以下においては、本発明について、電子写真感光体を形成する場合を例にとって、第1ないし第3の実施の形態として、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1に示した電子写真感光体1は、本発明に係る堆積膜形成装置および方法により堆積膜が形成された例であり、円筒状基体10の外周面に、電荷注入阻止層11、光導電層12および表面層13を順次積層形成したものである。
円筒状基体10は、感光体の支持母体となるものであり、少なくとも表面に導電性を有するものとして形成されている。この円筒状基体10は、たとえばアルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、金(Au)、銀(Ag)などの金属材料、もしくは例示した金属材料を含む合金材料により、全体が導電性を有するものとして形成されている。円筒状基体10はまた、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁体の表面に、例示した金属材料、あるいはITOおよびSnO2などの透明導電性材料による導電性膜を被着したものであってもよい。円筒状基体10を形成するための材料としては、例示した材料のうち、Al系材料を用いるのが最も好ましく、とくに円筒状基体10の全体をAl系材料により形成するのが好ましい。そうすれば、電子写真感光体1を軽量かつ低コストで製造可能となるとともに、電荷注入阻止層11や光導電性層12をa−Si系材料により形成する場合には、それらの層と円筒状基体10との間の密着性が高くなって信頼性を向上させることができる。
電荷注入阻止層11は、円筒状基体10からのキャリア(電子)の注入を阻止するためのものであり、たとえばa−Si系材料により形成されている。この電荷注入阻止層11は、たとえばa−Siに、ドーパントとして硼素(B)、窒素(N)、あるいは酸素(O)を含有させたものとして形成されている。このような電荷注入阻止層11の厚みは、たとえば2μm以上10μm以下とされる。
光導電層12は、レーザ光などの光照射によってキャリアを発生させるためのものであり、たとえばa−Si系材料、あるいはSe−Te、As2Se3などのa−Se系材料により形成されている。ただし、電子写真特性(たとえば光導電性特性、高速応答性、繰り返し安定性、耐熱性あるいは耐久性)および表面層13をa−Si系に材料により形成した場合における表面層13との整合性を考慮した場合には、光導電層12は、a−Si、もしくはa−Siに炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)などを加えたa−Si系材料により形成するのが好ましい。このような光導電層12の厚みは、使用する光導電性材料および所望の電子写真特性により適宜設定すればよく、a−Si系材料を用いて光導電層12を形成する場合には、たとえば5μm以上100μm以下、好適には10μm以上80μm以下とされる。
表面層13は、電子写真感光体1の表面を保護するためのものであり、画像形成装置内での摺擦による削れに耐え得るように、たとえばa−SiCやa−SiNなどのa−Si系材料、あるいはa−Cなどにより形成されている。この表面層13は、電子写真感光体1に照射されるレーザ光などの光が吸収されることのないように、照射される光に対して充分広い光学バンドギャップを有しており、また、画像形成における静電潜像を保持出来得る抵抗値(一般的には1011Ω・cm以上)を有している。
電子写真感光体1における電荷注入阻止層11、光導電層12および表面層13は、たとえば図2ないし図4に示したプラズマCVD装置2を用いることにより形成される。
プラズマCVD装置2は、第1および第2支持体20A,20Bを真空反応室3に収容したものであり、電圧印加手段4、回転手段5、原料ガス供給手段6および排気手段7をさらに備えている。
第1および第2支持体20A,20Bは、円筒状基体10を支持するためのものであるとともに、それぞれが第1導体および第2導体として機能するものである。これらの第1および第2支持体20A,20Bは、フランジ部21A,21Bを有する中空状に形成されているとともに、円筒状基体10と同様な導電性材料により全体が導体として形成されている。第1および第2支持体20A,20Bは、2つの円筒状基体10を支持できる長さ寸法に形成されており、導電性支柱22A,22Bに対して着脱自在とされている。そのため、第1および第2支持体20A,20Bでは、支持させた2つの円筒状基体10の表面に直接触れることなく、真空反応室3に対して2つの円筒状基体10の出し入れを行なうことができる。
導電性支柱22A,22Bは、円筒状基体10と同様な導電性材料により全体が導体として形成されており、後述するプレート32に対して絶縁材23A,23Bを介して固定されている。この導電性支柱22A,22Bには、導板24A,24Bを介して電圧印加手段4が接続されている。絶縁材23A,23Bは、導板24A,24Bを介して電圧印加手段4から印加される直流電圧と、その他の導体を絶縁する役割を果している。
