JP5164260B2 - 炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法、およびリチウムイオン電池用正極材料 - Google Patents

炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法、およびリチウムイオン電池用正極材料 Download PDF

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Description

本発明は、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法と、該複合体を含有するリチウムイオン電池用正極材料に関するものである。
リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池)は、従来を上回る高エネルギー密度を有する新型電池として1991年に製品化され、現在、携帯電話、ノートパソコンなどの電子機器に不可欠な電源として市場の急拡大が続いている。しかし、負極材料、電解液の改良および開発などにより電池性能は向上しているが、正極材料としては、開発当初から現在にいたるまで岩塩型のコバルト酸リチウム(LiCoO)が多用されている。LiCoOを用いたリチウムイオン電池は、小型電池としての性能は優れているものの、原料のコバルトの埋蔵量が少ないために激しく価格変動することや、充電時に何らかの原因で内部短絡が生じた際に酸素が放出され、電解液を燃焼、爆発させる危険性を有していることなどの問題を抱えている。そこで、安全で効果的な代替のリチウムイオン電池用の正極材料が求められている。
このような事情の下、原料の豊富な鉄系の材料が期待されており、特にオリビン型リン酸鉄リチウムは、LiCoOの上記問題を解決し得る次世代正極材料として注目されている(例えば、特許文献1、非特許文献1など)。
ところで、通常のリチウムイオン電池の正極は、LiCoOなどの材料を活物質とし、これに正極における電子伝導性を高めるための炭素材料などの導電助剤と、これら活物質や導電助剤などを結着するためのバインダーとを有する正極合剤を成形したり、このような正極合剤の層(正極合剤層)を集電体となる導電性基体の片面または両面に形成したりすることで構成されている。
ところが、オリビン型リン酸鉄リチウムは電子伝導性が非常に低いため、単に導電助剤を共存させて正極を構成するだけでは電子伝導性が充分でなく、そのため、優れた電池特性の確保が困難である。
そこで、オリビン型リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオン電池用の正極材料において、電子伝導性を高める技術が検討されている。
例えば、特許文献2には、リチウム塩と鉄塩とを含有するリン酸水溶液に、アスコルビン酸などの水溶性有機還元剤を混合し、さらに炭素材料を添加した後、アルカリ溶液を混合して、リチウムと鉄との複合リン酸化物の共沈体を生成させ、これを焼成して、オリビン型リン酸鉄リチウムと炭素との複合体を得る製造方法が提案されている。そして、特許文献2には、このオリビン型リン酸鉄リチウムと炭素との複合体では、オリビン型リン酸鉄リチウム粒子の表面に付着している炭素粒子によって電子伝導性が向上するので、オリビン型リン酸鉄リチウム単体よりも電子伝導性が良好である旨記載されている。
特許第3484003号公報 特開2002−117831号公報 「Hydrothermal synthesis of lithium iron phosphate cathodes」,Electrochemistry Communication,2002年,第3号,p.505−508
ところが、本発明者の検討によると、特許文献2に開示の製造方法では、オリビン型リン酸鉄リチウム自体を良好に合成できないことが判明した。
そこで、本出願人は、先に、(1)炭素−リン酸鉄複合体を沈殿により製造する工程、(2)上記炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を製造する工程および(3)上記共沈物を焼成する工程、を経て、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を製造することにより、リチウムイオン電池用正極材料として適した炭素−オリビン型リン酸鉄複合体を、簡易かつ効率的な方法で製造し、それについて既に特許出願してきた(特開2007−35295号公報)。
しかしながら、リチウムイオン電池をより高容量化するためには、炭素−オリビン型リン酸鉄複合体もそれに適するように改良していくことが望ましい。
従って、本発明は、より高容量のリチウムイオン電池を製造できる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を簡易かつ効率的に製造する方法を提供し、該製造方法により得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を用いて、より高容量のリチウムイオン電池用正極材料を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、次の(1)〜(4)の工程
(1)炭素−リン酸鉄複合体を沈殿により製造する工程、
(2)上記炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を製造する工程、
(3)上記共沈物に炭素前駆体となる有機物を添加し、混合する工程、
(4)上記共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を焼成する工程、
を経て炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を製造することを特徴とする炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法に関する。
また、本発明においては、上記(2)の工程において、共沈物を製造した後、その共沈物を乾燥し、仮焼し、上記(3)の工程を上記共沈物の仮焼物に炭素前駆体となる有機物を添加し、混合する工程とし、上記(4)の工程を上記共沈物の仮焼物と炭素前駆体となる有機物との混合物を焼成する工程としてもよい。
さらに、本発明の製造方法により得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体からなるリチウムイオン電池用正極材料も、本発明に包含され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄複合体と、該炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体由来の炭素以外の炭素材料を0.1〜30質量%含有するリチウムイオン電池用正極材料も、本発明に包含される。
本発明によれば、高容量のリチウムイオン電池を製造できるリチウムイオン電池用の正極材料として好適な炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を、簡易かつ効率的に製造できる。また、本発明の製造方法により得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体、および該複合体を含有する本発明のリチウムイオン電池用正極材料は、高容量で電池特性の良好なリチウムイオン電池を構成できる。本発明がこのような効果を奏し得る理由については、次の〔発明を実施するための最良の形態〕の項で順次説明する。
オリビン型リン酸鉄リチウムを有するリチウムイオン電池用正極材料において、その電子伝導性を向上させるには、オリビン型リン酸鉄リチウムと、導電助剤として機能する炭素とが、均一に混合されていることが要求される。本発明の製造方法では、簡易かつ効率的な手法によってオリビン型リン酸鉄リチウムの合成と炭素との複合化を同時に達成し、炭素とオリビン型リン酸鉄リチウムとが均一に混合されるようにし、しかも、炭素の前駆体となる有機物を添加して焼成するので、この後から添加された有機物から生成する炭素と、既にリン酸鉄と複合体化している炭素とで電子伝導性の高い炭素のネットワークが形成され、それによって、電子伝導性の高い炭素−オリビン型リン酸鉄リチウムの製造を可能とした。
オリビン型リン酸鉄リチウムの主な合成方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように原料化合物を混合して焼成する固相法や、非特許文献1に記載されているように原料化合物と水の混合物を耐圧容器内で加熱する水熱法が知られている。また、特許文献2は、上記の通り、原料化合物と還元剤を含有する混合水溶液にアルカリ溶液を加えて共沈物を得、この共沈物を焼成する共沈法が記載されている。
しかしながら、上記固相法では、焼成前の原料化合物の混合の際に、組成を均一化するために長時間の混合工程が必要であり、効率的な方法とはなり得ない。また、上記水熱法では、一部の原料化合物を、理論的に必要とされるよりもかなり過剰に添加する必要がある。そして、特許文献2に開示の共沈法では、上記の通り、本発明者の検討によると、オリビン型リン酸鉄リチウムの合成自体が困難である。
