JP5111778B2 - レーダ装置とその信号処理方法 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば、雨や雲の動的な状況をとらえるドップラ気象レーダに用いられるレーダ装置とその信号処理方法に関する。
ドップラ気象レーダは、アンテナ(空中線装置)から空間にパルス状の電波を放射し、雨粒等に反射して戻ってきた受信信号のドップラ成分を解析することで降水域中の風向や風速を算出することができる。具体的には、受信信号をFFT処理することで周波数領域の速度スペクトルに変換し、速度スペクトルの最大値を読み取ることによりドップラ速度を検出する(例えば、非特許文献1を参照。)。
ところで、気象エコーのように観測対象の速度が乱れている場合、得られる速度スペクトルも乱れているため、気象レーダで得られる受信信号には精度の悪いものも含まれている。従来、この精度の悪いデータを除去する方法(以下、品質管理と称する。)の一つとして受信信号のSN比を算出し、SN比の悪いデータを除去することで精度の良いデータのみを抽出してきた。なお、SN比は、速度スペクトルの最大値周辺を積算した信号成分Sと、その他の領域を積算したノイズ成分Nとの比である。
東芝レビュー Vol.55 No.5(2000)、p.27−30
しかしながら、従来のSN比を用いた品質管理では、次のような問題が生じていた。第1に、品質管理の指標となるSN比を求める手法が複雑であるため、信号処理の回路構成が複雑になり高価となってしまう。第2に、気象エコーのように観測対象の速度が乱れている場合、得られる速度スペクトルも乱れているため、速度スペクトルの最大値を検出する際にも誤検出が多くなり、SN比の精度が悪くなる。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、観測対象の速度分布のばらつきが大きい場合でも簡単な処理で精度良くドップラ速度を算出できるレーダ装置とその信号処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するためにこの発明に係わるレーダ装置は、レーダパルスを送信しレーダエコーを受信する送受信部と、前記レーダエコーの受信信号から複数のドップラ速度値それぞれの電力強度分布を示す速度スペクトルを求め、この速度スペクトルをもとにターゲットのドップラ速度を算出する信号処理部とを具備し、前記信号処理部は、前記速度スペクトルのドップラ速度値それぞれの電力強度を極座標系の電力ベクトルに変換する変換手段と、前記電力ベクトルを合成することにより電力合成ベクトルを求める合成手段と、前記電力合成ベクトルの大きさが閾値以上の場合は前記速度スペクトルが有効と判定し、前記電力合成ベクトルの大きさが閾値より小さい場合は前記速度スペクトルを無効と判定する品質判定手段と、前記品質判定手段により前記速度スペクトルが有効と判定された場合にのみ、前記速度スペクトルをもとに前記ターゲットのドップラ速度を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
また、この発明に係わる信号処理方法は、レーダパルスを送信しレーダエコーを受信するレーダ装置に用いられる信号処理方法において、前記レーダエコーの受信信号から複数のドップラ速度値それぞれの電力強度分布を示す速度スペクトルを求め、この速度スペクトルをもとにターゲットのドップラ速度を算出する信号処理ステップを備え、前記信号処理部は、前記速度スペクトルのドップラ速度値それぞれの電力強度を極座標系の電力ベクトルに変換する変換ステップと、前記電力ベクトルを合成することにより電力合成ベクトルを求める合成ステップと、前記電力合成ベクトルの大きさが閾値以上の場合は前記速度スペクトルが有効と判定し、前記電力合成ベクトルの大きさが閾値より小さい場合は前記速度スペクトルを無効と判定する品質判定ステップと、前記品質判定手段により前記速度スペクトルが有効と判定された場合にのみ、前記速度スペクトルをもとに前記ターゲットのドップラ速度を算出する算出ステップとを備えることを特徴とする。
上記構成によるレーダ装置及び信号処理方法では、速度スペクトル全体を極座標系の電力強度分布に変換して、加重平均により求められた電力合成ベクトルを品質判定の指標としている。このようにすることで、従来のSN比を用いた品質管理と比べ、気象エコーのように観測対象のばらつきが大きい場合でも、簡単な処理で精度良く品質判定をすることができるため、信頼性の高いドップラ速度を算出することが可能となる。
