JP5093694B2 - 酸化物ぺロブスカイト薄膜el素子 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子に関する。
近年、発光層に有機材料、希土類添加ZnSやBaAl2S4等の無機材料を利用したEL素子が開発されているが、大気暴露によって発光特性が急激に劣化する問題がある。これらの材料によってEL素子を作製する際には、アセンブリ時のラッピング技術や封止技術が必要となり、その作製および製造ラインには煩雑さを伴い、そのため、商品コストが高価となること指摘されている。また、有機EL発光層に用いられる原料はグラム単価で白金以上に高価であるため、コスト高の要因となっている。さらに、無機ELでは駆動電圧が一般的に、200V以上であることから、駆動用の電源回路が大型となり薄型化は有機EL以上に困難である。
酸化物ぺロブスカイト構造は単純で、かつ化学的に安定な材料であることから、大気暴露による劣化や経年劣化の低減が期待できる。近年、酸化物ぺロブスカイト多結晶粉体による蛍光材料の研究開発が盛んに行われ、良好な蛍光特性が得られている。他方、エピタキシャル薄膜については、ディスプレイ作製の基礎となる赤色、緑色、青色の3原色の開発も行われ始め、良好な蛍光が得られている一方、電界印加によるELはまだ得られていない。ディスプレイ等への応用の際には、薄膜によって、薄膜電極材料上に発光層を誘電体層で挟み上部電極を作製したEL素子が必要不可欠であり、薄膜による誘電体(ホール輸送層・電子輸送層として利用)と発光層の多層構造の開発および誘電体と電極材料の密着性の良い界面制御技術を達成したEL素子の開発遂行が急務とされている。
酸化物多結晶による蛍光特性については、非特許文献1には、多結晶体ASnO3系ペロブスカイト構造でCa, Sr, Baで置換することで蛍光特性が得られることが示されている。また、非特許文献2には、多結晶体Sn系層状ペロブスカイト構造で青色蛍光が得られることが示されている。また、非特許文献3には、多結晶体CaSnO3でTbを置換した際の蛍光特性が示されている。また、非特許文献4には、多結晶体層状ペロブスカイトSrn+1TiO3n+1系で赤色蛍光特性が示されている。また、非特許文献5には、SrTiO3単結晶および薄膜に関し、酸素欠損により青白蛍光することが示されている。また、非特許文献6には、多結晶体SrTiO3でPr原子を置換した際に赤色蛍光特性が得られることが示されている。また、非特許文献7には、多結晶体Pr原子置換(CaSrBa)TiO3の赤色蛍光特性が示されている。
酸化物薄膜による蛍光特性については、非特許文献8には、薄膜MHfO3:Tm置換の青色蛍光特性が示されている。また、非特許文献9には、Er原子で置換したBaTiO3薄膜の蛍光特性が示されている。また、非特許文献10には、薄膜CaSrTiO3:Pr置換の赤色蛍光特性が示されている。また、特許文献1には、イットリウムアルミネート等の無機母材材料に金属イオンを置換した複酸化物蛍光体薄膜の製造方法が示されている。また、特許文献2には、無機母体材料に希土類金属イオンや遷移金属イオンを含有した材料で、機械的外力印加により発光する薄膜製造方法が示されている。
酸化物薄膜によるEL特性につては、非特許文献11に、Ga2O3にEuを置換した薄膜EL素子の赤色発光特性が示されている。特許文献3には、セラミックシートを輸送層として利用した無機薄膜EL素子が示されている。
酸化物多結晶については、特許文献4に、多結晶体Snペロブスカイト酸化物系の蛍光特性が示されている。また、特許文献5には、酸化物ぺロブスカイト構造を有するTi系薄膜、Sn系薄膜によって光の3原色である、赤、緑、青色の蛍光特性を得たことが示されている。また、特許文献6には、発光層に非ペロブスカイト構造であるZn2SiO4:Mn薄膜を用いたEL素子に関し、輝度および寿命を向上させる手法が示されている。
J. Alloy Compd. Vol.387, pp L1-4 (2005) J. Mater. Sci. Lett., Vol.11, 1330 (1992) Materials Chemistry and Physics Vol.93, pp.129-132 (2005) J.J. Appl. Phys. Vol.44, pp. 761-764 (2005) Nature materials Vol 4, 816 (2005) Appl. Phy. Lett Vol 78, 655 (2001) Chem. Mater. Vol 17, 3200 (2005) Appl. Surf. Sci. Vol 197-198, 402 (2002) Appl. Phy. Lett Vol 65, 25 (1994) Appl. Phy. Lett Vol 89, 261915-1 (2006) Materials Science and Engineering B Vol 146, 252 (2008) 特開2003-183646 特開平11-219601 特開2007-157501 特願2005-322286 特願2006-190755 特開2006-134691
本発明の目的は、基本構造として、下部電極上に、酸化物ぺロブスカイト薄膜からなるホール輸送層/発光層/電子輸送層を作製し、その上に上部電極が作製された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ディスプレイ作成の基礎となる赤、緑、青色の内、波長610nm近傍の赤色発光を得る酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト薄膜からなる電子輸送層と、該電子輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト薄膜からなるホール輸送層と、該ホール輸送層上に成膜されたバッファー層と、該バッファー層上に成膜された透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第2の手段は、単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト薄膜からなる第1の輸送層と、該第1の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト薄膜からなる第1の発光層と、該第1の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト薄膜からなる第2の輸送層と、該第2の輸送層上に成膜された該第1の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト薄膜からなる第2の発光層と、該第2の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト薄膜からなる第3の輸送層と、該第3の輸送層上に