そこで、本発明では、均一な分散・混合が容易かつ効率的に行い得る液中での反応を利用した上記(1)および(2)の工程によって、炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとの共沈物を得、それに続く(3)の工程において、その共沈物に炭素前駆体となる有機物を添加して混合し、(4)の工程において、上記共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を焼成することにより、電子伝導性の高い炭素のネットワークが形成されかつ均一に複合体化された炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を、簡易な設備でかつ効率的に製造することに成功したのである。以下、本発明法について詳細に説明する。
本発明法における(1)の工程は、炭素−リン酸鉄複合体を沈殿により製造する工程である。具体的には、例えば、炭素材料を分散した水相中に、リン酸および2価の鉄を含有する化合物を有する水溶液を添加し、その後、それを水溶性塩基によって中和することで、炭素−リン酸鉄複合体を沈殿させる。
(1)の工程で使用する炭素材料としては、粉末状またはその分散液であれば特に制限は無いが、導電性の良いものの方が好ましい。具体的には、例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなど)、黒鉛、グラファイトなどが挙げられる。また、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノコイルなどの形状異方性を有する炭素材料(ある程度のアスペクト比を有する繊維類似の形状を有する炭素材料)も炭素材料として使用できる。これらの中でも、電池材料として使用されることの多いアセチレンブラックやケッチェンブラックが特に好ましい。(1)の工程においては、炭素材料の水分散液中における炭素材料の含有量を、例えば、0.1〜30質量%とすることが好ましい。
リン酸としては、オルトリン酸が好ましい。また、リン酸は、そのまま使用しても良いが、水溶液の形態で使用することが好ましい。水溶液とする場合の濃度は、例えば、5〜85質量%であることが好ましい。
なお、炭素材料を水中に分散させるに当たっては、公知の分散剤を用いて、炭素材料の分散性を高めることが好ましい。分散剤には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが使用でき、特に制限はないが、(4)の工程における焼成後に炭素のみが残存し、不要成分が残らないことから、ノニオン界面活性剤が特に好ましい。分散剤の使用量としては、水中に炭素材料が良好に分散できれば良いが、例えば、炭素材料100質量部に対して、分散剤を、0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であって、100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下用いることが望ましい。
また、予め分散剤を分散したカーボンブラックペーストなどや、表面処理により分散性を高めたカーボンブラックなどを使用しても構わない。
2価の鉄を含有する化合物を有する水溶液に使用する鉄化合物としては、2価の鉄を含有していて、かつ水溶性であれば特に制限は無いが、水溶性を有する2価鉄塩の種類は少なく、硫酸第一鉄(硫酸第一鉄・7水塩など)が工業的に入手し易いものとして挙げられる。なお、通常は、2価の鉄を含む化合物を原材料として、オリビン型リン酸鉄リチウムの合成を大気中で行うと、鉄が2価から3価に酸化してしまうため、このような場合には、焼成前の前駆体の合成を、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うか、または最終の焼成工程において、水素などの還元性ガス雰囲気下で焼成を行い、鉄を還元する必要がある。しかし、本発明法の(1)の工程では、炭素の共存下でリン酸と2価の鉄を含有する化合物との反応を行うことから、鉄の酸化が防止される。そのため、(1)の工程は大気中で行うことができ、また、(4)の工程においても、焼成を還元性ガス雰囲気下で行う必要が無い(ただし、還元性ガス雰囲気下での焼成を排除している訳ではない)。
2価の鉄を含有する化合物を有する水溶液中の該化合物の濃度は、例えば、1〜50質量%であることが好ましい。
また、中和に用いる水溶性塩基としては、例えば、NaOH、KOHなどのアルカリ金属の水酸化物;アンモニア;各種アミン;などが挙げられる。これらの水溶性塩基は、例えば、濃度が1〜50質量%程度の水溶液として使用することが好ましい。中和時に使用する水溶性塩基の量としては、水溶性塩基添加後における沈殿物を含む反応液のpHが7.0〜12.0となるようにするのが好ましい。
なお、最終的に得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体における不純物量を減らして、オリビン型リン酸鉄リチウムを良好に生成させる観点から、(1)の工程により得られる炭素−リン酸鉄複合体においては、FeとPの含有比が、モル比で、Fe:1.0に対して、Pが、0.3以上、より好ましくは0.5以上であって、3.0以下、より好ましくは1.0以下であることが望ましい。また、本発明法で得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体においては、炭素含有量が、0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であって、50質量%以下、より好ましくは25質量%以下であることが望ましい(詳しくは後述する)。そのため、(1)の工程においては、炭素−リン酸複合体におけるFeとPの含有比が上記好適値を満足し、また、最終的に得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体における炭素含有量が上記好適値となるように、炭素材料、リン酸、および2価の鉄を含有する化合物の使用比率を調整することが好ましい。
(1)の工程では、反応液の温度を0〜80℃とすることが好ましい。また、(1)の工程では、水溶性塩基で中和することにより沈殿物を得るが、沈殿物(炭素−リン酸鉄複合体)の微粒化および均一化の観点から、炭素材料を含有する分散液にリン酸と2価の鉄を含有する化合物を有する水溶液を添加して得られた液を充分に撹拌しながら、水溶性塩基(好ましくはその水溶液)を1〜60分程度の時間をかけて滴下し、その後5〜60分撹拌を続けることが好ましい。沈殿生成には、リン酸、2価の鉄を含有する化合物を有する水溶液、および水溶性塩基の滴下順序を変えたり、同時滴下を行うことも可能である。
(1)の工程において、反応液中に生成している炭素−リン酸鉄複合体の沈殿物は、ろ過などにより取り出し、次の(2)の工程に供する。なお、不純物が多く含まれているような場合には、ろ過ケーキの水洗とろ過を繰り返してもよい。
(1)の工程で得られる炭素−リン酸鉄複合体は、上記のように、予め炭素材料を分散させた水中でリン酸鉄を生成させる方法を採用することで、例えば、リン酸鉄が炭素材料の表面を被覆するように付着した構造をとっているものと推測される。ただし、一般にカーボンブラックの粒子はストラクチャーを形成し、通常の分散では粒子の一つ一つに単分散されないため、炭素材料にカーボンブラックを用いた炭素−リン酸鉄複合体は、実際には、カーボンブラックのストラクチャーを核とした複合沈殿物を形成しているものと予想される。また、リン酸鉄の量によっては、炭素材料(カーボンブラック)の表面の全てを覆うことはできず、その一部が露出しているものと考えられる。
本発明法における(2)の工程は、(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体と、リン酸リチウムとを含有する共沈物を製造する工程である。(2)の工程としては、例えば、以下の(2−1)の工程または(2−2)の工程が挙げられる。
(2−1)の工程では、まず、(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を、好ましくは分散剤を含有する水中に添加し、所定時間(例えば、1〜60分程度)撹拌して、炭素−リン酸鉄複合体が均一分散したスラリーを得る。そして、上記スラリーに、リン酸を添加し、更にリチウム化合物含有水溶液を添加して、炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を生成させる。
炭素−リン酸鉄複合体を水に分散させるに当たっては、好ましくは、予め分散剤を添加しておいた水を用意し、これを撹拌しながら炭素−リン酸鉄複合体を徐々に添加していく方法を採用することが好ましい。分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが使用でき、特に制限はないが、(4)の工程における焼成後に炭素のみが残存し、不要成分が残らないことから、ノニオン界面活性剤が特に好ましい。
水中の炭素−リン酸鉄複合体の含有量は、例えば、1〜50質量%であることが好ましい。また、分散剤の使用量としては、水中に炭素−リン酸鉄複合体が良好に分散できれば良いが、例えば、炭素−リン酸鉄複合体100質量部に対して、分散剤を、0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下用いることが望ましい。
