日検索]、インターネット<URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/> 村山と竹本、東洋曹達研究報告第28巻49−58頁、1984年 Yamane,Tら,J. of Ferment. Bioeng.,75,443,1993年
本発明は、カロテノイド、主にアスタキサンチンを大量に生産することができる海洋性微生物の提供およびその微生物を用いたカロテノイドおよび/またはアスタキサンチンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に関し鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、カロテノイド生産性パラコッカス属細菌の育種により得られることを特徴とする、菌体の高密度化によりカロテノイド生産性が向上したパラコッカス属細菌である。また、本発明は、そのような細菌を培養し、菌体又は培養液からカロテノイドを回収することを特徴とするカロテノイドの製造法である。すなわち、本発明は以下に関するものである。
(1) ロテノイド生産性パラコッカス属細菌TSTT052株(受託番号FERM BP-10754)。
(2) カロテノイド類生産能を有する微生物を培養してカロテノイド類を製造する方法において、TSTT052株(受託番号FERM BP-10754)を含む培養液中の炭素源濃度を低濃度に維持しつつ培養することを特徴とするカロテノイド類の生産方法。
(3) 培養液中の炭素源濃度を、10g/L以下に維持することを特徴とする(2)に記載のカロテノイド類の生産方法。
(4) 培養液中の炭素源濃度を、培養中のいずれの時期においても炭素源の枯渇が生じない濃度に維持することを特徴とする(2)または(3)に記載のカロテノイド類の生産方法。
(5) 炭素源の枯渇が培養液中の炭素源濃度として0g/Lであり、かつ培養する微生物の呼吸活性の低下を伴う状態であることを特徴とする(4)に記載のカロテノイド類の生産方法。
(6) 培養液から発生する炭酸ガス量を測定し、当該測定値に基づき炭素源供給量を制御して培養液中の炭素源濃度を維持することを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載のカロテノイド類の生産方法。
(7) 培養液から発生する炭酸ガス量と培養液への炭素源供給量とが比例するように設定して、培養液中の炭素源濃度を制御することを特徴とする(2)〜(6)のいずれかに記載のカロテノイド類の生産方法。
本発明の新規微生物により、養殖魚類の色揚げ用飼料などとして有用なアスタキサンチンをはじめとするカロテノイドを効率よく製造することが可能になる。
本発明のカロテノイド生産性が向上した新規な微生物は、培地1Lあたり720mg以上のカロテノイドを生産することを特徴とするカロテノイド生産性パラコッカス属細菌TSN18E7株の育種により得られたカロテノイド生産性が向上した微生物、または培地1Lあたり250mg以上のアスタキサンチンを生産することを特徴とするカロテノイド生産性パラコッカス属細菌TSN18E7株の育種により得られたカロテノイド生産性が向上した微生物である。
さらに詳しくは、カロテノイド生産性が向上した新規な微生物としては、カロテノイド生産性パラコッカス属細菌TSTT001株(受託機関名:特許生物寄託センター、受託番号FERM P-20670)である。さらに、本発明においては、TSTT001株のカロテノイド生産性を改良したTSTT031株(受託機関名:特許生物寄託センター、受託番号FERM P-20689)、TSTT052株(受託機関名:特許生物寄託センター、受託番号FERM BP-10754)である。 本発明の微生物は海洋性アグロバクテリウム属細菌(後に、パラコッカス属に属する細菌として再分類された)N-81106株の育種により誘導されたパラコッカス属細菌TSN18E7株をさらに育種することにより誘導された新規な微生物である。N-81106株は株式会社海洋バイオテクノロジー研究所により発見された微生物であり、特許生物寄託センターにFERM P-14023号として寄託されている。N-81106株は細胞中にアスタキサンチンを主なカロテノイドとして蓄積するが、その他にβ−カロテン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、カンタキサンチン、3’−ヒドロキシエキネノン、シス−アドニキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチンなどの多様なカロテノイドを蓄積することも知られている(例えば、Yokoyama and Miki(1995)、FEMS Microbiology Letters、 128、139-144を参照)。