成膜されたバッファー層と、該バッファー層上に成膜された透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第3の手段は、TiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3(001)の単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなる電子輸送層と、該電子輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなるホール輸送層と、該ホール輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第4の手段は、TiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3(001)の単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなる第1の輸送層と、該第1の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 薄膜からなる第1の発光層と、該第1の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなる第2の輸送層と、該第2の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 薄膜からなる第2の発光層と、該第2の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなる第3の輸送層と、該第3の輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第5の手段は、SrTiO3(001)の単結晶研磨基板と、該基板上に成膜されたTiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3薄膜からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなる電子輸送層と、該電子輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜からなるホール輸送層と、該ホール輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第6の手段は、TiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3(001)の単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトBaTiO3薄膜からなる電子輸送層と、該電子輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトBaTiO3薄膜膜からなるホール輸送層と、該ホール輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第7の手段は、第1の手段ないし第6の手段のいずれか1つの手段において、前記誘電体である酸化物ペロブスカイトからなる輸送層の格子定数は、0.39nm±0.03nmの範囲にあることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
第8の手段は、第1の手段ないし第7の手段のいずれか1つの手段において、前記酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子は、900℃以上1200℃以下の範囲内で熱処理されていることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子である。
本発明によれば、薄膜による酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子は、結晶性の優れた絶縁体からなる電子輸送層およびホール輸送層および発光体薄膜から構成され、このため誘電率の大きな値を有する絶縁体薄膜が実現される。これによって効率的に発光層に電界が印加され、低電圧駆動が可能となる。これによって駆動電源回路システムの小型化が実現され、薄型パネルによる表示装置の小型化が促進される。またSrTiO3を母材とする酸化物ぺロブスカイト材料は化学的安定性に優れ、大気中に長期間曝しても組成変化することもなく、発光現象が大きく変化することもない。これらの特徴を利用することによって、試料の大気中暴露による結晶性の劣化が極めて少ないことから発光特性の劣化が低減される。これによって、アセンブリ時の複雑なラッピング技術等が不要となり、コスト低下が期待される。
また、本発明によれば、酸化物ぺロブスカイトエピタキシャル薄膜によってディスプレイの基本原色である赤、緑、青の3原色のうち、赤色の優れた発光特性を有する酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子が得られ、その結果、酸化物エピタキシャル薄膜によるエレクトロルミネッセンス(EL)素子の開発を促進することができる。
また、本発明によれば、地球上に多く存在するCa、Sr、Ti原子と極めて微量な希土類元素Pr原子を利用するため材料コスト低下に寄与することができる。
第1の実施形態の発明に係る、基板(下部電極)1上に、薄膜からなる電子輸送層2/発光層3/ホール輸送層4の多層膜を形成し、その上にバッファー層5を介して透明電極(上部電極)6が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。 第1の実施形態の発明に係る、700℃で成長時のx線回折パターンを示す図である。 第1の実施形態の発明に係る700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧25V、周波数1kHZで得られたEL特性を示す図である。 第2の実施形態の発明に係る、基板(下部電極)7上に、薄膜からなる輸送層8/発光層9/輸送層10/発光層11/輸送層120の多層膜を形成し、その上にバッファー層13を介して透明電極(上部電極)14が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。
第2の実施形態の発明に係る、700℃で成長時のx線回折パターンを示す図である。 第2の実施形態の発明に係る、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧40V、周波数1kHzで得られたEL特性を示す図である。 第3の実施形態の発明に係る、基板15上に、薄膜からなる下部電極16/電子輸送層17/発光層18/ホール輸送層19の多層膜を形成し、その上にバッファー層20を介して透明電極(上部電極)21が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。 第3の実施形態の発明に係る、700℃で成長時のx線回折パターンを示す図である。 第3の実施形態の発明に係る、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧25V、周波数1kHzで得られたEL特性を示す図である。