(2−1)の工程で使用するリン酸としては、(1)の工程と同様にオルトリン酸が好ましい。また、リン酸はそのまま用いても良いが、水溶液の形態で使用することが好ましい。水溶液とする場合の濃度は、例えば、5〜85質量%であることが好ましい。
(2−1)の工程で使用するリチウム化合物含有水溶液に係るリチウム化合物としては、水溶性のものであれば特に制限はないが、水酸化リチウムが特に好適である。また、リチウム化合物として水酸化リチウムを使用する場合におけるリチウム化合物含有水溶液中の水酸化リチウムの濃度は、例えば、0.1〜17質量%であることが好ましい。
(2−1)の工程では、反応液の温度を0〜80℃とすることが好ましい。また、(2−1)の工程では、炭素−リン酸鉄複合体およびリン酸が存在する水中にリチウム化合物含有水溶液を添加することにより共沈物を得るが、該共沈物の微粒化および均一化の観点から、炭素−リン酸鉄複合体とリン酸が存在する水を充分に撹拌しながら、リチウム化合物含有水溶液を1〜60分程度の時間で滴下し、その後5〜60分撹拌を続けることが好ましい。更に、共沈物の生成には、リン酸とリチウム化合物含有水溶液の滴下順序を変えたり、リン酸とリチウム化合物含有水溶液の同時滴下を行うことも可能である。
(2−2)の工程では、リン酸とリチウム化合物含有水溶液を混合してリン酸リチウムの沈殿物を生成させ、この水中に、(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を添加し、撹拌などにより均一に分散させることによって、炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を得る。なお、(2−2)の工程では、予め炭素材料を分散させた水相中に、リン酸とリチウム化合物含有水溶液を混合し、その後に(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を添加しても構わない。炭素材料には、(1)の工程において例示した各種のものが使用でき、アセチレンブラックやケッチェンブラックが特に好ましい。
(2−2)の工程に係るリン酸やリチウム化合物含有水溶液は、(2−1)の工程で使用できるものと同じものを用い得る。また、(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を添加する前の反応液中に、分散剤を添加しておくことが好ましい。分散剤には(2−1)の工程と同じものが使用でき、その使用量も(2−1)の工程と同様とすることが好ましい。
また、(2−2)の工程において、予め炭素材料を分散させた水を用いる場合には、この水中に分散剤を添加しておくことが好ましい。分散剤には、(2−1)の工程と同じものが使用できる。また、その使用量は、例えば、予め添加しておく炭素材料とその後に添加する炭素−リン酸鉄複合体の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは5質量部以下とすることが望ましい。
(2−2)の工程では、反応液の温度を0〜80℃とすることが好ましい。また、(2−2)の工程では、リン酸とリチウム化合物含有水溶液を混合することにより沈殿物(リン酸リチウムの沈殿物)を得るが、このリン酸リチウムの沈殿物の微粒化および均一化の観点から、例えば、リン酸を水溶液の形態で用い、このリン酸水溶液を充分に撹拌しながら、リチウム化合物含有水溶液を1〜60分程度の時間で滴下し、更に炭素−リン酸鉄複合体を加えた後、5〜60分撹拌を続けることが望ましい。また、リン酸リチウムの沈殿物の生成には、リチウム化合物含有水溶液中にリン酸(好ましくはリン酸水溶液)を滴下したり、水中にリン酸(好ましくはリン酸水溶液)とリチウム化合物含有水溶液との同時滴下を行うことも可能である。
(2−1)の工程、(2−2)の工程のいずれにおいても、炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物(以下、「炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物」という)生成時における反応液のpHは、7.0以上、より好ましくは9.0以上であって、12.0以下、より好ましくは11.0以下であることが望ましい。
本発明における(3)の工程は、上記のような(2−1)の工程か、(2−2)の工程を経て得られた炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を含むスラリーに、炭素前駆体となる有機物を添加し、混合する工程である。
本発明において、上記の「炭素前駆体となる有機物」とは、(4)の焼成工程を経ることにより、「炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の炭素の一部を構成することになる有機物」を意味するものであって、「有機物が変化して炭素前駆体を構成することになるもの」を意味するものではない。つまり、この「炭素前駆体となる有機物」とは、「炭素前駆体としての有機物」と同じ意味である。そして、この炭素前駆体となる有機物としては、例えば、グルコース、フルクトースなどの単糖類、スクロース(Sucrose:蔗糖)などの2糖類、セルロース、デキストリン、デンプンなどの3糖類以上の多糖類およびそれらの誘導体などの糖類を好適に用い得るが、安価で、かつ水溶性を有し、水を媒体として、上記炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物に均一な混合が可能な単糖類や2糖類が好ましく、特にスクロースが好ましい。
この炭素前駆体となる有機物は、上記炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を含むスラリーに、そのまま添加してもよいが、予め水に溶解した水溶液として添加することが好ましい。その際の炭素前駆体となる有機物の濃度は、特に限定されることはないが、10〜50質量%が好ましい。また、その際、ノニオン界面活性剤などの分散剤を添加して、炭素前駆体となる有機物をよく分散させておくことが好ましい。
上記炭素前駆体となる有機物またはその水溶液の添加は、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を含むスラリーを攪拌して混合しながら行うことが好ましく、また、添加後も10分程度攪拌して混合することを続けることが好ましい。
そして、上記のようにして得られた炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を含むスラリーをサンドミル、ボールミルなどの湿式メディア粉砕機で湿式粉砕して分散させることが好ましい。
すなわち、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物に炭素前駆体となる有機物を添加し、混合すると、得られる混合物は凝集して二次粒子化する傾向があり、その凝集した状態で次の(4)の焼成を行うより、その凝集状態を湿式メディア粉砕機で湿式粉砕して一次粒子化して分散させてから焼成する方が高容量のリチウムイオン電池が得られやすくなる。
上記のような工程を経た炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を、液中から、水分を乾燥して除去することによって取り出す。
乾燥の方法、条件については、上記混合物中の水分を除去できるのであれば特に制限はない。炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物中の鉄の酸化抑制の観点からは、より低温で、窒素ガスなどの不活性ガス中で乾燥させたり、減圧乾燥により乾燥させたりすることが好ましいとも考えられるが、本発明法に係る炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の場合には、大気中で熱風乾燥機などを用いて乾燥する場合でも鉄の酸化はほとんど生じないので、乾燥方法として、熱風乾燥機による乾燥も採用できる。そして、この熱風乾燥機による乾燥の場合、例えば、40〜150℃の熱風で、1〜24時間程度乾燥するのが好ましい。
(2−1)の工程で得られる炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物は、例えば、リン酸リチウムが、炭素−リン酸鉄複合体の表面を覆うように付着した構造をとっているものと推測される。また、(2−2)の工程のうち、予め炭素材料を分散させた水中にリン酸水溶液およびリチウム化合物含有水溶液を添加する方法を採用して得られる炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物では、例えば、炭素−リン酸鉄リチウム複合体と、リン酸リチウムが表面に付着した炭素材料とが共存しているものと推測される。なお、上記のように、カーボンブラックの粒子はストラクチャーを形成しているものと考えられるため、炭素材料にカーボンブラックを用いた炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物では、実際には、カーボンブラックのストラクチャーを核とした複合共沈物を形成しているものと考えられ、このカーボンブラックのストラクチャーによる核が、(4)の工程を経て得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体における導電パスを形成し、その電子伝導性を高め、また、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物に添加した炭素前駆体となる有機物は、焼成時に上記共沈物の炭素と電子伝導性の高い炭素のネットワークを形成して、電子伝導性を高めるものと推測される。また、導入するリン酸リチウムの量によっては、炭素−リン酸鉄複合体や炭素材料の表面の全てを覆うことはできず、その一部が露出しているものもあると考えられる。
