発明の簡単な概要
本発明は、腫瘍学の分野における組成物および方法に関する。特に本発明は、固型腫瘍幹細胞に関連する遺伝子発現プロファイルを提供し、その各遺伝子は、新規な幹細胞性癌マーカーを提供する。ある態様では、癌幹細胞遺伝子発現プロファイルは、未分画腫瘍細胞に比べて癌幹細胞で差次的に発現される遺伝子を含む。他のある態様では、癌幹細胞遺伝子発現プロファイルは、腫瘍の大部分を構成する非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて癌幹細胞で差次的に発現される遺伝子を含む。本発明により同定される癌幹細胞マーカーは、癌の特徴付け、診断、予後、および処置、ならびに特に特定の癌内の充実性腫瘍幹細胞の標的化に有用である。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで該集団は、少なくとも75%の結腸または頭頸部癌幹細胞と、25%未満の腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸または頭頸部癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べてCD44+である。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は、結腸または頭頸部癌幹細胞と、結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも2倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べてCD44+である。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の結腸または頭頸部癌幹細胞と、25%未満の結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸または頭頸部癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD166を発現する。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は、結腸または頭頸部癌幹細胞と、結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも2倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べてCD166である。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の結腸または頭頸部癌幹細胞と、25%未満の結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸または頭頸部癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD49fを発現する。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は、結腸または頭頸部癌幹細胞と、結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも2倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べてCD49fである。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の結腸または頭頸部癌幹細胞と、25%未満の結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸または頭頸部癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD59を発現する。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は、結腸または頭頸部癌幹細胞と、結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも2倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べてCD59である。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の結腸または頭頸部癌幹細胞と、25%未満の結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸または頭頸部癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;CD44+であり、かつ非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD166を発現する。ある態様では、単離された結腸癌幹細胞はESAをさらに発現する。
本発明は、上皮起源のそれぞれの腫瘍から得られた、例えば結腸または頭頸部の癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも95%の結腸または頭頸部癌幹細胞と、5%未満の非腫瘍形成性結腸または頭頸部腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸または頭頸部癌幹細胞は、腫瘍形成性であるのみならず、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD166を発現する。
本発明は、上皮起源の結腸腫瘍から得られた結腸癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の結腸癌幹細胞と、25%未満の結腸腫瘍細胞とを含み、ここで、該結腸癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;かつ上昇したレベルのPTGFRN、CD166、CD164、CD82、TGFBR1、MET、EFNB2、ITGA6、TDGF1、HBEGF、ABCC4、ABCD3、TDE2、ITGB1、TNFRSF21、CD81、CD9、KIAA1324、CEACAM6、FZD6、FZD7、BMPR1A、JAG1、ITGAV、NOTCH2、SOX4の一つまたは複数を発現する。本発明は、上皮起源の腫瘍から得られた癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の癌幹細胞と、25%未満の腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;CD44+であり;かつ非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのPTGFRN、CD166、CD164、CD82、TGFBR1、MET、EFNB2、ITGA6、TDGF1、HBEGF、ABCC4、ABCD3、TDE2、ITGB1、TNFRSF21、CD81、CD9、KIAA1324、CEACAM6、FZD6、FZD7、BMPR1A、JAG1、ITGAV、NOTCH2、SOX4、HES1、HES6、ATOH1、CDH1、EPHB2、MYB、MYC、SOX9、もしくはSTRAPの一つもしくは複数、またはより低いレベルのTCF4もしくはVIMの一つもしくは複数を発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞はESAをさらに発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、単離された癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、上皮起源の腫瘍から得られた癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも95%の癌幹細胞と、5%未満の非腫瘍形成性腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、腫瘍形成性であり、CD44+であり、かつ非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのPTGFRN、CD166、CD164、CD82、TGFBR1、MET、EFNB2、ITGA6、TDGF1、HBEGF、ABCC4、ABCD3、TDE2、ITGB1、TNFRSF21、CD81、CD9、KIAA1324、CEACAM6、FZD6、FZD7、BMPR1A、JAG1、ITGAV、NOTCH2、SOX4、HES1、HES6、ATOH1、CDH1、EPHB2、MYB、MYC、SOX9、もしくはSTRAPの一つもしくは複数、またはより低いレベルのTCF4もしくはVIMの一方もしくは複数を発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞はESAをさらに発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、単離された癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、上皮起源の腫瘍から得られた癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は癌幹細胞と腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも2倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;CD44+であり;かつ非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのPTGFRN、CD166、CD164、CD82、TGFBR1、MET、EFNB2、ITGA6、TDGF1、HBEGF、ABCC4、ABCD3、TDE2、ITGB1、TNFRSF21、CD81、CD9、KIAA1324、CEACAM6、FZD6、FZD7、BMPR1A、JAG1、ITGAV、NOTCH2、SOX4、HES1、HES6、ATOH1、CDH1、EPHB2、MYB、MYC、SOX9、もしくはSTRAPの一つもしくは複数、またはより低いレベルのTCF4もしくはVIMの一方もしくは両方を発現する。ある態様では、濃縮された癌幹細胞はさらにESAを発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、単離された癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、上皮起源の腫瘍から得られた癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は癌幹細胞と腫瘍細胞とを含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも5倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;CD44+であり、かつ非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのPTGFRN、CD166、CD164、CD82、TGFBR1、MET、EFNB2、ITGA6、TDGF1、HBEGF、ABCC4、ABCD3、TDE2、ITGB1、TNFRSF21、CD81、CD9、KIAA1324、CEACAM6、FZD6、FZD7、BMPR1A、JAG1、ITGAV、NOTCH2、SOX4、HES1、HES6、ATOH1、CDH1、EPHB2、MYB、MYC、SOX9、もしくはSTRAPの一つもしくは複数、またはより低いレベルのTCF4もしくはVIMの一方もしくは両方を発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、単離された癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、腫瘍から癌幹細胞および非腫瘍形成性腫瘍細胞を含む細胞組成物を得るための方法を提供し、該組成物において、少なくとも75%が腫瘍形成性幹細胞であり、25%またはそれ以下が非腫瘍形成性腫瘍細胞であり、前記方法は、(a) 上皮起源の腫瘍から腫瘍細胞の解離した混合物を得る工程;(b) 腫瘍細胞の該混合物を少なくとも75%の癌幹細胞および25%またはそれ以下の非腫瘍形成性腫瘍細胞を含む第1画分と、癌幹細胞の枯渇した腫瘍細胞の第2画分とに分離する工程であって、該分離する工程が、例えばCD44およびESAを含む一つまたは複数の試薬と該混合物を接触させることによる工程;ならびに(c) 宿主動物への連続注射によって第1画分が腫瘍形成性であり、宿主動物への連続注射によって第2画分が非腫瘍形成性であることを実証する工程を含む。ある態様では、該分離する工程は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、パニング、アフィニティークロマトグラフィー、または磁気選択により行われる。ある態様では、該分離する工程は、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析により行われる。
本発明は、腫瘍から癌幹細胞および非腫瘍形成性腫瘍細胞を含む細胞組成物を得るための方法を提供し、該組成物において、少なくとも75%が腫瘍形成性幹細胞であり、25%またはそれ以下が非腫瘍形成性腫瘍細胞であり、前記方法は、(a) 上皮起源の腫瘍から腫瘍細胞の解離した混合物を得る工程;(b) 腫瘍細胞の該混合物を少なくとも75%の癌幹細胞および25%またはそれ以下の非腫瘍形成性腫瘍細胞を含む第1画分と、癌幹細胞の枯渇した腫瘍細胞の第2画分とに分離する工程であって、該分離する工程が、CD44およびESAに対する試薬と該混合物を接触させることによる工程;ならびに(c) 宿主動物への連続注射によって第1画分が腫瘍形成性であり、宿主動物への連続注射によって第2画分が非腫瘍形成性であることを実証する工程を含む。ある態様では、該分離する工程は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、パニング、アフィニティークロマトグラフィー、または磁気選択により行われる。ある態様では、該分離する工程は、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析により行われる。
本発明は、上皮起源の腫瘍から癌幹細胞の集団を濃縮するための方法を提供し、ここで、濃縮された集団は、75%の癌幹細胞および25%またはそれ以下の非腫瘍形成性腫瘍細胞を含み、前記方法は、(a) 上皮起源の腫瘍から腫瘍細胞の解離した混合物を得る工程;(b) 腫瘍細胞の該混合物を、例えばCD44およびESAを含む一つまたは複数の試薬と接触させる工程;(c) 該試薬への癌幹細胞の結合により癌幹細胞の第1画分と、癌幹細胞の枯渇した腫瘍細胞の第2画分とを選択する工程;ならびに(d) 宿主動物への腫瘍幹細胞の連続注射によって第1画分が腫瘍形成性であり、宿主動物への連続注射によって第2画分が非腫瘍形成性であることを実証する工程を含む。ある態様では、該選択する工程は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、パニング、アフィニティークロマトグラフィー、または磁気選択により行われる。ある態様では、該選択する工程は、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析により行われる。
本発明は、上皮起源の結腸腫瘍から癌幹細胞の集団を濃縮するための手段および方法を提供し、ここで、濃縮された集団は、75%の癌幹細胞および25%またはそれ以下の非腫瘍形成性腫瘍細胞を含み、前記方法は、(a) 上皮起源の腫瘍から腫瘍細胞の解離した混合物を得る工程;(b) 腫瘍細胞の該混合物をCD44およびESAに対する試薬と接触させる工程;(c) 該試薬への癌幹細胞の結合により癌幹細胞の第1画分と、癌幹細胞の枯渇した腫瘍細胞の第2画分とを選択する工程;ならびに(d) 宿主動物への腫瘍幹細胞の連続注射によって第1画分が腫瘍形成性であり、宿主動物への連続注射によって第2画分が非腫瘍形成性であることを実証する工程を含む。ある態様では、該選択する工程は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、パニング、アフィニティークロマトグラフィー、または磁気選択により行われる。ある態様では、該選択する工程は、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析により行われる。
本発明は、上皮起源の腫瘍から得られた癌幹細胞の単離された集団を提供し、ここで、該集団は、少なくとも75%の癌幹細胞および25%未満の腫瘍細胞を含み、ここで、該癌幹細胞は、腫瘍形成性であり;CD44+であり、かつ非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのALDH活性を示す。ある態様では、単離された癌幹細胞はさらにESAを発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、単離された癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、上皮起源の腫瘍から得られた癌幹細胞の濃縮された集団を提供し、ここで、該集団は癌幹細胞および腫瘍細胞を含み、ここで、該癌幹細胞は、未分画腫瘍細胞に比べて少なくとも2倍濃縮されており;腫瘍形成性であり;CD44+であり;かつ非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのALDH活性を示す。ある態様では、濃縮された癌幹細胞はさらにESAを発現する。ある態様では、単離された癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、単離された癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、癌を有すると疑われる対象における癌幹細胞の存在を同定する方法を提供し、ここで、該方法は、(a) 対象から生物学的試料を得る工程;(b) 該試料の細胞を解離させる工程;(c) 該解離した細胞を、CD44と結合する第1試薬およびCD166と結合する第2試薬に接触させる工程;ならびに(d) 第1および第2試薬に結合する癌幹細胞を検出する工程を含む。ある態様では、第1または第2試薬は抗体である。ある態様では、検出工程は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、パニング、アフィニティーカラム分離、または磁気選択により行われる。ある態様では、癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
本発明は、癌を有すると疑われる対象における癌幹細胞の存在を同定する方法を提供し、ここで、該方法は、(a) 対象から生物学的試料を得る工程;(b) 試料の細胞を解離させる工程;(c) 該解離した細胞を、CD44と結合する第1試薬およびALDH活性を検出する第2試薬に接触させる工程;ならびに(d) 第1試薬に結合し、増加したALDH活性を示す癌幹細胞を検出する工程を含む。ある態様では、第1試薬は抗体である。ある態様では、検出工程は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、パニング、アフィニティーカラム分離、または磁気選択により行われる。ある態様では、癌幹細胞は結腸癌幹細胞である。ある態様では、癌幹細胞は頭頸部癌幹細胞である。
発明の詳細な説明
本発明は、癌を処置し、特徴付け、かつ診断するための組成物および方法に関する。本発明は、樹立した充実性腫瘍の不均一細胞集団内の別個で限られたサブセットの細胞としての充実性腫瘍幹細胞(癌幹細胞または充実性腫瘍由来の癌幹細胞とも呼ぶ)の発見に基づく。これらの癌幹細胞は、大規模に増殖し、追加の充実性腫瘍幹細胞(自己複製)と、充実性腫瘍の腫瘍形成能を欠く大部分の腫瘍細胞とを効率的に生じる点で、正常幹細胞の性質を共有する。癌幹細胞の同定は、1) 該細胞の、非腫瘍形成性腫瘍細胞全体から癌幹細胞を単離するために使用される独特なパターンの細胞表面受容体の発現および2) 異種移植動物モデルで評価される、癌幹細胞の自己複製および増殖の性質の両方に頼っている。本発明は、特に結腸癌および頭頸部癌由来の充実性腫瘍幹細胞の発見に関する。
一つの態様では、本発明は、癌幹細胞の精製された集団を(例えば患者の生検から、またはマウス異種移植片により継代されたヒト腫瘍細胞から)得るために、集団の細胞を選択する方法を提供する。本発明はまた、非腫瘍形成性(NTG)腫瘍細胞の集団などの、癌幹細胞以外の腫瘍細胞の精製された集団を選択する方法も提供する。具体的には、細胞表面マーカーを使用して、上皮起源の癌から、未分画腫瘍細胞および非ESA+CD44+腫瘍細胞(非腫瘍形成性細胞)に比べて腫瘍を形成する能力に富む(すなわち腫瘍形成性の)、ESA+CD44+腫瘍細胞集団が同定された。本発明は、上皮起源の腫瘍から癌幹細胞の性質を特徴付ける研究方法を提供する。本発明は、選択された細胞に対する抗体を産生させる方法を提供する。本発明は、選択された細胞を使用した診断方法を提供する。本発明はまた、治療が癌幹細胞に向けられた(例えば本明細書において直接的または間接的に同定された癌幹細胞マーカーの一つに向けられた)治療方法も提供する。
ある態様では、本発明は、マイクロアレイ分析を使用して、選別前の結腸腫瘍細胞および非ESA+44+の選別された結腸腫瘍細胞(非腫瘍形成性細胞)に比べて、腫瘍形成性ESA+44+結腸幹細胞で差次的に発現される遺伝子を同定する。非幹細胞に比べて結腸癌幹細胞で増加した発現を有する遺伝子のセットを表1に示すが、これらの遺伝子は、結腸癌幹細胞の遺伝子発現プロファイルとして、ならびに結腸癌幹細胞の特徴付け、診断、および処置に有用な結腸癌幹細胞マーカーとして役立つ。充実性腫瘍幹細胞の存在および数を同定するために、ならびに増殖の低下、細胞死の誘導、自己複製経路の妨害、または存在する任意の充実性腫瘍幹細胞の生存経路の妨害に適した分子を判定およびスクリーニングするために、差次的に発現される遺伝子およびそれによりコードされるペプチドを検出することができる(例えば定量的に)。差次的に発現される遺伝子およびそれによりコードされるペプチドは、一つまたは複数のこれらのマーカーに標的化された治療薬を産生するためにもまた有用である(例えばマーカーの活性を阻害または促進するために)。本発明のある態様では、未分画結腸腫瘍細胞および非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べた結腸癌幹細胞におけるHES1およびHES6の増加した発現が、Notch標的遺伝子であるHES2、HES4、およびHES7と対比して同定され、結腸癌幹細胞遺伝子マーカーは、Notchシグナル伝達経路標的遺伝子であるHES1および/またはHES6の上方制御を含む。
ある態様では、本発明の癌幹細胞マーカーは、例えばインサイチューハイブリダイゼーションまたはRT-PCRによるポリヌクレオチドの発現レベルにより検出することができる(例えば腫瘍試料から)。そのうえ、例えばmRNAなどのポリヌクレオチドの発現レベルは、例えばTaqman分析を使用して定量することができる。または、本発明の結腸癌幹細胞マーカーは、例えば免疫組織化学法またはELISAによるタンパク質の発現レベルにより、腫瘍試料から検出することができる。さらに、タンパク質発現レベルは、例えば定量免疫蛍光法を使用して定量することができる。いくつかの態様では、結腸癌幹細胞マーカーHES6のmRNA発現は、インサイチューハイブリダイゼーションにより検出される(例えば腫瘍試料から)。いくつかの態様では、結腸癌幹細胞マーカーHES6のタンパク質発現は、HES6を特異的に認識する抗体を使用した免疫蛍光法により検出される(例えば患者の試料から)。他の態様では、HES6の発現は、HES6をコードしているポリヌクレオチドを特異的に増幅するプライマーセットを使用したリアルタイムPCRにより試料から検出される。他のいくつかの態様では、HES6の発現は、試料(例えば患者由来の)に存在する癌幹細胞の数を判定するために定量される。
したがって、本発明は、特定の遺伝子または所与の経路に向けた選択方法、診断方法、および治療法を使用して細胞を選択する方法、疾患を診断する方法、研究を行う方法、および充実性腫瘍を処置する方法を提供する。表1に示すように、以下の遺伝子および遺伝子産物、PTGFRN、CD166、CD164、CD82、TGFBR1、MET、EFNB2、ITGA6、TDGF1、HBEGF、ABCC4、ABCD3、TDE2、ITGB1、TNFRSF21、CD81、CD9、KIAA1324、CEACAM6、FZD6、FZD7、BMPR1A、JAG1、ITGAV、NOTCH2、SOX4、HES1、HES6、ATOH1、CDH1、EPHB2、MYB、MYC、SOX9、もしくはSTRAPの一つもしくは複数、または低下したレベルのTCF4もしくはVIMの一つもしくは複数が含まれ、これらは本明細書に示すように非腫瘍形成性癌細胞に比べて結腸癌幹細胞で差次的に発現される。
したがって、本発明は、癌幹細胞に診断薬または治療薬を選択的に標的化するための方法を提供する。本発明はまた、癌幹細胞に選択的に標的化される(例えば本明細書に開示される結腸癌幹細胞性癌マーカーの一つに向けられた)生体分子などの薬剤も提供する。いくつかの態様では、標的化される幹細胞性癌マーカーは、自己複製または細胞生存経路の一部である。ある態様では、本発明は、以下のための方法を提供する:抗癌剤のスクリーニング;抗癌療法の試験;新規な経路を標的化する薬物の開発;新しい抗癌治療の標的の同定;病理標本中の悪性細胞の同定および診断;充実性腫瘍幹細胞薬の感受性の試験およびアッセイ;薬物感受性を予測する特異的因子の測定;ならびに患者のスクリーニングのため(例えばマンモグラフィーの補助として)。
本発明の他の特徴、目的、および利点は、下記の詳細な説明から明らかであろう。the Regents of the University of Michiganによる、公開されたPCT特許出願WO02/12447およびthe Regents of the University of MichiganによるPCT特許出願PCT/US02/39191に追加の案内が提供され、これら出願の両方は参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
「抗体」は免疫グロブリン分子であり、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも一つの抗原認識部位を経由してタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖質、ポリヌクレオチド、脂質等の標的を認識し、それに特異的に結合する。本明細書に使用する用語は最も広い意味で使用され、無傷のポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片など)、単鎖Fv(scFv)突然変異体、少なくとも二つの無傷の抗体から産生された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、抗体部分を有する融合タンパク質、および抗原認識部位を有する任意の他の修飾免疫グロブリン分子を、それらの抗体が所望の生物学的活性を示す限り包含する。抗体は、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖定常ドメインの独自性に基づき、それぞれ免疫グロブリンの五つの主要クラス、IgA、IgD、IgE、IgG、もしくはIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のうち任意のものでありうる。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なった、周知のサブユニット構造および三次元立体配置を有する。抗体は裸のこともあるし、毒素、放射性同位体等の他の分子にコンジュゲートしていることもある。
本明細書に使用する用語「抗体断片」は、無傷の抗体の部分を表す。抗体断片の例には、抗体断片から形成される線状抗体;単鎖抗体分子;FcまたはFc'ペプチド、FabおよびFab断片、ならびに多重特異性抗体が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
本明細書に使用するように、「ヒト化」形態の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の配列を最低限有するかまたは有さないキメラ抗体である。通例、ヒト化抗体は、レシピアントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基と置き換わったヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を有することがある。これらの修飾は、一般にさらに抗体の性能を洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン超可変ループに対応し、FR残基の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR残基である、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含むものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部(Fc)も含むことがある。ヒト化抗体を産生するために使用される方法の例は、Winterらに付与された(参照により本明細書に組み入れられる)米国特許第5,225,539号に記載されている。
本明細書に使用される用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体、または当技術分野で公知の任意の技法を使用して作製された、ヒトにより産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。このヒト抗体の定義には、無傷の抗体または完全長抗体、その断片、ならびに/または例えばマウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体のように少なくとも一つのヒト重鎖および/もしくは軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。
「ハイブリッド抗体」は、異なる抗原決定基領域を有する抗体由来の重鎖および軽鎖のペアが一緒に集合することにより、二つの異なるエピトープまたは二つの異なる抗原が認識され、結果として生じた四量体により結合されうる免疫グロブリン分子である。
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が二つまたはそれ以上の種に由来する抗体を表す。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変領域は、所望の特異性、親和性、および能力を有する哺乳動物の一つの種(例えばマウス、ラット、ウサギ等)由来の抗体の可変領域に対応するが、定常領域は、別由来(通常はヒト)の抗体の配列に相同であり、その種での免疫反応を誘起することを避ける。
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、本明細書において相互交換可能に使用され、認識されて、特定の抗体によって特異的に結合されることができる抗原の部分を表す。その抗原がポリペプチドの場合、エピトープは、連続するアミノ酸およびタンパク質の四次フォールディングにより並置される非連続アミノ酸の両方から形成されうる。連続するアミノ酸から形成されたエピトープは、典型的にはタンパク質変性の際に保持されるが、四次フォールディングによって形成されたエピトープは、典型的にはタンパク質変性の際に消失する。エピトープは、典型的には独特の空間コンホメーションの中の少なくとも3アミノ酸、より通常には少なくとも5または8〜10アミノ酸を含む。抗原決定基は、抗体との結合を無傷の抗原(すなわち免疫反応を誘起するために使用される「免疫原」)と競合することができる。
抗体がエピトープに「特異的に結合」するか、またエピトープへの「特異的結合」を示すことは、その抗体が代替の物質よりもエピトープとより高頻度に、より迅速に、より長い持続時間で、かつ/またはより高い親和性で反応または会合することを意味する。本明細書に使用する「特異的に結合する」は、抗体が少なくとも約0.1mM、少なくとも約1uM、少なくとも約0.1uM以下(or better)、または0.01uM以下(or better)のKDでタンパク質に結合することを意味する。
本明細書に使用する用語「非特異的結合」および「バックグラウンドの結合」は、抗体とタンパク質またはペプチドとの相互作用に関して使用する場合に特定の構造の存在に依存しない相互作用(すなわち、抗体が概してエピトープなどの特定の構造よりもむしろタンパク質に結合すること)を表す。
本明細書に使用する用語「受容体結合ドメイン」は、細胞接着分子を含めた、受容体に対する任意の天然のリガンド、または対応する天然のリガンドの質的な受容体結合能を少なくとも保持している当該天然のリガンドの任意の領域もしくは誘導体を表す。
本明細書に使用する用語「抗体-イムノアドヘシンキメラ」は、抗体の少なくとも一つの結合ドメインを少なくとも一つのイムノアドヘシンと組み合わせた分子を含む。例には、Berg et al., PNAS (USA) 88:4723-4727 (1991)およびCharnow et al., J. Immunol., 153:4268 (1994)に記載されている二重特異性CD4-IgGキメラが挙げられるが、それに限定されるわけではなく、この両方の例は参照により本明細書に組み入れられる。
細胞の濃縮された集団におけるように「濃縮された」は、未分画の細胞セットにおける特定のマーカー(例えば表1に示すような)を有する細胞数に比べた、分画された細胞セットにおけるそのマーカーを有する細胞数の増加に基づいて表現型的に定義することができる。しかし、用語「濃縮された」は、被験マウスにおいて限界希釈の発生率で腫瘍を形成する最小細胞数として、腫瘍形成機能により機能的に定義することもできる。例えば、500個の腫瘍幹細胞が63%の被験動物に腫瘍を形成するが、63%の被験動物に腫瘍を形成するために5000個の未分画腫瘍細胞が必要ならば、充実性腫瘍幹細胞集団は腫瘍形成活性について10倍濃縮されている。本発明の幹細胞性癌マーカーは、癌幹細胞の濃縮された集団を産生するために使用することができる。いくつかの態様では、幹細胞集団は未分画腫瘍細胞に対して少なくとも1.4倍濃縮されている。他の態様では、幹細胞集団は、未分画腫瘍細胞に対して2倍から10倍濃縮されている。さらなる態様では、幹細胞集団は未分画腫瘍細胞に対して20倍濃縮されている。
細胞に関して「単離された」は、細胞の自然環境から取り出された細胞(充実性腫瘍の中のような)であって、単離または分離された細胞であって、かつ自然状態では一緒に存在するが前記細胞が単離される根拠となるマーカーを欠如している他の細胞が少なくとも約30%、50%、75%、または約90%存在しない細胞を表す。本発明の幹細胞性癌マーカーは、癌幹細胞の単離された集団を産生するために使用することができる。
本明細書に使用する用語「癌」および「癌性」は、細胞集団が未制御の細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を表すか、または説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、それに限定されるわけではない。当該ガンのさらに特定の例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化器癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーム、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、および様々な種類の頭頸部癌が挙げられる。
