JP5143208B2 - 圧延銅箔、並びにこれを用いた負極集電体、負極板及び二次電池 - Google Patents

圧延銅箔、並びにこれを用いた負極集電体、負極板及び二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池をはじめとする二次電池の負極集電体材料として好適な圧延銅箔、並びにそれを用いた負極集電体、負極板及び二次電池に関する。
携帯電話、ノート型パソコン等のポータブル機器の普及に伴い、小型で高容量の二次電池の需要が伸びている。また、電気自動車やハイブリッド車等に用いられる中・大型の二次電池の需要も急増している。二次電池のなかでも、リチウムイオン二次電池は、軽量でエネルギー密度が高いことから多くの分野で使用されている。
リチウムイオン二次電池としては、アルミニウム箔にLiCoO2、LiNiO2、LiMn24等の化合物をコーティングしたものを正極として用い、銅箔に炭素質材料等を活物質としてコーティングしたものを負極に用いるものが知られている(図2)。
銅箔には圧延銅箔と電解銅箔がある。圧延銅箔は、強度、疲労特性等の点で二次電池負極板の集電体として優れている。二次電池負極板材料として市販されている圧延銅箔の多くは、タフピッチ銅(JIS−C1100)または無酸素銅(C1020)を素材とするものである。タフピッチ銅とは0.01〜0.05質量%の酸素を含有する純銅であり、銅分は99.90質量%以上に規格化されている(以下、特に指示のない限り、質量%を%と表記する)。無酸素銅とは、酸素濃度を0.001%以下に調整した純銅であり、銅分は99.96%以上に規格化されている。
圧延銅箔の製造プロセスでは、タフピッチ銅や無酸素銅のインゴットを熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍とを繰り返し、最後に最終冷間圧延で、例えば35〜5μmの範囲の所定の厚みに仕上げる。
一般的に、負極板は、電解銅箔や圧延銅箔を用いて次のプロセスで製造される。
(1)活物質と結着剤とを溶剤に混練分散したペーストを、集電体となる銅箔の片面もしくは両面に塗布して負極板材とする。
(2)150〜300℃の温度で数時間から数十時間加熱し乾燥する。
(3)必要に応じ、負極板材に加圧する。
(4)せん断加工を施し、所定形状の負極板へ成型する。
タフピッチ銅又は無酸素銅を素材とする従来の圧延銅箔は、上記(2)乾燥工程において再結晶を起こして軟化する。銅箔の強度の低下は、例えば、以下のようなメカニズムにより、二次電池の充放電サイクル寿命に悪影響を与える。
リチウムイオン二次電池では、充電時にリチウムイオンが正極から負極に移動し、放電時にリチウムイオンが負極から正極に移動する。リチウムイオンの移動に伴って負極活物質が膨張収縮するため、銅箔は充放電によって機械的な繰り返しストレスを受ける。軟化した銅箔は、繰り返しストレスを受けた際に変形しやすい。銅箔が変形すると、銅箔表面に塗布された活物質が剥離し、電池の充放電サイクル寿命が短くなる。
そこで、特開2000−303128号公報(特許文献1)では、上記乾燥工程等における銅箔の軟化を抑制するために、タフピッチ銅又は無酸素銅に合金元素を添加し、耐熱性を高めた圧延銅合金箔を提案している。具体的には、酸素含有量が0.003%以下でAg、Bi、Cd、Cr、Sn、Sb、Znの中の1種以上を総量で0.005%以上を含有する銅材を圧延加工して得られ、200℃で30分加熱しても400MPa以上の引張強さを保つ圧延銅箔を提案している。
特開平11−86872号公報(特許文献2)及び特開2002−198054号公報(特許文献3)では、銅箔を室温で長期間放置した際の引張強さの経時的低下を抑制することを目的に、酸素濃度をそれぞれ0.002%以下および0.0005〜0.002%に調整した圧延銅箔を提案している。
特開2000−303128号公報 特開平11−86872号公報 特開2002−198054号公報
特許文献1に開示されている銅箔のように、乾燥工程における軟化が十分に抑制されるレベルまで合金元素を添加すると、合金元素(Cuより酸化しやすいもの)が酸化し介在物を形成する、Cuに合金元素が固溶し耐熱性が向上する反面脆くなる、等の弊害が生じ、極薄箔への圧延加工が難しくなり、銅箔の製造コストの上昇を招いていた。
一方、特許文献2および3に開示されているような乾燥工程で軟化する銅箔について、軟化した状態での充放電サイクル寿命を改善する技術は、従来提案されていなかった。