本発明法の(4)の工程は、(3)の工程で得られた炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を焼成して、炭素−オリビン型リン酸リチウム複合体を製造する工程である。
(4)の工程における焼成温度としては、例えば、500〜900℃とすることが好ましい。焼成温度が低すぎると、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体が生成し難くなることがあり、高すぎると、一部に分解が生じることがある。焼成は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、水素ガスなどの還元性ガス雰囲気下で焼成することも可能である。
(4)の工程における焼成時間は、例えば、3〜24時間とすることが好ましい。また、(4)の工程における焼成を、窒素ガス雰囲気下で実施する場合には、窒素ガスの流量を、例えば、0.1〜50L/分とすることが好ましい。
また、必要に応じて、焼成前の炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物や、焼成後に得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を、粉砕したり圧縮成形したりすることもできる。
炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体では、その含有元素のうち、Li、FeおよびPの含有比が、モル比で、Fe:1.0に対して、Li:0.5以上、より好ましくは0.8以上であって、1.5以下、より好ましくは1.2以下、およびP:0.5以上、より好ましくは0.8以上であって、1.5以下、より好ましくは1.2以下であることが望ましい。このような含有比であれば、複合体中の不純物量が少なく、これを正極材料として用いた電池の電池特性を良好にすることができる。なお、本発明法ではほぼ理論当量通りに反応が進行するため、(1)、(2)および(3)の工程で各原料化合物の使用比率を調整することで、複合体中の上記含有比を制御することができる。
また、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体では、炭素含有量が、0.1質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下であることが好ましい。炭素含有量が少なすぎると、電子伝導性向上効果が小さくなることがあり、多すぎると、オリビン型リン酸鉄リチウム含有量が少なくなるため、これを正極材料に用いた電池の容量を高めることが困難になることがある。なお、上記複合体を用いた電池の充放電特性向上や、複合体の嵩密度の点からは、炭素含有量は、1質量%以上であることがより好ましく、また、25質量%以下であることがより好ましい。
本発明法では、各工程での反応は、下記(A)〜(C)式のように進むものと考えられる。なお、下記(A)式が上記(1)の工程、(B)式が(2)の工程、(C)式が(4)の工程での反応を示している。なお、(3)の共沈物に炭素前駆体となる有機物を添加し、混合する工程は、物理的な混合が行なわれているだけで、化学的反応はない。また、下記(A)〜(C)式では、使用する原料化合物については、一例を示しているに過ぎず、本発明法は、これらの原料化合物を使用する場合に限定される訳ではない。
3FeSO・7HO+2HPO+6NaOH
→ Fe(PO・8HO↓+3NaSO+2HO (A)
Fe(PO・8HO↓+3LiOH・HO+HPO
→ Fe(PO・8HO↓+LiPO↓+2HO (B)
Fe(PO・8HO+LiPO → 3LiFePO (C)
このように、本発明法では、炭素―リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を、上記(A)式、および上記(B)式の2段階で製造するため、2価の鉄を含有する化合物中に含まれる不純物や、炭素−リン酸鉄複合体に含まれる副生物〔硫酸第一鉄を用いた場合には、ボウショウ(硫酸ナトリウム)、硫酸アンモニウムなど〕を除去するには、上記(A)式の後〔すなわち、(1)の工程の後〕で水洗を行えばよい。このような水洗を行っても、リチウム化合物の溶出が生じることはなく、各元素のモル比が変わることはないため、最終共沈物〔(2)の工程で得られる共沈物〕中のLi、FeおよびPのモル比を容易に制御することができ、また、過剰のリチウム化合物の使用も不要であるため、安価に製造可能で効率的である。さらに、本発明法では、理論当量近傍での反応が可能である点でも効率的である。
ちなみに、上述の水熱法や、本発明法以外の公知の共沈法では、リチウム源となるリチウム含有化合物が、理論必要量よりも過剰に使用されている例も多い。硫酸第一鉄・7水塩、リン酸、水酸化リチウムを使用した水熱法、共沈法などの溶液法においては、下記(D)式に示す一段の沈殿で沈殿物を得、これを焼成してオリビン型リン酸鉄リチウムとしている。
3FeSO・7HO+3HPO+9LiOH・H
→ Fe(PO・8HO↓+LiPO↓+3LiSO (D)
この反応で得られた沈殿物はFe(PO・8HOとLiPOが主成分であり、焼成後にオリビン型リン酸鉄リチウムとするには、理論モル比はFe(PO・8HO:LiPO=1:1である。しかし、単純なろ過では若干のLiSOが含まれてくるので、それを除去するため、沈殿物(共沈物)を水洗する必要がある。不純物が混入すると最終的に得られるオリビン型リン酸鉄リチウムの充放電試験時の容量低下の原因となることが予想され、不純物はできる限り除去することが望ましい。しかし、LiPOあるいは沈殿に含まれるLi分は、水洗により溶解するため、不純物除去に際し、モル比が理論値よりずれることが問題となる。
これに対し、本発明法では、上記の通り、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の生成を2段階の反応で行っているため、1段階目の反応後に不純物除去のための水洗を行っても、その時点ではリチウム含有化合物が共存していないことから、水洗によるリチウム含有化合物の減量がなく、理論当量近傍での反応が可能である。
また、上記の特許文献2に記載されているオリビン型リン酸鉄リチウムの製造方法も、一旦沈殿物を生成し、これを焼成する方法であるが、この沈殿物の生成反応では、下記(E)式による反応を推測していると考えられる。
3FeSO・7HO+3HPO+3LiOH・HO+nNaOH
→ Fe(PO・8HO↓+LiPO↓+3NaSO (E)
しかし、本発明者の検討によると、特許文献2に記載の方法では、Li分が沈殿物に含まれず、焼成後には、オリビン型リン酸鉄リチウムが得られなかった(詳しくは、後記の実施例の項で述べる)。これは、次の(F)式の反応が生じているからであると予想される。
3FeSO・7HO+3HPO+3LiOH・HO+nNaOH
→ Fe(PO・8HO↓+3LiSO+NaPO (F)
すなわち、上記(F)式で示すように、Li分は水溶性の硫酸リチウムを形成しており、沈殿物中に含まれなかったため、この沈殿物を焼成してもオリビン型リン酸鉄リチウムが生成しなかったものと考えられる。
本発明法によって得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体は、オリビン型リン酸鉄リチウムの有する特性を備えつつ、その電子伝導性が高められており、リチウムイオン電池用の正極材料として使用するのに適している。本発明法に係る炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を用いてリチウムイオン電池用の正極を構成するには、例えば、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を、そのまま正極材料として用い、その他については従来公知の正極と同様に、バインダーや、必要に応じて更に炭素材料などの導電助剤を含有する正極合剤の成形体とすればよい。また、必要に応じて、これらの正極合剤を、集電体となる導電性基体の片面または両面に、正極合剤層として形成しても構わない。
さらに、本発明法に係る炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体と、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム由来の炭素以外の炭素材料とを含有させて本発明のリチウムイオン電池用正極材料を構成してもよく、この正極材料にバインダーなどを添加して正極合剤とし、これによりリチウムイオン電池用の正極を構成してもよい。上記炭素材料としては、例えば、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造に用いた上記例示の各種炭素材料〔各種カーボンブラック;形状異方性を有する各種炭素材料(ある程度のアスペクト比を有する繊維類似の形状を有する炭素材料)〕などが挙げられる。特に上記例示の形状異方性を有する炭素材料の場合には、その形状から、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体相互の導電パスを良好に形成できるため、電子伝導性をより高めることが可能であり、これを用いたリチウムイオン電池の充放電特性をより向上させることができる。
炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体と炭素材料とを含有するリチウムイオン電池用正極材料においては、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体由来の炭素以外の炭素材料の含有量を、例えば、0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であって、30質量%以下、より好ましくは20質量%以下とすることが望ましい。炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体由来の炭素以外の炭素材料の含有量が低すぎると、該炭素材料を使用することによる効果が小さくなることがある。また、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体由来の炭素以外の炭素材料の含有量が高すぎると、正極中で活物質として作用するオリビン型リン酸鉄リチウム量が低下することになるため、これを用いたリチウムイオン電池の容量の低下を引き起こすことがある。また、特に上記の形状異方性を有する炭素材料の場合には、比表面積が比較的小さいため、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体由来の炭素以外の炭素材料の含有量が高すぎると、リン酸鉄リチウムとの接触点が少なくなることもある。
本発明法に係る炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体、および本発明の正極材料を用いたリチウムイオン電池用の正極を用いてリチウムイオン電池を構成する際には、負極、セパレータ、非水電解液、外装体などの各種構成については特に制限はなく、従来公知のリチウムイオン電池と同様の構成を採用することができる。
携帯電話、パソコンなどの小型機器の電源用途では、その性能の高さからリチウムイオン電池の使用が拡大され続けているが、今後、自動車、産業用車両などの大型機器への用途へ展開するには、価格や安全性がネックとなっている。安全性の高いオリビン型リン酸鉄リチウムを用い、本発明法によって簡易かつ効率的に製造することにより、低コスト化も達成して、リチウムイオン電池が大型機器への用途へ急速に展開されるものと予想される。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、下記の実施例および比較例において、溶液、分散液などの濃度を示す%は、特にその単位を付記しないかぎり、質量基準による%である。
実施例1
(1−1)炭素−リン酸鉄複合体の製造
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水190cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕0.5gを添加後、アセチレンブラック粉末〔電気化学社製「デンカブラック(商品名)」、粒径35nm〕2.4gを加え、15分間撹拌してカーボンブラック分散液とした。その後、予めイオン交換水540cmに85%リン酸76.9gと硫酸第一鉄・7水和物278.0gとを溶解させた水溶液を、上記カーボンブラック分散液に添加し、10分間撹拌した。さらに15%アンモニア水溶液227.1gを上記カーボンブラック分散液に添加し、15分間撹拌後ろ過することにより、炭素−リン酸鉄複合体を得た。
(1−2)炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の製造
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水615cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕0.5gを添加後、(1−1)で得られた炭素−リン酸鉄複合体全量を入れ、15分間撹拌して、炭素−リン酸鉄複合体分散液とした。その後、上記炭素−リン酸鉄複合体分散液に、85%リン酸38.4gを添加し、予めイオン交換水380cmに水酸化リチウム・1水和物41.9gを溶解させた水溶液を添加して10分間撹拌し、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を含有するスラリー液とした。
(1−3)炭素前駆体となる有機物の添加
上記(1−2)で得られた炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物に、炭素前駆体となる有機物としてのスクロース28.0gをイオン交換水に溶解させた40%水溶液を攪拌しながら添加後、さらに10分間攪拌して混合し、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物とスクロースとの混合物のスラリー液を得た。
(1−4)焼成
上記(1−3)で得たスラリー液を、横型サンドミル〔株式会社シンマルエンタープライゼス製「ダイノーミル MULTI LAB型(商品名)」〕に入れ、更にその中に0.5mm径のジルコニアビーズを充填し、湿式粉砕を行って、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物とスクロースとの混合物を分散させた。分散後のスラリー液を減圧下70℃にて乾燥し、得られた乾燥物を、2cm径ジルコニアボールを入れた1Lのナイロン製ポットを用い72時間回転させて粉砕を行った。粉砕後、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を粒子形状で得た。
上記のようにして得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、ICPによるモル比の分析、粉末X線回折装置を用いての結晶性成分の確認および全自動元素分析装置を用いての炭素含有量の測定を行った。それらの結果や測定方法を次に示す。
〔ICPによるモル比の分析〕
上記(1−4)で得た炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の一部を20%塩酸中に入れて加熱溶解させ、ろ過により不溶分を除去し、その後、ろ液を希釈して塩酸の濃度を1%に調整し、ICP発光分析〔株式会社リガク「CCD−ICP発光分析装置CIROS−120(商品名)」〕により、濃度調整後のろ液中の共沈物の各成分の比(モル比)を算出したところ、Li:Fe:P=1:1:1であることを確認した。
〔粉末X線回折装置を用いての結晶性成分の確認〕
上記(1−4)で得た炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を、粉末X線回折装置〔PANalytical社製「全自動粉末X線回折装置X´Pert PRO(商品名)」〕を用いて対陰極Cu(Niフィルター)、管球電圧45kV、電流40mAの条件でX線回折測定を行い、得られた回折図から、結晶性成分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることを確認した。
〔全自動元素分析装置を用いての炭素含有量の測定〕
上記(1−4)で得た炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を、全自動元素分析装置〔エレメンタール社製「vario ELIII(商品名)」〕を用いて元素分析し、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.2質量%含まれていることを確認した。
実施例2
スクロースの添加量を13.7gとした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様の分析を行った。その結果、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が3.1質量%含まれていることを確認したが、それ以外は実施例1と同様であった。
実施例3
スクロースの添加量を6.8gとした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様の分析を行った。その結果、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が2.0質量%含まれていることを確認したが、それ以外は実施例1と同様であった。
実施例4
(4−1)炭素−リン酸鉄複合体の製造
実施例1の(1−1)と同様の操作を行って、実施例1と同様の炭素−リン酸鉄複合体を得た。
(4−2)炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の製造