本明細書に使用する「転移」は、身体の出現部位から他の領域に癌が拡散または移動し、新しい場所で類似の癌性病変の発生を伴う過程を表す。「転移」または「転移性」細胞は、隣接する細胞との接着性接触を失い、疾患の原発部位から血流またはリンパを介して移動して隣接する身体構造に浸潤する細胞である。
本明細書に使用する用語「対象」は、特定の処置のレシピエントであるべき、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯動物などを非限定的に含めた任意の動物(例えば哺乳動物)を表す。典型的には、用語「対象」および「患者」は、本明細書においてヒト対象に関して相互交換可能に使用される。
本明細書に使用する用語「癌を有すると疑われる対象」は、癌を示す一つまたは複数の症状を表す対象(例えば顕著な腫瘤または塊)、あるいは癌についてスクリーニングされている対象(例えば定期健康診断の際に)を表す。癌を有すると疑われる対象は、一つまたは複数のリスク因子もまた有することがある。癌を有すると疑われる対象は、一般に癌について検査されていない。しかし、「癌を有すると疑われる対象」は、初回診断を受けたが癌の病期は分からない個体を包含する。この用語は、さらにかつて癌を有した者(寛解中の個体)を含む。
本明細書に使用する用語「癌のリスクがある対象」は、特定の癌を発生する一つまたは複数のリスク因子を有する対象を表す。リスク因子には、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露、癌の病歴、非癌性先在疾患、および生活様式が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
本明細書に使用する用語「対象における癌を特徴付ける」は、良性組織、前癌組織、または癌組織の存在、癌の病期、および対象の予後を非限定的に含めた、対象における癌試料の一つまたは複数の性質の同定を表す。本明細書に開示した癌マーカーを非限定的に含む一つまたは複数の癌マーカー遺伝子の発現の同定によって癌を特徴付けることができる。
用語「癌幹細胞」、「腫瘍幹細胞」、または「充実性腫瘍幹細胞」は、本明細書において相互交換可能に使用され、(1)大規模な増殖能を有し;(2)非対称細胞分裂して、低下した増殖能または発生能を有する一つまたは複数種類の分化した子孫を産生することができ;かつ(3)自己複製または自己維持のために対称細胞分裂することができる、充実性腫瘍由来の細胞集団を表す。「癌幹細胞」、「腫瘍幹細胞」、または「充実性腫瘍幹細胞」のこれらの性質は、腫瘍を発生させることができない大多数の腫瘍細胞に比べて、免疫不全マウスに連続移植した際に触知できる腫瘍を形成する能力をこれらの癌幹細胞に付与している。癌幹細胞は、無秩序に自己複製または分化を受け、突然変異が起こりながら経時的に変化しうる、異常な細胞型を有する腫瘍を形成する。本発明の充実性腫瘍幹細胞は、米国特許第6,004,528号に提供されている「癌幹細胞系(cancer stem line)」とは異なる。該特許では、「癌幹細胞系」は、それ自体ほとんど突然変異を有さないが、細胞の環境中で起こる腫瘍形成性変化の結果として非対称細胞分裂よりも対称細胞分裂を受ける低速成長性前駆細胞型と定義される。このように、この「癌幹細胞系」仮説は、高度に突然変異して迅速に増殖する腫瘍細胞が主として異常な環境の結果として生じ、該環境が比較的正常な幹細胞を蓄積させ、次にそれらの細胞を腫瘍細胞にする突然変異を受けさせると提案している。米国特許第6,004,528号は、そのようなモデルを使用して、癌の診断を高めることができると提案している。充実性腫瘍幹細胞モデルは、「癌幹細胞系」モデルとは根本的に異なり、その結果として「癌幹細胞系」モデルにより提示されない有用性を示す。第一に、充実性腫瘍幹細胞は「突然変異に乏しく(mutationally spared)」はない。米国特許第6,004,528号に記載されている「突然変異に乏しい癌幹細胞系」は、前癌病変と考えることができるが、本発明に記載される充実性腫瘍幹細胞は、それ自体腫瘍形成を担う突然変異を有する癌細胞である。すなわち、本発明の充実性腫瘍幹細胞(「癌幹細胞」)は、米国特許第6,004,528号における「癌幹細胞系」とは区別される、高度に突然変異した細胞に含まれると考えられる。第二に、癌に至る遺伝子突然変異は、充実性腫瘍幹細胞内に大きく内因性であるのと同様に環境性である。充実性腫瘍幹細胞モデルは、単離された充実性腫瘍幹細胞が移植の際に追加の腫瘍を生じることができると予測する(このように転移を説明している)が、「癌幹細胞系」モデルは、腫瘍形成性であったのはその細胞の異常な環境であったことから、移植された「癌幹細胞系」細胞が新しい腫瘍を生じることができないと予測するであろう。実際に、解離され、表現型が単離されたヒト充実性腫瘍幹細胞をマウスに移植し(通常の腫瘍の環境とは大きく異なる環境)、そこでその幹細胞がさらに新しい腫瘍を形成できることは、本発明を「癌幹細胞系」モデルと区別している。第三に、充実性腫瘍幹細胞は、対称的および非対称的の両方で分裂すると思われ、したがって、対称細胞分裂は必須の性質ではない。第四に、充実性腫瘍幹細胞は、多数の変数に依存して迅速にも低速にも分裂することができ、したがって遅い増殖速度が決定的な特徴ではない。
本明細書に使用する「腫瘍形成性」は、自己複製(追加の腫瘍形成癌幹細胞を生じる)の性質と、増殖して、充実性腫瘍幹細胞に腫瘍を形成させる全ての他の腫瘍細胞を産生する(分化している故に非腫瘍形成性である腫瘍細胞を生じる)性質とを含めた、充実性腫瘍幹細胞の機能的特徴を表す。連続移植の際に腫瘍を形成することができない大多数の腫瘍細胞に比べて、自己複製および全ての他の腫瘍細胞を産生するための増殖というこれらの性質は、免疫不全マウスに連続移植した際に触知可能な腫瘍を形成する能力を本発明の癌幹細胞に付与している。腫瘍細胞、すなわち非腫瘍形成性腫瘍細胞は、充実性腫瘍からこの腫瘍細胞を得てから免疫不全マウスに移植した際に、限られた回数(例えば1または2回だけ)腫瘍を形成することができる。
本明細書に使用する用語「幹細胞性癌マーカー」、「癌幹細胞マーカー」、「腫瘍幹細胞マーカー」、または「充実性腫瘍幹細胞マーカー」は、遺伝子またはその遺伝子により発現されるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドであって、単独または他の遺伝子と一緒のその発現レベルが、非腫瘍形成性細胞に比べて腫瘍形成性癌細胞の存在と相関するものを表す。この相関は、遺伝子の増加または減少した発現のいずれか(例えばmRNAまたは遺伝子にコードされるペプチドの増加または減少したレベル)に関係しうる。
本明細書に使用する用語「未分画腫瘍細胞」、「選別前の腫瘍細胞」、「腫瘍細胞全体」およびそれらの文法的同等語は、細胞表面マーカーの発現に基づき隔離も分画もされていない、患者試料(例えば腫瘍生検または胸水)から単離された腫瘍細胞集団を表すために相互交換可能に使用される。
本明細書に使用する用語「非ESA+CD44+腫瘍細胞」、「非ESA+44+」、「選別された非腫瘍形成性腫瘍細胞」、「非腫瘍形成性腫瘍細胞」、「非幹細胞」、「腫瘍細胞」、およびそれらの文法的同等語は、細胞表面マーカーの発現に基づいて本発明の癌幹細胞が隔離または除去された腫瘍集団を表すために相互交換可能に使用される。
「遺伝子発現プロファイル」は、生物学的試料中に発現した少なくとも一つのポリヌクレオチドまたはタンパク質の同定された発現レベルを表す。
「遺伝子プロファイル」、「遺伝子パターン」、「発現パターン」、または「発現プロファイル」は、生物学的試料の独特の識別子を提供する遺伝子発現の特異的パターン、例えば乳癌または結腸癌試料を分析することにより得られる乳癌または結腸癌の遺伝子発現パターンを表し、それらの場合、「乳癌遺伝子プロファイル」または「結腸癌発現パターン」と呼ことができる。「遺伝子パターン」は、その遺伝子パターンを癌幹細胞遺伝子シグネチャーと比較した後で、疾患の診断、予後予測、治療法の選択、および/または疾患もしくは治療法のモニタリングに使用することができる。
本明細書に使用する用語「遺伝子発現」は、遺伝子にコードされている遺伝情報を、遺伝子の「転写」(例えばRNAポリメラーゼの酵素作用による)によりRNA(例えばmRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)に、そしてタンパク質をコードしている遺伝子についてはmRNAの「翻訳」によりタンパク質に変換する過程を表す。遺伝子発現は、この過程の多数の段階で調節することができる。「上方制御」または「活性化」は、遺伝子発現産物(例えばRNAまたはタンパク質)の産生を増加させる調節を表すが、「下方制御」または「抑制」は、産生を減少させる調節を表す。上方制御または下方制御に関与する分子(例えば転写因子)は、それぞれ「アクチベーター」および「リプレッサー」と呼ばれることが多い。
遺伝子発現に関する用語「高レベル」、「増加したレベル」、「高発現」、「増加した発現」、「上昇したレベル」、または「上方制御された発現」は、本明細書において相互交換可能に使用され、第二の細胞または細胞集団、例えば未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞におけるその遺伝子の発現よりも高レベルの、細胞または細胞集団、特に癌幹細胞または癌幹細胞集団における遺伝子発現を表す。「上昇したレベル」の遺伝子発現は、未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞における遺伝子の発現レベルの2倍またはそれ以上のレベルでの癌幹細胞または癌幹細胞集団における同遺伝子の発現を表す。「上昇したレベル」の遺伝子発現はまた、未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞における遺伝子の発現レベルの6倍またはそれ以上のレベルでの、癌幹細胞または癌幹細胞集団における同遺伝子の発現も表す。「上昇したレベル」の遺伝子発現は、例えば定量RT-PCRまたはマイクロアレイ分析により、未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞に比べて、癌幹細胞におけるポリヌクレオチド(mRNA、cDNA等)の増加した量を検出することによって判定することができる。または、「上昇したレベルの」遺伝子発現は、例えばELISA、ウエスタンブロット、定量免疫蛍光法により、未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞に比べて、癌幹細胞におけるタンパク質の増加した量を検出することによって判定することができる。
本明細書に使用する遺伝子発現に関する用語「検出不可能なレベル」または「発現の欠如」は、従来技法を使用してバックグラウンドと区別することができないことにより、発現が同定されないレベルでの、細胞または細胞集団、特に癌幹細胞または癌幹細胞集団における遺伝子の発現を表す。「検出不可能なレベル」の遺伝子発現は、例えば定量RT-PCRまたはマイクロアレイ分析により、癌幹細胞におけるバックグラウンドを超えたポリヌクレオチド(mRNA、cDNA等)のレベルを検出できないことにより判定することができる。または、「検出不可能なレベル」の遺伝子発現は、例えばELISA、ウエスタンブロット、または免疫蛍光法により、癌幹細胞におけるバックグラウンドを超えたタンパク質のレベルを検出できないことによって判定することができる。
本明細書に使用する遺伝子発現に関する用語「低レベル」、「減少したレベル」、「低発現」、「低下した発現」、または「減少した発現」は、本明細書において相互交換可能に使用され、第二の細胞または細胞集団、例えば未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞における遺伝子発現よりも低レベルでの、細胞または細胞集団、特に癌幹細胞または癌幹細胞集団におけるその遺伝子の発現を表す。「低レベル」の遺伝子発現は、1) 未分画の結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞における遺伝子の発現レベルの2分の1またはそれ以下および 2) 従来技法を使用した検出下限でのレベルでの、癌幹細胞または癌幹細胞集団における同遺伝子の発現を表す。「低レベル」の遺伝子発現は、例えば定量RT-PCRまたはマイクロアレイ分析により、未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞に比べて癌幹細胞においてほとんど検出不可能な量まで減少したポリヌクレオチド(mRNA、cDNA等)を検出することによって判定することができる。または、「低レベル」の遺伝子発現は、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、または定量免疫蛍光法により未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞に比べて癌幹細胞においてほぼ検出不可能な量まで減少したタンパク質を検出することによって判定することができる。
本明細書に使用する用語「発現レベルを特異的に検出する試薬」は、一つまたは複数の遺伝の発現を検出するために使用される試薬を表す(例えば本発明の癌マーカーを非限定的に含む)。適切な試薬の例には、対象となる遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブ、アプタマー、対象となる遺伝子を特異的に増幅することができるPCRプライマー、および対象となる遺伝子により発現されるタンパク質に特異的に結合することができる抗体が挙げられるが、それに限定されるわけではない。他の非限定的な例は、明細書および下記実施例に見出すことができる。
本明細書に使用する用語「非癌性対照に比べて減少または増加した発現を検出する」は、非癌性対照試料におけるレベルに比べて遺伝子の発現レベル(例えばmRNAまたはタンパク質のレベル)を測定することを表す。遺伝子発現は、本明細書に記載するものを非限定的に含めた任意の適切な方法を使用して測定することができる。
本明細書に使用する用語「前記被験化合物の非存在下に比べて前記被験化合物の存在下で細胞試料における遺伝子発現の変化を検出する」は、被験化合物の非存在下に比べて、被験化合物の存在下での改変された発現レベル(例えば増加または減少)を測定することを表す。遺伝子発現は、任意の適切な方法を使用して測定することができる。
本明細書に使用する用語「前記対象における癌を検出するための前記キットを使用するための説明書」は、対象由来の試料中の癌を検出および特徴付けるためのキットに含まれる試薬を使用するための説明書を含む。
本明細書に使用する「診断の提供」または「診断の情報」は、患者が疾患または状態を有するかどうかを判定する際に、および/あるいは表現型の分類に、またはその疾患もしくは状態の予後もしくは処置(一般的な処置または任意の特定の処置のいずれか)に対する予想される反応に関して重要性を有する任意の分類にその疾患または状態を分類する際に有用な任意の情報を表す。同様に、診断は、対象が状態(腫瘍などの)を有すると予想されるかどうかを非限定的に含めた任意の種類の診断情報、例えば高リスク腫瘍もしくは低リスク腫瘍のような腫瘍の性質または分類に関する情報、予後に関する情報、および/または適切な処置の選択に有用な情報を提供することを表す。処置の選択には、特定の化学療法剤または外科手術もしくは放射線照射などの他の処置様式の選択、または治療を中止するか行うかの選択が含まれうる。
本明細書に使用する用語「予後を提供する」、「予後情報」、または「予測情報」は、癌の存在(例えば本発明の診断方法により判定される)が対象の将来的な健康(例えば予想される罹患率または死亡率、癌になる尤度、および転移のリスク)に与える影響に関する情報を提供することを表す。
本明細書に使用する用語「術後腫瘍組織」は、対象から取り出された(例えば外科手術の間に)癌性組織(例えば生検組織)を表す。
本明細書に使用する用語「癌を有すると診断された対象」は、検査され、癌性細胞を有することが見出された対象を表す。癌は、生検、X線、血液検査、および本発明の診断方法を非限定的に含めた任意の適切な方法を使用して診断することができる。
本明細書に使用する用語「生検組織」、「患者の試料」、「腫瘍試料」、および「癌試料」は、その試料が癌幹細胞を含む癌性組織を有するかどうかを判定する目的で、または癌性組織の遺伝子発現プロファイルを判定するために対象から取り出された細胞、組織、または体液の試料を表す。いくつかの態様では、対象が癌を有すると疑われることから、生検組織または体液を得る。次に、癌、癌幹細胞、および/または癌幹細胞遺伝子シグネチャー発現の存在または非存在についてこの生検組織または体液を調べる。
本明細書に使用する用語「遺伝子移入系」は、核酸配列を有する組成物を細胞または組織に送達する任意の手段を表す。例えば、遺伝子移入系には、ベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および他の核酸に基づく送達系)、裸の核酸のマイクロインジェクション、ポリマーに基づく送達系(例えばリポソームに基づく系および金属粒子に基づく系)、バイオリスティック注入等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。本明細書に使用する用語「ウイルス遺伝子移入系」は、所望の細胞または組織への試料の送達を容易にするウイルスエレメント(例えば無傷のウイルス、修飾ウイルス、および核酸またはタンパク質などのウイルス構成要素)を含む遺伝子移入系を表す。本明細書に使用する用語「アデノウイルス遺伝子移入系」は、アデノウイルス科に属する無傷または改変ウイルスを含む遺伝子移入系を表す。
本明細書に使用する用語「部位特異的組換え標的配列」は、組換え因子のための認識配列および組換えが起こる位置を提供する核酸配列を表す。
本明細書に使用する用語「核酸分子」は、DNAまたはRNAを非限定的に含めた任意の核酸含有分子を表す。この用語は、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキュェオシン、5'-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、キュェオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンを非限定的に含むDNAおよびRNAの公知の塩基アナログのうち任意のものを含む配列を包含する。
用語「遺伝子」は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えばDNA)配列を表す。ポリペプチドは、完全長または断片の所望の活性または機能的性質(例えば酵素活性、リガンドの結合、シグナル伝達、免疫原性等)が保持される限り、完全長コード配列またはコード配列の任意の部分によりコードされうる。この用語は、構造遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するように、その構造遺伝子のコード領域ならびに、5'および3'末端の両方でコード領域に隣接し、いずれかの末端から約1kb以上の距離の配列もまた包含する。コード領域の5'に位置し、mRNA上に存在する配列は、5'非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3'またはその下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3'非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は、cDNAおよびゲノム形態の遺伝子の両方を包含する。ゲノム形態の遺伝子または遺伝子クローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で分断されたコード領域を有する。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子セグメントであり;イントロンはエンハンサーなどの調節エレメントを有することがある。イントロンは、核転写物または一次転写物から除去または「スプライシング」され;したがって、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物には非存在である。mRNAは、翻訳の間に発生期のポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序を特定化するように機能する。
本明細書に使用する用語「異種遺伝子」は、自然環境中にはない遺伝子を表す。例えば、異種遺伝子には、ある種から別の種に導入された遺伝子が含まれる。異種遺伝子にはまた、ある方法で改変された、生物にとって天然状態の(native)遺伝子も含まれる(例えば、突然変異した、複数のコピーに付加された、非天然状態の調節配列と連結した等)。異種遺伝子配列が、典型的には染色体の中の遺伝子配列と自然に関連して見出されないDNA配列に繋がっているか、または天然に見出されない染色体の部分と関連している(例えば、通常は発現されない遺伝子座に発現される遺伝子である)点で、異種遺伝子は内因性遺伝子と区別される。
本明細書に使用する用語「遺伝子発現」は、遺伝子にコードされている遺伝情報を、遺伝子の「転写」により(例えばRNAポリメラーゼの酵素作用により)RNA(例えばmRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)に、そしてタンパク質をコードしている遺伝子についてはmRNAの「翻訳」によりタンパク質に変換する過程を表す。遺伝子発現は、この過程の多数の段階で調節されうる。「上方制御」または「活性化」は、遺伝子発現産物(例えば、RNAまたはタンパク質)の産生を増加させる調節を表し、「下方制御」または「抑制」は、産生を減少させる調節を表す。上方制御または下方制御に関与する分子(例えば転写因子)は、それぞれ「アクチベーター」および「リプレッサー」と呼ばれることが多い。
イントロンを有すること以外に、ゲノム形態の遺伝子はまた、RNA転写物に存在する配列の5'および3'末端の両方に位置する配列も含みうる。これらの配列は、「フランキング」配列または「フランキング」領域と呼ばれる(これらのフランキング配列は、mRNA転写物に存在する非翻訳配列の5'または3'に位置する)。5'フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するか、またはそれに影響する、プロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列を有することがある。3'フランキング領域は、転写終結、転写後切断、およびポリアデニル化を指令する配列を有することがある。
用語「siRNA」は、低分子干渉RNAを表す。いくつかの態様では、siRNAは約18〜25ヌクレオチド長の二重鎖または二本鎖領域を含み;siRNAは各鎖の3'末端で約2から4個の不対ヌクレオチドを有することが多い。siRNAの二重鎖または二本鎖領域の少なくとも一つの鎖は、標的RNA分子に実質的に相同であるか、または実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的な鎖は「アンチセンス鎖」であり;標的RNA分子に相同な鎖は「センス鎖」であり、siRNAアンチセンス鎖に相補的でもある。siRNAはまた追加の配列も有することがあり;当該配列の非限定的な例には、連結配列またはループ、ならびにステム構造および他のフォールディングした構造がある。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物におけるRNA干渉を誘起する際に、および植物における転写後遺伝子サイレンシングの間に配列特異的RNA分解を誘起する際に主要な中間体として機能すると思われる。
用語「RNA干渉」または「RNAi」は、siRNAによる遺伝子発現のサイレンシングまたは減少を表す。これは、サイレンシングされる遺伝子の配列と二重鎖領域が相同なsiRNAによって開始される、動物および植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程である。この遺伝子は、その生物に内因性であっても外因性であってもよく、染色体に組み込まれて存在してもよいし、ゲノムに組み込まれていないトランスフェクションベクターに存在してもよい。遺伝子の発現は、完全または部分的のいずれかで阻害される。RNAiはまた、標的RNAの機能を阻害すると考えることもでき;その標的RNAの機能は完全または部分的であってもよい。
本明細書に使用する用語「コードしている核酸分子」、「コードしているDNA配列」、および「コードしているDNA」は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を表す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。したがって、DNA配列はアミノ酸配列をコードしている。
本明細書に使用する用語「遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」および「遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、または言い換えると遺伝子産物をコードしている核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA形態で存在してもよい。DNA形態で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖(すなわちセンス鎖)または二本鎖であってもよい。エンハンサー/プロモーター、スプライス接合部、ポリアデニル化シグナル等の適切な制御エレメントは、適当な転写開始および/または一次RNA転写物の正しいプロセシングを許すために、必要ならば遺伝子のコード領域に近接して配置してもよい。または、本発明の発現ベクターに利用されたコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライス接合部、介在配列、ポリアデニル化シグナル等、または内因性および/または外因性制御エレメント両方の組み合わせを有してもよい。
本明細書に使用する用語「部分」は、ヌクレオチド配列に関する場合(「所与のヌクレオチド配列の部分」のように)、その配列の断片を表す。この断片は、4ヌクレオチドのサイズからヌクレオチド配列全体より1ヌクレオチドを引いたサイズまで、サイズが変動しうる(10ヌクレオチド、20、30、40、50、100、200等)。
語句「ハイブリダイズする」、「選択的にハイブリダイズする」、または「特異的にハイブリダイズする」は、配列が複合混合物中(例えばDNAまたはRNAのライブラリー)に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で特定のヌクレオチド配列にのみ分子が結合または二重鎖形成することを表す。例えばAndersen (1998) Nucleic Acid Hybridization Springer-Verlag; Ross (ed. 1997) Nucleic Acid Hybridization Wileyを参照されたい。
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、典型的には核酸の複合混合物中でプローブがその標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件を表す。ストリンジェントな条件は配列依存性で、異なる状況では異なるものである。長鎖配列は高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの詳細な案内は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度で特定の配列について熱融解点(Tm)よりも約5〜10度低いように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度での)である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、pH7.0から8.3で塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、典型的には約0.01から0.1Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短いプローブ(例えば10から50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば50ヌクレオチド超)について少なくとも約60℃の条件であろう。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加により実現することもある。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションについて、陽性シグナルは少なくともバックグラウンドの2倍、またはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。高ストリンジェンシーまたはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例には、50%ホルムアミド、5×SSC、および1% SDSを42℃でインキュベートするか、または5×SSCおよび1% SDSを65℃でインキュベートし、0.2×SSCおよび0.1% SDS中で65℃で洗浄するというものである。PCRについては、アニーリング温度はプライマー長に応じて約32℃から約48℃まで変動しうるが、温度約36℃が低ストリンジェンシーの増幅に典型的である。高ストリンジェンシーのPCR増幅については、プライマー長および特異性に応じて高ストリンジェンシーのアニーリング温度が約50℃から約65℃に変動しうるが、約62℃の温度が典型的である。高ストリンジェンシー増幅および低ストリンジェンシー増幅の両方についての典型的なサイクル条件には、90℃から95℃で30〜120秒間の変性期、30〜120秒間持続するアニーリング期、および約72℃で1〜2分間の伸長期がある。
本明細書に使用する用語「機能的な(operable)組み合わせで」、「機能的な(operable)順序で」、および「機能的に(operably)連結した」は、所与の遺伝子の転写および/または所望のタンパク質分子の合成を指令することができる核酸分子が産生される方式での核酸配列の連結を表す。この用語は、機能的(functional)タンパク質が産生される方式のアミノ酸配列の連結もまた表す。
「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように核酸に関して使用される場合の用語「単離された」は、天然起源で通常不随する少なくとも一つの構成要素または混入物から同定および分離された核酸配列を表す。単離された核酸は、天然に見出されるのとは異なる形態または背景で存在する核酸である。対照的に、単離されていない核酸は、天然に存在する状態で見出される、DNAおよびRNAなどの核酸である。例えば、所与のDNA配列(例えば遺伝子)は、隣接する遺伝子の近くの宿主細胞染色体上に見出され;特異的タンパク質をコードしている特異的mRNA配列などのRNA配列は、多数のタンパク質をコードしている多数のその他のmRNAとの混合物として細胞に見出される。しかし、所与のタンパク質をコードしている単離された核酸には、例として所与のタンパク質を普通に発現している細胞中の核酸であるが、その核酸が天然の細胞とは異なる染色体位置にあるか、またはその逆で、天然に見出されるものとは異なる核酸配列が隣接している核酸がある。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖形態で存在することがある。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドをタンパク質の発現のために利用しようとする場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最低限センス鎖またはコード鎖を有するものである(すなわちそのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖でありうる)が、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を有することもある(すなわち、そのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖でありうる)。
「アミノ酸配列」および「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「ペプチド」などの用語は、説明されたタンパク質分子に関連する完全な天然状態のアミノ酸配列にそのアミノ酸配列を限定することを意味しない。
本明細書に使用する用語「天然状態のタンパク質」は、タンパク質がベクター配列によりコードされるアミノ酸残基を有さない;すなわち天然状態のタンパク質は、そのタンパク質が天然に存在するときにそのタンパク質に見出されるアミノ酸だけを有することを示す。天然状態のタンパク質は組換え産生してもよく、天然起源から単離してもよい。
本明細書に使用する用語「部分」は、タンパク質に関する場合(「所与のタンパク質の部分」のように)、そのタンパク質の断片を表す。この断片は、4アミノ酸残基に始まり、アミノ酸配列全体から1アミノ酸を除いたものまでサイズが変動しうる。
用語「サザンブロット」は、サイズに応じてDNAを分画し、続いてゲルからニトロセルロースまたはナイロン膜などの固体支持体にDNAを移動させるための、アガロースまたはアクリルアミドゲル上でのDNAの分析を表す。次に、固定化されたDNAは標識プローブで探索され、使用したプローブに相補的なDNA種が検出される。DNAは制限酵素で切断してから電気泳動にかけることができる。電気泳動の後に、固体支持体に移動させる前またはその間にDNAを部分的に脱プリン化し、変性させることができる。サザンブロットは、分子生物学者の標準的なツールである(J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY, pp 9.31-9.58 [1989])。
本明細書に使用する用語「ノーザンブロット」は、サイズに応じてRNAを分画し、続いてゲルからニトロセルロースまたはナイロン膜などの固体支持体にRNAを移動させるための、アガロースゲル上でのRNAの電気移動によるRNAの分析を表す。次に、固定化されたRNAは標識プローブで探索され、使用したプローブに相補的なRNA種が検出される。ノーザンブロットは分子生物学者の標準的なツールである(J. Sambrook, et al., 前記, pp 7.39-7.52 [1989])。
用語「ウエスタンブロット」は、ニトロセルロースまたは膜などの支持体上に固定化されたタンパク質(またはポリペプチド)の分析を表す。タンパク質をアクリルアミドゲル上で泳動させ、タンパク質を分離し、続いてゲルからニトロセルロースまたはナイロン膜などの固体支持体にタンパク質を移動させる。次に、固定化されたタンパク質は、対象となる抗原に対して反応性を有する抗体に曝す。抗体の結合は、放射性標識抗体の使用を含めた多様な方法により検出することができる。
本明細書に使用する用語「導入遺伝子」は、例えば新たに受精した卵または初期胚に外来遺伝子を導入することにより生物中に配置されたその外来遺伝子を表す。用語「外来遺伝子」は、実験操作により動物のゲノムに導入された任意の核酸(例えば遺伝子配列)を表し、導入された遺伝子が天然の遺伝子が存在するのと同じ位置に存在しない限り、その動物で見出される遺伝子配列を含みうる。
本明細書に使用する用語「ベクター」は、ある細胞から別の細胞にDNAセグメントを移動させる核酸分子に関して使用される。用語「媒体(vehicle)」は、ときに「ベクター」と相互交換可能に使用される。ベクターは多くの場合プラスミド、バクテリオファージ、または植物もしくは動物ウイルスから得られる。
本明細書に使用する用語「発現ベクター」は、所望のコード配列と、特定の宿主動物での機能的に(operably)連結したコード配列の発現に必要な適切な核酸配列とを有する組換えDNA分子を表す。原核生物での発現に必要な核酸配列には、通常はプロモーター、オペレーター(任意)、およびリボソーム結合部位があり、多くの場合他の配列と一緒になっている。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
