JP5122978B2 - スピン分離装置 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンを持った粒子をスピンの符号毎に分離する装置、正又は負のスピンを持った粒子を他方の粒子よりも多く含む物質の製造方法、正又は負のスピンを持つ電子を供給する電流源、及び、正又は負のスピンを持つ電子により形成される電気信号を処理する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
物質粒子の持つスピンが物質の磁気特性に関係していることは良く知られている。各種の磁石を始めとして、磁気特性をもった物質は産業にとって欠かせないデバイスや装置を作るための素材として用いられる。また、近年、スピンエレクトロニクスあるいはスピントロニクスと呼ばれる新しいエレクトロニクスの分野が注目されるようになってきた。これらの分野では、電子の持つ電荷のみならず、電子の持つスピンを制御する技術を用いて新しい特性をもった磁性体や半導体の開発に結びつけることが意図されている。そのような技術の例としては、膜厚方向の原子配列を人工的に制御した金属人工格子があり、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto−Resistance)効果が得られる。高感度磁気ヘッドとしてのGMRヘッドにはこの技術が用いられている。最近では、不揮発性の磁気メモリーとしてのMRAMの開発が精力的に進められている。
【非特許文献1】
W.Gerlach and O. Stern, Z.Phys.9, 349(1922)
【非特許文献2】
ibid. 353 (1922)
【非特許文献3】
Ann. Phys. 74, 673(1924)
【非特許文献4】
D. Bohm, Quantum Theory (Prentice−Hall, Englewood Cliffs, N. J., 1951)
【非特許文献5】
江沢洋、10章量子論の発展とパラドックス、「量子力学と新技術」、日本物理学会編(培風館、東京、1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなスピンに関する制御技術を究極的にまで推し進めると、これまでになかった発想として、スピンを持った粒子をその符号毎に別々に取り出す技術に行き着く。粒子のスピンの符号毎の単離が出来れば、一方の符号のスピンのみを持つ粒子を用い、自然界には存在し得なかった新たな素材の創造が可能となる。一方の符号のスピンのみを持つ粒子が電子である場合、電子の制御技術の多様性にかんがみれば、さらに広い利用分野が開拓出来る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の態様に従えば、スピンを持つ粒子を、前記スピンの符号に応じて分離するスピン分離装置であって、前記粒子を放出する粒子源と、前記粒子源から放出されてx方向に進む前記粒子を通過させるy方向に長い形状を持つスリット開口と、前記スリット開口から放出された前記粒子を受け止める受け部と、z方向に所定の間隙をもって配置された2つの磁極を有し、且つ、前記スリット開口と前記受け部との間に配置されて、前記粒子を前記スピンの符号が正である第1の粒子と前記スピンの符号が負である第2の粒子とに分離するシュテルン−ゲルラッハ型の電磁石と、第1の粒子及び/又は第2の粒子の軌道を制限するための軌道制限部とを備え、前記軌道制限部が所定の開口を有するスクリーンであって、且つ、前記電磁石と前記受け部との間の前記受け部の近傍に配置されて、前記受け部に受け止められ第1の粒子と第2の粒子とを分離することを特徴とするスピン分離装置が提供される。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、スピンを持つ粒子を、そのスピンの符号毎に分離することができ、さらに、分離された後の粒子は、互いに交じり合うことがない。従って、分離された粒子は、正又は負のスピンを持つ粒子として独立に抽出することができる。本願において、粒子源とは、例えば銀原子や中性子などの粒子線を放出する装置である。また、本願において、磁石と粒子源との間に、例えば、二つのスリット開口を距離を隔てて設置したコリメーターを配置して、粒子線を平行光線のように整形してもよい。本願において、磁石は、電磁石(例えば、シュテルン-ゲルラッハの実験に用いられた電磁石と類似の電磁石)であってもよく、永久磁石でもよい。例えば、粒子が銀原子である場合は、受け部として絶縁性の基板を用いてもよい。なお、本発明において、「粒子を分離する」とは、2種類の粒子が互いに全く混じらないように完全に分離することに限られない。例えば、2種類の粒子が完全には分離されていない場合であっても、分離後において、一方の粒子の数が他方の粒子の数よりも多い場合には、「粒子を分離した」ことになる。
【0006】