本発明の微生物はパラコッカス属細菌TSN18E7株の育種により誘導されるが、育種の方法としては自然突然変異により派生した優良菌株を選別していく方法などの他に、変異原物質や紫外線で細胞を処理することによって変異を加速させたのちに生産性が向上した菌株を選別していく方法や、以上の様な方法で得られた性質の異なる菌株同士を細胞融合させる方法など様々な方法を行うことが出来る。特に変異原物質を用いる方法は短期間に有用な菌株を得る方法として好ましく用いることが出来る。変異原物質としてはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、メタンスルホン酸エチル等の化合物が使用できる。
育種方法の一例をあげると、予め培養して得られたパラコッカス属細菌TSN18E7株の菌体をこれらの化合物の水溶液に懸濁して一定時間放置した後に遠心分離などの方法で菌体を回収して変異原物質を除去する。その後平板培地上で培養し、優良菌株のコロニーを選択する。コロニーの選択は色調の濃いコロニーを選択・分離し、液体培養を行い、次いで、菌体からカロテノイドを抽出してカロテノイド生成量や組成をHPLCなどで分析し、生産性の向上した菌株を絞り込むことにより優良な菌株を得ることができる。
しかしながら、一方で上記のように化学物質を用いてランダムに変異を導入する場合、菌株の育種を行う毎に望ましくない変異が導入され細菌の生育能が低下してしまうことがある。他方で、変異育種を繰返すことによりカロテノイドの生産が細胞内において過剰となり、過度な調節が起こり生育能が低下することもある。これらの現象はともに発酵生産の観点から望ましくない。本発明者らは、育種に用いる変異株分離用平板培地にカロテノイドの構造類縁体である代謝アナログを所定量添加することにより親株と同等あるいは親株に対して生育能の上昇したカロテノイド生産菌株を得ることを見出した。すなわち、平板培地に代謝アナログを添加することにより、培地上にスプレッドした菌株は代謝アナログを細胞内に取り込み、カロテノイド高蓄積環境下と同等となり、ほとんどの菌株は生育能が減少しコロニーを形成することができない。一方で、コロニーを形成するカロテノイドの代謝アナログ耐性株は、カロテノイドが一定量細胞内に蓄積した場合においても良好に生育する菌株である。
一般に、微生物では代謝物質が一定量生産されると、その物質がフィードバック等の調節を受けるため一定以上生産することができなくなる。細胞を構成している物質がそれぞれの量で調和しているからである。これに対して、微生物の育種は所望の物質の生産性を向上させるなど、細胞内の調和を乱す取り扱いである。すなわち、育種を繰返すことにより所望物質の合成能が著しく向上し、細胞内において、一定量を超える所望物質の生産が続くと微生物自体の生育能が極端に減少することがある。この機構を解除する方法として代謝アナログ存在下において生育する代謝アナログ耐性株を分離すればよい。
本発明において代謝アナログ耐性を獲得させる微生物としては、カロテノイド代謝アナログにより増殖を阻害される微生物であれば良く、パラコッカス属に属する細菌を例示することができる。
代謝アナログとしてはカロテノイドに対するアナログ性を有すればよく、α−ヨノン(α−ionone)、β−ヨノン(β−ionone)等を挙げることができる。平板培地に添加する濃度は育種対象の微生物に対して生育阻害実験等を行い、適当な濃度を設定すれば良い。好ましくは終濃度0.01〜1000 mM、さらに好ましくは1〜10 mMである。
本発明において、優良菌株は適当な菌株を評価し決定することができる。固体培地を利用した場合には、任意のコロニーをピックアップし、液体培養を行い、増殖能、カロテノイド生産能を評価することにより評価可能である。
本発明の方法で使用された微生物は従来方法として知られている栄養培地中で培養することができる。培養工程で使用される菌株は、公知方法に従って、画線培養プレートから発酵容器に移すことができる。好適な方法は、寒天平板培地、斜面寒天培地およびフラスコ培養液を用いた方法である。
なお、本発明に用いる培地としては、細菌が増殖しカロテノイドを生産し得るものであればいずれを使用してもよく、炭素源には廃糖蜜、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、デンプン、乳糖、グリセロール、酢酸などが、窒素源にはコーンスティープリカー、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆粕等の天然成分や、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩等やグルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン等のアミノ酸類が、無機塩にはリン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム等のリン酸塩や塩化ナトリウムなどが、金属イオンには塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、塩化第1鉄、塩化第2鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化カルシウム・2水和物、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、塩化マンガンなどが、ビタミン類として酵母エキスやビオチン、ニコチン酸、チアミン、リボフラビン、イノシトール、ピリドキシン等が使用できる。
