JP5118947B2 - 高温耐久性を高めたナノ表面改質方法並びにナノ表面改質方法が施された金属部材並びにこれを構成部材に適用したvgsタイプターボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリ - Google Patents
高温耐久性を高めたナノ表面改質方法並びにナノ表面改質方法が施された金属部材並びにこれを構成部材に適用したvgsタイプターボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリ Download PDFInfo
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Description
少なくともクロムを含有する金属素材を被処理材とし、
この被処理材をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、
その後、またはこのフッ化処理中に、処理温度を400 〜600 ℃に設定した低温浸炭処理および/または浸窒処理を施すか、あるいは減圧下の低温プラズマ浸炭処理および/または低温プラズマ浸窒処理を施して、結晶粒内に多発せしめた浸入型原子誘起転位を炭化物または窒化物の生成核とする擬鋭敏化処理を行い、最終的に被処理材の断面表層部に、クロム炭化物またはクロム窒化物を微細且つ均一に出現させて、被処理材の表面硬化とカバリング効果を図り、被処理材の耐高温摩擦摩耗特性を向上させるようにしたことを特徴として成るものである。
ここで「ナノ(表面改質)」、「浸入型原子誘起転位」、「擬鋭敏化」という用語(文言)については、上記〔0001〕において説明した通りである。また、「カバリング効果」とは、クロム炭化物またはクロム窒化物が被処理材の断面表層部を密に覆うことにより、摺動に際し、摺動面における固溶原子の相互移動を低減して親和性を阻害する効果、すなわち耐高温摩擦摩耗特性を向上させる効果をいうものとする。更に、高温使用中の外部酸素の浸入を阻止する効果も併せ、いうものとする。
前記結晶粒内に多発せしめる浸入型原子誘起転位は、10 8 〜1015/cm2の転位密度で生じさせるものであり、
また前記擬鋭敏化処理を被処理材に施すにあたっては、処理温度を550 〜850 ℃に設定するようにしたことを特徴として成るものである。
ここで「転位密度」とは、結晶の単位体積中に含まれる転位線の長さの総和、または結晶の切断面の単位面積を貫く転位線の数である。
前記擬鋭敏化処理後の被処理材には、擬鋭敏化処理によって生じ得る断面表層部のクロム欠乏層中のクロム量を補填するために、当該欠乏層より内部の被処理材マトリックスから、逆濃度勾配を利用して固溶状態のクロム原子をクロム欠乏層に移動させる逆拡散処理を行い、被処理材の耐高温酸化特性を向上させるようにしたことを特徴として成るものである。
ここで「マトリックス」とは、もともとの被処理材(母材)のことで表面改質が施されていない深部のことである。また「逆濃度勾配」について説明すると、一般の浸炭では、例えば図2(a)に示すように、被処理材の板厚断面内で表層部分の元素濃度が高く、板厚内部に向かって濃度が低下するものであるが、本願のクロム欠乏層を含むクロム濃度は、図2(b)に示すように断面表層に向かって低下するものであり、本願では、このクロム濃度変化を「逆濃度勾配」と称している。また「逆拡散」とは、このような逆濃度勾配に起因する元素の固体拡散を称するものである。
前記逆拡散処理を被処理材に施すにあたっては、処理温度を850 〜950 ℃に設定するようにしたことを特徴として成るものである。
前記擬鋭敏化処理後の被処理材には、レアアースメタル元素を導入する添加処理を行い、擬鋭敏化処理によって生じ得るクロム欠乏層の存在に基づく耐高温酸化特性の劣化を回復させるようにしたことを特徴として成るものである。
前記被処理材に導入するレアアースメタル元素の添加量は、0.01〜0.5 %であることを特徴として成るものである。
前記被処理材には、事前に塑性加工を施し、塑性加工転位を導入してから、順次以降の処理を行うようにしたことを特徴として成るものである。