導電性支柱22A,22Bの内部には、セラミックパイプ25A,25Bを介してヒータ26A,26Bが収容されている。セラミックパイプ25A,25Bは、絶縁性および熱伝導性を確保するためのものである。ヒータ26A,26Bは、円筒状基体10を加熱するためのものである。ヒータ26A,26Bとしては、たとえばニクロム線やカートリッジヒーターを使用することができる。
ここで、第1および第2支持体20A,20Bの温度は、たとえば第1および第2支持体20A,20Bあるいは導電性支柱22A,22Bに取り付けられた熱電対(図示略)によりモニタされている。そのため、円筒状基体10の温度は、熱電対におけるモニタ結果の基づいてヒータ26A,26Bをオン・オフさせることにより、目的とする温度範囲、たとえば200℃以上400℃以下から選択される一定の範囲に維持される。
真空反応室3は、円筒状基体10に対して堆積膜を形成するための空間であり、ガス吹き出し部30および一対のプレート31,32により規定されている。
ガス吹き出し部30は、第1および第2支持体20A,20Bの周囲を囲む円筒状に形成される。このガス吹き出し部30は、円筒状基体10と同様な導電性材料により中空に形成されており、一対のプレート31,32に接合されている。
ガス吹き出し部30は、第1および第2支持体20A,20Bに支持させた円筒状基体10とガス吹き出し部30との間の最短距離が10mm以上200mm以下となるような大きさに形成されている。これは、円筒状基体10とガス吹き出し部30との最短距離が10mmよりも小さい場合は真空反応室3に対する円筒状基体10の出し入れなどにおいて作業性を充分に確保できないからであり、、逆に、円筒状基体10とガス吹き出し部30との最短距離が200mmよりも大きい場合は、装置2が大きくなってしまい単位設置面積当たりの生産性が悪くなるためである。
ガス吹き出し部30には、ガス導入口35および複数のガス吹き出し孔36が設けられている。
ガス導入口35は、真空反応室3に供給すべき原料ガスを導入するためのものであり、原料ガス供給手段6に接続されている。
複数のガス吹き出し孔36は、ガス吹き出し部30の内部に導入された原料ガスを円筒状基体10に向けて吹き出すためのものであり、図の上下方向および周方向に等間隔で配置されている。複数のガス吹き出し孔36は、同一形状の円形に形成されており、その孔径は、たとえば0.5mm以上2.0mm以下とされている。もちろん、複数のガス吹き出し孔36の孔径、形状および配置については、適宜変更可能である。
プレート31は、真空反応室3が開放された状態と閉塞された状態とを選択可能とするためのものであり、プレート31を開閉することによって真空反応室3に対する第1および第2支持体20A,20Bの出し入れが可能とされている。プレート31は、円筒状基体10と同様な導電性材料により形成されているが、下面側に防着板37が取着されている。これにより、プレート31に対して堆積膜が形成されるのが防止されている。この防着板37もまた、円筒状基体10と同様な導電性材料により形成されているが、防着板37はプレート31に対して着脱自在とされている。そのため、防着板37は、プレート31から取り外することにより洗浄が可能であり、繰り返し使用することができる。
プレート32は、真空反応室3のベースとなるものであり、円筒状基体10と同様な導電性材料により形成されている。プレート32の上面側には、絶縁部材34が設けられている。この絶縁部材34は、第1および第2支持体20A,20Bとプレート32との間にアーク放電が発生するのを抑える役割を有するものである。このような絶縁部材34のための材料としては、絶縁性を有し、使用温度で充分な耐熱性があり、真空中でガスの放出が小さい材料であれば特に限定はない。絶縁部材34のための材料としては、たとえばガラス材料(ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、耐熱ガラスなど)、無機絶縁材料(セラミックス、石英、サファイヤなど)、あるいは合成樹脂絶縁材料(テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ビニロン、エポキシ、マイラー、PEEK材など)により形成することができる。ただし、絶縁部材34は、成膜体の内部応力および成膜時の温度上昇に伴って生じるバイメタル効果に起因する応力により反りが発生して使用できなくなるのを防止するために、一定以上の厚みを有するものとして形成されている。たとえば、絶縁部材34をテフロン(登録商標)のような熱膨張率3×10−5/K以上10×105/K以下の材料により形成する場合には、絶縁部材34の厚みは10mm以上に設定される。このような範囲に絶縁部材34の厚みを設定した場合には、絶縁部材34と円筒状基体10に成膜される10μm以上30μm以下のa−Si膜との界面に発生する応力に起因するそり量が、水平方向(円筒状基体10の軸方向に略直交する半径方向)の長さ200mmに対して、水平方向における端部と中央部との軸方向における高さの差で1mm以下とすることができ、絶縁部材34を繰り返し使用することが可能となる。