本発明のアスタキサンチン等のカロテノイドを製造せしめる条件での新規微生物の培養の条件については、いずれの一般方法を用いて実施してもよい。本方法の好適な実施態様としては、培養は培養液中で行うことが好ましい。この液内培養に関しては通常の液内培養で用いられる条件を使用してもよい。好適には、培養温度10から35℃に、培地のpHを6から9の範囲に設定し、20から200時間発酵させるのが好ましい。培養温度については培養初期、中期、後期に区別してそれぞれの段階で温度を変えてもよい。本発明の栄養培地を使用した好適な条件は、培養温度20から28℃、pHが約7.0、培養時間が50から150時間である。
本微生物の培養においては糖濃度を低濃度かつ枯渇しない条件に維持することで、微生物の生育阻害や有機酸などの副生成物の生産が抑制され、カロテノイドが良好に生産される。また流加量の制御においては微生物の呼吸によって生じる炭酸ガスの発生量に比例して流加量を調節することで、培養液中の炭素源を簡便な方法で枯渇を防ぎつつ低濃度に維持できる。
本発明においては微生物を含む培養液中の炭素源濃度を低濃度に維持しつつ培養するものであることから、前記した炭素源等の培地成分を任意の濃度に仕込んで培養を開始し、微生物の増殖により消費されて目的の濃度になった後、別途調製した高濃度の溶液をポンプ等で培養液に流加する。このとき炭素源としてグルコースを用いる場合、好ましい開始時の濃度は0〜20g/Lである。また流加用のグルコース溶液の濃度は、培養液の液量の増加が抑えられるため高濃度であることが好ましく、300〜900g/Lの溶液が使用される。
培養時の炭素源の濃度は以下の流加式(1)に基づいて流加用の溶液を培養液内に送液することにより、目的の濃度に制御される。
F=A×f×(CCO2out−CCO2in) (1)
式(1)中、Fは炭素源流加速度(単位:g/min)を意味する。Aの値は係数(単位:g/L)であり、使用する醗酵槽やガス分析計の機種、そして微生物の種類や生育状態に応じて設定される定数である。本定数は予備実験で求めた値にもとづき、微生物の生育状態に応じて、適宜適切な値に設定を変更していくことが好ましい。一般的に培養の初期では高い値となり、後期では低い値となる。fは発酵槽に供給する空気の通気量(単位:L/min)であり、1分間あたりの空気の流量を示す通気量fの値も任意に設定されるが、通常0.1〜5.0VVM(培養液1Lに対して0.1〜5.0L/min)が好ましく用いられる。CCO2outは排気ガス中の炭酸ガス濃度(単位:容量%)、CCO2inは供給ガス中の炭酸ガス濃度(単位:容量%)を表す。
本発明においては、培養液中の炭素源濃度を低濃度に維持するものであるが、その濃度としては、流加により制御される目的の濃度は炭素源が枯渇せず、また10g/Lを越えない濃度が好ましく、より好ましくは6g/L以下の濃度である。炭素源濃度が10g/Lを超えた状態で培養を行うと有機酸が副成物として生産されることがあり、目的物であるカロテノイドに混入して品質を低下させるため好ましくないだけでなく、多量に蓄積した場合には微生物の生育やカロテノイドの生産を抑制する可能性がある。特に100g/Lを超えると生育やカロテノイドの生産が大きく阻害される。
炭素源の枯渇は、微生物の種類や生育の状態により影響が異なるが、カロテノイド生産菌の培養においてはその培養初期から中期に枯渇が生じると、生育やカロテノイド生産への阻害が生じる可能性がある。枯渇した状態が継続する期間も影響があり、数分間の枯渇であれば大きな影響はないが、10分間以上枯渇してDOが上昇した状態が継続すると、カロテノイドの生産が抑制される。
枯渇が生じたことを見分ける方法については特に限定は無いが、呼吸活性の低下により知ることができる。呼吸活性の低下は、例えば培養液の溶存酸素濃度(DO)の上昇、排ガス中の酸素濃度の上昇や炭酸ガス濃度の低下、pHの上昇として現れる。特にDOを好適な指標とすることができる。炭素源の濃度が十分に維持されている場合には、微生物の呼吸により酸素が消費されるためDOは酸素飽和濃度より低い値に維持されるが、炭素源の枯渇により微生物の呼吸活性が低下してDOが急激に上昇するためである。