本発明のスピン分離装置において、前記軌道制限部が、所定の開口を有するスクリーンであって、且つ、前記磁石と前記受け部との間に配置されてもよい。この場合には、受け部に到達した第1の粒子と第2の粒子が確実に分離されるので、互いに交じり合う恐れがない。また、本発明のスピン分離装置において、軌道制限部により形成される開口の幅がy方向に制限されていてもよく、粒子が金属粒子であってもよい。
【0007】
本発明に関連するスピン分離装置において、前記軌道制限部が、前記粒子源と前記受け部とを接続し、前記磁極の間隙に配置され、且つ、前記磁極の前記間隙において2つに分岐する導線であってもよい。この場合には、粒子が例えば電子などの荷電粒子であっても、磁石におけるローレンツ力により、軌道が磁石の外に曲げられる恐れがなく、確実に第1の粒子と第2の粒子を分離することができる。
【0008】
本発明に関連するスピン分離装置において、前記スピンを持つ粒子が電子であって、前記受け部が蓄電装置であって、前記磁石が電磁石であってもよい。この場合には、蓄電装置に、正又は負のスピンを有する電子の一方を多く蓄えることもできる。
【0009】
本発明に関連するスピン分離装置において、前記スピンを持つ粒子が中性子であって、前記受け部が中性子吸収剤により形成されていてもよい。この場合には、正又は負のスピンを有する中性子のみを中性子吸収剤に吸収させることもできるので、中性子を吸収した物質のスピン物性(例えば磁気特性)を改変することができる。
【0010】
本発明に関連する発明に従えば、正のスピンを持つ粒子の数と負のスピンを持つ粒子の数が異なるスピン非対称物質を製造する方法であって、スピンを持つ粒子のビームを放出する粒子源と、所定の間隙を持って配置された2つの磁極を有する磁石と、物質とを並べて配置することと、前記粒子源から、前記スピンを持つ粒子を放出することと、前記スピンを持つ粒子を前記磁石の前記間隙を通過させて、正のスピンを持つ粒子と負のスピンを持つ粒子とに分離することと、前記物質に、前記正のスピンを持つ粒子及び前記負のスピンを持つ粒子の一方を他方よりも多く注入することとを含むスピン非対称物質を製造する方法が提供される。
【0011】
本発明に関連する発明によれば、正のスピンを持つ粒子又は負のスピンを持つ粒子を物質に注入することにより、当該物質の物性(例えば磁気的性質)を容易に改変することができる。また、例えば、本願の物質としての蓄電器に含まれるコンデンサーに、正又は負のスピンを持つ電子の一方を他方よりも多く注入することによって、正又は負のスピンを持つ電子を多く含む蓄電器を製造することもできる。
【0012】
本発明に関連する発明によれば、電流源であって、正のスピンを有する複数の第1の電子と、負のスピンを有する複数の第2の電子と、第1の電子及び第2の電子を蓄える蓄電部と、第1の電子及び第2の電子を出力する電極とを備え、蓄電部に蓄えられた第1の電子と第2の電子の数は互いに異なる電流源が提供される。
【0013】
本発明に関連する発明によれば、例えば、正又は負のいずれか一方のスピンを持つ電子を供給する電流源を、本発明の第2の態様における粒子源として利用することによって、純度の高い正又は負のスピンを持つ電子を供給することができる。
【0014】
本発明に関連する発明に従えば、電気信号を処理する方法であって、正のスピンを有する第1の電子により形成される第1の電気信号を形成することと、負のスピンを有する第2の電子により形成される第2の電気信号を形成することとを含む信号処理方法が提供される。
【0015】
本発明に関連する発明によれば、本発明に関連する信号処理方法において提供される電気信号は、電子の有無に起因した情報に加えて、スピンの情報も含むので、一度に大量の情報を取り扱うことができる。
【0016】
本発明に関連する信号処理方法は、さらに、第1の電気信号と第2の電気信号とを合成して合成信号を形成することと、前記合成信号を第1の電気信号と第2の電気信号とに分解することとを含んでもよい。この場合には、信号の合成及び/又は分解を自由に行えるので、2つの信号を1つの信号に圧縮して取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正のスピンを持つ粒子及び/又は負のスピンを持つ粒子を、物質に注入することができるので、容易にその物質の磁気的特性を変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、磁極間隙で銀原子ビームが2本に分裂する様子を描いたシュテルン-ゲルラッハの実験装置の概略を示す図である。
【図2】図2Aはガラス基板の直前に矩形開口を持つマスクを設置したシュテルン-ゲルラッハの実験装置を示し、図2Bは矩形開口と蒸着パターンとの位置関係の一例を表す。
【図3】図3は、正か負、何れか一方のスピンとそれに伴う磁気モーメントを持った電子を大量生産する装置の概略を示す図である。
【図4】図4Aは両符号スピン電子信号合成回路を表し、図4Bは両符号スピン電子合成信号分離回路を表す。
【図5】図5A及び図5Bは、図3に示された分岐する導線と磁石とを基板上に一体化した電子部品を示す図である。図5Aは永久磁石を利用した場合を表し、図5Bは電磁石を利用した場合を表す。
【図6】図6は、シュテルン-ゲルラッハの実験装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
