本発明の積層セラミックコンデンサについて、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。図1は、本発明の積層セラミックコンデンサの一例を示す概略断面図であり、図2は、図1の積層セラミックコンデンサを構成する、交互に積層された誘電体層および内部電極層の拡大図であり、本発明の積層セラミックコンデンサの内部構造を示すもので、波長分散型X線マイクロアナライザー分析(Electron Probe Micro Analysis(EPMA))によって得られたデータを基にした内部電極層に偏析したマグネシウムの分布状態を示す模式図である。
本発明の積層セラミックコンデンサは、コンデンサ本体1の両端部に外部電極3が形成されている。外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成されている。
コンデンサ本体1は、誘電体磁器からなる誘電体層5と内部電極層7とが交互に積層されて構成されている。図1では誘電体層5と内部電極層7との積層状態を単純化して示しているが、本発明の積層セラミックコンデンサは誘電体層5と内部電極層7とが数百層にも及ぶ積層体となっている。
誘電体磁器からなる誘電体層5は、結晶粒子と粒界相とから構成されており、その厚みは10μm以下、特に、5μm以下が望ましく、これにより積層セラミックコンデンサを小型、高容量化することが可能となる。なお、誘電体層5の厚みが2μm以上であると、静電容量のばらつきを小さくでき、また容量温度特性を安定化させることが可能になる。
内部電極層7は、高積層化しても製造コストを抑制できるという点で、ニッケル(Ni)や銅(Cu)などの卑金属が望ましく、特に、本発明における誘電体層5との同時焼成が図れるという点でニッケル(Ni)がより望ましい。
本発明の積層セラミックコンデンサにおける誘電体層5を構成する誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分として、これにイットリウム、マンガン、マグネシウムおよびイッテルビウムを含有するものであり、それらの含有量はチタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.045モル、マグネシウムをMgO換算で0.0075〜0.04モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.025〜0.18モルである。また、誘電体磁器を構成する結晶粒子が、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とし、この結晶粒子を構成する結晶相が立方晶を主体とするものであり、また、この結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであり、さらに、内部電極層7の周縁部7Aにマグネシウムが存在しており、その内部電極層7の周縁部7Aに存在するマグネシウムの濃度が誘電体層5の中央部5Cに存在するマグネシウムの濃度の2倍以上である。
積層セラミックコンデンサが、上記組成、粒径の範囲を有し、結晶構造が立方晶を主体とするものであり、また、上述のようなマグネシウムの濃度分布を有するものであると、室温における比誘電率を700以上、125℃における比誘電率を650以上であるとともに、25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数((εt−ε25)/(ε25(125−25)))が絶対値で1000×10−6/℃以下であり、かつ室温における分極電荷(電圧0Vにおける残留分極)が25nC/cm2よりも小さい誘電特性を有するとともに、耐熱衝撃性試験においてもデラミネーションの発生割合が1/100個以下の高信頼性の積層セラミックコンデンサを形成できる。
ここで、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相を主たる結晶相とするとは、この結晶性のチタン酸バリウムが主成分であることを意味しており、例えば、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相以外の結晶相が少量含まれていてもよいことを意味する。
立方晶を主体とするとは、X線回折により求められる結晶構造として、ペロブスカイト型結晶構造の面指数(400)のピークが分離していない程度の状態を示すものの意味であり、立方晶以外の結晶構造を有する結晶相が少量含まれていても差し支えない。