そこで、本発明の課題は、負極板製造の際の乾燥工程で軟化する特性を有しながら、リチウムイオン二次電池をはじめとする二次電池の負極集電体材料として好適な、充放電サイクル寿命に優れる圧延銅箔、並びにこれを用いた負極集電体、負極板及び二次電池を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記発明をなすに至った。すなわち本発明は一側面において、200℃で30分間焼鈍することにより圧延方向に平行な方向の引張強さが250MPa以下に低下する銅箔であり、該焼鈍後の箔において圧延方向と成す角度が0度、22.5度、45度、67.5度および90度となる5つの方向にヤング率を測定し、該5つのヤング率のうちの最大の値をEmax、最小の値をEminとしたときに、Emax/Eminが1.3以下である二次電池の負極集電体用銅箔である。
本発明に係る二次電池の負極集電体用銅箔は一実施形態において、タフピッチ銅または無酸素銅を素材とする、圧延上がりの調質状態の銅箔である。
本発明に係る二次電池の負極集電体用銅箔は別の一実施形態において、Ag、Sn、Cr、Fe、Zn及びZrよりなる群から選択される合金元素の1種又は2種以上を合計で0〜0.1質量%含有し残部が銅及び不可避的不純物からなるタフピッチ銅または無酸素銅を素材とする、圧延上がりの調質状態の銅箔である。
本発明に係る二次電池の負極集電体用銅箔は更に別の一実施形態において、圧延方向に平行な方向の引張強さが400〜550MPaである。
本発明は別の一側面において、本発明に係る銅箔より構成される負極集電体である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る負極集電体の少なくとも片面に、炭素質物を含有する負極活物質層が乾燥工程を経て固定された負極板である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る負極集電体の少なくとも片面に、金属リチウム、金属すず、すず化合物、けい素単体、及びけい素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有する負極活物質層が乾燥工程を経て固定された負極板である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る負極板を備えた二次電池である。
本発明は更に別の一側面において、インゴットを熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、最終冷間圧延で所定厚みに仕上げる工程を含み、該最終冷間圧延において圧延加工度を80.0〜94.0%、圧延油温度を20〜30℃の範囲に調整する本発明に係る銅箔の製造方法である。
本発明に係る銅箔を二次電池の負極集電体として使用することにより、充放電サイクル寿命を長くすることが可能となる。
本発明における圧延銅箔のヤング率の、圧延方向に対する測定方向を示す略図である。 一般的な二次電池の構造を示す概略図である。
(銅箔の成分)
本発明の銅箔の素材は好ましい実施形態において、JIS−1100規定のタフピッチ銅またはJIS−1020規定の無酸素銅である。
タフピッチ銅または無酸素銅を素材とする銅箔は、一般的に、圧延上がりの調質状態で圧延方向に平行な方向に400〜550MPaの引張強さを有する。この銅箔は負極板製造の際の乾燥工程において再結晶し、引張強さが250MPa以下、典型的には150〜250MPaに低下する。乾燥工程では、典型的に、150〜300℃程度の温度において、その温度に応じ5秒〜50時間程度加熱する。この熱負荷は、代表的に材料温度200℃で30分間の熱処理に相当する(特開2000−303128号公報参照)。200℃で30分間加熱後に上述したヤング率及び引張強さの規定を満たすことができる銅箔は、負極板製造時に実施される典型的な乾燥工程の後にも同様に本発明に係るヤング率の規定を満たすことができる。
本発明の効果は、負極板製造の際の乾燥工程で軟化する、すなわち200℃で30分加熱した際に引張強さが250MPa以下に低下する銅箔であれば、タフピッチ銅または無酸素銅に微量の合金元素を添加した銅箔でも発現する。合金元素添加の耐熱性への作用がこのレベルであれば、極薄箔への圧延加工性が劣化することも無い。
例えば、本発明の一実施形態においては、Ag、Sn、Cr、Fe、ZnおよびZrよりなる群から選択される合金元素の1種又は2種以上を合計で0.1%以下含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなるタフピッチ銅または無酸素銅を使用することができる。その一例として、常温で保管中の軟化を防止することを目的に、Agを0.01〜0.05%添加したタフピッチ銅(例えば特開2000−212661号公報)、Snを0.001〜0.01%添加した無酸素銅(例えば特開2008−106313号公報)が挙げられる。