したがってこの発明によれば、観測対象の速度分布のばらつきが大きい場合でも簡単な処理で精度良くドップラ速度を算出できるレーダ装置とその信号処理方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明に係わるレーダ装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
変調部12は、信号処理部11からインタフェース(I/F)を介して与えられる制御のもと、指定された変調方式の中間周波信号のディジタル値を生成する。このディジタル値は、D/A変換部13においてアナログ値に変換され、送信中間周波数信号(fi)が生成される。生成された送信中間周波数信号は、送受信部14においてレーダパルスの送信周波数にまでアップコンバートされ、電力増幅されたのち空中線15から空間に送出される。
空中線15から送出された周波数f0のレーダパルスは、雨粒などのターゲットにより反射され、レーダエコーが戻ってくる。このレーダエコーはターゲットの移動速度を反映するドップラ周波数(fd)を伴い、その受信周波数は(f0+fd)と表される。レーダエコーは、空中線15を介して送受信部14に到来し、増幅されたのちダウンコンバートされて(fi+fd)の受信中間周波数信号が生成される。この受信中間周波数信号はA/D変換部16によりディジタル値に変換されたのち復調部17により直交検波される。
さらに、直交検波された信号は、復調部17において複数の変調方式により復調される。これにより得られたI成分(同相成分)およびQ成分(直交位相成分)の受信データは、インタフェース(I/F)を介して信号処理部11に与えられる。信号処理部11は受信データからエコーの反射強度、ターゲットの速度および速度幅などの観測データを算出する。特に、受信データに対してFFT処理を行うことにより得られる速度スペクトルから、ターゲットのドップラ速度を算出することができる。
図2は、図1のレーダ装置の処理手順を示す流れ図である。受信信号は、A/D変換されたのち、直交検波され、I成分(同相成分)、Q成分(直交位相成分)の信号がそれぞれ出力される。さらに、信号処理部11では、出力されたI/Q信号に対して、FFT処理を行う。このFFT処理では、上記I/Q信号を周波数領域に変換し、速度スペクトルを得ることができる。このようにして得られる速度スペクトルをもとにターゲットのドップラ速度を検出する。
次に、図3及び図4を参照して信号処理部11が行うドップラ速度の算出処理について説明する。図3は、データの品質管理処理の手順とその内容を示すフローチャートである。また、図4に、データの品質管理処理の概念図を示す。
図3のステップS3aにおいて、上述したFFT処理により得られる速度スペクトルのドップラ速度値それぞれの電力強度を極座標系の電力ベクトルに変換する。この様子を図4のP1〜P8で示す。次に、ステップS3bにおいて、上記変換された極座標系の電力ベクトル(P1〜P8)を合成し、電力合成ベクトル(Pv)を求める。
以下に数式を用いて具体的な処理方法について述べる。
−Vmax<Vi<Vmaxのドップラ速度値を、次式により−π<θi<π の角度に置き換えて、極座標系での電力分布に変換する。
θi=πVi/Vmax …(1)
式(1)において、θiは電力ベクトルの偏角[rad]、Viはドップラ速度、Vmaxはナイキスト速度を表す。
次に、上記変換された電力ベクトルの分布を次式によりベクトル合成する。
Pv=Preal+jPimage …(2)
Preal=Σ(Pi・cosθi) …(3)
Pimage=Σ(Pi・sinθi) …(4)
ここで、Pvはドップラ速度の強度合成ベクトル、Prealは電力合成ベクトルの実数部、Pimageは電力合成ベクトルの虚数部である。また、Piは各速度毎の電力値、θiは各電力ベクトルの偏角[rad]である。
このように算出されたPvの大きさをこの速度スペクトルの品質判定の指標として用いる。ステップS3cにおいて、このPvの大きさと予め設定された閾値とを比較する。ステップS3cにおいてPvの大きさが閾値以下と判定された場合は、ステップS3dに移行して、この速度スペクトルを「無効」とする。ステップS3cにおいてPvの大きさが閾値より大きいと判定された場合は「有効」とし、この速度スペクトルをもとにドップラ速度を算出する(ステップS3e)。