7…基板
8…マスク(スクリーン)
9…開口
10…−のスピンを持った銀の薄膜
11…+のスピンを持った銀の薄膜
12…異符合のスピンを持った銀原子が混合して蒸着された部分を含む蒸着パターン
14…導線
50…粒子源
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
スピンを持った粒子をその符号毎に別々に取り出す装置を略してスピンの単離装置と呼べば、それに類似した既存の装置としてシュテルン-ゲルラッハの実験に用いられた装置が想起される(図6参照)。以下、本発明のスピン単離装置について詳説する前に、シュテルン‐ゲルラッハの実験及びそれに用いられた装置について簡単に説明する。
【0021】
図6はシュテルン-ゲルラッハの実験に用いられた装置の概略図である(非特許文献1〜3参照)。N極とS極の先端形状が極端に異なるので不一様性の強い磁場が形成される。電気炉50から放出される銀原子ビームのうち、x軸上を進行する銀原子線の軌跡はボームの非特許文献4に記載の図(非特許文献4の第593頁、Fig.1及び第598頁、Fig.2参照)を参考にした。ただし、同じく非特許文献4によれば、不確定性原理に従うなら、微視的粒子の運動においては古典力学におけるような軌跡は存在し得ないとする(非特許文献4の第100〜101頁には、粒子の位置と運動量とが同時に定まった値を持つことはないと記載されているが、そうであれば、粒子には軌道が存在しないことになる)。
【0022】
電気炉(粒子源)50の開口部から出射した銀原子ビーム106は、距離を置いて設置された二つのスクリーン101、102上に設けられた同一形状のスリット開口を通過することによってコリメートされ、横方向(y軸方向)に細長い断面を持った原子ビームとなって電磁石に入射する。それぞれのスクリーン101、102上に設けられた開口はy軸方向の長さsが0.8mm、z軸方向の幅wは0.03〜0.04mmである。電磁石103の二つの磁極(103a,103b)の形状がxy面に関する対称性を極端に欠いているため、ガラス基板104(観測面)上に到達した銀原子も特徴ある蒸着パターンを描く。即ち、この蒸着パターンは、図2Bに示されているように、z軸に関しては対称であるものの、y軸に関しては極端に対称性を欠くことになる。−のスピンを持った銀原子線束の描くパターンと+のスピンを持った銀原子線束の描くパターンとのz軸方向の距離はz軸上で最大(△z=z―z〜0.20mm)となり、z軸から離れるに従って狭くなり、ついには重なり合う。
【0023】
非特許文献4によれば、銀の各原子は磁極の間を瞬間的に通過するので、磁極の間を通過する間に原子に働く力は無視できるとする。さらに、各原子の磁極の間での運動を、x軸方向については古典論に従い速度vを持つとし、磁場に平行なz軸方向については量子論で取り扱うとする。シュテルン-ゲルラッハの論文に書かれた図(非特許文献3のFig.1)によれば、図6に示した磁極から観測面までの距離dに比べ磁極のx軸方向の長さlの方が10倍程度大きい(d〜3mm程度であると推測される)。ボームの図に従って描いた銀原子線束の軌跡は、電磁石を通過中には分離することはないが、電磁石を出た途端、2方向に分離する形をとる。各銀原子はむしろ磁極間を通過する間にしか磁場の作用を受けないはずであるから、図6に示された銀原子ビームの軌跡は不自然であるが、ボームの教科書はシュテルン-ゲルラッハの実験を最初に取り扱った量子力学の教科書であるので、先ずは、ボームに従ってこの実験での銀原子の振る舞いを記述する。簡単のため、以下においては、xz面内での運動のみを取り扱う。初期条件としては、t=0のとき、各銀原子は電磁石の入り口にあるとする。つまり、局所的な座標系の原点がx軸上電磁石の入り口にあることを意味する。
【0024】
この実験における銀原子と磁束密度Bとの相互作用に関するハミルトニアンHはスピン演算子σを用いて以下のように書ける(非特許文献4の第405頁目、(75)式を参照)。
【0025】
【数1】
Figure 0005122978
【0026】
ここで電子の電荷の絶対値、電子の質量、プランク定数及び光速度をそれぞれ、e,m,h及びcとすれば電子の磁気モーメントμは以下のようになる。ただし、換算プランク定数は(3)式で定義される。
【0027】
【数2】
Figure 0005122978
【0028】
【数3】
Figure 0005122978
【0029】
(1)式において、磁束密度Bのx成分は無視でき、磁場のxz面に関する対称性からy成分もゼロとしてよい。さらに不均質性の強い磁場は近似的に以下の式のように書ける(非特許文献4の第594頁参照)。
【0030】
【数4】
Figure 0005122978
【0031】
ただし、Bはx軸上の磁束密度を表し、B’は以下のように表される。
【0032】
【数5】
Figure 0005122978
【0033】
これらの式から相互作用のハミルトニアン(1)式は以下のように表すことが出来る。
【0034】
【数6】
