JP5090462B2 - 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム - Google Patents

積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム Download PDF

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Description

本発明は、積層型圧電素子、噴射装置及び燃料噴射システムに関し、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置、振動防止装置等に搭載される駆動素子(圧電アクチュエータ)、燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、及び圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子等に用いられる積層型圧電素子、これを備えた噴射装置並びに燃料噴射システムに関するものである。
従来から、積層型圧電素子は、小型化が進められると同時に大きな圧力下において大きな変位量を確保するように求められている。そのため、より高い電圧が印加され、しかも長時間連続駆動させる過酷な条件化で使用できることが要求されている。
コンデンサ等の通常の積層型電子部品と異なり、積層型圧電素子は駆動時に素子自体が連続的に寸法変化を起こす。そして、全ての圧電体層が内部電極を介して密着して駆動することにより、積層型圧電素子は一体として大きく駆動変形する。そのため、素子には大きな応力がかかる。
上記課題を解決する手段の一つとして、あらかじめ圧電体層の一部に目標破断層として多孔質な層を設けた素子が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、目標破断層で積層型圧電素子を破断させることにより、各圧電体層にかかる応力の緩和が試みられている。
特表2006−518934号公報
特許文献1に開示されている方法により、圧電体層にかかる応力をある程度緩和させることができる。しかしながら、積層型圧電素子には、より高い電圧が印加される環境下で使用できることが要求されている。そして、このような過酷な環境においては、上記の目標破断層を用いた場合、この目標破断層で生じさせたクラックが予想外の方向に進む可能性がある。これは、内部電極が、隣接する圧電体層を構成する結晶粒子と比較して連続する大きな板状の構造であるからである。
このような素子では、圧電駆動時に変形して伸縮駆動する結晶粒子が、内部電極に拘束されてしまうので、各々の結晶粒子が駆動電圧に応じて単独で変形することが困難となる。そのため、結晶粒子間には常に応力がかかった状態となる。
そして、このような積層型圧電素子の圧電体層内部に目標破断層を予め設けていると、応力が加わった時に、この目標破断層だけに亀裂が伸展するのではなく、粒子間に亀裂が伸展する可能性がある。このように亀裂が伸展すると、結晶粒子内や結晶粒子間で破断が起きたり、亀裂が内部電極に達し、異なる極の内部電極間で電気的短絡が起きる可能性がある。
特に高電界、高圧力下で圧電素子を駆動させた場合、瞬間的に大きな応力が圧電素子にかかるため、クラックの方向を安定させにくい。一方、高電界、高圧力下でさらに長時間連続駆動することが可能な圧電素子が求められていることから、素子にかかる応力をより効果的に緩和させることが必要となっている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高電界、高圧力下で長時間連続駆動させた場合であっても変位量の変位が抑制され、耐久性に優れた積層型圧電素子、これを用いた噴射装置及び燃料噴射システムを提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明の積層型圧電素子は、複数の圧電体層と複数の金属層とが交互に積層された積層構造体を有し、前記複数の金属層が、内部電極と、前記圧電体層及び前記内部電極と比較して剛性が低い低剛性金属層と、を備え、前記低剛性金属層が、空隙を介して互いに離隔する複数の金属部と、該金属部の側面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを有していることを特徴とする。
本発明の噴射装置は、上記いずれかの積層型圧電素子と噴射孔とを備え、前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を吐出させるように構成したことを特徴とする。
本発明の燃料噴射システムは、高圧燃料を備えるコモンレールと、このコモンレールに蓄えられた燃料を噴射する上記の噴射装置と、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御システムと、を備えたことを特徴とする。
本発明の積層型圧電素子によれば、低剛性金属層が、空隙を介して互いに離隔する金属部を有しているため、高い耐久性を有することができる。これは、金属部が、空隙を介して互いに離隔していることにより、低剛性金属層が変形しやすくなるため、応力を分散させて、積層型圧電素子の一部に応力が集中することを抑制することができるからである。
さらに、本発明の積層型圧電素子は、金属部の表面の少なくとも一部が被覆層により被覆されているため、優れた耐久性を長期間維持することができる。これは、金属部が被覆層により被覆されていることで、金属部の外気などの雰囲気に接触する部分を小さくすることができるので、金属部の劣化を抑制することができるからである。
本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の一例を示す斜視図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の一例を示し、積層方向に平行な断面図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の一例を示し、積層方向に垂直であって低剛性金属層15を含む断面図である。 図2に示す実施形態にかかる部分Aを拡大した拡大断面図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における金属部19を示す斜視図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における金属部19を示す斜視図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における金属部19を示す斜視図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における低剛性金属層15が配設された部分を拡大した拡大断面図である。 本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における低剛性金属層15が配設された部分を拡大した拡大断面図である。 本発明の噴射装置を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。
符号の説明
1・・・積層型圧電素子、
3・・・圧電体層、
5・・・金属層、
7・・・積層構造体、
