本発明は、紙基材と、架橋型ポリオレフィン系樹脂層と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とがこの順に積層され、かつエンボスを有する、エンボス付き工程離型紙である。架橋型ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン樹脂と同等の成形条件で成形でき、かつ架橋によって耐熱性、低温特性などの熱的特性、耐油性などの化学的特性、耐衝撃性、耐摩擦性、クリープ特性などの機械的特性が向上する。しかも、温水中に浸漬し、または高温多湿の雰囲気にさらし、水分と接触させることで架橋させる。したがって、本発明では、この架橋型ポリオレフィン系樹脂を剥離層に含めることで、特定の工程を必要とせずに、エンボス加工性および耐熱性に優れる工程剥離紙を製造することができる。本発明の好適な態様の一例を示す図1を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
(1)エンボス付き工程剥離紙
本発明のエンボス付き工程剥離紙は、図1に示すように、熱硬化シリコーン層(10)と、電離放射線硬化樹脂層(20)と架橋型ポリオレフィン系樹脂層(30)と紙基材(40)とをこの順に積層し、エンボス加工されたものである。架橋型ポリオレフィン系樹脂層(30)は、紙基材への接着性およびエンボス賦型性に優れ、電離放射線硬化樹脂層(20)は機械的強度が強いため賦型崩れを防止して工程剥離紙の再使用を可能とする。なお、最上層に熱硬化シリコーン層(10)を設けることで剥離性が確保される。
(2)紙基材
本発明の紙基材は、架橋型ポリオレフィン系樹脂層(30)、電離放射線硬化樹脂層(20)および熱硬化シリコーン層(10)を積層する工程に耐える強度を有し、合成皮革の塗工・形成時の工程用剥離紙としての耐熱性、耐薬品性などの性質を有し、かつエンボス加工が容易であることが必要である。クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。合成皮革の加工適性のためには、耐久性、耐熱性に優れる点で天然パルプからなる紙を使用することが好ましい。
本発明において、基材層として使用する紙としては、秤量15〜300g/m2、好ましくは100〜180g/m2である。この範囲であれば、エンボス加工が容易である。また、紙は、中性紙であることが好ましい。硫酸バンドなどを含む酸性紙は、合成皮革の製造工程で繰り返し使用されると熱劣化が発生し、このため早期に再使用が困難となる場合がある。中性紙であれば、このような熱劣化を防止することができる。
また、本発明で使用する紙は、サイズ剤として、中性ロジンやアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸を使用してもよく、定着剤としてカチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン等を使用してもよい。また、上記理由により硫酸バンドを使用しないことが最も好ましいが、硫酸バンドを使用してpH6〜9の中性領域で抄紙することも可能である。その他、必要に応じて上記のサイズ剤のほか、定着剤の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
(3)架橋型ポリオレフィン系樹脂層
本発明の架橋型ポリオレフィン系樹脂層を構成する架橋型ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリオレフィン系重合体を常法により架橋させて得ることができる。用いられるポリオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、2,2−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘキセン、2,2−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、2,2,3−トリメチル−1−ブテン、1−オクテン、2,2,4−トリメチル−1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体や、これらα−オレフィンと他の重合性単量体の共重合体が挙げられる。
他の重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン等のビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド等が挙げられる。これらの重合性単量体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィン系重合体を架橋させる方法としては、例えば、(i)ポリオレフィン系重合体をラジカル発生剤を用いて化学架橋させる方法、(ii)電子線等を用いて照射架橋させる方法、(iii)分子中に不飽和結合又はアルコキシシラン基等を有する架橋型オレフィン重合体を触媒作用により熱又は水で架橋させる方法等が挙げられる。これらの中でも、特殊で高価な架橋設備を必要としないこと等の観点から、(iii)の方法が好ましい。
上記(iii)の方法で用いられる架橋型オレフィン重合体は、分子中に重合性二重結合及び/又はアルコキシシラン基を含有し、該重合性二重結合及び/又はアルコキシシラン基によりポリマー同士が架橋された高分子である。本発明においては、ビニルシラン化合物をポリオレフィン系重合体にグラフト共重合させて得られる高分子や、ビニルシラン化合物とオレフィンをランダム共重合させて得られる高分子等のビニルシラン変性オレフィン重合体を使用するのが好ましい。ビニルシラン変性オレフィン重合体の例としては、特公昭48−1711号、特開昭59−36115号、特開昭55−9611号、特開平11−181187号公報等に記載された重合体が挙げられる。より具体的には、例えば、リンクロンの商品名(三菱化学(株)製)で市販されている各種ビニルシラン変性オレフィン重合体を使用することができる。