ここで「塑性加工転位」とは、弾性域を越えた外力による塑性加工域における塑性変形に伴って生じる結晶群のずれ(すべり)、すなわち線欠陥のことである。
前記塑性加工転位は、相当真歪εが0.1 〜εu (εu ;相当均一真歪)で被処理材に導入されることを特徴として成るものである。
前記被処理材には、低温浸炭処理と浸窒処理との双方を施すことを特徴として成るものである。
前記被処理材は、
C:0.02〜0.07 mass %、Si:0.2 〜1.7 mass%、Mn:5.0mass %以下、Ni:12.0〜15.0 mass %、Cr:22.0〜25.0 mass %、Cu:0.5 〜4.5 mass%、N:0.05〜0.17 mass %、且つ、Ca、REM のうちの1種または2種を0.0005〜0.05mass%含有し、残部がFe及び不可避的不純物から成り、下記(1) 式で定義されるNi当量が30.0以上、下記(2) 式で定義されるδcal が0.5 〜8.0 、下記(3) 式で定義されるHvが 120〜160 となるオーステナイト系耐熱素材が適用されることを特徴として成るものである。
記
Ni当量=Ni+0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+0.6Cu +25.2C+12.6N …(1)
δcal =3.2 (1.5Si+Cr) −2.5(30C+30N+Ni+0.5Mn +0.3Cu)−24.7 …(2)
Hv =87C+ 2Si−1.2Mn −6.7Ni +2.7Cr −2.6Cu +690 N+88 …(3)
金属部材の表面に表面改質処理が施され、この処理によって部材の高温耐久性を向上させた金属部材であって、この部材には前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のナノ表面改質方法が施されて成ることを特徴として成るものである。
排気タービンの外周位置に、複数の可変翼が回動自在に設けられ、
エンジンから排出された比較的少ない排気ガスを、この可変翼によって適宜絞り込み、排気ガスの速度を増幅させ、排気ガスのエネルギで排気タービンを回し、排気タービンに直結されたコンプレッサで自然吸気以上の空気をエンジンに送り込み、低速回転時であってもエンジンが高出力を発揮できるようにしたVGSタイプターボチャージャの排気ガイドアッセンブリにおいて、
この排気ガイドアッセンブリの構成部材には、前記請求項11記載の金属部材が適用されて成るものであり、ナノ表面改質の際には事前に適宜の形状に塑性加工されて成ることを特徴として成るものである。
すなわち請求項1または2記載の発明によれば、まず被処理材に上記特許文献1、2の処理、つまり事前フッ化処理後、400 〜600 ℃、一例として500 ℃程度の低温浸炭または浸窒処理のうち、少なくとも一方の処理を施すと、炭素または窒素が非平衡且つ過飽和に断面表層部位(例えば30μm程度)の結晶格子間に浸入して濃度勾配を生じる。それに応じて、表面硬化が起こるから、ある程度の高温耐久性を発揮する。そして、難浸炭・浸窒材であるオーステナイト系ステンレス鋼で低温処理によって材料の寸法変化を回避しつつ、浸炭・浸窒を可能にした点で意義がある。特許文献3の低温プラズマ浸炭または浸窒も同様である。しかしながら、長時間熱サイクル高温耐久性に対する要求を満たすには甚だ不十分である。
また低温浸炭や低温浸窒等によって導入される浸入型原子誘起転位の密度は、108 〜1015/cm2が望ましい。その理由は、108/cm2 未満では、後続の擬鋭敏化処理を行っても核生成サイトが過少のためクロム炭化物/クロム窒化物析出が不十分で耐高温摩擦摩耗特性を必要十分に確保できず、1015/cm2を越えると核生成サイトが過剰となって析出物の適正な小寸法への成長・分布が阻害されるからである。
また擬鋭敏化処理が550 〜850 ℃で実施されるのが望ましい理由は、次の通りである。当該処理温度が550 ℃未満の場合は、該導入転位を核にしたクロム炭化物が、析出条件を充分に満たすことができないため所要の微細炭化物析出を生じ得ないからである。他方、処理温度が850 ℃を越えると、クロムと炭素もしくは窒素の原子間親和力が低下し、折角の導入転位の核生成サイト(機能)が存在しても、やはりクロム化合物の生成が全く不十分となるからである。このように適正領域を見出し、限定条件を付したのであるが、この現象の本質は、遊離クロム、炭素原子(窒素原子)のそれぞれの自由エネルギと、析出化合物の自由エネルギの温度依存性の相違に基づくものである。