9・・・外部電極、
11・・・圧電体結晶粒子、
13・・・内部電極、
15・・・低剛性金属層、
17・・・空隙、
19・・・金属部、
21・・・被覆層、
21a・・・被覆層、
21b・・・被覆層、
23・・・通電部、
25・・・噴射装置、
27・・・噴射孔、
29・・・収納容器、
31・・・ニードルバルブ、
33・・・燃料通路、
35・・・シリンダ、
37・・・ピストン、
39・・・皿バネ、
41・・・燃料噴射システム、
43・・・コモンレール、
45・・・圧力ポンプ、
47・・・噴射制御ユニット、
49・・・燃料タンク。
以下、本発明の積層型圧電素子について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す実施形態の積層型圧電素子の積層方向に平行な縦断面図である。図3は、図1に示す実施形態の積層型圧電素子の積層方向に垂直かつ低剛性金属層15を含む横断面図である。
図1〜3に示すように、本実施形態の積層型圧電素子1(以下、単に素子1ともいう)は、複数の圧電体層3と複数の金属層5とが交互に積層された積層構造体7と、積層構造体7の側面に形成された外部電極9と、を有している。また、各々の圧電体層3は、複数の圧電体結晶粒子11により構成され、複数の金属層5は、外部電極9に接続された内部電極13と、圧電体層3及び内部電極5と比較して剛性が低い低剛性金属層15と、を備えている。
本実施形態において低剛性金属層15とは、圧電体層3や内部電極13と比較して層内の結合力及び/又は隣接する層との結合力が弱く、剛性が小さい層をいう。そして、低剛性金属層15は空隙17を介して互いに離隔する複数の金属部19と、金属部19の側面の少なくとも一部を被覆する被覆層21とを有している。
低剛性金属層15中の複数の金属部19は、空隙17を介して互いに離隔しているため、変形しやすい。そのため、積層型圧電素子1の使用時の素子1自体の伸縮による応力や、積層型圧電素子1に外部から強い衝撃や応力が加えられた場合においては、金属部19が変形することにより応力を吸収することができる。これにより、内部電極13や圧電体層3にクラックが生じることを抑制して、積層方向に隣り合う内部電極13間で電気的な短絡が生じることを抑制することができる。
低剛性金属層15、圧電体層3及び内部電極13の剛性は、例えば素子に対して、積層方向に垂直な方向に荷重を加えることにより容易に比較できる。具体的には、JIS3点曲げ試験(JIS R 1601)などにより、素子に対して積層方向に垂直な方向から荷重を加えることで判断できる。上記の試験を行ったときに、どの部分で素子が破断するかを確認すればよいからである。その破断箇所が素子のなかで最も剛性が低い箇所である。
本実施形態の積層型圧電素子1は低剛性金属層15を備えているので、JIS3点曲げ試験を行うと、圧電体層3や内部電極13よりも、この低剛性金属層15や低剛性金属層15と圧電体層3との界面で優先的に破断が起きる。このように、破断した箇所が圧電体層3や内部電極13であるか、或いは、低剛性金属層15や低剛性金属層15と圧電体層3との界面であるかにより評価することができる。
なお、どの部分で素子が破断するかを確認すればよいことから、試験片が小さく、上記JIS3点曲げ試験を用いることができない場合には、このJIS3点曲げ試験に準拠して、素子を長方形の角柱となるように加工して試験片を作製し、この試験片を一定距離に配置された2支点上に置き、支点間の中央の1点に荷重を加えて評価すればよい。
また、剛性が低いとは、ヤング率が小さいと言い換えることができる。ヤング率の測定方法としては、例えば、ナノインデンテーション法を用いることができる。測定装置としては、例えば、ナノインスツルメント社製の「ナノインデンターII」を用いることができる。積層構造体の積層方向に垂直若しくは平行な断面において、低剛性金属層15、圧電体層3又は内部電極13を露出させ、上記の測定装置を用いてヤング率を測定すればよい。
図4は、図2に示す実施形態の積層型圧電素子にかかる金属部19を示す部分断面図である。図4に示すように、本実施形態の積層型圧電素子1は、金属部19の側面の少なくとも一部が被覆層21により被覆されている。このように、金属部19の側面の少なくとも一部が被覆層21により被覆されていることにより、金属部19の外気などの雰囲気に接触する部分を小さくすることができるので、金属部19の変性を抑制することができる。
また、一時的に強い応力が素子に加わった時には、被覆層21が金属部19から剥離することにより、応力を散逸させることができる。具体的には、上記の強い応力が積層型圧電素子1に加わった場合、金属部19の変形に追従して被覆層21が変形する。そして、上記の金属部19及び被覆層21の変形により、これらの接合面で局所的に発熱し、被覆層21が金属部19から剥離する。このように、局部的に発熱することで、熱の散逸による応力分散の効果を得ることができ、また、被覆層21が金属部19からはがれることで応力を散逸させて、素子内部への応力伝達を抑制することができる。これにより、内部電極13や圧電体層3にクラックが生じることが抑制される。結果として、積層方向に隣り合う内部電極13間で電気的な短絡が生じることを抑制することができる。
なお、ここで、金属部19の側面とは、金属部19の表面のうち、隣り合う圧電体層3間であって圧電体層3と離隔している部分をいう。
以上のように、本実施形態は、低剛性金属層15において、金属部19を被覆層21によって覆うことにより積層型圧電素子1内部に生じる応力を分散させて緩和するものであるが、積層型圧電素子1が使用される環境に応じて、金属部19を覆う被覆層21の好ましい形態は異なる。
例えば、積層型圧電素子が常温及び高温の両方の環境下で使用されるような場合は、図4において左側に示されているように、金属部19の側面の少なくとも一部が露出していることが好ましい。このように金属部19の側面の少なくとも一部が露出していることにより、積層型圧電素子が常温及び高温の両方の環境下で使用されるような場合であっても耐久性を向上させることができるからである。自動車エンジンの燃料噴射装置などに用いられる場合、高温環境下での使用となるため、積層型圧電素子は常温での使用時と比較して大きく熱膨張する。このような環境下では、金属部19と被覆層21の熱膨張係数の差により、金属部19と被覆層21との間に応力が発生する。
しかしながら、金属部19の側面全面を被覆層21で被覆せず、金属部19の側面の少なくとも一部が露出していることにより、この露出部分で応力を開放することができる。これにより、金属部19や被覆層21にクラックが発生することを抑制できるので、積層型圧電素子の耐久性を向上させることができる。高温環境下で使用する場合には、特にこのような形態が有効となる。
また、金属部19の側面の少なくとも一部が露出している形態に関しても以下のような異なる形態を取り得る。
図5A及び図5Bは、それぞれ本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における金属部19を示す斜視図である。図5Aに示すように、金属部19の側面が、互いに離隔する複数の被覆層21に被覆されているような形態であってもよい。これにより、互いに離隔する被覆層21間で側面が露出する金属部19の部分が変形しやすいので、この部分で選択的に金属部19が変形する。結果として、金属部19による積層型圧電素子1に対する応力緩和の効果を高く維持することができる。