なお、架橋型ポリオレフィン系樹脂を硬化させる方法としては特に制限なく、例えば、室温で放置する方法、所定温度に加熱する方法、所定温度の乾燥気体を樹脂組成物の層の表面に送り込む方法、シラノール縮合触媒の存在下に架橋させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、ビニルシラン変性オレフィン重合体を用いる場合には、シラノール縮合触媒を使用する方法が好ましい。シラノール縮合触媒を使用することにより、水或いは大気中の湿気で容易に架橋反応を進行せしめることができ、所望のゲル分率の架橋型ポリオレフィン系樹脂層を形成することができる。従って、前記架橋型ポリオレフィン系樹脂層としては、少なくともビニルシラン変性オレフィン重合体とシラノール縮合触媒とを含有することが好ましい。
用いられるシラノール縮合触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト等の金属カルボン酸塩、チタン酸エステル及びキレート化物等の有機金属化合物、有機塩基、無機酸、有機酸等を用いることができる。より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸等の無機酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸等の有機酸等が挙げられる。なお、架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を硬化させる際に反応系にシラノール縮合触媒を存在させるには、(a)事前にシラノール縮合触媒をポリオレフィン系重合体に溶融混練したマスターバッチとして配合する方法、(b)シラノール縮合触媒を製造時そのまま直接樹脂に配合する方法等が挙げられる。シラノール縮合触媒の使用量は、ビニルシラン変性オレフィン重合体100質量部に対して、通常0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部の範囲である。
また、ビニルシラン変性オレフィン重合体のゲル分率(架橋度)は40%以上が好ましく、45%以上がより好ましい。ゲル分率が40%以上である架橋型ポリオレフィン樹脂を含有する架橋型ポリオレフィン系樹脂層は、長期間に亘って優れた強度を発揮する。
ゲル分率(%)は、次のようにして求めることができる。(1)架橋型ポリオレフィン系樹脂層部分を約50mg採取し、該試料の質量を精密に秤量する。この値をA(mg)とする。次に、(2)該試料の気泡を潰して試験管に入れ、キシレン10ml中に浸し、該試験管を120℃のオイルバス中に24時間放置する。(3)その後、200メッシュのステンレス製金網を有する容器でろ過し、金網上の不溶解部分を取り出し、80℃で4時間真空乾燥(圧力10mmHg)した後、不溶解部分の乾燥質量B(mg)を測定する。(4)得られたA及びBを、式:ゲル分率(%)=(B/A)×100に代入する。
架橋型ポリオレフィン系樹脂の硬化後のゲル分率は、架橋型ポリオレフィン系樹脂のビニルシラン化合物のグラフト率、シラノール縮合触媒の種類、量、架橋させる際の条件(温度、時間)等を変えることにより、調節することができる。
また前記架橋型ポリオレフィン系樹脂には、所望により添加剤をさらに添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重金属不活性化剤、金属石鹸、エポキシ系化合物、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤、造核剤、可塑剤、充填剤、発泡剤等が挙げられる。
前記架橋型ポリオレフィン系樹脂の硬化前のメルトフローレイト値(MFR値)は、5〜40g/10分の範囲であるのが好ましい。この範囲のMFR値を有する架橋型ポリオレフィン系樹脂を用いることにより、容易かつ均一な厚みの架橋型ポリオレフィン系樹脂層を形成することができる。ここで、MFR値(g/10分)とは、一定温度で溶融した架橋型ポリオレフィン系樹脂を規定の長さと径の円形ダイから一定荷重で押出すとき、10分間の流量をグラム数で表した価であり、メルトインデックスとも称されるものである。MFR値は、JISK6922−2に準拠(温度190℃、荷重2.16kgの条件)して測定することができる。
上記架橋型ポリオレフィン系樹脂の塗工・成形法としては、例えば押出し成形法が挙げられる。押出成形法としては、例えば、ブロー成形法、射出ブロー成形法、パイプ成形法、フィルム成形法、シート成形法等が挙げられる。より具体的には、基材シート上に、樹脂組成物の溶融物を公知の成形機を用いて、押出成形(溶融押出成形)する方法が好ましい。押出成形する際の成形温度は、成形する樹脂の溶融温度にもよるが、通常100〜300℃、好ましくは140〜240℃の範囲である。
架橋型ポリオレフィン系樹脂層の厚さは、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。3μmより薄いと合成皮革製造後の剥離性が低下する場合があり、一方、40μmを超えると工程剥離紙のカールが大きくなる場合がある。
架橋型ポリオレフィン系樹脂層は、後記する電離放射線硬化樹脂層との接着性に優れるため、架橋型ポリオレフィン系樹脂層に表面処理などを行うことなく、接着させることができる。なお、本発明では、架橋型ポリオレフィン系樹脂層が表面処理層を有するものであってもよい。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
