JP5116024B2 - 耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラスびん、ガラス食器などのガラス製品の耐衝撃性を高める方法に関する。
ガラスは衝撃による局所応力により、コーンあるいはブルースと言われる割れが生じる。特に肉厚の厚い部位は割れを起こし易い。ガラスびんでは主に口部が該当する。びん口部は消費者が直接触れるところなので、特に割れは嫌がられ、その対策が求められている。
一方、局所応力に対する強度を向上する方法として、風冷強化が知られている。下記特許文献1には、耐擦過性で、多孔性のSiO2反射防止層を備えた強化安全ガラスとその製造方法が開示されている。このガラスは、普通使用されるガラスをコロイド分散溶液で被覆し、乾燥し、有機成分を除去するため少なくとも630℃の温度に加熱し、強化のため引続き急冷するものである。多孔性のSiO2反射防止層によって接着性が向上し、同時に不所望な反射を阻止及び低減しながら、可視光又は他の電磁波の透過度を高める。また、急冷することで、強化される。このガラスは、例えば太陽光集光器及び太陽光電池の被覆、自動車のフロントガラス、建物のガラス窓等として使用される。
特表2002−543028号公報
上記の特許文献1に記載されている強化方法は、コロイド分散液の有機成分を除去するためにガラスを630℃の高温に加熱する必要があり、また、強化のために急冷する必要があり、ガラス製品を製造するにあたって、そのための特別な設備が必要となり、設備コスト及びエネルギーコストが高くなっていた。
本発明は、ガラスびんやガラス食器の従来の製造ライン上で容易に実施でき、エネルギーコストも少なく、しかも、ガラス製品の耐衝撃性を実用上十分な程度に高めることができる方法を開発するためになされたものである。
(請求項1)
本発明は、ガラス製品のガラス表面に、アルカリ性シリカ(SiO)水溶液をコーティング液として塗布し、乾燥させることでシリカ膜を形成するステップを有し、前記コーティング液のシリカ(SiO )濃度が0.2〜2.5wt%であることを特徴とする耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法である。
ガラス表面に形成したシリカ膜が耐衝撃性を高め、衝撃により局所応力が発生したときのガラス破損率を低減できる。
アルカリ性シリカ水溶液は、市販品の微粉末状のシリカまたは不溶性ケイ酸塩、ケイ素含有ガラスをアルカリ溶融して、水またはアルカリ水溶液に溶解して作製する。あるいは、市販品のシリカまたは水可溶性ケイ酸塩を水あるいはアルカリ水溶液に溶解して作製する。アルカリ溶液は水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液など、シリカを溶解できるものであれば特に制限はない。
コーティング液のシリカ濃度が0.2wt%に満たないと、シリカ膜が薄くなり、耐衝撃効果が不十分となり、2.5wt%を越えると、シリカ膜が白化して見栄えが悪くなる。
コーティング液塗布後の乾燥は、自然乾燥でも強制乾燥でもよいが、通常は自然乾燥で十分である。
シリカ膜は、必ずしもガラス製品の表面全体に形成する必要はなく、所望の部分に形成すればよい。
(請求項2)
また本発明は、前記請求項1の製造方法において、前記コーティング液を塗布するときの被塗布部分のガラス表面の平均温度が60〜150℃である耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法である。
コーティング液を塗布するときの被塗布部分のガラス表面の平均温度は60〜150℃が好ましい。150℃を越えると衝撃により局所応力が発生したときの破損率を低減する効果が低くなり、これは熱衝撃によりガラス自体にダメージが発生するためと推定される。
(請求項3)
また本発明は、前記請求項1の製造方法において、前記コーティング液を塗布するときの被塗布部分のガラス表面の平均温度が100〜10℃である耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法である。
コーティング液を塗布するときの被塗布部分のガラス表面の平均温度は100〜120℃がさらに好ましくなる。100℃未満ではシリカ膜が密実なものとはならず耐湿性が不十分なものとなる。この範囲にすることで、耐湿性と衝撃により局所応力が発生したときの破損率を低減する効果がきわめて高くなる。
(請求項