また、金属部19の側面の一部に局所的に応力が集中して、被覆層21が金属部19から剥離してしまうような場合であっても、複数の被覆層21のうち、この応力の集中した部分を被覆する被覆層21のみが金属部19から剥離するに留まる。そのため、被覆層21全体が金属部19から剥離することを抑制できる。結果として、安定して金属部19を被覆層21により被覆することができる。
また、例えば、被覆層21が繋がった1つからなり、金属部19の側面が、互いに離隔する複数の領域で露出しているような形態であってもよい。図5Bに示すように、金属部19の側面が、互いに離隔する複数の領域で露出するように被覆層21で被覆されていることにより、被覆層21が変形しやすくなる。その為、電圧を印加して素子1を駆動させた場合などであっても、被覆層21が金属部19の伸縮に追従しやすくなる。結果として、金属部19と被覆層21の接合性を向上させることができる。具体的には、被覆層21が網目状であることにより、金属部19の伸縮に追従しやすくなるので好ましい。
また、金属部19が劣化しやすい雰囲気下で積層型圧電素子が使用されるような場合には、金属部19の側面の全体が被覆層21に被覆されていることが好ましい。図5Cに示すように、金属部19の側面の全体が被覆層21に被覆されていることにより、金属部19の露出を抑えることができるので、金属部19の側面が外気などの雰囲気に接触することを防いで、金属部19の劣化をより確実に抑制することができるからである。特に、水分を多量に含んでいる場合のように、金属部19が劣化しやすい雰囲気下で積層型圧電素子を使用する時には、上記の形態が有効となる。
また、被覆層21の少なくとも一部が、圧電体層3と接合していることが好ましい。被覆層21が圧電体層3と接合している場合には、積層型圧電素子1の駆動に伴い圧電体層3から金属部19にかかる応力を、圧電体層3から被覆層21へと分散させることができるため、金属部19の耐久性を向上させることができるからである。また、被覆層21が圧電体層3と接合していることにより、圧電体層3と金属部19の接合性を高めることもできる。
図6は、本発明の積層型圧電素子にかかる実施形態の他の一例における低剛性金属層15が配設された部分を拡大した拡大断面図である。図6に示すように、金属部19とそれを被覆する被覆層21の形態には、種々の形態がある。
例えば、比較的大きな応力が積層型圧電素子1にかかるような環境で使用されるような場合には、複数の金属部19の少なくとも1つが、図6において19a及び19bの符号を付して示すように、圧電体層3と離隔し、被覆層21を介して圧電体層3と接合されていることが好ましい。低剛性金属層15と圧電体層3との界面に局所的に強い応力が加わった場合であっても、被覆層21の損傷にとどめて、金属部19や圧電体層3が損傷することを抑制することができるからである。結果として、金属部19による応力緩和の効果を得ることができ、また、積層型圧電素子1の変位が低下することを抑制することもできる。
また、金属が腐食しやすい環境で使用されるような場合には、図6において19bの符号を付して示すように、金属部19の表面全体が被覆層21に被覆されていることがより好ましい。金属部19の表面全体が被覆層21に被覆されていることにより、金属部19が圧電体層3から離隔した場合であっても、金属部19の側面だけでなく側面以外の面が外気などの雰囲気に接触することを防ぐことができる。圧電体層3が圧電体結晶粒子11により構成されている場合など、金属部19の側面以外の部分が外気と接する時には、上記の形態が特に有効となる。これにより、金属部19の劣化をより確実に抑制することができる。
また、図6において19c及び19dの符号を付して示すように、金属部19の端部を圧電体結晶粒子11間に入りこませることで、圧電体結晶粒子11が応力変形に伴って自己発熱した熱を、圧電体結晶粒子11から金属部19への放熱の効果を高めることができる。このような構造においても、金属が腐食しやすい環境で使用されるような場合には、図6において19c及び19dの符号を付して示すように、圧電体層3と接している部分を除く金属部19の表面全体が被覆層21に被覆されているようにしてもよい。このようにしても、金属部19の側面が外気などの雰囲気に接触することを防ぐことができる。さらには、被覆層21をも圧電体結晶粒子11間に入りこませることで、特に金属が腐食しやすい塩素等のハロゲンガス雰囲気において積層型圧電素子1を使用するような場合でも、圧電体結晶粒子11間の粒界を伝って伝播してくる塩素等の腐食性のハロゲンイオンも、被覆層21により金属部19に接触させずに保護することができる。
なお、上記の実施形態において金属部19は、金属を主成分としている。金属部19は金属成分のみからなるものであってもよいし、セラミックスやガラスなどの成分を含有してもよい。金属成分としては、具体的には銀やパラジウムなどが挙げられる。
被覆層21としては、外気や使用環境での雰囲気により金属部19が劣化することを抑制することができるものであればよく、具体的には、樹脂、ガラス、鉛、AgSを始めとする銀化合物などを用いることができる。樹脂は、伸縮性能が優れていることから、積層型圧電素子を高速に駆動させても伸縮の速度に追随できるので、積層型圧電素子の駆動距離を大きくとることができる。また、上記のガラスやAgSは、金属部19や圧電体層3と接合性がよいため、金属部19の変性を安定して抑制することができる。
特に、被覆層21が、ガラスを主成分とすることが好ましい。ガラス成分は金属部19との接合性がよいため、被覆層21としてガラスを主成分とするものを用いることにより、金属部19と被覆層21の接合性を高めることができる。また、ガラス成分は圧電体層3との接合性もよいため、上に示したように被覆層21が圧電体層3と接合している場合においては、圧電体層3と被覆層21の接合性を高めることもできる。なおここで、主成分とは、含有する成分のうち、質量%の最も大きい成分を意味するものとする。また、ガラス特有の非結晶状態を分析するには、X線回折(XRD)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いればよい。
さらに、ガラスの主成分が珪素酸化物であることが好ましい。積層型圧電素子を焼成して形成する際に金属部19の主成分とともに珪素酸化物が液相を形成して、焼結を進行させるだけでなく、金属部19との親和性が高くなるからである。これにより、金属部19と被覆層21の接合性をより一層高めることができる。
また、被覆層21が、金属部19の主成分を含有していることが好ましい。金属部19の主成分を含有していることにより、金属部19と被覆層21に含有される金属部19の主成分とが結合し、アンカー効果を得ることができるからである。これにより、金属部19と被覆層21の接合性をより高めることができる。
さらに、被覆層21が、金属部19の主成分の酸化物を含有していることがより好ましい。金属部19の主成分の酸化物を含有していることにより、金属結合よりも結合力の強いイオン結合により金属部19と被覆層21とが結合するので、金属部19と被覆層21の接合性をより一層高めることができるからである。