本明細書に使用する用語「インビトロ」は、人工的な環境および人工的な環境内で起こる過程または反応を表す。インビトロ環境は、試験管および細胞培養物からなりうるが、それに限定されるわけではない。用語「インビボ」は、自然の環境(例えば動物または細胞)および自然の環境内で起こる過程または反応を表す。
用語「被験化合物」および「候補化合物」は、身体機能の疾患、疾病、病気、または障害(例えば癌)を処置または予防するために使用するための候補である任意の化学的実体、医薬品、薬物等を表す。被験化合物は、公知の治療用化合物および潜在的な治療用化合物の両方を含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング法を使用するスクリーニングによって治療的であると判定することができる。本発明のいくつかの態様では、被験化合物にはアンチセンス化合物が含まれる。
本明細書に使用する用語「試料」は、その最も広い意味で使用される。一つの意味では、この用語は任意の起源から得られた標本または培養物、ならびに生物学的試料および環境試料を含むことが意図される。生物学的試料は動物(ヒトを含めた)から得ることができ、液体、固体、組織、および気体を包含する。生物学的試料には、血漿、血清等の血液産物が挙げられる。環境試料には、表面物質、土壌、水、結晶、および工業試料などの環境試料が挙げられる。しかし、当該試料は、本発明に適用できる試料の種類を限定するものとみなしてはならない。
「特異的結合」または「独特の結合」とは、薬剤が特定のリガンド、受容体、または抗原にのみ結合する場合を意図する。「選択的結合」とは、薬剤が、他のものの約2倍またはそれ以上、約5倍またはそれ以上、約8倍またはそれ以上、または約10倍またはそれ以上の強度で好んでリガンド、受容体、または抗原に結合する場合を意図する。
本明細書に使用するように、「約」は、表示した数の±10%を表す。例えば、「約10%」は、9%から11%の範囲を表す。
本発明は、癌を処置、特徴付け、および診断するための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、充実性腫瘍幹細胞に関連する遺伝子発現プロファイル、ならびに充実性腫瘍幹細胞の診断、特徴付け、および処置に有用な新規なマーカーを提供する。
充実性腫瘍幹細胞性癌マーカー
本発明は、未分画結腸腫瘍細胞または非ESA+44+結腸腫瘍細胞に比べて結腸癌幹細胞で発現が差次的に発現されるマーカーを提供する。当該マーカーは、様々な癌(例えば結腸癌)の診断および特徴付けおよび改変(例えば治療用標的化)に用途を見出す。
下に提供する実施例1は、充実性腫瘍癌マーカーを同定するために使用される方法を記載している。好ましい癌マーカーは下記表1に提供される。これらの表は遺伝子名を提供するが、本発明は、本発明の治療方法および診断方法、ならびに組成物に、核酸配列およびそれによりコードされるペプチド、ならびに核酸およびペプチドの断片の両方の使用を企図することに留意されたい。
(表1)非腫瘍形成性癌細胞に比べて腫瘍形成性結腸癌幹細胞において上方制御または下方制御される充実性腫瘍癌マーカー
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのプロスタグランジンF2受容体調節タンパク質(PTGFRNまたはFPRP)、CD81、およびCD9を含む。PTGFRNは細胞表面Igスーパーファミリーのメンバーであり、癌細胞系において4型膜貫通スーパーファミリー(TM4SFまたはテトラスパニン)の二つのメンバーであるCD81およびCD9と頑強かつ特異的に会合する(Stipp et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:4853-62; Charrin et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:14329-37)。PTGFRNは六つの細胞外免疫グロブリンドメインを有し、プロスタグランジンF2α受容体を含めた七つの膜貫通受容体と会合し、受容体リガンド間の結合能を低下させる(Orlicky, 1996, Prostaglandins Leukotrienes Essent. Fatty Acids 54:247-59: Orlicky et al., 1998, J. Lipid Res. 39:1152-61)。テトラスパニンは、接着、遊走、シグナル伝達、および分化を含めた多数の細胞機能に関係付けられている。CD81ノックアウトマウスは、B細胞のシグナル伝達および活性化、ならびにT細胞の増殖に果たすCD81の役割を実証する(Maecker & Levy, 1997, J. Exp. Med. 185:1505-10; Tsitsikov et al., 1997, PNAS 94:10844-49; Miyazaki et al., 1997, EMBO J. 16:4217-25)が、CD9ノックアウトマウスは、精子および卵の融合不全が原因で受精の低下を示す(Miyado et al., 2000, Science 287:321-4; Le Naour et al., 2000, Science 287:319-21)。さらに、CD9は、腫瘍におけるその発現が転移と逆相関し、また黒色腫細胞の転移能を低下させることができるため、転移の抑制因子として作用することができる(Ikeyama et al., 1993, J. Exp. Med. 177:1231-37; Si & Hersey, 1993, Int. J. Cancer 54:37-43; Miyake et al., 1995, Cancer Res. 55:4127-31; Adachi et al., 1998, J. Clin. Oncol. 16:1397-1406; Mori et al., 1998, Clin. Cancer Res. 4:1507-10)。さらに、CD81およびCD9の両方は明らかな細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、細胞表面タンパク質のサブセットをネットワークすなわちテトラスパニンウェブに連結するアダプターとして作用することができる(Maecker et al., 1997, 1997, FASEB J. 11:428-442; Rubinstein et al., 1996, Eur. J. Immunol. 26:2657-65)。PTGFRN、CD81、およびCD9は、別個の生化学的実体として同定されたこと、ならびに結腸癌幹細胞において全てが上方制御されていることは、この複合体が幹細胞の生物学的性質に役割を果たし、癌の治療法の有用な標的となることを示唆している。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD166(または活性化白血球接着分子;ALCAM)を含む。CD166は、五つの細胞外免疫グロブリン様ドメインを有する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、異種親和性および同種親和性両方の細胞間相互作用を促進する。CD166は、上皮、ニューロン、リンパ細胞および骨髄細胞、造血幹細胞および間葉系幹細胞に広い発現を示し、組織構造、神経形成、造血、免疫反応、および腫瘍進行の発生および維持に機能する(Swart, 2002, Eur. J. Cell Biol. 81:313-21)。CD166の発現は、一般にいくつかの癌細胞および細胞系を含めた増殖中の細胞、ならびにメラニン細胞皮膚病変の浸潤細胞に生じ、ここで、その発現は腫瘍の進行と相関する(Degen et al., 1998, Am. J. Pathol. 152:805-13; van Kempen et al., 2000, Am. J. Pathol. 156:769-74; Kristiansen et al., 2003, Prostate 54:34-43)。さらに、同種親和性の細胞相互作用を仲介することができない切断型CD166の過剰発現は、組織浸潤を促進し(van Kempen et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:25783-90)、これは、CD166が細胞のクラスター形成と細胞運動との間の移行に役割を果たすことを示唆している。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD164を含む。CD164は、糖タンパク質シアロムチン受容体ファミリーのメンバーであり、原始的な造血前駆細胞により高度に発現され、造血前駆細胞ではCD164は間質への前駆細胞の接着に関与し、前駆細胞の増殖の負の調節因子として作用することができる(Watt & Chan, 2000, Leuk. Lymphoma 37:1-25)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD82を含む。CD82は、接着、遊走、シグナル伝達、および分化を含めた多数の細胞機能に関係付けられているテトラスパニンスーパーファミリーの遍在性メンバーである(Maeker et al., 1997, FASEB J. 11 :428-42)。上に詳述したCD9のように、CD82は、いくつかの原発腫瘍に比べて転移細胞の方が低い発現を有し、転移の抑制因子として作用する(Liu et al., 2003, World J. Gastroenterol. 9:1231-6)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルの形質転換成長因子β受容体I(TGFBR1)を含む。TGF-β経路は、細胞の増殖、接着、および分化;造血;炎症;骨格の発達および組織の恒常性を含めた多数の過程を調節する(Waite & Eng, 2003, Nat. Rev. Genet. 4:763; Chen et al., 2004, Growth Factors 22:233-41; He et al., 2005, Ann. N.Y. Acad. Sci. 1049:28-38)。調節解除されたTGF-βシグナル伝達は、いくつかの癌を含めた一連のヒト疾患に関連づけられており、これは、発癌が正常な発生を制御している恒常性メカニズムを不法使用することによって進行しうることを示唆している(Beachy et al., 2004, Nature 432:324)。
TGFBR1は、TGF-βアイソフォームに対する1型受容体である。これらの分泌性サイトカインは、I型およびII型セリン/トレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体を活性化する。II型受容体キナーゼは構成的に活性で、リガンドが結合するとI型受容体をリン酸化し、サイトソルSMADタンパク質を介して下流のシグナルを活性化する。TGF-βアイソフォームは、受容体に調節されるSMAD2および3を介して作用し、SMAD2および3は今度は共通のパートナーSMADであるSMAD4と相互作用し、転写を調節する(Waite & Eng, 2003, Nat. Rev. Genet. 4:763)。
TGF-βリガンドに対する細胞の抗分裂促進応答は、経路の構成要素が腫瘍抑制因子であり、その経路の不活性化が腫瘍形成の一因となることを示唆している(Itoh et al., 2000, Eur. J. Biochem. 267:6954)。これは、Smad3欠損マウスが転移性結腸直腸癌を発生し、Smad4ヘテロ接合マウスが悪性腸腫瘍を発生するノックアウトマウスにおいて確認され、上皮および毛包でのBmpr1の条件付き欠失は毛髪マトリックス細胞の増生を招く(Zhu et al., 1998, Cell 94:703-14; Takaku et al., 1998, Cell 92:645-56; Ming Kwan et al., 2004, Genesis 39:10-25)。ヒトでは、Smad4は、膵臓癌、結腸癌、乳癌、および肺癌を含めたいくつかの癌で突然変異または不活性化している(Hahn et al., 1996, Science 271:350-3; Schutte et al., 1996, Cancer Res. 56:2527-30)。さらに、SMAD4をコードしているマザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ4(mothers against decapentaplegic homologue 4、MADH4)遺伝子およびBMP受容体IA型遺伝子(BMPR1A)での生殖細胞系突然変異は、消化管過誤腫性ポリープおよび高リスクの消化管癌を特徴とする常染色体優性癌症候群である若年性ポリポーシス症候群(JPS)のそれぞれ15〜20%および20〜25%と関連している(Howe et al., 1998, Science 280:1086-8; Howe et al., 2001, Nat. Genet. 28:184-7; Zhou et al., 2001, Am. J. Hum. Genet. 69:704-11)。結腸癌幹細胞で上方制御されるTGFBR1の同定は、TGF-β経路の標的化が充実性腫瘍の形成および再発を担う腫瘍形成性細胞の除去を助けることができると示唆している。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのMETを含む。METは、分泌型肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)により活性化される受容体チロシンキナーゼである。METは、胚発生時の細胞増殖、解離、および遊走を制御し、ヒト癌でのこれらの過程の異所性活性化は、腫瘍の成長および転移の一因である。METの活性化はβ-カテニンをリン酸化する。これは、細胞接合部でのβ-カテニンとα-カテニンとの会合の欠如を促進し、したがって細胞の接着を減少させ、それ自体発癌と関連しているWnt介在性シグナル伝達にβ-カテニンを利用可能にする修飾である。(Tokunou et al., 2001, Am. J. Pathol. 158:1451; Birchmeier et al., 2003, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4:915; Biez, 2004, Curr. Biol. 15:R64; Boccaccio et al., 2005, Nature 434:396; およびMa et al., 2005, Cancer Res. 65:1479)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのエフリン-B2(EFNB2)を含む。EFNB2は、受容体チロシンキナーゼであるEph受容体と相互作用して、細胞の遊走、神経細胞のガイダンス、および血管形成を指令する双方向細胞間接触シグナル伝達系を産生する膜結合リガンドファミリーのメンバーである。EFNB2は、EPHB4およびEPHA3受容体に結合する膜貫通リガンドである。Eph受容体およびエフリンリガンドの両方は、乳癌、小細胞肺癌、および消化器癌、黒色腫、および神経芽腫を含めたいくつかの癌で過剰発現している(Nakamoto & Bergemann, 2002, Microsc. Res. Tech. 59:58-67)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのインテグリンα6(ITGA6;CD49f)、インテグリンαV(ITGAV)、およびインテグリンβ1(ITGB1)を含む。インテグリンは、α鎖およびβ鎖の両方からなり、これらの鎖が複数のパートナーと会合して異なるインテグリンを形成する内在性細胞表面タンパク質である。インテグリンは細胞接着および遊走に機能し、細胞を細胞外マトリックスまたは他の細胞上の受容体に可逆的に結合させ、したがって癌の浸潤および転移に重大な役割を果たすことができる。インテグリン介在性接着はまた、細胞内シグナル伝達にも影響し、したがって細胞の生存、増殖、および分化を調節することができる(Danen, 2005, Curr. Pharm. Des. 11:881-91)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルの奇形癌腫由来成長因子1(TDGF1)またはCRIPTOを含む。TDGF1は、単一のEGF様モチーフと、Cripto, FRL-1, and Cryptic(CFC)モチーフと呼ばれる新規なシステインリッチドメインとを有するGPI結合タンパク質であり、共受容体として作用してTGF-βリガンドであるNodalをアクチビン受容体に動員する(Yeo & Whitman, 2001, Mol. Cell 7:949-57; Yan et al., 2002, Mol. Cell Biol. 22:4439-49)。TDGF1は乳癌、膵臓癌、卵巣癌、および結腸癌を含めたいくつかの癌で高度に過剰発現し(Salomon et al., 2000, Endocr. Relat. Cancer 7:199-226)、アクチビンBが介在する細胞増殖抑制を遮断するように作用し、発癌に果たす重要な役割を示唆している(Shen, 2003, J. Clin. Invest. 112:500-2)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのヘパリン結合EGF様成長因子(HBEGF)を含む。HBEGFは、膜結合型前駆タンパク質として合成され、他のEGFRリガンドと同様にエクトドメイン分断により細胞膜から放出されることにより活性になる(Massague et al., 1993, Annu Rev Biochem, 62:515-41)。HBEGFは腫瘍の成長および血管形成の強力な誘導因子であり、エクトドメイン分断の調節不全はマウスに致死的増生を生じる(Ongusaha et al., 2004, Cancer Res. 64:5283-90; Yamazaki et al., 2003, J. Cell Biol. 163:469-75)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのABCC3およびABCC4を含む。ABCC3およびABCC4は、細胞内薬物濃度を低下させることにより多剤耐性に関与するATP結合カセット輸送体スーパーファミリーおよびMRPサブファミリーのメンバーである。結腸癌幹細胞におけるこれらの輸送体の増加した発現は、これらの細胞が化学療法を逃れ、癌の再発に至るメカニズムを示唆し、癌幹細胞をそのような薬物に脆弱にするための有用な標的として働くことができる。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのTDE2を含む。TDE2は、マウス精巣腫瘍差次的発現(mouse testicular tumor-differentially-expressed、Tde1)遺伝子に配列類似性を有し、非小細胞肺癌で上方制御される遺伝子として同定された(Player et al., 2003, Int. J. Cancer 107:238-43)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのTNFRSF21を含む。TNFRSF21は、炎症、免疫反応、およびリンパ組織の恒常性の調節に重大に関与している腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである(Smith et al., 1994, Cell 76:959-62; Locksley et al., 2001, Cell 104:487-501)。TNFRSF21は、NFκBおよびMAPK8/JNKを活性化し、細胞のアポトーシスを誘導することができる。さらに、ノックアウト研究は、TNFRSF21がCD4+T細胞の増殖、Th分化、B細胞活性化、および体液性免疫反応の重要な調節因子として作用することを実証している(Liu et al., 2001, Immunity 15:23-34; Zhao et al., 2001, J. Exp. Med 194:1441-8; Schmidt et al., 2003, J. Exp. Med. 197:51-62)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのKIAA1324を含む。KIAA1324は、推定上の細胞表面タンパク質である。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのSOX4、すなわちSRY(Y染色体性決定領域)-ボックス4を含む。SOX(SRY関連HMGボックス)ファミリーのメンバーの遺伝子産物は、胚の発生および器官形成の間の細胞運命の決定に重大である。器官形成に果たすSOX4の役割について最も確定されたシステムは、脳の発生でのものである(Wegner & Stolt, 2005, Trends Neurosci, 28:583-8)。高いSOX4発現はまた、膀胱癌および前立腺癌を非限定的に含めたいくつかの腫瘍型における腫瘍細胞の増加した生存率とも相関していた(Aaboe et al., 2006, Cancer Res, 66:3434-42; Liu et al., 2006, Cancer Res, 66:4011-9; Pramoonjago et al., 2006, Oncogene, 25:5626-39)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのatonalホモログ1(ATOH1)を含む。ATOH1は、Wntシグナル伝達経路の標的と考えられている塩基性ヘリックスループヘリックス(BHLH)ファミリー転写因子である(Loew et al., 2005, Ann N Y Acad Sci, 1059:174-83)。それによるATOH1発現の緊密な調節は、正常な結腸発生に重要である(Loew et al., 2005, Ann N Y Acad Sci, 1059:174-83; Mutoh et al., 2006, Differentiation, 74:313-21)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのE-カドヘリン(CDH1)を含む。CDH1は細胞間接着に関与する古典的カルシウム依存性糖タンパク質であるカドヘリンをコードしている(Cavallaro & Christofori, 2004, Nat Rev Cancer, 4:118-32)。CDH1の発現改変または突然変異は、いくつかの器官での腫瘍形成を招き、腫瘍の侵襲性は、機能的CDH1の喪失と相関していた(Georgolios et al., 2006, J Exp Clin Cancer Res, 25:5-14; Katoh, 2005, Int J Oncol, 27:1677-83; Cowin et al., 2005, Curr Opin Cell Biol, 17:499-508; Charalabopoulos et al., 2004, Exp Oncol, 26:256-60)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのEph受容体B2(EPHB2)を含む。エフリン受容体はそのリガンドであるエフリンに応答し、腸の構成、骨形成、およびCNS再生を含めたいくつかの組織発生過程を調節する(Crosnier et al., 2006, Nat Rev Genet, 7:349-59; Mundy & Elefteriou., 2006, Cell, 126:441-3; Klein, 2004, Curr Opin Cell Biol, 16:580)。関心対象には、EphB2の発現または機能の改変は、腸および前立腺の新生物での侵襲性と相関していた(Kokko et al., 2006, BMC Cancer, 6:145; Batlle et al., 2005, Nature, 435:1126-30; Huusko et al., 2004, Nat Genet, 36:979-83; Kataoka et al., 2002, J Cancer Clin Oncol, 128:343-8)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのv-myb骨芽球症ウイルス癌遺伝子ホモログ(MYB)を含む。MYBは、膵臓癌における癌遺伝子として同定されており、造血発生時の細胞運命の決定にも重要な役割を果たす(Maitra et al., 2006, Best Pract Res Clin Gastroenterol, 20:211-26; Sakamoto et al., 2006, Blood, 108:896-903; Ramsay, 2005, Growth Factors, 23:253-61)。MYBの過剰発現は、低酸素および低栄養条件での生存を促進する遺伝子の発現を増加させることによって、腫瘍形成を容易にするおそれがある(Ramsay et al., 2005, Int J Biochem Cell Biol, 37:1254-68; Xu et al., 2003, Am J Physiol Cell Physiol, 284:c1262-71)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルの(MYC)を含む。Mycは、細胞周期の進行および形質転換を促進する強力な癌遺伝子であり、その過剰発現は多数の腫瘍で観察された(Vita & Henriksson, 2006, Semin Cancer Biol, 16:318-30; Wade & Wahl, 2006, Curr Top Microbiol Immunol, 302:169-203)。Mycは、核β-カテニンの標的であり、大部分の結腸腫瘍、特に突然変異APCおよび強い核β-カテニンシグナル伝達を有する腫瘍で上方制御される(Liu et al., 2006, Adv Anat Pathol, 13:270-4; Reichling et al., 2005, Cancer Res, 65:166-76)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのSRY-ボックス9(SOX9)を含む。SOX9は、器官形成時の細胞運命の決定に重要であると考えられている。特にSOX9は、軟骨形成および精巣成熟に重要な役割を果たす(Hardingham et al., 2006, J Anat, 209:469; Kobayashi et al., 2005, Ann N Y Acad Sci, 1061:9-17)。SOX9は、重要な腸陰窩分化因子であり(Blache et al., 2004, J Cell Biol, 166:37-47)、成熟絨毛細胞に通常発現されるCDX2およびMUC2遺伝子を抑制する。この様式の分化の抑制は、新形成として出現している未分化腸細胞の蓄積を促進しうる。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのセリン/トレオニンキナーゼ受容体関連タンパク質(STRAP)を含む。STRAPは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ依存的にPDK1を経由したTGF-βシグナル伝達を仲介するWD40リピートタンパク質である(Seong et al., 2005, J Biol Chem, 280:42897-908)。STRAPは、I型およびII型TGF-β受容体に阻害性Smad7タンパク質を動員することから、TGF-βシグナル伝達の抑制もまた仲介することができる(Datta & Moses, 2000, Mol Cell Biol, 20:3157-67)。結腸直腸癌でSTRAPの増幅が観察されたばかりでなく(Buess et al., 2004, Neoplasia, 6:813-20)、最近STRAPは、結腸癌の60%および肺癌の78%で上方制御される癌遺伝子として説明された(Halder et al., 2006, Cancer Res, 66:6156-66)。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのCD59を含む。CD59は、補体C8成分およびC9成分に結合することによって、補体介在性溶解を阻害する(Longhi MP, Harris CL, Morgan BP, Gallimore A. Trends Immunol. (2006) 27:102-108; Cole DS, Morgan BP. Clin Sci (Lond) (2003) 104:455-466)。この役割が原因で、CD59は反応性溶解膜阻害因子(MIRL)または膜侵襲複合体阻害因子(MACIF)としてもまた知られている。その分子量は〜19kDaであり、造血細胞および非造血細胞を含めた多様な細胞型に発現するGPI結合糖タンパク質である。近年CD59は、CD4+T細胞活性化を阻害することにより適応免疫反応を調整することが示された(Longhi MP, Harris CL, Morgan BP, Gallimore A. Trends Immunol. (2006) 27:102-108)。これらの機能の結果として、結腸癌幹細胞上のCD59の高い発現は、MHCクラスII分子による異常な抗原提示に対するT細胞反応を減少することおよび補体介在性溶解を阻止することによって細胞の生存を促進しうる(Knutson KL, Disis ML., Curr Drug Targets Immune Endocr Metabol Disord. (2005) 5:365-371)。この議論を支持することには、CD59中和抗体が存在する場合にリツキシマブ耐性を克服することができる(Cerny T, Borisch B, Introna M, Johnson P, Rose AL., Anticancer Drugs. (2002) 13 Suppl 2:S3-10)。さらに、CD59 mRNAの発現は、非転移前立腺癌細胞に比べて転移性前立腺癌細胞で高く(Loberg RD, Wojno KJ, Day LL, Pienta KJ., Urology. (2005) 66:1321-1326)、防御に有利な転移性細胞を提供しうる。最後に、哺乳動物CD59のイモリでのオルソログであるProd 1は、付属器再生時の組織パターン形成に重要な役割を果たすことが実証された(Brockes JP, Kumar A., Science (2005) 310:1919-1923)。これらの研究は、CD59が生存の増強、免疫反応の回避、および幹細胞の生物学的性質により腫瘍形成に重要な役割を有することを示唆している。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて抑制されたレベルの転写因子4(TCF4)を含む。TCF4は、エフリュッシボックス(Eボックス)結合部位を認識し、他のTCFファミリーのメンバーおよびβ-カテニンと複合した場合に転写を活性化する塩基性ヘリックスループヘリックス(bHLH)転写因子である(Barker et al., 2000, Adv Cancer Res, 77:1-24)。構成性TCF4/β-カテニン複合体は、APCの突然変異およびβ-カテニンの構成性核局在が原因で、大部分の結腸腫瘍に存在すると考えられている(Clevers, 2004, Cancer Cell, 5:5-6)。この相互作用は、MYCを含めた多数の遺伝子の調節不全および増殖表現型を招く。この複合体の破壊は増殖表現型を後退させることができるが、核におけるβ-カテニンの会合および作用に関する低下したTCF4の効果は未知である。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて抑制されたレベルのビメンチン(VIM)を含む。ビメンチンは、間葉組織に主に存在する中間径フィラメントである。良性過形成性結腸ポリープでは、ビメンチンは一貫して存在し、分化した結腸細胞のマーカーの見込みがある(Groisman et al., 2006, Histopathology, 48:431-7)。VIMは、TCF4/β-カテニン複合体の標的として同定され(Gilles et al., 2003, Cancer Res, 63:2658-64)、したがってTG細胞におけるその抑制された発現は、TCF4の低下したレベルと相関する可能性がある(上記参照)。多数の腫瘍の侵襲性および転移性表現型に伴う上皮から間葉へのスイッチが、E-カドヘリンの喪失およびビメンチン発現の増加を特徴とすることもまた関心対象である(Huber et al., 2005, Curr Opin Cell Biol, 17:1-11)。したがって、NTGプロファイルに比べて大部分のTGにおける逆の発現プロファイルは、進行侵襲性病状への進展における結腸癌幹細胞の初期段階を反映している可能性がある。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのBMPR1Aを含む。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、上昇したレベルのALDH活性を含む。
(1) BMPシグナル伝達経路および癌
骨形成タンパク質(BMP)は、形質転換成長因子-β(TGF-β)スーパーファミリーの多機能性成長因子である。TGF-β経路は、細胞増殖、接着、および分化;造血;炎症;骨格の発生および組織恒常性を含めた多数の過程を調節し、BMPシグナル伝達は心臓、神経および軟骨の発生、出生後骨形成、ならびに造血幹細胞および腸幹細胞の挙動の調節に重大な役割を果たす(Waite & Eng, 2003, Nat. Rev. Genet. 4:763; Chen et al., 2004, Growth Factors 22:233-41; He et al., 2005, Ann. N. Y. Acad. Sci. 1049:28-38)。調節解除されたTGF-βシグナル伝達は、いくつかの癌を含めた一連のヒト疾患に関連づけられており、これは、発癌が幹細胞集団による正常な発生および組織修復を制御している恒常性メカニズムを侵害することにより進行するおそれがあることを示唆している(Beachy et al., 2004, Nature 432:324)。
TGF-βファミリーのメンバーには、構造的に関係するTGF-βアイソフォーム、アクチビン、およびBMPが挙げられる。これらの分泌型サイトカインは、I型およびII型セリン/トレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体を活性化する。II型受容体キナーゼは構成的に活性で、リガンドが結合するとI型受容体をリン酸化し、サイトソルSMADタンパク質を介して下流のシグナルを活性化する。BMPは、受容体調節型SMAD1、SMAD5、およびSMAD8を介して作用し、それは、今度は共通のパートナーSMADであるSMAD4と相互作用して、転写を調節する(Waite & Eng, 2003, Nat. Rev. Genet. 4:763)。
TGF-βリガンドに対する細胞の抗分裂促進応答は、経路の構成要素が腫瘍抑制因子であり、経路の不活性化が腫瘍形成の一因であることを示唆している(Itoh et al., 2000, Eur. J. Biochem. 267:6954)。これは、Smad3欠損マウスが転移性結腸直腸癌を発生し、Smad4ヘテロ接合性マウスが悪性腸腫瘍を発生するノックアウトマウスにおいて確認され、表皮および毛包でのBmpr1の条件付き欠失は毛髪マトリックス細胞の増生を招く(Zhu et al., 1998, Cell 94:703-14; Takaku et al., 1998, Cell 92:645-56; Ming Kwan et al., 2004, Genesis 39:10-25)。ヒトでは、Smad4は膵臓癌、結腸癌、乳癌、および肺癌を含めたいくつかの癌で突然変異または不活性化されている(Hahn et al., 1996, Science 271:350-3; Schutte et al., 1996, Cancer Res. 56:2527-30)。さらに、SMAD4をコードしているマザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ4(MADH4)遺伝子およびBMP受容体IA型遺伝子(BMPR1A)での生殖細胞系突然変異は、消化管過誤腫性ポリープおよび高リスクの消化管癌を特徴とする常染色体優性癌症候群である若年性ポリポーシス症候群(JPS)の症例とそれぞれ15〜20%および20〜25%関連している(Howe et al., 1998, Science 280:1086-8; Howe et al., 2001, Nat. Genet. 28:184-7; Zhou et al., 2001, Am. J. Hum. Genet. 69:704-11)。