(4)電離放射線硬化樹脂層
本発明で使用する電離放射線硬化樹脂層は、イソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有し、かつイソシアネート化合物と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上の反応生成物、またはイソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有し、かつイソシアネート化合物と反応し得る(メタ)アクリル化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、かつイソシアネート基と反応し得る化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上の反応生成物、からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである。なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味し、(メタ)アクリル化合物とはアクリル化合物及び/又はメタクリル化合物を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
本発明で用いるイソシアネート化合物とは、少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物であり、好ましくは2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。例えば、フェニルイソシアネート、キシリルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族イソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5’−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、さらには、トリレンジイソシアネートの三量体や、トリレンジイソシアネートと活性水素化合物、例えばトリメチロールプロパンとの3:1(モル比)の反応生成物などを用いることができる。また、好ましくは非芳香族性炭化水素環に結合したイソシアネート基を有する化合物、いわゆる脂環式イソシアネート化合物の三量体や活性水素化合物との反応生成物などを用いる。脂環式イソシアネート化合物としては、市場で入手し易いイソホロンジイソシアネートを用いるのが好ましいが、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることもできる。
イソホロンジイソシアネートの三量体や、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1(モル比)の反応生成物は、本発明で用いるイソシアネート化合物として好ましく、中でもイソホロンジイソシアネートの三量体は更に好ましい。イソシアネート化合物はいくつか併用してもよい。
(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート化合物と反応し得る(メタ)アクリル化合物としては、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル化合物が挙げられる。以下、「(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート化合物と反応し得る(メタ)アクリル化合物」を「特定(メタ)アクリル化合物」と略称することがある。
イソシアネート化合物と、水酸基を有する特定(メタ)アクリル化合物との反応生成物は通常「ウレタンアクリレート」と呼称される。また、イソシアネート化合物と、カルボキシル基を有する特定(メタ)アクリル化合物との反応生成物は、アミド基を介して重合性の(メタ)アクリロイル基が結合した構造の化合物となる。以下、これらにつき説明する。
水酸基を有する特定(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸とポリヒドロキシ化合物との反応生成物であるヒドロキシエステルが代表的な化合物である。更にはこのヒドロキシエステルの水酸基に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド、カプロラクトン等を付加させた化合物などが挙げられる。更にはこのヒドロキシエステルの水酸基の一部をモノカルボン酸によりエステル化した化合物も挙げられる。
そのいくつかを例示すると、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、更にはこれらのカプロラクトン付加物、エチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、エチレンオキシド・プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
また、エポキシアクリレートの水酸基を利用することもできる。具体的な化合物としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の1分子中に2個のエポキシを有する化合物とアクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレートを挙げることができる。これらの成分は、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するので架橋密度を向上させる作用もある。