そして、この析出物について電子線回析・解析及びEDX(エネルギ分散型X線回析分光器)定性分析を行った結果(図7)、これらはCr3C2 、Cr7C3 を主体としたクロム炭化物であることが判明した。硬度は、それぞれHv=1800、1550と大変硬質であり、(後述のごとく)高温における耐摩擦摩耗特性を大幅に改善することが実証されたものである。
そして、このクロム欠乏層を補填する(元に戻す)ため、逆拡散処理を行った後のEPMAチャートを図9に示す。上記の予想の通り、クロム欠乏層は、逆拡散によって修復され、耐高温酸化特性の劣化が、かかる処理によって回復され得ることが示された。なお、炭素量は、固溶炭素の板厚内部への拡散によって、量・濃度勾配ともに図8に比べて小さくなっていることが分かる(以上図2参照)。
この現象に対する実用的な対策を鋭意検討した結果、本願請求項3に係る発明に至ったものである。すなわち、請求項3に係る発明では、固溶クロム量は断面表層部に近い程、減少する逆濃度勾配(低温浸炭における固溶炭素量の濃度勾配とは逆になっており、これは表層部に近い程、炭素量が多いので多量のクロム炭化物が生じて所定の固溶クロムがより多く消費されるためである)を利用して、擬鋭敏化後に、高温短時間熱処理を施すことによって、材料の板厚内部から固溶クロムを表層部に向けて拡散移動せしめ、欠乏層を補填して当初の固溶クロム量に戻すというものである。すなわち、熱力学上の生成自由エネルギやエントロピー増大の法則に従って、内方のクロムはランダム化するため表層方向に移動するわけである。
(1) クロム欠乏層は30μm程度であるのに比べ、被処理材(材料)の板厚は耐熱用途では数mm(=数1000μm)であるから、欠乏層が補填されても材料初期状態の所定クロム濃度の低下は、実質的に無視できること(欠乏層末端より内方のクロム量は、欠乏層に対して圧倒的に多量に存在することを意味している)。
(2) 移動拡散してきた固溶クロムが、断面表層部の浸炭処理で導入された後に擬鋭敏化処理でクロム炭化物にならなかった固溶炭素と結合してクロム炭化物になってしまうのではないかという懸念がある。これに関しては、逆拡散処理が擬鋭敏化条件(温度と時間で決まるC字状曲線から成り、この範囲内で擬鋭敏化析出が起こる)を外した高温(短時間)で行うゆえ(850 〜950 ℃、一例として950 ℃×2時間)、かかる懸念は存在しないのである。
なお、逆拡散を行う処理温度として約850 〜950 ℃が好ましいのは、850 ℃未満では拡散が遅く、Cr欠乏層の修復ができず、また950 ℃を超えると、寸法精度の劣化を招くためである。
なお、レアアースメタルの添加量は、効果と経済性を勘案して0.01〜0.5 %とする。
ここで塑性加工とは、弾性変形域を越えた外力が加えられて、マクロ的には永久変形が生じた状態であり、ミクロ的には局所的な結晶格子変形、すなわち転位などの格子欠陥を生ずる加工のことで、その態様はプレス成形、鍛造、造形、圧延、引き抜き・押し出し、切削(機械加工)、ショットピーニング、ワイヤカット、打ち抜き、研削、研摩など広範にわたる。本願では、かかる塑性加工で生じた線状欠陥を塑性加工転位と称しており、特にその中で改質層中の加工転位が、上述した浸入型原子誘起転位と相まって、例えば擬鋭敏化によるクロム炭化物の生成割合を増大せしめ、一層、この炭化物を均一・微細に析出させることを意図したものである。
その理由は、クロム炭化物生成率が増えるほど、硬質層とカバリング効果(上記〔0019〕が発揮されて耐高温摩擦摩耗特性が向上すること、またより均一・微細に析出すればするほど実際使用時の、特に長時間多数回の熱サイクル下でのクロム炭化物の成長・凝集(一般に「オストワルド成長」と称される)及び解離・再固溶が抑制され、結果として耐高温摩擦摩耗特性が維持されることにある。
かかる効果を現出させるには加工様式に拘らず相当真歪εがε=0.1 〜εu であることが望ましい。ここにεu は相当均一真歪である。このときの転位密度ρは大略ρ=108 〜1013/cm2程度である。
