JP5128401B2 - スケール剥離性に優れたCr含有条鋼材の製造方法 - Google Patents

スケール剥離性に優れたCr含有条鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スケール剥離性に優れたCr含有条鋼材の製造方法に関するものである。
自動車等に用いられる冷間圧延用鋼、軸受鋼などの条鋼製品は、強度を確保するためCrが添加されることが一般的である。この様なCr含有条鋼材も通常の鋼材と同様に、ビレット等を加熱した後、スケール除去(以下、「デスケーリング」ということがある)が行われ、次いで熱間圧延して製造される。熱間圧延して製造される製品の表面品質に対する要求は年々厳しくなっている。しかし、鉄鋼を高温で加熱すると表面に1次スケール(ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe3O4)、ヘマタイト(Fe2O3)などのFe系単独酸化物など)が形成され、またCrを含有する鋼種では、Crを含む鉄酸化物(サブスケール)が1次スケール/地鉄界面に形成される(以下では、1次スケールとサブスケールを併せて「スケール」と総称することがある)。このサブスケールは鋼との密着性が高いため、加熱後に高圧水によるスケール剥離を行っても、上記1次スケールはほぼ除去されるがサブスケールが残留する。この残留したサブスケールが熱間圧延時に鋼表面に押し込まれることによって、微細な表面疵や肌荒れなどの表面欠陥がしばしば発生する。
この様な事情に鑑みて、鋼材のスケール剥離性を向上させることで、スケールによる疵を抑制し、製品の表面品質を高めるための方法が種々提案されている。
例えば特許文献1には、加熱炉で比較的低温で加熱し、更にその後、誘導加熱装置(インダクションヒーター)にて、大気雰囲気で別途誘導加熱してから、鋼材表面部のスケールを除去する技術が開示されている。
特許文献2には、スケール内の気孔の成長を促進させて剥離しやすいスケールを形成すべく、熱間圧延前の加熱において、条鋼材に直接水を供給しながら、一定温度で一定時間以上保持することが規定されている。また、特許文献3においても、スケール内の気孔の成長を促進させて剥離しやすいスケールを形成すべく、熱間圧延前の加熱において、2段階加熱を行っており、各加熱段階の加熱温度・時間および水蒸気濃度を規定している。
特開2007−330984号公報 特開2002−316207号公報 特開2003−119517号公報
しかし、特許文献1に記載の方法をCr含有条鋼材に適用すると、大気中で誘導加熱するため、鋼材と1次スケールの間に、上述した様なクロマイト濃度の非常に高い、鋼材との密着性の高いサブスケールが形成されやすく、スケール剥離性を十分に向上することが難しいと考えられる。
また、特許文献2および3では、加熱炉内で加熱温度・時間および水蒸気濃度を制御してスケール剥離性の改善を図っているが、該方法では、スケール剥離性を十分改善することが難しい。更に上記特許文献2や特許文献3は、スケール剥離性を高めるべく、サブスケールに発生する気孔を増大させる、即ち、サブスケールの物理的な観点(形状)から改善を図っているが、スケール剥離性をより高めるには、サブスケールの化学的な観点(成分組成)から改善を図ることも重要であると考える。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、スケール剥離性に悪影響を与えるCrを含有する条鋼材であっても、スケール剥離性に優れ、スケールによる表面疵が抑制されて表面性状の良好なCr含有条鋼材を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、Cr含有条鋼材であっても、加熱炉での加熱温度を制御すると共に、加熱炉から抽出後であってデスケーリング前に、所定の条件で鋼片を急速加熱すれば、その後のデスケーリング工程でスケールを十分に剥離でき、熱間圧延後の表面性状を良好にできることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明に係るCr含有条鋼材の製造方法は、Crを0.10〜2.00%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)含む鋼片を加熱炉内から取り出し、デスケーリングした後に、熱間圧延するCr含有条鋼材の製造方法であって、