プレート32および絶縁部材34には、ガス排出口32A,34Aが設けられている。ガス排気口32A,34Aは、真空反応室3の内部の気体を排出するためのものであり、図外の排気手段に接続されている。この排気手段は、真空反応室3のガスをガス排出口32A,34Aを介して外部に排出するためのものであり、真空反応室3に設けられた圧力計(図示略)でのモニタリング結果に基づいて真空反応室3を真空に維持できる。真空反応室3の圧力は、たとえば1.0Pa以上100Pa以下とされる。
電圧印加手段4は、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間に、第1支持体20Aが第2支持体20Bよりも高電位となる状態と、第2支持体20Bが第1支持体20Aよりも高電位となる状態とを交互に繰り返すようにパルス状の直流電圧を印加するためのものである。より具体的には、電圧印加手段4は、第1支持体20Aに対してパルス状の直流電圧を供給するときに第2支持体20Bを接地電位とする一方で、第2支持体20Bに対してパルス状の直流電圧を供給するときに第1支持体20Aを接地電位とするように構成されている。この電圧印加手段4は、直流電源40、切り替えスイッチ41,42および端子43,44,45,46を備えている。
直流電源40は、導電板24A,24Bおよび導電性支柱22A,22Bを介して、第1および第2支持体20A,20Bに対して直流電圧を印加するためのものである。
切り替えスイッチ41,42は、第1および第2支持体20A,20Bのうちの一方について直流電源40からの電圧供給が可能な状態を選択するとともに、もう一方の支持体20A,20Bを接地した状態を選択するためのものである。切り替えスイッチ41は端子43および端子44のいずれかに接続されるものであり、切り替えスイッチ42は端子45および端子46のいすれかに接続されるものである。
端子43〜46は、切り替えスイッチ41,42に選択的に接続されるものであり、配線を介して導電板24A,24Bに接続されている。
なお、電圧印加手段4は、第1支持体20Aおよび第2支持体20Bのうちの一方に対してパルス状の直流電圧を供給するときに他方の支持体20A,20Bを必ずしも接地するように構成する必要はなく、直流電源40とは別の基準電源を備えた構成であってもよい。この場合、基準電源における基準電圧は、第1および第2支持体20A,20B(円筒状基体10)に対して負のパルス状電圧(図5参照)を印加する場合には、たとえば−1500V以上1500V以下とされ、第1および第2支持体20A,20B(円筒状基体10)に対して正のパルス状電圧(図6参照)を印加する場合には、たとえば−1500V以上1500V以下とされる。
図4に示したように、回転手段5は、第1および第2支持体20A,20Bを回転させるためのものであり、回転モータ50および回転力伝達機構51を有している。回転手段5により円筒状基体20支持させた第1および第2支持体20A,20Bを回転させた場合には、第1および第2支持体20A,20Bとともに円筒状基体10が回転させられる。そのめ、円筒状基体10の外周に対しては、均等に原料ガスの分解成分を堆積させることが可能となる。
回転モータ50は、円筒状基体10に回転力を付与するものである。この回転モータ50は、たとえば円筒状基体10を1rpm以上10rpm以下で回転させるように動作制御される。回転モータ50としては、公知の種々のものを使用することができる。
回転力伝達機構51は、回転モータ50からの回転力を円筒状基体10に伝達・入力するためのものであり、回転導入端子52、絶縁軸部材53および絶縁平板54を有している。
回転導入端子52は、真空反応室3内の真空を保ちながら回転力を伝達するためのものである。このような回転導入端子52としては、回転軸を二重構造もしくは三重構造として構成することにより、オイルシールやメカニカルシール等の真空シール手段を用いることができる。
絶縁軸部材53および絶縁平板54は、第1および第2支持体20A,20Bとプレート31との間の絶縁状態を維持しつつ、回転モータ50からの回転力を第1および第2支持体20A,20Bに入力するためのものである。このような絶縁軸部材53は、たとえば絶縁部材34などと同様な絶縁材料により形成されている。ここで、絶縁軸部材53の外径D1は、成膜時において、第1および第2支持体20A,20Bの外径(後述する上ダミー基体29の内径)D2よりも小さくなるように設定されている。より具体的には、成膜時における円筒状基体10の温度が200℃以上400℃以下に設定される場合、絶縁軸部材53の外径D1は、第1および第2支持体20A,20Bの外径(後述する上ダミー基体29の内径)D2よりも0.1mm以上5mm以下、好適には3mm程度大きくなるように設定される。この条件を満たすために、非成膜時(常温環境下(たとえば10℃以上40℃以下))においては、絶縁軸部材53の外径D1と第1および第2支持体20A,20Bの外径(後述する上ダミー基体29の内径)D2との差は、0.6mm以上5.5mm以下に設定される。
絶縁平板54は、プレート31を着脱するときに上方から落下するゴミや粉塵などの異物が円筒状基体10や堆積膜へ付着するのを防止するためのものである。この絶縁平板54は、上ダミー基体29の内径D2より大きな外径D3を有する円板状に形成されている。絶縁平板54の直径D3は、円筒状基体10の直径D2の1.5倍以上3.0倍以下とされ、たとえば円筒状基体10として直径D2が30mmのものを用いる場合には、絶縁平板54の直径D3は50mm程度とされる。