Cuよりも酸化しやすいSn、Cr、Fe、ZnおよびZrのいずれか1種以上の元素を採用する場合は、添加元素が銅中で酸化物を形成することを避けるために、無酸素銅溶湯中に添加するのが一般的である。AgはCuより酸化しにくいので、タフピッチ銅溶湯中、無酸素銅溶湯中ともに好適に添加できる。
なお、溶解工程での酸素濃度の調整は、溶湯のカーボンシール、大気解放等の当業者公知の技術により行うことができる。
(銅箔のヤング率)
銅の単結晶のヤング率(縦弾性係数、応力/伸び)には異方性があり、結晶の方向によってヤング率が顕著に変化する。圧延銅箔は多くの結晶粒の集合体であり、各結晶粒の内部では原子が一定方向に配列しているが、その向きは結晶粒ごとに異なる。ただし、各結晶粒がランダムに配向しているわけではなく、凝固、圧延、再結晶といった製造工程の過程で、結晶粒の方向に偏りが生じている。したがって、通常の圧延銅箔のヤング率は、応力を付加する方向により変化する。すなわち同じ応力で引っ張っても、引っ張る方向により、銅箔の伸び(弾性伸び)が変化する。このように方向によって特性が異なる性質は異方性と称される。
従来、負極用銅箔の機械的特性は、箔切れ防止等の電池の製造ラインでの生産性を配慮して調整されてきた。したがって、負極用銅箔のヤング率については、ラインで張力が付加される圧延方向の絶対値のみが注目され、その異方性については全く配慮されなかった。しかし、本発明者らはヤング率の異方性が大きい銅箔を負極集電体として用いると、充放電ストレスを受けた際に、弾性伸びの異方性により銅箔にしわが入り、このしわに起因して活物質が剥離することを知見した。
本発明者らが検討した結果、圧延方向と成す角度が0度、22.5度、45度、67.5度及び90度となる5つの方向にヤング率を測定し、これら5つのヤング率のうちの最大の値をEmax、最小の値をEminとしたときに、ヤング率異方性の指標としてEmax/Eminが1.3以下、好ましくは1.25以下であると充放電サイクル寿命が顕著に改善されることを発見した。
(銅箔の製造方法)
酸素濃度を調整した溶銅を鋳造しインゴットを製造する。溶銅の酸素濃度の調整はカーボン脱酸等の当業者公知の技術により行うことができる。このインゴットを熱間圧延により厚さ10mm程度の板とし、その後冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延で所定厚み(一般的には35〜5μm)に仕上げる。厚みが5μm以下になると、単位面積当たりの引張強さが高くても破断しやすくなる。一方、35μmを超えると、負極板が厚くなるため二次電池を小型化しにくくなる。
再結晶焼鈍は、一般には炉温が300〜800℃の範囲、焼鈍時間が数秒間〜数時間の範囲で、焼鈍後の結晶粒径が所定の大きさ(通常は3〜30μm)になる条件で行われる。焼鈍後の材料は、焼鈍中に生成した表面酸化膜を除去するため、硫酸水溶液等を用いて酸洗されることが好ましい。
ヤング率の異方性を制御する方法は、特定の方法に限定される訳ではないが、例えば、最終の冷間圧延条件を調整することで制御できる。
最終再結晶焼鈍後の最終冷間圧延では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の箔厚に仕上げてゆく。再結晶後のヤング率の異方性には、最終冷間圧延における加工度および圧延油の温度が影響を及ぼす。ここで、加工度rは、最終冷間圧延における板厚減少率であり、r=(t0−t)/t0(t0:最終冷間圧延前の厚み、t:最終冷間圧延後の厚み)で与えられる。
rを高くすると銅箔の引張強さは高くなるが、ヤング率の異方性が大きくなる。好ましいrは94%以下である。rが94%を超えると他の製造条件を調整してもEmax/Emimを1.3以下に調整することが難しくなる。より好ましいrは92%以下である。
一方、rが80%を下回ると圧延上がりの引張り強さが400MPa未満に低下しやすい。引張り強さが400MPa未満の銅箔は、活物質を塗布するラインにおいて、銅箔に負荷される張力に耐えられず破断することがある。したがって、圧延上がりの引張り強さは400MPa以上であることが好ましく、420MPa以上であることがより好ましい。また、rは80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