第4の実施形態の発明に係る、基板(下部電極)22上に、薄膜からなる電子輸送層23/発光層24/ホール輸送層25の多層膜を形成し、その上にバッファー層26を介して透明電極(上部電極)27が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。 第4の実施形態の発明に係る、700℃で成長時のx線回折パターンをに示す図である。 第4の実施形態の発明に係る、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧10V、周波数1kHzで得られたEL特性を示す図である。 発光層CSTO:Pr(100)のX線φスキャンの結果を示す強度−Phi(deg.)特性である。
発光層のAFM観測結果を示す図である。 発光層と絶縁体の境界近傍で、配向成長が連続的に行われていることを示す断面TEMで観測した写真である。 他の発光層と絶縁体の境界近傍で、配向成長が連続的に行われていることを断面TEMで観測した写真である。 Nb置換量−抵抗率特性図である。
符号の説明
1 基板(下部電極)
2 電子輸送層
3 発光層
4 ホール輸送層
5 バッファー層
6 透明電極(上部電極)
7 基板(下部電極)
8 輸送層
9 発光層
10 輸送層
11 発光層
12 輸送層
13 バッファー層
14 透明電極(上部電極)
15 基板
16 下部電極
17 電子輸送層
18 発光層
19 ホール輸送層
20 バッファー層
21 透明電極(上部電極)
22 基板(下部電極)
23 電子輸送層
24 発光層
25 ホール輸送層
26 バッファー層
27 透明電極(上部電極)
本発明に係る酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の基本構造は、下部電極上に、薄膜からなるホール輸送層/発光層/電子輸送層を形成し、その上に上部電極が形成された構造からなるものである。ホール輸送層および電子輸送層は、誘電体材料が用いられ、酸化物ぺロブスカイト材料であるSrTiOまたはBaTiO3を薄膜して利用する。発光層は、酸化物ペロブスカイト薄膜CaSrTiO3:Pr置換の赤色蛍光材料が用いられる。これらの材料は結晶の格子定数が3.90nm近傍であることから格子整合性に優れ、積層構造としても上部薄膜まで配向させ優れた結晶性で成長させることができる。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子は、酸化物発光体エピタキシャル薄膜およびホール輸送層・電子輸送層として利用する誘電体薄膜の多層構造をパルスレーザー堆積法よって作製するものであり、ターゲット材料の酸化物ぺロブスカイト蛍光材料およびSrTiO3等のぺロブスカイト誘電体材料をパルスレーザー堆積法で薄膜化するものである。下部電極(基板)には、上記材料と格子整合性の良好なSrTiO3を母材とする電気伝導性材料、上部電極(透明電極)にはITO材料薄膜を用いる。その後、適切な熱処理を施すことによって十分な耐電圧を得、これによってディスプレイ作製の基礎となる波長610nm近傍(赤色)の発光特性を有するエピタキシャル薄膜EL素子を提供することにある。
次に、本発明の第1の実施形態を図1ないし図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係る、基板(下部電極)1上に、薄膜からなる電子輸送層2/発光層3/ホール輸送層4の多層膜を形成し、その上にバッファー層5を介して透明電極(上部電極)6が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。
図1中、1はNb置換STO(100)基板、2は電子輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、3は発光層 エピタキシャル膜 CaSrTiO:Pr、4はホール輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、5はバッファー層 エピタキシャル膜 CeO、6は透明電極 ITOである。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製には、パルスレーザー堆積法を用いる。この方法によれば、成膜雰囲気を自由に選択できることが可能なため、作製薄膜の酸素量を制御することができ、酸化物薄膜成長時には酸素欠損等による電気的特性、蛍光特性の劣化を極めて少なくすることができる。パルスレーザー堆積法は、1Torr以下の低圧酸素中で、酸化物からなるターゲット材料にArF(波長193nm)のエキシマレーザーを照射し、ターゲット材料をプラズマ化させプルームを形成し、そのターゲット材料に対向した面に加熱した基板材料を配置し、薄膜を堆積させる手法である。1000℃以下の温度ではクラスター成長が支配的であり、ターゲット材料をその化学量論組成で成膜させることができる。レーザー照射周波数は4Hzから8Hzであり、成膜時間は30分から180分である。また、基板とターゲット間距離は30mmから34mmである。レーザーエネルギーは約1.0J/cm2から1.2J/cm2である。なお、本発明においては、パルスレーザー堆積法を用いたが、薄膜として他の気相法の1つであるスパッタリング法やゾルゲル法などの液相による成膜手法を用いてもよい。
基板(下部電極)1は、典型例として、電気伝導性を持つNb1%置換SrTiO3(001)単結晶研磨基板を用いる。基板1の結晶構造は正方晶であり、格子定数は3,905nm、室温で0.02Ωcm以下の電気伝導性を有しており、下部電極1として利用することができる。ペロブスカイト酸化物の多くの材料の格子定数は、前記格子定数の数値近傍にあり、この基板材料とその格子整合性が良いため、結晶性の優れた酸化物エピタキシャル薄膜をこの基板(下部電極)1上に成長させることができる。Nb‐0.1%置換SrTiO3(001)単結晶研磨基板の抵抗率は0.1Ωcm以下であることから、これ以上のNb置換SrTiO3(001)単結晶研磨基板を使用することができる。
図17はNb置換量−抵抗率特性図である。このNb置換量−抵抗率特性の特性値を下記表1に示す。
図17及び表1に示したNb置換量−抵抗率特性から、Nb濃度は少なくとも0.1%置換濃度以上であれば体積抵抗率が0.1Ωcm以下の実用上問題ない範囲に入ることがわかる。