Figure 0005122978
【0035】
ここでスピンのz成分はパウリのスピン行列を用いて以下のように表される。
【0036】
【数7】
Figure 0005122978
【0037】
シュテルン-ゲルラッハの実験には銀原子核の磁気モーメントを測定する意図があったが、実際に測定されたのは(2)式で与えられる電子の磁気モーメントである。磁気モーメントは電子のスピンに伴う物理量であるから、この実験を電子のスピンsの測定とみなすことが出来る。非特許文献4によれば、(5)式で表されるB、(2)式で表される磁気モーメントμ、及び、銀原子が磁極間隙を通過するために要する時間△tを用いると、z軸上における+のスピンをもった銀原子の位置z及び−のスピンをもった銀原子の位置zは、それぞれ以下のように表される(非特許文献4、第597頁、(18)式を参照)。
【0038】
【数8】
Figure 0005122978
【0039】
ここで、図6に示したように、電磁石のx軸方向の長さをl、銀原子のx軸方向の平均速度をvとすれば、△t=l/vで表される。ただし、発明者は、この式には以下に示す2点の誤りが含まれていることを指摘する。一点目は符号の誤りであり、もう一点は式の両辺において次元が異なる点である。分子B´・μ(△t)tの次元はJ・m−1・sとなるが、分母の次元はJ・sであるから、zの次元はm−1・sとなり長さの次元を持たない。
【0040】
シュテルン-ゲルラッハの実験に関する詳しい分析結果が記述されている非特許文献5(204〜242頁;シュテルン-ゲルラッハの実験の分析については221〜225頁)を参照して上記の問題について再考する。
【0041】
詳細は原著を参照するとして、以下に要点のみを記す。電磁石から出射する上向きスピン(+のスピン)に関わる波動関数ψ+outは、銀原子の運動量pのx成分(p)、y成分(p)及びz成分(p)は、それぞれ以下の式で表される。
【0042】
【数9】
Figure 0005122978
【0043】
ここで、Eは、1323Kの炉から飛び出す銀原子の持つ運動エネルギーの平均値を表す。この波動関数ψ+outは、電磁石に入射する銀原子の波動関数ψ+inに比べると、下向きの運動量△pが付け加わる。ここで、下向きの運動量△pは以下の式で表される。
【0044】
【数10】
Figure 0005122978
【0045】
逆に、電磁石から出射する下向きスピンに関わる波動関数ψ−outは、電磁石に入射する銀原子の波動関数ψ−inに比べると、上向きの運動量−△pzが付け加わる。このことは、磁極間隙を通る銀原子の運動を表す波動が、銀原子のスピンに応じて下向きに曲がってゆく成分と上向きに曲がってゆく成分とに分裂することを示す。ただし、これらの運動量変化±△pzは古典力学により予想される値とも一致することが知られている。古典力学的に求めたこれら運動量変化は以下のようになる。
【0046】
【数11】
Figure 0005122978
【0047】
スクリーン101、102上に設けられたスリット(幅wが0.03〜0.04mm)に入射する銀原子についてのドブロイ波の平均的な波長はλ=p/hより、6.7×10−6μmとなる。仮にスリットの幅wが30μmであるとすると、スリットの幅wはドブロイ波の平均波長の約4.6×10倍となる。ここで、電磁石のx軸方向の長さlは約3cmであることを考慮すると、スリット2から観測面までの距離D(図2参照)は、約3.5cmであると推定される(非特許文献3のFig.1参照)。従って、銀原子に伴う波動の、スリットによる観測面上での回折は無視できる。回折が無視できることは、銀原子の波動性が無視できることを意味するから、前述の波動の分裂は、実際上、原子線が分裂することに対応していると考えてよい。本願の発明者は、この項目に関する非特許文献5の不確定性関係に基づく議論を、より基本的な、回折現象に基づく議論に改めた。
[0048]
x軸上を進行する銀原子は磁極間隙を出射後、ガラス板に衝突する。磁極の出口に観測面があるとして△z=z−zを計算する。上述の分析結果によれば、磁極間隙内において、質量Mの銀原子は近似的に放物線軌道を描くとしてよいから、(11)式より直ちに以下の式が得られる。(μ=−0.93×10−23J/T、(B〜1.8T、)B´〜2.4×10T/m、l=3×10−2m、v〜5.5×10m/s、及び、M=1.8×10−25kgを用いた)。
[0049]
[数12]
Figure 0005122978
[0050]
以上の本願発明者の分析結果を考慮すると、図6に示されたシュテルン−ゲルラッハの実験の概略図は、図2のようになる。ただし、蒸着パターンを見やすくする都合上、磁極3a,3bとガラス基板4(観測面)との間隔dをかなり離して描いてある。これらは実際にはかなり接近していて、d〜3mm程度である。ちなみに、シュテルン−ゲルラッハの実験ではガラス基板面上で△z〜0.20mmであったので(12)式の結果は、かなりの近似式を用いたにしては、実験をよく再現している。図6と図1を比較したときの最も大きな違いは、銀原子ビームの軌道である。図6では、銀原子ビーム106は電磁石103を出射するまで分裂しなかったが、図1では、粒子源50から出た銀原子ビーム6は、磁極3a,3bの間隙中、破線の円5で囲んだ位置あたりから2本の原子ビーム6aと6bに分裂し、電磁石3の出口では完全に分裂していることがわかる。