rを94%以下にすることに加え、圧延油の温度を20〜30℃の範囲に調整することにより、Emax/Emimを1.3以下に調整することが可能となる。圧延油温度が30℃を超えると、他の製造条件を調整しても、Emax/Emimを1.3以下に調整することが難しくなる。
銅箔を圧延中の加工熱により圧延油温度は上昇し、圧延速度や1パスあたりの圧下量を大きくすると、生産効率は向上するが圧延油温度が上昇する。従来は、生産効率を重視し、30℃超の圧延油温度で圧延が行われていた。圧延油温度の下限値については、極端に温度が低い場合を除くとヤング率の異方性に影響しないものの、20℃未満に制御しようとすると生産効率が極度に低下するため、20℃以上に調整することが好ましい。
(電池の構成)
本発明に関わる負極板及び二次電池は、上記銅箔を負極集電体として用いることを特徴とするものであり、これ以外の構成については限定されず、一般に用いられている公知のものを用いることができる。一般に二次電池は、負極、正極、正極及び負極を絶縁するためのセパレータ、並びに非水電解質を有しており、これらが電池ケースによって収容された構造となっている。また、電解質がポリマー電解質である場合にはセパレータは不要である。
(負極)
負極は、本発明の負極集電体と、負極集電体の片面もしくは両面に形成される負極活物質含有層より一般に構成される。負極活物質としては、リチウムの吸蔵放出が可能な炭素質物、金属、金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物)、リチウム合金などが挙げられる。
前記炭素質物としては、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、熱分解気相炭素質物、樹脂焼成体などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料;熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ系炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料又は炭素質材料等が挙げられる。
前記金属としては、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、すず、けい素等が挙げられる。
前記金属酸化物としては、すず酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等が挙げられる。前記金属硫化物としては、すず硫化物、チタン硫化物等が挙げられる。前記金属窒化物としては、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等が挙げられる。
リチウム合金としては、リチウムアルミニウム合金、リチウムすず合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等が挙げられる。
負極活物質含有層には結着剤や流動性調整剤(典型的には増粘剤)などの添加剤を含有させることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)等のフッ素含有ポリマー;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系ゴム(例えば、(メタ)アクリル酸エステルを主構成単量体とするゴム)、フッ素系ゴム(例えば、フッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴム)、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)およびスルホン化EPDM等のゴム類;アクリル系樹脂(例えば、(メタ)アクリル酸エステルを主構成単量体とする樹脂、ポリアクリル酸等);カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール;ポリエチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド;等の各種ポリマーから適宜選択される一種または二種以上のポリマー材料を添加することができる。中でも、CMC及びSBRを含む混合物が好ましい。当該混合物を使用することによって、負極活物質と集電体との密着性をより高くすることができる。
負極活物質含有層には、導電剤を含有させることができる。導電剤としては、アセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛などのグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物等が挙げられる。