このような絶縁平板54を設けた場合には、円筒状基体10に付着した異物に起因する異常放電を抑制することができるため、成膜欠陥の発生を抑制することができる。これにより、電子写真感光体1を形成する際の歩留まりを向上させ、また電子写真感光体1を用いて画像形成する場合における画像不良の発生を抑制することができる。
図2に示したように、原料ガス供給手段6は、複数の原料ガスタンク60,61,62,63、複数の配管60A,61A,62A,63A、バルブ60B,61B,62B,63B,60C,61C,62C,63C、および複数のマスフローコントローラ60D,61D,62D,63Dを備えたものであり、配管64およびガス導入口45を介してガス吹き出し部30に接続されている。各原料ガスタンク60〜63は、たとえばB2H6、H2(またはHe)、CH4あるいはSiH4が充填されたものである。バルブ60B〜63B,60C〜63Cおよびマスフローコントローラ60D〜63Dは、真空反応室3に導入する各原料ガス成分の流量、組成およびガス圧を調整するためのものである。もちろん、原料ガス供給手段6においては、各原料ガスタンク60〜63に充填すべきガスの種類、あるいは複数の原料タンク60〜63の数は、円筒状基体10に形成すべき膜の種類あるいは組成に応じて適宜選択すればよい。
次に、プラズマCVD装置2を用いた堆積膜の形成方法について、円筒状基体10にa−Si膜が形成された電子写真感光体1(図1参照)を作製する場合を例にとって説明する。
まず、円筒状基体10に堆積膜(a−Si膜)を形成するにあたっては、プラズマCVD装置2のプレート31を取り外した上で、複数の円筒状基体10(図面上は2つ)を支持させた第1および第2支持体20A,20Bを、真空反応室3の内部にセットし、再びプレート31を取り付ける。
第1および第2支持体20A,20Bに対する2つの円筒状基体10の支持に当たっては、第1および第2支持体20A,20Bの主要部を外套するように、フランジ部21A,21B上に、下ダミー基体27、円筒状基体10、中間ダミー基体28、円筒状基体10、および上ダミー基体29が順次積み上げられる。
各ダミー基体27〜29としては、製品の用途に応じて、導電性または絶縁性基体の表面に導電処理を施したものが選択されるが、通常は、円筒状基体10と同様な材料により円筒状に形成されたものが使用される。
ここで、下ダミー基体27は、円筒状基体10の高さ位置を調整するためのものである。中間ダミー基体28は、隣接する円筒状基体10の端部間で生じるアーク放電に起因する成膜不良の発生を抑制するためのものである。この中間ダミー基体28としては、その長さがアーク放電を防止できる最低限の長さ(本実施形態では1cm)以上を有し、その表面側角部が曲面加工で曲率0.5mm以上または端面加工でカットされた部分の軸方向の長さおよび深さ方向の長さが0.5mm以上となるように面取りがされたものが使用される。上ダミー基体29は、第1および第2支持体20A,20Bに堆積膜が形成されるのを防止し、成膜中に一旦被着した成膜体の剥離に起因する成膜不良の発生を抑制するためのものである。上ダミー基体29は、一部が第1および第2支持体20A,20Bの上方に突出した状態とされる。
次いで、真空反応室3の密閉状態とし、回転手段5により第1および第2支持体20A,20Bを介して円筒状基体10を回転させるとともに、円筒状基体10を加熱し、排気手段(図示略)により真空反応室3を減圧する。
円筒状基体10の加熱は、たとえばヒータ26A,26Bに対して外部から電力を供給してヒータ26A,26Bを発熱させることにより行なわれる。このようなヒータ26A,26Bの発熱により、円筒状基体10が目的とする温度に昇温される。円筒状基体10の温度は、その表面に形成すべき膜の種類および組成によって選択されるが、たとえばa−Si膜を形成する場合には250℃以上300℃以下の範囲に設定され、ヒータ26A,26Bをオン・オフすることにより略一定に維持される。
一方、真空反応室3の減圧は、排気手段(図示略)によってガス排出口32A,34Aを介して真空反応室3からガスを排出させることにより行なわれる。真空反応室3の減圧の程度は、たとえば10Pa程度とされる。このような真空状態は、真空反応室3の圧力を圧力計(図示略)によってモニタリングした結果に基づいて、排気手段の動作を制御することにより維持することができる。
次いで、円筒状基体10の温度が所望温度となり、真空反応室3の圧力が所望圧力となった場合には、原料ガス供給手段6により真空反応室3に原料ガスを供給するとともに、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間にパルス状の直流電圧を印加する。これにより、第1支持体20Aと第2支持体20B(円筒状基体10)との間にグロー放電が起こり、原料ガス成分が分解され、原料ガスの分解成分が円筒状基体10の表面に堆積される。
一方、排気手段(図示略)においては、真空反応室3の圧力計(図示略)をモニタリングしつつ、真空反応室3におけるガス圧を目的範囲に維持する。すなわち、真空反応室3の内部は、原料ガス供給手段6におけるマスフローコントローラー60D〜63Dと排気手段によって安定したガス圧に維持される。真空反応室3におけるガス圧は、たとえば1.0Pa以上100Pa以下とされる。