【0051】
非特許文献5においては、例えば、下向きのスピンを持った銀原子が磁極間隙を通過中に上向きの力を受けて上に曲がるというように、古典力学的に考えてはならないとする。量子力学によれば、銀原子がガラス基板に衝突した時点ではじめて波束の収縮が起こるから、銀原子はその衝突の瞬間にz=z又はz=zのどちらか一方で確率的に検出されることになるからである。つまり、二つのスピンの重ね合わせの状態にある銀原子は、検出される以前においては、どちらか一方のスピンを持っているとしてはならないと言う訳である。ところが、量子力学に従ったこの分析は、明らかに、上述の分析結果と整合性を持たない。なぜなら、上述の分析において、「運動量変化±△pは古典力学により予想される値とも一致する」と記述してある。そうであれば、観測面4を磁極3a,3bの間隙中、破線の円5で囲んだ位置より後方(x軸の正の方向)に設置した場合、その位置がどこであっても、z=z>0で検出される銀原子は必ず−のスピンを持っているし、z=z<0で検出される銀原子は必ず+のスピンを持っているという実験結果が得られるはずである。実際、シュテルン-ゲルラッハの実験では、そのような結果が得られるから、古典力学的に考えても全く差し支えないことになる。
【0052】
さらに、非特許文献5では、磁極の間で上下に分裂した波動を、途中で観測せずにもう一組の磁極を通すなどして重ね、干渉が起こるか否かを見れば、波束の収縮がガラス基板上ではじめて起きるか否かがわかるとの考え方を紹介している。しかし、図1からわかるように、+のスピンを持った銀原子は、分裂し、上方に曲がる波の中には決して見出せないのであるから、分裂した波動を再度重ね合わせても干渉は決して起こらない。確認のため言い換えると、1個の銀原子が干渉を起こすためには、その銀原子を表す確率波そのものが二つに分裂しなければならない。そうであれば、二つのスピンの重ね合わせの状態を表す確率波が二つに分裂したそれぞれのパスを伝播することになるから、ガラス基板上では、例えば+のスピンを持った銀原子はz=zで検出されることもあれば、z=zで検出されることもあるはずである。しかし、実験では、+のスピンを持った銀原子は常にz=z<0で検出され、z=z>0では決して検出されない。従って、干渉は起こらず、分裂した二つの波動のそれぞれは重ね合わせの状態を表す確率波ではないと断言できる。以上のように、古典力学を用いれば説明できるこの実験結果は、量子力学では決して説明できない。従って、波動性を無視するという意味で、物理的にはあくまでも近似ではあるが、この問題を古典力学を使って解くことにする。
【0053】
磁場中の銀原子に働く力は次式で与えられる(非特許文献4の第326頁、(68)式を参照)。
【0054】
【数13】
Figure 0005122978
【0055】
本実験の場合、磁極間隙中の磁場と銀原子との相互作用について非特許文献4と同様の近似として(5)式等を用いると、上式は以下のように書ける。
【0056】
【数14】
Figure 0005122978
【0057】
’の向きと磁束密度Bの向きは一致しているので、σ=1、即ち、上向きのスピンを持つ銀原子は下向きの力を受け、σ=−1、即ち、下向きのスピンを持つ銀原子は上向きの力を受ける。ここで、図1のx軸上において、一時的な時空座標の原点を電磁石3の入り口に置いたので、磁極間隙内における銀原子のz軸方向に関するニュートンの運動方程式は銀原子の質量をMとして、次式で与えられる。
【0058】
【数15】
Figure 0005122978
【0059】
一方、x=vtと書けるから、一時的な初期条件と上式より、各銀原子の電磁石3の入り口から出口までの軌道がxz面内におけるx軸に関して対称な二本の放物線として次のように定まる。
【0060】
【数16】
Figure 0005122978
【0061】
磁極3a,3bのx軸方向の長さをlとすると、電磁石3の出口における各銀原子のz座標は次式で表される。
【0062】
【数17】
Figure 0005122978
【0063】
また、速度のz成分vは放物線を表す(16)式のx=lにおける接線の傾きから次式のように表されることがわかる。
【0064】
【数18】
Figure 0005122978
【0065】
さらに、電磁石3の出口から観測面4までの距離をdとすれば、銀原子が電磁石3の出口から観測面4に到達するまでに要する時間はd/vとなる。結局、銀原子の観測面4上の位置は次式で表される。
【0066】
【数19】
Figure 0005122978
【0067】
電磁石3の出口における銀原子のz座標は、上式においてd=0、△t =l/vと置くことによって以下のように表される。
【0068】
【数20】
Figure 0005122978
【0069】