BMPリガンドは、通常は細胞増殖および腫瘍成長の負の調節因子として作用する(Miyazaki et al., 2004, Oncogene 23:9326-35; Nishanian et al., 2004, Cancer Biol. Ther. 3:667-75; Wen et al., 2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 26:100-6; Baada Ro et al., 2004 Oncogene 23:3024-32)が、BMP経路の活性化はある種の癌で役割を果たすことがある。BMPR1Bの発現は、エストロゲン陽性乳癌の進行および脱分化に関係付けられており(Helms et al., 2005, J. Pathol. 206:366-76)、BMPリガンドの発現は、ヒト乳癌、膵臓癌、および前立腺癌細胞の成長を促進し、癌細胞のアポトーシスおよび低酸素死を阻止することがある(Raida et al., 2005, Int. J. Oncol. 26:1465-70; Pouliot et al., 2003, 63:277-81; Kleeff et al., 1999, Gastroenterology 116:1202-16; Ide et al., 1997, Cancer Res. 57:5022-7; Chen et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:39259-63; Izumi et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:31133-41)。
BMPシグナル伝達は、血管発生および血管形成にもまた関与する。BMP-2は発生途中の腫瘍の血管新生を高め(Langenfeld & Langenfeld, 2004, Mol. Cancer Res. 2:141-9)、BMP-7は前立腺癌細胞系に血管内皮成長因子(VEGF)を誘導し、これは、骨芽転移へのBMPの寄与を示唆している(Dai et al., 2004, Cancer Res. 64:994-9)。ヒトでは、BMP受容体II型(BMPR2)遺伝子の生殖細胞系機能欠失型突然変異は、原発性肺高血圧症(PPH)として知られている常染色体優性血管障害を生む。PPHは、肺血管抵抗の持続的上昇、肺高血圧、および心不全を招く小肺動脈および細動脈の欠損を特徴とする。肺血管内皮の増殖亢進がPPHの患者で観察され、これは、一部のBMPリガンドが血管成長の抑制因子として作用しうることを示唆している(Waite & Eng, 2003, Nat. Rev. Genet. 4:763)。
結腸癌幹細胞で上方制御されるMBPR1Aの同定は、BMP経路の標的化が充実性腫瘍の形成および再発を担う腫瘍形成性細胞の排除を助けうることを示唆している。さらに、腫瘍の形成および維持に果たす血管形成の顕著な役割のために、BMP経路の標的化は、癌から栄養分を欠乏させ、その排除の一因となり、血管形成もまた阻害しうる。
本発明の他の態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのWnt受容体FZD6を含む。本発明のなお他の態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのWnt受容体FZD7を含む。
(2) Wntシグナル伝達経路および癌
Wntシグナル伝達経路は、胚のパターン形成、後胚期の組織維持、および幹細胞の生物学的性質のいくつかの重大な調節因子の一つである。さらに具体的には、Wntシグナル伝達は、幹細胞集団による自己複製を含めた細胞極性の発生および細胞運命の特定化に重要な役割を果たす。Wnt経路の未制御の活性化は、多数のヒト癌と関連し、ヒト癌では、それは腫瘍細胞の発生運命を改変してヒト癌を未分化増殖状態に維持することができる。したがって、発癌は、幹細胞による正常な発生および組織修復を制御している恒常性メカニズムを侵害することにより進行するおそれがある(Reya & Clevers, 2005, Nature 434:843; Beachy et al., (04) Nature 432:324に総説されている)。
Wntシグナル伝達経路は、ショウジョウバエ(Drosophila)発生突然変異体wingless(wg)において、およびマウスプロトオンコジーンint-1(現在のWnt1)から最初に解明された(Nusse & Varmus, 1982, Cell 31:99-109; Van Ooyen & Nusse, 1984, Cell 39:233-40; Cabrera et al., 1987, Cell 50:659-63; Rijsewijk et al., 1987, Cell 50:649-57)。Wnt遺伝子は分泌型脂質修飾糖タンパク質をコードし、そのうち19個が哺乳動物で同定された。これらの分泌型リガンドは、Frizzled(Fzd)受容体ファミリーのメンバーおよび低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質5または6(LPR5/6)からなる受容体複合体を活性化する。Fzd受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーの7回膜貫通ドメインタンパク質であり、システインリッチドメイン(CRD)またはFzdドメインとして知られている保存されたシステイン10個を有する大きな細胞外N末端リガンド結合ドメインを有する。異なるFzd CRDは、特定のWntに対して異なる結合親和性を有し(Wu & Nusse, 2002, J. Biol. Chem. 277:41762-9)、Fzd受容体は、カノニカルβ-カテニン経路を活性化するものおよび下記の非カノニカル経路を活性化するものに分類された(Miller et al., 1999, Oncogene 18:7860-72)。FZD6およびFZD7は、同定された10個のヒトWnt受容体のうちの二つである。LRP5/6は、四つの細胞外EGF様ドメインがFzdおよびリガンドの結合に寄与する6個のYWTDアミノ酸リピートにより分離されている1回膜貫通タンパク質である(Johnson et al., 2004, J. Bone Mineral Res 19:1749)。
受容体の結合の際に活性化されるカノニカルWntシグナル伝達経路は、Fzd受容体と直接相互作用する細胞質タンパク質Dishevelled(Dsh)により仲介され、細胞質でのβ-カテニンの安定化および蓄積をもたらす。Wntシグナルの非存在下では、β-カテニンは、腫瘍抑制タンパク質である腺腫性大腸ポリポーシス(APC)およびオーキシンを含む細胞質分解複合体に局在する。これらのタンパク質は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)-3βにβ-カテニンと結合させてそれをリン酸化させる重大な足場として機能し、ユビキチン/プロテアソーム経路を介した分解のためにβ-カテニンをマークする。Dshの活性化は、GSK3βのリン酸化および分解複合体の解離をもたらす。次に、蓄積した細胞質β-カテニンは核に輸送され、そこでβ-カテニンはTcf/LefファミリーのDNA結合タンパク質と相互作用して転写を活性化する。
カノニカルシグナル伝達経路に加えて、Wntリガンドはまた、β-カテニン非依存性経路も活性化する(Veeman et al., 2003, Dev. Cell 5:367-77)。非カノニカルWntシグナル伝達は多数の過程に関係付けられているが、最も説得力のあることにはショウジョウバエ平面内細胞極性(PCP)経路に類似したメカニズムを介した原腸形成運動に関係付けられている。非カノニカルWntシグナル伝達の他の可能性のあるメカニズムには、カルシウムの流動、JNK、ならびに低分子量Gタンパク質およびヘテロ三量体Gタンパク質の両方を含む。カノニカルおよび非カノニカル経路の間で拮抗が見られることが多く、いくつかの根拠は、非カノニカルシグナル伝達が癌の形成を抑制する可能性があることを示している(Olson & Gibo, 1998, Exp. Cell Res. 241:134; Topol et al., 2003, J. Cell Biol. 162:899-908)。
造血幹細胞(HSC)は、身体で最もよく理解されている幹細胞であり、Wntシグナル伝達は、造血幹細胞の正常な維持および白血病形質転換の両方に関係付けられている(Reya & Clevers, 2005, Nature 434:843)。HSCは、成体骨髄内のストーマのニッチに定住する稀少な細胞集団である。これらの細胞は、独特の遺伝子発現プロファイルおよび造血系全体を再構成するためにより分化した前駆細胞を絶えず生じる能力の両方を特徴とする。HSCおよびそれらの間質微小環境の細胞の両方はWntリガンドを発現し、Wnt受容体活性化はインビボのHSCに存在する。さらに、β-カテニンおよび精製Wnt3Aの両方はインビトロでマウスHSCの自己複製を促進し、HSCがインビボで造血系を再構成する能力を高めるが、一方でWnt5Aはインビトロでヒト造血前駆細胞の増大およびNOD-SCID異種移植モデルで再増殖を促進する(Reya et al., 2003, Nature 423:409-14; Willert et al., 2003, Nature 423:448-52; Van Den Berg et al., 1998, Blood 92:3189-202; Murdoch et al., 2003, PNAS 100:3422-7)。
さらに最近では、Wntシグナル伝達は、骨髄系列およびリンパ系列の両方の発癌性成長に役割を果たすことが見出された。例えば、慢性骨髄性白血病由来の顆粒球マクロファージ前駆細胞(GMP)は、活性化Wntシグナル伝達を示し、この前駆細胞は成長および複製をこのシグナル伝達に依存している(Jamieson et al., 2004, N. Engl. J. Med. 351:657-67)。そして、白血病はWnt経路の内部に突然変異を有さないと思われるが、オートクリンおよび/またはパラクリンWntシグナル伝達は、癌性自己複製を持続させるおそれがある(Reya & Clevers 2005, Nature 434:843)。
カノニカルWntシグナル伝達経路は、小腸および結腸における幹細胞集団の維持に中心的な役割もまた果たし、この経路の不適切な活性化は、結腸直腸癌に顕著な役割を果たす(Reya & Clevers, 2005, Nature 434:843)。腸の吸収上皮は、配列して絨毛および陰窩になる。幹細胞は陰窩に定住し、ゆっくりと分裂し、迅速増殖性細胞を生み、その細胞は陰窩から移動して腸絨毛を占有する分化した細胞集団の全てを生じる。Wntシグナル伝達カスケードは、陰窩-絨毛の軸に沿った細胞運命の制御に支配的な役割を果たし、幹細胞集団の維持に不可欠である。相同組換えによるTcf7/2の遺伝子欠失(Korinek et al., 1998, Nat. Genet. 19:379)または強力な分泌型Wntアンタゴニスト(Pinto et al., 2003, Genes Dev. 17:1709-13; Kuhnert et al., 2004, PNAS 101:266-71)であるDickkopf-1(Dkk1)の過剰発現のいずれかによるWntシグナル伝達の破壊は、腸幹細胞集団の枯渇を招く。
結腸直腸癌は、通常Wntシグナル伝達カスケードにおける突然変異を活性化することによって開始される。全ての結腸直腸癌の約5〜10%が遺伝性で、主要な形態の一つは家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)であり、FAPは、罹患した個体の約80%が大腸腺腫性ポリポーシス(APC)遺伝子に生殖系列突然変異を有する常染色体優性疾患である。突然変異はまた、オーキシンおよびβ-カテニンを含めた他のWnt経路の構成要素でも同定されている。個別の腺腫は2番目の不活性化された対立遺伝子を有する上皮細胞のクローン性成長であり、FAP腺腫の多数は、癌遺伝子および/または腫瘍抑制遺伝子における付加突然変異により必然的に腺癌の発生を招く。さらに、APCおよびβ-カテニンにおける機能獲得型突然変異を含めたWntシグナル伝達経路の活性化は、マウスモデルにおいて増生の発生および腫瘍の成長を誘導することができる(Oshima et al., 1997, Cancer Res. 57:1644-9; Harada et al., 1999, EMBO J. 18:5931-42)。
癌におけるWntシグナル伝達にとっての役割は、マウスウイルスを近くに挿入することにより形質転換された乳腺腫瘍における癌遺伝子としてのWnt1(当初はint1)の同定で最初に明らかにされた(Nusse & Varmus, 1982, Cell 31:99-109)。乳癌におけるWntシグナル伝達の役割についての追加の根拠は、それ以来蓄積した。例えば、乳腺でのβ-カテニンのトランスジェニック過剰発現は、増生および腺癌を招く(Imbert et al., 2001, J. Cell Biol. 153:555-68; Michaelson & Leder, 2001, Oncogene 20:5093-9)が、Wntシグナル伝達の欠如は正常な乳腺の発生を損なう(Tepera et al., 2003, J. Cell Sc. 116:1137-49; Hatsell et al., 2003, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia 8:145-58)。さらに最近では、乳腺幹細胞はWntシグナル伝達により活性化されることが示された(Liu et al., 2004, PNAS 101:4158)。ヒト乳癌では、β-カテニンの蓄積は50%を超える癌腫における活性化されたWntシグナル伝達と関係し、特定の突然変異は同定されていないが、Frizzled受容体の発現の上方制御が観察された(Brennan & Brown, 2004, J. Mammary Gland Neoplasia 9:119-31; Malovanovic et al., 2004, Int. J. Oncol. 25:1337-42)。
本発明の他の態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルの癌胎児抗原関連細胞接着分子6(CEACAM6;CD66c;NCA)を含む。CEACAM6は、細胞間相互作用を仲介すると考えられる、高等霊長類に見出されるグリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである(Yasui et al., 2004 Cancer Sci 95:385-92)。CEACAM6は結腸で主に発現され、結腸においてCEACAM6は、幹細胞が定住していると考えられる結腸陰窩におけるTCF-1転写因子の潜在的標的である(Scholzel et al., 2000, Am. J. Pathol. 156:595-605; Liebig et al., 2005, Cancer Lett. 223:159-67; Roose et al., 1999, 285:1923-6)。CEACAM6の発現は、好中球でも同定された。しかし、CEACAM5(これも結腸癌幹細胞において増加した発現を示す)などのファミリーの他のメンバーはCEACAM1を介してNK細胞にNK細胞阻害相互作用を仲介するが、CEACAM6はこの活性を有するとは思われない(Market et al., 2004, J. Immunol. 173:3732-9)。
CEACAM6は、結腸直腸癌および膵臓癌を含めたいくつかの消化器悪性腫瘍で過剰発現し(Yasui et al., 2004 Cancer Sci 95:385-92)、この発現は、高率の癌幹細胞が定住すると考えられる侵襲性(通常は未分化の)腫瘍と相関する(Kodera et al., 1993, Br. J. Cancer 68:130-6; Ilantzis et al., 2002, Neoplasia 4:151-63)。CEACAM6の発現は、浸潤の前部でもまた最高であり(Liebig et al., 2005, Cancer Lett. 223:159-67)、そこもまた、結腸腫瘍内の癌幹細胞が定住すると考えられる位置である。過形成性ポリープおよび初期腺腫におけるCEACAM6の発現の上方制御は、結腸直腸腫瘍に至る最も初期に観察できる分子事象の一つにあたり(Yasui et al., 2004 Cancer Sci 95:385-92)、独立したマーカーとしてのCEACAM6の発現は、全生存率および無病生存率の不良を予測する(Jantscheff et al., 2003, J. Clin. Oncol. 21:3638-46)。CEACAM6の異所性発現は、インビトロ足場依存性成長(すなわち生存)および大きいインビボ転移能を容易にする(Duxbury et al., 2004, Oncogene 23:465-73)。さらに、化学療法抵抗性膵臓癌細胞系におけるsiRNAによるCEACAM6遺伝子発現の抑制は、それらの細胞を化学療法およびアノイキスに感受性にし、インビボで肝臓転移を防止する(Whang et al., 2005, Annals of Surgery 240:667)。化学療法およびアノイキスへの抵抗性は、全てインテグリンシグナル伝達の下流の伝達物質である、c-Src、FAK、およびAktにより仲介されると思われ、これは、CEACAM6とインテグリンとの間の応答を示唆している(Duxbury et al., 2004. Biochem Biophys. Res. Commun. 317:133-141; Duxbury et al., 2004, J. Biol. Chem. 279:23176-82)。興味深いことに、インテグリンの発現は非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて腫瘍形成性結腸腫瘍細胞で有意に高く、Srcファミリーキナーゼファミリーのメンバーを含めたインテグリンシグナル伝達のいくつかの伝達物質でも同様である。高レベルのCEACAM6はインテグリンと協調して非カノニカルなβ-カテニン活性化を刺激し、潜在的にWntおよびFrizzled受容体を介したカノニカルなβ-カテニン活性化の必要性を回避している可能性がある。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのNotch2を含む。他の態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのNotchリガンドJAG1を含む。他の態様では、結腸癌幹細胞の発現は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて上昇したレベルのHES1およびHES6を含み、HES1およびHES6はNotchシグナル伝達経路の標的遺伝子である。結腸癌幹細胞において上方制御されるNotch2、JAG1、Hes1、およびHes6の同定は、結腸癌幹細胞の生物学的性質および癌に果たすNotchシグナル伝達の役割を示唆している。
(3) Notchシグナル伝達経路および癌
Notchシグナル伝達経路は、胚のパターン形成、後胚期の組織維持、および幹細胞の生物学的性質のいくつかの重大な調節因子の一つである。さらに具体的には、Notchシグナル伝達は、隣接細胞の細胞運命同士の側方阻害の過程に関与し、非対称細胞分裂時の細胞運命の決定に重要な役割を果たす。未制御のNotchシグナル伝達は多数のヒト癌と関連し、ヒト癌では、Notchシグナル伝達は腫瘍細胞の発生運命を改変してヒト癌を未分化増殖状態に維持することができる(Brennan and Brown, 2003, Breast Cancer Res. 5:69)。したがって、発癌は、幹細胞集団による正常の発生および組織修復を制御している恒常性メカニズムを不法使用することにより進行するおそれがある(Beachy et al., 2004, Nature 432:324)。
Notch受容体は、ハプロ不全が羽根の縁に切れ込みをもたらす一方で、機能喪失が胚性致死「神経原性」表現型(上皮の細胞の運命が神経組織に切り替わる)を生じるショウジョウバエ突然変異体で最初に同定された(Moohr, 1919, Genet. 4:252; Poulson, 1937, PNAS 23:133; Poulson, 1940, J. Exp. Zool. 83:271)。Notch受容体は、大きな細胞外ドメイン内に多数のタンデム上皮成長因子(EGF)様リピートおよびシステインリッチNotch/LIN-12リピートを有する1回膜貫通受容体である(Wharton et al., 1985, Cell 43:567; Kidd et al., 1986, Mol. Cell Biol. 6:3094; Artavanis-Tsakonas et al., 1999, Science 284:770の総説)。四つの哺乳動物Notchタンパク質が同定され、これらの受容体での突然変異は発生異常および下に詳述するいくつかの癌を含めたヒト病態を一定に招く(Gridley, 1997, Mol. Cell Neurosci. 9:103; Joutel & Tournier-Lasserve, 1998, Semin. Cell Dev. Biol. 9:619-25)。
Notch受容体は、Delta, Serrated, Lag-2(DSL)ファミリーの1回膜貫通リガンドによって活性化される。哺乳動物には、細胞外ドメイン内のDSLドメインおよびタンデムEGF様リピートを特徴とする五つの公知のNotchリガンドがある:Delta様1(Dll1)、Delta様3(Dll3)、Delta様4(Dll4)、Jagged 1、およびJagged 2。Notch受容体の細胞外ドメインは、典型的には隣接細胞上のNotchリガンドの細胞外ドメインと相互作用し、一つはADAMプロテアーゼにより仲介される細胞外、一つはガンマセクレターゼにより仲介される膜貫通ドメインの二つにNotchのタンパク質分解性切断をもたらす。この後者の切断によりNotch細胞内ドメイン(NICD)が産生し、次に、これは核に入り、核ではNICDは、主な下流のエフェクターとしてCBF1, Suppressor of Hairless [Su(H)], Lag-2(CSL)ファミリーの転写因子(すなわちRBP-J)を活性化し、HairyおよびEnhancer of Split[E(spl)]ファミリーの核塩基性ヘリックスループヘリックス転写因子の転写を増加させる(Artavanis-Tsakonas et al., 1999, Science 284:770; Brennan and Brown, 2003, Breast Cancer Res. 5:69; Iso et al., 2003, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23:543)。
造血幹細胞(HSC)は、身体で最もよく理解されている幹細胞であり、Notchシグナル伝達は、造血幹細胞の正常な維持および白血病形質転換の両方に関係付けられている(Kopper & Hajdu, 2004, Pathol. Oncol. Res. 10:69-73)。HSCは、成体骨髄内のストーマのニッチに定住する稀少な細胞集団である。これらの細胞は、独特の遺伝子発現プロファイルおよび造血系全体を再構成するためにより分化した前駆細胞を絶えず生じる能力の両方を特徴とする。HSCおよび前駆細胞におけるNotch1シグナル伝達の構成性活性化は、インビボおよび長期再構成アッセイでリンパ系細胞および骨髄系細胞の両方を産生する不死化細胞系を樹立し(Varnum-Finney et al., 2000, Nat. Med. 6:1278-81)、Jagged 1の存在は、HSCが濃縮されたヒト骨髄細胞集団の生着を増大させる(Karanu et al., 2000, J. Exp. Med. 192:1365-72)。さらに最近では、Notchシグナル伝達はインビボのHSCにおいて実証され、HSCの分化の阻害に関与することが示された。さらに、Notchシグナル伝達はWnt介在性のHSC自己複製に必要と思われる(Duncan et al., 2005, Nat. Immunol. 6:314)。
Notchシグナル伝達経路が神経幹細胞の維持にもまた中心的な役割を果たすことは、神経幹細胞の正常な維持および脳腫瘍の両方に関係付けられている(Kopper & Hajdu, 2004, Pathol. Oncol. Res. 10:69-73; Purow et al., 2005, Cancer Res. 65:2353-63; Hallahan et al., 2004, Cancer Res. 64:7794-800)。神経幹細胞は、発生時に哺乳動物神経系の全てのニューロン細胞およびグリア細胞を生じ、さらに最近では成体の脳において同定された(Gage, 2000, Science 287:1433-8)。Notch1;Notch標的遺伝子であるHes1、Hes3、およびHes5;ならびにNotchシグナル伝達の調節因子であるプレセニリン1(PS1)を欠損したマウスは、減少した数の胚性神経幹細胞を示す。さらに、成体神経幹細胞は、PS1ヘテロ接合性マウスの脳では低下している(Nakamura et al., 2000, J. Neurosci. 20:283-93; Hitoshi et al., 2002, Genes Dev. 16:846-58)。神経幹細胞の減少は、それらの細胞がニューロンへの早すぎる分化に起因すると思われ(Hatakeyama et al., 2004, Dev. 131:5539-50)、Notchシグナル伝達が神経幹細胞の分化と自己複製を調節することを示唆している。
消化管では、幹細胞集団の維持および陰窩-絨毛の軸に沿った細胞運命の制御に主要な役割を果たすと思われるのは、Wntシグナル伝達経路である。さらに、Wnt経路の不適切な活性化は結腸直腸癌に顕著な役割を果たす(Reya & Clevers,.2005, Nature 434:843)。ここでNotchシグナル伝達は幹細胞から非分泌性腸吸収細胞への分化を阻害して腸内分泌細胞および杯細胞を含めた分泌細胞型への分化を促進することに関与し(Schonhoff et al., 2004, Endocrinol. 145:2639-44)、新しい根拠は、Notchシグナル伝達が幹細胞の維持にもまた必要でありうることを示唆している(van Es et al., 2005, Nature, 435:959)。具体的には、腸上皮でのNotch細胞内ドメインのトランスジェニック発現によるNotchシグナル伝達の活性化は、分泌細胞の分化を遮断し、前駆細胞集団を増大させる(Fre et al., 2005, Nature 435)。逆に、腸における共通Notch活性化転写因子CSL/RBP-Jの条件付き欠失またはガンマセクレターゼ阻害剤を用いた処理は、その両方がにNotchシグナル伝達を打ち消すが、増殖性陰窩細胞から杯細胞への迅速で大規模な変換を招き、ガンマセクレターゼ阻害剤は、結腸癌のマウスモデルにおいて増殖性腺腫細胞を有糸分裂後の杯細胞に変換することもまたできた(van Es et al., 2005, Nature, 435:959)。さらに、Notchで活性化されたHairyおよびEnhancer of Split[E(spl)]ファミリー転写因子であるHes6は、増殖性細胞ドメインに発現しており、CSL/RBP-Jの非存在下では欠如する。これは、Hes6が腸上皮細胞運命の決定およびNotch下流の幹細胞の維持を調節できることを示唆している(van Es et al., 2005, Nature, 435:959)。Hes6は、結腸転移ならびに肺、乳房、および腎臓由来の原発腫瘍の両方で上方制御される遺伝子として同定された(Swearingen et al., 2003, Cancer Lett. 198:229-39)。本発明による、結腸癌幹細胞として、したがって結腸癌幹細胞マーカーとしてのHes6の上方制御の同定は、結腸癌の特徴付け、診断、および処置におけるHes6の使用を示唆している。
(4) アルデヒドデヒドロゲナーゼ
細胞内アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)酵素は、アルデヒドをカルボン酸に酸化し、エタノールおよびアミンの異化、ならびにビタミンAからレチノイン酸への変換を含む様々な触媒過程を行う(Labrecque J, Bhat PV, Lacroix A., Biochem Cell Biol. (1993) 71:85-89; Russo JE, Hilton J., Cancer Res. (1988) 48:2963-2968)。高レベルのALDH酵素は、腫瘍細胞の移植片を一掃する手順において造血幹細胞(HSC)および腸陰窩細胞をシクロホスファミド(CPA)の細胞毒性効果から防御する(Colvin OM, Pharmacological Purging of the Bone Marrow (2d ed.) Blackwell Sciences Inc. (1999); Russo JE, Hilton J, Colvin OM, Prog. Clin. Biol. Res. (1989) 290:65-79)。HSCでの高いALDH活性が原因で(Kastan MB, Schlaffer E, Russo JE, Colvin OM, Civin CI, Hilton J, Blood (1990) 75:1947-1950)、蛍光ALDH基質は、HSCの精製に利用することができる(Storms RW, Trujillo AP, Springer JB, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (1999) 96:9118-9123)。具体的には、BODIPYコンジュゲートアミドアセトアルデヒドからなる無毒性ALDH基質であるAldefluor(商標)(StemCo Biomedical; Durham, NC)は、Aldefluor(商標)蛍光のALDH依存性増加とHSCおよび神経幹細胞などの幹細胞集団の低側方散乱特性との組み合わせにより、蛍光活性化細胞選別(FACS)と併用することができる(Cai J, Cheng A, Luo Y, et al., J, Neurochem. (2004) 88:212-226)。
ヒトは19個のALDHファミリーメンバーの遺伝子を有する。Aldefluor(商標)のプロセシングが可能なALDHファミリーメンバーの遺伝子産物の正確なレパートリーは不明なままであるが、ALDH1はAldefluor(商標)の基質と考えられ、ALDH1のmRNAレベルおよびタンパク質レベルはCPAに対する抵抗性と相関する(Magni M, Shammah S, Schiro R, Mellado W, Dalla-Favera R, Gianni AM., Blood (1996) 87:1097-1103; Moreb JS, Turner C, Sreerama L, Zucali JR, Sladek NE, Schweder M., Leuk. Lymphoma (1995) 20:77-84; Quash G, Fournet G, Chantepie J, et al., Biochem. Pharmacol. (2002) 64:1279-1292; Sladek NE, Kollander R, Sreerama L, Kiang DT. Cancer Chemother. Pharmacol. (2002) 49:309-321; Yang XW, Wang W, Fu JX, et al., Zhongguo Shi Yan Xue Ye Xue Za Zhi. (2002) 10:205-208)。手順上では、FACSにより観察されるAldefluor(商標)蛍光でのALDH特異的増加は、ALDHの競合的阻害剤であるジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)を含有する対照に対して判定する。DEABを伴う最近の研究は、HSCの運命の判定に果たすALDH酵素にのっての重要な役割、そして具体的にはHSCの分化が細胞内ALDHにより発生するレチノイン酸を必要とすることを示唆している(Chute JP, Muramoto GG, Whitesides J, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (2006) 103:11707-12。
追加の充実性腫瘍幹細胞性癌マーカーは、例えば、下の実施例2に記載される方法を使用して同定することができる。
本発明は、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて結腸癌幹細胞で上方制御される結腸癌幹細胞マーカーを最初に同定している。これらのマーカーは、腫瘍における結腸癌幹細胞の同定および定量に基づき診断、予後を提供するため、および/または治療法を選択するために、ならびに診断、予後、および/または治療法を経時的にモニターするために使用することができる。患者が重大な数の結腸癌幹細胞を有する腫瘍を有することが公知ならば、より少ない数の結腸癌幹細胞を有する腫瘍よりもより攻撃的な治療アプローチを正当化することができる。例えば、リンパ節に疾患の根拠がない患者(リンパ節陰性患者)では、腫瘍の外科的除去の後に化学療法(アジュバント療法)を施行するかどうかに関して決断しなければならない。一部の患者はそのような処置から利益を受けると思われるが、化学療法は重大な副作用を有し、ほとんど癌幹細胞を有さない腫瘍を有する患者は化学療法をむしろ避けてもよい。現在はどの患者が利益を受けるかを予測することは困難または不可能である。患者における癌幹細胞数を検出および定量することは、この決定を助けることができる。さらに、本発明の結腸癌幹細胞マーカーを検出することは、腫瘍の進行に関する情報を提供することができる。腫瘍が進行するときにその腫瘍の表現型の性質が変化しうることは周知である。したがって、本発明は、治療に応答して、または治療の欠如に応答してのいずれかで、結腸腫瘍が少数の結腸癌幹細胞を有することから多数を有するまで(またはその逆に)漸進的に変化する可能性を企図している。したがって、結腸癌幹細胞マーカーの検出は、そのような進行を検出して結果的に治療法を改変するために使用することができる。
ある種の治療法に応答する腫瘍もあれば、応答しない腫瘍もあることは周知である。現在のところ処置の前に特定の腫瘍が所与の治療剤に応答する見込みを判定するために使用できる情報はほとんどない。多数の化合物が抗腫瘍活性について検査されてきたが、それらは、わずかな率の腫瘍だけに有効と考えられている。どの腫瘍が所与の薬剤に応答するかを予測することが現在不可能なことから、これらの化合物は市販の治療薬に開発されなかった。この問題は、現行の腫瘍分類法に限界があるという事実を反映している。しかし、本発明は、癌幹細胞マーカーの存在に基づき腫瘍を特徴付け、したがって所与の薬剤に対する応答の見込みを大きくする可能性を提供する。様々な薬剤で治療を受けた患者から得られた組織試料を有する腫瘍試料アーカイブは、そのような治療法の結果に関する情報と共に利用することができる。一般に、当該アーカイブは、パラフィンブロックに包埋された腫瘍試料からなる。これらの腫瘍試料による本発明の結腸癌幹細胞マーカーポリペプチドの発現について、これらの腫瘍試料を分析することができる。例えば、そのポリペプチドに結合する抗体を使用して免疫組織化学法を行うことができる。または、これらの腫瘍試料による本発明の結腸癌幹細胞マーカーのポリヌクレオチドの発現により、これらの腫瘍試料を分析することができる。例えば、腫瘍試料からRNAを抽出し、RT-PCRを使用して結腸癌幹細胞マーカーのmRNAを定量的に増幅させることができる。次に、結腸癌幹細胞マーカーの発現を、治療に対する腫瘍の応答と関連づけることによって、結腸癌幹細胞に対して優れた有効性を示す特定の化合物を同定することが可能である。いったん当該化合物を同定すれば、これらの化合物を使用して追加の臨床試験のための患者を選択することが可能であろう。選択された患者群に行われる当該臨床試験は、有効性を実証する見込みが高い。したがって、本明細書に提供される試薬は、後ろ向き試験および前向き試験の両方に有益である。