カルボキシル基を有する特定(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸そのものや、上記のヒドロキシ(メタ)アクリレートに、カルボン酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などを反応させた化合物などが挙げられる。
そのいくつかを例示すると、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。
イソシアネート化合物と特定(メタ)アクリル化合物との反応に際しては、イソシアネート化合物と反応し得る他の活性水素化合物を併用することもできる。即ち、(メタ)アクリロイル基を有しておらず且つイソシアネート基と反応し得る化合物を併用するものである。このような活性水素化合物を目的に応じて選択し併用すると、得られる硬化性組成物の軟化点が高くなったり、最終的に得られる硬化塗膜の可撓性が増加する。このような活性水素含有化合物としては通常は水酸基含有化合物が用いられるが、アミノ基含有化合物やカルボキシル基含有化合物などを用いることもできる。
水酸基含有化合物としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−ヒドロキシエチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有する多価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコールなどが用いられる。
また、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール等の高分子量ポリオールを用いることもできる。ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノールAやエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有するポリオール類、或いは、エチレンジアミン、トルエンジアミン等のポリアミン類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させたもの及びテトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸等のジカルボン酸、又はトリメリット酸、ピロメリット酸等のトリもしくはテトラカルボン酸などのカルボン酸類と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール、又はビスフェノールA、ビスフェノールF等の芳香族系ポリヒドロキシ化合物との重縮合反応によって得られるものが挙げられる。
ポリエーテルエステルポリオールとしては、ポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させたものや、エーテル基含有ジオール又はそれと他のグリコールとの混合物に、前記のジカルボン酸又はそれらの無水物を反応させたもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、多価アルコールとジメチル、ジエチル等のジアルキルカーボネートの脱アルコール縮合反応、多価アルコールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、多価アルコールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応等で得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。この縮合反応に使用される多価アルコールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、あるいは、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを挙げることができる。
また、アミノ基含有化合物(アミン化合物)としては、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノアルコールも活性水素含有化合物として用いることができる。
また、カルボキシル基含有化合物(有機カルボン酸)としては、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
これらの特定(メタ)アクリル化合物以外の活性水素化合物は、イソシアネート化合物と特定(メタ)アクリル化合物との反応生成物の特性を損わないように、特定(メタ)アクリル化合物の反応性基に対する活性水素化合物の反応性基のモル比が50%以下、特に40%以下となるように用いるのが好ましい。
イソシアネート化合物と特定(メタ)アクリル化合物との反応は、好ましくは溶媒を用いて行う。溶媒を用いることにより反応の制御が容易となり、かつ反応生成物の粘度を調節できる。溶媒としてはこの種の反応に常用の不活性溶媒、たとえばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。