式(20)を用いて△z=z−zを表すと式(12)に一致することがわかる。また、式(20)と式(8)とを比較すると、式(8)において前述の符号の誤りがあることもわかる。このように、シュテルン-ゲルラッハの実験に関する限り、上向きのスピンを持つ銀原子は下向きの力を受け軌跡6bを描き、下向きのスピンを持つ銀原子は上向きの力を受け軌跡6aを描くことが予想され、その結果、それぞれの銀原子のガラス基板(観測面)4上の到達位置を古典力学的に予測できる。
【0070】
以上のように、xz面内では、上向きのスピンを持つ銀原子と下向きのスピンを持つ銀原子とを個別に取り出せることがわかった。ところで、銀原子のスピンが電子のスピンと一致するのは、銀原子のスピンが最外殻の5s電子に起因するからであると考えられる。図1に示されたように、観測面(ガラス基板面)上において、下向きのスピンを持った銀原子の蒸着パターンと上向きのスピンを持った銀原子の蒸着パターンとはz軸に関して左右対称で、両端がy軸上で重なり合い、連結している。銀は良導体であるから、異なる符合のスピンを持った5s電子同士は自由電子として、時間の経過と共に、混ざり合ってしまう。従って、どちらか一方の符合のスピンのみを持った銀原子からなる銀の薄膜を分離して取り出すことはできない。このように、発明者は、「シュテルン-ゲルラッハの実験装置そのものではスピンの単離装置として用いることはできない」ことを見出した。
【0071】
<第1実施形態>
図2Aは、本発明の、異なる符号のスピンを持つ粒子を単離するスピン単離装置100の概略図である。本実施形態では、スピンをもつ粒子として、銀原子を例に挙げて説明する。図2Aの点線で描いた輪郭4’の位置は、図1のガラス基板4が設置されていた位置に対応する。輪郭4’の位置に設置された基板7の直前にはマスク(スクリーン)8が設置される。このマスク8には矩形の開口9が設けられている。図2Bに示したように、シュテルン-ゲルラッハの実験装置の場合、蒸着パターンの外側の輪郭の横幅が1.1mm(非特許文献1Fig.5を参照)であった。従って、蒸着パターンの内側の輪郭の横幅が〜0.7mmであると推定すると、輪郭を破線で示した開口9のy軸方向の幅は、例えば0.5mmとすればよい。本発明のスピン単離装置100によれば、新たにマスク(軌道制限部)8を設けた基板(受け部)7上には、−のスピンを持った銀薄膜10と+のスピンを持った銀薄膜11とが、空間的に分離して得られる。なお、マスク8上には、−のスピンを持った銀原子と+のスピンを持った銀原子とが混ざり合って蒸着された銀薄膜の部分を含む蒸着パターン12が残る。上記分離をより完全にするために、必要に応じて、マスクにy軸に平行な細い遮蔽部を設け、開口9を二つの開口に分断してもよい。
【0072】
以上においては、基板7の直前に設置したマスク8により蒸着パターンの分離を図る方法を説明したが、マスク8を用いずにこの分離を果たす方法もある。スリットコリメーターを構成する二つのスクリーン1、2上にはそれぞれ幅w、長さsのスリットが設けてある。これらのスリットの長さsを短くして、基板上での蒸着パターンのy軸方向の幅がマスク8上の開口9の幅と同等以下になるようにしても蒸着パターンの分離ができる。
【0073】
本実施形態において、スピン単離装置に適用できる粒子は銀原子に限られない。例えば、図2Aにおいて、粒子源50(銀原子線源)を中性子線源に置き換えれば、−のスピンをもつ中性子と+のスピンをもつ中性子とに分離することが出来る。従って、基板7として中性子を吸収する物質を使用し、その基板に例えば−のスピンをもつ中性子を注入すれば、−のスピンを多くもつ物質(スピン非対称性物質)を得ることが出来る。同様に、+のスピンを多く含む物質も得られる。上記銀薄膜を含め、これまで自然界ではその存在を知られていなかったこれらの新しい物理特性を持った物質は産業上有用な各種の新規デバイスを作成するための素材として利用することが可能となる。
【0074】
〈第2実施形態〉
第1実施形態のスピン単離装置では、電子などの荷電粒子についてはスピンを単離できない。なぜなら、荷電粒子が磁極の間隙を進む際に、y軸方向のローレンツ力が働くので、、磁極間隙の外側にはじき出されてしまうからである。荷電粒子についてスピンを単離するためには、以下に示すスピン単離装置が有効である。
【0075】
図3に、本実施形態のスピン単離装置101として、電子をスピンの符号毎に単離する装置を示す。本装置は、直流電源60と、電磁石3と、電磁石のS、N二つの磁極3a,3bの間に通された銅、アルミなどの導体で作られた導線(軌道制限部)14を有する。この導線14は、磁極により磁場が形成されている空間を出る前に、二本の導線15と16とに分岐し、それぞれの分岐線は、電子を貯蔵するためのコンデンサー又は蓄電器などの蓄電装置40に接続されている。
【0076】