本発明のある態様では、結腸癌幹細胞マーカーは、例えば癌の処置のための小分子、siRNA、および抗体を含めた先導化合物を試験および評価するために実験的に使用することができる。例えば患者由来の腫瘍細胞を結腸癌幹細胞についてスクリーニングし、次に本明細書に記載される異種移植モデルに移植し、そして例えば本明細書に記載される一つまたは複数の結腸癌幹細胞マーカーに対する抗体などの被験化合物の効果を、腫瘍の成長および生存に及ぼす効果について検査することができる。さらに、癌幹細胞の標的化に及ぼすその治療法の有効性を評価するために結腸癌幹細胞の数を処置後に判定し、将来の処置様式を案内するために使用することができる。
充実性腫瘍幹細胞性癌マーカーの検出
いくつかの態様では、本発明は、幹細胞性癌マーカー(例えば、乳癌幹細胞性癌マーカー)の発現の検出のための方法を提供する。いくつかの態様では、発現は直接測定される(例えばRNAまたはタンパク質レベルで)。いくつかの態様では、発現は組織試料(例えば生検試料)から検出される。他の態様では、発現は体液(例えば、非限定的に含めた血漿、血清、全血、粘液、および尿)から検出される。本発明は、マーカーの検出のためのパネルおよびキットをさらに提供する。いくつかの態様では、幹細胞性癌マーカーの存在は、対象に予後を提供するために使用される。提供される情報は、処置のクールを指示するためにもまた使用される。例えば、対象が充実性腫瘍幹細胞を示すマーカーを有することが見出されたならば(例えば表4〜9参照)、追加の治療法(例えばホルモン療法または放射線療法)は、その治療法が有効である見込みの高い初期の時点で(例えば転移前に)開始することができる。さらに、対象がホルモン療法に応答しない腫瘍を有することが見出されたならば、当該治療法の出費と不自由を避けることができる。
本発明は、上記マーカーに限定されない。癌または癌の進行と相関する任意の適切なマーカーを利用することができる。追加のマーカーもまた本発明の範囲内に考えられる。任意の適切な方法を利用して、例示的な下の実施例4に記載される方法を非限定的に含めた本発明の方法への使用に適した癌マーカーを同定しおよび特徴付けることができる。例えば、いくつかの態様では、本発明の遺伝子発現マイクロアレイ法を使用して充実性腫瘍幹細胞で上方制御または下方制御されると同定されたマーカーは、組織マイクロアレイ、免疫組織化学法、ノーザンブロット分析、siRNAまたはアンチセンスRNA阻害、突然変異分析、臨床転帰を用いた発現の研究、および本明細書に開示する他の方法を使用してさらに特徴付けられる。
いくつかの態様では、本発明は、複数のマーカーを分析するためのパネルを提供する。このパネルは、発癌および/または転移と関連付けながら複数のマーカーの同時分析を可能にする。対象に応じて、可能性のある最良の診断および予後を提供するために、パネルを単独または組み合わせて分析することができる。パネルに含めるマーカーは、下の例示的な実施例に記載される方法を非限定的に含めた任意の適切な方法を使用して、マーカーの予測価値についてスクリーニングすることによって選択される。
1. RNAの検出
いくつかの態様では、充実性腫瘍幹細胞性癌マーカー(例えば表4〜9に開示するマーカーを非限定的に含む)の検出は、組織試料(例えば乳癌組織)中の対応するmRNAの発現を測定することにより検出される。mRNAの発現は、下に開示する方法を非限定的に含めた任意の適切な方法により測定することができる。
いくつかの態様では、RNAは、ノーザンブロット分析により検出される。ノーザンブロット分析は、RNAの分離および相補的標識プローブのハイブリダイゼーションを伴う。
なおさらなる態様では、RNA(または対応するcDNA)は、オリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションにより検出される)。ハイブリダイゼーションおよび検出のための様々な技法を使用した様々なハイブリダイゼーションアッセイを利用することができる。例えば、いくつかの態様では、TaqManアッセイ(PE Biosystems, Foster City, CA;例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,962,233号および第5,538,848号を参照されたい)が利用される。このアッセイはPCR反応の間に行われる。TaqManアッセイは、AMPLITAQ GOLD DNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を利用する。5'-レポーター色素(例えば蛍光色素)および3'-クエンチャー色素を有するオリゴヌクレオチドからなるプローブがPCR反応に含められる。PCRの間に、プローブがその標的に結合しているならば、AMPLITAQ GOLDポリメラーゼの5'-3'核酸分解活性はレポーター色素とクエンチャー色素との間でプローブを切断する。クエンチャー色素からのレポーター色素の分離は、蛍光の増加をもたらす。シグナルはPCRの各サイクルと共に蓄積し、蛍光計でモニターすることができる。
なお他の態様では、逆転写酵素PCR(RT-PCR)を使用してRNAの発現を検出する。RT-PCRでは、RNAは、逆転写酵素を使用して相補的DNAすなわち「cDNA」に酵素的に変換される。次に、そのcDNAをPCR反応のテンプレートとして使用する。PCR産物は、ゲル電気泳動およびDNA特異的染料または標識プローブへのハイブリダイゼーションを用いた染色を非限定的に含めた任意の適切な方法により検出することができる。いくつかの態様では、米国特許第5,639,606号、第5,643,765号、および第5,876,978号(各特許は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている競合テンプレート法の標準混合物を用いた定量逆転写酵素PCRが利用される。
2. タンパク質の検出
他の態様では、幹細胞性癌マーカーの遺伝子発現は、対応するタンパク質またはポリペプチドの発現を測定することにより検出される。タンパク質の発現は、任意の適切な方法により検出することができる。いくつかの態様では、タンパク質は免疫組織化学法により検出される。他の態様では、タンパク質は、そのタンパク質に対して産生された抗体へのそのタンパク質の結合により検出される。抗体の産生は下に記載する。
抗体の結合は、当技術分野において公知の技法(例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチューイムノアッセイ(例えば金コロイド、酵素、または放射性同位体標識を使用したもの)、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ等)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ等により検出される。
一つの態様では、抗体の結合は、一次抗体上の標識を検出することによって検出される。別の態様では、一次抗体は、一次抗体への二次抗体または試薬の結合を検出することによって検出される。さらなる態様では、二次抗体は標識されている。イムノアッセイで結合を検出するための多数の方法が当技術分野で公知であり、それらの方法は本発明の範囲内に属する。
いくつかの態様では、自動化検出アッセイが利用される。イムノアッセイの自動化のための方法には、米国特許第5,885,530号、第4,981,785号、第6,159,750号、および第5,358,691号に記載されている方法があり、各方法は参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様では、結果の解析および提示もまた自動化される。例えば、いくつかの態様では、癌マーカーに対応する一連のタンパク質の存在または非存在に基づき予後を生成するソフトウェアが利用される。
他の態様では、米国特許第5,599,677号および第5,672,480号に記載されているイムノアッセイであり、各アッセイは参照により本明細書に組み入れられる。
3. cDNAマイクロアレイ技法
cDNAマイクロアレイは、顕微鏡用スライドガラスなどの固体支持体上の公知の位置にスポットされた(通常はロボットスポット装置を使用して)複数の(通常は数千の)異なるcDNAからなる。このcDNAは、典型的にはプラスミドのベクター骨格部分に相補的な、または配列が公知の遺伝子についてはその遺伝子自体に相補的なプライマーを使用したプラスミドライブラリー挿入物のPCR増幅により得られる。マイクロアレイの産生に適したPCR産物は、典型的には長さ0.5から2.5kBの間である。完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、または対象となるライブラリーからランダムに選択されたcDNAを選択することができる。ESTは、例えばHillier, et al., 1996, 6:807-828に記載されているように部分的に配列決定されたcDNAである。一部のESTは公知の遺伝子に対応するが、少量の3'および/または5'配列と、可能性があることにはそのESTが得られたmRNAの起源組織とを除き、任意の特定のESTに関して多くの場合ほとんどまたは全く情報が得られない。当業者には認識されるように、一般にcDNAは、ヒトゲノム内の遺伝子を独特に同定するために十分な配列情報を有する。さらに、一般にcDNAは、実験のハイブリダイゼーション条件で単一遺伝子由来のmRNAから得られたcDNAに選択的、特異的、または独特にハイブリダイズするために十分な長さである。
典型的なマイクロアレイ実験では、マイクロアレイは二つの異なる試料由来の、差次的に標識されたRNA、DNA、またはcDNA集団とハイブリダイズされる。通常、RNA(総RNAまたはポリA+ RNAのいずれか)を対象となる細胞または組織から単離し、逆転写し、cDNAを得る。標識は、通常は反応混合物に標識ヌクレオチドを混合することにより、逆転写の間に行われる。様々な標識を使用することができるが、通常、ヌクレオチドを蛍光色素Cy3またはCy5とコンジュゲートする。例えば、Cy5-dUTPおよびCy3-dUTPを使用することができる。ある試料由来のcDNA(例えば特定の細胞型、組織型、または成長状態に相当する)を一つの発蛍光団で標識し、第二の試料由来のcDNA(例えば異なる細胞型、組織型、または成長状態に相当する)を第二の発蛍光団で標識する。二つの試料からの類似量の標識物質をマイクロアレイに同時ハイブリダイズする。試料がCy5(赤色蛍光を発する)およびCy3(緑色蛍光を発する)で標識されているマイクロアレイ実験の場合、一次データ(蛍光強度を定量的に検出することができる検出器を使用してマイクロアレイをスキャンすることによって得られた)は、蛍光強度の比(赤色/緑色、R/G)である。これらの比は、マイクロアレイ上に提示されたcDNAにハイブリダイズするcDNA分子の相対濃度を表し、したがって、マイクロアレイ上に提示された各cDNA/遺伝子に対応するmRNAの相対発現レベルを反映する。
各マイクロアレイ実験は、数万のデータ点を提供することができ、そのそれぞれは二つの試料での特定の遺伝子の相対発現を表す。データの適切な構築および解析は特に重要で、データ解析を容易にするために、標準的な統計ツールを組み入れた様々なコンピュータープログラムが開発された。遺伝子発現データを構築するための一つの基礎は、類似の発現パターンを有する遺伝子を一緒にクラスターに群分けすることである。階層クラスター解析およびマイクロアレイ実験から得られたデータの表示を行うための方法は、Eisen et al., 1998, PNAS 95:14863-14868に記載されている。そこに記載されているように、クラスター形成は、データ点を定量的かつ定性的に表す色で各データ点を表した一次データのグラフ表示と組み合わせることができる。大きな数表からのデータを視覚形式に変換することによって、この過程はデータの直観的な解析を容易にする。数学的ツールおよび/またはクラスター形成アプローチ自体に関する追加の情報および詳細は、例えばSokal & Sneath, Principles of numerical taxonomy, xvi, 359, W. H. Freeman, San Francisco, 1963; Hartigan, Clustering algorithms, xiii, 351, Wiley, New York, 1975; Paull et al., 1989, J. Natl. Cancer Inst. 81:1088-92; Weinstein et al. 1992, Science 258:447-51; van Osdol et al., 1994, J. Natl. Cancer Inst. 86:1853-9;およびWeinstein et al., 1997, Science, 275:343-9に見出すことができる。
本発明に使用する実験方法のさらなる詳細は、実施例に見出される。マイクロアレイを製作および使用するための方法を記載している追加の情報は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,807,522号に見出すことができる。市販の部品を使用してマイクロアレイハードウェア(例えばアレイヤーおよびスキャナー)を構築するための説明は、http://cmgm.stanford.edu/pbr-own/およびCheung et al., 1999, Nat. Genet. Supplement 21:15-19に見出すことができ、これらは参照により本明細書に組み入れられる。マイクロアレイ技法、ならびに試料を調製するための、およびマイクロアレイ実験を行うためのプロトコールの追加の論考は、例えばDNA arrays for analysis of gene expression, Methods Enzymol, 303:179-205, 1999; Fluorescence-based expression monitoring using microarrays, Methods Enzymol, 306:3-18, 1999;およびM. Schena (ed.), DNA Microarrays: A Practical Approach, Oxford University Press, Oxford, UK, 1999に見出される。アレイヤーの使用方法および関連ソフトウェアの説明は、参照により本明細書に組み入れられるhttp://cmgm.stanford.edu/pbrown/mguide/arrayerHTML/ArrayerDocs.htmlに見出される。
4. データ解析
いくつかの態様では、検出アッセイにより生成した生データ(例えば所与のマーカーの存在、非存在、または量)を、臨床家に予測価値のあるデータに変換するために、コンピュータに基づく解析プログラムを使用する。臨床家は、任意の適切な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。したがって、いくつかの態様では、本発明は、遺伝学または分子生物学の素養があるとは思われない臨床家が生データを理解する必要がないというさらなる利益を提供する。データは、最も役立つ形式で臨床家に直接提示される。すると、臨床家は、対象の医療を最適にするために直ちにその情報を利用することができる
。
本発明は、アッセイを行う研究室、情報提供者、医療関係者、および対象に、およびそれらから情報を入手、処理、および伝達することができる任意の方法を企図している。例えば、本発明のいくつかの態様では、試料(例えば、生検または血清または尿試料)を対象から得て、世界の任意の地域(例えば対象が居住する国または情報が最終的に使用される国とは異なる国)にあるプロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリング会社など)に提出し、生データを生成させる。試料が組織または他の生物学的試料を含む場合、対象は医療センターを訪れ、試料を採取してもらいプロファイリングセンターに送ってもらってもよく、または対象は自分で試料を採集し、直接それをプロファイリングセンターに送ってもよい。試料が以前に判定された生物学的情報を含む場合、その情報は、対象によりプロファイリングサービスに直接送ることができる(例えば情報を有する情報カードをコンピュータでスキャンし、電子通信システムを使用してデータをプロファイリングセンターのコンピュータに送信することができる)。プロファイリングサービスにより受け取られるやいなや、試料は処理され、対象に望まれる診断情報または予後情報に特異的なプロファイル(例えば発現データ)が産生される。
次に、プロファイルデータは、処置を行う医師による判読に適した形式で用意される。例えば、発現の生データを提供する(例えば表4〜9に記載されるいくつかのマーカーを調べる)よりも、用意される形式は、特定処置の選択肢についての推奨以外に、対象についての診断またはリスク評価を表示することができる。データは任意の適切な方法により臨床家に見せることができる。例えば、いくつかの態様では、プロファイリングサービスは、(例えば医療現場で)臨床家のために印刷することができる、またはコンピュータ画面上で臨床家に見せることができる報告書を作成する。
いくつかの態様では、情報は医療現場または地域の施設で最初に解析される。次に、生データは、さらなる解析のために、および/または生データを臨床家もしくは患者に有用な情報に変換するために中央処理施設に送られる。中央処理施設は、データ解析のプライバシー(全てのデータは一貫した安全プロトコールを有する中央施設に保管される)、速度、および均一性という長所を提供する。次に、中央処理施設は、対象の処置後のデータの成り行きを管理することができる。例えば中央施設は、電子通信システム使用して、臨床家、対象、または研究者にデータを提供することができる。
いくつかの態様では、対象は、電子通信システムを使用してデータに直接アクセスすることができる。対象は、その結果に基づいてさらなる介入または助言を選択することができる。いくつかの態様では、データは研究用途のために使用される。例えば、このデータは、特定の病状または病期の有用な指標としてのマーカーの算入または除外をさらに最適化するために使用することができる。
5. キット
なお他の態様では、本発明は、癌の検出および特徴付けのための(例えば表4〜9に示す一つもしくは複数のマーカーを検出するための、または表4〜9に示す一つもしくは複数のマーカーにより発現されるペプチドの活性を調整するための)キットを提供する。いくつかの態様では、キットは、検出試薬および緩衝液に加えて癌マーカーに特異的な抗体を有する。他の態様では、キットは、mRNAまたはcDNA(例えばオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー)の検出に特異的な試薬を有する。いくつかの態様では、キットは、全ての対照、アッセイを行うための使用説明書、および結果の解析および提示のための任意の必要なソフトウェアを含めた、検出アッセイを行うために必要および/または十分な構成要素の全てを含む。
本発明の別の態様は、例えば組織試料または体液中でのα-カテニンシグネチャーなどの充実性腫瘍幹細胞遺伝子シグネチャーのポリヌクレオチドまたはタンパク質の存在を検査するためのキットを含む。キットは、例えばポリペプチドの検出のための抗体またはポリヌクレオチドまたの検出のためのプローブを含んでもよい。加えて、キットは、参照試料または対照試料;試料を処理し、検査を行い、結果を解釈するための説明書;ならびに検査を行うために必要な緩衝液および他の試薬を含んでもよい。ある態様では、キットは、α-カテニンシグネチャーの遺伝子によりコードされる一つまたは複数のタンパク質の発現を検出するための抗体パネルを含む。他の態様では、キットは、充実性腫瘍幹細胞遺伝子シグネチャーの一つまたは複数の遺伝子の発現を検出するためのプライマー対を含む。他の態様では、キットは、充実性腫瘍幹細胞遺伝子シグネチャーの一つまたは複数の遺伝子の発現を検出するためのcDNAまたはオリゴヌクレオチドアレイを含む。
6. インビボ撮像
いくつかの態様では、インビボ撮像技法は、動物(例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物)における癌マーカーの発現を描出するために使用される。例えば、いくつかの態様では、癌マーカーのmRNAまたはタンパク質は、その癌マーカーに特異的な標識抗体を使用して標識される。特異的に結合および標識された抗体は、放射性核種撮像、陽電子放射断層撮影、コンピュータ体軸断層撮影、X線または磁気共鳴影像法、蛍光検出および化学ルミネセンス検出を非限定的に含めたインビボ撮像法を使用して、個体において検出することができる。本発明の癌マーカーに対する抗体を産生させるための方法は下に記載する。
本発明のインビボ撮像法は、本発明の充実性腫瘍幹細胞性癌マーカーを発現する癌(例えば乳癌)の診断に有用である。インビボ撮像は、癌を示すマーカーの存在を描出するために使用される。当該技法は、不快な生検を使用せずに診断を可能にする。本発明のインビボ撮像法は、癌患者に予後を提供するためにもまた有用である。例えば、癌幹細胞を示すマーカーの存在を検出することができる。本発明のインビボ撮像法は、さらに身体の他の部分の転移癌を検出するために使用することができる。
いくつかの態様では、本発明の癌マーカーに特異的な試薬(例えば抗体)を蛍光標識する。標識された抗体は、対象に(例えば経口または非経口的に)導入される。経口標識抗体は、任意の適切な方法を使用して(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,198,107号に記載されている装置を使用して)検出される。
他の態様では、抗体は放射性標識する。インビボ診断のための抗体の使用は、当技術分野において周知である。Sumerdonら(Nucl. Med. Biol 17:247-254 [1990]は、標識としてインジウム111を使用した腫瘍のラジオイムノシンチグラフィー撮像のための最適化された抗体-キレート剤を記載している。Griffinら(J Clin Onc 9:631-640 [1991])は、再発結腸直腸癌を有する疑いのある患者における腫瘍の検出にこの薬剤を使用することを記載している。磁気共鳴影像のための標識として常磁性イオンを有する類似の薬剤の使用は、当技術分野において公知である(Lauffer, Magnetic Resonance in Medicine 22:339-342 [1991])。使用される標識は、選択された撮像様式に依存するものである。インジウム111、テクネチウム99m、またはヨウ素131などの放射性標識は、平面スキャンまたは単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)に使用することができる。フッ素19などの陽電子放射標識もまた、陽電子放射断層撮影(PET)に使用することができる。MRIについては、ガドリニウム(III)またはマンガン(II)などの常磁性イオンを使用することができる。
スカンジウム47(3.5日間)、ガリウム67(2.8日間)、ガリウム68(68分間)、テクネチウム99m(6時間)、およびインジウム111(3.2日間)などの、1時間から3.5日間に及ぶ半減期を有する放射性金属は、抗体とのコンジュゲーションのために利用することができる。このうち、ガリウム67、テクネチウム99m、およびインジウム111は、ガンマカメラ撮像に好ましく、ガリウム68は陽電子放射断層撮影に好ましい。
当該放射性金属を用いて抗体を標識する有用な方法は、例えばIn-111およびTc-99mについてKhawら(Science 209:295 [1980])によって、およびScheinbergら(Science 215:1511 [1982])によって記載されているように、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などの二官能性キレート剤による。他のキレート剤もまた使用することができるが、1-(p-カルボキシメトキシベンジル)EDTAおよびDTPAのカルボキシカルボニックアンハイドライドは好都合である。それは、これらのキレート剤の使用が抗体の免疫反応性に実質的に影響せずにコンジュゲーションを許すからである。
タンパク質にDPTAを結合させる別の方法は、In-111を用いたアルブミンの標識についてHnatowichら(Int. J. Appl. Radiat. Isot. 33:327 [1982])により記載されているが、抗体の標識に適用することができるDTPAの環状無水物の使用による。DPTAを用いたキレート化を使用しない、Tc-99mで抗体を標識する適切な方法は、Crockfordら(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,323,546号)の予備スズ反応(pretinning)法である。
Tc-99mで免疫グロブリンを標識する方法は、血漿タンパク質についてWongら(Int. J. Appl. Radiat. Isot., 29:251 [1978])によって記載されている方法であって、抗体の標識について最近、Wongら(J. Nucl. Med., 23:229 [1981])によってうまく適用された方法である。
特異的抗体にコンジュゲートした放射性金属の場合、抗体の免疫特異性を破壊せずに、可能な限り高い率の放射性標識をその抗体分子に導入することが同じく理想的である。本発明の特異的幹細胞性癌マーカーの存在下で放射性標識を行うことによって、さらなる改善を実現し、抗体上の抗原結合部位が保護されることを保障することができる。
なおさらなる態様では、インビボ生物フォトンイメージング(Xenogen, Almeda, CA)が、インビボ撮像のために利用される。このリアルタイムインビボ撮像はルシフェラーゼを利用する。ルシフェラーゼ遺伝子は、(例えば本発明の癌マーカーとの融合タンパク質として)細胞、微生物、および動物に導入される。活性な場合、この遺伝子は発光する反応を誘導する。CCDカメラおよびソフトウェアを使用して、画像を取得し、それを解析する。
抗体および抗体断片
本発明は、癌幹細胞マーカーに対する単離された抗体を提供する。抗体または抗体断片は、記載される結腸癌幹細胞マーカーを特異的に認識する任意のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でありうる。いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載する結腸癌幹細胞マーカーポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供する。いくつかの態様では、そのモノクローナル抗体またはその断片は、本明細書に記載される結腸癌幹細胞マーカーポリペプチドの細胞外ドメインに特異的に結合するキメラ抗体またはヒト化抗体である。他の態様では、そのモノクローナル抗体またはその断片は、本明細書に記載される結腸癌幹細胞マーカーポリペプチドの細胞外ドメインに特異的に結合するヒト抗体である。
癌幹細胞マーカーに対する抗体は、本明細書に記載される実験方法、診断方法、および治療方法に用途を見出す。ある態様では、本発明の抗体は、例えば患者の組織生検、胸水、または血液試料などの生物学的試料から結腸癌幹細胞マーカータンパク質の発現を検出するために使用される。組織生検から切片を作製し、例えば免疫蛍光法または免疫組織化学法を使用してタンパク質を検出することができる。または、試料から個別の細胞を単離し、FACS分析により固定した細胞または生存細胞上のタンパク質の発現を検出する。さらに、タンパク質アレイ上で抗体を使用して、例えば腫瘍細胞上の、細胞溶解液中の、または他のタンパク質試料中の結腸癌幹細胞マーカーの発現を検出することができる。他の態様では、本発明の抗体を使用して、インビトロ細胞に基づくアッセイまたはインビボ動物モデルのいずれかで抗体を腫瘍細胞に接触させることによって、腫瘍細胞の成長を阻害する。なお他の態様では、これらの抗体を使用して、結腸癌幹細胞マーカーに対する治療有効量の抗体を投与することによって、ヒト患者での癌を処置する。
ポリクローナル抗体は、任意の公知の方法により調製することができる。ポリクローナル抗体は、所望によりキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン等とコンジュゲートさせた関連抗原(精製ペプチド断片、完全長組換えタンパク質、融合タンパク質等)を滅菌生理食塩に希釈し、アジュバント(例えば完全または不完全フロイントアジュバント)と組み合わせて安定なエマルションを形成させたものを多回皮下注射または腹腔内注射することにより動物(例えばウサギ、ラット、マウス、ロバ等)を免疫することで産生させることができる。次に、ポリクローナル抗体は、そのように免疫された動物の血液、腹水等から回収する。採集した血液を凝固させ、血清をデカンテーションし、遠心分離により清澄化させ、抗体力価についてアッセイする。ポリクローナル抗体は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などを含めた当技術分野で標準的な方法に従って血清または腹水から精製することができる。
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495に記載された方法などのハイブリダイゼーション法を使用して調製することができる。ハイブリダイゼーション法を使用して、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主細胞を上記のように免疫して、リンパ球による免疫抗原と特異的に結合するものである抗体の産生を誘発する。または、リンパ球はインビトロで免疫することができる。免疫の後で、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコールを使用して適切な骨髄腫細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させ、次にそれを未融合リンパ球および骨髄腫細胞から分離して選択することができる。次に、免疫沈降、イムノブロッティングにより、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイにより判定されるように、選択された抗原に特異的に向けられるモノクローナル抗体を産生する抗体は、標準法を使用したインビトロ培養(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986)または動物における腹水腫瘍としてインビボのいずれかで増大させることができる。次に、モノクローナル抗体は、ポリクローナル抗体について上に記載されたように培地または腹水から精製することができる。
または、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載された組換えDNA法を使用して作ることもまたできる。モノクローナル抗体をコードしているポリヌクレオチドは、その抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT-PCRなどにより、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞などから単離し、該配列は、従来の手順を使用して決定する。次に、重鎖および軽鎖をコードしている単離されたポリヌクレオチドは、適切な発現ベクターにクローニングし、他の状況では免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にそのベクターをトランスフェクトした場合に、モノクローナル抗体がその宿主細胞によって産生される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片は、記載されたようにファージディスプレイライブラリーから単離することができる(McCafferty et al., 1990, Nature, 348:552-554; Clackson et al., 1991, Nature, 352:624-628; およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581-597)。
モノクローナル抗体をコードしているポリヌクレオチドは、組換えDNA技法を使用していくつかの異なる方法でさらに修飾して、代替の抗体を産生させることができる。一つの態様では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、1) 例えばヒト抗体のそれらの領域に置き換えてキメラ抗体を産生させてもよく、または2) 非免疫グロブリンポリペプチドに置き換えて融合抗体を産生させてもよい。他の態様では、定常領域を切断または除去して、モノクローナル抗体の所望の断片を産生させる。さらに、可変領域の部位特異的または高密度突然変異誘発を使用して、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
本発明のいくつかの態様では、結腸癌幹細胞マーカーに対するモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、可変領域内に非ヒト(例えばマウス)抗体由来の最小限の配列を有する抗体である。当該抗体は、ヒト対象に投与した場合の抗原性およびHAMA(ヒト抗マウス抗体)反応を低下させるために治療的に使用される。実際には、ヒト化抗体は、典型的には最小限の非ヒト配列を有するか、または非ヒト配列を有さないヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒトによって産生される抗体、またはヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。
ヒト化抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を使用して産生することができる。抗体は、ヒト抗体のCDRを、所望の特異性、親和性、および能力を有する(例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスターなどの)非ヒト抗体のCDRと置き換えることによってヒト化することができる(Jones et al., 1986, Nature, 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534-1536)。ヒト化抗体は、Fvフレームワーク領域にあり、かつ/または置き換えられた非ヒト残基内にある追加の残基の置換によってさらに修飾して、抗体の特異性、親和性、および/または能力を洗練および最適化することができる。
ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を使用して直接調製することができる。インビトロ免疫された不死化ヒトBリンパ球、または標的抗原に対する抗体を産生する免疫された個体から単離された不死化ヒトBリンパ球を産生することができる(例えばCole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985); Boemer et al., 1991, J. Immunol, 147 (1):86-95;および米国特許第5,750,373号参照)。また、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択することができる(Vaughan et al., 1996, Nature Biotechnology, 14:309-314; Sheets et al., 1998, PNAS, 95:6157-6162; Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol, 222:581)。ヒト化抗体は、免疫すると内因性免疫グロブリンの産生の非存在下でヒト抗体の全レパートリーを産生することができる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスでもまた作ることができる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;および第5,661,016号に記載されている。