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水615cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕0.5gを添加後、(1−1)で得られた炭素−リン酸鉄複合体全量を入れ、15分間撹拌して、炭素−リン酸鉄複合体分散液とした。その後、上記炭素−リン酸鉄複合体分散液に、85%リン酸38.4gを添加し、更に予めイオン交換水380cmに水酸化リチウム・1水和物41.9gを溶解させた水溶液を添加して10分間撹拌し、その後ろ過することによって炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を得た。
(4−2−1)乾燥および仮焼
(4−2)で得られた共沈物を40℃真空乾燥機にて24時間乾燥した。なお、得られた乾燥物について、実施例1と同様にICPによるモル比の分析をしたところ、各成分のモル比は、Li:Fe:P=1:1:1であった。
上記のようにして得られた乾燥物を、2cmのジルコニアボールを充填した1Lのナイロン製ポットに入れ、72時間回転させて粉砕を行った、粉砕後、窒素気流中で、500℃、5時間の条件で仮焼した。
(4−3)炭素前駆体となる有機物の添加
上記(4−2−1)で得られた仮焼物150gを、予めスクロース22.4gをイオン交換水425cmに溶解させておいた水溶液に分散させて、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の仮焼物とスクロースとの混合物のスラリー液を得た。
(4−4)焼成
上記(4−3)で得た炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の仮焼物とスクロースとの混合物のスラリー液を横型サンドミル〔株式会社シンマルエンタープライゼス製「ダイノーミル MULTI LAB型(商品名)」〕に入れ、ジルコニアビーズを充填して湿式粉砕を行って、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の仮焼物とスクロースとの混合物を分散させた。分散後のスラリー液を70℃にて減圧乾燥し、得られた粉砕粉を窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様の分析を行ったところ、各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分はオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.1質量%含まれていることが確認された。
実施例5
(5−1)炭素−リン酸鉄複合体の製造
実施例1の(1−1)と同様の操作を行って、実施例1と同様の炭素−リン酸鉄複合体を得た。
(5−2)炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の製造
実施例1の(1−2)と同様の操作を行って、実施例1と同様の炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物のスラリー液を得た。
(5−3)炭素前駆体となる有機物の添加
上記のようにして得た炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物に、スクロース28.0gをイオン交換水に溶解させた40%水溶液を攪拌しながら添加後、さらに10分間攪拌して混合し、炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物とスクロースとの混合物のスラリー液を得た。
(5−4)焼成
上記のようにして得られた炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物とスクロースとの混合物のスラリー液を減圧下70℃にて乾燥し、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
上記のようにして得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様の分析をしたところ、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分はオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.1質量%含まれていることが確認された。
比較例1
この比較例1では、オリビン型リン酸鉄リチウムの製造法として従来公知の固相法を利用して、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。
リン酸第一鉄・8水和物「」Fe(PO・8HO]とリン酸リチウム(LiPO)とを、リチウムと鉄との元素比率が1:1となるように配合し、これに、アセチレンブラック[電気化学社製「デンカブラック(商品名)」]を焼成後の炭素分が5.0質量%となるように加え、乾式で遊星ボールミル(レッチェ社製「PM−100(商品名)」を用いて10時間混合した。得られた混合物を、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、得られた焼成物を簡易式カッターミルにて粉砕し複合体を得た。
得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様に分析したところ、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分の大部分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.1質量%含まれていることが確認された。
比較例2
この比較例2でも、オリビン型リン酸鉄リチウムの製造法として従来公知の固相法を利用して、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。ただし、この比較例2では、炭素成分として、比較例1がアセチレンブラックを用いていたのに対し、炭素前駆体となるスクロースを用いて、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。
リン酸第一鉄・8水和物〔Fe(PO・8HO〕とリン酸リチウム(LiPO)とを、リチウムと鉄との元素比率が1:1となるように配合し、これに、スクロースを焼成後の炭素分が5.0質量%となるように加え、乾式で遊星ボールミル〔レッチェ社製「PM−100(商品名)」〕を用いて10時間混合した。得られた混合物を、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、得られた焼成物を簡易式カッターミルにて粉砕して複合体を得た。
得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様に分析したところ、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分の大部分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.1質量%含まれていることが確認された。
比較例3
この比較例3でも、オリビン型リン酸鉄リチウムの製造法として従来公知の固相法を利用して、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。ただし、この比較例3では、炭素成分として、比較例1がアセチレンブラックを用い、比較例2がスクロースを用いていたのに対し、アセチレンブラックとスクロースとを併用して、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。
リン酸第一鉄・8水和物〔Fe(PO・8HO〕とリン酸リチウム(LiPO)とを、リチウムと鉄との元素比率が1:1となるように配合し、これに、スクロース:アセチレンブラック〔電気化学社製「デンカブラック(商品名)」〕=11:1(質量比)の配合量で、焼成後の炭素分が5.0質量%となるように加え、乾式で遊星ボールミル(レッチェ社製「PM−100(商品名)」を用いて10時間混合した。得られた混合物を、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、得られた焼成物を簡易式カッターミルにて粉砕し複合体を得た。
得られた炭素−リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様に分析したところ、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分の大部分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.2質量%含まれていることが確認された。
比較例4
この比較例4では、(2)の炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を製造する工程後、(4)の焼成工程の前に、炭素前駆体となる有機物の添加、混合をすることなく、炭素−リン酸鉄リチウム複合体〔アセチレンブラック:オリビン型リン酸鉄リチウム=20:80(質量比)の炭素−リン酸鉄リチウム複合体〕の製造を行った例を示す。
〔炭素−リン酸複合体の製造〕