また、金属部19が銀を主成分とする場合には、被覆層21としてAgSを始めとする銀化合物を用いることが有効である。金属部19及び被覆層21がどちらも銀を主成分としているため、金属部19と被覆層21の接合性を高めることができるからである。
また、被覆層21が、図7のように、積層された複数の層からなることが好ましい。被覆層21が複数の層からなることにより、いずれかの層にクラックが発生した場合であっても、このクラックの伝播を上記の層だけに留めて複数の被覆層21の層間でクラックを停止させ、他の層にクラックが伸展することを防止できるからである。これにより、被覆層21全体にクラックの影響が及ぶことを抑制できる。具体的には、内側の被覆層21として上記のガラス、鉛、AgS等を用い、外側の被覆層21として金や樹脂を用いることができる。
さらに、被覆層21が、金属部19の主成分の含有量の異なる複数の層からなることがより好ましい。被覆層21に金属部19の主成分を含有させることにより、被覆層21の熱膨張係数を金属部19の熱膨張係数に近づけることができる。そして、被覆層21が上記のように複数の層からなる場合には、被覆層21の熱膨張係数を段階的に金属部19の熱膨張係数に近づけることができるため、被覆層21と金属部19との間で熱膨張差により生じる応力を緩和させることができるからである。
また、被覆層21が、弾性率の異なる複数の層からなることが好ましい。被覆層21が、弾性率の異なる複数の層からなる場合には、被覆層21の弾性率を段階的に金属部19の弾性率に近づけることができるため、被覆層21と金属部19との間で伸縮駆動により生じる応力を緩和させることができるからである。結果として、被覆層21の金属部19からの剥離を抑制することができ、また、金属部19や被覆層21におけるクラックの発生を抑制することができる。
特に、金属部19に接する被覆層21はシリカ等のガラスからなる被覆層21を用い、その上部に樹脂からなる被覆層21を用いることが好ましい。樹脂特有の優れた伸縮性能とガラス特有の優れた密着性能をあわせもつことができるからである。また、被覆層21の金属部19に接するガラスからなる被覆層21に亀裂が生じるような応力が内部から加わった場合でも、この内側のガラスからなる被覆層21でクラックの伝播が抑えられ、伸縮性のある外側の樹脂からなる被覆層への亀裂の伝播が抑制される。
次に、本実施形態にかかる積層型圧電素子の製法について説明する。
まず、圧電体層3となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してスラリーを作製する。そして、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、セラミックグリーンシートが作製される。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、PbZrO-PbTiO等からなるペロブスカイト型酸化物などを用いることができる。また、可塑剤としては、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオチル)などを用いることができる。
次に、金属層5となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウム等の金属粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合することで、導電性ペーストを作製することができる。この導電性ペーストを全面域にスクリーン印刷法を用いて配設し、後述するように、焼成することで内部電極13が形成される。
上記導電性ペーストを焼成することにより、内部電極13を形成することができるが、空隙17を介して互いに離隔する金属部19を有する低剛性金属層15を形成するためには、上記の飛散成分が内部電極13を形成するための導電性ペーストより過剰に混入された導電性ペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷法を用いて配設することにより、焼成や脱脂の工程で過剰に混入された飛散成分が飛散するので、空隙17を介して互いに離隔した金属部19を形成することができる。
また、空隙17を介して互いに離隔する金属部19を形成する方法は、上記の方法に限られない。例えば、スクリーンのメッシュの度数や、パターン形状を変更することによっても上記の金属部19を形成することができる。具体的には、スクリーンのメッシュサイズを15μm以下とすることで、インクペースト量の通過が不十分となり、いわゆる、かすれパターン形状の状態となるので、空隙17を介して互いに離隔する金属部19を形成することができる。
また、スクリーンにインクペーストを通さないようにマスキングすることによっても、同様にインクペーストの通過が不十分となるので、空隙17を介して互いに離隔する金属部19を形成することができる。マスキングの形状は、楕円や円形といった略円形が応力を緩和する効果が高いので好ましい。
金属部19の側面の少なくとも一部を被覆する被覆層21を形成する方法としては、下記の方法が挙げられる。1つ目の方法としては、セラミックグリーンシートと導電性ペーストを積層し焼成した積層体を被覆層21の成分の溶液に浸漬する方法が挙げられる。このように被覆層21の成分の溶液に積層体を浸漬して引き上げることにより、金属部19表面を被覆層21により被覆することができる。この時、容器中で積層体を浸漬した後に容器をロータリーポンプ等の真空ポンプで、容器ごと真空引きすることで、低剛性金属層中の空隙17にある空気等の気体を脱泡することができるので、被覆層21の成分を行き渡らせることができる。その後、真空から大気圧に戻した後に、素子を加熱して溶液から溶媒のみを揮発させれば、空隙17とともに被覆層21を形成することができる。
被覆層21の成分の溶液としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、あるいは、コロイダルシリカを水に分散させた溶液を用いることができる。この場合には、被覆層21は主にSiの酸化物からなるガラスの被覆層21を形成することができる。また、エポキシ系あるいはシリコーン系の樹脂をアセトン、エーテル、クロロホルム、あるいは工業用シンナー等の溶剤に希釈させた溶液を用いることで、被覆層21は樹脂からなる被覆層21を形成することができる。
2つ目の方法としては、上記の低剛性金属層15となる導電性ペーストに被覆層21となる部材を混入させて上記の焼成時に析出させる方法が挙げられる。特に、このような被覆層21となる成分を焼成時に析出させることによる被覆層21の形成方法を用いた場合、上記の被覆層21の成分の溶液に積層体を浸漬して引き上げる、という工程が不要であるため、コストを低減させることができる。
内部電極13が銀−パラジウムからなる時には、内部電極13となる導電性ペーストと比較して銀−パラジウムの銀比率の高い導電性ペーストを低剛性金属層15として用いることにより、複雑な工程を経ることなく低剛性金属層15を形成することができる。
これは、低剛性金属層15が形成される位置に上記の銀比率の高い導電性ペーストを配設して同時焼成により積層構造体7を形成すると、銀比率の高い導電性ペーストから銀が拡散していくからである。銀が拡散することによって互いに離隔する複数の金属部19が形成され、結果、上記の銀比率の高い導電性ペーストは圧電体層3や内部電極13と比較して剛性の低い低剛性金属層15となる。