基板(下部電極)1上に電子輸送層2である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、発光層3である酸化物ペロブスカイトCa0.6Sr0.4TiO3:Pr0.2%薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、ホール輸送層4である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜し、基板(下部電極)1上に電子輸送層2/発光層3/ホール輸送層4の多層構造を作製する。
この後、連続的にCeO2膜をバッファー層5として酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。このCeO2バッファー層5はITO膜からなる上部電極6のインジウム原子が発光層3の輝度劣化を生じさせる原因となることが実験的に明らかになっているため、インジウムと発光層3との完全分離をするためのバッファー層5の役目をする。この際、酸素圧は10mTorr以上700mTorr以下の範囲で行ったが同様の結果であった。
ここで熱処理を行わず、透明の上部電極6のITO膜を成膜し交流電圧を印加すると、発光開始以前に絶縁破壊が生じ発光特性は確認されない。そのため、900℃以上1200℃以下の範囲内で、酸素中、大気中熱処理を行い、発光層3の耐電圧を向上させて発光を可能とし、その後、上部に透明電気伝導膜ITOを成膜し上部電極6とする。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製にあたって、基板温度は600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った。結晶構造を調べるためx線回折を測定し、その結果、全ての温度で多層構造が(001)方位にエピタキシャル成長していることが確認された。典型例として、700℃成長時のx線回折パターンを図2に示す。
図2中、a1はNb−STO(100)/CSTO:Pr(100)/STO(100)の組成、b1はNb−STO(200)/CSTO:Pr(200)/STO(200)の組成、c1はNb−STO(300)/CSTO:Pr(300)/STO(300)の組成の強度−2θ特性図である。なお、入射したX線と試料表面との角度をθ、入射方向と反射方向との角度を2θとする。
薄膜のX線回折パターンは(001)方位のみが出現していることが分かる。この結果、薄膜は(001)方位にエピタキシャル成長していることが分かる。
また、本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製において、基板温度600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った薄膜に熱処理を行い、上部電極(透明電極)を作製し、EL特性の調査を行った。典型例として、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧25V、周波数1kHZで得られたEL特性を図3に示す。
図3の強度−波長特性は、波長612nmで強度のピーク値をとる。また、波長580nmと波長640nmにそのバックグランドが確認できる。
発光開始電圧は5Vから20Vの範囲であり、50V前後で絶縁破壊が生じ発光が停止した。上部電極(透明電極)として作製したITO薄膜電極パッド全体で発光が生じていることが確認され、発光方式は面発光であることが分かった。図3に示すように、612nmの波長で発光特性が得られ、赤色であることが分かる。発光開始電圧は前記の通り5Vから20Vであり、この発光開始電圧から絶縁破壊電圧である約50Vの範囲で発光を確認した。この発光電圧は他の硫化物、酸化物による発光開始電圧が200V以上であることと比較すると低電圧駆動であることが確認された。非特許文献7には((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3 :0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域で、赤色蛍光特性が得られることが記載されている。発光材料として最適な上記化学量論組成でこれらの結果が得られたことから、((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3 :0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域でも同様の蛍光特性が得られることが分かる。
また、基板材料として、酸化物系ぺロブスカイト電気伝導性Nb1%置換SrTiO3単結晶基板を用いて酸化物ペロブスカイトエピタキシャル薄膜EL素子に成功したことから、格子定数3.905nm近傍を有する基板材料およびペロブスカイト関連電気伝導性薄膜材料を利用しても、エピタキシャル成長は可能である。基板単体では導電性を有するNb添加量が0.1%以上のSrTiO3単結晶基板である。また導電性を有しない基板上に導電性薄膜を成膜し、下部電極として利用することができる。この際、導電性を有しないペロブスカイト関連電気伝導性基板材料としてはSrTiO3、LaAlO3、MgO、LaGaO3、PrGaO3、NdGaO3、SrLaAlO3がある。その上部に格子定数3.905nm近傍を有するSrRuO3、YBaCuO7、0.1%以上Nb置換SrTiO3で導電性薄膜を形成し、その上部にEL素子構造を作製してもエピタキシャル成長が得られるため、結晶性の優れるEL素子が得られることから、同様の特性が得られる。
本実施形態に係る発明においては、発光層3を誘電体薄膜2,4で挟んだ構造を採用している。ELの発光機構は次のように考えられる。輸送層/発光層/輸送層というサンドイッチ構造に電界を印加すると、負極側の界面準位にトラップされていた電子が発光層の伝導帯へとトンネルする。この電子が印加電界によって加速される過程で“熱く”なり、このホットエレクトロンが局在型発光中心を励起する。発光中心が発光する一方で、エネルギーを失った電子は正極側の界面に到達したところで界面準位にトラップされる。印加する電界を交流とすることで、この一連のプロセスが繰り返され発光が連続する。このEL発光機構を考えると交流電源による発光であることから、少なくとも1つの誘電体が積層されていれば発光する。近年の研究において、酸化物ペロブスカイト多結晶中に希土類元素、例えばPr,Eu,Tb,Dy,Tmの1つ以上の元素を添加することによって蛍光が確認されている。この蛍光の原理は次のように考えられる。蛍光材料に紫外線が照射されると、結晶中の希土類原子イオンが励起される。その励起されたイオンは基底状態に落ちる。この際に放出されるエネリギーが光となって発光に至る。このように、蛍光とELの原理は希土類原子イオンを励起する手法が外部から照射される光、電界であり全く異なる。原理的に蛍光現象を示す材料がELを示すとは限らない。