また、内部電極層7の周縁部7Aとは、積層方向に見たときに誘電体層5に接した面から内部電極層7の厚み方向の中央に向けた領域をいい、その厚みは内部電極層7の厚みの1/3以下程度の範囲を意味する。
また、誘電体層5の中央部5Cとは、図2に示すように、誘電体層5を厚み方向に3等分した中央の領域のことを意味する。
また、マグネシウムの濃度が誘電体層5の中央部に存在するマグネシウムの濃度の2倍以上である内部電極層7の周縁部7Aとは、後述の電子顕微鏡を用いた元素分析において、内部電極層7の成分が誘電体層5の中央部5Cに比較して2倍以上の濃度で検出される領域のことである。
また、耐熱衝撃試験とは、試験体を短時間のうちに高温の環境下に晒し、その際の機械的損傷の状態を評価する試験のことである。
図3は、後述の実施例の表1,2における本発明の誘電体磁器である試料No.4のX線回折チャートであり、2θ=97〜104°の範囲(面指数(400))のピークである。図1に示すように、主なピークは面指数(400)のピークであることから、本発明の積層セラミックコンデンサにおける誘電体層5を構成する結晶相は立方晶を主体とする結晶構造であることがわかる。
本発明の積層セラミックコンデンサの誘電体層5は、元々結晶構造が正方晶で強誘電性を示すチタン酸バリウムに、イットリウム、マンガン、マグネシウムおよびイッテルビウムが固溶したものであり、これによりチタン酸バリウムを主成分とする結晶相が立方晶を主体とする結晶構造を有するものとすることができる。
このため本発明の誘電体磁器は比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において平坦となり、いずれも誘電分極のヒステリシスが小さくなる。そのため比誘電率が700以上でも比誘電率の温度係数および誘電分極の小さい積層セラミックコンデンサを得ることができる。
即ち、上述した範囲でチタン酸バリウムに対して、イットリウム、マンガンおよびマグネシウムを所定量含有させると、室温(25℃)以上のキュリー温度を示し、比誘電率の温度係数が正の値を示す誘電特性を示す誘電体磁器となるが、このような誘電特性を示す誘電体磁器に対して、さらにYbを含有させた場合に、本発明の効果が大きく現れ、比誘電率の温度係数が小さくなり温度特性を平坦化できる。
なお、比誘電率の温度特性は積層セラミックコンデンサの静電容量を温度25〜125℃の範囲で測定して、((ε125−ε25)/(ε25(125−25)))の関係から求められる。
ここで、イッテルビウムはチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の粗大化を抑制する働きをもち、バリウム1モルに対して、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.025〜0.18モル含有するものである。
即ち、バリウム1モルに対するYbの含有量がYbO3/2換算で0.025モルよりも少ないと、誘電体磁器の比誘電率が高いものの、比誘電率の温度係数も絶対値で1000×10−6/℃よりも大きくなるとともに、誘電分極にヒステリシスを有するものとなり、一方、バリウム1モルに対するYbの含有量がYbO3/2換算で0.18モルよりも多いと、25℃における比誘電率が700よりも低くなり、また、125℃における比誘電率が650未満となるためである。
また、バリウム1モルに対するマグネシウムの含有量はMgO換算で0.0075〜0.04モルである。マグネシウムの含有量がMgO換算で0.0075モルより少ない場合には、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が1000×10−6/℃よりも大きくなるとともに、分極電荷が25nC/cm2よりも大きくなるとともに、マグネシウムの含有量が少ないことから、内部電極層7の周縁部7Aに存在するマグネシウムの濃度を誘電体層5の中央部5Cに存在するマグネシウムの濃度の2倍以上で存在させることができないために耐熱衝撃性が低下する。
一方、マグネシウムの含有量がMgO換算で0.04モルより多い場合には、内部電極層7の周縁部7Aに存在するマグネシウムの濃度を誘電体層5の中央部5Cに存在するマグネシウムの濃度の2倍以上で存在させることができることから耐熱衝撃性は高まるものの、比誘電率が700未満に低下するとともに、分極電荷(電圧0Vにおける残留分極)が25nC/cm2よりも大きくなる。