枯渇を防ぐため、DOの急激な上昇に連動させて炭素源を追加することもできる。排ガス組成やpHを枯渇の指標として用いる場合にはDOを指標とした場合に比較して応答が遅い傾向があるのでより注意が必要となる。ここで炭素源濃度が0g/Lの場合でも呼吸活性の低下が生じていない場合は枯渇した状態ではない。かかる状況は菌体の消費速度と炭素源の補給速度が一致している場合に生じる。この場合は炭素源濃度が0g/Lであっても、微生物の代謝状態を良好に維持するために必要な炭素源は補給されており、生育およびカロテノイド生産ともに良好に進行する。
本発明においては、培養液から発生する炭酸ガス量を測定し、この測定値に基づき炭素源供給量を制御して培養液中の炭素源濃度を維持してカロテノイド類を効率的に生産することができる。
炭素源の流加の指標とする炭酸ガス濃度の分析法には特に限定は無く、例えば培養液から発生する炭酸ガス量を測定するにおいては、通常市販されている培養装置用の排ガス分析計を用いることができる。
また、培養液から発生する炭酸ガス量の測定値に基づき炭素源供給量を制御するには、例えばデータ処理用の各種装置等を用い、当該データ処理装置が受けた炭酸ガス量測定値信号を適切な制御式に基づいて送液ポンプへ送液量を決定する信号を転送することで制御する等の方法が例示できる。
さらに具体的には、データ処理の効率化のためにパーソナルコンピューター等のデータ処理装置へのデータ転送が可能な装置を例示することができ、また、炭素源の送液量の制御方法にも特に限定はなく、排ガス中の炭酸ガス濃度の分析値より前記した式(1)に基づいて遂次適切な送液量を計算して送液ポンプ流速を修正しつつ連続的に炭素源を供給することもでき、また一定の流速に設定したポンプを間歇的に動作させることにより、任意に設定した期間内の平均送液量が式(1)により求められる目的の送液速度に一致するように制御することもできる。例えば、培養液から発生する炭酸ガス量と培養液への炭素源供給量とが比例するように設定して、培養液中の炭素源濃度を制御する制御方式が例示できる。これらの制御は手動で行うこともでき、パーソナルコンピューターや専用の制御装置を解して自動的に行うこともできる。
本発明におけるカロテノイドの分析方法は、菌体または培養液から安定に効率良く回収されれば特に限定はなく、例えば抽出溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロフォルム、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド等がよい。抽出されたカロテノイドの定量は、各種カロテノイドが分離され定量性に優れる高速液体クロマトグラフィーにより行うことが好ましい。
培養後に、菌体又は培養液からカロテノイドおよび/またはアスタキサンチンを回収するには、たとえば、遠心分離操作等により培養液から菌体を分離し、適当な有機溶媒によりそれぞれから抽出すればよい。有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロフォルム、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド等が挙げられる。好適にはアセトンを例示できる。さらには、液体クロマトグラフィー等を利用して高純度に分離、精製することも可能である。液体クロマトグラフィーの分離原理としてはイオン交換、疎水性相互作用、分子ふるい等を挙げることができる。好ましくは、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィーである。または、超臨界流体抽出によって細胞から抽出する。
あるいは、培養終了後、菌体を培地から、例えば、遠心分離操作、デカンテーションまたはろ過等の方法を用いて分離してもよい。得られた菌体は、使用し易い粘度にまで水を加えてスラリーとする。アスタキサンチン等のカロテノイド類の分解を防ぐためには、このスラリー中適当な添加剤を加えてもよい。添加剤としてはアスコルビン酸等の酸化防止剤を例示することができるが、こららに限定されない。その後、調製スラリーを例えばガラスビーズ、ジルコニアビーズを用いた破砕機または高圧ホモジナイザーを使用して均一化し、後に使用するために乾燥しておく。好ましい乾燥法はスプレー乾燥法である。
この菌体を、例えば、このまま養殖魚等の飼料中へ添加してもよい。または、前述したように極性溶媒等により抽出して使用してもよい。アスタキサンチン等のカロテノイドを抽出した後に残った、色素をほとんど含まない細胞体は、家禽を飼育するうえで理想的な蛋白質およびビタミン類の供給源として使用することができる。
実施例
以下、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)代謝アナログβ−ヨノンに対する増殖能評価