本発明は、結腸癌幹細胞マーカーを特異的に認識する二重特異性抗体もまた包含する。二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるエピトープを特異的に認識して結合することができる抗体である。その異なるエピトープは、同一分子(例えば同一の結腸癌幹細胞マーカーポリペプチド)内または異なる分子上のいずれかに存在することがあり、それによって、例えばその抗体は、結腸癌幹細胞マーカーと、例えば1) T細胞受容体(例えばCD3)もしくはFc受容体(例えばCD64、CD32、またはCD16)などの、白血球上のエフェクター分子、または2) 下に詳細に記載する細胞毒性剤との両方を特異的に認識して、それと結合することができる。二重特異性抗体は、無傷抗体または抗体断片でありうる。二重特異性抗体を作るための技法は、当技術分野において一般的である(Millstein et al., 1983, Nature 305:537-539; Brennan et al., 1985, Science 229:81; Suresh et al., 1986, Methods in Enzymol. 121:120; Traunecker et al., 1991, EMBO J. 10:3655-3659; Shalaby et al., 1992, J. Exp. Med. 175:217-225; Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547-1553; Gruber et al., 1994, J. Immunol. 152:5368;および米国特許第5,731,168号)。
本発明のある態様では、無傷抗体よりも抗体断片を使用して、例えば腫瘍への浸透を増加させることが理想的なことがある。抗体断片の産生のための多様な技法が公知である。伝統的には、これらの断片は無傷抗体のタンパク質分解消化により得られる(例えばMorimoto et al., 1993, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117、およびBrennan et al., 1985, Science, 229:81)。しかし、これらの断片は、現在は上記のような組換え宿主細胞によって典型的には直接産生される。したがって、Fab、Fv、およびscFv抗体断片は、全て大腸菌または他の宿主細胞で発現させ、そこから分泌させることによって、これらの断片の大量産生させることができる。または、当該抗体断片は、上に論じた抗体ファージライブラリーから単離することができる。抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載された線状抗体であってもよく、単一特異性または二重特異性であってもよい。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者に明らかであろう。
特に抗体断片の場合には、抗体の血清半減期を延長するために抗体を修飾することがさらに理想的なことがある。これは、例えば抗体断片の適切な領域の突然変異により抗体断片にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことにより、またはペプチドタグにそのエピトープを組み込み、次に抗体断片のいずれかの末端または中央で抗体断片に融合させることにより実現することができる(例えばDNAまたはペプチド合成により)。
本発明は、本明細書に示すキメラ、ヒト化、およびヒト抗体、またはその抗体断片と実質的に相同な変異体および等価物をさらに包含する。これらは、例えば保存的置換突然変異、すなわち類似のアミノ酸による一つまたは複数のアミノ酸の置換を有することがある。例えば、保存的置換は、例えばある酸性アミノ酸から別の酸性アミノ酸へ、ある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸へ、またはある中性アミノ酸から別の中性アミノ酸へなどの同一一般クラス内のあるアミノ酸から別のアミノ酸への置換を表す。保存的アミノ酸置換により意図されることは、当技術分野において周知である。
本発明はまた、細胞毒性剤とコンジュゲートした抗体を含む免疫コンジュゲートにも関する。細胞毒性剤には、化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素活性毒素またはその断片)、放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)等が挙げられる。そのような免疫コンジュゲートの産生に有用な化学療法剤には、例えばメトトレキサート、アドリアマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤が挙げられる。使用することができる酵素活性毒素およびその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α-サルシン(sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI, PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセン(tricothecene)が挙げられる。212Bi、131I、131In、90Y、および186Reを含めた多様な放射性核種が、放射性コンジュゲート抗体の産生に利用することができる。抗体および細胞毒性剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質結合剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トリエン(tolyene)2,6-ジイソシアネートなど)、およびビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などを使用して作られる。抗体と、一つまたは複数の小分子毒素、例えばカリチアマイシン、メイタンシノイド、トリコテセン、およびCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体とのコンジュゲートもまた使用することができる。
いくつかの態様では、本発明の抗体は、エフェクター機能、例えば抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害作用(CDC)を高めるために修飾されたヒトFc領域を有する。これは、抗体のFc領域に一つまたは複数のアミノ酸置換を導入することによって実現することができる。例えばシステイン残基をFc領域に導入してこの領域に鎖間ジスルフィド結合を形成させ、補体介在生細胞殺滅および抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)を向上させることができる(Caron et al., 1992, J. Exp Med. 176:1191-1195; Shopes, 1992, Immunol. 148:2918-2922)。高まった抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolff et al., 1993, Cancer Research 53:2560-2565に記載されているヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもまたできる。または、二つのFc領域を有する抗体を設計することができる(Stevenson et al., 1989, Anti-Cancer Drug Design 3:219-230)。
薬物のスクリーニング
いくつかの態様では、本発明は、薬物スクリーニングアッセイ(例えば抗癌薬をスクリーニングするための)を提供する。本発明のスクリーニング法は、本発明の方法を使用して同定された幹細胞性癌マーカー(例えば表4〜9に示す幹細胞性癌マーカーを非限定的に含む)を利用する。例えば、いくつかの態様では、本発明は、幹細胞性癌マーカー遺伝子の発現を改変する(例えば増加または減少させる)化合物についてスクリーニングする方法を提供する。いくつかの態様では、候補化合物は、癌マーカーに対するアンチセンス剤またはsiRNA剤(例えばオリゴヌクレオチド)である。他の態様では、候補化合物は、本発明の幹細胞性癌マーカーに特異的に結合する抗体である。ある態様では、小分子化合物のライブラリーが本明細書に記載する方法を使用してスクリーニングされる。
あるスクリーニング方法では、幹細胞性癌マーカーを発現している細胞と化合物を接触させ、次に発現に及ぼす候補化合物の作用をアッセイすることによって、候補化合物が幹細胞性癌マーカーの発現を改変する能力について候補化合物を評価する。いくつかの態様では、癌マーカー遺伝子の発現に候補化合物が及ぼす作用は、細胞により発現される癌マーカーmRNAのレベルを検出することによってアッセイする。mRNAの発現は、任意の適切な方法により検出することができる。他の態様では、癌マーカー遺伝子の発現に及ぼす候補化合物の作用は、癌マーカーによりコードされるポリペプチドのレベルを測定することによってアッセイする。発現されるポリペプチドのレベルは、本明細書に開示される方法を非限定的に含めた任意の適切な方法を使用して測定することができる。いくつかの態様では、細胞の生物学的性質(例えばアポトーシス)におけるその他の変化を検出する。
具体的には、本発明は、本発明の癌マーカーに結合するか、または本発明の癌マーカーに関連するシグナル伝達もしくは機能を改変するか、例えば幹細胞性癌マーカーの発現もしくは癌マーカーの活性に阻害(または刺激)作用を有するか、または例えば癌マーカー基質の発現または活性に刺激もしくは阻害作用を有するモジュレーター、すなわち候補化合物または被験化合物または薬剤(例えばタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、小分子、または他の薬物)を同定するためのスクリーニング方法を提供する。このように同定された化合物は、治療プロトコールにおいて標的遺伝子産物(例えば幹細胞性癌マーカー遺伝子)の活性を直接または間接的のいずれかで調整するためか、標的遺伝子産物の生物学的機能を詳しく述べるためか、または正常な標的遺伝子の相互作用を乱す化合物を同定するために使用することができる。癌マーカーの活性または発現を阻害する化合物は、増殖障害、例えば癌、特に転移癌の処置に、または腫瘍幹細胞を排除または制御して癌のリスクを予防または低下させるために有用である。
一つの態様では、本発明は、癌マーカーのタンパク質もしくはポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分の基質である候補化合物または被験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。別の態様では、本発明は、癌マーカータンパク質もしくはポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはその活性を調整する候補または被験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
本発明の被験化合物は、生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの官能基を有するが新規な非ペプチド主鎖を有し、酵素分解に抵抗性であるにもかかわらず生体活性を維持する分子ライブラリー;例えば、Zuckennann et al., J. Med. Chem. 37:2678-85 [1994]参照);空間的にアドレス可能な並列固相または溶液相ライブラリー;デコンボリューションを要する合成ライブラリー法;「1ビーズ-1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含めた当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法の中の多数のアプローチのうち任意のものを使用して得ることができる。生物学的ライブラリーおよびペプチドライブラリーのアプローチは、ペプチドライブラリーでの使用に好ましく、その他の四つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは小分子ライブラリーの化合物に適用することできる(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。
分子ライブラリーの合成についての方法の例は、当技術分野、例えばDeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909 [1993]; Erb et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA 91:11422 [1994]; Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678 [1994]; Cho et al., Science 261:1303 [1993]; Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33.2059 [1994]; Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061 [1994]; およびGallop et al., J. Med. Chem. 37:1233 [1994]に見出すことができる。
化合物のライブラリーは、溶液中(例えばHoughten, Biotechniques 13:412-421 [1992])、またはビーズ上(Lam, Nature 354:82-84 [1991])、チップ上(Fodor, Nature 364:555-556 [1993])、細菌もしくは胞子上(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA 89:18651869 [1992])、もしくはファージ上(Scott and Smith, Science 249:386-390 [1990]; Devlin Science 249:404-406 [1990]; Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382 [1990]; Felici, J. Mol. Biol. 222:301 [1991])に提示することができる。
一つの態様では、アッセイは幹細胞性癌マーカータンパク質またはその生物学的に活性な部分を発現する細胞を被験化合物に接触させ、該被験化合物が癌マーカーの活性を調整する能力を判定する、細胞に基づくアッセイである。被験化合物が幹細胞性癌マーカーの活性を調整する能力の判定は、例えば酵素活性の変化をモニターすることによって実現することができる。細胞は、例えば哺乳動物起源でありうる。
被験化合物が、化合物、例えば幹細胞性癌マーカー基質に結合する癌マーカーを調整する能力もまた評価することができる。これは、化合物、例えば基質を放射性同位体または酵素標識と結合させる結果として、複合体中の標識化合物、例えば基質を検出することによって、癌マーカーへの化合物、例えば基質の結合を判定できるようにすることで、実現することができる。
または、幹細胞性癌マーカーは、放射性同位体または酵素標識と結合させて、被験化合物が複合体中の癌マーカー基質に結合する癌マーカーを調整する能力をモニターする。例えば、化合物(例えば基質)は、125I、35S、14C、または3Hで直接または間接的のいずれかで標識することができ、放射線の照射の直接計数またはシンチレーション計数によって放射性同位体を検出することができる。または、化合物は、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼを用いて酵素的に標識し、酵素標識は適切な基質から産物への変換を判定することにより検出することができる。
化合物(例えば幹細胞性癌マーカー基質)が、任意の反応体の標識を有するかまたは有さない幹細胞性癌マーカーと相互作用する能力を評価することができる。例えば、マイクロフィジオメーターは化合物または癌マーカーのいずれかの標識の非存在下で、化合物と癌マーカーとの相互作用を検出するために使用することができる(McConnell et al. Science 257:1906-1912 [1992])。本明細書に使用するように、「マイクロフィジオメーター」(例えばCytosensor)は、細胞がその環境を酸性化する速度を光アドレス可能な電位差センサー(LAPS)を使用して測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は、化合物および癌マーカーの間の相互作用の指標として使用することができる。
なお別の態様では、癌マーカータンパク質またはその生物学的に活性な部分が被験化合物と接触され、その被験化合物が幹細胞性癌マーカータンパク質またはその生物学的に活性な部分に結合する能力が評価される無細胞アッセイが提供される。本発明のアッセイに使用するための癌マーカータンパク質の生物学的に活性な部分には、基質または他のタンパク質との相互作用に関与する断片、例えば高い表面確率スコアを有する断片が含まれる。
無細胞アッセイは、標的遺伝子タンパク質および被験化合物の反応混合物を、この二つの構成要素を相互作用および結合させ、したがって除去および/または検出することができる複合体を形成するために十分な条件および時間で調製することを伴う。
二つの分子の間の相互作用は、例えば蛍光エネルギー移動(FRET)(例えばそれぞれ参照により本明細書に組み入れられるLakowiczら、米国特許第5,631,169号; Stavrianopoulosら、米国特許第4,968,103号参照)を使用しても検出することができる。第一ドナー分子が放射した蛍光エネルギーが第二「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、それが今度は吸収されたエネルギーが原因で蛍光を発することができるように、発蛍光団標識が選択される。
または、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の自然蛍光エネルギーを単に利用することができる。異なる波長の光を発生することによって、「アクセプター」分子標識を「ドナー」分子標識と区別することができる標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率は、分子を隔てる距離に関係することから、分子間の空間関係を評価することができる。分子間で結合が起こる状況では、アッセイ1 5における「アクセプター」分子標識の蛍光発生は最大のはずである。FRETの結合事象は、当技術分野において周知の標準的な蛍光測定検出手段により(例えば蛍光計を使用して)好都合に測定することができる。
別の態様では、幹細胞性癌マーカータンパク質が標的分子に結合する能力を判定することは、リアルタム生体分子相互作用分析(real-time Biomolecular Interaction Analysis)(BIA)を使用して実現することができる(例えばSjolander and Urbaniczky, Anal. Chem. 63:2338-2345 [1991]およびSzabo et al. Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705 [1995]参照)。「表面プラスモン共鳴」または「BIA」は、反応体を全く標識せずにリアルタイムで生体特異的相互作用を検出する(例えばBIAcore)。結合表面での質量の変化(結合事象を示す)は、表面近くの光の屈折率の改変(表面プラスモン共鳴(SPR)の光学現象)を招き、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用することができる検出可能なシグナルを生じる。
一つの態様では、標的遺伝子産物または被験物質は、固相にアンカーする。固相にアンカーされた標的遺伝子産物/被験化合物複合体は、反応の終了時に検出することができる。標的遺伝子産物は固体表面にアンカーすることができ、被験化合物(アンカーされていない)は、本明細書に論じる検出可能な標識で直接または間接的のいずれかで標識することができる。
幹細胞性癌マーカー、抗癌マーカー抗体、またはその標的分子を固定化して、一方または両方のタンパク質の非複合形態から複合形態を分離することを容易にし、およびアッセイの自動化の便宜を図ることが理想的でありうる。幹細胞性癌マーカータンパク質への被験化合物の結合、または候補化合物の存在下および非存在下での癌マーカータンパク質と標的分子との相互作用は、反応体を入れるために適した任意の容器の中で実現することができる。当該容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠沈管が挙げられる。一つの態様では、一方または両方のタンパク質をマトリックスに結合させるドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ-癌マーカー融合タンパク質またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させることができ、次に被験化合物と、または被験化合物および非吸着標的タンパク質または癌マーカータンパク質のいずれかと混合し、複合体の形成をもたらす条件で(例えば塩およびpHに関して生理的条件で)その混合物をインキュベートする。インキュベーション後に、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄し、任意の未結合構成要素を除去し、ビーズの場合はマトリックスに固定化し、例えば上記のように直接または間接的のいずれかで複合体を判定する。
または、複合体をマトリックスから解離させ、癌マーカーの結合または活性のレベルを標準的な技法を使用して判定することができる。癌マーカータンパク質または標的分子のいずれかをマトリックス上に固定化するための他の技法には、ビオチンおよびストレプトアビジンのコンジュゲーションの使用が挙げられる。ビオチン化された癌マーカータンパク質または標的分子は、当技術分野において公知の技法(例えばビオチン化キット(Pierce Chemicals, Rockford, IL))を使用してビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化することができる。
アッセイを行うために、アンカーされた構成要素を有する被覆された表面に非固定化構成要素を添加する。反応が完了した後に、形成したいかなる複合体も固体表面に固定化されたままになる条件で、未反応の構成要素を除去する(例えば洗浄による)。固体表面にアンカーされた複合体の検出は、いくつかの方法で実現することができる。前もって固定化されていない構成要素が予備標識されている場合、表面に固定化された標識の検出は、複合体が形成したことを示す。前もって固定化されていない構成要素が予備標識されていない場合、間接標識を使用して、表面にアンカーされた複合体を検出することができる;例えば固定化構成要素に特異的な標識抗体を使用して検出することができる(今度はその抗体を例えば標識抗IgG抗体で直接または間接的に標識することができる)。
このアッセイは、幹細胞性癌マーカータンパク質または標的分子と反応性であるが、幹細胞性癌マーカータンパク質がその標的分子に結合することを妨害しない抗体を利用して行う。当該抗体は、プレートのウェルに誘導体化し、未結合標的または癌マーカータンパク質は抗体のコンジュゲーションによりウェルに捕捉することができる。そのような複合体を検出するための方法、およびGST固定化複合体についての上記の方法に加えて、癌マーカータンパク質または標的分子と反応性の抗体を用いた複合体の免疫検出、および癌マーカータンパク質または標的分子と関連する酵素活性を検出することによる酵素結合アッセイがある。
または、無細胞アッセイは液相中で行うことができる。そのようなアッセイでは、反応産物は、分画遠心分離(例えばRivas and Minton, Trends Biochem Sci 18:284-7 [1993]参照);クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー);電気泳動(例えばAusubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology 1999, J. Wiley: New York参照);および免疫沈降(例えばAusubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology 1999, J. Wiley: New York参照)を、非限定的に含めたいくつかの標準技法のうち任意のものにより未反応構成要素から分離する。そのような樹脂およびクロマトグラフィー技法は、当業者に公知である(例えばHeegaard J. Mol. Recognit 11:141-8 [1998]; Hageand Tweed J. Chromatogr. Biomed. Sci. App1 699:499-525 [1997]参照)。さらに、溶液から複合体をそれ以上精製せずに結合を検出するために、本明細書に記載する蛍光エネルギー移動もまた好都合に利用することができる。
アッセイは、癌マーカーと結合する公知の化合物と、幹細胞性癌マーカータンパク質またはその生物学的に活性な部分を接触させてアッセイ混合物を形成させる工程、アッセイ混合物を被験化合物に接触させる工程、および被験化合物が癌マーカータンパク質と相互作用する能力を判定する工程を含んでもよく、ここで、被験化合物が癌マーカータンパク質と相互作用する能力を判定する工程は、公知の化合物に比べて、被験化合物が癌マーカーもしくはその生物学的に活性な部分に好んで結合する能力、または標的分子の活性を調整する能力を判定する工程を含む。
幹細胞性癌マーカーが、タンパク質などの一つまたは複数の細胞性または細胞外高分子とインビボで相互作用できる程度に、その相互作用の阻害剤は有用である。均一性アッセイは阻害剤を同定するために使用することができる。
例えば、標的遺伝子産物と相互作用性細胞または細胞外結合パートナー産物との予備形成した複合体を調製する結果、標的遺伝子産物またはその結合パートナーのいずれかを標識するが、その標識により生成するシグナルは、複合体の形成が原因で消される(例えば参照により本明細書に組み入れられる、イムノアッセイのためにこのアプローチを利用している米国特許第4,109,496号を参照)。予備形成した複合体からの一つの種と競合してそれと置き換わる被験物質の添加は、バックグラウンドを超えるシグナルの生成をもたらすものである。このように、標的遺伝子産物-結合パートナーの相互作用を乱す被験物質を同定することができる。または、癌マーカータンパク質は、癌マーカーと結合または相互作用し(「癌マーカー結合タンパク質」または「癌マーカー-bp」)、癌マーカー活性に関与する他のタンパク質を同定するために、2ハイブリッドアッセイまたは3ハイブリッドアッセイにおける「ベイトタンパク質」として使用することができる(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,283,317号; Zervos et al., Cell 72:223-232 [1993]; Madura et al., J. Biol. Chem. 268.12046-12054 [1993]; Bartel et al., Biotechniques 14:920-924 [1993]; Iwabuchi et al., Oncogene 8:1693-1696 [1993]; およびBrent WO94/10300参照)。そのような癌マーカー-bpは、例えば癌マーカー介在性シグナル伝達経路の下流のエレメントとして、癌マーカータンパク質または標的によるシグナルのアクチベーターまたは阻害剤でありうる。
癌マーカーの発現のモジュレーターもまた同定することができる。例えば、細胞または無細胞混合物を候補化合物に接触させ、候補化合物の非存在下での幹細胞性癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現レベルに比べて上昇した、癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現を評価する。癌マーカーmRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の非存在下よりも存在下の方が高い場合、候補化合物は癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現の刺激剤であると同定される。または、候補化合物の非存在下よりも存在下の方が癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現が少ない(すなわち統計的に有意に少ない)場合、候補化合物は癌マーカーmRNAまたはタンパク質発現の阻害剤であると同定される。癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現レベルは、癌マーカーのmRNAまたはタンパク質を検出するために本明細書に記載される方法により判定することができる。
調節剤は、細胞に基づくアッセイまたは無細胞アッセイを使用して同定することができ、その薬剤が癌マーカータンパク質の活性を調節する能力は、例えば疾患についての動物モデル(例えば前立腺癌または転移性前立腺癌を有する動物);または動物(例えばヒト)由来の前立腺癌などの異種移植片、もしくは前立腺癌の転移(例えばリンパ節、骨、または肝臓への)に起因する癌由来の細胞、もしくは前立腺癌細胞系由来の細胞を内部に有する動物においてインビボで同定することができる。
本発明は、さらに上記スクリーニングアッセイ(例えば癌の治療法の説明の下部を参照)により同定された新規な薬剤に関する。したがって、本明細書に記載するように同定された薬剤(例えば癌マーカー調節剤、アンチセンス癌マーカー核酸分子、siRNA分子、癌マーカー特異的抗体、または癌マーカー結合パートナー)を適切な動物モデル(本明細書に記載されるような)でさらに使用して、そのような薬剤を用いた処置の有効性、毒性、副作用、または作用機序を判定することは本発明の範囲内に属する。さらに、上記スクリーニングアッセイにより同定される新規な薬剤は、例えば本明細書に記載される処置のために(例えば癌を有するヒト患者を処置するために)使用することができる。
癌の治療法
いくつかの態様では、本発明は、癌(例えば乳癌)のための治療法を提供する。いくつかの態様では、治療法は癌マーカー(例えば、表4〜9に示すマーカーを非限定的に含む)を標的化する。
抗体療法
いくつかの態様では、本発明は、本発明の幹細胞性癌マーカー(例えば表4〜9に示すマーカー)を発現する腫瘍を標的化する抗体を提供する。任意の適切な抗体(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または合成抗体)は、本明細書に開示した治療方法において利用することができる。いくつかの態様では、癌の治療法のために使用される抗体は、ヒト化抗体である。抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である(それぞれが参照により本明細書に組み入れられる例えば米国特許第6,180,370号、第5,585,089号、第6,054,297号、および第5,565,332号参照)。
いくつかの態様では、治療用抗体は、本発明の幹細胞性癌マーカーに対して産生された抗体を含み、ここで、その抗体は細胞毒性剤とコンジュゲートしている。そのような態様では、正常細胞を標的化しないことにより、従来の化学療法の有害副作用の多くを低減する腫瘍特異的治療剤が産生される。ある適用については、その治療剤は、抗体への付着に有用な薬剤、特に内皮細胞を死滅させるか、またはその成長もしくは細胞分裂を消滅させるもしくは抑制する能力を有する細胞毒性剤またはその他の抗細胞剤として作用する薬理学的薬剤であると想像される。本発明は、抗体にコンジュゲートすることができ、活性形態で送達されることができる任意の薬理学的薬剤の使用を企図している。例示的な抗細胞剤には、化学療法剤、放射性同位体、および細胞毒素が挙げられる。本発明の治療用抗体には、放射性同位体(例えばヨウ素131、ヨウ素123、テクネチウム99m、インジウム111、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、銅67、イットリウム90、ヨウ素125、またはアスタチン211)、ステロイドなどのホルモン、シトシンなどの代謝拮抗物質(例えばアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、またはアミノプテリン;アントラサイクリン;マイトマイシンC)、ビンカアルカロイド(例えばデメコルシン;エトポシド;ミトラマイシン)、およびクロラムブシルまたはメルファランなどの抗腫瘍アルキル化剤を非限定的に含む多様な細胞毒性部分を含みうる。他の態様は、凝固剤、サイトカイン、成長因子、細菌内毒素または細菌内毒素のリピドA部分などの薬剤が含まれうる。例えば、いくつかの態様では、治療剤には、ほんの少数例を挙げるならば植物、真菌、または細菌に由来するA鎖毒素などの毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン(restrictocin)、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、またはシュードモナス(pseudomonas)外毒素が含まれよう。いくつかの態様では、脱グリコシル化リシンA鎖が利用される。
任意の事象で、これらのような薬剤は、所望により公知のコンジュゲーション技法を使用して、必要に応じて標的化される腫瘍細胞の部位で、薬剤の標的化、インターナリゼーション、放出、または血液構成要素への提示を可能にする方法で、抗体にうまくコンジュゲートできることが提唱されている(例えばGhose et al., Methods Enzymol., 93:280 [1983]参照)。
例えば、いくつかの態様では、本発明は、本発明の幹細胞性癌マーカーを標的化する免疫毒素を提供する。免疫毒素は、特異的標的化剤、典型的には腫瘍に対する抗体または断片と、毒素部分などの細胞毒性剤とのコンジュゲートである。標的化剤は、標的化された抗原を有する細胞に毒素を方向付けることによって、その細胞を選択的に殺滅する。いくつかの態様では、治療用抗体は高いインビボ安定性を提供する架橋剤を使用する(Thorpe et al., Cancer Res., 48:6396 [1988])。
他の態様、特に充実性腫瘍の処置を伴う態様では、血管内皮細胞の成長または細胞分裂を抑制することによって腫瘍の脈管構造に対して細胞傷害性作用またはさもなければ抗細胞作用を有する抗体が設計される。この攻撃は、腫瘍細胞、特に脈管構造から遠位の腫瘍細胞から酸素および栄養分を欠乏させて、最終的に細胞死および腫瘍の壊死を誘導して、腫瘍に限局性の血管虚脱を誘導することを意図する。
いくつかの態様では、抗体に基づく治療法は、下記の薬学的組成物として製剤化される。いくつかの態様では、本発明の抗体組成物の投与は、癌に測定可能な減少(例えば腫瘍の減少または消失)をもたらす。
薬学的組成物
本発明は、さらに薬学的組成物(例えば本発明の幹細胞性癌マーカーを標的化する小分子、アンチセンス、抗体、またはsiRNAを含む)を提供する。本発明の薬学的組成物は、局所処置それとも全身処置が望まれるかどうか、および処置される領域に応じていくつかの方法で投与することができる。投与は、局所(眼ならびに膣および結腸送達を含めた粘膜を含む)、肺(例えばネブライザーによることを含めた散剤またはエアゾール剤の吸入または吹入;気管内、鼻腔内、上皮、および経皮による)、経口または非経口でありうる。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内への注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば髄腔内または脳室内投与が挙げられる。