また、イットリウムおよびマンガンの含有量は、バリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.0014〜0.03モル、0.0002〜0.045モルである。
即ち、バリウム1モルに対するイットリウムの含有量がYO3/2換算で0.0014モルよりも少ない場合または0.03モルよりも多い場合、あるいは、バリウム1モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.0002モルよりも少ない場合には、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が1000×10−6/℃よりも大きくなるとともに、分極電荷が25nC/cm2よりも大きくなる。また、バリウム1モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.045モルよりも多い場合には誘電体磁器の比誘電率が700未満に低下するとともに、比誘電率の温度係数が1000×10−6/℃よりも大きくなる。
さらに本発明の誘電体磁器では、所望の誘電特性を維持できる範囲であれば焼結性を高めるための助剤としてガラス成分や他の添加成分を誘電体磁器中に4質量%以下の割合で含有させてもよい。
また、本発明の積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmである。
即ち、チタン酸バリウムを主成分とする結晶相により構成される結晶粒子の平均粒径を0.05〜0.2μmとすることで、誘電分極のヒステリシスが小さく常誘電性に近い特性を示すものにでき、結晶粒子の平均粒径が0.05μmよりも小さい場合には配向分極の寄与が無くなるため誘電体磁器の比誘電率が低下し、一方、結晶粒子の平均粒径が0.2μmよりも大きい場合には、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が大きくなるか、または誘電分極が大きくなるか、あるいは誘電体磁器の比誘電率の温度係数とともに誘電分極が大きくなるおそれがある。
誘電体層を構成する結晶粒子の平均粒径は、コンデンサ本体である試料の破断面を研磨する。この後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった結晶粒子を選択する。次いで、各結晶粒子の輪郭を画像処理して、各結晶粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求める。
また、好ましい、マグネシウムの含有量としては、バリウム1モルに対して、MgO換算で0.015モル以上であることが望ましく、このような組成においては、内部電極層7の周縁部7Aに存在するマグネシウムの濃度を誘電体層5の中央部5Cに存在するマグネシウムの濃度の2倍以上で存在させることが可能になることから、積層セラミックコンデンサの耐熱衝撃性をさらに高めることができる。
イットリウム、マンガン、マグネシウムおよびイッテルビウムのさらに好ましい含有量としては、バリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.005〜0.024モル、マンガンをMnO換算で0.02〜0.04モル、マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.03モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.06〜0.14モルの範囲で含有するとともに、結晶粒子の平均粒径が0.07〜0.15μmであり、この範囲の誘電体層5を備える積層セラミックコンデンサは、高い耐熱衝撃性を有するとともに、25℃における比誘電率を750以上、125℃における比誘電率を710以上、比誘電率の温度係数を絶対値で850×10−6/℃以下、誘電分極を20nC/cm2以下にすることが可能になるとともに、耐熱衝撃性をさらに高めることができる。
図2に示したように、本発明ではまた、積層セラミックコンデンサにおける内部電極層7の周縁部7Aに存在するマグネシウムの濃度を誘電体層5の中央部5Cに存在するマグネシウムの濃度の2倍以上で存在させることができる。
このように、マグネシウムを誘電体層5側よりも内部電極層7側に高濃度で存在させることで、内部電極層7の周縁部7Aに存在するマグネシウムの濃度が誘電体層5の中央部5Cに存在するマグネシウムの濃度の2倍よりも低いものよりも本発明の積層セラミックコンデンサの誘電特性を高められると共に、マグネシウムが誘電体層5を構成しているセラミック材料と内部電極層7を構成している金属材料との接合材として機能しているため、誘電体層5と内部電極層7との接着力が増し、これにより耐熱衝撃性を高められていると考えられる。