なお、重ねて言えば本願は、上記〔0019〕に記したように浸入型原子誘起転位の存在を前提としており、加工転位との併存によって望ましい炭化物・窒化物の析出がなされるものであり、既知の、ステンレス鋼の鋭敏化の軽減を意図して応用されることのある加工転位のみによる炭化物・窒化物の析出処理とは一線を画すものであることを強調しておきたい。
(1) 低温浸炭に際して過剰・不均一な塑性加工転位の存在は、マイナス要因となりかねないことであり、場合によって事前フッ化処理に先行して適切な熱処理を行う必要があること
(2) 上記のごとき塑性加工には種々の変形様式があり、多くの場合、金属素材(被処理材)から加工部品形状が規定されているのが通例であるから、塑性加工転位の処理性及び処理後特性(高温耐久性)発現・向上に対しては塑性加工様式とその条件及び低温浸炭前処理条件を十分考慮すべきこと(各加工様式における真歪(相当真歪εではない)をそれぞれ考慮した場合)
(3) 塑性加工転位もやはりナノ寸法レベルに属するところから、本願請求項7、8に係る発明もナノ表面改質と言えること
(1) 浸炭と浸窒とを同時に行う場合
(2) 浸炭→浸窒処理(浸炭処理を行った後に浸窒処理)を行う場合
(3) 浸窒→浸炭処理(浸窒処理を行った後に浸炭処理)を行う場合
まず(1) の同時処理は、部品または製品の適用使用温度範囲が広い場合(例えば650 〜1050℃)に効果的である。その理由は、低温域(例えば650 〜850 ℃)で、クロム炭化物が比較的安定的に機能を発揮するため、浸炭処理の効果が得られ易く、高温域(例えば850 〜1050℃)で、クロム窒化物が比較的安定的に機能を発揮するため、浸窒処理の効果が得られ易いからである。
また(2) の浸炭→浸窒処理は、適用使用温度範囲が高温域の場合に効果的である(例えば850 〜1050℃)。その理由は、高温域では、相対的に、より断面表層部位に存在するクロム窒化物が比較的安定的に機能を発揮するために、この処理の効果が得られ易いからである。
更に(3) の浸窒→浸炭処理は、適用使用温度範囲が低温域の場合に効果的である(例えば650 〜850 ℃)。その理由は、低温域では、相対的に、より断面表層部位に存在するクロム炭化物が比較的安定的に機能を発揮するために、この処理の効果が得られ易いからである。
このように、いずれの場合も、浸炭、浸窒の複合処理の効果は、単独処理に比較して効果の程度はより優れ、安定的且つ適用温度依存性が緩和される。つまり許容条件が広がるという効果が期待できるが、生産性・経済性を考えると、複合・単独の各処理を適用ケースに応じて選択するのが望ましい。
(1) 新材料に本願のナノ表面改質処理を施す場合、例えばSUS310S 級の完全オーステナイト系ステンレス鋼の場合に比べてニッケル量を大幅に低減しているためフッ化処理による不動態皮膜除去性に優れるので(しかし組成バランスを考慮した材料設計によってやはり完全オーステナイト系ステンレス鋼である)、低温浸炭もしくは浸窒が容易であり、これは工業化の上で大きなメリットとなる。
(2) 過大な高温延性が制約され適度な値(例えば850 ℃で30〜40%の伸び)を有するために、多数回の熱サイクル使用に際してもナノ表面改質層に過大な変形・応力を与えずに済むから、改質層の品質が長時間安定に保たれる。
(3) カルシウム及び銅添加によって特に機械的加工性(切削性)に優れるので、低温浸炭・窒化に際して事前処理の負荷が少なく、工業的に作業がし易く、作業能率も上がる。
(4) 新材料は、ナノ表面改質処理後の表面平滑度が良好なのでアッセンブリし易く、且つ耐高温摩擦摩耗特性(特に凝着摩耗)も従来鋼(上記SUS310S )より良好である。
(5) 材料の耐高温摩擦摩耗特性が良好な反面、高温(水蒸気)酸化に対して、例えばSUS310S に比較しても遜色ないので、ナノ表面改質が施された場合の改質層のマトリックス部分(及び改質層境界より板厚方向内部のマトリックスも)の高温耐久に対する抵抗力も充分である。