パラコッカス属細菌TSN18E7株を表1において示す液体培地5mlに植菌し、25℃、150rpmで1日間振とう培養を行った。この培養液を表1に示す培地で適当に希釈し、ジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解させたβ−ヨノン(アルドリッチ社製)を添加した表2に示す組成の平板培地にスプレッドした。β−ヨノンは終濃度0.01、1、2、5、10mMとなるようにそれぞれ添加した。次いで、TSN18E7株が播かれた平板培地を25℃で5日間培養した。目視により出現したコロニーをカウントし、β−ヨノン濃度に対するTSN18E7株の増殖能を評価した。結果、TSN18E7株は1mM以上のβ−ヨノン存在下では増殖阻害を引き起こし、コロニーの形成を確認することができなかった。β−ヨノン耐性株を分離するには培地中のβ−ヨノン濃度は終濃度1mMが妥当であると判断した。
Figure 0004984742
(実施例2)変異導入および優良菌株の作製
実施例1と同様に、TSN18E7株を表1において示す培地5mlに植菌し、試験管中、25℃、150rpmで1日間振とう培養を行った。この培養液のうち1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、15,000回転、10分間の遠心分離により菌体を回収した。この菌体をpH7.0の0.1Mリン酸カリウム緩衝液(緩衝液A)1mlに懸濁し、次いで3mg/mlのN‐メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアジニジン(以下NTGと略記する)水溶液10μlを加え、30〜60分間静置した。その後、遠心分離して上清を除去し、緩衝液Aに再懸濁する操作を2回繰返してNTGを除去した。さらに、0.5ml緩衝液Aに菌体を懸濁し、表1に示す培地3mlに植菌して4〜5時間培養した。得られた培養液を適度に希釈し、表2に示す組成の平板培地上に終濃度1mMとなるようにDMSO溶解のβ−ヨノンを添加し、希釈した培養液を塗布して25℃で5日間培養した。生育したコロニーのうち赤色の強いものを選別し、表1に示す組成の培地で25℃、100rpmで7日間振とう培養を行った。この培養液を経時的に分析し、カロテノイド生産性が向上した菌株の選定を行った。
Figure 0004984742
(実施例3)変異株の評価
実施例2で得られた菌株をランダムに選択し、表1において示す培養液5mlに植菌し、25℃、1日間培養後した。次いで、表1に示した組成の培地60mlを100ml容バッフル付三角フラスコに入れ滅菌し、先に培養した培養液2mlを植菌した。25℃で7日間振とう(100rpm)培養後、培養液を適宜抜き取り、濁度(OD660 nm)およびカロテノイドの定量を行った。定量は、まず、培養液1mlを1.5ml容エッペンドルフチューブに入れ、15,000回転、5分間遠心分離して菌体ペレットを得ることにより行った。この菌体に20μlの純水に懸濁し、次いで200μlのジメチルフォルムアミドおよび500μlのアセトンを加え振とうしてカロテノイドを抽出した。この抽出液を15,000回転、5分間遠心分離により残渣を除去後、TSKgel−ODS80TMカラム(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略記する)で各種カロテノイドを定量した。なお、カロテノイドの分離はA液として純水とメチルアルコールの5:95の混合溶媒、B液としてメチルアルコールとテトラヒドロフランの7:3の混合溶媒を用い、1ml/minの流速で、A液を5分間カラムに通過させた後、同じ流速においてA液からB液へ5分間の直線濃度勾配溶出を行い、さらにB液を5分間通過させることにより行った。アスタキサンチン濃度は470nmの吸光度をモニターし、既知濃度のアスタキサンチン試薬(シグマ社製)で作成した検量線より濃度を算出した。算出後、アスタキサンチン生産量を評価し、変異株のなかからカロテノイド生産量および増殖能が向上した新規変異株TSTT001株(受託番号FERM P−20670)を得た。
図1にN−81106株、変異導入前の株であるTSN18E7株、TSTT001株の培養経過を示した。TSTT001株はTSN18E7株に対して最大OD値が約2倍向上した。さらに、TSTT001株は野生株であるN−81106株より高い増殖性を示した。また、図2および図3に培養144時間および168時間のカロテノイド生成パターン(HPLCチャート)を示す。このHPLCチャートよりカロテノイド生成量を定量できる。本実験操作により、培地1Lあたりアスタキサンチンは最大20.9mg、総カロテノイドは最大31.5mg生産することができた。なお、総カロテノイドとはアスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、β−カロテン、フェニコキサンチン、アドニキサンチンである。