真空反応室3への原料ガスの供給は、バルブ60B〜63B,60C〜63Cの開閉状態を適宜制御しつつ、マスフローコントローラ60D〜63Dを制御することにより、原料ガスタンク60〜63の原料ガスを、所望の組成および流量で、配管60A〜63A,64およびガス導入口35を介してガス吹き出し部30の内部に導入することにより行なわれる。ガス吹き出し部30の内部に導入された原料ガスは、複数のガス吹き出し孔36を介して円筒状基体10に向けて吹き出される。そして、バルブ60B〜63B,60C〜63Cおよびマスフローコントローラ60D〜63Dによって原料ガスの組成を適宜切り替えることにより、円筒状基体10の表面には、電荷注入阻止層11、光導電層12および表面保護層13が順次積層形成される。
第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間へのパルス状の直流電圧を印加は、電圧印加手段4により行なわれる。
一般に、13.56MHzのRF帯域以上の高周波電力を使用した場合、空間で生成されたイオン種が電界によって加速され、正・負の極性に応じた方向に引き寄せられることになるが、高周波交流により電界が連続して反転することから、前記イオン種が円筒状基体10あるいは放電電極に到達するより前に電界が反転することから、イオンの基板への衝突は少なくなる。空間中で再結合を繰り返し、再度ガスまたはポリシリコン粉体などのシリコン化合物となって排気される。
これに対して、円筒状基体10側が正負いずれかの極性になるようなパルス状の直流電圧を印加してカチオンを加速させて円筒状基体10に衝突させ、その衝撃によって表面の微細な凹凸をスパッタリングしながらa−Siの成膜を行った場合には、極めて凹凸の少ない表面をもったa−Siが得られる。本発明者らはこの現象を“イオンスパッタリング効果”と名付けた。
このようなプラズマCVD法において、効率よくイオンスパッタリング効果を得るには、イオンの拡散速度よりも速く極性が連続的に反転することを避けるような電力を印加することが必要であるが、印加電圧の極性は、原料ガスの種類によってイオン種の密度や堆積種の極性などから決まる成膜速度などを考慮して自由に調整できる。
ここで、パルス状の電圧により効率よくイオンスパッタリング効果を得るには、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間の電位差は、たとえば絶対値において50V以上3000V以下の範囲内とされ、成膜レートを考慮した場合、好ましくは絶対値において500V以上3000V以下の範囲内とされる。
より具体的には、電圧印加手段4に接地されている場合には、切り替えスイッチ41,42を切り替えて、切り替えスイッチ41,42に接続される端子43〜46を適宜選択することにより、第1支持体20A(導電性支柱22A)および第2支持体20B(導電性支柱22B)の一方に対して−3000V以上−50V以下の範囲内の負のパルス状直流電位V1を供給し(図5参照)、あるいは50V以上3000V以下の範囲内の正のパルス状直流電位V1を供給する(図6参照)。このとき、第1支持体20A(導電性支柱22A)および第2支持体20B(導電性支柱22B)のうち、直流電源40から直流電圧が印加されていない支持体20A,20Bは接地電位とされる。
一方、電圧印加手段4に基準電源が設けられている場合には、第1支持体20A(導電性支柱22A)および第2支持体20B(導電性支柱22B)の一方に対して供給するパルス状直流電位V1は、目的とする電位差ΔVから基準電源により供給される電位V2を差分した値(ΔV−V2)とされる。基準電源により供給する電位V2は、第1および第2支持体20A,20B(円筒状基体10)に対して負のパルス状電圧(図5参照)を印加する場合には、−1500V以上1500V以下とされ、第1および第2支持体20A,20B(円筒状基体10)に対して正のパルス状電圧(図6参照)を印加する場合には、−1500V以上1500V以下とされる。
電圧印加手段4はさらに、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間に、第1支持体20Aが第2支持体20Bよりも高電位となる状態と、第2支持体20Bが第1支持体20Aよりも高電位となる状態とを交互に繰り返すようにパルス状の直流電圧を印加する。したがって、第1および第2支持体20Aの印加される電位は、パルス状の直流電圧が一定の周期毎に繰り返されたものとなるとともに、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間では、位相が180°ずれたものとなる。
ここで、第1および第2支持体20A,20Bの印加されるパルス状の直流電圧の周波数(1/T(sec))は、たとえば300kHz以下に設定される(図5および図6参照)。