前記加熱炉内にて、鋼片の表面温度が1000℃以上1150℃以下である温度域で15分間以上加熱した後、その表面温度(抽出温度)が上記温度域にある鋼片を前記加熱炉から取り出し、次いで、
O2濃度が10体積%以上かつH2O濃度が5体積%以上35体積%以下の雰囲気下、前記鋼片の表面温度が、前記抽出温度から1200℃以上1350℃以下の温度域となるまで、20℃/分以上の昇温速度で前記鋼片を急速加熱してから、デスケーリングするところに特徴を有する。
前記鋼片としては、その成分組成が、更に、Si:0.10〜0.40%、C:0.10〜1.50%、およびMn:0.01〜1.00%を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなるものが挙げられる。前記鋼片は、更に、Mo:0.01〜0.40%を含むものであってもよい。
本発明によれば、サブスケールとして、地鉄との密着性に劣る脆いFeO主体の酸化層を形成できるため、スケール剥離性を十分に向上でき、表面性状に優れたCr含有条鋼材を熱間圧延で製造することができる。
本発明者らは、スケール剥離性に悪影響を与えるCrを含有する条鋼材であっても、スケール剥離性を改善できる方法について既に提案しているが(例えば、特願2007−214025号)、デスケーリングにおいてスケールをより容易に除去すべく、更に鋭意研究を行った。その結果、次の様な思想に基づいてサブスケールの組成を制御すればよいとの着想を得た。即ち、サブスケールは、鋼材内部に酸化が進展する(内方酸化が進む)ことにより形成される内方酸化層である。この内方酸化の速度が遅い場合、Crがゆっくり濃化してCr濃度の高いサブスケールとなる。このCr濃度の高いサブスケールは、上述した通り鋼材との密着性が高いため好ましくない。
これに対し、内方酸化の速度が速い場合には、Crの濃化が進まないうちにサブスケールが形成されるため、FeO(ウスタイト)主体のCr濃度が低いサブスケールが形成されると考えられる。このFeO主体のサブスケールは脆く地鉄と剥離しやすい。よって、内方酸化の速度を速めてFeO(ウスタイト)主体のサブスケールを形成すれば、スケール剥離性が改善するのでは、との着想のもとで、内方酸化の速度を増加させるべく詳細な条件について更に検討を進めた。
その結果、内方酸化の速度は、雰囲気のO2濃度やH2O濃度が高いほど速くなることを見出すと共に、サブスケールの破壊に有効な急速加熱を併せて行えば、スケール剥離性が飛躍的に改善することを見出した。
そして本発明者らは、上記手段を具現化すべく更に検討したところ、(鋼片を加熱炉で加熱後、抽出)→(デスケーリング)→(熱間圧延)を行う工程において、上記加熱炉での加熱温度を制御すると共に、加熱炉から取り出した後であってデスケーリング前に、加熱炉内よりも高O2濃度かつ大気中よりも高H2O(水蒸気)濃度の雰囲気で急速に加熱すれば、スケール剥離性が飛躍的に改善し、その後に行われる熱間圧延で表面性状の優れた圧延材が得られることを見出し、本発明を想到するに至った。
以下、上記加熱炉での加熱温度及び急速加熱条件を規定した理由について、詳細に述べる。
〈加熱炉内での加熱:鋼片の表面温度が1000℃以上1150℃以下である温度域で15分間以上加熱〉
加熱炉内での鋼片の表面温度が1150℃を超えると、1次スケールと鋼材がサブスケールを介して強固に密着するため、後述する急速加熱を施した場合であってもその効果が発現しにくい。したがって、加熱炉内での鋼片の表面温度は1150℃以下とする必要がある。生産性やエネルギー効率を高める点も併せて考慮すると、1100℃以下とすることが好ましい。