次に、図3に示すスピン単離装置101を用いて、電子をスピンの符号に応じて単離する手順について説明する。直流電源60から導線14に電流を供給する。電流の中には−のスピンをもつ電子と+のスピンを持つ電子がほぼ同数含まれている。これらの電子が磁極の間隙を通る際、−のスピンをもつ電子はS極にひきつけられ導線14のS極側を通り分岐線15へ流入し、蓄電装置40に蓄えられる。他方、+のスピンをもつ電子はN極にひきつけられ導線14のN極側を通り分岐線16へ流入し、蓄電装置40に蓄えられる。このようにして、−のスピンをもつ電子と+のスピンを持つ電子とが別々に量産できる。すなわち、本実施形態のスピン単離装置101は、単一スピン電子製造装置として機能する。また、本実施形態の蓄電装置40は、蓄電部を有しており、蓄電部には−のスピンをもつ電子又は+のスピンを持つ電子がより多く蓄えられている。この蓄電装置40は、+又は−の一方のスピンを多く含む電子を供給する(直流)電源として利用することができる。
【0077】
上記単一スピン電子製造装置においては電磁石3の代わりに永久磁石を用いてもよい。また、それぞれのコンデンサーに蓄えられる電子の持つスピンの純度を高めるには、例えば、一旦どちらか一方のスピンを持つ電子をより多く蓄えた蓄電装置を直流電源として再度本装置に接続すればよい。あるいは、分岐線15及び16のそれぞれに導線14以降の本装置をもう一台ずつ接続してもよい。さらに付け加えるなら、導線14を3本に分岐させ、中央の分岐線に分離しきれないスピンの混ざり合った電子を逃がすという方法もある。このようにして大量に作られた+または−のスピンを持つ電子は、蓄電装置40に蓄えずに、不図示の物性改変装置に直接供給してもよい。スピンを持った粒子を含む物質がガスや液体などの流体である場合には、図3における途中で分岐する導線14の代わりに途中で分岐する中空の管を用いればよい。
【0078】
このようにして、大量かつ安価に作られた+のスピンを持つ電子及び−のスピンを持つ電子は、例えば、スピンに関し中性の物質と結合させることのような、さまざまな物理的プロセス、化学的プロセス及び/又は物理化学的プロセスを用いて、物質の持つ物理的性質のバランスを崩し、+または−のどちらか一方のスピンを多く持つ物質(スピン非対称物質)に改変する際に利用できる。物理的プロセスを用いる場合には、電子ビームや電流としてどちらか一方のスピンを持つ電子を対象物質に直接注入することが出来る。Al、Cu、Agなど、導電性を持つ金属であれば、例えば正のスピンを持つ電子だけを電流としてそれら金属に直接供給し、金属中の自由電子を正のスピンを持つ電子で置き換えることにより、容易に正のスピンの自由電子だけを持った金属材料を作成することができる。物理化学的プロセスとしては、例えば、融解塩(NaCl)の電解を利用することがあげられる。NaClの電解において、陰極で金属ナトリュ−ムが生成されることが知られている。このプロセスを利用する場合には、+のスピンを持った電子e を電流として供給すれば、陰極においてNa+e →Naという反応が起こり、+のスピンを持った金属ナトリュ−ムNaが得られる。他方、−のスピンを持った電子を供給した場合は、−のスピンを持った金属ナトリュ−ムNaが得られる。なおスピンに関し中性な物質とは固体に限らず、液体や気体でもよい。
【0079】
以上において、スピンをもつさまざまな種類の粒子を、特定のスピンを持った粒子のみに単離する装置について説明した。さらに、これら特定のスピンを持つ粒子は、物質の物理的特性を変えるために利用出来ることも説明した。これらの新規素材は、その特性に応じて、各種装置やデバイスの部品を形作る際の材料として用い得る。従って、どのような物質を対象とし、その物質の物性を、どちらのスピンを持つどの粒子を用いたどのような工程で改変するかという基本的な設計事項を、事前に設定することが可能となった。特に、+または−のどちらか一方のスピンを持つ電子は、対象として選んだ物質の物理的ないし化学的性質を設計的に改変するために有効に利用することが出来る。ただし、一般に、このようにして得られた+か−のどちらか一方のスピンを多く持った物質は、スピンに関し中性の物質に比べ、その状態を長時間安定に保つことが困難である場合があることに留意する必要がある。
【0080】
〈第3の実施の形態〉
電子は信号担体としても利用できる。どちらか一方のスピンしか持たない電子を信号形成に利用することは、電気信号を電気的に制御する公知の方法に加え、新たに、磁気的な制御法が得られることを意味するので、情報処理技術にも利用分野が開かれることになる。
【0081】
以下に、情報担体としての個々の電子が正か負どちらか一方のスピンをもつことを利用した、全く新しい情報処理技術の一例について図4を用いて説明する。
【0082】
図4に、+又は−のどちらか一方のスピンを持った二種類の電子を情報担体として用いた信号処理技術を示す。図4Aには正負異なるスピンをもつ二種類の電子から成る信号を合成する段階、図4Bにはその合成信号からどちらか一方のスピンをもつ電子から成る信号を分離する段階を示す。
【0083】