このとき、低剛性金属層15となる導電性ペーストに被覆層21を形成するガラスを混入させておくことにより、被覆層21を形成することができる。これは、導電性ペーストに混入された被覆層21を形成するガラスが、銀とともに拡散するからである。既に示したように、内部電極13となる導電性ペーストと比較して銀−パラジウムの銀比率の高い導電性ペーストを低剛性金属層15として用いた場合、銀比率の高い導電性ペーストから銀が拡散する。この銀の拡散に伴い、連動して被覆層21となるガラス成分が拡散する。
さらに、被覆層21として、銀よりも蒸気圧の高い鉛の酸化物を含有させることがより好ましい。拡散の過程で上記の鉛酸化物が金属部19から蒸発するために、この鉛酸化物の蒸発と連動して、被覆層21を形成するガラスが金属部19を被覆する位置に析出するからである。従って、被覆層21を形成するガラスとしては、PbO−SiOを含有したガラスが好ましい。
なお、積層構造体は、上記製法によって作製されるものに限定されることはなく、複数の圧電体層3と複数の金属層5とを交互に積層してなる積層構造体を作製できれば、どのような製法によって形成されても良い。
その後、積層型圧電素子の側面に端部が露出する内部電極13と導通が得られるように外部電極9を形成する。この外部電極9は、ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これを印刷し焼き付けることによって得ることができる。
次に、シリコーンゴムからなる外装樹脂を含む樹脂溶液に、外部電極9を形成した積層構造体を浸漬する。そして、シリコーン樹脂溶液を真空脱気することにより、積層構造体の側面外周表面の凹凸部にシリコーン樹脂を密着させ、その後、シリコーン樹脂溶液から積層構造体を引き上げる。これにより、積層構造体の側面にシリコーン樹脂(不図示)がコーティングされる。そして、外部電極9に通電部23としてリード線を導電性接着剤(不図示)等で接続する。
リード線を介して一対の外部電極9に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、積層構造体を分極することによって、本実施形態の積層型圧電素子が完成する。リード線を外部の電圧供給部(不図示)に接続し、通電部23であるリード線及び外部電極9を介して内部電極13に電圧を印加することにより、各圧電体層3は逆圧電効果によって大きく変位させることができる。これにより、例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能させることが可能となる。
次に、本発明の噴射装置について説明する。図8は、本発明の噴射装置にかかる実施形態の一例を示す概略断面図である。図8に示すように、本実施形態にかかる噴射装置は、一端に噴射孔を有する収納容器の内部に上記実施形態に代表される積層型圧電素子が収納されている。収納容器内には、噴射孔を開閉することができるニードルバルブが配設されている。噴射孔には燃料通路がニードルバルブの動きに応じて連通可能に配設されている。この燃料通路は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブが噴射孔を開放すると、燃料通路に供給されていた燃料が一定の高圧で図示しない内燃機関の燃料室内に噴出されるように構成されている。
また、ニードルバルブの上端部は内径が大きくなっており、収納容器に形成されたシリンダと摺動可能なピストンが配置されている。そして、収納容器内には、上記した積層型圧電素子が収納されている。
このような噴射装置では、電圧が印加されることによって積層型圧電素子が伸長すると、ピストンが押圧され、ニードルバルブが噴射孔を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると積層型圧電素子が収縮し、皿バネがピストンを押し返し、噴射孔が燃料通路と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
また、本実施形態の噴射装置は、噴射孔を有する容器と、積層型圧電素子と、を備え、容器内に充填された液体が積層型圧電素子の駆動により噴射孔から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、積層型圧電素子が必ずしも容器の内部にある必要はなく、積層型圧電素子の駆動によって容器の内部に圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本実施形態において、液体とは、燃料、インクなどの他、導電性ペースト等の種々の液状流体が含まれる。
次に、本発明の燃料噴射システムについて説明する。図9は、本発明の燃料噴射システムにかかる実施形態の一例を示す概略図である。図9に示すように、本実施形態にかかる燃料噴射システムは、高圧燃料を蓄えるコモンレールと、このコモンレールに蓄えられた燃料を噴射する複数の上記噴射装置と、コモンレールに高圧の燃料を供給する圧力ポンプと、噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットと、を備えている。
噴射制御ユニットは、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量やタイミングを制御するものである。圧力ポンプは、燃料タンクから燃料を1000〜2000気圧程度、好ましくは、1500〜1700気圧程度にしてコモンレールに送り込む役割を果たす。コモンレールでは、圧力ポンプから送られてきた燃料を蓄え、適宜噴射装置に送り込む。噴射装置は、上述したように噴射孔から少量の燃料を燃焼室に霧状に噴射する。
なお、本発明は、積層型圧電素子、噴射装置及び燃料噴射システムに関するものであるが、上記の実施形態に限定されるものでなく、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、または、燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、加重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載される回路素子などの圧電特性を利用した素子であれば、実施可能である。
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何ら差し支えない。
[実施例1]
本発明の積層型圧電素子1を以下のようにして作製した。
まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を主成分とする原料粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
次に、Ag95wt%−Pd5wt%の金属組成である銀パラジウム合金粉末を含有する原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストAを作製した。
さらに、Ag98wt%−Pd2wt%の金属組成である銀パラジウム合金粉末を含有する原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストBを作製した。