積層セラミックコンデンサ中のマグネシウムの分析は分析電子顕微鏡を用いて、以下のようにして行う。まず、分析する積層セラミックコンデンサを誘電体層5および内部電極層7の積層面に対して垂直もしくは斜めの方向に、研磨面が鏡面となるまで研磨する。次に、この研磨面を観察する範囲は、内部電極層7が2層ほど見え、その内部電極層7のほぼ中央に誘電体層5が配置される状態が見える倍率とする。
ここで、EPMAにおける分析条件は、加速電圧を5〜30kV、照射電流を1.1×10−7〜3×10−7アンペア、時定数20〜50msec.分析するポイントの密度は0.5〜2点/μm2(すなわち、分析するポイントの間隔はX方向およびY方向ともに0.5〜2μm)、出力されるエネルギーレベルは、1ポイント当たりの平均カウント数を5〜10としたときに、最低カウント数を0、最高カウント数を50〜100の範囲とする。スキャンは、上記研磨面における観察領域を横方向に端から端までステージスキャンし、これを縦方向に繰り返えし、測定する全範囲をカバーする。
ここで、内部電極層7の周縁部7Aにおけるマグネシウムの濃度が、誘電体層5を厚み方向に3等分した中央部5Cにおけるマグネシウムの濃度の2倍以上とは、EPMAのエネルギーレベルにおいて、誘電体層5を厚み方向に3等分した中央部5Cにおけるマグネシウムの平均のカウント数が0〜7であるのに対して、内部電極層7の周縁部7Aにおけるマグネシウムの平均のカウント数が20以上である場合をいう。
この評価においては、誘電体層5を厚み方向に3等分した中央部5Cにおけるマグネシウムの平均のカウント数と、内部電極層7の周縁部7Aにおけるマグネシウムの平均のカウント数は、研磨面における誘電体層5の中央部5Cおよび内部電極層7のそれぞれの領域を5μm×5μmの範囲に分割し、5μm×5μmの範囲における最大のカウント数を選択し、分割した範囲を10箇所抽出し平均化して求められる。
次に、本発明の積層セラミックコンデンサを製造する方法について説明する。
まず、誘電体粉末をポリビニルブチラール樹脂などの有機樹脂やトルエンおよびアルコールなどの溶媒とともにボールミルなどを用いてセラミックスラリを調製し、次いで、セラミックスラリをドクターブレード法やダイコータ法などのシート成形法を用いて基材上にセラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートの厚みは誘電体層5の高容量化のための薄層化、高絶縁性を維持するという点で1〜20μmが好ましい。
本発明の積層セラミックコンデンサの製法で用いる誘電体粉末は、後述のチタン酸バリウムを主成分とし、これに所定の添加剤を加えて仮焼し、チタン酸バリウムに前記添加剤を固溶させた仮焼粉末と、他の添加剤を加えたものを用いる。
誘電体粉末は、先ず、素原料粉末として、純度がいずれも99%以上のBaCO3粉末とTiO2粉末、Y2O3粉末および炭酸マンガン粉末を用い、これらの素原料粉末を、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、TiO2粉末を0.97〜0.99モル、Y2O3をYO3/2換算で0.0028〜0.06モル、MnCO3を0.0002〜0.045モルの割合でそれぞれ配合する。
次に、上記した素原料粉末の混合物を湿式混合し、乾燥させた後、温度850〜1100℃で仮焼し、粉砕する。このとき仮焼粉末は、その結晶構造が立方晶を主体とするものであり、また、平均粒径が0.04〜0.1μmであることが好ましい。
次いで、この仮焼粉末100質量部に対してYb2O3粉末を2.2〜15質量部、MgO粉末を0.05〜0.3質量部の割合で混合する。
本発明では、チタン酸バリウムを主成分とし、Y2O3およびMnCO3粉末を添加して仮焼粉末を作製するために、焼成後に誘電体磁器中に形成される結晶相が立方晶を主体とするものにできる。
また、上記仮焼粉末に対して、Yb2O3粉末およびMgO粉末を添加することにより、焼成後の結晶粒子の粒成長を抑制でき、これにより結晶粒子の平均粒径を0.05〜0.2μmの範囲にできる。
そして、本発明では、上述のように、MgO粉末を仮焼粉末に添加しているために、焼成中に起こるマグネシウムのこうした誘電体磁器中における拡散により、得られる積層セラミックコンデンサは、マグネシウムが、誘電体層5を厚み方向に3等分した中央部5Cに比較して、内部電極層7の周縁部7Aに高濃度で存在するようになる。