(6) Ni当量、δcal 、Hvに対する適正化制御がなされているので、高温耐久性の重要因子である高温組織安定性に優れている(上記SUS310S と比較した熱サイクルによる鋭敏化現象(耐食性、耐脆化特性を劣化させる)及びシグマ相生成現象(材料脆化の原因となる)に関わる組織安定性の例を図10、11に示す。組織安定性は経済的にも有利な新材料の方がSUS310S よりも優れていることが認識される。つまり、新材料に本願の表面改質を施すことにより、従来にない新技術を提供することができる)。また、特に完全オーステナイト鋼に通弊の難製造性が回避できるので量産性・経済性に優れ、加工性も高窒素の弊害(窒素は高温強度維持のためと完全オーステナイト化のために高値としている)は、ニッケルの低減と銅、カルシウム(もしくはレアアースメタル)の添加と、結晶粒度制御によって回避されており、且つ本質的に優れた耐高温摩耗特性を有するから、ナノ表面改質処理とのコンビネーションによって、従来にない新規な耐熱部材の製造が可能となる。
なお、塑性加工によって被処理材に導入される転位(塑性加工転位)は、約108 〜1013/cm2の転位密度となる。
なお、低温浸炭や低温浸窒等の処理の際に、被処理材に生成される転位(浸入型原子誘起転位)は、約108 〜1015/cm2の転位密度となる。
また、図1では、被処理材に低温浸炭処理を施す場合を示したが、浸炭処理に代えて浸窒処理(低温浸窒)を施しても構わないし、これら双方の処理を被処理材に施しても構わない。また、低温プラズマ浸炭および/または浸窒処理で行う場合は、図1の工程においてフッ化処理が不要となり、替わりに真空プラズマ発生装置(炉)が必要となる。
なお、フッ化処理、低温浸炭または低温プラズマ浸炭、擬鋭敏化、逆拡散処理またはレアアースメタル添加処理の各工程を、同一炉で連続的に行うこともできるし、それぞれ別の炉で1つあるいは2つ以上に分けて併行して行うこともできる。
一方、浸炭処理後に擬鋭敏化処理を行った新材料は、室温における表面硬さがHV >500 となり、温度増加とともにHV の低下は免れないが、800 ℃以上でHV >100 を保っており、明らかに高温硬さに対して、一連の処理効果が認められる。すなわち、耐高温摩擦摩耗特性に対する効果が期待される。この擬鋭敏化処理の効果の主因は、図5、6、7に示したように浸炭時の浸入型原子誘起転位の導入によって結晶粒内に高硬度のクロム炭化物が均一析出することによるものである。
表1(図15)にはピンオンディスク法により800 ℃大気中で3m相当の高温摩擦摩耗試験を行った結果を示す。浸炭もしくは浸窒法は、フッ化処理によるそれぞれ500 ℃×16時間、570 ℃×16時間処理によるものであり、擬鋭敏化処理はいずれも700 ℃×2 時間行われた。また、逆拡散処理は900 ℃×2 時間、レアアースメタルの材料表面への添加浸入は、キャリアガスとしてアルゴンを用い、逆拡散処理温度と同一条件とした。浸炭・浸窒処理に先行する塑性加工転位の導入のための塑性加工は圧縮変形によって、相当歪εを約0.3(=30%) 加えた。このときの転位密度は、約1011/cm2で、浸入型原子誘起転位の転位密度(約1012/cm2)に比べて約1/10である。浸炭、浸入の共存条件は、上記の試験温度で3通りに変えて行った。なお、比較のために主として用いた「新材料(完全オーステナイトステンレス鋼)」の表面改質非処理材と規格材のSUS310S (従来より主としてVGSタイプのターボチャージャの構成部材として使用されている)の実施例も併せて示した。以上のうち、フッ化処理低温処理の替わりに低温プラズマ処理の場合も同様の結果が得られている。
表2(図16)には、VGSタイプターボチャージャの構成部材を意識して、自動車排ガス中に含まれ高温酸化条件を厳しくする水蒸気を添加させた条件で(ベースは大気)、850 ℃×100 時間の連続高温酸化試験の結果を示した。その他の試験条件は表1(図15)と同様である。
翼部11は、主に排気タービンTの幅寸法に応じて一定幅を有するように形成されるものであり、その幅方向における断面が概ね翼形に形成され、排気ガスGが効果的に排気タービンTに向かうように構成されている。なお、ここで翼部11の幅寸法を便宜上、翼幅hとする。
また軸部12は、翼部11と一体的に連続形成されるものであり、翼部11を動かす際の回動軸となる。