(実施例4)発酵槽での新規微生物の培養およびカロテノイドの定量
表3に示す培地300mlにTSTT001株を植菌し、500ml容バッフル付き三角フラスコを用いて25℃、100rpmで1日間振盪培養を行った培養液を前々培養液とした。次いで、表4に示す培地100mlにこの前々培養液を3ml植菌し、500ml容バッフル付き三角フラスコを用いて25℃、100rpmで1日間振盪培養を行った。この培養液を前培養液とした。次いで、表5に示す培地3.0Lを全容5.0L発酵槽(エイブル社製)に入れ、121℃、20分間で滅菌後、得られた前培養液を40ml植菌し約120時間培養した。発酵槽の操作は次のようにした。まず、発酵槽の設定温度は22℃、pHは7.0〜7.2とし、pHの調整は2Nの水酸化ナトリウムおよび15%のアンモニア水溶液を適宜添加することにより行った。また、発酵槽の攪拌速度は、培養開始時には300rpmとし、培養が進むにつれて徐々に攪拌速度を上げ、培養120時間において370rpmまで上昇させた。培養過程に発生する炭素源不足は、60%グルコースを適宜添加することにより補った。グルコース濃度は、10g/Lで培養を開始し、5g/L以下に減少後にグルコースの追加を開始して、0.5〜5g/Lとなるように調節した。
Figure 0004984742
Figure 0004984742
Figure 0004984742
図4にOD、アスタキサンチン生成量および総カロテノイド生産量の経時変化を示す。図の通り、培養の経過時間と共に、総カロテノイド、アスタキサンチンの生産量が増加し、培養120時間時点での各カロテノイドの量を定量すると、表6のようになる。本実験操作により、培地1Lあたりアスタキサンチンは250mg、カロテノイドは720mgを生産することができた。
Figure 0004984742
(実施例5)パラコッカス属細菌TSTT001株への変異導入および優良菌株の作製
実施例1と同様に、TSTT001株を表1において示す培地5mlに植菌し、試験管中、25℃、150rpmで1日間振とう培養を行った。この培養液のうち1mlを1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、15,000回転、10分間の遠心分離により菌体を回収した。この菌体をpH7.0の0.1Mリン酸カリウム緩衝液(緩衝液A)1mlに懸濁し、次いで3mg/mlのN‐メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアジニジン(以下NTGと略記する)水溶液10μlを加え、30〜60分間静置した。その後、遠心分離して上清を除去し、緩衝液Aに再懸濁する操作を2回繰返してNTGを除去した。さらに、0.5ml緩衝液Aに菌体を懸濁し、表1に示す培地3mlに植菌して4〜5時間培養した。得られた培養液を適度に希釈し、表2に示す組成の平板培地上に希釈した培養液を塗布して25℃で5日間培養した。生育したコロニーのうち赤色の強いものを選別し、表1に示す組成の培地で25℃、100rpmで7日間振とう培養を行った。この培養液を経時的に分析し、カロテノイド生産性が向上した菌株の選定を行った。
実施例3と同様にアスタキサンチン等のカロテノイド生産量を評価し、TSTT001株より生産性が向上した変異株のなかからTSTT031株(受託番号:FERM P-20689)、TSTT052株(受託番号:FERM BP-10754)を得た。表7に、培養終了後のアスタキサンチン等のカロテノイド生産量を示す。表7の通り、TSTT031株、TSTT052株は親株であるTSTT001株より有意にアスタキサンチン等のカロテノイド生産が向上した優良株である。

Figure 0004984742
(実施例6)TSTT052の培養において炭酸ガス濃度に比例してグルコース供給量を制御することでグルコースを0〜6g/Lに維持した流加培養
表8に示した組成の培地300mlを500ml容のバッフル付き三角フラスコに入れ121℃、20分間で滅菌後、N−81106株の変異株の一つであるTSTT052株(受託番号:FERM BP-10754として寄託)を植菌し、25℃で1日間、毎分100回転の振とう速度で前々培養を行なった。
Figure 0004984742
次いで表9に示した組成の培地100mlを500ml容のバッフル付き三角フラスコに入れ121℃、20分間で滅菌し、上記培養液5mlを植菌して25℃で約18時間、毎分100回転の振とう速度で前培養した。
Figure 0004984742
さらに、表10に示す組成の培地からグルコースと金属塩を除いたもの約1.4Lを3Lの発酵槽に入れ、121℃、20分間で滅菌後、グルコースと金属塩を補充し、さらに前培養の培養液90mlを添加し本培養を開始した。培養温度は22℃、pHは7.0〜7.4とした。培養時pHは微生物の増殖に伴って低下するので10%アンモニア水の添加により所定範囲に制御した。また空気を1.8L/minの速度で通気した。炭素源の流加には700g/Lのグルコースを使用した。培養装置はエイブル社のBMS−03PIを、排ガス分析装置はエイブル社のDEX−2562を使用した。