試料番号1においては、上記セラミックグリーンシートの片面に、導電性ペーストAをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。そして、導電性ペーストAが印刷された各グリーンシートを積層して積層構造体7を作製した。なお、積層数としては、金属層5の数が300となるように積層し、積層構造体7の積層方向の両端部には、導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシートのみをそれぞれ20枚積層した。
試料番号2〜5においては、上記セラミックグリーンシートの片面に、導電性ペーストAをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。また、別の上記セラミックグリーンシートの片面に、導電性ペーストBをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。金属層5のうち試料番号2では積層方向の50、250番目には導電性ペーストBが位置するようにして、試料番号3では積層方向の50、100、150、200、250番目には導電性ペーストBが位置するようにして、そして試料番号4、5では、積層方向の1、50、100、150、200、250、300番目には導電性ペーストBが位置するようにして、導電性ペーストAが印刷されたグリーンシートと導電性ペーストBが印刷されたグリーンシートを積層して、積層構造体7を作製した。なお、試料番号1と同様に、積層数としては、金属層5の数が300となるように積層され、積層構造体7の積層方向の両端部には、導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシートのみをそれぞれ20枚積層した。
次に、それぞれの試料番号の積層構造体7に所定の温度で脱バインダーをした後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。このとき、試料番号2〜5の積層構造体7では、銀濃度の異なる導電性ペーストAと導電性ペーストBを用いたため、銀濃度の高い導電性ペーストBから銀濃度の低い導電性ペーストAへ銀が拡散した。これにより、表1に示すように空隙率が80%と空隙率の高い低剛性金属層15が形成された。
ここで、試料番号2〜4の焼結体については、TEOSを10%含有した水溶液にゲル化加速剤として稀硫酸を1ppm加えた溶液に浸漬し、試料番号5の焼結体は、エポキシ樹脂(商品名アラルダイトLY−5052)を5%含有したアセトン溶液に浸漬し、低剛性金属層に溶液をしみこませるために、容器ごとロータリーポンプで2×10Pa以下の気圧になるまで減圧した。その後大気圧まで戻したのち、80℃で1時間乾燥した。
そして、各々の試料番号の積層体7には、所望の寸法に加工した上で外部電極9をそれぞれ形成した。まず、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極9用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極9を形成する箇所にスクリーン印刷等によって印刷した。さらに、600〜800℃で焼成して外部電極9を形成した。以上のようにして、積層型圧電素子1が作製された。
ここで、試料番号5の積層型圧電素子1については、エポキシ樹脂(商品名アラルダイトLY−5052)を5%含有したアセトン溶液に浸漬し、低剛性金属層に溶液をしみこませるために、容器ごとロータリーポンプで2×10Pa以下の気圧になるまで減圧した。その後大気圧まで戻したのち、素子表面をアセトンで洗浄して樹脂成分を除去して、80℃で1時間乾燥した。
上記の試料番号の積層型圧電素子1をそれぞれ2個ずつ作製した。これは、1個は走査型電子顕微鏡(SEM)による観察に用い、残りの1個は、駆動評価に用いたためである。各試料番号の積層型圧電素子1の作製に用いた導電性ペーストの成分、焼成後の金属層5の空隙率、低剛性金属層15の形状について表1に示す。
なお、空隙率とは、積層構造体7の積層方向に垂直若しくは平行な断面において、積層構造体7の断面積に対して空隙17の面積が占める割合(%)を意味する。空隙率を測定は以下のようにして行った。
まず、積層方向に垂直な断面が露出するように、積層構造体7を公知の研磨手段を用いて研磨処理する。具体的には、例えば研磨装置としてケメット・ジャパン(株)社製卓上研磨機KEMET−V−300を用いてダイヤモンドペーストで研磨することができる。この研磨処理により露出した断面を、例えば、SEM、光学顕微鏡、金属顕微鏡などにより観察して断面画像を得て、この断面画像を画像処理することによって蒸気の空隙率を測定した。
















Figure 0005090462
表1に示すように、試料番号1の積層型圧電素子1は同一成分の導電性ペーストを用いたため、低剛性金属層15が形成されていなかった。一方、試料番号2〜5の積層型圧電素子1では、銀の拡散により、低剛性金属層15が形成されている。また、このため、金属層5の空隙率15%に対して低剛性金属層15の空隙率は80%となり、金属層5及び圧電体層3と比較して剛性の小さい低剛性金属層15を形成することができたことがわかる。
SEMによる観察の結果、試料番号2〜4においては、図4に示すように、複数の金属部19の一部には、SiOのガラス体からなる被覆層21が形成されていた。これはTEOS中のSi酸化物が、ゲル化した後にガラス体として金属部19表面に析出したからである。また、複数の金属部19の一部には、上記SiOのガラス体からなる被覆層21の他、Agが硫化したAgSからなる被覆層21が形成されていた。
試料番号5においては、図4に示すように、複数の金属部19の一部に、エポキシ樹脂からなる被覆層21が形成されていた。
次に、駆動評価を行った。駆動評価としては、高速応答性評価と耐久性評価を行った。
まず、外部電極9にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極9にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、積層型圧電素子1を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子1に170Vの直流電圧を印加して初期状態の変位量を測定したところ、試料番号1の圧電アクチュエータは45μmであり、試料番号2−4の圧電アクチュエータは40μmであった。試料番号1の圧電アクチュエータの変位量が他の試料番号の圧電アクチュエータよりも大きいのは、試料番号2−4の積層型圧電素子1では、低剛性金属層15が内部電極13として作用しなかったためである。
高速応答性評価としては、各々の圧電アクチュエータに室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzから徐々に周波数を増加させて印加した。耐久性評価としては、各々の圧電アクチュエータに室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表2に示すとおりである。
Figure 0005090462