本発明の第2の実施形態を図4ないし図6を用いて説明する。
図4は、本実施形態の発明に係る、基板(下部電極)7上に、薄膜からなる輸送層8/発光層9/輸送層10/発光層11/輸送層12の多層膜を形成し、その上にバッファー層13を介して透明電極(上部電極)14が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。なお、基板(下部電極)7、輸送層8/発光層9/輸送層10/発光層11/輸送層12の多層構造、バッファー層13および透明電極(上部電極)14は全て透明である。
図4中、7はNb置換STO(100)基板、8は輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、9は発光層 エピタキシャル膜 CaSrTiO:Pr、10は輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、11は発光層 エピタキシャル膜 CaSrTiO:Pr、12は輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、13はバッファー層 エピタキシャル膜 CeO、14は透明電極 ITOである。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製においても、パルスレーザー堆積法を用いる。基板(下部電極)7は、典型例として、電気伝導性Nb1%置換SrTiO3(001)単結晶研磨基板を用いる。基板7上に輸送層8である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、発光層9である酸化物ペロブスカイトCa0.6Sr0.4TiO3:Pr0.2%薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、輸送層10である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、連続して、発光層11である酸化物ペロブスカイトCa0.6Sr0.4TiO3:Pr0.2%薄膜を酸素圧700Torr、基板温度700℃で成膜する。その後、輸送層12である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。これによって、基板(下部電極)7上に輸送層8/発光層9/輸送層10/発光層11/輸送層12の5つの層による多層構造を作製この際、酸素圧は10mTorr以上700mTorr以下の範囲で行ったが同様の結果であった。
この後、連続的にCeO2膜をバッファー層13として酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。このCeO2バッファー層13は上部電極14のITO膜のインジウム原子が発光層9,11の輝度劣化を生じさせる原因となることが実験的に明らかになっているため、インジウムと発光層11との完全分離をするためのバッファー層13の役目をする。
ここで熱処理を行わず、透明電極(上部電極)14のITO膜を成膜し交流電圧を印加すると、発光開始以前に絶縁破壊が生じ発光特性は確認されない。そのため、900℃以上1200℃以下の範囲内で、酸素中、大気中熱処理を行い、発光層9,11の耐電圧を向上させて発光を可能とし、その後、上部に透明電気伝導膜ITOを成膜し透明電極(上部電極)14とする。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製にあたって、基板温度は600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った。結晶構造を調べるためx線回折を測定し、その結果、全ての温度で多層構造が(001)方位にエピタキシャル成長していることが確認された。典型例として、700℃成長時のx線回折パターンを図5に示す。
図5中、a2はNb−STO(100)/CSTO:Pr(100)/STO(100)の組成、b2はNb−STO(200)/CSTO:Pr(200)/STO(200)の組成、c2はNb−STO(300)/CSTO:Pr(300)/STO(300)の組成の強度−2θ特性図である。
薄膜のパターンは(001)方位のみが出現していることから、(001)方位にエピタキシャル成長していることが分かる。
また、本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製において、基板温度600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った薄膜に熱処理を行い、透明電極(上部電極)を作製し、EL特性の調査を行った。典型例として、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧40V、周波数1kHzで得られたEL特性を図6に示す。
図6の強度−波長特性は、波長612nmで強度のピーク値をとる。また、波長580nmと波長640nmにそのバックグランドが確認できる。
発光開始電圧は10Vから15Vの範囲であり、50V前後までの範囲で発光が得られた。透明電極(上部電極)として作製したITO薄膜電極パッド全体で発光が生じていることが確認され、発光方式は面発光であることが分かった。図6では612nmの波長で発光特性が得られ、赤色であることが分かる。発光開始電圧は前記の通りであることから、低電圧駆動であることが確認された。結晶性に優れるため、絶縁薄膜の誘電率が高い値を有していることに起因していると考えられる。非特許文献7には((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3 :0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域で、赤色蛍光特性が得られることが記載されている。発光材料として最適な上記化学量論組成でこれらの結果が得られたことから、((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3 :0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域でも同様の蛍光特性が得られることが分かる。
本発明の第3の実施形態を図7ないし図9を用いて説明する。
図7は、本実施形態の発明に係る、基板15上に、薄膜からなる下部電極16/電子輸送層17/発光層18/ホール輸送層19の多層膜を形成し、その上にバッファー層20を介して透明電極(上部電極)21が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。なお、基板15、下部電極16/電子輸送層17/発光層18/ホール輸送層19の多層構造、バッファー層20および透明電極(上部電極)21は全て透明である。