反応は反応生成液中における反応生成物の濃度が30〜80質量%となるように溶媒に反応原料を加え、必要であれば反応原料に対して0.01〜0.1質量%の有機錫系触媒の存在下で50〜80℃で反応させればよい。イソシアネート化合物と特定(メタ)アクリル化合物及び場合により併用される他の活性水素化合物との仕込比率は、イソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対し、これと反応し得る特定(メタ)アクリル化合物及び他の活性水素化合物の官能基が0.5モル以上、特に1モル以上となるようにするのが好ましい。反応時間は通常3〜8時間程度であるが、分析により反応生成液中のイソシアネート基の含有量を追跡し、これが目標値に達した時点で反応を停止させるのが好ましい。
本発明の電離放射線硬化性組成物としては、このようにして調製されたイソシアネート化合物と特定(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものであるが、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。電離放射線硬化性組成物の軟化点が40℃より低いと、硬化前の塗膜にブロッキングを生じたり、エンボス賦型性が不良となる。なお、本発明に規定する軟化点の測定は、後記する実施例に記載する方法で測定するものとする。
また、本発明の電離放射線硬化性組成物中の(メタ)アクリル基は、オレフィン性二重結合(−C=C−)の分子量を24と計算して、5質量%以上が好ましく、さらに好ましくは10質量%以上である。(メタ)アクリル基含有量が少ないと、電離放射線硬化後の架橋密度が低下し、耐溶剤性、耐熱性等が不足し、剥離不良、塩ビ製膜時の賦型ダレなどが発生する。なお、オレフィン性二重結合の含有量は、IR、NMR等により測定されるものであるが、製造工程が既知の場合は仕込み量から計算によっても求められる。
本発明で用いられる電離放射線硬化性組成物は、イソシアネート化合物と特定(メタ)アクリル化合物との反応生成物それ自体100%で使用してもよいが、該反応生成物の硬化特性を改質するために、任意成分として、造膜性を有する樹脂、シリコーン化合物、無機顔料などを含有させてもよい。
造膜性を有する樹脂としては、メタクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどを用いることができる。また、これらの造膜性を有する樹脂は、反応性基を有していてもよいし、有していなくてもよい。反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、フェノール基、ヒドロキシル基等が挙げられる。基材への密着性、製膜性などからメタクリル樹脂が好ましいが、エンボス加工性の観点からガラス転移温度(Tg)が40℃以上のメタクリル樹脂が好ましく、さらにはTgが50℃以上が好ましく、通常のメタクリル系化合物の他に無水マレイン酸、メタクリル酸、スチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート、マレイミド基含有メタクリレート、イソボルニル基含有メタクリレート等を共重合成分として使用することもできる。
造膜性を有する樹脂の使用量は、上記反応生成物からなる電離放射線硬化性組成物中の含有量として70質量%以下、好ましくは1〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%である。造膜性を有する樹脂が70質量%を超える場合、すなわち上記反応生成物が30質量%より少ないと電離放射線硬化後の耐熱性が不十分となる場合がある。造膜性を有する樹脂を適量配合することにより、基材への密着性、造膜性等が改良される効果がある。
本発明で用いるシリコーン化合物は、反応性であっても非反応性であってもよい。反応性シリコーン化合物としては、(メタ)アクリロイル変性、ビニル変性、アミノ変性、メルカプト変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、フェノール変性、アルコール変性のシリコーン化合物が挙げられる。
具体的な化合物としては、(メタ)アクリロイル変性シリコーンとしては、X−22−164B、X−22−164C(信越化学工業社製)、FM−0711,FM−0721,FM0725(チッソ社製)、ビニル変性シリコーンとしては、XF40―A1987(東芝シリコーン社製)、アミノ変性シリコーンとしては、TSF4700、TSF4702、TSF4705(東芝シリコーン社製)、X−22−161AS、KF393,KF864(信越化学工業社製)、BY16−208、SF8417(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メルカプト変性シリコーンとしては、X−22−167B、KF−2001(信越化学工業社製)、エポキシ変性シリコーンとしては、YF3965,TSF4730(東芝シリコーン社製)、KF105,X−22−169AS(信越化学工業社製)、SF8421、SF8413(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、カルボキシル変性シリコーンとしては、TSF4770、XF−A9248(東芝シリコーン社製)、X−22−162A、X−22−3701E(信越化学工業社製)、SF8418、BY16−750(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、フェノール変性シリコーンとしては、X−22−165B(信越化学工業社製)、BY16−752、BY16−150C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、アルコール変性シリコーンとしては、TSF4750、TSF4751(東芝シリコーン社製)、BY16−848、BY16−201(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、FM−4411,FM−4425、FM−0411,FM−0425,FM−DA21(チッソ社製)等が挙げられる。