局所投与用の薬学的組成物および製剤には、経皮パッチ、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤、および散剤が含まれうる。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性基剤、粘稠化剤などが必要または望ましいことがある。
経口投与用の組成物および製剤には、散剤または顆粒剤、水もしくは非水性媒質中の懸濁剤または水剤、カプセル剤、サシェ剤(sachet)、または錠剤が含まれる。粘稠化剤、着香料、希釈剤、乳化剤、分散補助剤、または結合剤が望ましいことがある。
非経口、髄腔内、または脳室内投与のための組成物および製剤は、緩衝液、希釈剤、ならびに浸透促進剤、担体化合物、および他の薬学的に許容できる担体または賦形剤を非限定的な例とする他の適切な添加剤もまた含有しうる滅菌水溶液を含んでもよい。
本発明の薬学的組成物には、液剤、乳剤、およびリポソーム含有製剤が挙げられるが、それに限定されるわけではない。これらの組成物は、予備形成された液剤、自己乳化性固体、および自己乳化性半固形物を含むがそれに限定されるわけではない様々な構成要素から産生することができる。
単位剤形で好都合に提示することができる本発明の薬学的製剤は、製薬業界で周知の従来技法により調製することができる。そのような技法には、活性成分を薬学的担体または賦形剤と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉化固体担体と、またはその両方と均一かつ完全に会合させ、次に必要ならばその産物を成形することにより調製される。
本発明の組成物は、非限定的に錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル剤、坐剤、および浣腸剤などの多数の可能な投薬形態のうち任意のものに製剤化することができる。本発明の組成物は、水性、非水性、または混合媒質中の懸濁剤としても製剤化することができる。水性懸濁剤は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む、懸濁剤の粘度を増加させる物質をさらに含有してもよい。懸濁剤は安定化剤を含有してもよい。
本発明の一つの態様では、薬学的組成物は泡剤として製剤化および使用することができる。薬学的泡剤には、非限定的に乳剤、マイクロエマルション、クリーム剤、ゼリー剤、およびリポソームなどの製剤が含まれる。これらの製剤は、基本的には性質が類似しているが、構成要素および最終製品のコンシステンシーが多様である。
細胞レベルでオリゴヌクレオチドの取込みを高める薬剤もまた、本発明の薬学的組成物および他の組成物に添加することができる。例えば、リポフェクチンなどの陽イオン性脂質(米国特許第5,705,188号)、陽イオン性グリセロール誘導体、およびポリリジン(WO97/30731)などのポリカチオン分子もまた、オリゴヌクレオチドの細胞取込みを高める。
本発明の組成物は、薬学的組成物に従来見出される他の補助構成要素を加えて含有してもよい。したがって、例えばこの組成物は、例えば鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬、または抗炎症剤などの追加の適合性の薬学的に活性な物質を含有してもよく、色素、着香料、保存料、抗酸化剤、乳濁剤、粘稠化剤、および安定化剤などの、本発明の組成物の様々な投薬形態を物理的に製剤化するために有用な追加の物質を含有してもよい。しかし、そのような物質は、添加されたときに本発明の組成物の構成要素の生物学的活性を過度に妨害してはならない。製剤は、滅菌し、所望であれば製剤の核酸と有害に相互作用しない佐剤、例えば滑沢剤、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、緩衝剤、着色料、着香料、および/または芳香性物質などと混合することができる。
本発明のある態様は、(a) 幹細胞性癌マーカーの活性を調整する一つまたは複数の化合物(例えば抗体、小分子、siRNA、アンチセンスなど)と、(b) 一つまたは複数の他の化学療法剤とを含有する薬学的組成物を提供する。当該化学療法剤の例には、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン(CA)、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、およびジエチルスチルベストロール(DES)などの抗癌薬が含まれるが、それに限定されるわけではない。非ステロイド系抗炎症薬および副腎皮質ステロイド薬を非限定的に含めた抗炎症薬、ならびにリビビリン(ribivirin)、ビダラビン、アシクロビル、およびガンシクロビルを非限定的に含めた抗ウイルス薬もまた本発明の組成物と組み合わせることができる。他の化学療法剤もまた本発明の範囲内に属する。二つまたはそれ以上の組み合わされた化合物を一緒にまたは連続的に使用してもよい。
投薬は、処置される病状の重症度および反応性に依存し、処置のクールは数日から数ヶ月、または治癒がもたらされるか、もしくは病状の軽減(例えば腫瘍のサイズの減少)が実現されるまで継続する。最適の投薬スケジュールは、患者の体内での薬物の蓄積を測定することから計算することができる。投与にあたる医師は、最適な薬用量、投薬方法、および繰り返し速度を容易に判定することができる。最適な薬用量は、個別のオリゴヌクレオチドの相対効力に応じて変動することがあり、インビトロおよびインビボ動物モデルで有効であることが見出されたEC50に基づいて、または本明細書に記載される実施例に基づいて一般に推定することができる。一般に、薬用量は、体重1kgあたり0.01μgから100gであり、1日、1週間、1ヶ月、または1年に1回またはそれ以上与えることができる。処置にあたる医師は、体液または組織において測定された薬物の滞留時間および濃度に基づいて、投薬を繰り返す速度を見積もることができる。成功した処置の後で、病状の再発を予防するために対象に維持療法を受けさせることが理想的なことがある。維持療法では、オリゴヌクレオチドが体重1kgあたり0.01μgから100gの範囲の維持用量で、1日1回またはそれ以上から20年に1回まで投与される。
癌マーカー遺伝子を発現しているトランスジェニック動物
本発明は、本発明の外因性癌マーカー遺伝子またはその突然変異体および変異体(例えば切断または一塩基多型)もしくはそのノックアウトを含むトランスジェニック動物の産生を企図している。いくつかの態様では、トランスジェニック動物は、野生型動物に比べて改変された表現型(例えばマーカーの存在の増加または減少)を示す。そのような表現型の存在または非存在を分析するための方法には、本明細書に開示される方法があるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、トランスジェニック動物は、腫瘍の成長または癌の根拠の増加もしくは減少をさらに示す。
本発明のトランスジェニック動物は、薬物(例えば癌の治療法)の選別に用途を見出す。いくつかの態様では、被験化合物(例えば癌を処置するために有用と思われる薬物)および対照化合物(例えばプラセボ)をトランスジェニック動物および対照動物に投与し、その効果を評価する。
トランスジェニック動物は、様々な方法により産生することができる。いくつかの態様では、様々な発生段階の胚細胞を使用して、トランスジェニック動物の産生のために導入遺伝子を導入する。胚細胞の発生段階に応じて異なる方法を使用する。接合子は、マイクロインジェクションに最適の標的である。マウスでは、雄性前核は、DNA溶液1〜2ピコリットル(pl)の繰り返し注射が可能な直径約20マイクロメートルのサイズに達する。遺伝子移入の標的としての接合子の使用には、ほとんどの場合で注射されたDNAが最初の卵割前に宿主ゲノムに組み込まれるという主な利点がある(Brinster et al., 1985, PNAS 82:4438-4442)。結果として、トランスジェニック非ヒト動物の全細胞が、組み込まれた導入遺伝子を有するものである。生殖細胞の50%が導入遺伝子を内部に有するものであることから、これは、一般に創始体(founder)の子孫に導入遺伝子が効率的に伝達されることもまた反映している。米国特許第4,873,191号は、接合子のマイクロインジェクションのための方法を記載しており、この特許の開示はその全体が本明細書に組み込まれる。
他の態様では、非ヒト動物に導入遺伝子を導入するためにレトロウイルス感染を使用する。いくつかの態様では、レトロウイルスベクターは、レトロウイルスベクターを卵母細胞の囲卵腔に注射することによって卵母細胞をトランスフェクトするために利用される(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,080,912号)。他の態様では、発生中の非ヒト胚を胚盤胞期までインビトロで培養することができる。この間に、割球はレトロウイルス感染の標的となりうる(Janenich, 1976, PNAS 73:1260)。割球の効率的な感染は、透明帯を除去するための酵素処理によって得られる(Hogan et al., in Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. [1986])。導入遺伝子を導入するために使用されるウイルスベクター系は、典型的には導入遺伝子を有する複製欠損レトロウイルスである(Jahner et al., 1985, PNAS 82:6927)。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することによって容易かつ効率的に得られる(Stewart, et al., 1987, EMBO J., 6:383)。
または、感染は後期に行うこともできる。ウイルスまたはウイルス産生細胞を割腔に注射することができる(Jahner et al., 1982, Nature 298:623)。組み込みがトランスジェニック動物を形成する細胞のサブセットにのみ起こることから、創始体の大部分が導入遺伝子についてモザイクとなる。さらに、創始体は、ゲノムの異なる位置でレトロウイルスによる導入遺伝子の挿入を様々に有することがあり、これは子孫では一般に隔離される。加えて、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルス感染により、効率は低いが生殖細胞系に導入遺伝子を導入することもまた可能である(Jahner et al., 前記 [1982])。レトロウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用して、当技術分野で公知のトランスジェニック動物を創出する追加の手段は、レトロウイルス粒子またはレトロウイルスを産生するマイトマイシンC処理細胞を受精卵の囲卵腔または初期胚にマイクロインジェクションすることを伴う(PCT国際出願WO90/08832 [1990]、およびHaskell and Bowen, 1995, Mol. Reprod. Dev., 40:386)。
他の態様では、導入遺伝子は、胚性幹細胞に導入され、トランスフェクトされた幹細胞を利用して胚を形成させる。ES細胞は、移植前胚をインビトロで適切な条件で培養することによって得られる(Evans et al., 1981, Nature 292:154; Bradley et al., 1984, Nature 309:255; Gossler et al., 1986, PNAS 83:9065; およびRobertson et al., 1986, Nature 322:445)。導入遺伝子は、リン酸カルシウム共沈、プロトプラストまたはスフェロプラスト融合、リポフェクション、およびDEAE-デキストラン介在性トランスフェクションを含めた当技術分野において公知の様々な方法によるDNAトランスフェクションによりES細胞に効率的に導入することができる。導入遺伝子はまた、レトロウイルス介在性形質導入またはマイクロインジェクションによりES細胞に導入することもできる。そのようなトランスフェクトされたES細胞は、その後胚盤胞期の胚の割腔に導入された後に胚に共在することができ、結果として生じたキメラ動物の生殖細胞系に貢献することができる(総説についてはJaenisch, Science, 1988, 240:1468参照)。トランスフェクトされたES細胞を割腔に導入する前に、トランスフェクトされたES細胞を様々な選択プロトコールに付して、その導入遺伝子がそのような選択のための手段を提供すると仮定した上で、導入遺伝子を組み込んだES細胞を濃縮することができる。または、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、導入遺伝子を組み込んだES細胞についてスクリーニングすることができる。この技法は、トランスフェクトされたES細胞を割腔に移入する前に、適切な選択条件で成長させる必要性を回避する。
なお他の態様では、遺伝子の機能をノックアウトするか、または欠失突然変異体(例えば切断突然変異体)を創出するために相同組換えを利用する。相同組換えのための方法は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,614,396号に記載されている。
実験
以下の実施例は、本発明のある態様および局面を実証およびさらに例示するために提供されるものであり、その範囲を限定するものとして解釈してはならない。
以下の実験的開示において、以下の略語が適用される:N (正常);M (モル濃度);mM (ミリモル濃度);μM (マイクロモル濃度);mol (モル);mmol (ミリモル);μmol (マイクロモル);nmol (ナノモル);pmol (ピコモル);g (グラム);mg (ミリグラム);μg (マイクログラム);ng (ナノグラム);1またはL (リットル);ml (ミリリットル);μl (マイクロリットル);cm (センチメートル);mm (ミリメートル);μm (マイクロメートル);nm (ナノメートル);℃(摂氏度);i.p. (腹腔内);HBSS (Hepes緩衝生理食塩水);FCS (仔ウシ胎児血清);FBS(ウシ胎児血清)。
実施例1
結腸癌幹細胞の単離
近年、悪性ヒト乳房腫瘍が、免疫不全マウスに腫瘍を形成する能力が富化された異なる小集団の癌幹細胞を内部に有することが実証された。ESA+、CD44+、CD24-/低、Lin-細胞集団は、未分画腫瘍細胞に比べて腫瘍形成性乳房腫瘍細胞が50倍濃縮されていることが見出された(Al-Hajj et al., 2003, PNAS 100:3983-8)。本実施例は、結腸直腸癌における癌幹細胞集団の同定を記載する。
結腸癌幹細胞を同定するために、免疫無防備状態のマウスで最小限継代された結腸直腸癌の患者の生検由来の腫瘍試料を調べた。無菌条件で腫瘍細胞を取り出し、小片に切り、無菌の刃を使用して完全に切り刻んだ。次に、酵素消化および機械的破壊により単一細胞(single cell)懸濁物を得た。具体的には、切り刻んだ腫瘍片は、培地中でディスパーゼを補充したコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼと混合し、15〜20分毎に10mLピペットを通して上下にピペッティングしながら37℃で2時間インキュベートした。消化された細胞は40uMナイロンメッシュを通過させて濾過し、RPMI/10% FBSで洗浄し、HBSS/2% FBSおよび25mM HEPESで2回洗浄した。
単一細胞腫瘍懸濁液は、次に細胞表面マーカーに基づき腫瘍形成性細胞および非腫瘍形成性細胞に選別した。細胞を計数し、2%熱不活性化仔ウシ血清(HICS)および25mM HEPESを含有するHBSSで2回洗浄し、100ulあたり細胞106個となるように再懸濁した。腫瘍細胞は、磁気ビーズとコンジュゲートしたラット抗マウスH2Kd、CD3、CD4、CD8、Ter119、Mac1、およびGr1抗体と共にインキュベートし、強力な磁石に適用し、マウス造血細胞および間質細胞を除去した。ある態様では、ビオチンとコンジュゲートした抗H2Kdおよび抗マウスCD45を使用し、続いてストレプトアビジンコンジュゲート磁気ビーズにコンジュゲーションさせ、強力な磁石に適用することで、腫瘍細胞全体からマウス細胞を枯渇させることができる。次に、Cy5.5-PEにコンジュゲートしたヒツジ抗ラット抗体または抗ストレプトアビジン抗体のいずれかおよび生存度色素ヨウ化プロピジウム(PI)と共にインキュベートし、それぞれ残存マウス造血/間質細胞および死滅細胞を検出し、その排除を可能にした。細胞は、ヒトESA(Miltenyi Biotec; Auburn, CA)およびCD44(Bioscience, San Diego, CA)に対する蛍光コンジュゲート抗体と共にさらにインキュベートし、ESAおよびCD44を発現しているヒト腫瘍細胞を積極的に選択した。フローサイトメトリーは、ダブレットおよび細胞塊を排除するための側方および前方散乱プロファイルを使用して、FACSAria(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)で行った。Cy5.5-PE+およびPI陽性細胞は最初に排除し、ESA+44+細胞画分は非ESA+44+腫瘍細胞画分と独立して単離した(図1)。
非ESA+、CC44+結腸腫瘍細胞に比べた、単離されたESA+44+結腸腫瘍細胞の腫瘍形成性を次に判定した。非ESA+44+腫瘍細胞に比べて単離されたESA+44+腫瘍細胞は、動物1匹あたり約1000個をNOD/SCIDマウスに皮下注射した。腫瘍を成長させ、腫瘍容積を毎週評価した。ESA+44+細胞を注射されたマウスだけが腫瘍を発生し(図2)、これは、腫瘍形成性癌幹細胞の劇的な濃縮を実証している。わずか100個のESA+CD44+細胞の注射で、腫瘍が一貫して得られた(図2Bおよび表2)。
80日間にわたり腫瘍の成長を追跡することから、ESA+44+腫瘍細胞により産生した腫瘍の成長継続が明らかとなったが、1000個またはそれ以上の投与量でESA+、CD44-、またはESA-CD44-腫瘍細胞を注射されたマウスでは、腫瘍はごくまれ(3/89)にしか形成しなかった(図2および表2)。NTG細胞由来のこれらのまれな腫瘍は、高細胞投与量でのみ観察され、細胞選別の不純物(〜0.5%)に起因すると思われる。重要なことには、ESA+CD44+結腸癌幹細胞により産生した腫瘍は、結腸癌幹細胞が単離された腫瘍と表現型が類似していた(図3)。
実施例2
マイクロアレイ分析による結腸癌幹細胞マーカーの同定
結腸癌幹細胞をうまく単離した後で、非腫瘍形成性腫瘍細胞に対比して結腸癌幹細胞のマーカーを同定するためにマイクロアレイ分析を利用した。予備選別された腫瘍細胞、腫瘍形成性癌幹細胞、および選別された非腫瘍形成性充実性腫瘍細胞は、2回の繰り返しで上記のようにFACSにより単離および分離した。総RNAは、製造業者の説明書通りにRNeasy(Qiagen, Valencia, CA)を使用して、異なる細胞集団から単離した。マイクロアレイ分析用のプローブを調製し、Affymetrixの説明書(Affymetrix, Santa Clara, CA)通りにAffymetrix HG-U133遺伝子チップにハイブリダイズした。アルゴンイオンレーザ共焦点顕微鏡を用いてアレイをスキャンし、アレイ上の各プローブセットについての強度は、Affymetrixの手順通りにAffymetrix Microarray Suite 4.0ソフトウェアを用いて評価した。
マイクロアレイ分析により、非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて結腸癌幹細胞(両細胞集団はFACSにより単離された)で増加した発現を有すると同定された遺伝子(図4A)を表1に挙げる。これらの遺伝子は、結腸癌幹細胞の遺伝子発現プロファイルとして役立ち、結腸癌幹細胞のマーカーに用途を見出す。このリストに含まれるのは、Notch経路標的遺伝子HES1およびHES6である。特に、HES6は、FACSで選別された非腫瘍形成性腫瘍細胞の6倍のレベルで、単離された腫瘍形成性結腸幹細胞に発現することが見出された(図5A)。これは、Notch経路の活性化が結腸癌幹細胞の生物学的機能に重要であることを示唆し、このまれな細胞集団におけるNotch活性化の独特なマーカーとしてHes6および/またはHES1を強調している。
マイクロアレイのデータを立証するために、FACSで精製された結腸癌幹細胞および非腫瘍形成性細胞からRNAを独立して単離し、Taqmanアッセイ定量RT-PCRを使用して相対遺伝子発現を評価した。UM-C4結腸癌細胞から精製された細胞集団を使用して、例えばHES1はNTG細胞に比べてTG細胞で増加していることが示された(図5B)。追加のサブセットの結腸癌幹細胞遺伝子もまたこの方法で評価し、ATOH1、BMPR1A、CDH1、EPHB2、MYB、MYC、SOX9、およびSTRAPがNTG細胞に比べてTG細胞で増加していると立証されたが、TCF4およびVIMはNTG細胞に比べて結腸癌幹細胞で一貫して低かったことを実証した(図4B)。
実施例3
結腸癌幹細胞によるHES6発現の分析
非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞に比べて腫瘍形成性ESA+44+結腸腫瘍細胞で上方制御されているというHES6発現の同定は、結腸癌幹細胞についてさらに濃縮するためにHES6を使用することを可能にする。ESA+44+腫瘍形成性結腸幹細胞によるHES6発現を調べるために、HES6プロモーターを使用して結腸腫瘍細胞におけるマーカータンパク質GFPの発現を制御し、ESAおよびCD44の細胞表面発現ならびにGFPの発現に基づいて細胞を選別する。
HES6で調節されるGFPレポーター構築物を産生するために、ゲノム性ヒトDNAから内因性HES6プロモーターを単離し、GFP発現カセットの5'に連結し、次に標準的な組換えDNA技法を使用してViraPower(商標)レンチウイルス発現システム(Invitrogen, Carlsbad, CA)に組み込む。製造業者のプロトコール通りにウイルス粒子を産生させ、上に詳細に記載するように単離された結腸腫瘍幹細胞に感染させるために使用する。感染した腫瘍幹細胞は、腫瘍を成長させるために免疫無防備状態のマウスで再継代し、次にESA、CD44、およびGFPの発現についてその腫瘍を分析することができる。
HES6-GFP感染結腸癌幹細胞により産生した腫瘍を単離し、上記のように単一細胞懸濁物を産生する。次に、上記のように細胞表面マーカーESAおよびCD44に基づいて単一細胞腫瘍懸濁物を腫瘍形成性細胞および非腫瘍形成性細胞に選別し、GFPの発現についてさらに選別し、GFP+細胞により示される、HES6を発現するESA+44+結腸癌幹細胞の率を判定する。
ESA+44+癌幹細胞集団がGFP-およびGFP+細胞集団の両方を有するならば、これらの異なる細胞集団の腫瘍形成性を判定する。具体的には、単離されたESA+44+GFP-細胞に比べて、ESA+44+GFP+細胞は、動物1匹あたり細胞約1000;500;および250個をNOD/SCIDマウスに皮下注射する。マウスにおける一貫した腫瘍形成に必要な注射細胞数の差は、HES6プロモーターにより駆動されるGFPの発現について選択することが腫瘍形成性腫瘍細胞をさらに濃縮するかどうかを判定するであろう。
実施例4
結腸癌幹細胞に及ぼす治療用化合物の効果を分析するためのHES6-GFPに基づくアッセイ
結腸癌幹細胞におけるGFPの発現を駆動するためにHES6プロモーターをうまく使用できることは、結腸癌幹細胞の性質に及ぼす潜在的治療用化合物の効果を調べるためにHES6-GFPに基づくアッセイを使用することを可能にする。結腸癌幹細胞は、GFPの発現に基づき容易に検出することができ、GFP+結腸癌幹細胞数の増加または減少は、潜在的治療用化合物を用いた処置後に判定することができる。
結腸癌幹細胞を単離し、上に詳細に記載されたようにHES-GFPレンチウイルスを感染させ、免疫不全マウスに皮下注射する。次に、動物は、例えば結腸癌幹細胞マーカーに対する抗体などの潜在的治療用化合物で直ちに処置するか、または触知可能な腫瘍を成長させ、それから該化合物を用いた処置を開始するかのいずれかとする。このように、例えば裸の抗PTGFRN抗体または対照抗体を1週間に2回、6週間i.p.注射する。抗体処置の後で、腫瘍を採集し、上記のように単一細胞懸濁物に解離させ、FACS分析を行い、GFP+結腸癌幹細胞を検出する。対照抗体に比べて抗PTGFRN抗体で処置された動物由来の腫瘍中の結腸癌幹細胞の存在および数をこのように判定する。
実施例5
HES6-ルシフェラーゼレポーターアッセイ
内因性HES6プロモーターは、三つのcbf転写結合ドメインを有し、これは、単一のcbf結合ドメインを有するプロモーターを伴うHES1と同様に、HES6の発現がNotchシグナル伝達経路の活性化により直接調節されることを示す。結腸癌幹細胞マーカーとしてのHES6の同定は、例えばルシフェラーゼに基づくレポーターアッセイで、Hes6のNotch経路活性化を特徴付けるために、そしてNotchシグナル伝達経路の活性化または阻害に及ぼす化合物の効果を測定するために、Notch活性化についてのレポーターとしてHES6プロモーターを使用できるようにする。
Notchルシフェラーゼレポーターを産生させるために、ゲノム性ヒトDNAから内因性HES6プロモーターを単離し、標準的な組換え技法を使用して発現プラスミドベクター中のホタルルシフェラーゼ発現カセットの5'に連結する。加えて、HES6プロモータールシフェラーゼポリヌクレオチドをViraPower(商標)レンチウイルス発現システム(Invitrogen, Carlsbad, CA)に組み込み、製造業者のプロトコール通りにウイルス粒子を産生させる。対照として、三つのcbf転写結合ドメイン内にHES6プロモーターへのRBP-Jの結合を乱す突然変異を有する突然変異HES6-ルシフェラーゼレポーターベクターを産生させる。
本発明の一つの態様では、インビトロルシフェラーゼアッセイを使用して、四つのNotch受容体のうちどれがHES6の発現に関与しているかを判定することによって、HES6のNotch経路活性化を特徴付ける。抗生物質および10%FCSを補充したDMEM中で培養したHEK293細胞に、下記を共トランスフェクトする:1) Notchシグナル伝達のレベルを測定するための野生型または突然変異HES6-ルシフェラーゼレポーターベクター;2) トランスフェクション効率についての内部対照としてのウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼレポーター(Promega; Madison, WI);および3) 四つのNotch受容体のうち一つをコードしている発現ベクターまたは陰性対照。トランスフェクションの48時間後に、デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega; Madison, WI)を使用して、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対してホタルルシフェラーゼ活性を基準化して、ルシフェラーゼレベルを測定する。各Notch受容体の異種発現により、内因性レベルを超えて高まったNotchシグナル伝達のレベルは、これらの受容体のうちどれが結腸癌幹細胞におけるHES6活性化に関与しているかの判定を助けるであろう。
本発明の別の態様では、インビトロルシフェラーゼアッセイを使用して、Notchシグナル伝達に及ぼす異なる分子の効果を判定する。抗生物質および10% FCSを補充したDMEM中で培養したHEK293細胞に、下記を共トランスフェクトする:1) Notchシグナル伝達のレベルを測定するための野生型または突然変異HES6-ルシフェラーゼレポーターベクター;および2) トランスフェクション効率についての内部標準としてのウミシイタケルシフェラーゼレポーター(Promega; Madison, WI)。さらに、Notch受容体をコードしている発現ベクターをトランスフェクトして、培養細胞ににおける内因性Notchシグナル伝達を増強する。トランスフェクションの24時間後に、Notchシグナル伝達に及ぼす効果について試験されている分子、例えばNotch受容体に対する抗体、または陰性対照分子を細胞培養液に添加し、8時間後にデュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega; Madison, WI)を使用して、ルシフェラーゼレベルを測定する。三つの独立した実験を3回の繰り返しで行う。異なる化合物がインビトロでNotchシグナル伝達経路を活性化または阻害する能力をこのように判定する。
なお別の態様では、インビトロアッセイでNotchシグナル伝達経路を阻害する化合物を、インビボルシフェラーゼアッセイで使用して、結腸癌幹細胞に及ぼす効果を判定する。上記のように単離された結腸癌幹細胞に野生型または突然変異HES6-ルシフェラーゼレンチウイルスを感染させ、VP-16マウスおよびエストロゲン前処置免疫不全マウスの乳腺脂肪体に感染腫瘍細胞を注射する。次に、例えばNotch受容体に対する抗体などのNotch阻害分子で動物を直ちに処置するか、触知可能な腫瘍を成長させてから、阻害化合物の処置を開始する。次に、生体ルミネセンス撮像を使用して、生存マウスにおいてルシフェラーゼ活性について原発腫瘍の成長および遠位の転移を経時的にモニターする。このように、Notchシグナル伝達を阻害する異なる化合物がインビボで癌幹細胞の増殖および転移を停止または減速させる能力を判定する。
実施例6
腫瘍試料中の結腸癌幹細胞数を検出するためにHES6を使用した定量RT-PCRアッセイ
結腸癌幹細胞のマーカーとしてのHES6の同定は、TaqMan分析により腫瘍試料中に存在する癌幹細胞数を判定することにHES6を使用できるようにする。そのような分析は、例えば癌幹細胞の増殖または生存に及ぼす実験化合物の効果を調べるために行うことができよう。腫瘍を診断し、かつ/または予後を提供するための患者の腫瘍試料の分析もまた企図されている。
エキソン-イントロン結合部にかけてHES6 mRNAの領域と特異的にハイブリダイズし、それを増幅するTaqManオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、Primer Express Software(Applied Biosystems; Foster City, CA)を使用して設計し、その特異性は従来のRT-PCR技法を使用して確認する。上記のように結腸癌幹細胞を単離し、製造業者のプロトコール通りにRNasy(Qiagen, Valencia, CA)を使用して総RNAを抽出する。Applied Biosystems 7300 Real-Time PCR SystemおよびTaqMan One-Step RT-PCR Master Mix Reagents Kitを使用して、既知数の結腸癌幹細胞由来の1マイクログラムのRNA中に発現したHES6 mRNAの平均量の標準曲線を決定する。検出可能なレベルのHES6を発現しない細胞集団由来のRNAを用いて、単離された結腸癌幹細胞由来のRNAを連続10倍希釈したものを使用して、標準曲線を作製する。ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して発現レベルを基準化する。未知数の癌幹細胞を有する結腸癌試料は、同時に作製した標準曲線と比較して、試料中の癌幹細胞数を決定することができる。
本発明の一つの態様では、TaqMan分析を使用して、結腸癌幹細胞の増殖および生存に及ぼす化合物の効果を調べることができる。上記のように単離された結腸癌幹細胞を、NOD/SCIDマウスに皮下注射する。腫瘍細胞を触知可能な腫瘍に成長させ、その時点で、例えば表1に開示される結腸癌幹細胞マーカーに対する抗体などの潜在的治療用化合物で動物を処置する。このように、例えば裸の抗MET受容体抗体または対照抗体を1週間に2回、2〜3週間i.p.注射する。次に、MET抗体および対照を注射されたマウスから腫瘍を採集し、製造業者のプロトコール通りにRNasy(Qiagen, Valencia, CA)を使用して腫瘍から総RNAを単離する。次に、上記のように産生された結腸癌幹細胞中のHES6の発現の標準曲線に比べて、異なる実験群における各腫瘍由来のHES6陽性結腸癌幹細胞の数をTaqMan分析により判定する。抗MET抗体処置群における結腸癌幹細胞数の減少は、その治療用化合物が結腸癌幹細胞の生存および/または増殖に直接効果を有することを示唆している。
本発明の別の態様では、TaqMan分析を使用して、患者試料中の結腸癌幹細胞の数を決定することができる。上記のように結腸癌の新鮮または歴史的腫瘍生検からRNAを抽出し、上記のように産生された結腸癌幹細胞中のHES6発現の標準曲線と対比させることにより、試料中のHES6陽性結腸癌幹細胞数を決定する。そのような分析は、結腸癌の診断、結腸癌の予後の提供、結腸癌に及ぼす異なる治療の効果の分析、および結腸癌幹細胞を標的とする治療の処方に用途を見出す。
実施例7
結腸癌幹細胞のマーカーとしてのCEACAM6の同定
マイクロアレイ分析により、選別された非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて結腸癌幹細胞において増加した発現を有すると同定された遺伝子を表1に示す。これらの遺伝子は、結腸癌幹細胞の遺伝子発現プロファイルとして作用し、結腸癌幹細胞のマーカーとして用途を見出す。このリストに含まれるのは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである接着分子CEACAM6である(図6)。上記の結腸腫瘍細胞のFACSAriaによる分析は、モノクローナルCEACAM6抗体(Alexis Biochemicals;クローンGM7G5;図7A)の添加に関連する平均蛍光強度に明確なシフトを示した。さらに、CEACAM6は、結腸腫瘍細胞に異種発現した(図7B)。
実施例8
CEACAM6の発現に基づく結腸癌幹細胞の精製
結腸癌幹細胞におけるCEACAM6の増加した発現の同定は、総腫瘍細胞集団から幹細胞をさらに精製するためのマーカーとしてのCEACAM6の使用を示唆している。CEACAM6の発現が腫瘍形成性結腸癌幹細胞集団を同定するかどうかを判定するために、結腸細胞は、ESA、CD44、およびCEACAM6の発現に基づき選別し、異なる選別細胞集団の腫瘍形成性を免疫不全マウスで評価する。
腫瘍を単離し、上記のように単一細胞腫瘍懸濁物に解離させる。その後、上に詳細に記載したようにこれらの細胞をESA+44+結腸癌幹細胞;ESA+44-非腫瘍形成性結腸腫瘍細胞;ESA+44+CEACAM6+;およびESA+44+CEACAM6-細胞集団に選別する。次に、限界希釈した腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスに注射したものにより、これらの異なる単離された結腸腫瘍細胞の腫瘍形成性を判定する。腫瘍を成長させ、約30日目から腫瘍容積を測定する。
実施例9
結腸癌幹細胞のマーカーとしてのCD166の同定
マイクロアレイ分析により、選別された非腫瘍形成性腫瘍細胞に比べて結腸癌幹細胞において増加した発現を有すると同定された遺伝子を表1に示す。これらの遺伝子は、結腸癌幹細胞の遺伝子発現プロファイルとして作用し、結腸癌幹細胞のマーカーとしての用途を見出す。このリストに含まれるのは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである接着分子CD166である。上記のような結腸腫瘍細胞のFACSAriaは、19.8%の結腸腫瘍細胞および92%を超えるESA+44+結腸癌幹細胞でCD166の発現を示した(図8)。
実施例10
CD166の発現に基づく結腸癌幹細胞の精製
結腸癌幹細胞におけるCD166の増加した発現の同定は、総腫瘍細胞集団から幹細胞をさらに精製するためのマーカーとしてのCD166の使用を示唆している。CD166の発現が腫瘍形成性結腸癌幹細胞集団を同定するかどうかを判定するために、結腸細胞は、ESA、CD44、およびCD166の発現に基づき選別し、腫瘍形成性を免疫不全マウスで評価した。
