JP4987438B2 - 窒化物複合焼結体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、窒化物複合焼結体の製造方法に関する。
窒化ホウ素焼結体は高温の塩化水素ガスやアンモニアガスに対する耐食性が高いことから、GaN等の半導体製造装置用部材(サセプタ)として使用されている。とくに、サセプタが窒化ホウ素と窒化ホウ素以外の窒化物(例えば窒化珪素、窒化アルミニウム等)からなる窒化物複合焼結体であるときは、耐食性が高いという基本特性に加えて、熱伝導率が高いため温度追随性が良好であり、また耐磨耗性にも優れている(特許文献1)。このようなサセプタは、原料を乾式混合又は湿式混合して得られた混合粉末を成型後焼成する工程を経て製造される。窒化物セラミックス原料粉末の比重、粒子径や粒子形状が異なるため、特に窒化ホウ素は他の窒化物に比べて比重が小さく、しかも粒子形状が扁平状と特殊であるため、均一混合粉末が得られやすい湿式混合法が好まれる。
ところで、MOVPE法のように気相成長させる方法においては、GaN結晶は半導体素子の基板上にのみ成長するものではなくサセプタ上にも成長する。サセプタ上に成長したGaN結晶は、サセプタの自公転運動や原料ガスの気流などによりサセプタ面より剥がれ、ダストとして浮遊して半導体素子上に付着し、半導体素子の欠陥となる。とくに、窒化ホウ素上に析出したGaN、更に言えば10μm以上の大きさの窒化ホウ素粒子上に析出したGaNは、窒化珪素や窒化アルミニウム上に析出したGaNに比べて剥離しやすく、ダストとして浮遊しやすくなる。そこで、窒化ホウ素と窒化珪素及び窒化アルミニウムの少なくとも一方とを含む複合焼結体においては、表面に露出している窒化ホウ素粒子ないしは窒化ホウ素粒子を含む凝集粒子の大きさを、最大でも数μm程度に抑えることが大切なことであるが、乾式混合法では長時間の混合を行ってもそれが困難である。
アルコールなどの親水性媒体用いる湿式混合では、窒化物セラミックス粒子や凝集粒子の大きさを数μmに抑えることができるが、アルコールに微量含まれる水分が、窒化物セラミックス粉末を加水分解させるため、不純物酸素が増加して焼結体の熱伝導率や耐熱温度を低下させた。アルコールを脱水すればよいが、空気中の水分を容易に再吸収するため、その取扱いと管理が大変であった。一方、特許文献2で提案されている液状フルオロカーボンなどの親油性媒体用いる湿式混合では、加水分解の問題は解決できるが、窒化物セラミックス粉末の表面が極性基で覆われているため粉末が凝集し、十μm以上の凝集粒子が生成した。また、有機バインダーと、有機バインダーの溶剤(アルコール類、芳香族類、ケトン類)と、フッ素元素を含む溶剤(ハイドロフロロカーボンあるいはハイドロクロロフロロカーボン)との混合媒体を用いる特許文献3の湿式混合では、厚みが数mm程度の窒化物複合焼結体ならばよいが、厚みが50mm以上となると、有機バインダーの残留を避けることができず、焼結時に窒化物と反応して窒素ガスが発生しボイドやクラック等のトラブルの原因となった。なお、厚みが50mm以上の窒化物複合焼結体は、例えば円盤状、円筒状、歯車状等の所望形状のサセプタを機械加工するのに好都合な厚みである。
特開2001−44128号公報 特開平5−104015号公報 特開平5−254918号公報
本発明の目的は、窒化物複合焼結体の表面に、10μm以上の窒化ホウ素粒子ないしは窒化ホウ素粒子を含む凝集粒子の露出を軽減させた、例えばサセプタとして好適な窒化物複合焼結体の製造方法を提供することである。
本発明は、窒化ホウ素粉末を20〜50質量%、窒化珪素粉末及び窒化アルミニウム粉末の少なくとも一方が80〜50質量%の混合粉末を焼成する方法において、混合粉末が、湿式混合物から媒体が除去されたものであり、媒体がエチルノナフルオロイソブチルエーテルまたはエチルノナフルオロブチルエーテルのハイドロフルオロエーテルにエタノール、イソプロピルアルコール及びt−アミルアルコールから選ばれた少なくとも1種であるアルコールを2〜10質量%含有させ、かつアルコール含有率が媒体の共沸点組成のプラスマイナス1質量%であることを特徴とする半導体製造装置用部材の窒化物複合焼結体の製造方法である。