一方、鋼片の表面温度が低すぎると、加熱炉内で1次スケールがあまり成長せず、スケール剥離に寄与する内部応力が小さくなり、スケール剥離性を高めることが難しい。よって、加熱炉内では、鋼片の表面温度が1000℃以上で15分間以上加熱する必要がある。好ましくは1050℃以上である。しかし、上記温度域(1000℃以上1150℃以下)での加熱時間が長すぎると、スケールロスが過剰となるため、該加熱時間は180分間以内とすることが好ましい。
加熱炉内における上記以外の条件については特に問わず、例えばヒートパタンとして、加熱開始から抽出まで徐々に昇温させるようにしてもよいし、後述する実施例に示す通り、上記温度域(1000℃以上1150℃以下)まで昇温させた後、該温度域で15分間以上保持する均熱帯を設けてもよい。
〈鋼片の表面温度の昇温速度:20℃/分以上〉
上記温度で加熱後は、加熱炉から、表面温度が上記温度域(1000℃以上1150℃以下)にある鋼片を取り出し(この加熱炉から取り出す(抽出)時の鋼片の表面温度を「抽出温度」という)、鋼片表面の温度を、該抽出温度(1000℃以上1150℃以下の温度域)から20℃/分以上の速度で昇温させる(この様な速度で昇温させることを、以下「急速加熱」ということがある)。この様に急速加熱を施すことによって、加熱炉で生成したサブスケールの成長応力を急激に高め、該サブスケールを容易に破壊することができる。鋼片表面の昇温速度が20℃/分未満だと、成長応力が急激に増加せず、サブスケールの破壊が不十分となるため好ましくない。好ましくは鋼片表面の昇温速度を30℃/分以上とする。尚、該昇温速度の上限値は、急速加熱による到達温度が1350℃を超えなければ特に限定されない。
〈急速加熱による到達温度域:1200℃以上1350℃以下〉
急速加熱による到達温度が高いほどスケールの成長が促進され、それに伴い成長応力が増加してスケール剥離性が向上する。この様な効果を発現させるには、急速加熱による到達温度を1200℃以上とする必要がある。一方、到達温度の上限は、スケールロスを低減させる観点から1350℃とする。
〈急速加熱雰囲気におけるO2濃度:10体積%以上〉
急速加熱雰囲気におけるO2濃度を、加熱炉内よりも高酸素濃度とすることにより、鋼材からのFe拡散が促進され、サブスケール中に脆いFeOが生成され易くなり、結果としてサブスケール中のCr濃度を低減できるため、スケール剥離性が向上する。この様な効果を発現させるには、急速加熱雰囲気におけるO2濃度を10体積%以上とする必要がある。好ましくはO2濃度を20体積%以上とする。一方、O2濃度の上限は、設備的な観点から約30体積%を目安とすることが好ましい。
〈急速加熱雰囲気におけるH2O濃度:5体積%以上35体積%以下〉
H2O含有雰囲気で鋼材を酸化すると、鋼材側に向かって酸化が進む水蒸気酸化が生じる。これは、スケール表面で水分子が解離してプロトンを放出し、プロトンがスケール/鋼材界面でスケール中の酸素を奪い、再び水になり鋼材内方へ酸化(内方酸化)を促進するためと言われている。このように、急速加熱と水蒸気酸化の効果を組み合わせることで、サブスケールとして、脆いFeOを主体とし、かつ成長応力により破壊し易いものが形成され易くなり、スケール剥離性が飛躍的に改善する。該効果を十分に発揮させるには、急速加熱雰囲気におけるH2O濃度を5体積%以上とする必要がある。好ましくは10体積%以上である。一方、H2O濃度が高すぎると、相対的に酸素分圧の低下を招く。H2OはO2よりも酸化作用が小さいため、H2O濃度が増加し過ぎると雰囲気全体として酸化作用が減少し、スケール生成が促進されない。よって本発明では、急速加熱雰囲気におけるH2O濃度を35体積%以下とした。好ましくは30体積%以下である。
尚、H2O濃度の調整は、ノズルから水を吹き付けたり、加湿空気と接触させることにより行うことができる。急速加熱処理は、加熱炉から鋼片を抽出後直ちに、鋼片搬送コンベア上で高周波誘導加熱装置を用いて実施することができる。鋼片と上記規定のO2濃度およびH2O濃度を満たす雰囲気を接触させるには、例えば、高周波誘導加熱装置内に上記規定のO2濃度およびH2O濃度を満たす加湿空気を流すことで実施することができる。