これにより常誘電性に近い比誘電率の温度特性を維持し、分極電荷が低く、高誘電率、かつ耐熱衝撃性の良い積層セラミックコンデンサを容易に形成できる。
なお、本発明の積層セラミックコンデンサを製造するに際しては、所望の誘電特性を維持できる範囲であれば、焼結助剤としてガラス粉末を添加しても良く、その添加量は、チタン酸バリウムを主成分とし、Y2O3およびMnCO3粉末を添加して得られた仮焼粉末に、Yb2O3粉末およびMgO粉末を加えた主な原料粉末の合計量100質量部に対して、0.5〜4質量部が良い。
次に、得られたセラミックグリーンシートの主面上に矩形状の内部電極パターンを印刷して形成する。内部電極パターンとなる導体ペーストは、Niもしくはこれらの合金粉末を主成分金属とし、これに共材としてのセラミック粉末を混合し、有機バインダ、溶剤および分散剤を添加して調製する。また、セラミックグリーンシート上の内部電極パターンによる段差を解消するために、内部電極パターンの周囲にセラミックパターンを内部電極パターンと実質的に同一厚みで形成することが好ましい。この場合、セラミックパターンを構成するセラミック成分は、同時焼成での焼成収縮を同じにするという点でセラミックグリーンシートに用いた誘電体粉末を用いることが好ましい。
次に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所望枚数重ねて、その上下に内部電極パターンを形成していないセラミックグリーンシートを複数枚、上下層が同じ枚数になるように重ねて仮積層体を形成する。仮積層体中における内部電極パターンは長寸方向に半パターンずつずらしてある。このような積層工法により切断後の積層体の端面に内部電極パターンが交互に露出されるように形成できる。
なお、本発明の積層セラミックコンデンサは、セラミックグリーンシートの主面に内部電極パターンを予め形成した後に積層する工法の他に、セラミックグリーンシートを一旦下層側の機材に密着させた後に、内部電極パターンを印刷し、乾燥させ、印刷、乾燥された内部電極パターン上に、内部電極パターンを印刷していないセラミックグリーンシートを重ねて仮密着させ、セラミックグリーンシートの密着と内部電極パターンの印刷を逐次行う工法によっても形成できる。
次に、仮積層体を上記仮積層時の温度圧力よりも高温、高圧の条件にてプレスを行い、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとが強固に密着された積層体を形成する。
次に、積層体を格子状に切断することにより内部電極パターンの端部が露出するコンデンサ本体成形体を形成する。
次に、コンデンサ本体成形体を、所定の雰囲気下、温度条件で焼成してコンデンサ本体1を形成する。場合によっては、コンデンサ本体1の稜線部分の面取りを行うとともに、コンデンサ本体1の対向する端面から露出する内部電極層7を露出させるためにバレル研磨を施しても良い。
次に、得られたコンデンサ本体成形体を脱脂した後、焼成する。焼成は、最高温度を1100〜1350℃、保持時間を1〜3時間とし、水素−窒素の雰囲気中にて行う。焼成をこのような条件で行うことにより、誘電体層5を構成する結晶粒子9の平均粒径を平均粒径が0.05〜0.2μmの範囲とし、マグネシウムが、誘電体層を厚み方向に3等分した中央部に比較して、内部電極層7中に高濃度で存在しているという特徴を有するものを得ることができる。
この後、900〜1100℃の温度範囲で再酸化処理を行うことによってコンデンサ本体1を得る。
次に、このコンデンサ本体1の対向する端部に、外部電極ペーストを塗布して焼付けを行い外部電極3を形成する。また、場合によっては、この外部電極3の表面に実装性を高めるためにメッキ膜を形成することにより本発明の積層セラミックコンデンサが得られる。
まず、いずれも純度が99.9%のBaCO3粉末、TiO2粉末、Y2O3粉末、MnCO3粉末を用意し、表1に示す割合で調合し混合粉末を調製した。表1に示す量は前記元素の酸化物換算量に相当する量である。
次に、混合粉末を温度1000℃にて仮焼した後、この仮焼粉末を粉砕した。このとき粉砕後の仮焼粉末の平均粒径は0.1μmとした。この後、仮焼粉末100質量部に対して、いずれも純度99.9%のYb2O3粉末およびMgO粉末を表1に示す割合で混合し、さらに、SiO2を主成分とするガラス粉末(SiO2:40〜60モル%、BaO:10〜30モル%、CaO:10〜30モル%、Li2O:5〜15モル%)を添加した。ガラス粉末の添加量は、仮焼粉末、Y2O3粉末およびMgO粉末の合計量100質量部に対して3質量部とした。この後、混合粉末を造粒し、直径16.5mm、厚さ1mmの形状のペレット状に成形した。なお、表1において、一括仮焼と記した試料No.32は仮焼粉末を調製する際に、MgO粉末をBaCO3粉末、TiO2粉末、Y2O3粉末およびMnCO3粉末とともに一括に混合し仮焼したものである。