更に軸部12の先端部には、可変翼1の取付状態の基準となる基準面15が形成される。この基準面15は、後述する可変機構3に対しカシメ等によって固定される部位であり、一例として図3に示すように、軸部12を対向的に切り欠いた二平面が、翼部11に対してほぼ一定の傾斜状態に形成されて成るものである。
フレームセグメント21は、可変翼1の軸部12を受け入れるフランジ部23と、後述する可変機構3を外周に嵌めるボス部24とを具えて成る。なお、このような構造からフランジ部23には、周縁部分に可変翼1と同数の軸受孔25が等間隔で形成されるものである。
また保持部材22は、図3に示すように中央部分が開口された円板状に形成されている。そして、これらフレームセグメント21と保持部材22とによって挟み込まれた可変翼1の翼部11を、常に円滑に回動させ得るように、両部材間の寸法が、ほぼ一定(概ね可変翼1の翼幅寸法程度)に維持されるものであり、一例として軸受孔25の外周部分に、四カ所設けられたカシメピン26によって両部材間の間隔が維持されている。ここで、このカシメピン26を受け入れるためにフレームセグメント21及び保持部材22に開口される孔をピン孔27とする。
回動部材31は、図示するように中央部分が開口された略円板状に形成され、その周縁部分に可変翼1と同数の伝達部材32を等間隔で設けるものである。なお、この伝達部材32は、回動部材31に対し回転自在に取り付けられる駆動要素32Aと、可変翼1の基準面15に固定状態に取り付けられる受動要素32Bとを具えて成り、これら駆動要素32Aと受動要素32Bとが接続された状態で、回動が伝達される。具体的には四角片状の駆動要素32Aを、回動部材31に対して回転自在にピン止めするとともに、この駆動要素32Aを受け入れ得るように略U字状に形成された受動要素32Bを、可変翼1の先端の基準面15に固定し、四角片状の駆動要素32AをU字状の受動要素32Bに嵌め込み、双方を係合させるように、回動部材31をボス部24に取り付ける。
このような構成によって、エンジンが低速回転を行った際には、可変機構3の回動部材31を適宜回動させ、伝達部材32を介して軸部12に伝達し、図3に示すように可変翼1を回動させ、排気ガスGを適宜絞り込んで、排気流量を調節するものである。
2 タービンフレーム
3 可変機構
11 翼部
12 軸部
13 テーパ部
14 鍔部
15 基準面
21 フレームセグメント
22 保持部材
23 フランジ部
23A フランジ部(小)
23B フランジ部(大)
24 ボス部
25 軸受孔
26 カシメピン
27 ピン孔
31 回動部材
32 伝達部材
32A 駆動要素
32B 受動要素
33 リング
A 排気ガイドアッセンブリ
G 排気ガス
h 翼幅
T 排気タービン
Claims (12)
- 少なくともクロムを含有する金属素材を被処理材とし、
この被処理材をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、
その後、またはこのフッ化処理中に、処理温度を400 〜600 ℃に設定した低温浸炭処理および/または浸窒処理を施すか、あるいは減圧下の低温プラズマ浸炭処理および/または低温プラズマ浸窒処理を施して、結晶粒内に多発せしめた浸入型原子誘起転位を炭化物または窒化物の生成核とする擬鋭敏化処理を行い、最終的に被処理材の断面表層部に、クロム炭化物またはクロム窒化物を微細且つ均一に出現させて、被処理材の表面硬化とカバリング効果を図り、被処理材の耐高温摩擦摩耗特性を向上させるようにしたことを特徴とする高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記結晶粒内に多発せしめる浸入型原子誘起転位は、10 8 〜1015/cm2の転位密度で生じさせるものであり、