(正極)
正極は、正極集電体と、前記正極集電体の片面もしくは両面に形成される正極活物質含有層より一般に構成される。
正極集電体としては、アルミニウム板、アルミニウムメッシュ材等が挙げられる。
正極活物質含有層は、例えば、活物質と結着剤とを含有する。正極活物質としては、二酸化マンガン、二硫化モリブデン、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24等のカルコゲン化合物が挙げられる。これらのカルコゲン化合物は、2種以上の混合物で用いても良い。特に、リチウムイオン二次電池用にはリチウム遷移金属複合酸化物が多用される。
正極活物質含有層には、負極活物質含有層と同様に、結着剤や流動性調整剤(典型的には増粘剤)などの添加剤を含有させることができる。具体例は負極活物質含有層で述べた通りである。
活物質含有層には、導電補助材としてアセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛などのグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物、等をさらに含有することができる。
(セパレータ)
正極と負極の間には、セパレータを配置することができる。セパレータとしては、例えば20〜30μmの厚さを有するポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等を用いることができる。非水電解質として、固体又はゲル状などのポリマー電解質を使用する場合は、セパレータを省略することもできる。
(非水電解質)
非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質とを含む非水電解液の形態とすることができる。
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸メチル等が挙げられる。使用する非水溶媒の種類は、1種類もしくは2種類以上にすることが可能である。
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)等が挙げられる。電解質は、単独でも混合物の形態でも使用することができる。
また、非水電解質は、固体又はゲル状などのポリマー電解質の形態とすることもできる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
<例1>
(圧延銅箔の作製)
電気銅を溶解し、酸素濃度を調整した後、幅が500mm、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。一部のインゴットでは、溶銅にAgまたはSnを添加した。なお、Agについては、意図的に添加しなくても、不可避的不純物として、タフピッチ銅および無酸素銅中に0.001%程度含有されている。
このインゴットを850℃で3時間加熱し、熱間圧延により厚み10mmの板にした。次に、表面の酸化スケールを研削除去し、冷間圧延により1.5mmの板とした。その後、再結晶焼鈍と冷間圧延を繰り返して、最終の圧延で厚みを18〜6μmに仕上げた。
最終再結晶焼鈍(最終冷間圧延直前の焼鈍)は連続焼鈍ラインを用いて行った。炉温を700℃とし、焼鈍後の結晶粒径が10〜20μmになるように、材料の通板速度(炉内の滞留時間)を調整した。
最終冷間圧延における加工度rを変化させるために、最終再結晶焼鈍(最終冷間圧延直前の焼鈍)を施す板厚を調整した。また、最終冷間圧延では、用いる圧延油の温度を種々変化させた。
(成分)
銅箔中の酸素濃度を不活性ガス溶融−赤外線吸収法で、Sn及びAg濃度をICP−質量分析法で分析した。ここで、Sn及びAg分析には銅箔試料を用いたが、O分析には1.5mmの板から採取した試料を用いた。これは、箔試料では質量に対する表面積の比率が非常に大きいため(例えば1gの試料の場合、厚さ1.5mmの板の表面積は1.5cm2に対し、厚さ10μmの箔の表面積は220cm2)、銅箔試料を用いて酸素を分析すると、表面の酸化膜及び吸着水膜中の酸素が加算され、酸素分析値が銅箔中の酸素濃度より0.005%程度増加するためである。なお、箔試料を用い、これが無酸素銅ベースの箔であることを判定するためには、例えば、試料の金属組織を観察し、酸化物粒子が存在しないこと(直径2μm以上の酸化物粒子が0.01個/mm2以下)を確認すればよい。また、タフピッチ銅ベースの箔であることを判定するためには、例えば、試料の金属組織を観察し、直径1〜5μmの酸化銅粒子が100個/mm2以上の頻度で分布していることを確認すればよい。ここでいう粒子の直径とは粒子を取り囲むことのできる最小円の直径を指す。