このようなイオンスパッタリング効果を利用して得られたa−Siの光導電層12は、その厚みが10μm以上となっても、表面の微細凹凸が小さく平滑性がほとんど損なわれない。そのため、光導電層12上に表面層13であるa−SiCを1μm程度積層した場合の表面層13の表面形状は、光導電層12の表面形状を反映した滑らかな面とすることが可能となる。その一方で、表面層13を積層する場合においても、イオンスパッタリグ効果を利用することにより、表面層13を微細凹凸が小さい平滑な膜として形成することができる。
ここで、電荷注入阻止層11、光導電層12および表面層13の形成に当たっては、原料ガス供給手段6におけるマスフローコントローラ60D〜63Dおよびバルブ60B〜63B,60C〜63Cを制御し、目的とする組成の原料ガスが真空反応室3に供給されるのは上述の通りである。
たとえば、電荷注入阻止層11をa−Si系の堆積膜として形成する場合には、原料ガスとして、SiH4(シランガス)などのSi含有ガス、B2H6などのドーパント含有ガス、および水素(H2)やヘリウム(He)などの希釈ガスの混合ガスが用いられる。ドーパント含有ガスとしては、ホウ素(B)含有ガスの他に、窒素(N)あるいは酸素(O)含有ガスを用いることもできる。
光導電層12をa−Si系の堆積膜として形成する場合には、原料ガスとして、SiH4(シランガス)などのSi含有ガスおよび水素(H2)やヘリウム(He)などの希釈ガスの混合ガスが用いられる。光導電層12においては、ダングリングボンド終端用に水素(H)やハロゲン元素(F、Cl)を膜中に1原子%以上40原子%以下含有させるように、希釈ガスとして水素ガスを用い、あるいは原料ガス中にハロゲン化合物を含ませておいてもよい。また、原料ガスには、暗導電率や光導電率などの電気的特性及び光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、周期律表第13族元素(以下「第13族元素」と略す)や周期律表第15族元素(以下「第15族元素」と略す)を含有させてもよく、上記諸特性を調整するために炭素(C)、酸素(O)などの元素を含有させてもよい。
第13族元素および第15族元素としては、それぞれホウ素(B)およびリン(P)が共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点、および優れた光感度が得られるという点で望ましい。電荷注入阻止層11に対して第13族元素および第15族元素を炭素(C)、酸素(O)などの元素とともに含有させる場合には、第13族元素の含有量は0.1ppm以上20000ppm以下、第15族元素の含有量は0.1ppm以上10000ppm以下となるように調整される。また、光導電層12に対して第13族元素および第15族元素を炭素(C)、酸素(O)等の元素とともに含有させる場合、あるいは、電荷注入阻止層11および光導電層12に対して炭素(C)、酸素(O)等の元素を含有させない場合には、第13族元素は0.01ppm以上200ppm以下、第15族元素は0.01ppm以上100ppm以下となるように調整される。なお、原料ガスにおける第13属元素あるいは第15属元素の含有量を経時的に変化させることにより、これらの元素の濃度について層厚方向にわたって勾配を設けるようにしてもよい。この場合には、光導電層12における第13族元素および第15族元素の含有量は、光導電層12の全体における平均含有量が上記範囲内であればよい。
また、光導電層12については、a−Si系材料に微結晶シリコン(μc−Si)を含んでいてもよい。光導電層12にμc−Siを含ませた場合には、暗導電率・明導電率を高めることができるので、光導電層12の設計自由度が増すといった利点がある。このようなμc−Siは、先に説明した成膜方法を採用し、その成膜条件を変えることにより形成することができる。たとえば、グロー放電分解法では、円筒状基体10の温度および直流パルス電力を高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む光導電層12においても、先に説明したのと同様な元素(第13族元素、第15族元素、炭素(C)、酸素(O)など)を添加してもよい。
表面層13をa−SiC系の堆積膜として形成する場合には、原料ガスとして、SiH4(シランガス)などのSi含有ガスおよびCH4などのC含有ガスの混合ガスを供給する。原料ガスにおけるSiとCとの組成比については、連続的あるいは間欠的に変化させてもよい。すなわち、Cの比率が高くなるほど成膜速度が遅くなる傾向があるため、表面層13における光導電層12に近い部分についてはC比率が低くなるようにしつつ、自由表面側についてはC比率が高くなるように表面層13を形成するようにしていもよい。たとえば、表面層13の光導電層12側(界面側)においては、水素化アモルファスシリコンカーバイト(a−Si1−xCx:H)におけるx値(炭素比率)が0を超えて0.8未満の比較的Si構成比の高い第1のSiC層を堆積した後、x値(炭素比率)が0.95以上1.0未満程度までC濃度を高くした第2のSiC層を堆積した2層構造であってもよい。
第1のSiC層は、その膜厚が、耐圧、残留電位、膜強度などから決定され、通常0.1μm以上2.0μm以下、好適には0.2μm以上1.0μm以下、最適には0.3μm以上0.8μm以下とされる。第2のSiC層は、その膜厚が、耐圧、残留電位、膜強度、寿命(耐摩耗性)等から決定され、通常0.01μm以上2μm以下、好適には0.02μm以上1.0μm以下、最適には0.05μm以上0.8μm以下とされる。