Figure 0004984742
グルコース濃度を維持するため、パーソナルコンピューターを介し、エイブル社の培養制御プログラムを用いて、流加式(1)に基づいて流加ポンプを間歇的に動作させることにより行った。流加にはワトソン・モーロー社の定量ポンプ101U(低速型)を使用し、流速は0.3g/minに設定した。また式(1)のAの値は培養開始時から48時間までを9.5、以降は8.0に設定した。培養中はグルコース分析計(装置名;YSI社2700)を用いて定期的にグルコース濃度を測定した。微生物の増殖は培養液の660nmの濁度により測定した。120時間培養を行ったところ、培養液の濁度は360に達した。予め求めた濁度と菌体密度の相関式より、菌体収量は90g/Lと求められた。また、グルコース濃度は培養の期間を通じて約3g/Lに維持されたが、120時間目において5g/L程度に蓄積する傾向が認められたため、この時点で一度流加を停止し、0g/Lまで消費させた後に流加を再開した。この培養の結果を図5に示した。
培養24時間目から培養終了までの期間中、溶存酸素濃度は0%飽和付近に維持された(図6)。このことは、培養中にグルコースの枯渇なく維持されたことを示す。
培養期間中の排ガス中の炭酸ガス濃度と流加速度の推移を図7に示した。なお、ここでは流加速度を5分間の平均流速として示した。流加速度はCO濃度の推移と良好な一致を示した。また、図8にはグルコース消費速度の推移も示した。グルコースの流加速度の推移は消費速度の推移によく一致していた。この結果と図3に示したグルコース濃度の推移より、本方法によるグルコース濃度制御の有効性を確認した。
培養終了後のカロテノイドの生成量を分析すると、培養液1LあたりAxが538mg生産されていたほか、アドニキサンチンが(69mg)、フェニコキサンチン(361mg)、カンタキサンチン(261mg)、エキネノン(119mg)そしてβ−カロテン(7mg)が生成していた。そのほかにもゼアキサンチン等と推定されるカロテノイドが検出されたが、少量であり同定・定量できなかった。これらの合計である総カロテノイドの生産量は培養液1Lあたり1320mgだった。培養上清中の有機酸生成量を分析すると、0.03 g/Lの乳酸のみが検出されたにすぎなかった。
すなわち、本願発明の新規菌株であるTSTT052株の培養において、6g/L以下のグルコース存在下で培養を開始し、培養装置外部から高濃度のグルコースを流加しつつ培養し、かつその流加速度を排ガス中の炭酸ガス濃度に比例制御することで、培養中にグルコース消費速度の変化に追随して流下できるためグルコース濃度を一定に維持することが可能であり、その結果後述の比較例に示すような過剰なグルコースによる生産阻害を回避して、高収量にアスタキサンチンを初めとするカロテノイド類を生産することが可能であることが判明した。
(比較例1)高濃度グルコース(130g/L)での回分培養
培養開始時のグルコース濃度を130g/Lとし、流加を行わなかったことを除いて、実施例6と同様に培養を行った。この際の微生物の増殖とグルコース濃度の推移を図9に、溶存酸素濃度の推移を図10に示すが、増殖速度が顕著に低下し、150時間の培養後の濁度は100程度(乾燥菌体25g/Lに相当)に留まった。また、Ax生産量は75mg/Lに留まり、そのほか、フェニコキサンチン(91mg/L)、カンタキサンチン(67mg/L)、エキネノン(58mg/L)が検出されたのみであり、いずれのカロテノイドも低収率にしか得られなかった。また培養液中には約1g/Lの酒石酸が副生成物として蓄積していた。本結果より、高濃度のグルコースにより、本微生物の生育、カロテノイド生産ともに阻害されるだけでなく、製品の品質低下の原因となる有機酸の生成が促進することが判明した。すなわち、当該明細書に開示の方法でグルコース濃度を低濃度に維持して培養することの有効性が確認された。
(実施例7)天然株の培養において炭酸ガス濃度に比例してグルコース供給量を制御することでグルコースを0〜6g/Lに維持した流加培養天然株(N−81106)を用いたことを除き実施例3と同様に培養を行った。80時間培養後の660nmの濁度は150(乾燥菌体50g/Lに相当)だった。カロテノイドの生産量は、アスタキサンチン52g/L、アドニキサンチン48g/L、フェニコキサンチン5g/L、カンタキサンチン4g/L、エキネノン2g/Lに過ぎなかった。培養液のグルコース濃度は実施例3と同様に0〜6gの間に維持された。実施例3との比較すると天然株の生産性は低いものであり、本願発明の新規菌株であるTSTT052株が著しく高いカロテノイド生産性を有することが確認された。