次に、これらの原料粉末を直径1mmのジルコニアボールを用いて、溶媒としてトルエンとアルコールとからなる混合溶媒を添加し湿式混合した。
次に、湿式混合した粉末を、ポリビニルブチラール樹脂と、トルエンおよびアルコールの混合溶媒中に投入し、直径1mmのジルコニアボールを用いて湿式混合してセラミックスラリを調製し、ドクターブレード法により厚み13μmのセラミックグリーンシートを作製した。
次に、このセラミックグリーンシートの上面にNiを主成分とする矩形状の内部電極パターンを複数形成した。内部電極パターンを形成するための導体ペーストは、平均粒径が0.3μmのNi粉末100質量部に対してBT粉末を添加したものを用いた。
次に、内部電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートを50枚積層し、その上下面に内部電極パターンを印刷していないセラミックグリーンシートをそれぞれ20枚積層し、プレス機を用いて温度60℃、圧力107Pa、時間10分の条件で密着させて積層体を作製し、しかる後、この積層体を、所定の寸法に切断してコンデンサ本体成形体を形成した。
次に、コンデンサ本体成形体を大気中で脱バインダ処理した後、水素−窒素中、1240〜1300℃で焼成した。作製したコンデンサ本体1は、続いて、窒素雰囲気中1000℃で4時間再酸化処理を行った。このコンデンサ本体の大きさは2×1×1mm3、誘電体層の厚みは10μm、内部電極層の1層の有効面積は1.2mm2であった。なお、有効面積とは、コンデンサ本体1の異なる端面にそれぞれ露出するように積層方向に交互に形成された内部電極層同士の重なる部分の面積のことである。
次に、焼成したコンデンサ本体1をバレル研磨した後、コンデンサ本体1の両端部にCu粉末とガラスとを含んだ外部電極ペーストを塗布し、850℃で焼き付けを行って外部電極を形成した。その後、電解バレル機を用いて、この外部電極の表面に、順にNiメッキ及びSnメッキを行い、積層セラミックコンデンサを作製した。
次に、これらの積層セラミックコンデンサについて以下の評価を行った。評価はいずれも試料数10個とし、その平均値から求めた。室温(25℃)における比誘電率は静電容量をLCRメータ(ヒューレットパッカード社製)を用いて、温度25℃、周波数1.0kHz、測定電圧を1Vrmsとして測定し、誘電体層の厚みと内部電極層の有効面積から求めた。また、比誘電率の温度特性は静電容量を温度25〜125℃の範囲で測定して、((εt−ε25)/(ε25(125−25)))の関係から求めた。
また、得られた誘電体磁器について電気誘起歪の大きさを誘電分極の測定によって求めた。この場合、電圧を±1250Vの範囲で変化させた時の、0Vにおける電荷量(残留分極)の値で分極電荷を評価した。
また、得られた誘電体磁器を粉砕し、X線回折(2θ=97〜104°、Cu−Kα)を用いて結晶相の同定を行った。
誘電体層を構成する結晶粒子の平均粒径は、焼成後のコンデンサ本体である試料の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった結晶粒子を選択し、各結晶粒子の輪郭を画像処理して、各結晶粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求めた。
EPMA分析は以下のように行った。まず、分析する積層セラミックコンデンサを誘電体層5および内部電極層7の積層面に対して斜めの方向に、研磨面が鏡面となるまで研磨した。次に、この研磨面を観察する範囲は、内部電極層7が2層ほど見え、その内部電極層7のほぼ中央に誘電体層が配置される状態が見える倍率とした。
ここで、EPMAにおける分析条件は、加速電圧を15kV、照射電流を2×10−7アンペア、時定数20〜50msec.とし、分析するポイントの密度は1点/μm2(すなわち、分析するポイントの間隔はX方向およびY方向ともに1μm)、出力されるエネルギーレベルは、1ポイント当たりの平均カウント数を5〜10としたときに、最低カウント数を0、最高カウント数を60の範囲とした。スキャンは研磨面における観察領域を横方向に端から端までステージスキャンし、これを縦方向に繰り返えし、測定する全範囲をカバーするようにした。