腫瘍を単離し、上記のように単一細胞腫瘍懸濁物に解離させる。その後、これらの細胞を上に詳細に記載したようにESA+44+166+;ESA+44+166-;ESA+44-166+;ESA+44-166-細胞集団に選別する。単離された各結腸腫瘍細胞集団からの細胞200個をNOD/SCIDマウスに注射した。
実施例11
上昇したレベルのALDH活性および遺伝子発現を示す結腸癌幹細胞
結腸腫瘍細胞がALDH活性を有するかどうかを判定するために、マウス細胞の枯渇した一次異種移植腫瘍(CD45およびH2Kdに対する抗体を使用して)を、Aldefluor(商標)試薬を使用してスクリーニングした。大部分のCD44+細胞、すなわち約85%は、結腸腫瘍細胞全体よりも検出可能に高いALDH活性レベルを有した(図9A)。この観察に一致して、マイクロアレイ分析は、TG UM-C4、UM-C6、およびOMP-C9 TG細胞が、NTG集団よりも高いレベルでいくつかのALDHファミリーのメンバー(例えばALDH1A1、ALDH1B1、ALDH2、ALDH3A2、ALDH5A1、ALDH6A1、ALDH7A1、ALDH9A1、およびALDH18A1)を発現することを示した(図10AおよびB)。解離およびFACSによりUM-C4腫瘍からALDHおよびCD44亜集団を単離した後で、ESA+CD44+ALDH+亜集団だけが移植の際にTG能を有した(図9B;表2)。UM-C4結腸腫瘍由来のESA+CD44+ALDH+細胞とは対照的に、他の異種腫瘍系(すなわちUM-C6、OMP-C5、およびOMP-C8)由来のTG細胞は、ALDH活性と同時精製しなかった(図9C;表2)、これは、患者、病期、起源のTG細胞、および/またはALDH遺伝子発現のレパートリー間の不均一性を反映しうる結果であろう。興味深いことには、ALDH3A1遺伝子産物は、CPAに対する抵抗性もまた仲介することがあり、ALDH3A1の発現は、NTG細胞に比べてUM-C4 TG細胞のマイクロアレイ研究で独特に上昇したが、UM-C6またはUM-C9細胞では差次的に発現しなかった(図1OAおよびB)。マイクロアレイのデータを立証するために、FACS精製結腸癌幹細胞および非腫瘍形成性細胞からRNAを独立して単離し、Taqmanアッセイ定量RT-PCRを使用して相対遺伝子発現を評価した。ALDH1A1は、NTG細胞に比べてTG細胞で劇的に増加していると立証された(図10C)。
シクロホスファミド(CPA)は、DNAの架橋形成を促進し、通常使用される化学療法剤であり、多くの場合、患者はCPAに対して抵抗性を発生する。TG結腸腫瘍細胞における上昇したレベルのALDHおよびいくつかのALDHファミリーメンバーの遺伝子発現は、処置後の腫瘍の再発を担うまさにその細胞における当該抵抗性の一因となりうる。これを検証するために、UM-C4腫瘍由来の、高いALDH活性を有するTG細胞のCPA療法に対する抵抗性を、大多数のNTG腫瘍細胞(CD44negおよび/またはALDHneg)と比べて判定した。500個のESA+CD44+細胞を用いた腫瘍の開始後に、腫瘍を〜400mm3達するようにさせ、その時点でマウスを無作為化し、それに25mg/kg CPAまたは媒体を1週間に2日投与した。CPA処置マウスにおけるUM-C4腫瘍の成長は、媒体で処置されたマウスに比べて遅延した(図11A)。さらに、ESA+CD44+細胞は、媒体処置マウスに比べてCPA処置マウス由来の腫瘍で濃縮されており(図11B)、高ALDH活性を有する細胞の出現率が>70%増加した(図11C)。これは、TG細胞がNTG細胞よりも本当に治療に不応性であったことを示唆している。
対照媒体で処置された対照に比べて、CPAで処置された腫瘍におけるESA+CD44+ALDH+細胞における増加が、TG細胞出現率における増加と相関したかどうかを判定するために、限界量の残留腫瘍の腫瘍細胞をナイーブNOD/SCID宿主に移植した。具体的には、媒体処置動物に比べてCPA処置動物における癌幹細胞出現率を判定するために8匹以上のマウス4組に、細胞1500個から始まって腫瘍細胞全体の3倍系列希釈の移植を受けさせた(希釈:細胞1500個、500個、167個、および56個)。腫瘍の成長について4ヶ月間マウスをモニターし、投入集団の間でTG細胞出現率を評価するためにポアソン統計解析を行うことができるように、腫瘍の成長についてスコアを陽性または陰性のいずれかで付けた。CPA処置または媒体処置腫瘍のいずれか由来の細胞1500個を注射された8匹のマウスは、全て腫瘍を発生した(表2)。9/9、5/8、および4/8匹のマウスが、それぞれ500、167、および56個の細胞の投入で腫瘍を発生したが、6/8、3/8、および2/8匹のマウスが連続的に移植された媒体処置腫瘍由来の腫瘍を成長させたことから、少ない細胞の投入が、CPA処置マウス由来の腫瘍におけるTG細胞出現率の増加を明らかにした。これらの出現率は、対照媒体処置腫瘍に比べて、CPA処置腫瘍の集団全体において、TG細胞1:315に比べて1:120の出現率に変換され、これは、CPA処置腫瘍におけるTG細胞の>2.6倍の増加を実証している(図11D;p=0.024)。最後に、ESA+CD44+細胞が腫瘍を発生する固有の能力はCPA処置腫瘍および媒体処置腫瘍の間で等しいと思われたが、データは、CPA処置腫瘍から選別された細胞で、さらに侵襲的な腫瘍成長の傾向を示す(図11E)。
実施例12
インビボ腫瘍形成性を評価することによる癌幹細胞標的の同定
最大14日間培養して維持した後で、動物に腫瘍形成性癌幹細胞を注射することにより実証されるように、それらの癌幹細胞をインビトロ培養状態で維持および増大させた。BMP受容体シグナル伝達がインビトロでの癌幹細胞の増大または維持に効果を有するかどうかを判定するために、UM-C6結腸腫瘍を加工し、マウス系列細胞を枯渇させ(mLin-;H2KdおよびマウスCD45)、100ng/mLのBMP2およびBMP4を欠如または含有する培地とともにラミニン被覆カバーガラス上で6日間平板培養した。次に、細胞を採集し、マウスに皮下注射して、腫瘍形成性を判定した。腫瘍形成性が減少(すなわち100%に対して83%)したばかりでなく、様々な他の薬剤(本明細書では論じない)とは対照的に、インビトロのBMP受容体の結合は、マウスにこれらの細胞を注射した際に、その後の腫瘍の成長速度を有意に低下させた(図12A)。インビボで75日を超えた後で、BMPに曝露された細胞由来の結腸腫瘍は、対照腫瘍のサイズの42.9±10%(N=5;p<0.002)であった(図12B)。これは、腫瘍形成性に及ぼす有害作用を実証している。
実施例13
頭頸部癌幹細胞の単離
乳癌における癌幹細胞を同定するためにうまく採用された方法を使用して、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を研究した。HNSCCは、マウスにおいて腫瘍を形成し、本来の腫瘍の不均一性を再創出する独占的な能力をもつ別個の癌幹細胞集団を有する。この細胞集団を他の癌細胞と区別することができる細胞表面マーカーは、腫瘍に存在する。HNSCCから癌幹細胞を同定する能力は、この重大な癌細胞集団に対して標的化された新しい処置戦略の開発を可能にする。
原発腫瘍の移植
雌性NOD/SCIDマウスにケタミン/キシラジン麻酔薬を0.02mL/20g(PBS 4mL中にキシラジン20mgと混合したケタミン300mg)で腹腔内注射した。摘出から1時間以内に、手術室から氷冷した新鮮腫瘍標本を培地199中に受け入れた。腫瘍の小片をハサミで2mmのサイズに切り刻んだ。次に、マウスの中背部に3mmの切開を行い、充実性腫瘍の小片をトロカールで頸部基部の両側に移植した。マウスの最終的な位置に腫瘍をピンチし、切開を液体接着縫合剤で閉じた。
腫瘍の消化
滅菌ハサミで原発腫瘍を小さな断片に切り、続いて滅菌メスでさらに切り刻んだ。次に、この小片をHBSSで洗浄し(5分:1000rpm)、培地199および200u/mLコラゲナーゼIIIの溶液中に入れた。この混合物を37℃で最長3時間インキュベートし、完全に消化させた。15分毎に、10mLピペットを通過させて溶液を混合し、腫瘍の小片を剪断させた。ウシ胎児血清を添加してこの消化を停止させ、次に40μmナイロンメッシュを通して濾過した。ハンクス平衡塩溶液/2%熱不活性化ウシ血清を用いてこの懸濁した細胞を2回洗浄し、次にフローサイトメトリーで染色するか、凍結するか、または注射した。
単一細胞懸濁物の注射
腫瘍の移植手順の場合と同様にマウスを麻酔した。最高200万個の細胞をHBSS/2%HICS中で洗浄し、次にRPMI 1640 100μL中に懸濁した。次に、細胞をMatrigel(BD Pharmingen)溶液と1:1の比で混合し、最終容量200μLを形成させた。次に、マウスの頸部基部にその懸濁物を皮下注射し、次に液体接着縫合剤で閉じた。
フローサイトメトリー
単一細胞懸濁物は、HBSS/2%HICS中で洗浄し、次に細胞を計数した。次に、HBSS 100μL/細胞106個中に細胞を再懸濁し、1mg/mLのSandoglobinと共に10分間インキュベートした。次に、細胞をHBSS/2%HICSで2回洗浄し、HBSS 100μL/細胞106個に再懸濁し、対応する抗体で染色した。抗CD44(Pharred、PE、またはAPCコンジュゲート:BD Pharmingen)を抗体毎に適切に希釈して添加し、氷上で20分間インキュベートした。原発腫瘍細胞は、系列マーカー抗CD2、CD3、CD10、CD16、CD18、CD31、CD64、およびCD140bでもまた染色した。継代した腫瘍細胞を抗H2Kd(BD Pharmingen)と共にインキュベートした。次に、染色された細胞をHBSS/HICSで2回洗浄し、0.5mL/細胞106個に再懸濁した。次に、7-AAD(BD Pharmingen)を適切な希釈で添加し、選別細胞から非生存細胞を除去できるようにした。次に、この懸濁物をBD FACSVantageフローサイトメーターを用いて選別した。フローサイトメトリーの間に全てのLineage+/マウス細胞を除去した。7-AAD染色陽性に基づいて死細胞を除去した。前方および側方散乱プロファイルを利用して、細胞のダブレットを除去した。全ての細胞を再分析し、2回選別して>95%の純度を保証した。
異なる4人の対象の原発腫瘍からHNSCC標本を得た。全ての腫瘍はNOD/SCIDマウスモデルにうまく生着した(表1)。4回の実験のうち3回は、移植してマウスに継代した後の腫瘍標本で行った。1回の実験(UMHN4)は、患者から得た後で未継代の腫瘍で直接行った。混入しているマウス細胞は、H2K+(マウス組織適合性クラス 1) 細胞を除去することによって、マウスに継代した標本から除いた。
腫瘍形成性マーカーの同定
HNSCC標本は、細胞表面マーカーCD44に関して不均一であった。CD44が腫瘍形成性細胞と非腫瘍形成性細胞とを区別できたかどうかを評価するために、フローサイトメトリーを採用して、CD44陽性または陰性であった細胞を単離した(CD44+、CD44-)。4×104個よりも多いCD44+Lineage-HNSCC細胞をマウスに注射した場合に、腫瘍は常に12〜16週以内に形成した。5〜25×103個のCD44+Lineage-HNSCC細胞を注射した場合、腫瘍は移植11回のうち5回で形成した。CD44-Lineage-細胞を全例に注射した場合、検出可能な腫瘍は形成しなかった(表3)。CD44-細胞から腫瘍が成長した1例は、研究の初期に起こり、細胞の選別に必要なフローサイトメトリーのゲーティングに関する未経験が原因で、試料にCD44+細胞が混入したことに起因する思われる。
正常細胞型に関連する抗原(系列マーカーCD2、CD3、CD10、CD18、CD31、CD64、およびQ140b)は、癌細胞に発現していなかった。これらのマーカーを使用して、腫瘍標本から正常白血球、線維芽細胞、内皮細胞、中皮細胞、および上皮細胞を除去した。腫瘍中のCD44+Lineage-細胞の率は。5.52から16.45まで変動した(図5A〜D)。わずか5×103個のCD44+細胞が腫瘍を生じた。対照的に、最大5×105個のCD44-細胞は腫瘍を形成しなかった。24〜32週を超えた後でも、CD44-Lineage-細胞の注射部位は検出可能な腫瘍の成長を示さなかった。
CD44+Lineage-細胞は、CD44の発現について表現型的に多様な細胞を有する腫瘍を生じた。移植されたCD44+細胞に起因する腫瘍は、組織観察で本来の腫瘍の不均一性を再現した(図6)。CD44+細胞のみから成長した腫瘍は、CD44の発現に基づいて再選別することができた。UMHN4およびSUHN2由来のCD44+Lineage-細胞を2ラウンドの腫瘍形成を経由して連続的に継代した。UMHN2由来のCD44+Lineage-細胞は3ラウンドの腫瘍形成を経由して継代されたものであった(図7)。各場合で、CD44+細胞だけが腫瘍の成長を生じ、CD44-細胞集団は腫瘍の成長を生じなかった。
実施例14
頭頸部癌幹細胞における下流の標的
本実施例に使用する方法は、本発明の癌幹細胞を使用したNotch関連療法および他の抗癌療法の開発のための案内を提供する。特異的Notchリガンドにより誘導されるNotchシグナル伝達により調節されうる分子経路を理解し始めるために、アレイ技法を使用する。University of Michigan Microarray Networkにより提供されるResearch Geneticsからの配列が実証されたヒトcDNAは、Cancer and Microarray Facilityにより整列される。自己複製性頭頸部癌幹細胞または腫瘍に見出される様々な細胞集団由来の細胞からプローブを調製する。プローブをアレイにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーションパターンはCancer and Microarray Facilityが読み取る。次に、ハイブリダイゼーションパターンを分析し、様々なNotchリガンドで刺激された頭頸部癌幹細胞および非刺激細胞由来のプローブにハイブリダイズする遺伝子を同定した。当該遺伝子は、頭頸部癌細胞の生存および自己複製の調節に関与する遺伝子に相当しうる。
マイクロアレイの調製
マイクロアレイ技法を使用して、造血幹細胞の遺伝子発現を分析した。これを今回癌幹細胞に拡張する。
University of Michigan Microarray Networkは、現在ではResearch Geneticsから配列を実証された32500個のヒトcDNAを有する。「癌」チップは、NCIと共同で集合された。このチップは、増殖および腫瘍形成に関与する1,200個の遺伝子の総合的な配列(constellation)を有する。プログラム細胞死に関与することが知られている全遺伝子を有する、University of Michiganによって開発された「アポトーシスチップ」もまたある。Notchの下流の標的であることが公知であるHES遺伝子がアレイに含まれていることに注目されたい。
頭頸部癌幹細胞由来のプローブの調製
新鮮精製した頭頸部癌幹細胞または様々なNotchリガンドの存在下または非存在下でインキュベートされた頭頸部癌幹細胞のいずれかからメッセンジャーRNAを単離する。必要に応じ、PCRまたは直鎖RNA増幅などによりRNAを増幅する。Wang et al., Nature Biotechnology. 18:457-459(April 2000)。オリゴ-dTプライマーからの逆転写によりプローブを調製し、CY3またはCY5コンジュゲートヌクレオチドを組み込むことにより標識する。遺伝子発現プロファイルは、新鮮単離された未培養頭頸部癌細胞から調節されたプローブ、および適切なNotchリガンド(Fringeファミリーのメンバーを含む)に単独またはどのリガンドが異なる腫瘍細胞集団により発現されるかにより判定された組み合わせのいずれかで曝露された細胞などの培養頭頸部癌細胞から調製されたプローブを使用して調べる。これらのアッセイを行うために、膜貫通領域を欠失した可溶型のDeltaもしくはJaggedファミリーのメンバーまたはFringeの一つに細胞を曝露する。Fringeは分泌タンパク質である。それぞれバキュロウイルスまたは哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトされた昆虫細胞または哺乳動物細胞からDelta、Jagged、およびFringeファミリーの各Notchリガンドの組換えタンパク質が作られる。
対照頭頸部癌の腫瘍形成性細胞と様々なNotchリガンドに曝露された腫瘍形成性細胞の間の遺伝子発現パターンの比較を行う。各腫瘍由来の頭頸部癌幹細胞からのプローブを、様々なNotchリガンドに曝露された培養頭頸部癌幹細胞から作られた異なる蛍光体で標識されたプローブと組み合わせ、それらのハイブリダイゼーションパターンを比較する。これを行うために、頭頸部癌幹細胞をFACSにより単離する。細胞を単一細胞の密度に蒔き、細胞間のNotch相互作用を排除する。可溶型のDelta、Delta様、Jagged1、Jagged2、または各Fringeに細胞を曝露する。細胞は、単独および個別の細胞集団のNotchリガンド発現パターンにより示唆される組み合わせの両方で各タンパク質に曝露する。各試験条件からのプローブにハイブリダイズしたマイクロアレイを比較および分析し、Notchリガンド相互作用により影響される分子経路を見抜く。例えば、特定の細胞集団がDeltaおよびManic Fringeを発現するならば、頭頸部癌幹細胞の1群はDelta単独に、第2群はDeltaおよびManic Fringeに、第3群はManic Fringe単独に曝露する。cDNAは各集団からCy5またはCy3標識して作られ、マイクロアレイチップを探索するために使用する。加えて、対照培地中で培養された細胞および新鮮単離された頭頸部癌細胞から作られたcDNAと共に各集団からのcDNAを使用して、マイクロアレイチップを探索する。各群を5回比較し、各被験群によるアレイ遺伝子の発現プロファイルにおける任意の差が実在することを確実にする。
抗Notch4抗体で処理された細胞からのプローブの調製
Notch4に対する抗体は、インビトロ成長およびインビボ腫瘍形成を阻害する。該抗体がNotch-4アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用するならば、この効果を説明することができる。可溶性Deltaはインビトロで癌細胞の成長を促進することから、抗体はNotch4アンタゴニストである可能性が最も高い。抗Notch4抗体が腫瘍の成長を阻害するメカニズムを確認するために、抗Notch4または無関係の対照抗体および様々な組み合わせのNotchリガンドの存在下または非存在下でインキュベートした細胞からプローブを作り、上記のようにマイクロアレイ発現分析に使用する。別の対照群には、抗体の存在下およびNotchリガンドの非存在下でインキュベートされた細胞が含まれる。各比較は、独立して調製されたプローブのバッチを採用した少なくとも6回の独立した試験で行われる。各群の遺伝子発現パターンを比較することによって、抗Notch4抗体がどのようにNotchシグナル伝達に影響するかを判定することができる。
cDNAプローブの作製
mRNA 1〜2μgを通常使用して、マイクロアレイで遺伝子発現プロファイルをスクリーニングするためのプローブを合成する(Wang et al., Nature Biotechnology. 18:457-459(April 2000))。mRNA 6μgがアッセイ毎に必要である(mRNA 6μgの逆転写は、cDNAプローブ約3μgまたはスライド1枚あたりプローブ1μgをもたらすはずである)。癌細胞は、高いRNA含量を有する傾向にある。過去のアッセイでは、癌細胞107個から総RNA約100μgが生じ、それは今度はポリA+RNA約3μgをもたらした。したがって、mRNA 6μgを産生するために、約2×107個の細胞が必要であろう。データに記載するように、フローサイトメトリーで精製された頭頸部癌幹細胞のその数は、約5〜10個の1cm腫瘍から単離することができる。
頭頸部癌幹細胞は、腫瘍内の総細胞数の約5%に相当する。フローサイトメトリーによって106個を超える新鮮解離(未培養)頭頸部癌幹細胞を1日に単離することは実際的ではない。これは、1日の選別からmRNA 0.5μg未満をもたらすであろう。複数日の選別からの頭頸部癌幹細胞を混合して、新鮮単離細胞からプローブを調製するために十分なmRNAをプールすることができるが、全てのアッセイをこの方法で行うことは実際的ではない可能性がある。一部のアッセイでは短期間の組織培養が必要となる。選別された細胞の平板培養効率は約10%である。したがって、プローブを合成する前にテンプレートを酵素的に増幅することが必要でありうる。これは、PCRまたはT7 RNAポリメラーゼを使用したRNAの直鎖増幅のいずれかによって行うことができる。このプロトコールは、少数の幹細胞からcDNAを増幅するために15〜18ラウンドのPCRを採用する。このプロトコールは、高品質造血幹細胞(HSC) cDNAライブラリーを構築するため、および造血幹細胞からプローブを作製するために使用された。新鮮単離された頭頸部癌幹細胞からプローブを産生するために、同じアプローチを試験する。または、数グループは、マイクロアレイハイブリダイゼーション用のプローブの産生に直鎖RNA増幅を使用した成功について報告した。したがって、両方法でプローブを調製し、その結果として生じるハイブリダイゼーションパターンを調べることによりこの二つの方法を比較する。T7 RNAポリメラーゼ結合部位を有するオリゴ-dTプライマーを使用してcDNAをプライミングし、Superscript逆転写酵素(Gibco)と、cDNAの5'末端にタグ付けさせるClontech 5のスイッチオリゴマーとにより合成する。第二鎖のcDNAを大腸菌DNAポリメラーゼを使用して合成する。次に、増幅したRNA(aRNA)は、T7 RNAポリメラーゼまたはPCRを使用して産生する。二つのこの増幅法のどちらを使用するかは、標準的なcDNA合成で作製したプローブを比較することにより判定する。aRNAを調製した後で、ランダムヘキサマーを使用してcDNAを再合成する。次に、このcDNAはプローブに使用してもよく、必要ならば追加のラウンドの増幅を行ってもよい。両方のアプローチを使用して、MCF-7細胞(ヒト乳癌幹細胞系)40,000個からプローブを調製する。未増幅MCF-7細胞由来のプローブと併行してしてこのプローブをヒトcDNAマイクロアレイにハイブリダイズする。未増幅プローブのハイブリダイゼーションパターンを最も厳密に再現する増幅アプローチを選択する。次に、増幅されたプローブが未増幅プローブのハイブリダイゼーションパターンを可能な限り厳密に再現するまで、増幅条件を修正する。
ハイブリダイゼーションパターンの分析
ハイブリダイゼーションパターンは、Cancer and Microarray Core施設で、それらのレーザスキャンシステムを使用して分析する。全ての構成要素がGenomics Solutionsにより提供されるアレイ作製、ハイブリダイズ、スキャン、およびハイブリダイゼーションパターンの分析のための統合システムの使用は、ハイブリダイゼーションパターンの一様で効率的な分析を許す。
プローブ間で基準化されたハイブリダイゼーションレベルに少なくとも3倍の差があるならば、転写物は差次的に発現されている。単一試験内でのCy3およびCy5標識プローブからのハイブリダイゼーションシグナルを相互に基準化して、各プローブの有効濃度の潜在的な差を補正し、各群について逆の蛍光体を使用して各試験の反復を行い、プローブの量または標識効率の差を補正する。
差次的発現の立証
細胞群由来のプローブに一貫してハイブリダイズするが、対照細胞群由来のプローブとはハイブリダイズしないcDNAをさらに特徴付ける。これらのcDNAの配列はMicroarray Networkから得る。二つのアプローチを使用して、細胞集団間の候補遺伝子の差次的発現を確認する。最初のアプローチは、候補遺伝子に対するインサイチューハイブリダイゼーションプローブを調製し、次に、上記の様々なNotchリガンドの存在下または非存在下の培地中で培養した頭頸部癌幹細胞を用いてインサイチューハイブリダイゼーションを行うことである。次に、培養細胞でインサイチューハイブリダイゼーションを行う。このアプローチの利点は、個別の細胞レベルで発現を比較できることであろう。
代替アプローチは、候補遺伝子に対するネステッドPCRプライマーを設計すること、および新鮮精製された頭頸部癌幹細胞(上記のように単離)の細胞1〜10個の適量の複数でRT-PCRを行うことである。少数の細胞でRT-PCRを行うことによって、「非発現」集団がまれな発現細胞をたとえ有しても、特定の転写物を増幅させる能力の差を観察することが可能である。このアプローチは、異なる亜集団の多分化能造血前駆細胞の間のRGS 18の差次的発現を実証するために使用された。
差次的発現はノーザン分析により確認することができる。Notchリガンド存在下または非存在下で培養した頭頸部癌幹細胞1〜2×107個由来のポリA+RNAを、差次的に発現されたcDNAのプローブにハイブリダイズする。これらの試料の間でハイブリダイゼーションシグナルを定量的に比較する。
次に、遺伝子がタンパク質レベルで差次的に発現されるという確認を行う。免疫細胞化学染色に情報価値がない場合、異なる細胞からのタンパク質についてウエスタンブロットを行う。
異種移植片モデルにおいて長期間増殖する原発性頭頸部癌細胞だけを使っては、ある種の分子分析は困難である。これらの分析は、細胞系で行うことができる。多数の頭頸部癌細胞系のうち任意のものを使用することができる。Clarke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 92:11024-28(November 1995); Hernandez-Alcoceba et al., Human Gene Therapy. 11:20(September 2000)。これらの細胞系は、原発性頭頸部癌細胞を用いたアッセイで記載したような様々なNotchリガンドまたは抗Notch4抗体もしくは対照抗体の存在下および非存在下で、単一細胞密度で平板培養する。クローン形成性がNotchシグナル伝達により影響されるならば、マイクロアレイ分析についてのプローブは、様々なNotchリガンドまたは抗Notch4抗体もしくは対照抗体の存在下または非存在下の培地中でインキュベートされた細胞系から作製されたcDNAを使用して作製される。事実上無限数の細胞を分析することができることから、増幅されていないプローブを作製することができる。
最後に、細胞系は、抗Notch4抗体がアゴニストであるかアンタゴニストであるかを確認するために有用である。クローン形成性が可溶性Deltaにより高まり、抗Notch4抗体により阻害される細胞系が同定されたならば、その細胞系はこれらのアッセイに使用される。Notch誘導性HES-1プロモーターの制御下で細胞にルシフェラーゼミニジーンを安定トランスフェクトする。Jarriault et al., Molecular & Cellular Biology 18:7423-31 (1998)。細胞を単一細胞密度で平板培養し、細胞間のNotch-Notchリガンド相互作用を阻止する。Notchリガンドと、抗Notch4抗体または対照抗体のいずれかとの様々な組み合わせで細胞を処理する。細胞を採集し、ルシフェラーゼアッセイを行って、どのように各条件が、HET1プロモーターのトランス活性化により反映されるNotchシグナル伝達に影響するかを判定する。
マイクロアレイ分析から出現する候補遺伝子の総合的機能的分析を行うことができる。完全長cDNAを単離し、レトロウイルス発現ベクターにクローニングする。頭頸部細胞系および5個の異種移植腫瘍から単離した頭頸部癌幹細胞をインビトロ感染させ、自己複製および腫瘍形成性に及ぼすレトロウイルス導入遺伝子の効果を、対照ベクターに感染したクローンに比べてアッセイする。導入遺伝子は、IRES-GFPを有するバイシストロニックメッセージとして発現する。これにより、FACSまたは蛍光顕微鏡観察により形質導入細胞を同定できるようになる。Notchシグナル伝達に及ぼす導入遺伝子の効果はインビトロおよびインビボで調べる。これを行うために、組織培養におけるコロニー形成およびマウスにおける腫瘍形成性に影響することが見出されたNotchリガンドの様々な組み合わせに対する応答について、形質導入細胞を試験する。
候補遺伝子が異種移植片を超えてどれほど広く発現されるかを判定するために、その遺伝子の発現パターンをインビボで詳細に調べる。原発性頭頸部癌のスライスからの組織切片のさらに大規模なインサイチューハイブリダイゼーションを行うことに加えて、研究中の選択された遺伝子産物に対する抗体を作製することができる。University of MichiganのHybridoma Core施設は、ペプチドおよび発現された組換えタンパク質の両方を使用してモノクローナル抗体を調製する広い経験を有する。
最後に、ノックアウトマウスを作製するために遺伝子標的化を使用して、未知遺伝子の機能をインビボで試験する。University of Michigan Transgenic Coreは、マウスES細胞技法を確立し、高率で「生殖細胞系に移行する」ES細胞を提供し、相同組換え体ESクローンの産生を援助する。
マイクロアレイ分析が多数の遺伝子の発現を同時に比較できる能力は、遺伝子発現パターンにおける変化をスクリーニングする無比の力を提供する。幹細胞を精製できること、およびそれらの自己複製および分化をインビトロで調節できることと一緒になって、マイクロアレイ分析を大変的確に適用して特定の種類の調節性遺伝子についてスクリーニングすることができる。
実施例15
副集団としての癌幹細胞
造血幹細胞(HSC)を含めたある幹細胞集団は、蛍光色素(例えばHoechst 33342)を流出させる能力を有し、「副集団」の細胞に対応する(Goodell MA, Brose K, Paradis G, Conner AS, Mulligan RC. J Exp Med. (1996) 183:1797-1806; Kim M, Turnquist H, Jackson J, et al.. Clin Cancer Res. (2002) 8:22-28; Scharenberg CW, Harkey MA, Torok-Storb B., Blood (2002) 99:507-512; Zhou S, Morris JJ, Barnes Y, Lan L, Schuetz JD, Sorrentino BP. Proc Natl Acad Sci USA. (2002) 99:12339-44)。腫瘍形成性幹細胞が副集団(SP)の細胞中に濃縮されているかを判定するために、PE13およびUMC4腫瘍細胞をHoechst 33342で37℃で30分間標識し、続いてインキュベートした。ここで、細胞が高流出活性を有するならば、細胞は能動的に色素を流出させることができる。Hoechst 33342標識および流出のためのインキュベーションの後で、SP細胞の表現型を同定できるように、細胞をESA-FITCおよびCD44-APCで標識した。乳房PE13および結腸UMC4腫瘍の両方において、SP細胞はESA+CD44+細胞について高度に濃縮されていた(図14A)。
非SPのESA+CD44+細胞に比べてSP細胞において腫瘍形成性もまた維持されているかどうか、それとも濃縮さえされているかを判定するために、様々な集団をFACSにより単離し、マウスに注射した。SP集団は腫瘍形成性細胞について濃縮されていたが、SPは必ずしも腫瘍形成性を説明せず、SPまたは非SP由来のESA+CD44+細胞は等しく腫瘍形成性であり、これは、腫瘍形成性がESA+CD44+表現型と最も大きく関連していることを実証している。したがって、SPの単離は、癌幹細胞の部分的濃縮のためのメカニズムを提供している。注目すべきことには、SPプロトコールを使用して選別された細胞由来の腫瘍は、長い潜伏期および少ない出現率で生じた。したがって、おそらくHoechst染色プロトコールまたはFACSの間の短時間紫色レーザ照射が原因で、ある毒性がSP細胞の獲得に関連したと思われる。
FACSにより単離された非腫瘍形成性結腸腫瘍集団に比べて腫瘍形成性集団由来のmRNAを使用したマイクロアレイ研究は、いくつかのABCファミリー輸送体による差次的発現を示したが(図14B)、これはSPの流出能が原因と考えられる(Alison MR. J Pathol. (2003) 200:547-550; Glavinas H, Krajcsi P, Cserepes J, Sarkadi B., Curr Drug Deliv. (2004) 1:27-42。ABCD3およびABCE1などは、腫瘍形成性集団で有意に高いものもあったが、、非腫瘍形成性腫瘍細胞の方で高く発現されたものもあった(例えばABCC3)。癌幹細胞または非腫瘍形成性腫瘍細胞でのABCファミリー輸送体の差次的発現は、予後応用または治療応用に利用することができる。
実施例16
結腸癌幹細胞を濃縮させるCD59
マイクロアレイ分析により、CD59 mRNAは、結腸腫瘍UMC4およびUM-C6由来の非腫瘍形成性細胞に比べて腫瘍形成性細胞で有意に過剰発現されると同定された(図15A)。フローサイトメトリーは、TG ESA+CD44+集団が、残りの非腫瘍形成性腫瘍集団よりも高いレベルの表面CD59タンパク質を発現することも実証した(図15B)。これは、CD59がCD44+細胞と非腫瘍形成性CD44-細胞とをはっきりと区別したUM-C6腫瘍細胞で最も顕著であった。したがって、これは、一部の腫瘍試料中の癌幹細胞を濃縮するためのマーカーとしてのCD59の価値を示唆している。CD59の発現が、結腸腫瘍のESA+CD44+細胞からNTG集団を同定できるかどうかを判定することによって、TG結腸癌幹細胞をさらに濃縮させようと、原発性異種移植腫瘍からマウス細胞を枯渇させ(Lineage枯渇)、CD59の発現に基づきFACSによりESA+CD44+細胞の亜集団を単離した(図15B)。UMC4細胞では、CD59高細胞は、一般にCD29(β1インテグリン)の高い表面発現もまた有する。CD29は、マイクロアレイ研究によりTG結腸癌幹細胞においてmRNAレベルでより高く発現されることが発見され、FACS分析によりタンパク質レベルで確認された別の分子である。
UMC4を用いた実験は、ESA+CD44+集団におけるCD59と異種移植腫瘍の生着/成長の間の相関を実証した(図15Cおよび表4)。
CD59中/高ESA+CD44+細胞を注射された14匹中13匹のマウスは、2000cm2を超えて迅速に成長した腫瘍を発生した。CD59低ESA+CD44+細胞での7匹中4匹の腫瘍だけが発生し、実際に成長した腫瘍はCD59中/高細胞で成長した腫瘍よりもゆっくりと成長した。ESA+CD44-細胞での4匹中0匹の腫瘍が200cm2よりも大きく成長した(1個のみ幾分増殖したが、5週間後に退縮した)。CD59と生着/成長の間の相関は、一組の可能性を反映しうる:a) CD59は細胞を死滅もしくは宿主の免疫サーベイランスから保護するため、腫瘍が発生する可能性が高い、および/または b) CD59はUMC4腫瘍におけるESA+CD44+細胞の腫瘍形成性サブセットをはっきりと区別する。CD59の発現の「拡大」は広くなかったが、それでも有用と証明できたことに留意すべきである。この研究において結果として生じた腫瘍表現型の全ては、通常の外見であった(〜9から15%ESA+CD44+)。
実施例17
結腸癌幹細胞を濃縮させるCD49
マイクロアレイ分析により、CD49 mRNAは、結腸腫瘍UMC4およびUM-C6由来の非腫瘍形成性細胞に比べて腫瘍形成性細胞において有意に過剰発現されると同定された。CD59の発現が、結腸腫瘍のESA+CD44+細胞からNTG集団を同定できるかどうかを判定することによって、TG結腸癌幹細胞のさらなる濃縮もさせようと、原発性異種移植腫瘍からマウス細胞を枯渇させ(Lineage枯渇)、CD49の発現に基づきFACSによりESA+CD44+細胞の亜集団を単離した(図16A)。UMC4を用いた実験は、ESA+CD44+集団におけるCD49および異種移植腫瘍の生着/成長の間の相関を実証した(図16Bおよび表4)。
本明細書に引用した全ての刊行物および特許は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明の記載された方法およびシステムの様々な修飾および変形は、本発明の範囲および精神を逸脱することなしに当業者に明白であろう。特定の態様に関連して本発明を説明したが、請求される本発明は、そのような特定の態様に不当に限定されてはならないことを理解されたい。実際に、関連分野の専門家に明白な、本発明を実施するための記載された様式の様々な修飾は、添付の特許請求の範囲内に属することが意図される。