本発明によれば、窒化物複合焼結体の表面に、10μm以上の窒化ホウ素粒子ないしは窒化ホウ素粒子を含む凝集粒子(以下、これらを総称して「10μm以上粒子」という。)の露出を軽減させた、特にサセプタとして好適な窒化物複合焼結体の製造方法が提供される。
本発明のように、湿式混合物から調整された、窒化ホウ素と窒化珪素及び窒化アルミニウムの少なくとも一方とを含む混合粉末を用いて製造された複合焼結体は、窒化物単独焼結体に比べて、サセプタの基本特性に優れていることに加え、機械加工性や10μm以上粒子の露出抑制効果が顕著であることより、一段と耐磨耗性や高熱伝導性に優れたサセプタの製造が可能となる。とくに、窒化ホウ素を20〜50質量%、窒化珪素及び窒化アルミニウムの少なくとも一方を80〜50質量%を含む混合粉末であることが好ましい。窒化ホウ素が20質量%未満であると、窒化物複合焼結体が硬くなり、加工性が悪くなるため、精密な形状の半導体製造装置用部材(サセプタ)が得がたくなる恐れがある。また、窒化ホウ素が50質量%をこえると、耐磨耗性の低下やダストの発生が顕著となるため、サセプタとして使用しがたくなる恐れがある。なお。例えば酸化ホウ素、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化イットリウム等の焼結助剤を10質量%以下の比率で混合粉末に含有させることもできる。
ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルとしては、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンである日本ゼオン社製「ゼオローラ」、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−ペンタン、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルである住友スリーエム社製商品名「ノベック」、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2,−トリフルオロエチルエーテルである旭硝子社製商品名「アサヒクリン」、など市販のものが使用される。
媒体に含ませるアルコールとしては特に種類を選ばないが、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルと沸点が近く、また相溶性の良い、エタノール(COH)、イソプロピルアルコール(COH)及びt−アミルアルコール(C11OH)から選ばれた少なくとも一種が好ましい。とくに、t−アミルアルコールが粉末の分散性、媒体の水分含率、蒸留による媒体の除去のしやすさの点から好ましい。メタノール(CHOH)のように低分子量のアルコールでは、親水性が高いため媒体が水分を含有しやすくなり、またへプチルアルコール(C15OH)のように高分子量のアルコールでは、沸点(176℃)が高くなるために媒体の除去が困難となる。
アルコールの媒体中の含有率は2〜10質量%である。2質量%未満では窒化物セラミックス粉末が媒体中に良好に分散せず、また10質量%をこえると、普通の水分管理を行っても、窒化物セラミックス粉末が加水分解を起こす程度の水分を、媒体が空気中から吸収する。
アルコール含有率の2〜10質量%は次のようにして求めた。すなわち、3種類の窒化物セラミックス粉末{窒化ホウ素粉末(電気化学工業社製商品名「SP」)、窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製商品名「Hグレード」、窒化珪素粉末(電気化学工業社製商品名「NP−600」))の各1gを、ハイドロフルオロエーテル(住友スリーエム社製商品名「ノベック HFE−7200」)15mL又はイソプロピルアルコール(関東化学 特級)15mLの媒体が入った50mLバイアル瓶に入れ、1分間混合後、1時間静置してから沈積層の高さ測定した。それら結果を表1に示す。窒化ホウ素粉末又は窒化珪素粉末では、両媒体の沈積層高さの比は2以下であり、また、沈積層は比較的密であり、これらの粉末は媒体の種類に寄らず、媒体への分散性は良好であった。しかし、窒化アルミニウム粉末の場合、沈積層の高さの比は7であり、イソプロピルアルコールでは沈積層は密であったが、ハイドロフルオロエーテルでは沈積層は隙間の多いものであり、ハイドロフルオロエーテルへの分散性は不良であった。