図7中、15はSTO(100)基板、16は電極 エピタキシャル膜 Nb1%置換SrTiO、17は電子輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、18は発光層 エピタキシャル膜 CaSrTiO:Pr、19はホール輸送層 エピタキシャル膜 SrTiO、20はバッファー層 エピタキシャル膜 CeO、21は透明電極 ITOである。
基板15の材料として、Nb1%置換SrTiO3電気伝導性基板は高価である。そのため、基板15の材料として、Nb1%置換SrTiO3電気伝導性基板より安価なSrTiO3(100)を用い、この基板15上に酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子を作成する場合について述べる。基板15は、典型例として、電気伝導性のない半透明な片面研磨SrTiO3(001)単結晶研磨基板を用いる。基板15の結晶構造は正方晶であり、格子定数は3.905nm、電気伝導性はなく、下部基板材料として用いる。ペロブスカイト酸化物の多くの材料の格子定数は前記格子定数の数値近傍であり、基板15とその格子整合性が良いため、結晶性の優れた酸化物エピタキシャル薄膜を基板15上に成長させることができる。SrTiO3(001)単結晶研磨基板以外には、LaAlO3、MgO、LaGaO3、PrGaO3、NdGaO3、SrLaAlO3単結晶研磨基板がある。
まず、基板15上に、Nb1%置換SrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜し、下部電極16を形成する。次に、電子輸送層17である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、発光層18である酸化物ペロブスカイトCa0.6Sr0.4TiO3:Pr0.2%薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、ホール輸送層19である酸化物ペロブスカイトSrTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜し、下部電極16上に電子輸送層17/発光層18/ホール輸送層19の多層構造を作製する。
この後、連続的にCeO2膜をバッファー層20として酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。このCeO2バッファー層20は透明な上部電極21であるITO膜のインジウム原子が発光層18の輝度劣化を生じさせる原因となることが実験的に明らかになっているため、インジウムと発光層18との完全分離をするためのバッファー層20の役目をする。
ここで熱処理を行わず、透明電極(上部電極)21であるITO膜を成膜し交流電圧を印加すると、発光開始以前に絶縁破壊が生じ発光特性は確認されない。そのため、900℃以上1200℃以下の範囲内で、酸素中、大気中熱処理を行い、発光層18の耐電圧を向上させて発光を可能とし、その後、上部に透明電気伝導膜ITOを成膜し透明電極(上部電極)21とする。下部電極16はNb置換SrTiO3を用いているため、黒色に近い青色であり、電子輸送層17/発光層18/ホール輸送層19の多層構造は全て透明である。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製にあたって、基板温度は600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った。結晶構造を調べるためx線回折を測定し、その結果、全ての温度で多層構造が(001)方位にエピタキシャル成長していることが確認された。典型的例として、700℃成長時のx線回折パターンを図8に示す。
図8中、a3はNb−STO(100)/CSTO:Pr(100)/STO(100)の組成、b3はNb−STO(200)/CSTO:Pr(200)/STO(200)の組成、c3はNb−STO(300)/CSTO:Pr(300)/STO(300)の組成の強度−2θ特性図である。
薄膜のパターンは(001)方位のみが出現していることから、全薄膜が(001)方位にエピタキシャル成長していることが分かる。
また、本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製において、基板温度600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った薄膜に熱処理を行い、透明電極(上部電極)を作製し、EL特性の調査を行った。典型例として、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧25V、周波数1kHzで得られたEL特性を図9に示す。
図9の強度−波長特性は、波長612nmで強度のピーク値をとる。また、波長580nmと波長640nmにそのバックグランドが確認できる。
発光開始電圧は5Vから20Vの範囲であり、50V前後までの範囲で発光が得られた。透明電極(上部電極)として作製したITO薄膜電極パッド全体で発光が生じていることを確認し、発光方式は面発光であることが分かった。図9では612nmの波長で発光特性が得られ、赤色であることが分かる。発光開始電圧は前記の通りであることから、低電圧駆動であることが確認された。非特許文献7には((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3 :0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域で、赤色蛍光特性が得られることが記載されている。この結果、発光材料として最適な上記化学量論組成でこれらの結果が得られたことから、((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域でも同様の蛍光特性が得られることが分かる。
次に、第4の実施形態を図10ないし図12を用いて説明する。
図10は、本実施形態の発明に係る、基板(下部電極)22上に、薄膜からなる電子輸送層23/発光層24/ホール輸送層25の多層膜を形成し、その上にバッファー層26を介して透明電極(上部電極)27が形成された酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の構成を示す図である。
図10中、22はNb置換STO(100)基板、23は電子輸送層 エピタキシャル膜 BaTiO、24は発光層 エピタキシャル膜 CaSrTiO:Pr、25はホール輸送層 エピタキシャル膜 BaTiO、26はバッファー層 エピタキシャル膜 CeO、27は透明電極 ITOである。
酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子において、輸送層に用いている誘電体材料の比誘電率によって駆動電圧が小さくさることが期待される。駆動電圧を低下させることは、ディスプレイとしたときの駆動電源の小型化につながるため、パネル自体の重量・形状を小型化することができる。本実施形態の発明においては、輸送層23,25としてBaTiO3を用いたことを特徴とする。
基板(下部電極)22は、典型例として、電気伝導性Nb1%置換SrTiO3(001)単結晶研磨基板を用いた。まず基板(下部電極)22上に電子輸送層23である酸化物ペロブスカイトBaTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、発光層24である酸化物ペロブスカイトCa0.6Sr0.4TiO3:Pr0.2%薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。その後、ホール輸送層25である酸化物ペロブスカイトBaTiO3薄膜を酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜し、基板(下部電極)22上に電子輸送層23/発光層24/ホール輸送層25の多層構造を作製する。
この後、連続的にCeO2膜をバッファー層26として酸素圧700mTorr、基板温度700℃で成膜する。このCeO2バッファー層26は透明電極(上部電極)27であるITO膜のインジウム原子が発光層24の輝度劣化を生じさせる原因となることが実験的に明らかになっているため、インジウムと発光層24との完全分離をするためのバッファー層26を設ける。
ここで熱処理を行わず、透明電極(上部電極)27のITO膜を成膜し交流電圧を印加すると、発光開始以前に絶縁破壊が生じ発光特性は確認されない。そのため、900℃以上1200℃以下の範囲内で、酸素中、大気中熱処理を行い、発光層24の耐電圧を向上させて発光を可能とし、その後、上部に透明電気伝導膜ITOを成膜し透明電極(上部電極)27として利用する。なお、基板(下部電極)22、電子輸送層23/発光層24/ホール輸送層25の多層構造、バッフアー層26および透明電極(上部電極)27は全て透明に構成される。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製にあたって、基板温度は600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った。結晶構造を調べるためx線回折を測定し、その結果、全ての温度で多層構造が(001)方位にエピタキシャル成長していることが確認された。典型例として、700℃で成長時のx線回折パターンを図11に示す。
図11中、a4はNb−STO(100)/CSTO:Pr(100)/STO(100)の組成、b4はNb−STO(200)/CSTO:Pr(200)/STO(200)の組成、c4はNb−STO(300)/CSTO:Pr(300)/STO(300)の組成の強度−2θ特性図である。
薄膜のパターンは(001)方位のみが出現していることから、(001)方位にエピタキシャル成長していることが分かる。
また、本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子の作製において、基板温度600℃、700℃、800℃のいずれかの温度で成膜を行った薄膜に熱処理を行い、透明電極(上部電極)を作製し、EL特性の調査を行った。典型例として、700℃で成膜された試料で測定された、交流電圧10V、周波数1kHzで得られたEL特性を図12に示す。
図12の強度−波長特性は、波長612nmで強度のピーク値をとる。また、波長580nmと波長640nmにそのバックグランドが確認できる。
発光開始電圧は5Vから8Vの範囲であり、40V前後までの範囲で発光が得られた。透明電極(上部電極)として作製したITO薄膜電極パッド全体で発光が生じていることを確認し、発光方式は面発光であることが分かった。図12では612nmの波長で発光特性が得られ、赤色であることが分かる。発光開始電圧は前記の通りであることから、低電圧駆動であることが確認された。非特許文献7には((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3 :0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域で、赤色蛍光特性が得られることが記載されている。この結果、発光材料として最適な上記化学量論組成でこれらの結果が得られたことから、((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2の領域でも同様の蛍光特性が得られることが分かる。
本発明の酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子は、交流電圧を印加することによって発光を生じるが、発光層24の両側を誘電体である輸送層23,25でサンドイッチすることによって、交流電圧の正、負の両極で発光が生じる。また、一方のみの場合、正、負いずれかの極性の片方で発光が生じる。よって発光層24のいずれか一方に誘電体である輸送層23または輸送層25が成膜されてもELは生じる。
また、上記の各実施形態の発明においては、酸化物ペロブスカイト材料の格子定数は主として0.39nm前後であり、この近傍の格子定数を有する材料を発光層として用いた。多層構造をエピタキシャル薄膜で作成する際には格子ミスマッチが±8%以内ではエピタキシャル成長が遂行される。よって格子定数0.39nm±0.03nmの範囲の誘電体を輸送層として利用した場合にも上記EL特性は得られる。
また、上記の各実施形態の発明においては、全構造においてCeO2をバッファー層としてITO膜のインジウム原子が発光層を劣化させることを防いだが、実験的に、CeO2を成膜しなかった場合、発光のライフタイムは1分以内であった。このCeO2層の成膜によって、発光層のライフタイムは大幅に向上することが分かった。さらに、CeO2をバッファー層としてITO膜を透明電極として用いたが、この部分をSnO2透明電極としても発光が得られた。
以下に、本願で作製した薄膜の格子配列、表面構造、異種材料境界面での結晶格子配列について説明する。本発明で得られた発光層であるCSTO:Pr(100)のX線φスキャンの結果を図13に示す。90.0度毎に回折ピークが出現した。
なお、Phi(deg.)は試料表面に垂直な1つの法線を考えた時、その周囲を一周する回転角度である。この結果、面内に(010)および(001)が配列していることが分かる。即ち、(100)は面内に対し垂直方向にあることが図2、図5、図8、図11から明らかとなっており、本願で作製したCSTO:Pr(100)の結晶は3つの結晶軸が配向していることが分かる。この発光層と同様の格子定数を有する、本願で輸送層に用いたSrTiO薄膜についても、上記CSTO:Pr(100)と同様の格子配列であることが分かった。