また、これらの反応性シリコーンを用いて合成したシリコーン化合物を用いても良い。合成したシリコーン化合物にはさらに反応性基を有していてもよいし、有していなくてもよい。反応性シリコーンを用いて合成するシリコーン化合物としては、(メタ)アクリロイル変性シリコーンを用いたシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーおよびシリコーン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性シリコーンを用いたシリコーン変性エポキシアクリレート、アルコール変性シリコーンを用いたシリコーン変性ウレタンポリマーやシリコーン変性ウレタンアクリレート等が挙げられる。中でもシリコーン変性ウレタンアクリレートが特に好ましい。
非反応性シリコーン化合物としては、上記の反応性基を有しないシリコーン化合物が挙げられる。具体的な化合物としては、ジメチルポリシロキサンとしてはTSF451、YF3800(東芝シリコーン社製)、KF96A(信越化学工業社製)、SH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メチルフェニルポリシロキサンとしてはTSF433,TSF434(東芝シリコーン社製)、SH510、SH702(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ポリエーテル変性シリコーンとしてはTSF4440、TSF4445(東芝シリコーン社製)、KF―351、KF−353(信越化学工業社製)、SH3746、SH3748(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、SS−2803、SS−2801(日本ユニカー社製)等が挙げられる。
これらのシリコーン化合物は、単独で用いても2種類以上用いてもよく、反応性、非反応性のものを両方用いてもよい。また他成分との相溶性等の観点から、シリコーン化合物は芳香族、脂環族、イソシアヌル酸骨格等の環構造を有するものが好ましい。環構造を有するシリコーン化合物としては、フェニル基を側鎖に導入したメチルフェニルシリコーン等のシリコーン化合物や、反応性シリコーンを用いて環構造を導入する方法も挙げられる。反応性シリコーンを用いて環構造を導入する方法としては、(メタ)アクリロイル変性シリコーンとスチレンを共重合してフェニル基を導入したシリコーン化合物、シリコーン変性ウレタンポリマーやシリコーン変性ウレタンアクリレートにジフェニルメタンジイソシアーネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの単量体やその三量体等を用いて環構造を導入したシリコーン化合物等が挙げられる。これらの環構造を有するシリコーン化合物は、さらに反応性基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
電離放射線硬化性組成物中におけるシリコーン化合物の含有量は、0〜20質量%、好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜15質量%である。シリコーン化合物が20質量%より多いと塗膜がべとついたり、コストが高くなったりする場合がある。ただし、電離放射線硬化性組成物中の上記反応生成物の含有量が30質量%を下回ってはいけない。
更に、本発明で使用する電離放射線硬化性組成物には、上述の造膜性を有する樹脂やシリコーン化合物に加えて、反応性モノマー、反応性オリゴマー、顔料、光重合開始剤、重合禁止剤、着色剤、界面活性剤などをその特性を害しない範囲で含有させてもよい。
反応性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを用いるのが好ましい。
反応性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどを用いるのが好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどを用いるのが好ましい。
また、塗工しやすい粘度になるように、適宜溶媒を加えて塗工する。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。
また、塗工しやすい粘度になるように、適宜溶媒を加えて塗工する。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。
この電離放射線硬化性組成物は、固形分100質量部に対して10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工してもよい。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば、25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与するとともに、これを乾燥する工程においてシリコーン化合物の適正な表面への移行を可能にする。
塗工方式としては、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンコート、ナイフコート、エアナイフコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法が用いられ、架橋型ポリオレフィン系樹脂膜上に塗工後、乾燥および加熱して、乾燥炉で溶剤を蒸発させて電離放射線硬化性組成物を熱硬化させる。この温度は、電離放射線硬化性組成物の軟化点より高く、かつ電離放射線硬化性組成物が溶融する温度より低い範囲である。