そして、誘電体層を厚み方向に3等分した中央部におけるマグネシウムの平均のカウント数と、内部電極層の周縁部におけるマグネシウムの平均のカウント数は、研磨面における誘電体層の中央部および内部電極層のそれぞれの領域を5μm×5μmの範囲に分割し、5μm×5μmの範囲における最大のカウント数を選択し、分割した範囲を10箇所抽出し平均化して求めた。誘電体層を厚み方向に3等分した中央部におけるマグネシウムの平均のカウント数と、内部電極層の周縁部におけるマグネシウムの平均のカウント数は、研磨面における誘電体層の中央部および内部電極層の周縁部のそれぞれの領域を5μm×5μmの範囲に分割し、5μm×5μmの範囲における最大のカウント数を選択し、分割した範囲を10箇所抽出し平均化して求められる。
耐熱衝撃性は、25℃の室温から305℃の溶融半田浴に試料を約1秒間浸漬することによって評価した。浸漬後の積層セラミックコンデンサを実体顕微鏡にて約40倍の倍率で外観を観察して、デラミネーションやクラックの発生状態を観察し、これらデラミネーションやクラックの発生した試料数の全試料数に対する比率を求めた。試料数は各100個とした。
また、得られた焼結体である試料の組成分析はICP(Inductively Coupled Plasma)分析もしくは原子吸光分析により行った。この場合、得られた誘電体磁器を硼酸と炭酸ナトリウムと混合し溶融させたものを塩酸に溶解させて、まず、原子吸光分析により誘電体磁器に含まれる元素の定性分析を行い、次いで、特定した各元素について標準液を希釈したものを標準試料として、ICP発光分光分析にかけて定量化した。また、各元素の価数を周期表に示される価数として酸素量を求めた。
調合組成および焼成条件を表1に、焼結体中の各元素の酸化物換算での組成および結晶粒子の平均粒径、特性(マグネシウムの偏析の状態、比誘電率、比誘電率の温度係数の絶対値、分極電荷および耐熱衝撃性の結果を表2にそれぞれ示す。
表1〜4の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.2〜10,13〜17,20〜23,25,27〜31,34および37〜39では、25℃における比誘電率が700以上、125℃における比誘電率が650以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃以下かつ分極電荷(電圧0Vでの残留分極の値)が25nC/cm2以下であった。これらの試料では、内部電極層の周縁部に存在するマグネシウムの濃度が前記誘電体層の中央部に存在するマグネシウムの濃度の2倍以上であり、耐熱衝撃試験においてもクラックやデラミネーションが1/100個以下の割合であった。
また、マグネシウムの含有量を、バリウム1モルに対して、MgO換算で0.015〜0.04モルとした試料No.2〜10,13〜17,20〜23,25,28〜31,34および37〜39では、温度差280℃の耐熱衝撃試験においてもクラックやデラミネーションが無かった。
さらに、バリウム1モルに対して、イットリウムをYO3/2換算で0.005〜0.024モル、マンガンをMnO換算で0.02〜0.04モル、マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.03モル、イッテルビウムをYbO3/2換算で0.06〜0.14モルの範囲で含有するとともに、結晶粒子の平均粒径を0.07〜0.15μmとした試料No.6〜9,14〜16,21,22,25,29,30,37および38では、耐熱衝撃性試験においてデラミネーションやクラックの発生が無く、25℃における比誘電率が750以上、125℃における比誘電率が710以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で843×10−6/℃以下かつ分極電荷(電圧0Vでの残留分極の値)が20nC/cm2以下であった。
これに対して、本発明の範囲外の試料1,11,12,18,19,24,26,32,33,35および36では、室温における比誘電率を700以上、125℃における比誘電率を650以上、25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数((εt−ε25)/(ε25(125−25)))が絶対値で1000×10−6/℃以下および室温における分極電荷(電圧0Vにおける残留分極)が25nC/cm2および温度差280℃の耐熱衝撃試験において不良数1/100個以下のいずれかの特性を満足しないものであった。