表面層13は、上述のようにa−C層として形成することもできる。この場合、原料ガスとしては、C2H2(アセチレンガス)あるいはCH4(メタンガス)などのC含有ガスが用いられる。また、表面層13は、その膜厚が、通常0.1μm以上2.0μm以下、好適には0.2μm以上1.0μm以下、最適には0.3μm以上0.8μm以下とされる。
表面層13をa−C層として形成した場合には、Si−O結合に比べてC−O結合のほうが結合エネルギが小さいため、表面層13をa−Si系材料により形成する場合に比べて、表面層13の表面が酸化することをより確実に抑制できる。そのため、表面層13をa−C層として形成した場合には、印刷時のコロナ放電により発生するオゾンなどによって、表面層13の表面が酸化されることが適切に抑制されるため、高温高湿環境下などでの画像流れの発生を抑制することができる。
円筒状基体10に対する膜形成が終了した場合には、第1および第2支持体20A,20Bから円筒状基体10を抜き取ることにより、図1に示した電子写真感光体1を得ることができる。そして、成膜後は、成膜残渣を取り除くため、真空反応室3内の各部材を分解し、酸、アルカリ、ブラスト等の洗浄を行い、次回成膜時に欠陥不良となる発塵が無いようウエットエッチングを行う。ウエットエッチングに代えて、ハロゲン系(ClF3、CF4、O2、NF3、SiF6またはこれらの混合ガス)のガスを用いてガスエッチングを行うことも有効である。
本発明によれば、イオンスパッタリング効果を利用して成膜を行なうため、成膜速度を落とすことなく成膜時におけるアーク放電を抑制し、特性ムラおよび欠陥の少ない良好な堆積膜(電荷注入阻止層11、光導電層12および表面層13)を高速で形成することができる。そのため、膜厚ムラが少なく良質な堆積膜を備えた電子写真感光体1を効率良く提供できるようになる。したがって、本発明により製造された電子写真感光体1を用いて画像形成を行なった場合には、黒点の発生などの画像欠陥の発生を抑制して画像特性を向上させることができる。
本発明ではさらに、第1および第2支持体20A,20Bに対して、第1支持体20Aが第2支持体20Bよりも高電位となる状態と、第2支持体20Bが第1支持体20Aよりも高電位となる状態とを交互に繰り返すようにパルス状の直流電圧が印加される。そのため、より効率良くかつ凹凸の少ない堆積膜を形成することが可能となる。すなわち、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間にパルス状の直流電圧を印加するようにすれば、電圧印加時のプラズマ放電によって生じるカチオンは、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間、ひいてはこれらの支持体20A,20Bに支持された円筒状基体10の間において加速される。そして、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間に対するパルス状の直流電圧の印加を第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間で交互に行うようにすれば、これらの支持体20A,20Bの間で電界を反転させつつカチオンを加速させることができる。その結果、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間の領域に有効にカチオンを存在させることができるため、円筒状基体10に対して加速されたカチオンを効率良く衝突させることができる。その結果、本発明では、極めて凹凸の少ない表面をもった堆積膜を得ることができるとともに、成膜速度を向上させることができる。
また、第1支持体20Aと第2支持体20Bとの間に放電により生じたカチオンを有効に存在させることができれば、ガス吹き出し部30と支持体との間で放電を起こさせる場合に比べて、放電により生じたカチオンを第1および第2支持体20A,20Bに効率良く付着させることができるとともにガス吹き出し部30と支持体との距離を大きく確保することが可能となる。その結果、ガス吹き出し部30などにカチオンが付着し、不要な膜が形成されてしまうことを抑制することができる。これにより、装置2におけるガス吹き出し部30などの構成要素の洗浄が容易となり、1本の電子写真感光体1の作成に必要な時間を短縮し、生産性を向上させることが可能となる。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図7および図8を参照しつつ説明する。なお、図8(a)および図8(b)における「+」あるいは「−」は、第1および第2支持体20A′,20B′が他方の支持体に対して相対的に「高電位」あるいは「低電位」であることを意味しており、必ずしも極性を示すものではない。