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水650cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕4.0gを添加後、アセチレンブラック粉末〔電気化学社製「デンカブラック(商品名)」、粒径35nm〕28.1gを加え、15分間撹拌してカーボンブラック分散液とした。その後、予めイオン交換水430cmに85%リン酸53.1gと硫酸第一鉄・7水和物192.1gとを溶解させた水溶液を、上記カーボンブラック分散液に添加し、10分間撹拌した。さらに30%苛性ソーダ水溶液184.3gを上記カーボンブラック分散液に添加し、15分間撹拌後ろ過することにより、炭素−リン酸鉄複合体を得た。
〔炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の製造〕
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水650cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕4.0gを添加後、実施例1の(1−1)と同様の操作を行って得られた炭素−リン酸鉄複合体全量を入れ、15分間撹拌して、炭素−リン酸鉄複合体分散液とした。その後、上記炭素−リン酸鉄複合体分散液に、85%リン酸25.6gを添加し、更に予めイオン交換水165cmに水酸化リチウム・1水和物29.0gを溶解させた水溶液を添加して10分間撹拌し、その後ろ過することによって炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を得た。
〔焼成〕
上記のようにして得られた共沈物を40℃真空乾燥機にて24時間乾燥した。上記乾燥後の共沈物を、窒素気流中で、600℃、5時間の条件で焼成し、その後、簡易式カッターミルにて粉砕して炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
上記のようにして得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様に分析を行ったところ、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中の炭素分は20.2質量%であることが確認された。
比較例5
この比較例5では、比較例3でアセチレンブラック:オリビン型リン酸鉄リチウム=20:80(質量比)の炭素−リン酸鉄リチウム複合体の製造を行っていたのに代えて、アセチレンブラック:オリビン型リン酸鉄リチウム=5:95(質量比)の炭素−リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。
〔炭素−リン酸複合体の製造〕
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水650cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕1.3gを添加後、アセチレンブラック粉末〔電気化学社製「デンカブラック(商品名)」、粒径35nm〕6.3gを加え、15分間撹拌してカーボンブラック分散液とした。その後、予めイオン交換水430cmに85%リン酸53.1gと硫酸第一鉄・7水和物192.1gとを溶解させた水溶液を、上記カーボンブラック分散液に添加し、10分間撹拌した。さらに15%アンモニア水溶液156.7gを上記カーボンブラック分散液に添加し、15分間撹拌後ろ過することにより、炭素−リン酸鉄複合体を得た。
〔炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物の製造〕
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水650cmを入れ、ノニオン界面活性剤〔花王株式会社製「エマルゲンMS−110(商品名)」〕1.3gを添加後、実施例1の(1−1)と同様の操作を行って得られた炭素−リン酸鉄複合体全量を入れ、15分間撹拌して、炭素−リン酸鉄複合体分散液とした。その後、上記炭素−リン酸鉄複合体分散液に、85%リン酸25.6gを添加し、更に予めイオン交換水165cmに水酸化リチウム・1水和物29.0gを溶解させた水溶液を添加して10分間撹拌し、その後ろ過することによって炭素−リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物を得た。
〔焼成〕
上記のようにして得られた共沈物を40℃真空乾燥機にて24時間乾燥した。上記乾燥後の共沈物を、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、その後、簡易式カッターミルにて粉砕して炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
上記のようにして得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様に分析を行ったところ、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中の炭素分は5.2質量%であることが確認された。
比較例6
この比較例6では、本発明における(1)の工程のような炭素−リン酸鉄複合体を合成することなく、最初の工程でリン酸鉄を合成し、それ以後は本発明と同様に炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を行った。
〔リン酸鉄の製造〕
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水540cmを入れ、85%リン酸76.9gと硫酸第一鉄・7水和物278.0gを溶解させた。さらに15%アンモニア水溶液227.1gを添加し、15分間撹拌後ろ過することにより、リン酸鉄を得た。
〔リン酸鉄とリン酸リチウム共沈物の製造〕
2Lセパラブルフラスコにイオン交換水615cmを入れ、上記で得られたリン酸鉄全量を入れ、15分間撹拌して、リン酸鉄分散液とした。その後、85%リン酸38.4gを添加し、予めイオン交換水380cmに水酸化リチウム・1水和物41.9gを溶解させた水溶液を添加して10分間撹拌し、リン酸鉄−リン酸リチウム共沈物のスラリー液とした。
〔炭素前駆体となる有機物の添加〕
上記のようにして得られたリン酸鉄−リン酸リチウム共沈物のスラリー液にスクロース34.6gをイオン交換水に溶解させた40%水溶液を添加後、10分間撹拌して混合し、スラリー液とした。
〔焼成〕
上記のようにして得られたリン酸とリン酸リチウム共沈物とスクロースとの混合物のスラリー液を、横型サンドミル〔株式会社シンマルエンタープライゼス製「ダイノーミル MULTI LAB型(商品名)」〕に入れ、0.5mm径ジルコニアビーズを充填し、湿式粉砕を行った。得られたスラリー液を減圧下70℃にて乾燥し、得られた乾燥物を、2cm径ジルコニアボールを入れた1Lナイロン性ポットを用い72時間回転させ粉砕を行った。粉砕後、窒素気流中で、700℃、5時間の条件で焼成し、オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を得た。
得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体について、実施例1と同様に分析を行ったところ、各成分のモル比はLi:Fe:P=1:1:1であり、結晶性成分がオリビン型リン酸鉄リチウムLiFePOであることが確認され、また、この炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中に炭素分が5.1質量%含まれていることが確認された。
比較例7
この比較例7では、特許文献2に開示されているオリビン型リン酸鉄リチウム合成法(共沈法)によって、炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造を試みた。
2Lのセパラブルフラスコにイオン交換水472.4cmと85%リン酸95.6gを入れ、10体積%希釈リン酸水溶液を調製した。このリン酸水溶液に、LiとFeのモル比が1:1となるように、硫酸第一鉄・7水和物192.1gと水酸化リチウム・1水和物29.0gとを添加し、溶解させて混合液を調製した。この混合液に、アスコルビン酸7.9g(混合液の1質量%分)を添加し、10分間撹拌した。次に、混合液に、アセトン4.0ml(混合液の0.5体積%分)を添加し、さらにアセチレンブラック粉末[電気化学社製「デンカブラック(商品名)」]10gを添加して1分間撹拌し、次いで濃度が1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して10分間撹拌後、ろ過することにより共沈物を得た。
上記の共沈物を40℃真空乾燥機にて1晩乾燥した。これを1%塩酸中に入れて加熱溶解させ、ろ過により不溶分を除去した後に、実施例1と同様にICP発光分析を行って、ろ液中の共沈物の各成分の比(モル比)を算出したところ、Li:Fe:P=0.01:1:0.8であり、共沈物中にLiがほとんど含まれていないことが判明した。この共沈物を焼成しても、オリビン型リン酸鉄リチウムは生成しないことが明らかであるため、その後の操作を中止した。
〔リチウムイオン電池の正極材料としての評価〕