表2に示すように、高速応答性評価の結果として、試料番号1の圧電アクチュエータでは、周波数が1kHzを超えた時にうなり音を発していた。これは、試料番号1の積層型圧電素子1は、低剛性金属層15を備えていないため、内部電極13による圧電体層3への拘束力が大きいからである。圧電体層3の拘束力が大きいことにより高速応答性が阻害されて、結果、印加した交流電圧の周波数に追従できなかったためと考えられる。
なお、駆動周波数を確認するために、試料番号1の圧電アクチュエータのパルス波形をヨコガワ製オシロスコープDL1640Lを用いて確認したところ、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認された。
また、表2に示すように、耐久性評価の結果として、試料番号1の圧電アクチュエータでは、評価試験後の変位量は5μmと、評価試験前と比較して90%近く低下していた。また、試料番号1の圧電アクチュエータでは、積層圧電素子の一部に剥がれが見られた。
一方、試料番号2−5の圧電アクチュエータでは、剥がれは見られず、評価試験後の変位量も、35〜40μmと、評価試験前と比較して変位量の低下は10%以下に抑えられていた。特に、試料番号5の圧電アクチュエータでは、変位量の低下が殆ど見られず、非常に高い耐久性を有していることが分かった。
[実施例2]
本発明の積層型圧電素子1を以下のようにして作製した。
まず、実施例1のグリーンシートと同様にして、セラミックグリーンシートを作製した。次に、実施例1の導電性ペーストAと同様にして導電性ペーストCを作製した。さらに、Ag98wt%−Pd2wt%の金属組成である銀合金粉末を含有する原料粉末に、被覆層21を形成する成分として、銀パラジウム合金粉末に対して0.01wt%のSiOとなるテトラエトキシシラン(TEOS)と銀パラジウム合金粉末に対して0.01wt%のPbをバインダーとともに加えた導電性ペーストDを作製した。
試料番号6においては、上記セラミックグリーンシートの片面に、導電性ペーストCをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。そして、導電性ペーストCが印刷された各グリーンシートを積層して積層構造体7を作製した。なお、積層数としては、金属層5の数が300となるように積層し、積層構造体7の積層方向の両端部には、導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシートのみをそれぞれ20枚積層した。
試料番号7〜10においては、上記セラミックグリーンシートの片面に、導電性ペーストCをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。また、別の上記セラミックグリーンシートの片面に、導電性ペーストDをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。金属層5のうち試料番号7では積層方向の50、250番目には導電性ペーストDが位置するようにして、試料番号8では積層方向の50、100、150、200、250番目には導電性ペーストDが位置するようにして積層構造体7を作製した。
そして試料番号9、10では、積層方向の1、50、100、150、200、250、300番目には導電性ペーストDが位置するように導電性ペーストCが印刷されたグリーンシートと導電性ペーストDが印刷されたグリーンシートとを積層して、積層構造体7を作製した。なお、試料番号6と同様に、積層数としては、金属層5の数が300となるように積層され、積層構造体7の積層方向の両端部には、導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシートのみをそれぞれ20枚積層した。
次に、それぞれの試料番号の積層構造体7に所定の温度で脱バインダーをした後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。このとき、試料番号7〜9の積層構造体7では、銀濃度の異なる導電性ペーストCと導電性ペーストDを用いたため、銀濃度の高い導電性ペーストDから銀濃度の低い導電性ペーストCへ銀が拡散した。これにより、表3に示すように空隙率が80%と空隙率の高い低剛性金属層15が形成された。
次に、各々の焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極9をそれぞれ形成した。まず、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極9用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極9を形成する箇所にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成すると外部電極9が形成できる。以上のようにして、積層型圧電素子1が作製された。
ここで、試料番号10の積層型圧電素子1については、エポキシ樹脂(商品名アラルダイトLY−5052)を5%含有したアセトン溶液に浸漬し、低剛性金属層に溶液をしみこませるために、容器ごとロータリーポンプで2×10Pa以下の気圧になるまで減圧した。その後大気圧まで戻したのち、素子表面をアセトンで洗浄して樹脂成分を除去して、80℃で1時間乾燥した。
上記の試料番号の積層型圧電素子1をそれぞれ2個ずつ作製した。これは、実施例1と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察及び駆動評価に用いたためである。各試料番号の積層型圧電素子1の作製に用いた導電性ペーストの成分、焼成後の金属層5の空隙率、低剛性金属層15の形状について表3に示す。
なお、実施例2において、空隙率とは実施例1と同様の割合(%)を意味する。空隙率の測定に関しても実施例1と同様である。
Figure 0005090462
表3に示すように、試料番号6の積層型圧電素子1は同一成分の導電性ペーストを用いたため、低剛性金属層15が形成されていなかった。一方、試料番号7−9の積層型圧電素子1では、銀の拡散により、低剛性金属層15が形成されている。また、このため、金属層5の空隙率15%に対して低剛性金属層15の空隙率は80%となり、金属層5及び圧電体層3と比較して剛性の小さい低剛性金属層15を形成することができたことがわかる。
SEMによる観察の結果、試料番号7〜9においては、図6に示すように、低剛性金属層15における複数の金属部19の一部には、SiO−PbO−AgOのガラス体からなる被覆層21が形成されていた。これは導電性ペーストに混入されたSi酸化物、Pb酸化物が、銀とともに拡散し、一部のPb酸化物の蒸発とともに上記のガラス体が金属部19表面に析出するからである。
試料番号10においては、図7に示すように、低剛性金属層15における複数の金属部19の一部が、SiO−PbO−AgOのガラス体からなる被覆層21aの表面の位置部に、エポキシ樹脂からなる被覆層21bが形成されていた。
次に、駆動評価を行った。駆動評価としては、高速応答性評価と耐久性評価を行った。
まず、外部電極9にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極9にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、積層型圧電素子1を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子1に170Vの直流電圧を印加して初期状態の変位量を測定したところ、試料番号6の圧電アクチュエータは45μmであり、試料番号7−9の圧電アクチュエータは40μmであった。試料番号1の圧電アクチュエータの変位量が他の試料番号の圧電アクチュエータよりも大きいのは、試料番号7−9の積層型圧電素子1では、低剛性金属層15が内部電極13として作用しなかったためである。