Figure 0004987438
このように、ハイドロフルオロエーテル中の窒化物セラミックス粉末の分散性が、その粉末種によって異なることがわかったので、ハイドロフルオロエーテル中の窒化アルミニウム粉末の分散性を向上させるべく、ハイドロフルオロエーテルにアルコールを混合する試みを行った。すなわち、上記のハイドロフルオロエーテルとイソプロピルアルコールとを用い、表2のアルコール含有率にして種々混合して得られた媒体を用いたこと以外は、同様にして沈積層の高さを測定した。その結果、媒体のアルコール含有率が1質量%以下であると、沈積層の高さが10mm以上(隙間の多い沈積層)となるが、2質量%以上になると高さが10mm未満(比較的緻密な沈積層)となった。
一方、媒体の水分吸収の容易性、すなわち窒化物セラミックス粉末を加水分解させる容易性を評価するため、ハイドロフルオロエーテルとイソプロピルアルコールからなる表2の媒体15mLに水10mLを入れ、1分間混合後、1日静置してから媒体の含水率をJIS K 0068のカールフィッシャー滴定法で測定した。その結果、表2のとおりであり、媒体のアルコール含有率が10質量%をこえると、媒体の含水率が0.2質量%以上となり、窒化物セラミックス粉末が加水分解する恐れが高くなった。これらのことから、本発明では媒体中のアルコール含有率を2〜10質量%とした。
Figure 0004987438
窒化物セラミックス粉末は加水分解すると、水酸化物とアンモニアが生成する。アンモニアはガス揮散するが、水酸化物はそのまま混合粉末中に残存するので混合粉末中の酸素分が増加することになる。このため、窒化物セラミックス粉末の加水分解のしやすさは、窒化物セラミックス粉末中の酸素量で予測可能となる。本発明において、窒化物セラミックス粉末の酸素量は、試料を媒体中で一定時間(例えば20時間)混合した後、媒体を蒸留などで除去してから、例えばJIS R 1603、日本セラミックス協会規格 JCRS 105、108等の不活性ガス融解−赤外線吸収法により測定することができる。
アルコール含有率が2〜10質量%の範囲内にあっても、共沸点組成のプラスマイナス1質量%のアルコール含有率であることが好ましい、このような媒体を用いることによって、蒸留などの媒体除去操作を行った後であっても、アルコールの含有率の変化が小さく、更には保管時にその含有率が変化することも少ないので媒体の再利用が容易となる。すなわち、アルコール含有率が共沸点組成のプラスマイナス1量%の組成を著しく逸脱すると、回収された媒体のアルコール含有率をその都度測定し再調整する必要があり操作が煩雑となる。
共沸点組成のプラスマイナス1質量%のアルコール含有率の媒体を製造するには、温度−組成図を作成し、気相と液相の組成が一致する組成を求めればよい。すなわち、還流器を備えたフラスコ等にアルコール濃度を調節したハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロエーテルの少なくとも一方を入れ、加熱・沸騰させて液相と気相の温度を同温とする。この状態で、フラスコ内の液相及び気相の組成をガスクロマトグラフィー等により分析して温度−組成図を作成し、気相と液相の組成が一致する組成より、共沸組成を求めることができる(参考:千原秀昭,徂徠道夫編;物理化学実験法 第4版,東京化学同人,(2000))。