上記実施例1〜5および比較例1〜6で得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を正極材料として使用した正極を有するリチウムイオン電池を作製し、放電容量を測定し、上記炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の正極材料としての評価をした。その詳細は次の通りである。
なお、比較例7では、目的とする炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体が得られなかったので、このリチウムイオン電池の正極材料としての評価はしていない。
実施例1〜5および比較例1〜6で得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体のそれぞれ20mgと、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン〔デュポン社製「テフロン(登録商標)6―J」〕2mgとを乳鉢上で混練し、約1cm角のフィルム状にしてニッケル線メッシュにのせ、1トンの圧力で5分間加圧して、ワーキング電極(正極)を作製した。
アルゴン置換したグローブボックス内で、ニッケル線メッシュに金属リチウム箔を押しつけて固定させたものを2本作り、これらを対極および参照極とした。電解液(LiClOを1mol/lの濃度で溶解させた炭酸プロピレン溶液)30mlをビーカー式三極セルに入れ、上記のワーキング電極、対極および参照電極を取り付けて、試験用セル(リチウムイオン電池)を構成した。
上記の試験用セルについて、電池充放電装置〔北斗電工社製「HJ−1001SM8(商品名)」〕を用いて充放電試験を行った。試験は、LiFePOに対して17mA/gの電流密度で、電圧の上限を4.3V、下限を2.5Vに設定して行い、正極活物質であるオリビン型リン酸鉄リチウム1g当たりの放電容量(mAh/g)を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 0005164260
表1に示すように、実施例1〜5の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を正極材料として用いた場合は、比較例1〜6の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体を正極材料として用いた場合に比べて、放電容量が大きく、実施例1〜5のリチウムイオン電池の正極材料として高容量で優れたものであることが明らかであった。
これに対して、比較例1の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体が放電容量が小さかったのは、比較例1が固相法を採用しているため、各成分の均一な混合ができず、そのため、焼成時におけるリン酸鉄とリン酸リチウムとの反応や炭素との複合化が充分に行われなかったことによるものと考えられる。
また、炭素成分として、炭素前駆体となるスクロースを用いた比較例2の炭素−オリビン型リン酸鉄複合体や、炭素成分として、アセチレンブラックとスクロースを併用した比較例3の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体も、放電容量が小さかったのは、これら比較例2〜3においても、比較例1と同様に固相法を採用しているため、各成分の均一な混合ができず、そのため、焼成時におけるリン酸鉄とリン酸リチウムとの反応や炭素との複合化が充分に行われなかったことによるものと考えられる。
そして、(2)の炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を製造する工程後、(4)の焼成工程の前に、炭素前駆体となる有機物の添加、混合をすることなく、製造した比較例4の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体や比較例5の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の放電容量が小さかったのは、炭素前駆体となる有機物が存在しないため、アセチレンブラックとの炭素ネットワークが形成できず、そのため、充分な電子伝導性が得られなかったことによるものと考えられる。
また、比較例6の炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の放電容量が小さかったのは、最初の工程で炭素−リン酸鉄複合体を合成することなく、リン酸鉄を合成しているため、スクロースを添加して焼成しているにもかかわらず、炭素のネットワークが形成されず、そのため、充分な電子伝導性が得られなかったためであると考えられる。

Claims (14)

  1. 炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法であって、
    (1)炭素−リン酸鉄複合体を沈殿により製造する工程、
    (2)上記炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を製造する工程、
    (3)上記共沈物に炭素前駆体となる有機物を添加し、混合する工程、
    (4)上記共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を焼成する工程、
    を有することを特徴とする炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法。
  2. 上記(3)の工程と(4)の工程との間に、上記共沈物と炭素前駆体となる有機物との混合物を湿式メディア粉砕機で粉砕して分散させる請求項1に記載の製造方法。
  3. 炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法であって、
    (1)炭素−リン酸鉄複合体を沈殿により製造する工程、
    (2)上記炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を製造し、その共沈物を乾燥し、仮焼する工程、
    (3)上記共沈物の仮焼物に炭素前駆体となる有機物を添加し、混合する工程、
    (4)上記共沈物の仮焼物と炭素前駆体となる有機物との混合物を焼成する工程、
    を有することを特徴とする炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体の製造方法。
  4. 上記(3)の工程と(4)の工程との間に、上記共沈物の仮焼物と炭素前駆体となる有機物との混合物を湿式メディア粉砕機で粉砕して分散させる請求項3に記載の製造方法。
  5. 上記(2)の工程において、上記(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を水中に分散させ、その後、該水中に、リン酸を添加し、さらにリチウム化合物含有水溶液を添加することによって炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を得る請求項1または3に記載の製造方法。
  6. 上記(2)の工程において、リン酸とリチウム化合物含有水溶液を混合してリン酸リチウム沈殿物を生成させた水中に、上記(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を添加して分散させることにより炭素−リン酸鉄複合体とリン酸リチウムとを含有する共沈物を得る請求項1または3に記載の製造方法。
  7. 炭素材料を分散させた水中に、リン酸とリチウム化合物含有水溶液を混合し、さらに上記(1)の工程で得られた炭素−リン酸鉄複合体を添加する請求項6に記載の製造方法。
  8. 上記(1)の工程において、炭素材料を分散させた水中に、リン酸および2価の鉄を含有する化合物を有する水溶液を添加し、その後、水溶性塩基で中和することにより、炭素−リン酸鉄複合体沈殿物を得る請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 上記(3)の工程において、共沈物に添加する炭素前駆体となる有機物が、糖類である請求項1または3に記載の製造方法。
  10. 糖類が、単糖類または2糖類である請求項9に記載の製造方法。
  11. 上記(4)の工程において、焼成温度を500〜900℃とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 上記(1)、(2)、(3)および(4)の工程を経て得られる炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体中の炭素含有量が、0.1〜50質量%である請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体からなることを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体と、該炭素−オリビン型リン酸鉄リチウム複合体由来の炭素以外の炭素材料を0.1〜30質量%含有することを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料。
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