また本発明は、前記請求項1〜のいずれかの製造方法において、前記ガラス製品がガラスびん又はガラス食器であり、前記コーティング液の塗布を、ガラスびん又はガラス食器の製造ラインにおける徐冷炉出口の下流側で、ガラスびん又はガラス食器の被塗布部分の表面温度が所定の範囲内にあるときに行うことを特徴とするガラス製品の製造方法である。
コーティングの塗布を、ガラスびん又はガラス食器の製造ラインにおける徐冷炉出口の下流側でガラスびん又はガラス食器がまだ熱いうちに行うことで、ガラスを加熱する必要がなくなり、エネルギーコストが不要となる。また、徐冷炉出口の下流側には、通常、コールドエンドコーティング(ポリエチレンなどのコーティング)の設備があるので、この設備を利用してコーティングを行うことができ、設備コストも不要となる。









本発明の製造方法により、ガラス製品の表面に密実なシリカ膜が形成され、このシリカ膜が耐衝撃性を高め、衝撃により局所応力が発生したときのガラス破損率を低減できる。
また、コーティング液を塗布するときのガラス表面温度が比較的低いので、エネルギーコストが低くてよい。
コーティング液の塗布をガラスびんなどの製造ラインの徐冷炉出口の下流側で行うと、エネルギーコスト及び設備コストが不要となる。
衝撃試験装置の説明図である。 実施例1の試験結果の説明図である。 実施例2の試験結果の説明図である。 衝撃試験装置の説明図である。 実施例3の試験結果の説明図である。 実施例4の試験結果の説明図である。 実施例5の試験結果の説明図である。
符号の説明
1 試料
2 台
3 支柱
4 クッション材
5 鋼球
6 ピン
7 腕
8 錘
9 腕
10 治具
11 試料
(他のコーティング液との比較)
基材(厚さ約4mmのソーダ石灰ガラス板)を、内部温度が125℃の電気オーブンの中に1時間以上放置して加温した。加温された基材をロクロに載せて、回転させ、ハンドスプレーガンを使ってコーティング液を塗布した。このコーティング処理の詳細は下記のとおりである。
・ロクロの回転数: 1回転/秒
・ハンドスプレーガン: いわた製W71
・流量: 5ml/分
・塗布時間:4秒間
・乾燥: 100℃20分
上記のコーティング処理を行った実施例、及び比較例1〜1−3を用意した。
・実施例
微粉末状シリカ(SiO)を水酸化ナトリウム溶液に溶解させ、シリカ25wt%を含むpH11の原液を用意した。この原液を蒸留水で100倍に希釈してコーティング液とした。コーティング液のシリカ濃度は0.25wt%で、前段落に記載した方法でコーティング処理し、基材表面にシリカ膜を形成した。
・比較例1
前段落のコーティング処理を全く行わない無処理の基材を比較例1とした。
・比較例1−2
コーティング液として、固形分濃度0.4%の界面活性剤を用い、前段落に記載し方法でコーティング処理した。
・比較例1−3
コーティング液として固形分濃度0.4%のポリエチレン剤を用い、前段落に記載した方法でコーティング処理した。
前記の実施例及び比較例1〜1−3に対して衝撃試験を行い、衝撃に対する破損率を評価した。
図1は、衝撃試験装置の説明図である。台2に支柱3を立設したスタンドを用意し、台2上にクッション材4(ゴム板)を敷き、その上に試料1を置く。試料1の上には、先端に鋼球5(φ3mm)を固定したピン6を、支柱3からの張り出した腕7で上下動自在に支持してセットする。ピン6の上方には、錘(重さ134g)8を腕9で支持する。錘8の支持を解除し、錘8を自由落下させ、ピン6に衝突させて試料1に衝撃を加え、試料1に割れ(コーン)が生じたかどうかを判定する。錘8の落下高さhは10mmとした。
実施例及び比較例1〜1−3の試料を各5枚用意し、各ガラス板について20個所、衝撃試験を行った。したがって、合計の試験回数nは、実施例及び各比較例につき5×20=100である。
その結果の破損率を表1に示す。表1において、「最小値」及び「最大値」は、各ガラス板ごとに破損率を求めたものの最小値及び最大値であり、「平均」はガラス板5枚全体の破損率である。また、表1の結果をグラフに表し、図2として示す。
Figure 0005116024
比較例1−2、1−3の界面活性剤、ポリエチレンは、従来から滑性付与のため、コールドエンドでガラスびん胴部に行われているコーティングであり、衝撃力を逃がして緩和する効果はあるが、衝撃を垂直に固定して与える局所応力に対しては効果がない。むしろ、コーティング時の熱衝撃により、比較例1の無処理に対して破損率が大きくなっている。実施例は、いずれの比較例に較べても、格段に破損率が小さく、耐衝撃性向上の効果が立証されている。