高速応答性評価としては、各々の圧電アクチュエータに室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzから徐々に周波数を増加させて印加した。耐久性評価としては、各々の圧電アクチュエータに室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表4に示すとおりである。
Figure 0005090462
表4に示すように、高速応答性評価の結果として、試料番号6の圧電アクチュエータでは、周波数が1kHzを超えた時にうなり音を発していた。これは、試料番号6の積層型圧電素子1は、実施例1の試料番号1の素子1と同様に、低剛性金属層15を備えていないため、印加した交流電圧の周波数に追従できなかったためと考えられる。
駆動周波数を確認するために、試料番号6の圧電アクチュエータのパルス波形をヨコガワ製オシロスコープDL1640Lを用いて確認したところ、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認された。
また、表4に示すように、耐久性評価の結果として、試料番号6の圧電アクチュエータでは、評価試験後の変位量は5μmと、評価試験前と比較して90%近く低下していた。また、試料番号1の圧電アクチュエータでは、積層圧電素子の一部に剥がれが見られた。
一方、試料番号7〜10の圧電アクチュエータでは、剥がれは見られず、評価試験後の変位量も、35〜40μmと、評価試験前と比較して変位量の低下は10%以下に抑えられていた。特に、試料番号9、10の圧電アクチュエータでは、変位量の低下が殆ど見られず、非常に高い耐久性を有していることが分かった。

Claims (24)

  1. 複数の圧電体層と複数の金属層とが交互に積層された積層構造体を有する積層型圧電素子であって、
    前記複数の金属層は、内部電極と、前記圧電体層及び前記内部電極と比較して剛性が低い低剛性金属層と、を備え、
    前記低剛性金属層は、空隙を介して互いに離隔する複数の金属部と、該金属部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを有していることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 前記複数の金属部のうちの少なくとも1つの金属部は、当該金属部の表面の一部が露出していることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  3. 前記複数の金属部のうちの少なくとも1つの金属部は、当該金属部の表面が互いに離隔する複数の前記被覆層に被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の積層型圧電素子。
  4. 前記複数の金属部のうちの少なくとも1つの金属部は、当該金属部の表面が互いに離隔する複数の領域で露出していることを特徴とする請求項2に記載の積層型圧電素子。
  5. 前記金属部の表面を互いに離隔する複数の領域で露出させる被覆層が網目状であることを特徴とする請求項4に記載の積層型圧電素子。
  6. 前記被覆層の少なくとも一部は、前記圧電体層と接合していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  7. 前記複数の金属部の少なくとも1つの金属部は、前記被覆層を介して圧電体層と接合されていることを特徴とする請求項1〜6のうちの1つに記載の積層型圧電素子。
  8. 前記複数の金属部の少なくとも1つの金属部は、当該金属部の表面全体が前記被覆層に被覆されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  9. 前記被覆層は樹脂から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  10. 前記被覆層は銀化合物から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  11. 前記被覆層は鉛から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  12. 前記被覆層は、ガラスを主成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  13. 前記ガラスは、主成分が珪素酸化物であることを特徴とする請求項12記載の積層型圧電素子。
  14. 前記被覆層は、前記金属部の主成分を含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8および請求項12のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  15. 前記被覆層は、前記金属部の主成分の酸化物を含有していることを特徴とする請求項14に記載の積層型圧電素子。
  16. 前記金属部が銀を主成分とし、前記被覆層が銀化合物から成ることを特徴とする請求項14に記載の積層型圧電素子。
  17. 前記被覆層は、積層された複数の層からなることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  18. 前記被覆層は、前記金属部の主成分の含有量の異なる複数の層からなることを特徴とする請求項17に記載の積層型圧電素子。
  19. 複数の層から成る前記被覆層は、前記金属部に近づくに伴って前記金属部の主成分の含有量が多くなることを特徴とする請求項18に記載の積層型圧電素子。
  20. 前記被覆層は、弾性率の異なる複数の層からなることを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  21. 複数の層から成る前記被覆層は、前記金属部に近づくに伴って弾性率が前記金属部の弾性率に近くなることを特徴とする請求項20に記載の積層型圧電素子。
  22. 複数の層から成る前記被覆層は、前記金属部に接するガラスから成る層と、その上の樹脂から成る層とを有していることを特徴とする請求項21に記載の積層型圧電素子。
  23. 請求項1乃至請求項22のいずれかに記載の積層型圧電素子と噴射孔とを備え、前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を吐出させるように構成したことを特徴とする噴射装置。
  24. 高圧燃料を備えるコモンレールと、
    このコモンレールに蓄えられた燃料を噴射する請求項23に記載の噴射装置と、
    前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御システムと、
    を備えた燃料噴射システム。
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