(引張強さ)
最終冷間圧延上がりの試料に対しIPC(Institute for Interconnecting and Packaging Electronics Circuits)規格、IPC−TM−650;Method 2.4.19に準じて引張強さを求めた。試験片は、幅12.7mm、長さ150mmとし、試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取した。引張り速度は50mm/minとした。また、負極活物質の乾燥工程を模して圧延銅箔試料を200℃で30分間加熱した後の試料に対しても、同様に引張強さを求めた。
(ヤング率)
負極活物質の乾燥工程を模して200℃で30分間加熱した銅箔試料につき、振動法によりヤング率を測定した。測定装置には日本テクノプラス株式会社製の片持ち式薄板ヤング率測定装置、TE−RTを用いた。
試料は幅3.2mm、長さ15mmの短冊形状とし、振動長さを10mmとした。図1に示すように、試料の長手方向が圧延方向と成す角度をα(度)とし、α=0、22.5、45、67.5及び90となる5つの方向から試料を採取した。これら5方向の試料のそれぞれにつきヤング率を4回測定して平均値を求め、求めた5つの平均値のうちの最大のものをEmax、最小のものをEminとし、Emax/Eminの数値を求めた。
(サイクル寿命)
厚みが10μmの銅箔につき、図2に示す円筒型のリチウムイオン二次電池を以下の手順で作製し、サイクル寿命を測定した。
(1)負極活物質として鱗片状黒鉛粉末50重量部、結着剤としてSBR5重量部、及びCMC1重量部に対して水99重量部に溶解した増粘剤水溶液23重量部を、混錬分散して負極用ペーストを得た。この負極用ペーストを圧延銅箔試料表面にドクターブレード方式で厚さ200μmに両面塗布し、材料温度200℃で30分間加熱し乾燥した。加圧して厚さを160μmに調整した後、せん断加工により成型し負極板6を得た。
(2)正極活物質としてLiCoO2粉末50重量部、導電剤としてアセチレンブラック1.5重量部、結着剤としてPTFE50重量%水性ディスパージョン7重量部、増粘剤としてCMC1重量%水溶液41.5重量部を、混練分散して正極用ペーストを得た。この正極用ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔からなる集電体上にドクターブレード方式で厚さ約230μmに両面塗布して200℃で1時間加熱し乾燥した。加圧して厚さを180μmに調整した後、せん断加工により成型し正極板5を得た。
(3)正極板5と負極板6とを、厚さ20μmのポリプロピレン樹脂製の微多孔膜からなるセパレータ7を介して絶縁した状態で渦巻状に巻回した電極群を電池ケース8に収容した。
(4)負極板6から連接する負極リード9を、前記ケース8と下部絶縁板10を介して電気的に接続した。同様に正極板5から連接する正極リード3を、封口板1の内部端子に上部絶縁板4を介して電気的に接続した。これらの後、非水電解液を注液し、封口板1と電池ケース8とを絶縁ガスケット2を介してかしめ封口して、図2に示されるような、直径17mm、高さ50mmサイズで電池容量が780mAhの円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
(5)電解液は、エチレンカーボネート30体積%、メチルエチルカーボネート50体積%、プロピオン酸メチル20体積%の混合溶媒中に、電解質としてLiPF6を1.0モル溶かした電解液を所定量注液した。この電解液を正極活物質層及び負極活物質層内に含浸させた。
作製した電池を用い、充放電サイクル特性を評価した。20℃の環境下で充放電を行い、3サイクル目における放電容量を初期容量とし、初期容量に対して放電容量が80%に低下するまでサイクル数を計数し、これをサイクル寿命とした。充電条件:4.2Vで2時間の定電流−定電圧充電を行い、電池電圧が4.2Vに達するまでは550mA(0.7CmA)の定電流充電を行った後、さらに電流値が減衰して40mA(0.05CmA)になるまで充電した。放電条件:780mA(1CmA)の定電流で3.0Vの放電終止電圧まで放電した。サイクル寿命が500回以上になった場合に良好なサイクル特性が得られたと判定した。