(シリカ溶液の濃度の影響)
基材(厚さ約4mmのソーダ石灰ガラス板)を内部温度125℃の電気オーブンの中に1時間以上放置して加温した。加温された基材をロクロに載せて、回転させ、ハンドスプレーガンを使ってコーティング液を塗布した。このコーティング処理の詳細は下記のとおりである。
・ロクロの回転数: 1回転/秒
・ハンドスプレーガン: いわた製W71
・流量: 5ml/分
・塗布時間:4秒間
・乾燥: 80℃3分
濃度の異なる3種類のコーティング液を前段落に記載の方法でコーティングし、3種類の実施例を各5枚作成した。
・実施例2−1:前記原液を蒸留水で10倍に希釈して使用(SiO濃度2.5wt%、PH10.8)
・実施例2−2:前記原液を蒸留水で50倍に希釈して使用(SiO濃度0.5wt%、PH10.5)
・実施例2−3:前記原液を蒸留水で100倍に希釈して使用(SiO濃度0.25wt%、PH10.2)
この3種類の実施例を各5枚作成し、各1枚につき20個所、図1の衝撃試験装置により衝撃試験を行った。その結果を表2に示す。表2において、比較例1は、前段落の処理を全く行わない無処理の基材である。「最小値」及び「最大値」は、各ガラス板ごとに破損率を求めたものの最小値及び最大値であり、平均はガラス板5枚全体の破損率である。また、表2の結果をグラフに表し、図3として示す
Figure 0005116024
シリカ濃度2.5wt%の場合は破損はなかった。シリカ濃度0.25wt%でも破損率はわずかに2%で、無処理ガラス(破損率10%)に比べると80%の破損率低減効果を示した。これにより、シリカ濃度0.25〜2.5wt%での破損率低減効果が実証された。
(ガラスびんでのびん温度の評価)
基材(ガラスびん)を、ある温度にした電気オーブンの中に1時間以上放置することで加温した。加温された基材を実験的なコーティング装置を使ってコーティング液をスプレーした。このコーティング処理の詳細は下記のとおりである。
・スプレーノズル: ニードルスプレーガン
・流量: 50ml/分
・電気オーブン温度: 90,110,130,150℃の4水準とした。
・コーティング液: 前記原液を蒸留水で100倍に希釈して使用(SiO濃度0.25wt%)
加温温度の違いにより、下記の5種類の実施例を各5本用意した。
・実施例3−1: 加温温度90℃
・実施例3−2: 加温温度110℃
・実施例3−3: 加温温度130℃
・実施例3−4: 加温温度150℃
前記の実施例3−1〜3−4に対して衝撃試験を行い、衝撃に対する破損率を評価した。
図4は、その衝撃試験装置の説明図である。台2に支柱3を立設したスタンドを用意し、台2上に治具10を置き、その上に試料11を置く。これにより、試料11は45°傾いた状態でセットされる。試料11の口部(ねじ部)の上に、先端に鋼球5(φ3mm)を固定したピン6を、支柱3からの張り出した腕7で上下動自在に支持してセットする。ピン6の上方には、錘(重さ134g)8を腕9で支持する。錘8の支持を解除し、錘8を自由落下させ、ピン6に衝突させて試料11の口部(ねじ部)に衝撃を加え、そのときに割れ(コーン)が生じたかどうかを判定する。錘8の落下高さhは10mmとした。
各実施例5本ずつの、各1本のガラスびんに対し、16個所衝撃試験を行った。したがって、合計の試験回数nは5×16=80である。
その結果の破損率を表3に示す。表3において、「最小値」及び「最大値」は、各ガラスびんごとに破損率を求めたものの最小値及び最大値であり、平均はガラスびん5本全体の破損率である。また、表3の結果をグラフに表し、図5として示す。
Figure 0005116024
前記の比較例1と比較して、加温温度90〜150℃で破損率低減効果があることが認められる。特に、110℃(実施例3−2)の破損率低減効果が優れている。したがって、コーティング液は、平均温度が100〜120℃のガラス表面に塗布することが最も好ましい。
(ガラスびん生産ラインでのびん温度の評価)
ガラスびん製造ラインで成形されたガラスびんに、徐冷炉出口の下流側(コールドエンド)でコーティングを行った。コーティング時のびん平均表面温度は110℃、60℃の2水準で行なった。このコーティング処理の詳細は下記のとおりである。
・スプレーノズル: ニードルスプレーガン
・流量: 50ml/分
コーティング液は、前記の原液を蒸留水で100倍に希釈し、SiO濃度0.25wt%のものを使用した。
