JP5122420B2 - ピストン摺動部の潤滑構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ピストン摺動部の潤滑構造に関するものである。
図4に示す如く、自動車等における一般的なエンジンでは、シリンダ1内に収容されたピストン2がピストンピン3を介しコンロッド4の小端部4aにより揺動自在に支持されており、該コンロッド4の大端部4bがクランクピン5を介しクランクシャフト6と連結されている。
そして、クランクピン5はクランクアーム6aによりクランクシャフト6の中心からずらした位置に支持されており、クランクピン5がクランクシャフト6の中心回りに円軌道(図4中の一点鎖線を参照)を描いて移動するようになっているので、コンロッド4がピストンピン3を中心に揺動しつつピストン2がシリンダ1内を昇降することになる。
一般的に、ピストン2がアルミ製である場合には、スチール製のシリンダライナ1aに対する熱膨張差が大きくなるため、ピストン2側が大きく熱膨張して焼付きを起こすような事態を未然に回避し得るようピストンクリアランスを多く確保する必要があるが、ピストンクリアランスを多く確保してしまうと、ピストンスラップ時に打音が生じてしまうという不具合が生じる。
このため、従来においては、ピストン2のスカート7(ピストン2のピストンリング装着部より下の部分)の外周面に耐焼付き性及び低摩擦特性を有する低摩擦コーティングを施してピストンクリアランスを詰め、これによりピストンスラップ時の打音低減とピストン2の摩擦低減を図るようにしている。
尚、この種のピストン摺動部の潤滑構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
特表2007−509279号公報
しかしながら、爆発圧力Aにより下方に押し下げられるピストン2は、コンロッド4の傾斜によりピストン2の図中左側が強くシリンダ1の内壁に押し付けられ、このような側圧を受けるスラスト側において、金属接触が発生する混合潤滑の状態が支配的となり、反スラスト側では、油膜を挟んで摩擦面同士が離れて滑る流体潤滑の状態が支配的となるが、流体潤滑が支配的な反スラスト側にまで全域に低摩擦コーティングを施してしまうことで摺動抵抗が増し、これにより燃費の更なる向上を図り得る余地が損なわれているという事実を見い出すに到った。
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりも摩擦力を大幅に減少させて燃費の向上を図り得るようにした新規なピストン摺動部の潤滑構造を提供することを目的としている。
本発明は、エンジンのシリンダ内で往復動するピストンのスカート表面に低摩擦コーティングを施したピストン摺動部の潤滑構造であって、ピストンのスカートにおける反スラスト側の外周面に、前記スカートの摺動方向に向かって延びる縞模様を成すように低摩擦コーティングを施し、そのコーティング部の相互間に前記スカートの摺動方向に潤滑油を逃がす非コーティング部を残し、ピストンのスカートにおけるスラスト側の外周面全域に低摩擦コーティングを施したことを特徴とするものである。
而して、このようにすれば、コーティング部と非コーティング部との境界にコーティング厚さ分の段差が生じ、実質的なシリンダライナ側との潤滑面が各コーティング部の存在する領域だけに限定され、これによりピストンのスカートにおける潤滑面積が低減されて摩擦力が大幅に減少することになる。
即ち、各コーティング部の相互間に残る非コーティング部は、スカートの摺動方向に開放されていて潤滑油を自由に逃がし得るようになっているため、各非コーティング部では、流体潤滑の状態にすらならず、潤滑油の粘度も殆ど影響しない非常に摩擦抵抗の少ない状態となるため、実質的なシリンダライナ側との潤滑面は、各コーティング部の存在する領域だけに限定されることになる。
しかも、各コーティング部とシリンダライナとの間は、油膜を挟んで摩擦面同士が離れて滑っている状態の流体潤滑の状態となるが、各コーティング部の存在する領域では、ピストンクリアランスが詰まってピストンの摺動時における油膜厚さが薄くなり、これにより摩擦係数が小さく抑えられて摩擦力がより少なくなる。
尚、スカートの周方向複数箇所に各コーティング部が存在してピストンクリアランスが詰まっているので、従来通りの適切なコーティング厚を確保すれば、ピストンスラップ時の打音を従来と同等レベルに低減することが可能となる。
また、ピストンのスカートにおけるスラスト側の外周面全域に低摩擦コーティングを施しているので、金属接触が発生する混合潤滑の状態が支配的となる前記スカートのスラスト側において、その全域が低摩擦コーティングで被覆されていることにより従来通りの耐焼付き性及び低摩擦特性を発揮させることが可能となる。
上記した本発明のピストン摺動部の潤滑構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ピストンのスカートにおける少なくとも反スラスト側の外周面に、前記スカートの摺動方向に向かって延びる縞模様を成すように低摩擦コーティングを施し、そのコーティング部の相互間に前記スカートの摺動方向に潤滑油を逃がす非コーティング部を残したことによって、ピストンのスカートにおける潤滑面積を低減して摩擦力を大幅に減少することができるので、従来よりも摩擦損失を削減して燃費を著しく向上することができる。