次に本発明で得られた、発光層のAFM観測結果を図14に示す。
図14は成膜直後のas-grown膜表面の平坦性(図14(a)参照)と熱処理後の平坦性(図14(b)参照)を示す。下部特性(図14(c)参照)は熱処理後の平坦性についてラインスキャンした結果である。
図14(a)(b)の横軸は試料表面のx軸で最大1(μm)、縦軸はy軸で最大1(μm)を表す。図14(c)の横軸はx軸で最大1(μm)、縦軸はz軸で最大1.41(nm)であり表面の凹凸の度合いを表す。
図14(c)の特性は、4つのテラスがありその間の段差は0.39nmであり、(Sr0.4Ca0.6)TiO3: Prの格子定数と一致する。EL素子の発光層と輸送層の境界は原子レベルで平坦であることが分かる。次に発光層と絶縁体の境界近傍で、配向成長が連続的に行われているかを断面TEMで観測した。
その結果を図15および図16を用いて説明する。
図15は単結晶基板上に輸送層/発光層/輸送層の下部輸送層と発光層の境界近傍を観測した結果である。境界の上下で結晶格子が連続的に配列していることが分かる。
図16は単結晶基板上に輸送層/発光層/輸送層の発光層と上部輸送層の境界近傍を観測した結果である。境界の上下で結晶格子が連続的に配列していることが分かる。
この結果から、原子オーダーの平坦性で正常な界面を有した境界で連続的に配向成長が複数回遂行されていることを確認した。
本願は、配向成長が異材料の境界付近で連続的に複数回行われていることを特徴としている。この結果、絶縁体からなる輸送層と発光層の境界近傍で、適切な状態密度分布が成され電界印加時にキャリアが生成され、そのキャリアが発光層に印加された電圧で加速される。その加速されたキャリアが発光中心である希土類原子イオンに衝突し、エネルギーを寄与し励起され発光に至る。この発光プロセスは蛍光のプロセスとは大きく異なり、蛍光が得られた材料が全てELを示すということではない。

Claims (8)

  1. 単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜されたバッファー層と、該バッファー層上に成膜された透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  2. 単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる第1の輸送層と、該第1の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる第1の発光層と、該第1の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる第2の輸送層と、該第2の輸送層上に成膜された該第1の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる第2の発光層と、該第2の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイト配向薄膜からなる第3の輸送層と、該第3の輸送層上に成膜されたバッファー層と、該バッファー層上に成膜された透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  3. TiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3(001)の単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2配向薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  4. TiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3(001)の単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる第1の輸送層と、該第1の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 配向薄膜からなる第1の発光層と、該第1の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる第2の輸送層と、該第2の輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 配向薄膜からなる第2の発光層と、該第2の発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる第3の輸送層と、該第3の輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  5. SrTiO3(001)の単結晶研磨基板と、該基板上に成膜されたTiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3配向薄膜からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 配向薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトSrTiO3配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  6. TiをNbで0.1%以上置換したSrTiO3(001)の単結晶研磨基板からなる下部電極と、該下部電極上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトBaTiO3配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜された酸化物ペロブスカイト((Ca1-xSrx)1-yPry)TiO3:0≦x≦1、0.001≦y≦0.2 配向薄膜からなる発光層と、該発光層上に成膜された誘電体である酸化物ペロブスカイトBaTiO3配向薄膜からなる輸送層と、該輸送層上に成膜されたCeO2膜バッファー層と、該バッファー層上に成膜されたITO膜からなる透明な上部電極とからなることを特徴とする酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  7. 前記誘電体である酸化物ペロブスカイトからなる輸送層の格子定数は、0.39nm±0.03nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
  8. 前記酸化物ぺロブスカイト薄膜EL素子は、900℃以上1200℃以下の範囲内で熱処理されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載の酸化物ぺロブスカイト配向薄膜EL素子。
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