評価結果を表1に示す。発明例1〜18では、最終圧延での加工度を94%以下とし最終圧延での圧延油温度を30℃以下としたため、ヤング率異方性(Emax/Emin)が1.3以下である。ここで、ヤング率の測定値の一例として発明例3のデータを示すと、0度:93.0GPa、22.5度:97.5GPa、45度:104.2GPa、67.5度:102.8GPa、90度:102.5GPaであった。
また、発明例1〜17では、最終圧延加工度を80%以上としたため、圧延上がりの引張強さが400MPa以上である。400MPa以上の引張強さを有していれば、活物質塗布ラインでの取り扱い性に問題はない。
充放電サイクル特性を評価した箔厚10μmの発明例1〜14及び18をみると、200℃で30分の加熱(負極活物質の乾燥工程に相当)により引張強さが250MPa以下まで低下したにもかかわらず、500回以上の良好なサイクル寿命が得られている。この効果は、タフピッチ銅(発明例1〜9及び18)、無酸素銅(発明例10、11)ともに発現し、微量のAg(発明例12、13)または微量のSn(発明例14)を添加した場合にも発現している。
箔厚が10μmと異なる発明例15〜17についても、10μm箔と同様、最終圧延での加工度と圧延油温度の制御によりEmax/Eminが1.3以下となっており、サイクル寿命が向上することが期待される。
発明例18は、Emax/Eminが1.3以下のため500回以上のサイクル寿命が得られたものの、最終圧延加工度が80%未満のため圧延上がりの引張強さが400MPa未満となった。このように強度の低い銅箔は、活物質の塗布ラインで破断しやすいと考えられる。
比較例1、2、5では最終圧延での加工度が94%を超えていため、また比較例4、6、7、8では最終圧延での圧延油温度が30℃を超えているため、Emax/Eminが1.3を超えている。比較例1、2、4〜7のサイクル寿命は500回未満の低い値である。
<例2>
乾燥条件が銅箔の引張強さ及びヤング率に与える影響を検証する目的で、先の発明例3と同じ銅箔を使用して乾燥条件を変化させる実験を行った。表2の結果から分かるように、負極板製造時に実施される典型的な乾燥条件では本発明で規定するヤング率及び引張強さを満たすことができることが分かる。
1:封口板
2:絶縁ガスケット
3:正極リード
4:上部絶縁板
5:正極板
6:負極板
7:セパレータ
8:電池ケース
9:負極リード
10:下部絶縁板

Claims (9)

  1. 200℃で30分間焼鈍することにより圧延方向に平行な方向の引張強さが250MPa以下に低下する銅箔であり、該焼鈍後の箔において圧延方向と成す角度が0度、22.5度、45度、67.5度および90度となる5つの方向にヤング率を測定し、該5つのヤング率のうちの最大の値をEmax、最小の値をEminとしたときに、Emax/Eminが1.3以下である二次電池の負極集電体用銅箔。
  2. タフピッチ銅または無酸素銅を素材とする、圧延上がりの調質状態の銅箔である請求項1に記載の二次電池の負極集電体用銅箔。
  3. Ag、Sn、Cr、Fe、Zn及びZrよりなる群から選択される合金元素の1種又は2種以上を合計で0〜0.1質量%含有し残部が銅及び不可避的不純物からなるタフピッチ銅または無酸素銅を素材とする、圧延上がりの調質状態の銅箔である請求項1に記載の二次電池の負極集電体用銅箔。
  4. 圧延方向に平行な方向の引張強さが400〜550MPaである請求項1〜3の何れか一項に記載の二次電池の負極集電体用銅箔。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の銅箔より構成される負極集電体。
  6. 請求項5に記載の負極集電体の少なくとも片面に、炭素質物を含有する負極活物質層が乾燥工程を経て固定された負極板。
  7. 請求項5に記載の負極集電体の少なくとも片面に、金属リチウム、金属すず、すず化合物、けい素単体、及びけい素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有する負極活物質層が乾燥工程を経て固定された負極板。
  8. 請求項6又は7記載の負極板を備えた二次電池。
  9. インゴットを熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、最終冷間圧延で所定厚みに仕上げる工程を含み、該最終冷間圧延において圧延加工度を80.0〜94.0%、圧延油温度を20〜30℃の範囲に調整する請求項1〜4の何れか一項に記載の銅箔の製造方法。
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