急速加熱処理を行った後は、直ちに(約20秒以内)デスケーリングを実施すればよい。デスケーリングとして、高圧水デスケーリングが一般的であるが、メカニカルデスケーリングを実施してもよい。
その他の製造条件については特に限定されず、例えば、連続鋳造にてビレットを得た場合、該ビレットを加熱炉に導入し、予熱帯、加熱帯、均熱帯を経て、ビレットを規定の抽出温度まで昇温する方法が挙げられる。そして、該抽出温度でビレットを加熱炉から取り出し、上記急速加熱処理を施した後、スケールを高圧水デスケーラーで除去し、その後、粗圧延、仕上げ圧延、製品水冷、巻取りを順次経て鋼線材を得ることができる。
尚、本発明は上述の通り、スケール剥離性に悪影響を与えるCrを含有する条鋼材のスケール剥離性を改善するものである。よって本発明は、Crを0.10%以上(好ましくは0.80%以上)含むCr含有条鋼材を対象とする。さらに本発明によれば、Crを多量に含有していても、スケール剥離性を良好にでき、Cr含有量は、例えば、1.00%以上、好ましくは1.10%以上、さらに好ましくは1.20%以上にすることもできる。この様にCrを添加すると、強度を向上させることができるが、Cr量が過剰になると、延性の確保が困難となるため、Cr量は、2.00%以下、好ましくは1.90%以下、さらに好ましくは1.80%以下とする。
本発明はCrに起因するサブスケールを制御するものであるため、熱間圧延材(条鋼材)として使用できる限り、Cr以外の鋼成分は特に限定されないが、Cr以外の元素とその量が、例えば、Si:0.10〜0.40%、C:0.10〜1.50%、およびMn:0.01〜1.00%を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材が挙げられ、該鋼材は、更に、Mo:0.01〜0.40%を含むものであってもよい。以下、上記各元素について説明する。
〔Si:0.10〜0.40%〕
Siは、強度を確保するための重要な元素であり、冷間圧延用鋼(CH鋼)に最低限必要なSi量としてその下限を0.10%とすることが好ましい。一方、延性を確保する観点からは、Si量を0.40%以下とすることが好ましい。
〔C:0.10〜1.50%〕
Cも、強度を確保するための重要な元素であり、0.10%以上含有させることが好ましい。一方、優れた冷間加工性を確保するにはCr量を1.50%以下とすることが好ましい。
〔Mn:0.01〜1.00%〕
Mnは、鋼材の強度および靭性を確保するために有用な元素であり、そのためにはMnを0.01%以上含有させることが好ましい。一方、鋼材の靭性および溶接性を確保する観点からは、Mn量を1.00%以下とすることが好ましい。
上記Cr、Si、C、およびMn以外の残部は、鉄であってもよい。残部が鉄の場合、不可避不純物(例えば、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不純物)が鋼中に含まれることは、当然に許容される。不純物として含まれるP、S、Cu、Niについては、下記に詳述する通り鋼材の表面性状や特性に悪影響を及ぼすことから、下記範囲内に抑えることが好ましい。
即ち、Pが過剰に含まれると脆性が高まるため、P量は0.05%以下に抑えることが好ましい。Sは、Mnと反応して硫化物系介在物MnSを形成する。このMnSは熱間加工時に偏析して鋼材を脆化させ、鋼材割れを引き起こす。従ってS量を少なくすることが推奨される。S量は0.05%以下に抑えることが好ましい。
Cuも不可避的に混入する元素である。1356Kで液相となり、熱間圧延時の変形中にオーステナイト結晶粒界に浸入して、表面割れを発生させる原因となる。よって、Cu量は0.30%以下(0%を含む)に抑えることが好ましい。Niも、不可避的に混入する元素であり、鋼材表面に不均一に濃化し、スケールの表面の凹凸を大きくしてスケール剥離性を悪化させる。この様な悪影響を抑制するため、Ni量も0.30%以下(0%を含む)に抑えることが好ましい。