コーティングを終了したガラスびんを、室温2週間(室内保管)と、温度70℃湿度90%3時間(高温多湿保管)の2水準で保管し、下記の実施例を得た。また、比較例4として、コーティング処理を行わないガラスびんを用意した。
・実施例4−1: コーティング時温度110℃、室温保管
・実施例4−2: コーティング時温度110℃、温度70℃湿度90%保管
・実施例4−3: コーティング時温度60℃、室温保管
・実施例4−4: コーティング時温度60℃、温度70℃湿度90%保管
・比較例4: コーティングなし(無処理)
各実施例及び比較例4を、それぞれ20本を用意し、各びんについて16個所、図4の衝撃試験装置により衝撃試験を行った。したがって、合計の試験回数nは、各実施例・比較例につき20×16=320である。
その結果を表4に示す。表4において、「最小値」及び「最大値」は、各ガラスびんごとに破損率を求めたものの最小値及び最大値であり、「平均」はガラスびん20本全体の破損率である。また、表4の結果をグラフに表し、図6として示す。
Figure 0005116024
実施例4−4(コーティング時温度60℃、温度70℃湿度90%保管)は、破損率が大きく、耐湿性に問題があることがわかる。したがって、コーティング時のガラス表面平均温度は90℃以上が好ましく、さらに好ましくは100〜120℃である。
(ガラスびん生産ラインでのコーティング流量の評価)
ガラスびん製造ラインで成形されたガラスびんに、徐冷炉出口の下流側(コールドエンド)でコーティングを行った。コーティング時のガラスびん表面平均温度を110℃とし、コーティング液の流量を下記の3水準で行なった。このコーティング処理の詳細は下記のとおりである。
・スプレーノズル: ニードルスプレーガン
・流量: 30、50、70ml/分
コーティング液は、前記の原液を蒸留水で100倍に希釈し、SiO濃度0.25wt%のものを使用した。
・実施例5−1: 流量30ml/分
・実施例5−2: 流量50ml/分
・実施例5−3: 流量70ml/分
・比較例5: コーティングなし(無処理)
各実施例及び比較例、それぞれ20本を用意し、各びんについて16個所、図4の衝撃試験装置により衝撃試験を行った。したがって、合計の試験回数nは、各実施例・比較例につき20×16=320である。
その結果を表5に示す。表5において、「最小値」及び「最大値」は、各ガラスびんごとに破損率を求めたものの最小値及び最大値であり、「平均」はガラスびん20本全体の破損率である。また、表5の結果をグラフに表し、図7として示す。
Figure 0005116024
コーティング液の流量による破損率の変化はあまり認められなかった。したがって、流量は、コーティング液がガラス表面にまんべんなく付着し、液だれをおこさない程度の量、すなわち通常行われるコーティング処理と同程度の流量であればよく、特に制限を設ける必要はない。
本発明は、ガラスびん、ガラス食器の他、板ガラスの製造方法としても利用することができる。

Claims (4)

  1. ガラス製品のガラス表面に、アルカリ性シリカ(SiO)水溶液をコーティング液として塗布し、乾燥させることでシリカ膜を形成するステップを有し、前記コーティング液のシリカ(SiO )濃度が0.2〜2.5wt%であることを特徴とする耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法。
  2. 請求項1の製造方法において、前記コーティング液を塗布するときの被塗布部分のガラス表面の平均温度が60〜150℃である耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法。
  3. 請求項1の製造方法において、前記コーティング液を塗布するときの被塗布部分のガラス表面の平均温度が100〜120℃である耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法。
  4. 請求項1〜のいずれかの製造方法において、前記ガラス製品がガラスびん又はガラス食器であり、前記コーティング液の塗布を、ガラスびん又はガラス食器の製造ラインにおける徐冷炉出口の下流側で、ガラスびん又はガラス食器の被塗布部分の表面温度が所定の範囲内にあるときに行うことを特徴とする耐衝撃性を高めたガラス製品の製造方法。
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