また前記擬鋭敏化処理を被処理材に施すにあたっては、処理温度を550 〜850 ℃に設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記擬鋭敏化処理後の被処理材には、擬鋭敏化処理によって生じ得る断面表層部のクロム欠乏層中のクロム量を補填するために、当該欠乏層より内部の被処理材マトリックスから、逆濃度勾配を利用して固溶状態のクロム原子をクロム欠乏層に移動させる逆拡散処理を行い、被処理材の耐高温酸化特性を向上させるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記逆拡散処理を被処理材に施すにあたっては、処理温度を850 〜950 ℃に設定するようにしたことを特徴とする請求項3記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記擬鋭敏化処理後の被処理材には、レアアースメタル元素を導入する添加処理を行い、擬鋭敏化処理によって生じ得るクロム欠乏層の存在に基づく耐高温酸化特性の劣化を回復させるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記被処理材に導入するレアアースメタル元素の添加量は、0.01〜0.5 %であることを特徴とする請求項5記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記被処理材には、事前に塑性加工を施し、塑性加工転位を導入してから、順次以降の処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記塑性加工転位は、相当真歪εが0.1 〜εu (εu ;相当均一真歪)で被処理材に導入されることを特徴とする請求項7記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記被処理材には、低温浸炭処理と浸窒処理との双方を施すことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
- 前記被処理材は、
C:0.02〜0.07 mass %、Si:0.2 〜1.7 mass%、Mn:5.0mass %以下、Ni:12.0〜15.0 mass %、Cr:22.0〜25.0 mass %、Cu:0.5 〜4.5 mass%、N:0.05〜0.17 mass %、且つ、Ca、REM のうちの1種または2種を0.0005〜0.05mass%含有し、残部がFe及び不可避的不純物から成り、下記(1) 式で定義されるNi当量が30.0以上、下記(2) 式で定義されるδcal が0.5 〜8.0 、下記(3) 式で定義されるHvが 120〜160 となるオーステナイト系耐熱素材が適用されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の高温耐久性を高めたナノ表面改質方法。
記
Ni当量=Ni+0.65Cr+1.05Mn+0.35Si+0.6Cu +25.2C+12.6N …(1)
δcal =3.2 (1.5Si+Cr) −2.5(30C+30N+Ni+0.5Mn +0.3Cu)−24.7 …(2)
Hv =87C+ 2Si−1.2Mn −6.7Ni +2.7Cr −2.6Cu +690 N+88 …(3)
- 金属部材の表面に表面改質処理が施され、この処理によって部材の高温耐久性を向上させた金属部材であって、この部材には前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のナノ表面改質方法が施されて成ることを特徴とする金属部材。
- 排気タービンの外周位置に、複数の可変翼が回動自在に設けられ、
エンジンから排出された比較的少ない排気ガスを、この可変翼によって適宜絞り込み、排気ガスの速度を増幅させ、排気ガスのエネルギで排気タービンを回し、排気タービンに直結されたコンプレッサで自然吸気以上の空気をエンジンに送り込み、低速回転時であってもエンジンが高出力を発揮できるようにしたVGSタイプターボチャージャの排気ガイドアッセンブリにおいて、
この排気ガイドアッセンブリの構成部材には、前記請求項11記載の金属部材が適用されて成るものであり、ナノ表面改質の際には事前に適宜の形状に塑性加工されて成ることを特徴とする、VGSタイプターボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリ。
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