本発明のCr含有条鋼材は、必要に応じて下記に示す通りMoを更に含んでいてもよい。
〔Mo:0.01〜0.40%〕
Moは、鋼材の強度を高めるのに有効な元素であり、該効果を発揮させるには、0.01%以上含有させることが好ましい。一方、Mo量が過剰になると、鋼材の延性が低下するため、Mo量は0.40%以下とすることが好ましい。
本発明法は、具体的には、上記成分組成を満たす条鋼材に適用できる。条鋼材は、棒状または線状の鋼材の総称であり、例えば自動車用の懸架ばね、弁ばね、軸受などに用いられうる。
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
表1に示す合金組成の鋼材を溶製し、φ10mm×12mmtの円柱状に切り出し加工したサンプルを用意した。このサンプルに対し、雰囲気制御が可能な高温圧縮試験機熱処理炉を用いて、下記の実施例1Aまたは1Bに示す処理を施した後、各到達温度でデスケーリングを模擬してサンプルを圧縮し、スケールの除去を行ってスケール剥離性を評価した。
上記圧縮の条件は、Ar雰囲気で圧縮歪率50%、歪速度10mm/sec.とした。圧縮後は、サンプル側面の外観をスキャナで取り込み、画像を2値化処理し、圧縮後のサンプルにおけるスケール残留部の面積率(残留スケール面積率)を算出した。そして、残留スケール面積率が20%以下の場合をスケール剥離性に優れていると判断した。
Figure 0005128401
(実施例1A)
実施例1Aでは、図1に示すヒートパターンで加熱し、圧縮(デスケーリング)を行ってスケール剥離性を評価した。
具体的には、加熱炉雰囲気をN2−1体積%O2−10体積%CO2−23体積%H2Oとし、1100℃で30分間加熱し、1次スケールを生成させた後、急速加熱雰囲気を、大気+10体積%H2O(即ち、急速加熱雰囲気におけるO2濃度:21体積%、H2O濃度:10体積%)とし、昇温速度:x℃/min.でy分間(但しxおよびyの値は表2に示す通り)表2に示す到達温度まで昇温した。
尚、実操業においては鋼片の昇温開始から抽出までが加熱炉雰囲気に相当するが、実施例1Aでは、急速加熱によるスケール剥離性の改善効果を限定的に検証するため、1100℃までの加熱雰囲気はAr雰囲気(酸化しない雰囲気)とし、1100℃での均熱時を上記の通り加熱炉雰囲気として実験を行った(後述する実施例1Bについても同じ)。
比較例として、表2のNo.13およびNo.14では、上記急速加熱処理を行わずに圧縮を行った。圧縮試験は、急速加熱して到達した温度にて、Ar雰囲気中、上記条件で行った。
残留スケール面積率を求めた結果を表2に示す。
Figure 0005128401
表2の結果から以下のことが分かる。まずNo.1、2および9は、Cr含有量の異なる鋼材を用い、急速加熱条件等を一定にしてスケール剥離性を比較した実施例である。これらの結果の対比から、Cr含有量が多くなるとスケール剥離性が悪化する傾向にあるが、本発明で規定する通り急速加熱を行えば優れたスケール剥離性を確保できることがわかる。
No.3〜6は、昇温速度が異なるが到達温度がいずれも1280℃であり、この1280℃で圧縮処理を施してスケール除去した例である。これらの結果の対比から、到達温度が同じでも、昇温速度の速い方がスケール剥離性は改善する傾向にあることが分かる。
No.7〜9は昇温速度がいずれも20℃/min.であり、急速加熱処理時間を変えることによって到達温度を変えた例である。これらの結果から、昇温速度が同じでも到達温度が高い方がスケール剥離性に優れる傾向にあることが分かる。
No.10〜12は昇温速度がいずれも30℃/min.であって、急速加熱処理時間を変えることによって到達温度を変えている。この場合も、上記No.7〜No.9と同様に、昇温速度が同じでも到達温度が高い方がスケール剥離性に優れる傾向にあることが分かる。
No.13および14は、加熱炉雰囲気にてそれぞれ1100℃、1250℃で30分間加熱(酸化処理)した後、急速加熱処理を施すことなく圧縮(デスケーリング)した例である。これらの結果から、急速加熱処理を行わない場合は、残留スケール面積率が高く、スケール剥離性に劣っていることが分かる。