なお、上記熱硬化した電離放射線硬化性組成物は、エンボス加工の後に、熱硬化シリコーン層側から紫外線あるいは電子線を照射することで電離放射線硬化させることができる。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。
(5)熱硬化シリコーン層
本発明で用いる熱硬化シリコーン層は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものである。
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの一例としては下記の如き化合物が挙げられる。
以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、一般的には3,500〜20,000の範囲が好適である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
本発明で使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記一般式において−R1−X、−R2−Z、および−R3−Yのうち少なくとも1個が水素原子であるものであり、他の置換基、シロキサン単位の配列、分子量等については前記一般式と同様である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合は、両者の有する反応性基のモル比で決まり、前者と後者の比が4:1〜1:4、特に1:1〜1:3の範囲が好ましく、この範囲を外れると離型性の低下、塗膜強度の低下、未反応の反応性基による保存性の劣化等の点で満足した性能が得られない。
本発明では、更に白金系硬化触媒を使用する。該触媒は前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン100質量部当たり約5〜200質量部程度が好ましい使用量である。
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物は、常温でも反応が進行し、塗工液中での反応の進行は離型性低下の原因となり、また、塗工液の保存性や取り扱い性に問題が生じる。本発明ではこの様な問題を解消する為に、常温では熱硬化性シリコーン組成物に対して反応抑制効果を有し、加熱処理時にはその抑制効果が解消する反応抑制剤を使用してもよい。具体的には、本発明で使用する反応抑制剤は、溶媒の溶液の状態では、上記の熱硬化性シリコーン組成物に対する硬化触媒の作用を抑制し、加熱された状態や溶剤が揮散した状態、即ち加熱または乾燥状態では上記硬化触媒の作用を抑制せず、むしろ促進する材料である。この様な硬化抑制剤としては、例えば、アセチレンアルコールのシリル化物等が挙げられる。これらの反応抑制剤は市場から入手して使用することができる。かかる反応抑制剤は前記熱硬化性シリコーン組成物100質量部当たり約5〜100質量部の割合で使用することが好ましい。
このような熱硬化性シリコーン組成物としては、市販品を使用してもよく、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3 603)に白金系硬化触媒からなる硬化剤(信越化学工業株式会社製、CA T−PL−50T)を混合して調製することができる。
上記熱硬化性シリコーン組成物は、常温では固体状態であるが、加工時には加熱により液体状態に変化する材料である。
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、エンボス加工により形成した微細凹凸パターンを固定すると共に、強度等の充分な皮膜物性を得るために硬化性を必要とする。
本発明の熱硬化性シリコーン層の形成方法自体は、前記熱硬化性シリコーン組成物の塗布、乾燥加熱、熟成等染料受容層の形成と同様でよく、形成される前記熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜20μmの範囲が好ましい。
(6)エンボス付き工程剥離紙の製造方法
本発明のエンボス付き工程剥離紙は、紙基材上に架橋型ポリオレフィン系樹脂層、電離放射線硬化樹脂層および熱硬化シリコーン層が積層された積層物であって、エンボス加工されたものであればその製造方法に制限はない。特には、紙基材に架橋型ポリオレフィン系樹脂層を積層し、前記架橋型ポリオレフィン系樹脂層上に電離放射線硬化性組成物を塗工し、乾燥および熱硬化して電離放射線性組成物膜を熱硬化させる。次いで、熱硬化した電離放射線性組成物膜上に熱硬化性シリコーン組成物を塗工し、加熱乾燥して熱硬化シリコーン膜を形成し、エンボス加工前積層物を製造することができる。
次いでこのエンボス加工前積層物に、エンボス加工を行い、特定模様の凹凸パターンを形成する。工程剥離紙に、例えば、天然皮革と同様の絞り模様を形成すれば、天然皮革により近似した合成皮革を製造することができるからである。また、工程剥離紙に木目や木の葉などの模様や、他の意匠の凹凸を形成しておけば、得られる合成皮革の表面にマット調でかつ特有の模様を有する模様を転写させることができる。このようなエンボス加工によって凹凸パターンをエンボス付き工程剥離紙の表面に形成するには、例えば、凹凸パターンの鋳型を表面に有するエンボスロールとこのエンボスロールの凹凸を受けるペーパーロールまたは金属ロールとを対向して備えるエンボス加工機、あるいは前記エンボスロールとこのエンボスロールの凹凸形状に対応した表面凹凸をもつ金属ロールとを対向して備えるエンボス加工機に、上記マット調のエンボス付き工程剥離紙を流し、加熱されたエンボスロールによって圧力をかけて、エンボス付き工程剥離紙に凹凸パターンを形成する。通常、エンボスロールの加熱温度は、50〜150℃、圧力は40〜100kgf/cmで十分である。この温度は、該電離放射線硬化性組成物の軟化点より高く、かつ樹脂が溶融する温度より低い範囲である。加熱方式は、通常エンボスロールに蒸気を通すなどしてロール自体を加熱させるが、エンボス直前で前もって電離放射線硬化性組成物を加熱させるプレヒート方式も可能である。なお、エンボスロールを使用せず、平エンボス版を用いて平プレスでエンボス加工をおこなってもよい。