しかしながら、後述の比較例2に示す天然株を高濃度のグルコース存在下で回分培養した場合に比較した場合、カロテノイド生産性は約1.6倍高いものであった。即ち、天然株の培養においても、本願発明に開示する方法でグルコース濃度を0〜6g/Lに維持することで生産性が向上することが確認された。
(比較例2)天然株の回分培養
天然株(N−81106)を用い、グルコース濃度を50g/Lとしたことを除き比較例1と同様に培養を行った。80時間培養を行ったのちの660nmの濁度は90(乾燥菌体30g/Lに相当)にすぎなかった。また、カロテノイド生産量は、アスタキサンチン29g/L、アドニキサンチン22g/L、フェニコキサンチン2g/L、カンタキサンチン3g/L、エキネノン1g/Lに過ぎなかった。天然株においても高濃度のグルコースは増殖のみならずカロテノイドの生産を阻害することが確認された。すなわち、本明細書に開示する流加方法を適用することで、TSTT052株には及ばないものの、野生株においても生産性が向上することが確認された。
本発明によれば、アスタキサンチンをはじめとするカロテノイドを効率よく製造することが可能になる。アスタキサンチンをはじめとするカロテノイドは飼料・食品用色素、抗酸化剤として有用である。
野生株であるN−81106株、親株であるTSN18E7と対比した本菌株のOD経時変化を示すグラフ。 培養144時間のカロテノイド生成パターンを示すHPLCチャート。 培養168時間のカロテノイド生成パターンを示すHPLCチャート。 アスタキサンチン生成量および総カロテノイド生成量の経時変化を示すグラフ。 グルコース濃度を0〜6g/Lに自動制御した培養パターンにおける微生物の増殖とグルコース濃度を示す図であり、図中、X軸(横軸)は時間(単位は時間)を示し、Y軸(縦軸)の内、●は微生物の増殖量を示す660nmにおける吸光度(単位は任意単位)、○はグルコース濃度(単位はg/L)を示す。 グルコース濃度を0〜6g/Lに自動制御した培養パターンにおける溶存酸素濃度を示す図であり、図中、X軸(横軸)は時間(単位は時間)を示し、Y軸(縦軸)は溶存酸素濃度(DO)(単位は容量%)を示す。 グルコース濃度を0〜6g/Lに自動制御した培養パターンにおける排ガス中の炭酸ガス濃度とグルコース流加速度を示す図であり、図中、X軸(横軸)は時間(単位は時間)を示し、Y軸(縦軸)の内、実線(図中の下側)はグルコースの流加速度(単位はg/L・hr)、破線(図中の上側)は炭酸ガス濃度(単位は容量%)を示す。 グルコース濃度を0〜6g/Lに自動制御した培養パターンにおけるグルコース消費速度を示す図であり、図中、X軸(横軸)は時間(単位は時間)を示し、Y軸(縦軸)のうち●はグルコース消費速度(単位はg/L・hr)、破線は●の分布から推測された真のグルコース消費速度(単位はg/L・hr)を示す。 グルコースを高濃度(130g/L)として回分培養を行った場合の培養パターンにおける微生物の増殖とグルコース濃度を示す図であり、図中、X軸(横軸)は時間(単位は時間)を示し、Y軸(縦軸)の内、●は微生物の量を示す660nmにおける吸光度(単位は任意単位)、○はグルコース濃度(単位はg/L)を示す。 回分培養における溶存酸素濃度を示す図であり、図中、X軸(横軸)は時間(単位は時間)を示し、Y軸(縦軸)は溶存酸素濃度(DO)(単位は容量%)を示す。

Claims (7)

  1. ロテノイド生産性パラコッカス属細菌TSTT052株(受託番号FERM BP-10754)。
  2. カロテノイド類生産能を有する微生物を培養してカロテノイド類を製造する方法において、TSTT052株(受託番号FERM BP-10754)を含む培養液中の炭素源濃度を低濃度に維持しつつ培養することを特徴とするカロテノイド類の生産方法。
  3. 培養液中の炭素源濃度を、10g/L以下に維持することを特徴とする請求項2に記載のカロテノイド類の生産方法。
  4. 培養液中の炭素源濃度を、培養中のいずれの時期においても炭素源の枯渇が生じない濃度に維持することを特徴とする請求項2または3に記載のカロテノイド類の生産方法。
  5. 炭素源の枯渇が培養液中の炭素源濃度として0g/Lであり、かつ培養する微生物の呼吸活性の低下を伴う状態であることを特徴とする請求項4に記載のカロテノイド類の生産方法。
  6. 培養液から発生する炭酸ガス量を測定し、当該測定値に基づき炭素源供給量を制御して培養液中の炭素源濃度を維持することを特徴とする請求項25のいずれかに記載のカロテノイド類の生産方法。
  7. 培養液から発生する炭酸ガス量と培養液への炭素源供給量とが比例するように設定して、培養液中の炭素源濃度を制御することを特徴とする請求項26のいずれかに記載のカロテノイド類の生産方法。
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