(実施例1B)
実施例1Bでは、図2に示すヒートパターンで加熱し、圧縮(デスケーリング)を行ってスケール剥離性を評価した。
具体的には、加熱炉雰囲気をN2−0.5体積%O2−10体積%CO2−23体積%H2Oとし、1000℃で90分間加熱し、1次スケールを生成させた後、昇温雰囲気をN2−x体積%O2−y体積%H2Oとして(即ち、O2及びH2Oの濃度を変えて)、急速加熱処理(25℃/min.で10分間、到達温度は1250℃)を行った。尚、O2濃度x(体積%)及びH2O(水蒸気)濃度y(体積%)は表3に示す通りである。圧縮試験は、急速加熱して到達した温度にて、Ar雰囲気中、上記条件で行った。
残留スケール面積率を求めた結果を表3に示す。
Figure 0005128401
表3の結果から以下のことが分かる。まずNo.15〜19は、O2濃度を10体積%で一定としてH2O濃度を変化させた例である。これらの結果から、H2O濃度が低すぎても高すぎても残留スケール面積率は増加することが分かる。
一方、No.16およびNo.20〜22は、H2O濃度を10体積%で一定としてO2濃度を変化させた例である。これらの結果から、昇温雰囲気中のO2濃度の増加に伴い残留スケール面積率が減少する傾向にあることが分かる。
No.23はH2O濃度が本発明の条件を満たすが、O2濃度が低い比較例である。この場合は残留スケール面積率が高く、スケール剥離性に劣ることがわかる。
No.24は、O2濃度およびH2O濃度がどちらも本発明の規定範囲内にあることから、残留スケールも少なく、スケール剥離性に優れている。
[実施例2]
実操業を模擬して加熱およびスケール剥離を実施し、スケール剥離後の鋼材の表面性状を調べた。
まず、下記の表4に示す鋼材を溶製し、鋳造して150mm角のビレットを得た。そして、加熱炉にて、表5に示す温度まで昇温させ、該温度で30分間保持する加熱を行った後、表5に示す温度(抽出温度)で該ビレットを加熱炉外に取り出した。尚、加熱炉の燃焼用ガスにはLNGガスを使用し、加熱炉雰囲気はいずれもN2−1体積%O2−10体積%CO2−23体積%H2Oに調整した。加熱炉外に抽出後、直ちに加熱炉に隣接されたインダクションヒーターブースにて急速加熱処理を行った。急速加熱処理条件は表5に示す通りである。詳細には、表5に示す昇温速度で、(加熱炉からの抽出温度)から(到達温度)まで昇温させた。この急速加熱雰囲気(インダクションヒーター内の雰囲気)におけるO2濃度およびH2O濃度は表5に示す通りである。インダクションヒーター内の雰囲気の調整は、インダクションヒーター内壁に設置したノズルから酸素ガス、窒素ガスおよび水を導入することで行った。
そして到達温度に達した後、直ちにインダクションヒーターから抽出し、直ちに大気雰囲気で150MPaの高圧水スケール剥離を施し、それから熱間圧延して直径8.0mmの鋼線材を製造した。
Figure 0005128401
Figure 0005128401
製造された各鋼線材のスケール起因の表面疵を評価するため、鋼線材の断面を100倍の倍率で光学顕微鏡観察し、表面疵の有無ならびに個数をカウントした。
尚、本発明で対象とする表面疵とは、「疵深さが10マイクロm以上に達する、スケール起因の表面疵」をいう。疵深さが10マイクロm未満の疵は、表面疵としては認識されず、加工時に割れなどの問題を引き起こすことは実質的にないので、10マイクロm以上に達する疵のみを対象とした。また、スケール起因の表面疵であるかどうかの確認は次の方法によった。即ち、全表面疵の断面をEPMAマッピングにより500倍の倍率で分析し、Cr濃度が鋼線材全体の平均Cr濃度の2倍以上を示す領域の表面疵が、サブスケール(FeCr2O4)が押し込まれたスケール起因の表面疵であると判断した。
表面性状の評価は、鋼線材の長手方向(鋼の圧延方向)に垂直な10箇所以上の横断面で観察される上記表面疵の個数を計測し、その平均値(表面疵個数の平均値)を下式(1)により算出し、下記の5段階に分類整理して評価した。そして、ランク1以下の場合を、スケール起因の表面疵に関して製品としては全く問題がないと評価した。