図4Aにおいて、導線17に入力された直流電流は、電磁石3の磁極間隙を通過する途中で、−のスピンをもつ電子からなる電流は分岐線18へ流入し、+のスピンを持つ電子からなる電流は分岐線19へ流れる。分岐線18へ流入した−のスピンをもつ電流を入力された信号形成回路20は、−のスピンを持つ1個以上の電子からなるデジタル信号を出力する。出力されたデジタル信号は、両極信号合成回路22へ入力される。分岐線19へ流入した+のスピンをもつ電流を入力された信号形成回路21は+のスピンを持つ1個以上の電子からなるデジタル信号を出力し、両スピン信号合成回路22へ入力する。なお、+スピン電子信号形成回路21及び−スピン電子信号形成回路20のそれぞれには、図3に示した+スピン電子蓄電装置及び−スピン電子蓄電装置のそれぞれに蓄えられた+スピン電子ないし−スピン電子を供給する方法もある。+スピン電子信号と−スピン電子信号とを入力した両符号スピン信号合成回路22は、+スピン電子信号と−スピン電子信号とから合成した両スピンを持った電子からなる合成信号を出力する。同図に示されたこの両符号スピン電子合成信号22a、22bについて説明する。
【0084】
両符号スピンを持った電子信号の一例としての合成信号22aは+のスピンを持つ電子を含むビットと−のスピンを持つ電子を含むビットとの配列によって形成されている。合成信号22bは+のスピンを持つ電子を含むビットと、−のスピンを持つ電子を含むビット、それに全く電子を含まないか、あるいは、+のビットや−のビットに比べわずかの電子しか含まないビット、との3種類のビットの配列によって形成されている。これまでの電子信号は0か1かの二種類のビットしかなかったが、スピンの正負というもう一つの自由度が増したので、目的に応じてさまざまな符号化が可能となる。
【0085】
以上のようにして得られた両符号スピン電子合成信号22a,22bは、次段階の処理へと送信される。そのような次段階処理の一つとしては、半導体メモリーへの記録がある。次段階処理の他の例として両符号スピン電子合成信号からどちらか一方の符号のスピンを持った電子信号を分離する段階を図4Bに示す。
【0086】
例えば、図4Aの両符号スピン電子信号合成回路によって作られた合成信号22aが、図4Bに示された合成信号分離回路の入力信号として導線30に入力される。この合成信号電流は電磁石3の磁極間隙を通過する途中で、−スピンをもつ電子からなる信号電流は分岐線31へ流入し、+スピンを持つ電子からなる信号電流は分岐線32へ流れる。それぞれ一方のスピンを持った電子により形成された電子信号は、目的に応じてそれぞれ次の段階における信号処理回路の入力として伝送される。このように、図4Aに示した装置を符号化回路とすれば、図4Bに示した装置は一種の復号回路として機能する。従って、図4A,Bにそれぞれ示された装置を組み合わせて、単一スピン電子信号処理システムを構成することも可能となる。なお、図4A,Bにおいて示された分岐する導線と電磁石との組み合わせは、例えば図5A、Bに示したように、基板80a,80b上に一体化できる。図5Aに示した例ではサマリュームコバルトなどの永久磁石81が用いられ、図5Bで示した例では電磁石82が用いられている。さらには電磁石を薄膜ヘッドとすることにより分岐する導線と電磁石の両者をフォトリソグラフィーを用いた製造工程で作成することも可能である。
【0087】
+または−のスピンを持つ電子により形成された信号のスピンに関する純度について考察する。例えば、1ビットの信号が電子10個により形成され、そのうち+のスピンを持つ電子が8個であり、−のスピンを持つ電子が2個であったとする。この信号は実質的には+のスピンを持つ電子6個により形成されているとみなすことが出来る。従って、必ずしも電子10個の符号がすべて+である必要はないことになる。
【0088】
なお、本発明の思想または範囲から逸脱しない限り、上記実施例の具体的な記載内容に対し、多くの変更を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により、粒子のスピンの符号毎の単離が可能となるので、一方の符号のスピンのみを持つ粒子を用いることによって、自然界には存在し得なかった新たな素材の創造が可能となる。

Claims (3)

  1. スピンを持つ粒子を、前記スピンの符号に応じて分離するスピン分離装置であって、
    前記粒子を放出する粒子源と、
    前記粒子源から放出されてx方向に進む前記粒子を通過させるy方向に長い形状を持つスリット開口と、
    前記スリット開口から放出された前記粒子を受け止める受け部と、
    z方向に所定の間隙をもって配置された2つの磁極を有し、且つ、前記スリット開口と前記受け部との間に配置されて、前記粒子を前記スピンの符号が正である第1の粒子と前記スピンの符号が負である第2の粒子とに分離するシュテルン−ゲルラッハ型の電磁石と、
    第1の粒子及び/又は第2の粒子の軌道を制限するための軌道制限部とを備え、
    前記軌道制限部が所定の開口を有するスクリーンであって、且つ、前記電磁石と前記受け部との間の前記受け部の近傍に配置されて、前記受け部に受け止められる第1の粒子と第2の粒子とを分離することを特徴とするスピン分離装置。
  2. 前記軌道制限部により形成される開口の幅がy方向に制限されている請求項1に記載のスピン分離装置。
  3. 前記粒子が金属粒子である請求項1又は2に記載のスピン分離装置。
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