以上述べたように、上記実施形態では、電力強度分布を示す速度スペクトルのドップラ速度値それぞれの電力強度を極座標系の電力ベクトルに変換する。次に、上記変換された極座標系の電力ベクトルを合成し、電力合成ベクトルを求め、この電力合成ベクトルの大きさと予め設定された閾値とを比較する。電力合成ベクトルの大きさが閾値より小さいと判定された場合は、この速度スペクトルを無効とする。また、電力合成ベクトルの大きさが閾値以上と判定された場合は、この速度スペクトルを有効とし、この速度スペクトルをもとにドップラ速度を算出する。
従来のSN比によるデータの品質管理では、単に速度スペクトルの最大値を検出し、その最大値周辺を信号成分として、信号成分とノイズ成分とをそれぞれ積算してSN比を算出していた。このため、速度スペクトルが大きく乱れている場合には、速度分布にかかわらず読み取った最大値の周辺が信号成分と誤って検出されSN比が算出されてしまうことがあった。
これに対し、本発明では、速度スペクトル全体を極座標の電力分布に置き換え、加重平均により求められた電力合成ベクトルを品質判定の指標としている。このため、信頼性の高い品質管理を行うことができ、精度良くドップラ速度を求めることが可能となる。また、上記求められた電力合成ベクトルの値は後段の「ドップラ速度の算出」において計算される値であるため、この計算結果を流用することで、さらに処理を簡素化することができる。
したがってこの発明によれば、従来行われていたSN比をもとにデータの品質判定をする場合と比較すると、観測対象の速度分布のばらつきが大きい場合でも簡単な処理で精度良くドップラ速度を算出することが可能となる。
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば図1においてD/A変換部13、およびA/D変換部16の機能は、他の機能ブロックに併せ持たせることもできる。また本発明は、気象レーダに限定されることなく他のドップラレーダにも適用することができる。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
この発明に係わるレーダ装置の一実施形態を示す機能ブロック図。 図1に示すレーダ装置の信号処理手順を示す図。 図1に示すレーダ装置のデータ品質管理処理の手順とその内容を示すフローチャート。 図1に示すレーダ装置のデータ品質管理処理を示す概念図。
符号の説明
11…信号処理部、12…変調部、13…D/A変換部、14…送受信部、15…空中線装置、16…A/D変換部、17…復調部。

Claims (2)

  1. レーダパルスを送信しレーダエコーを受信する送受信部と、
    前記レーダエコーの受信信号から複数のドップラ速度値それぞれの電力強度分布を示す速度スペクトルを求め、この速度スペクトルをもとにターゲットのドップラ速度を算出する信号処理部と
    を具備し、
    前記信号処理部は、
    前記速度スペクトルのドップラ速度値それぞれの電力強度を極座標系の電力ベクトルに変換する変換手段と、
    前記電力ベクトルを合成することにより電力合成ベクトルを求める合成手段と、
    前記電力合成ベクトルの大きさが閾値以上の場合は前記速度スペクトルが有効と判定し、前記電力合成ベクトルの大きさが閾値より小さい場合は前記速度スペクトルを無効と判定する品質判定手段と、
    前記品質判定手段により前記速度スペクトルが有効と判定された場合にのみ、前記速度スペクトルをもとに前記ターゲットのドップラ速度を算出する算出手段と
    を備えることを特徴とするレーダ装置。
  2. レーダパルスを送信しレーダエコーを受信するレーダ装置に用いられる信号処理方法において、
    前記レーダエコーの受信信号から複数のドップラ速度値それぞれの電力強度分布を示す速度スペクトルを求め、この速度スペクトルをもとにターゲットのドップラ速度を算出する信号処理ステップを備え、
    前記信号処理部は、
    前記速度スペクトルのドップラ速度値それぞれの電力強度を極座標系の電力ベクトルに変換する変換ステップと、
    前記電力ベクトルを合成することにより電力合成ベクトルを求める合成ステップと、
    前記電力合成ベクトルの大きさが閾値以上の場合は前記速度スペクトルが有効と判定し、前記電力合成ベクトルの大きさが閾値より小さい場合は前記速度スペクトルを無効と判定する品質判定ステップと、
    前記品質判定手段により前記速度スペクトルが有効と判定された場合にのみ、前記速度スペクトルをもとに前記ターゲットのドップラ速度を算出する算出ステップと
    を備えることを特徴とする信号処理方法。
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