図7に示した堆積間形成装置2′は、複数の第1支持体20A′および複数の第2支持体20B′を備えたものであり、それぞれ同数ずつ(図面上は3個ずつ)設けられている。複数の第1および第2支持体20A′,20B′は、同一円周上において交互に配置されている。第1および第2支持体20A′,20B′は、電圧印加手段(図示略)によって第1支持体20A′と第2支持体20B′との間に交互にパルス状の直流電圧(図5および図6参照)を印加することが可能とされている。すなわち、図8(a)に示したように第1支持体20A′が第2支持体20Bよりも高電位とされる状態と、図8(b)に示したように第2支持体20B′が第1支持体20A′よりも高電位とされる状態とが交互に達成される。その結果、第1支持体20A′と第2支持体20B′との間には、図5または図6に示したように一定の周期毎にパルス状の直流電圧が繰り返し印加されるとともに、第1支持体20A′と第2支持体20B′との間では、連続するパルス波形の位相が180°ずれたものとなる。
ここで、パルス状の電圧により効率よくイオンスパッタリング効果を得るには、第1支持体20A′と第2支持体20B′との間の電位差は、たとえば絶対値において50V以上3000V以下の範囲内とされ、成膜レートを考慮した場合、好ましくは絶対値において500V以上3000V以下の範囲内とされる。また、第1および第2支持体20A′,20B′の印加されるパルス状の直流電圧の周波数は、たとえば300kHz以下に設定される(図5および図6参照)。
このような堆積膜形成装置2′においては、複数の第1および第2支持体20A′,20B′が同一円周上において交互に配置されているとともに、第1支持体20A′が第2支持体20B′よりも高電位となる状態と、第2支持体20B′が第1支持体20A′よりも高電位となる状態とを交互に繰り返すようにパルス状の直流電圧が印加される。そのため、第1支持体20A′(あるいは第2支持体20B′)は、隣接する2つの第2支持体20B′(第1支持体20A′)との間でグロー放電を生じるとともに、それらの支持体20A′,20B′の間においてグロー放電により生じたカチオンが移動する。その結果、堆積膜形成装置2′においても、極めて凹凸の少ない表面をもった堆積膜を効率良く得ることができるとともに、成膜レートの向上や洗浄の容易さにともなう生産性の向上を図ることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について、図9および図10を参照しつつ説明する。なお、図10(a)および図10(b)における「+」および「−」は、第1および第2支持体20A″,20B″が他方の支持体に対して「高電位」および「低電位」であることを意味しており、必ずしも極性を示すものではない。
図9に示した堆積間形成装置2″は、複数の第1支持体20A″および複数の第2支持体20B″を備えたものであり、それぞれ同数ずつ(図面上は12個ずつ)設けられている。複数の第1支持体20A″は同心円上に配置され、複数の第2支持体20B″も同心円上に配置されている。複数の第1支持体20A″の配置中心と複数の第2支持体20B″の配置中心とは一致または略一致させられており、複数の第1支持体20A″は、複数の第2支持体20B″を囲むように配置されている。複数の第1および第2支持体20A″,20B″は、周方向において千鳥状に並んで配置されている。
第1および第2支持体20A″,20B″は、電圧印加手段(図示略)によって第1支持体20A″と第2支持体20B″との間に交互にパルス状の直流電圧(図5および図6参照)が印加することが可能とされている。すなわち、図10(a)に示したように第1支持体20A″が第2支持体20B″よりも高電位とされる状態と、図10(b)に示したように第2支持体20B″が第1支持体20A″よりも高電位とされる状態とが交互に達成される。その結果、第1支持体20A″と第2支持体20B″との間には、図5または図6に示したように一定の周期毎にパルス状の直流電圧が繰り返し印加されるとともに、第1支持体20A″と第2支持体20B″との間では、連続するパルス波形の位相が180°ずれたものとなる。
ここで、パルス状の電圧により効率よくイオンスパッタリング効果を得るには、第1支持体20A″と第2支持体20B″との間の電位差は、たとえば絶対値において50V以上3000V以下の範囲内とされ、成膜レートを考慮した場合、好ましくは絶対値において500V以上3000V以下の範囲内とされる。また、第1および第2支持体20A″,20B″の印加されるパルス状の直流電圧の周波数は、たとえば300kHz以下に設定される(図5および図6参照)。
このような堆積膜形成装置2″においては、複数の第1および第2支持体20A″,20B″は複数の第1支持体20A″が複数の第2支持体20B″を囲むようにして周方向において千鳥状に配置されている。一方、第1支持体20A″と第2支持体20B″との間には、第1支持体20A″が第2支持体20B″よりも高電位とされる状態と、第2支持体20B″が第1支持体20A″よりも高電位とされる状態とが交互に繰り返されるようにパルス状の直流電圧が印加される。そのため、第1支持体20A″(あるいは第2支持体20B″)は、隣接する2つの第2支持体20B″(第1支持体20A″)との間でグロー放電を生じるとともに、それらの支持体20A″,20B″の間においてグロー放電により生じたカチオンが移動する。その結果、堆積膜形成装置2″においても、極めて凹凸の少ない表面をもった堆積膜を効率良く得ることができるとともに、成膜レートの向上や洗浄の容易さにともなう生産性の向上を図ることができる。