ついで架橋型ポリオレフィン系樹脂層を架橋させ、および放射線硬化処理を行う。
架橋型ポリオレフィン系樹脂を硬化させる方法としては特に制限なく、例えば、室温で放置する方法、所定温度に加熱する方法、所定温度の乾燥気体を樹脂組成物の層の表面に送り込む方法、シラノール縮合触媒の存在下に架橋させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、ビニルシラン変性オレフィン重合体を用いる場合には、シラノール縮合触媒を使用する方法が好ましい。シラノール縮合触媒を使用することにより、水或いは大気中の湿気で容易に架橋反応を進行せしめることができ、所望のゲル分率の架橋型ポリオレフィン系樹脂層を形成することができる。
シラノール縮合触媒を使用して架橋型ポリオレフィン系樹脂を硬化させる方法としては、具体的には、(i)シラノール縮合触媒を配合した架橋型ポリオレフィン系樹脂を押出成形法によって基材上に架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を形成した後、水雰囲気中に曝す、又は、(ii)シラノール縮合触媒を塗布又は含浸させた架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を水雰囲気中に曝す、等の方法が挙げられる。架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を水雰囲気中に曝す際の条件は、通常、架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を常温〜200℃の温度で10秒〜1週間の範囲であり、好ましくは、常温〜130℃の温度で1分〜100時間の範囲である。また、押出成形法によって架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を形成した直後に、この架橋型ポリオレフィン系樹脂の層を水槽を通過させて冷却する工程と同時に行うこともできる。
また、架橋型ポリオレフィン系樹脂層のゲル分率(架橋度)は40%以上が好ましく、45%以上がより好ましい。架橋型ポリオレフィン系樹脂の硬化後のゲル分率は、架橋型ポリオレフィン系樹脂のビニルシラン化合物のグラフト率、シラノール縮合触媒の種類、量、架橋させる際の条件(温度、時間)等を変えることにより、調節することができる。
電離放射線硬化樹脂の硬化は、熱硬化シリコーン膜の側から紫外線あるいは電子線を照射する。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。このように、エンボス加工前に、電離放射線硬化性組成物を熱硬化させることで、熱硬化性シリコーン組成物の塗工性を改良でき、かつエンボス加工後に電離放射線硬化させることでエンボス加工の賦型性を確保できる。
なお、本発明のエンボス付き工程剥離紙は、上記架橋型ポリオレフィン系樹脂層(30)と電離放射線硬化樹脂層(20)との合計の厚さは、6〜80μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。厚さが6μmを下回ると工程剥離紙を繰り返し使用した場合に合成皮革の原料樹脂に含まれる可塑剤などと高温環境とによってエンボス付き工程剥離紙の紙基材と架橋型ポリオレフィン系樹脂層とが剥離する場合がある。一方、80μmを超えると、エンボス付き工程剥離紙の幅カールが大きくなり、加工性が低下する場合がある。
(7)合成皮革の製造方法
本発明のエンボス付き工程剥離紙を用いて、従来の工程剥離紙を使用すると同様にして合成皮革を製造することができる。
まず、エンボス付き工程剥離紙の熱硬化シリコーン層上に合成皮革用の樹脂組成物を塗布する。熱硬化シリコーン層上に塗布された樹脂層には、熱硬化シリコーン層の凹凸パターン形状に対応した絵柄(凹凸絵柄)が形成される。その後、これに基布(例えば、織布、不織布等)を貼り合わせ、樹脂層を乾燥し冷却した後、工程剥離紙を剥離して合成皮革を得ることができる。上記の合成皮革用の樹脂組成物には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。ポリウレタンを用いる場合は、樹脂組成物の固形分を20〜50質量%程度とすることが好ましい。また、ポリ塩化ビニルを用いる場合は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウリル等の可塑剤、発泡剤、安定剤等と混合し分散させた樹脂組成物を使用することが好ましい。この樹脂組成物の塗布方法としては、ナイフコート、ロールコート、グラビアコート等の従来公知の塗布方法を挙げることができる。このような本発明のエンボス付き工程剥離紙を用いた合成皮革の製造では、高温下で行なわれる塩化ビニル系レザー製造の場合においても、紙基材と架橋型ポリオレフィン系樹脂層との間における剥離が防止され、耐熱性に優れ、かつ機械的強度の高い電離放射線硬化樹脂層の存在および剥離性に優れる熱硬化シリコーン層の存在により繰り返し安定生産が可能となる。