窒化物セラミックス原料粉末の湿式混合は、この原料粉末100質量部あたり媒体300〜800質量部を配合し、例えばボールミル、振動ミル、ホモミキサー等の混合装置を用いて行われる。湿式混合物は、次いで例えばロータリーエバポレーター、溶剤回収装置付き乾燥機等の装置で媒体を除去して混合粉末を製造し、それを例えば乾式プレス成型法、冷間等方圧プレス成形法(CIP法)等により成型した後、例えば窒素、アルゴン、アンモニア、水素、炭酸ガス等の非酸化性気流中、1650〜2000℃で常圧焼結するか、又は15〜35MPaの加圧下、1650〜2000℃でホットプレス焼結することによって窒化物セラミックス焼結体が製造される。
実施例1
ハイドロフルオロエーテル(住友スリーエム社製商品名「ノベック HFE−7200」)95質量%とイソプロピルアルコール5質量%からなる媒体700mLに、窒化ホウ素粉末(電気化学工業社製商品名「SP」)25質量%と、窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製商品名「Hグレード」75質量%とからなる原料粉末200gを、直径5mmのアルミナボールを5kg入れた5L−容器に入れ、ボールミルにて20時間混合(90回転/分)した後、乾燥器(50℃、8時間)にて媒体を蒸発除去して混合粉末を製造した。混合粉末の酸素量は2.5質量%であった。これを温度1900℃、圧力20MPa、時間90分間の条件でホットプレス焼結をした。得られた複合焼結体の断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、10μm以上粒子は認められなかった。また、JIS R 1611のレーザーフラッシュ法による熱伝導率は47W/m・Kであった。
実施例2
媒体をハイドロフルオロエーテル(旭硝子社製商品名「アサヒクリン AE−3000」)95質量%とエタノール(大成薬品工業 日本薬局方)5質量%からなる媒体に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合焼結体を製造した。混合粉末の酸素量は2.7質量%であった。複合焼結体には10μm以上粒子は認められず、熱伝導率は42W/m・Kである。
実施例3
媒体をハイドロフルオロカーボンとt−アミルアルコール(4.2質量%)の共沸混合物である市販の日本ゼオン社商品名「ゼオローラHTA」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合焼結体を製造した。混合粉末の酸素量は2.0質量%であった。複合焼結体には10μm以上粒子は認められず、熱伝導率は56W/m・Kである。
実施例4
原料粉末を窒化ホウ素粉末30質量%、窒化珪素62質量%、酸化イットリウム6質量%および酸化アルミニウム2質量%に変更したこと以外は、実施例3と同様にして複合焼結体を製造した。複合焼結体には10μm以上粒子は認められず、熱伝導率は45W/m・Kである。
比較例1
媒体をハイドロフルオロエーテル単独としたこと以外は、実施例3と同様にして複合焼結体を製造した。原料粉末の酸素量は1.8質量%であった。焼結体の熱伝導率は55W/m・Kを示したものの、複合焼結体には10μm以上粒子が認められた。GaN等の半導体製造装置用部材として使用した場合、ダストの発生が懸念される。
本発明によって製造された窒化物複合焼結体は、半導体製造装置用部材(サセプタ)として使用することができる。

Claims (1)

  1. 窒化ホウ素粉末を20〜50質量%、窒化珪素粉末及び窒化アルミニウム粉末の少なくとも一方が80〜50質量%の混合粉末を焼成する方法において、混合粉末が、湿式混合物から媒体が除去されたものであり、媒体がエチルノナフルオロイソブチルエーテルまたはエチルノナフルオロブチルエーテルのハイドロフルオロエーテルにエタノール、イソプロピルアルコール及びt−アミルアルコールから選ばれた少なくとも1種であるアルコールを2〜10質量%含有させ、かつアルコール含有率が媒体の共沸点組成のプラスマイナス1質量%であることを特徴とする半導体製造装置用部材の窒化物複合焼結体の製造方法。
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