(II)本発明の請求項1に記載の発明によれば、金属接触が発生する混合潤滑の状態が支配的となるピストンのスカートにおけるスラスト側において、その全域を低摩擦コーティングで被覆して従来通りの耐焼付き性及び低摩擦特性を発揮させることができる。
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
図1及び図2に示す如く、本形態例においては、ピストン2のスカート7における反スラスト側の外周面に、前記スカート7の摺動方向に向かって延びる縞模様を成すように低摩擦コーティングを施し、そのコーティング部8の相互間に前記スカート7の摺動方向に潤滑油を逃がす非コーティング部9を残す一方、ピストン2のスカート7におけるスラスト側の外周面全域に低摩擦コーティングを施すようにしている。
而して、このようにすれば、コーティング部8と非コーティング部9との境界にコーティング厚さ分の段差g(図2参照)が生じ、実質的なシリンダライナ1a側との潤滑面が各コーティング部8の存在する領域だけに限定され、これによりピストン2のスカート7における潤滑面積が低減されて摩擦力が大幅に減少することになる。
即ち、各コーティング部8の相互間に残る非コーティング部9は、スカート7の摺動方向に開放されていて潤滑油を自由に逃がし得るようになっているため、各非コーティング部9では、流体潤滑の状態にすらならず、潤滑油の粘度も殆ど影響しない非常に摩擦抵抗の少ない状態となるため、実質的なシリンダライナ1a側との潤滑面は、各コーティング部8の存在する領域だけに限定されることになる。
しかも、ピストン2のスカート7における反スラスト側では、各コーティング部8とシリンダライナ1aとの間が、油膜を挟んで摩擦面同士が離れて滑っている状態の流体潤滑の状態となるが、各コーティング部8の存在する領域では、ピストンクリアランスが詰まってピストン2の摺動時における油膜厚さが薄くなり、これにより摩擦係数が小さく抑えられて摩擦力がより少なくなる。
即ち、図3に縦軸を摩擦係数とし横軸を油膜厚さとしたストライベック線図で示す通り、流体潤滑の領域では、油膜厚さが薄くなるほど摩擦係数μが小さくなるため、各コーティング部8の存在によりピストンクリアランスが詰まって油膜厚さが薄くなれば、その摩擦係数μが小さくなって摩擦力が少なくなる。
尚、スカート7の周方向複数箇所に各コーティング部8が存在してピストンクリアランスが詰まっているので、従来通りの適切なコーティング厚を確保すれば、ピストンスラップ時の打音を従来と同等レベルに低減することが可能となる。
従って、上記形態例によれば、ピストン2のスカート7における少なくとも反スラスト側の外周面に、前記スカート7の摺動方向に向かって延びる縞模様を成すように低摩擦コーティングを施し、そのコーティング部8の相互間に前記スカート7の摺動方向に潤滑油を逃がす非コーティング部9を残したことによって、ピストン2のスカート7における潤滑面積を低減して摩擦力を大幅に減少することができるので、従来よりも摩擦損失を削減して燃費を著しく向上することができる。
また、本形態例においては、ピストン2のスカート7におけるスラスト側の外周面全域に低摩擦コーティングを施しているので、金属接触が発生する混合潤滑の状態が支配的となる前記スカート7のスラスト側において、その全域を低摩擦コーティングで被覆して従来通りの耐焼付き性及び低摩擦特性を発揮させることができる。
即ち、図3のストライベック線図で示す通り、流体潤滑の領域においては、油膜厚さが薄くなるに従い摩擦係数μが小さくなるが、所定の油膜厚さを越えて金属接触が発生する混合潤滑に移行してしまうと、油膜厚さが薄くなるに従い摩擦係数μが急激に増加してしまう。
このため、混合潤滑が支配的なスラスト側にあっては、非コーティング部9を残してしまうことにより該非コーティング部9がシリンダライナ1a側と金属接触を起こして焼付きや摩耗損失を招いてしまうデメリットの方が大きいと考えられ、このようなデメリットを回避することを優先している。
尚、本発明のピストン摺動部の潤滑構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明を実施する形態の一例を示す側面図である。 図1のII−II矢視の断面図である。 縦軸を摩擦係数とし横軸を油膜厚さとしたストライベック線図である。 従来例を示す概略図である。
符号の説明
1 シリンダ
2 ピストン
7 スカート
8 コーティング部
9 非コーティング部

Claims (1)

  1. エンジンのシリンダ内で往復動するピストンのスカート表面に低摩擦コーティングを施したピストン摺動部の潤滑構造であって、ピストンのスカートにおける反スラスト側の外周面に、前記スカートの摺動方向に向かって延びる縞模様を成すように低摩擦コーティングを施し、そのコーティング部の相互間に前記スカートの摺動方向に潤滑油を逃がす非コーティング部を残し、ピストンのスカートにおけるスラスト側の外周面全域に低摩擦コーティングを施したことを特徴とするピストン摺動部の潤滑構造。
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