表面疵個数の合計数/測定断面数の合計数=1測定断面当たりの表面疵個数…(1)
(表面疵のランク)
・ランク0:表面疵個数の平均値が0個(疵なし)のもの
・ランク1:表面疵個数の平均値が0個超10個以下のもの
・ランク2:表面疵個数の平均値が10個超20個未満のもの
・ランク3:表面疵個数の平均値が20個以上30個未満のもの
・ランク4:表面疵個数の平均値が30個以上のもの
さらに、加熱炉での熱処理前のビレットの重量をWA、そのビレットからできる鋼線材の重量WBとしたときに、(WA−WB)×100/WAの値が10%を超える場合は、スケールロスが著しいとして、生産性の観点から不合格とした。これらの結果を表5に示す。
表5の結果から以下のことが分かる。まずNo.25〜28は、SCr鋼を用い、加熱炉からの抽出温度を変化させて検討した例であり、急速加熱処理の諸条件はすべて規定の条件を満たしている。これらの結果から、No.25は、加熱炉での保持温度(加熱炉からの抽出温度)が本発明で規定する温度よりも低いため、スケール剥離性が十分改善されず、表面疵が不合格レベルとなった。No.28は、加熱炉での保持温度(加熱炉からの抽出温度)が高すぎるため、加熱炉で生成したサブスケールを介して1次スケールと鋼材が強固に密着してしまい、急速加熱処理によってもスケール剥離性は改善しなかった。No.26および27は、加熱炉での保持温度(加熱炉からの抽出温度)も既定の範囲内にあり、いずれも疵レベルは合格レベルとなった。
SCM鋼を用いたNo.29は、急速加熱における昇温速度が遅いため、急速加熱の効果が不十分となり表面疵が不合格レベルとなった。一方、同じくSCM鋼を用いたNo.30は本発明で規定する条件を満たしているため、表面疵が合格レベルであった。
No.31〜34はSUJ2鋼を用いて、特に到達温度を変化させて検討した例である。これらの結果から、No.31は到達温度が低すぎるため、急速加熱の効果が不十分となった。No.34は到達温度が高すぎるためスケールロスが多くなり、不合格であった。No.32および33は、本発明で規定する条件を満たしているため、表面疵が合格レベルであった。
No.35および36は、規定の急速加熱処理を施さない比較例であり、いずれも疵レベルが高く不合格となっている。
図1は実施例1Aにおけるヒートパターンを示す図である。 図2は実施例1Bにおけるヒートパターンを示す図である。

Claims (3)

  1. Crを0.10〜2.00%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)含む鋼片を加熱炉内から取り出し、デスケーリングした後に、熱間圧延するCr含有条鋼材の製造方法であって、
    前記加熱炉内にて、鋼片の表面温度が1000℃以上1150℃以下である温度域で15分間以上加熱した後、その表面温度(抽出温度)が前記温度域にある鋼片を前記加熱炉から取り出し、次いで、
    O2濃度が10体積%以上かつH2O濃度が5体積%以上35体積%以下の雰囲気下、前記鋼片の表面温度が、前記抽出温度から1200℃以上1350℃以下の温度域となるまで、20℃/分以上の昇温速度で前記鋼片を急速加熱してから、デスケーリングすることを特徴とするスケール剥離性に優れたCr含有条鋼材の製造方法。
  2. 前記鋼片は、更に、
    Si:0.10〜0.40%、
    C:0.10〜1.50%、および
    Mn:0.01〜1.00%
    を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなるものである請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記鋼片は、更に、Mo:0.01〜0.40%を含むものである請求項2に記載の製造方法。
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